説明

車体構造

【課題】第3部材に荷重が入力された場合に第1部材と第2部材との接合部に作用する剥離方向の荷重を緩和することができる車体構造を得る。
【解決手段】車体側部構造10は、ロッカインナパネル30の下フランジ30Bとロッカアウタリインフォースメント32の下フランジ32Bとが重ね合わせ状態で接合された第1接合部40と、センタピラーアウタリインフォースメント28が外力を受けた場合に第1接合部40に剥離荷重が作用するように該センタピラーアウタリインフォースメント28がロッカアウタリインフォースメント32の外側壁32Cに結合された第2接合部44と、ロッカアウタリインフォースメント32における第1接合部40と第2接合部44との間に設けられた応力低減ビード45とを有する。応力低減ビード45は、センタピラーアウタリインフォースメント28が外力を受けた場合に変形して第1接合部40に作用する剥離荷重を緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サイドシルリインフォースメントとサイドシルインナとがフランジ接合されて閉断面を構成するサイドシルにおける車幅方向外側の側面、すなわちサイドシルリインフォースメントに、センターピラーリインフォースメントの下端が接合された車体構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−199173号公報
【特許文献2】特開2004−82885号公報
【特許文献3】特開2006−341687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、センターピラーに車幅方向内向きの荷重が入力された場合、サイドシルのフランジ接合部に剥離方向の大きな荷重が作用することとなる。
【0004】
本発明は、第3部材に荷重が入力された場合に第1部材と第2部材との接合部に作用する剥離方向の荷重を緩和することができる車体構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る車体構造は、第1部材と第2部材とが重ね合わせ状態で接合された接合部と、第3部材が外力を受けた場合に前記接合部に剥離方向の荷重が作用するように、該第3部材が前記第1部材に結合された結合部と、前記第1部材における前記結合部と前記接合部との間に設けられ、前記第3部材が外力を受けた場合に変形して前記接合部に作用する前記剥離方向の荷重を緩和するための剥離荷重低減部と、を有する。
【0006】
請求項1記載の車体構造では、第3部材に外力が入力されると、第1部材と第2部材との接合部を重ね合わせ方向に離間させようとする剥離方向の荷重(以下、剥離荷重という)が作用する。ここで、本車体構造では、第1部材における第2部材との接合部と第3部材との結合部との間に剥離荷重低減部が設けられているので、第3部材が外力を受けた場合には該剥離荷重低減部が変形することで、接合部への伝達荷重が低減される。これにより、第3部材が外力を受けた場合に接合部に作用する剥離荷重が緩和される。
【0007】
このように、請求項1記載の車体構造では、第3部材に荷重が入力された場合に第1部材と第2部材との接合部に作用する剥離方向の荷重を緩和することができる。
【0008】
請求項2記載の発明に係る車体構造は、請求項1記載の車体構造において、前記第1部材は、前記第2部材に対し車体外側に配置されると共に、該第2部材とで閉断面構造の車体骨格を構成しており、前記第3部材は、長手方向の一端が前記結合部において前記第1部材に結合されており、前記剥離荷重低減部は、前記第3部材に車体外側から外力が作用した場合に前記第1部材を前記第3部材の長手方向に伸長させ得る伸び代部として形成されている。
【0009】
請求項2記載の車体構造では、第3部材に車体外側から外力が作用した場合には、第1部材と第2部材とで形成する閉断面構造の車体骨格にねじれが生じ、該ねじれに伴い第1部材と第2部材との接合部に剥離荷重が作用する。ここで、本車体構造では、上記した閉断面構造のねじれに伴って伸び代部が第3部材の長手方向に伸びることで、第1部材と第2部材との接合部への伝達荷重が低減されるため、該接合部に作用する剥離荷重が効果的に緩和される。
【0010】
請求項3記載の発明に係る車体構造は、板状の第1部材と第2部材とが重ね合わせ状態で接合された接合部と、前記第1部材における前記接合部に対し前記第2部材との前記重ね合わせ方向にオフセットしたオフセット部に、第3部材の長手方向の一部が結合された結合部と、前記第1部材の前記オフセット部における前記結合部に対する前記接合部側の部分を、前記第3部材の長手方向に展開可能に折り曲げて形成された伸び代部と、を有する。
【0011】
請求項3記載の車体構造では、第1部材の第2部材に対する接合方向(オフセット部の第2部材に対するオフセット方向)の成分を有する荷重が第3部材に入力された場合、第1部材と第2部材との接合部を重ね合わせ方向に離間させようとする剥離方向の荷重(以下、剥離荷重という)が作用する。ここで、本車体構造では、第1部材における第2部材との接合部と第3部材との結合部との間に伸び代部が設けられているので、第3部材に上記方向の荷重が入力された場合には、伸び代部(第1部材のオフセット部)が第3部材の長手方向に展開される。この伸び代部の展開によって、第1部材と第2部材との接合部に伝達される荷重が低減されるので、該接合部に作用する剥離荷重が緩和される。
【0012】
このように、請求項3記載の車体構造では、第3部材に荷重が入力された場合に第1部材と第2部材との接合部に作用する剥離方向の荷重を緩和することができる。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車体構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車体構造において、前記第1部材と第2部材とは、共に高張力鋼板より成り、前記接合部においてスポット溶接にて接合されている。
【0014】
高張力鋼板を用いて第1部材、第2部材が薄肉化された場合、スポット溶接による接合部の剥離強度が低下しやすいが、請求項4記載の車体構造では、上記の通り剥離荷重低減部又は伸び代部によって接合部に作用する剥離荷重が低減される。このため、高張力鋼板同士のスポット溶接部に所要の剥離強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明に係る車体構造は、第3部材に荷重が入力された場合に第1部材と第2部材との接合に作用する剥離方向の荷重を緩和することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る車体構造としての車体側部構造10について、図1〜図4に基づいて説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印INは車幅方向内側を、矢印OUTは車幅方向外側をそれぞれ示す。
【0017】
図2には、車体側部構造10が適用された自動車11の一部が車室内側から見た模式的な側面図にて示されており、図1には、図2の1−1線に沿った断面図にて示されている。これらの図に示される如く、自動車11は、センタピラー12を備えている。センタピラー12は、車両前後方向に長手とされた車幅方向外端の骨格部材であるロッカ14における車両前後方向の略中間部から車両上下方向に沿って立ち上げられた骨格部材とされている。
【0018】
センタピラー12の車両上下方向の上端部は、車両上部の骨格部であるルーフサイドレール16の車両前後方向中間部に連結されている。このセンタピラー12に対する車両前後方向の前側には、該センタピラー12、ロッカ14、ルーフサイドレール16、及びフロントピラー18にて囲まれた乗員乗降用のドア開口部20が形成されている。一方、センタピラー12に対する車両前後方向の後側には、該センタピラー12、ロッカ14、ルーフサイドレール16、及びリヤピラー22等にて囲まれたドア開口部24が形成されている。
【0019】
そして、第1の実施形態に係る車体側部構造10は、自動車11におけるロッカ14とセンタピラー12との接合部分に適用されている。
【0020】
具体的には、図1に示される如く、センタピラー12は、センタピラーインナパネル26と、センタピラーアウタリインフォースメント28とが図示しない前後のフランジ部で接合されて形成された閉断面C1を有する骨格部とされている。一方、ロッカ14は、車幅方向外向きに開口する断面ハット形状のロッカインナパネル30と、車幅方向内向きに開口する断面ハット形状のロッカアウタリインフォースメント32とが接合されて形成された閉断面C2を有する骨格部とされている。
【0021】
この実施形態では、ロッカインナパネル30の上下のフランジ30A、30Bと、ロッカアウタリインフォースメント32の上下のフランジ32A、32Bとの間に、センタピラーインナパネル26の下端部26Aが挟み込まれて、共に接合されている。さらに、この実施形態では、センタピラーアウタ34、ロッカアウタ36等が一体に形成された大型のプレス部品であるサイメンアウタ(サイドアウタパネル)38がセンタピラーアウタリインフォースメント28、ロッカアウタリインフォースメント32を外側から覆うようにして、該センタピラーアウタリインフォースメント28、ロッカアウタリインフォースメント32のフランジに接合されている。
【0022】
サイメンアウタ38の下端部に形成された下フランジ38Aは、ロッカインナパネル30の下フランジ30B、センタピラーインナパネル26の下端部26A、ロッカアウタリインフォースメント32の下フランジ32Bと4枚重ね合わせ状態で、スポット溶接にて接合されており、この接合部位が本発明における接合部としての第1接合部40とされている。なお、この実施形態では、ロッカインナパネル30における上下のフランジ30A、30Bに対し車幅方向内側に突出した内側壁30Cには、車体フロアを構成するフロアパン(フロアパネル)42の車幅方向外端42Aが接合されている。
【0023】
また、車体側部構造10では、図1に示される如く、センタピラーアウタリインフォースメント28は、その下端部28Aがロッカアウタリインフォースメント32の外側壁32Cにスポット溶接にて接合されている。この接合部位は、本発明における結合部としての第2接合部44とされている。したがって、この実施形態に係る車体側部構造10では、第2接合部44は、第1接合部40に対し車幅方向外側(ロッカインナパネル30、ロッカアウタリインフォースメント32の下フランジ30B、32Bの重ね合わせ方向)にオフセットして配置されている。また、この実施形態では、第2接合部44は、第1接合部40に対し車両上下方向の上側にもオフセットして配置されている。
【0024】
したがって、センタピラーアウタリインフォースメント28の下端部28Aは、ロッカアウタリインフォースメント32における上下のフランジ32A、32Bに対し車幅方向外側に突出した部分に接合されていると捉えることができる。 以上により、この実施形態では、ロッカアウタリインフォースメント32が本発明における第1部材、ロッカインナパネル30が本発明における第2部材、センタピラーアウタリインフォースメント28が本発明における第3部材であると捉えることができる。
【0025】
さらに、この実施形態では、センタピラーアウタリインフォースメント28の下端部28Aは、センタピラー12における車両前後方向の端部に対し、該車両前後方向の両側に張り出されている。すなわち、センタピラーアウタリインフォースメント28の下部は、側面視で逆T字状を成している。
【0026】
そして、車体側部構造10は、本発明における剥離荷重低減部(応力低減部)、伸び代部としての応力低減ビード45を備えている。応力低減ビード45は、ロッカアウタリインフォースメント32の外側壁32Cにおける第2接合部44に対する下側部分が、該ロッカアウタリインフォースメント32を構成する板材の展開可能に折り曲げられて形成されている。この実施形態では、応力低減ビード45は、外側壁32Cにおける上部が下部に対し車幅方向外側にオフセットして位置するように、該外側壁32Cを上下2箇所で折り曲げることで形成されている。
【0027】
この応力低減ビード45は、図2に示される如く、ロッカアウタリインフォースメント32の外側壁32Cにおける第2接合部44の車両前後方向の全範囲(センタピラーアウタリインフォースメント28の下端部28Aの車両前後方向における長さの範囲)R1を少なくとも含む範囲に形成されている。すなわち、応力低減ビード45の車両前後方向の前後端は、第2接合部44(センタピラーアウタリインフォースメント28の下端部28A)の前後端に対し該車両前後方向の前後に突出しても良い。
【0028】
以上により、応力低減ビード45は、センタピラーアウタリインフォースメント28の長手方向(面方向)に沿った方向において、ロッカアウタリインフォースメント32における第1接合部40(下フランジ32B)と、第2接合部44(外側壁32Cの上部)との間に配置されているものと捉えることができる。また、応力低減ビード45は、第1接合部40に対し、車幅方向外側(ロッカインナパネル30、ロッカアウタリインフォースメント32下フランジ30B、32Bの重ね合わせ方向)にオフセットして配置されているものと捉えることができる。
【0029】
また、車体側部構造10(が適用された自動車11)では、ロッカ14を構成するロッカインナパネル30、ロッカアウタリインフォースメント32は、それぞれ高張力鋼板にて構成されている。この実施形態における高張力鋼板とは、例えば引張強さが350MPa以上の自動車用鋼板をいい、引張強さが590MPa以上のものを超高張力鋼板という場合もある。この実施形態では、ロッカインナパネル30、ロッカアウタリインフォースメント32は、ともに引張強さが980MPaである超高張力鋼板にて構成されている。なお、第2接合部44においてロッカアウタリインフォースメント32に接合されるセンタピラーアウタリインフォースメント28は、鋼板(高張力鋼板であってもなくても良い)で構成されている。
【0030】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0031】
上記構成の車体側部構造10では、例えば自動車11に対する側面衝突によってセンタピラー12に車幅方向内向きの衝突荷重が入力されると、該センタピラー12の下部が車幅方向内向きに倒れるのに伴い、ロッカ14がねじられることになる。この点を車体側部構造10との比較例に係る車体側部構造100を示す図8に基づき補足する。
【0032】
図8(A)には、ロッカ14に応力低減ビード45が形成されていないことを除き車体側部構造10と同様に構成された車体側部構造100が図1に対応する断面図にて示されている。この図に矢印Fにて示す衝突荷重が入力されると、図8(B)に示される如く、センタピラー12は、その下部が車幅方向内向きに倒れるように変形され、ロッカ14は矢印Aにて示される如くねじられる。このねじれによって、ロッカ14を構成するロッカインナパネル30の下フランジ30Bとロッカアウタリインフォースメント32の下フランジ32Bとの第1接合部40には、これらを板厚方向に剥がそうとする剥離方向の荷重f(以下、剥離荷重fという)が作用する。
【0033】
また、図4には、横軸に母材の引張強さ、縦軸にスポット溶接(による接合部)の剥離強度をとった線図が示されている。この図に示される如く、スポット溶接の剥離強度は、接合される部材の板厚tが同じ場合は、母材の引張強さが590MPa程度をピークにそれ以上の母材の引張強さでは徐々に低下していき、また、接合される部材の板厚tが薄いほど低くなることがわかる。したがって、例えば本実施形態の如く母材が高強度(引張強さが980MPa)で薄肉の高張力鋼板を用いて軽量化を図る場合、剥離荷重が作用するスポット溶接による接合部位すなわち第1接合部40の剥離荷重fを低減する構造が必要になる。
【0034】
ここで、車体側部構造10では、ロッカアウタリインフォースメント32における第1接合部40と第2接合部44との間に図3(A)に示される如く応力低減ビード45が形成されているので、センタピラー12の上記した変形により外側壁32Cが上下方向(センタピラーアウタリインフォースメント28の長手方向)すなわち第2接合部44のせん断方向に引張られると、図3(B)に示される如く応力低減ビード45が上記引張方向に伸びる(展開される)ことで、第1接合部40に作用する剥離荷重が緩和される。これにより、車体側部構造10では、例えば車体側部構造100では第1接合部40に剥離が生じ得る側面衝突においても、剥離荷重が緩和されることで、第1接合部40の剥離が防止される(確率が高くなる)。
【0035】
このように、本発明の第1の実施形態に係る車体側部構造10では、センタピラー12のセンタピラーアウタリインフォースメント28に荷重が入力された場合に、ロッカアウタリインフォースメント32とロッカインナパネル30との接合部に作用する剥離荷重fを緩和することができる。
【0036】
これにより、車体側部構造10では、センタピラー12への側面衝突の際に第1接合部40の剥離を防止することができるので、換言すればロッカ14の閉断面C2が維持されるので、センタピラー12の車幅方向内向きへの変形(量)が抑制される。したがって、車体側部構造10では、ロッカ14を構成する鋼板の薄肉化による自動車11の軽量化と、該自動車11の側面衝突に対する所要の強度の確保とを両立することができる。すなわち、車体側部構造10では、比較例に係る車体側部構造100に要求される板厚tよりも小さい板厚でロッカ14を構成しつつ、該車体側部構造100と同等以上の側面衝突に対する強度を確保することができる。
【0037】
なお、上記した第1の実施形態では、ロッカアウタリインフォースメント32の外側壁32Cに段差形状の応力低減ビード45が形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図5(A)に示される如く外側壁32Cに凹状に形成された応力低減ビード46を応力低減ビード45に代えて設けた構成としても良く、また例えば図5(B)に示される如く凸状に形成された応力低減ビード48を応力低減ビード45に代えて設けた構成としても良い。図示は省略するが、複数の応力低減ビード45、応力低減ビード46、又は応力低減ビード48を側面衝突による展開方向(センタピラー12の長手方向)に並列して設けた構成としても良く、また応力低減ビード46、48を側面衝突による展開方向交互に設けた構成としても良い。
【0038】
また例えば、図5(C)に示される如く、ロッカ14内にねじれ防止(抑制)用のバルクヘッド50が設けられた構成において応力低減ビード45を設けても良い。この場合、応力低減ビード45による外側壁32Cの立ち上がり部(車両上下方向における外側壁32Cの上部)とバルクヘッド50との間に隙Gを設定することで、該応力低減ビード45の変形(伸び)が許容される構成とすることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る車体構造としての車体側部構造60について、図6及び図7に基づいて説明する。なお、上記した第1の実施形態と基本的に同一の部品、部分については、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図7には、車体側部構造60が適用された自動車11の一部が車室内側から見た模式的な側面図にて示されており、図6には、図7の6−6線に沿った断面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体側部構造60は、自動車11におけるルーフサイドレール16とセンタピラー12との接合部分に適用されている。
【0041】
ルーフサイドレール16は、車幅方向外向きに開口する断面ハット形状のルーフサイドレールインナ62と、車幅方向内向きに開口する断面ハット形状のルーフサイドレールアウタ64とが接合されて形成された閉断面C3を有する骨格部とされている。具体的には、ルーフサイドレールインナ62とルーフサイドレールアウタ64とは、それぞれの上フランジ62A、64A、下フランジ62B、64Bが互いに接合されている。
【0042】
さらに、この実施形態では、上フランジ62A、64Aには、サイメンアウタ38の上端部に形成された上フランジ38B、ルーフパネル66の車幅方向外端に形成された外フランジ66Aが重ね合わされており、これら計4枚のフランジ62A、64A、38B、66Aが重ね合わせ状態でスポット溶接にて接合されている。これのうち、上フランジ62A、64Aの接合部位が本発明における接合部としての第1接合部68とされている。
【0043】
なお、車体側部構造60が適用された自動車11では、ルーフパネル66の下方に配置されたルーフリインフォースメント70の車幅方向外端70Aと、センタピラーインナパネル26の上端部26Bとが、ガセット72を介して連結されている。
【0044】
また、車体側部構造60では、センタピラーアウタリインフォースメント28は、その上端部28Bが、ルーフサイドレールアウタ64の上下のフランジ64A、64Bに対し車幅方向外側(車両上下方向の上側)に突出した外側壁64Cにスポット溶接にて接合されている。この接合部位は、本発明における結合部としての第2接合部74とされている。したがって、この実施形態に係る車体側部構造60では、第2接合部74は、第1接合部68に対し車幅方向外側(ルーフサイドレールアウタ64の上フランジ64A、ルーフサイドレールインナ62の上フランジ62Aの重ね合わせ方向)にオフセットして配置されている。また、この実施形態では、第2接合部74は、第1接合部68に対し車両上下方向の上側にもオフセットして配置されている。
【0045】
以上により、この実施形態では、ルーフサイドレールアウタ64が本発明における第1部材、ルーフサイドレールインナ62が本発明における第2部材、センタピラーアウタリインフォースメント28が本発明における第3部材であると捉えることができる。
【0046】
さらに、この実施形態では、図7に示される如く、センタピラーアウタリインフォースメント28の上端部28Bは、センタピラー12における車両前後方向の端部に対し該車両前後方向の両側に張り出されている。すなわち、センタピラーアウタリインフォースメント28の上部は、側面視で略T字状を成している。
【0047】
そして、車体側部構造60は、本発明における剥離荷重低減部(応力低減部)、伸び代部としての応力低減ビード75を備えている。応力低減ビード75は、ルーフサイドレールアウタ64の外側壁64Cにおける第2接合部74に対する上側部分が、該ルーフサイドレールアウタ64を構成する板材の展開可能に折り曲げられて形成されている。この実施形態では、応力低減ビード75は、外側壁64Cにおける下部が上部に対し車幅方向外側(車両上下方向の上側)にオフセットして位置するように、該外側壁64Cを上下2箇所で折り曲げることで形成されている。
【0048】
この応力低減ビード75は、図1に示される如く、ルーフサイドレールアウタ64の外側壁64Cにおける第2接合部75の車両前後方向の全範囲(センタピラーアウタリインフォースメント28の上端部28Bの車両前後方向における長さの範囲)R2を少なくとも含む範囲に形成されている。
【0049】
以上により、応力低減ビード75は、センタピラーアウタリインフォースメント28の長手方向(面方向)に沿った方向において、ルーフサイドレールアウタ64における第2接合部74(下フランジ64B)と、第2接合部74(外側壁64Cの上部)との間に配置されているものと捉えることができる。また、応力低減ビード75は、第1接合部40に対し、車幅方向外側(ルーフサイドレールインナ62、ルーフサイドレールアウタ64下フランジ62B、64Bの重ね合わせ方向)にオフセットして配置されているものと捉えることができる。
【0050】
また、車体側部構造60(が適用された自動車11)では、ルーフサイドレール16を構成するルーフサイドレールインナ62、ルーフサイドレールアウタ64は、それぞれ高張力鋼板にて構成されている。この実施形態では、ルーフサイドレールインナ62、ルーフサイドレールアウタ64は、引張強さが980MPaである超高張力鋼板にて構成されている。
【0051】
次に、第2の実施形態の作用を説明する。
【0052】
上記構成の車体側部構造60では、例えば自動車11の側面衝突によってセンタピラー12に車幅方向内向きの衝突荷重が入力されると、該センタピラー12の車両上下方向の中間部が車幅方向内向きに変位(センタピラー12が曲げ変形)されるのに伴い、ルーフサイドレール16がねじられることになる。これにより、第1接合部68には、第1の実施形態に係る車体側部構造10の第1接合部40の場合と同様に、剥離荷重f(図時省略)が作用することとなる。
【0053】
ここで、車体側部構造60では、ルーフサイドレールアウタ64における第1接合部68と第2接合部74との間に応力低減ビード75が形成されているので、センタピラー12の上記した変形により外側壁64Cが上下方向(センタピラーアウタリインフォースメント28の長手方向)すなわち第2接合部74のせん断方向に引張られると、応力低減ビード75が上記引張方向に伸びる(展開される)ことで、第1接合部68に作用する剥離荷重が緩和される。これにより、車体側部構造60では、第1接合部68の剥離が防止される(確率が高くなる)。
【0054】
このように、本発明の第2の実施形態に係る車体側部構造60では、センタピラー12のセンタピラーアウタリインフォースメント28に荷重が入力された場合に、ルーフサイドレールアウタ64とルーフサイドレールインナ62との接合部に作用する剥離荷重fを緩和することができる。
【0055】
これにより、車体側部構造60では、センタピラー12への側面衝突の際に第1接合部68の剥離を防止することができるので、換言すればルーフサイドレール16の閉断面C2が維持されるので、センタピラー12の車幅方向内向きへの変形(量)が抑制される。したがって、車体側部構造60では、ルーフサイドレール16を構成する鋼板の薄肉化による自動車11の軽量化と、該自動車11の側面衝突に対する所要の強度の確保とを両立することができる。すなわち、車体側部構造60では、比較例に係る車体側部構造100に要求される板厚tよりも小さい板厚でルーフサイドレール16を構成しつつ、該車体側部構造100と同等以上の側面衝突に対する強度を確保することができる。
【0056】
なお、上記した第2の実施形態では、外側壁64Cに段差形状の応力低減ビード75が形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、凹状に形成された応力低減ビードや凸状に形成された応力低減ビードを応力低減ビード75に代えて設けた構成としても良い。また、図示は省略するが、複数の応力低減ビード75、又は凹状や凸状の応力低減ビードを側面衝突による展開方向(センタピラー12の長手方向)に並列して設けた構成としても良く、また凹状、凸状の応力低減ビードを外側壁64Cの側面衝突による展開方向に交互に設けた構成としても良い。
【0057】
また例えば、ルーフサイドレール16内にねじれ防止(抑制)用の図示しないバルクヘッドが設けられた構成において応力低減ビード75を設けても良い。この場合、応力低減ビード75による外側壁64Cの隆起部(車両上下方向における外側壁64Cの上部)とバルクヘッド50との間に隙を設定することで、該応力低減ビード75の変形(伸び)が許容される構成とすることができる。
【0058】
さらに、上記した各実施形態では、衝突荷重の一入力部であるセンタピラー12に対するロッカ14、ルーフサイドレール16の接合部分に本発明が適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、第3部材への荷重入力によって第1部材と第2部材との接合部に剥離荷重が作用するあらゆる部位に本発明を適用することが可能である。また、本発明における接合部は、スポット溶接による接合部には限られず、例えば、CFRP等の繊維強化樹脂にて構成された車体における接合部として接着による接合部を有する車両に本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体側部構造を示す図であって、図2の1−1線に沿った断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車体側部構造が適用された車両を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車体側部構造の要部を示す図であって、(A)は側突前の形状を示す正面断面図、(B)は側突後の形状を示す正面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車体側部構造のロッカを構成する高張力鋼の母材強度と剥離強度との関係を示す線図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車体側部構造の変形例を示す図であって、(A)は応力低減ビードの第1変形例を示す正面断面図、(B)は応力低減ビードの第2変形例を示す正面断面図、(C)はロッカにバルクヘッドを設けた変形例を示す正面断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る車体側部構造を示す図であって、図7の6−6線に沿った断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車体側部構造が適用された車両を模式的に示す側面図である。
【図8】本発明の実施形態との比較例に係る車体側部構造を示す図であって、(A)は側突前の形状を示す正面断面図、(B)は側突後の形状を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 車体側部構造(車体構造)
14 ロッカ(車体骨格)
16 ルーフサイドレール(車体骨格)
28 センタピラーアウタリインフォースメント(第3部材)
30 ロッカインナパネル(第2部材)
32 ロッカアウタリインフォースメント(第1部材)
32C 外側壁(オフセット部)
40 第1接合部(接合部)
44 第2接合部(結合部)
45・46・48 応力低減ビード(剥離荷重低減部、伸び代部)
60 車体側部構造(車体構造)
62 ルーフサイドレールインナ(第2部材)
64 ルーフサイドレールアウタ(第1部材)
64C 外側壁(オフセット部)
68 第1接合部(接合部)
74 第2接合部(結合部)
75 応力低減ビード(剥離荷重低減部、伸び代部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とが重ね合わせ状態で接合された接合部と、
第3部材が外力を受けた場合に前記接合部に剥離方向の荷重が作用するように、該第3部材が前記第1部材に結合された結合部と、
前記第1部材における前記結合部と前記接合部との間に設けられ、前記第3部材が外力を受けた場合に変形して前記接合部に作用する前記剥離方向の荷重を緩和するための剥離荷重低減部と、
を有する車体構造。
【請求項2】
前記第1部材は、前記第2部材に対し車体外側に配置されると共に、該第2部材とで閉断面構造の車体骨格を構成しており、
前記第3部材は、長手方向の一端が前記結合部において前記第1部材に結合されており、
前記剥離荷重低減部は、前記第3部材に車体外側から外力が作用した場合に前記第1部材を前記第3部材の長手方向に伸長させ得る伸び代部として形成されている請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
板状の第1部材と第2部材とが重ね合わせ状態で接合された接合部と、
前記第1部材における前記接合部に対し前記第2部材との前記重ね合わせ方向にオフセットしたオフセット部に、第3部材の長手方向の一部が結合された結合部と、
前記第1部材の前記オフセット部における前記結合部に対する前記接合部側の部分を、前記第3部材の長手方向に展開可能に折り曲げて形成された伸び代部と、
を有する車体構造。
【請求項4】
前記第1部材と第2部材とは、共に高張力鋼板より成り、前記接合部においてスポット溶接にて接合されている請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−286268(P2009−286268A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141016(P2008−141016)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】