説明

車室の視認部構造

【課題】操作パネル等の視認部の視認性を向上させることができて自動車の商品価値を高めるデザインを形成することができ、製作コストを低廉化することができる車室の視認部構造を提供する。
【解決手段】インストルメントパネルに設けられた視認部10が黒色系の色に着色され、視認部10に隣接する隣接部20が白色系の色に着色され、視認部10の周部に、隣接部20側にはみ出すはみ出し部11が設けられて、はみ出し部11が、はみ出し方向下手側と、はみ出し方向に直交する方向の両側との3方向から隣接部20に囲まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車室の視認部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車室内外の設備の充実に伴い、インストルメントパネルの視認部としての操作パネルに設けられたスイッチやパネルの数が増大してきていることから、乗員にとっては、操作すべきスイッチ等がどこにあるのかわかりにくくなってきている。また、インストルメントパネルの設計時には増大するスイッチ等のレイアウトスペースの確保が優先され、その自動車の商品価値の向上につながるスイッチ等を強調するデザインやパネル形状に特徴をつけて強調するデザインを形成しにくくなっていて、デザインの幅が狭められてきている。
スイッチ等を強調するデザインを形成する手段として、従来、特許文献1に開示されているように、塗膜層を備えた加飾パネルを操作パネルの幅方向両側に配設し、加飾パネルの模様の浮き出しなどで操作パネルに立体感を出させる手段があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−145237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、塗膜層を備えた加飾パネルの製作に多くのコストがかかっていた。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、操作パネル等の視認部の視認性を向上させることができて自動車の商品価値を高めるデザインを形成することができ、製作コストを低廉化することができる車室の視認部構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
インストルメントパネルに設けられた視認部が黒色系の色に着色され、
前記視認部に隣接する隣接部が白色系の色に着色され、
前記視認部の周部に、前記隣接部側にはみ出すはみ出し部が設けられて、前記はみ出し部が、はみ出し方向下手側と、前記はみ出し方向に直交する方向の両側との3方向から前記隣接部に囲まれている点にある。(請求項1)
【0006】
白色系の色に着色された前記隣接部に前記はみ出し部がはみ出して前記3方向から囲まれていると、黒色系の色のはみ出し部が白色系の色の隣接部に乗っているように見え、更に白色系の色の内の黒色系の色は強調されることで、黒色系の色のはみ出し部が白色系の色の隣接部から浮いているように立体的に見せることができる。そして、黒色系の色のはみ出し部と白色系の色の隣接部の合わせ部に起きる隙間が広がるなどの外観不良を目立ちにくくすることができる。
前記視認部は形状が大きいほど強調されるが、色調が黒色系の色だけであると形状が大きい場合、輸郭がぼやけて見えてしまう。これに対して、本発明の上記構成のように、はみ出し部を黒色系の色とし、隣接部を白色系の色とすると、明暗のはっきりとした違いから色調が引き締まり、はみ出し部の形状がはっきりと見える。
これにより、他のインストルメントパネルの部分と比べてデザイン上強調したいインストルメントパネルの前記視認部の視認性を向上させ、強調することができる。
また、上記の効果を得るのに、視認部を黒色系の色に、隣接部を白色系の色にそれぞれ着色し、前記はみ出し部を隣接部側にはみ出させるだけでよいから、例えば、加飾パネルの模様の浮き出しなどで視認部に立体感を出す効果を得る手段に比べると、車室の視認部構造を安価に構成することができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記はみ出し方向に直交する方向の前記はみ出し部の両側のコーナー部が角形に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
色調の違う部分がよりシャープになり、視認部の立体感を鮮明に引き立たせることができる。色調に形状のシャープさが追加されることにより、視認部の浮き出ている様子が明確に見えてくるからである。
また、黒色系の色の視認部と白色系の色の隣接部の境界を精度良く出すことができ、外観不良を防止することができる。
例えば、前記はみ出し方向に直交する方向のはみ出し部の両側のコーナー部が丸みを帯びていると、乗員が押すなどで発生する変形により、黒色系の色のはみ出し部と白色系の色の隣接部の合わせ部の隙間が不均一に広がり、一部分だけに隙間が広いなどの外観不良が目立ちやすい。しかし、本発明の上記構成によれば、前記はみ出し方向に直交する方向のはみ出し部の両側のコーナー部が角形に形成されているので、例え、部品変形が起きたとしても、合わせ部が均一に広がって外観不良を目立ちにくくさせやすい。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記視認部の視認面は前記隣接部よりも車室内側に位置していると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
黒色系の色の視認部の影が白色系の色の隣接部の上に映し出されることになり、乗員が見た時の奥行き感が視認部に生まれ、視認部をより立体的に浮き出ているように見せることができて強調することができる。また、黒色系の色の視認部が白色系の色の隣接部とフロントウインドウの間に入り込むことで壁の役割を果たし、白色系の色の隣接部がフロントウインドウに映り込むことを防止することができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記視認部は操作パネル、前記隣接部は前記操作パネルの下端部と幅方向両側部を囲む枠部材であると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
操作パネルにはハザードランプスイッチなど使用頻度が高い操作スイッチが配置されることが多い。本発明の上記構成によれば、操作パネルだけに限らず、操作パネルに配置される操作スイッチも強調されて目立つので、スイッチ類を操作パネルに積極的に配置することで、操作スイッチで連動する機能の使い勝手を高めることができる。(請求項4)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、
操作パネル等の視認部の視認性を向上させることができて自動車の商品価値を高めるデザインを形成することができ、製作コストを低廉化することができる車室の視認部構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】自動車のインストルメントパネルの斜視図
【図2】操作パネルの正面図
【図3】操作パネルと枠部材の分解斜視図
【図4】操作パネルの下端部と枠部材の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動車のインストルメントパネル1の車幅方向中央部にオーディオ機器や空調機器を操作する操作パネル10(視認部に相当)が設けられ、操作パネル10に各種の装置類を操作する多数のスイッチが設けられている。操作パネル10の下端部の幅方向中央部には、前記多数のスイッチのうちのハザードランプスイッチ12が配置されている。
【0016】
図2,図3にも示すように、操作パネル10は、上端部10Jが車幅方向両側に張り出してT字状に形成されている。そして、張り出した左右一対の上端部10Jの下方に、HVAC(空気調整機)から送風される空気を車室内に吹き出すルーバー30がそれぞれ配置されている。
【0017】
操作パネル10の周部は、操作パネル10の裏面10U(図4参照)側に張り出す周壁10Sに構成され、上端部10J以外の操作パネル部分の幅方向両側の周壁10S(両側壁)は意匠面10M側(車室内側、図4参照)ほど互いの間隔が短くなるように傾斜している。操作パネル10の左右に張り出した上端部10Jの下側の周壁10Sは意匠面10M側ほど上方に位置するように傾斜している。
【0018】
そして、操作パネル10の上端部10Jの左右両端部と左右一対のルーバー30と操作パネル10の下端部とを囲む枠部材20(隣接部材に相当)がインストルメントパネル1に取り付けられている。枠部材20は下方に凸の緩やかな円弧状の下側枠部21と、下側枠部21の左端部から上方に延びる左側枠部22Lと、下側枠部21の右端部から上方に延びる右側枠部22Rとから成る。左側枠部22Lの上端部と右側枠部22Rの上端部とは、操作パネル10の上端部10Jの左右両端部に設けられた周壁10Sに下側から当接している。
【0019】
前記操作パネル10は黒色(黒色系の別の色であってもよい)に着色され、操作パネル10に隣接する枠部材20は白色(白色系の別の色にであってもよい)に着色されている。そして、操作パネル10の下端部(操作パネル10の周部に相当)に、枠部材20の下側枠部21側にはみ出すはみ出し部11が設けられて、はみ出し部11が、はみ出し方向下手側(下方)と、幅方向(はみ出し方向に直交する方向、車幅方向)の両側との3方向から枠部材20に囲まれている。
【0020】
はみ出し部11は操作パネル10の上端部10J以外の部分の下端部の全幅にわたって形成されている。前記はみ出し部11の幅方向両側のコーナー部11A,11Bは角形に形成されている。
【0021】
図4に示すように、操作パネル10の意匠面10M(視認面に相当)は枠部材20の意匠面20Mよりも長さLだけ車室内側に位置している。また、枠部材20の下側枠部21の上端部21Jは上側ほど車両前方側Frに位置するように前上がりに直線状に延びている。この前上がりに傾斜した下側枠部21の上端部21Jに操作パネル10のはみ出し部11が後ろ上方(車両後方側Rrの上方)から間隔を空けて重なり、枠部材20の下側枠部21の意匠面20Mが、操作パネル10のはみ出し部11の裏面10Uよりも車室内側に位置している。
【0022】
例えば、枠部材20の下側枠部21の意匠面20Mが操作パネル10のはみ出し部11の裏面10Uよりも車両前方側Frに位置する状態に、前記はみ出し部11が前記下側枠部21側にはみ出していると、はみ出し部11と下側枠部21の上端部21Jとの間から異物が操作パネル10の裏側に侵入しやすい。
しかしながら、本発明の上記構成によれば、前上がりに傾斜した下側枠部21の上端部21Jに操作パネル10のはみ出し部11が後ろ上方から重なっており、枠部材20の下側枠部21の意匠面20Mが操作パネル10のはみ出し部11の裏面10Uよりも車室内側に位置するから、はみ出し部11と下側枠部21の上端部21Jとの間から異物が操作パネル10の裏側に侵入することを防止することができる。
【0023】
前記はみ出し部11の下端部は縦断面円弧状に形成され、下端面の後部11Nが枠部材20の下側枠部21の上面に対して間隔を空けて沿うように前上がりに傾斜している。
【0024】
本発明によれば、
(1) 白色系の色に着色された枠部材20に前記はみ出し部11がはみ出して前記3方向から囲まれているから、黒色系の色のはみ出し部11が白色系の色の枠部材20に乗っているように見え、更に白色系の色の内の黒色系の色は強調されることで、黒色系の色のはみ出し部11が白色系の色の枠部材20から浮いているように立体的に見せることができる。そして、黒色系の色のはみ出し部11と白色系の色の枠部材20の合わせ部に起きる隙間が広がるなどの外観不良を目立ちにくくすることができる。
また、前記操作パネル10は形状が大きいほど強調されるが、色調が黒色系の色だけであると形状が大きい場合、輸郭がぼやけて見えてしまう。これに対して、本発明の上記構成のように、はみ出し部11を黒色系の色とし、枠部材20を白色系の色とすると、明暗のはっきりとした違いから色調が引き締まり、はみ出し部11の形状がはっきりと見える。
これにより、他のインストルメントパネル1の部分と比べてデザイン上強調したいインストルメントパネル1の操作パネル10の視認性を向上させ、強調することができる。
また、上記の効果を得るのに、操作パネル10を黒色系の色に、枠部材20を白色系の色にそれぞれ着色し、前記はみ出し部11を枠部材20側にはみ出させるだけでよいから、例えば、加飾パネルの模様の浮き出しなどで操作パネル10に立体感を出す効果を得る手段に比べると、操作パネル構造を安価に構成することができる。
【0025】
(2) 前記はみ出し方向に直交する方向の前記はみ出し部11の両側のコーナー部11A,11Bが角形に形成されているから、色調の違う部分がよりシャープになり、操作パネル10の立体感を鮮明に引き立たせることができる。色調に形状のシャープさが追加されることにより、はみ出し部11の浮き出ている様子が明確に見えてくるからである。
また、黒色系の色のはみ出し部11と白色系の色の枠部材20の境界を精度良く出すことができ、外観不良を防止することができる。
例えば、前記はみ出し方向に直交する方向のはみ出し部11の両側のコーナー部が丸みを帯びていると、黒色系の色のはみ出し部11と白色系の色の枠部材20の合わせ部の一部分だけに隙間が広いなどの外観不良が目立ちやすいが、本発明の上記構成によれば、前記はみ出し方向に直交する方向のはみ出し部11の両側のコーナー部11A,11Bが角形に形成されているので、合わせ部が均一に広がって外観不良を目立ちにくくさせやすい。
【0026】
(3) 前記操作パネル10の意匠面10Mは枠部材20よりも車室内側に位置しているから、黒色系の色の操作パネル10の影が白色系の色の枠部材20の上に映し出されることになり、乗員が見た時の奥行き感が操作パネル10に生まれ、操作パネル10をより立体的に浮き出ているように見せることができて、操作パネル10を強調することができる。
また、黒色系の色の操作パネル10が白色系の色の枠部材20とフロントウインドウの間に入り込むことで壁の役割を果たし、白色系の色の枠部材20がフロントウインドウに映り込むことを防止することができる。
【0027】
(4) 本発明の上記構成によれば、操作パネル10だけに限らず、操作パネル10に配置される操作スイッチ(特に、はみ出し部11に近いハザードランプスイッチ12)も強調されて目立つので、乗員の操作スイッチの押し間違いを防止することができる。
このように、スイッチ類を操作パネル10に積極的に配置することで、操作スイッチで連動する機能の使い勝手を高めることができる。
【0028】
[別実施形態]
(1) 前記視認部は操作パネル以外の部品であってもよい。
(2) 前記視認部と隣接部とが同一部材で一体に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 インストルメントパネル
10 視認部(操作パネル)
10M 視認面(意匠面)
11 はみ出し部
11A,11B コーナー部
20 隣接部(枠部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに設けられた視認部が黒色系の色に着色され、
前記視認部に隣接する隣接部が白色系の色に着色され、
前記視認部の周部に、前記隣接部側にはみ出すはみ出し部が設けられて、前記はみ出し部が、はみ出し方向下手側と、前記はみ出し方向に直交する方向の両側との3方向から前記隣接部に囲まれている車室の視認部構造。
【請求項2】
前記はみ出し方向に直交する方向の前記はみ出し部の両側のコーナー部が角形に形成されている請求項1記載の車室の視認部構造。
【請求項3】
前記視認部の視認面は前記隣接部よりも車室内側に位置している請求項1又は2記載の車室の視認部構造。
【請求項4】
前記視認部は操作パネル、前記隣接部は前記操作パネルの下端部と幅方向両側部を囲む枠部材である請求項1〜3のいずれか一つに記載の車室の視認部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−250593(P2012−250593A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123687(P2011−123687)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】