説明

車載エンジン制御装置

【課題】特性バラツキを補正するために排気ガスセンサに設けられたラベル抵抗の抵抗値を少ない配線本数で正確に測定する車載エンジン制御装置を得る。
【解決手段】車載バッテリ101から第1の電源線141を介して給電される車載エンジン制御装置100Aに、第2の電源線142Aから給電される排気ガスセンサ105Aの電熱ヒータ107、ラベル抵抗106および空燃比測定素子105a、105bが接続される。車載エンジン制御装置100Aの給電電圧VB1は、分圧抵抗113a、113bを介して多チャンネルAD変換器124に入力され、ラベル抵抗106の正端電位VB2が代替測定される。ラベル抵抗106の負端電位は、固定抵抗116との分圧電圧として多チャンネルAD変換器124に入力される。ラベル抵抗値は、固定抵抗116の電流とラベル抵抗106の両端電圧とからマイクロプロセッサ120により算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載エンジンの空燃比(吸気量対燃料噴射量)を適正に制御するために使用される排気ガスセンサの空燃比検出精度を向上させる車載エンジン制御装置に関し、特に排気ガスセンサの固体バラツキ変動を補正するための改良された車載エンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載エンジン制御装置においては、空燃比(吸気量を測定または推定する吸気量センサで検出された吸気量と、燃料噴射期間によって決定される給燃量との比率)を適正値に負帰還制御するための排気ガスセンサとして、酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子とを組み合わせたLAFS(Linear Air/Fuel Sensor)が使用されている。
【0003】
また、この種の排気ガスセンサを用いた車載エンジン制御装置においては、排気ガスセンサの空燃比検出特性の固体バラツキ変動に起因した制御精度の悪化を防止するために、様々な方法が適用されている。
【0004】
たとえば、従来の車載エンジン制御装置の一例として、ガスセンサ、ガスセンサのコネクタ、およびガス濃度検出装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の従来装置においては、被測定ガス中の酸素濃度に応じた第1ポンプ電流と、同じくNOx濃度に応じた第2ポンプ電流とが流れるセンサ本体の一端に、ケーブルを介してコネクタが接続されている。
【0005】
また、コネクタには、センサ本体への信号を入出力するための端子以外に、センサ本体の特性(酸素濃度と第1ポンプ電流との関係、および、NOx濃度と第2ポンプ電流との関係)に応じた抵抗値を有するラベル抵抗と、ラベル抵抗の両端に接続されたラベル信号出力端子とが設けられている。
【0006】
上記構成において、ラベル抵抗の抵抗値を、端子を介して識別することにより、センサ本体の特性を特定し、特定されるセンサ本体の特性に基づいて、第1、第2ポンプ電流の検出値から酸素濃度、NOx濃度を高精度に求めている。
【0007】
一方、他の従来装置として、内燃機関の排気管に設けられ排気ガスの空燃比をリニアに測定するリニア空燃比センサと、リニア空燃比センサの出力値に応じて内燃機関の空燃比を補正する空燃比制御手段と、リニア空燃比センサの出力特性と基準値との誤差に対応したリニア空燃比センサの誤差量を補正するための補正抵抗とを備えた内燃機関の制御装置が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2に記載の従来装置によれば、リニア空燃比センサの出力特性を補正することにより、リニア空燃比センサの補正方式を統一できることから、リニア空燃比センサの種類が減り、扱い数量を増やすことができるので、コスト低減を図ることができる。
また、誤差補正値の読み取りを初期化の際に行うことにより、誤った組み合わせでセンサに大きなダメージを与える可能性がなく、センサと制御回路との組み合わせの自由度を増やすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−281617号公報(図2、図4、段落0044、0054)
【特許文献2】特開2002−256935号公報(図2、図25、段落0030、0031)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の従来技術には、以下のような課題があった。
すなわち、特許文献1に記載のガス濃度検出装置によれば、検出装置側でラベル抵抗の抵抗値を検出し、ソフトウエア手段によって多段階の補正を可能にしているものの、排気ガスに含まれる酸素濃度とNOx濃度とを高精度に検出するために、ガスセンサの固体バラツキ変動を補正するためのラベル抵抗の両端を、コネクタを介して検出装置に接続しているので、コネクタの端子数と配線本数とが増加するという課題があった。
【0011】
一方、特許文献2に記載の内燃機関の制御装置によれば、エンジン制御ユニット内のハードウエア手段によって検出信号出力の補正を可能とし、信号配線の本数を1回線のみの増加に抑制しているものの、排気ガスに含まれる酸素濃度とNOx濃度とを高精度に検出するために、ガスセンサの固体バラツキ変動を補正するための補正抵抗をセンサ内部に設け、かつエンジン制御ユニット内の基準抵抗に対して補正抵抗を並列接続しているので、高抵抗のセンサ回路に直接接続された信号回線が(たとえ1回線といえども)増加することにより、ノイズ誤動作の可能性が増加するという課題があった。また、補正抵抗の接続配線が断線・短絡した際には、排気ガスセンサ自体が正常であるにも関わらず、検出特性が異常になるという課題があった。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、排気ガスセンサと車載エンジン制御装置との間の信号配線の増加を最小限に抑制するとともに、追加された1つの信号回線が排気ガスセンサのセンサ回路部に直接接続されないように構成することにより、ノイズ誤動作の可能性を回避して、排気ガスセンサの固体バラツキ変動を補正することができる車載エンジン制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明による車載エンジン制御装置は、空燃比を測定するための排気ガスセンサと、車載エンジンの運転状態を監視するための少なくとも吸気量を測定または推定する吸気量センサを含むセンサ群との動作状態に応動し、電源スイッチが投入されているときに車載バッテリから第1の電源線を介して給電されて、燃料噴射用電磁弁を含むエンジン駆動用の電気負荷群を制御する車載エンジン制御装置であって、排気ガスセンサは、空燃比測定素子の特性バラツキに対する補正係数を選択するための指標となるラベル抵抗と、この排気ガスセンサの温度を早期に活性化温度にするための電熱ヒータと、を備えている。
【0014】
ラベル抵抗の一端と電熱ヒータの一端とが接続された正端子は、第2の電源線を介して車載バッテリに接続され、ラベル抵抗の負端と電熱ヒータの負端とは、それぞれ個別の配線によって車載エンジン制御装置に接続されている。
ラベル抵抗の抵抗値は、多段階に変化する数値列の中の1つを基準として、所定の誤差範囲にあるものが数値列の中から選択使用される。
【0015】
車載エンジン制御装置は、互いに協働するマイクロプロセッサ、不揮発プログラムメモリ、RAMメモリ、不揮発データメモリ、多チャンネルAD変換器を含むとともに、ラベル抵抗の正端電位測定回路と、このラベル抵抗の負端に直列接続された既知の固定抵抗の両端電圧を測定する負端電位測定回路とを、さらに備えている。
【0016】
不揮発プログラムメモリは、ラベル抵抗判別手段を構成する制御プログラムと、排気ガスセンサの検出信号出力対空燃比の標準特性に関するデータテーブルまたは近似算式、並びに判別されたラベル抵抗に対応した補正係数Kの値に関するデータテーブルまたは近似算式である変換データとを、さらに備えている。
【0017】
正端電位測定回路は、車載バッテリの負端子が接続された車体電位を基準として、ラベル抵抗の正端子に印加された車載バッテリからの給電電圧を推定するために、第1の電源線または第2の電源線から給電される第1または第2の給電電圧を分圧して多チャンネルAD変換器に入力する分圧抵抗によって構成される。
負端電位測定回路は、固定抵抗の両端電圧を多チャンネルAD変換器に入力する回路である。
【0018】
ラベル抵抗判別手段は、多チャンネルAD変換器を介してマイクロプロセッサに入力された固定抵抗の両端電圧を既知の固定抵抗値で除算してラベル抵抗の通電電流を算出し、ラベル抵抗の正端電位から負端電位を減算して得られるラベル抵抗の両端電圧を通電電流で除算してラベル抵抗の抵抗値を算出し、算出された抵抗値が、変換データとして格納されたどの順位のラベル抵抗であるかを特定する。
マイクロプロセッサは、排気ガスセンサの検出信号出力の値と、ラベル抵抗の抵抗値と、変換データの値とに応動して、所定の空燃比が得られるように、燃料噴射量の制御を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、排気ガスセンサによる空燃比の検出信号出力に応動して燃料噴射量を制御する車載エンジン制御装置において、排気ガスセンサの空燃比の検出信号出力の固体バラツキ変動を補正するための補正係数が、排気ガスセンサに付属されたラベル抵抗の抵抗値によって選択され、しかもラベル抵抗の一端は電熱ヒータの正端子に接続されているので、ラベル抵抗の両端を独立配線する場合に比べて、排気ガスセンサのコネクタのピン数や配線本数が削減され、ラベル抵抗によって選択された補正係数によって個別の排気ガスセンサの出力特性が正確に補正されるという効果がある。
【0020】
また、ラベル抵抗が空燃比検出素子に接続されていないので、空燃比検出特性に影響を与えることがなく、ノイズ誤動作の影響を軽減することができる効果がある。
さらに、ラベル抵抗の抵抗値は、ラベル抵抗の正端電位と負端電位とを測定して既知抵抗の抵抗値を用いて算出されるとともに、適用されるラベル抵抗の抵抗値は、多段階の数値列の中の1つを基準として、所定の誤差範囲にあるものが使用されるので、ラベル抵抗の抵抗値が環境温度によって変化しても、また電源線の電圧変動が発生しても、所定の変動幅以内のものであれば、適用される補正係数を正確に特定することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車載エンジン制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1における排気ガスセンサの出力特性を示す説明図である。
【図3】図1の装置による測定動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1の装置による排気ガスセンサの変換データ表を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る車載エンジン制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図6】図5の装置による測定動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】図6内の一部動作を詳細に説明するためのフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態3に係る車載エンジン制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図9】図8の装置による排気ガスセンサの変換データ表を示す説明図である。
【図10】図8の装置による測定動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態3の他の構成例による測定動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の好適な実施の形態について説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係る車載エンジン制御装置の全体構成を示すブロック図である。
図1において、電子制御ユニットからなる車載エンジン制御装置100Aは、マイクロプロセッサ(CPU)120Aを主体として構成されており、車載バッテリ101からの給電電圧VB0により動作する。
【0023】
まず、車載エンジン制御装置100Aの外部に接続される回路要素として、車載バッテリ101の正極端子に接続された電源スイッチ102、第1および第2の電源リレー103、104と、第1の電源リレー103に接続された排気ガスセンサ105Aと、第2の電源リレー104に接続された電気負荷群108(以下、単に「電気負荷108」という)とを備えている。
【0024】
第1の電源リレー103は、出力接点103aと励磁コイル103bとを備えており、励磁コイル103bは、電源スイッチ102が閉路(ON)したことによって付勢される。
出力接点103aは、励磁コイル103bが付勢されたことにより閉路して、出力接点103aから第1の電源線141を介して車載エンジン制御装置100Aに給電する。
【0025】
第2の電源リレー104は、出力接点104aと励磁コイル104bとを備えており、励磁コイル104bは、マイクロプロセッサ120Aの指令信号(負荷電源投入指令信号)DR4に基づいて付勢される。
出力接点104aは、励磁コイル104bが付勢されたことにより閉路して、電気負荷108に給電する。
【0026】
排気ガスセンサ105Aは、酸素濃淡電池素子105aと、酸素ポンプ素子105bと、ラベル抵抗106と、電熱ヒータ107とを備えており、酸素濃淡電池素子105aおよび酸素ポンプ素子105bは、空燃比測定素子を構成している。
【0027】
ラベル抵抗106は、空燃比測定素子(空燃比測定素子105a、105b)の特性バラツキを補正するために設けられている。
電熱ヒータ107は、排気ガスセンサ105Aの温度を速やかに所定の活性温度にするために設けられている。
【0028】
ラベル抵抗106の正端子と電熱ヒータ107の正端子とは、互いに接続されて、第2の電源線142Aを介して第1の電源リレー103の出力接点103aから給電される。
【0029】
電気負荷108は、少なくとも燃料噴射用電磁弁を含むとともに、その他の点火コイル(ガソリンエンジンの場合)や吸気弁開度制御用モータなど、エンジンの駆動に必要とされる複数のアクチュエータを含み、マイクロプロセッサ120Aの複数の指令信号(電気負荷駆動指令信号)DRjによって駆動制御される。
【0030】
また、センサ群130(以下、単に「センサ130」という)は、エンジンの運転状態を監視するために設けられており、センサ130の検出信号は、入力インタフェース回路(図示せず)を介して、マイクロプロセッサ120Aに入力されている。
【0031】
センサ130は、少なくとも吸気量を測定(または、推定)する吸気量センサを含むとともに、その他の開閉センサ(たとえば、エンジン回転センサやクランク角センサなど)や、アクセルペダルの踏込み度合を検出するアクセルポジションセンサ、各種アナログセンサ(吸気スロットルの弁開度を検出するスロットルポジションセンサなど)を含む。
【0032】
一方、マイクロプロセッサ120Aを有する車載エンジン制御装置100Aは、マイクロプロセッサ120Aと協働する内部構成として、制御電源110と、電源リレー駆動回路111と、電源投入監視回路112と、分圧抵抗113a、113bと、駆動素子114と、排気ガスセンサ105Aの制御回路115と、固定抵抗116と、開閉素子117と、電気負荷駆動素子118とを備えている。
【0033】
制御電源110は、第1の電源線141から第1の給電電圧VB1の給電を受けて、安定化された駆動電圧Vcc(たとえば、DC5V)を発生し、マイクロプロセッサ120Aおよびマイクロプロセッサ120Aの入出力インタフェース回路部に対して駆動電圧を供給する。
【0034】
電源リレー駆動回路111は、オープンコレクタトランジスタ出力の論理和回路からなり、電源スイッチ102が閉路する場合、または、マイクロプロセッサ120Aが発生する自己保持指令信号DR3の論理レベルが「H」である場合に、電源リレー103の励磁コイル103bを駆動する。
【0035】
なお、マイクロプロセッサ120Aが給電駆動されて自己保持指令信号DR3を発生すると、電源スイッチ102が開路(OFF)しても、電源リレー駆動回路111が励磁コイル103bの付勢を継続するので、励磁コイル103bは、マイクロプロセッサ120Aが自己保持指令信号DR3を停止することによって消勢される。
【0036】
ただし、自己保持指令信号DR3に代えて、ウォッチドッグタイマ回路(図示せず)によりマイクロプロセッサ120Aが発生する暴走監視用のパルス列信号(ウォッチドッグ信号)の発生間隔を監視し、マイクロプロセッサ120Aが正常運転中であることに応じて、電源リレー駆動回路111を介して励磁コイル103bを付勢するように構成することも可能である。
【0037】
電源投入監視回路112は、反転論理素子からなり、電源スイッチ102が閉路されたときに、論理レベル「L」となる電源投入モニタ信号SWを発生する。
分圧抵抗113a、113bは、互いに直列接続されており、第1の給電電圧VB1から給電されて、分圧点の電圧を第1のモニタ電圧Vb1としてマイクロプロセッサ120Aに入力している。
【0038】
駆動素子114は、オープンコレクタトランジスタ出力の反転論理素子からなり、第2の電源リレー104を駆動するために設けられており、マイクロプロセッサ120Aが発生する負荷電源投入指令信号DR4が論理レベル「H」である場合に、励磁コイル104bを通電駆動する。
【0039】
制御回路115は、排気ガスセンサ105A内の酸素濃淡電池素子105aの発生電圧Vsが所定の基準電圧となるように、酸素ポンプ素子105bに対してポンプ電流Ipを供給し、ポンプ電流Ipの値を、空燃比の検出信号出力IP(=Ip)として、マイクロプロセッサ120Aに入力している。
【0040】
固定抵抗116は、排気ガスセンサ105A内のラベル抵抗106と直列接続されて分圧抵抗を構成しており、第2の給電電圧VB2(≒VB1)が印加されて、分圧点の電圧を第2のモニタ電圧Vb2としてマイクロプロセッサ120Aに入力している。
【0041】
開閉素子117は、排気ガスセンサ105Aの電熱ヒータ107を駆動するために設けられており、オープンコレクタトランジスタ出力の反転論理素子からなり、マイクロプロセッサ120Aが発生する開閉指令信号DR1が論理レベル「H」である場合に、電熱ヒータ107を通電駆動する。
電熱ヒータ107は、開閉素子117からの通電デューティに応じた平均電圧が印加されることにより、排気ガスセンサ105Aの温度を所定の活性温度に制御する。
【0042】
電気負荷駆動素子118は、出力トランジスタを含む複数の反転論理素子からなり、マイクロプロセッサ120Aが発生する電気負荷駆動指令信号DRjが論理レベル「H」となった場合に、出力トランジスタが閉路することにより、複数の電気負荷108の1つを駆動する。
【0043】
マイクロプロセッサ120Aは、たとえば不揮発フラッシュメモリからなる不揮発プログラムメモリ(PMEM)121Aと、演算処理用のRAMメモリ(RMEM)122と、たとえばEEPROMメモリからなる不揮発データメモリ(DMEM)123と、センサ130に含まれるアナログセンサに対する多チャンネルAD変換器(ADC)124とを備えており、これらの素子121A、122〜124と協働して動作する。
マイクロプロセッサ120A内の各素子121A、122〜124は、たとえば1つの集積回路素子として集約されている。
【0044】
図2は排気ガスセンサ105Aの出力特性を示す説明図であり、酸素ポンプ素子105bに供給されるポンプ電流(検出信号出力)Ipを示している。
図2において、横軸は空燃比A/F(空気/燃料の重量比)、縦軸は検出信号出力Ip(排気ガスセンサ105Aに供給されたポンプ電流の値)であり、実線曲線は標準出力特性200を示し、1点鎖線曲線は下限出力特性201を示し、破線曲線は上限出力特性202を示している。
【0045】
図2から明らかなように、標準出力特性200、下限出力特性201および上限出力特性202は、排気ガスの理論空燃比(=14.57)を境にして、正負の線形値となる。
したがって、マイクロプロセッサ120Aは、ポンプ電流供給回路(図示せず)に直列接続された電流検出抵抗Rs(図示せず)の両端電圧Vpとして、バイアス電圧Vgを印加し、正の値に変換した補正入力信号電圧Vinが多チャンネルAD変換器124に入力されるように構成されている。
【0046】
たとえば、ポンプ電流Ip=±5mA、電流検出抵抗Rs=300Ω、バイアス電圧Vg=2.5V、とすれば、多チャンネルAD変換器124に対する補正入力信号電圧Vinは、以下の式(1)で表される。
【0047】
Vin=Vg+Ip×Rs=2.5±1.5(V) ・・・(1)
【0048】
また、不揮発プログラムメモリ121Aには、通信制御プログラムや入出力制御プログラムに加えて、後述する制御プログラム(図3参照)や、変換データ(テーブル)121aが格納されている。
【0049】
次に、図2を参照しながら、排気ガスセンサ105Aの出力特性について説明する。
図2において、標準出力特性200は、多数の排気ガスセンサの検出信号出力特性の平均値として算出された結果であり、近似算式またはデータテーブルである換算データとして、不揮発プログラムメモリ121Aに格納されている。
なお、標準出力特性200におけるポンプ電流の校正値Ippの近似算式としては、たとえば、以下の式(2)を用いることができる。
【0050】
Ipp=K1(1−λ)+K2(1−1/λ) ・・・(2)
【0051】
ただし、式(2)において、λ=(A/F)/14.57(理論空燃比で正規化した空燃比値)であり、K1、K2は定数である。
【0052】
下限出力特性201は、許容される固体バラツキ変動の下限となる排気ガスセンサ105Aの検出信号出力特性であり、たとえば、標準出力特性200の80%の値である。
また、上限出力特性202は、許容される固体バラツキ変動の上限となる排気ガスセンサ105Aの検出信号出力特性であり、たとえば、標準出力特性200の120%の値である。
【0053】
次に、図2の説明図および図3のフローチャートとともに、図4の説明図を参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1による測定動作について説明する。
図4は排気ガスセンサ105Aの変換データ表を示している。
【0054】
まず、図1において、電源スイッチ102が閉路し、電源リレー駆動回路111を介して励磁コイル103bが付勢されると、電源リレー103の出力接点103aを介して、車載エンジン制御装置100Aに対して車載バッテリ101が接続され、制御電源110を介して駆動電圧Vccがマイクロプロセッサ120Aに印加される。
【0055】
マイクロプロセッサ120Aは、センサ130(少なくとも吸気量を測定または推定する吸気量センサを含む)および排気ガスセンサ105Aの動作状態と、不揮発プログラムメモリ121A内の制御プログラムの内容とに応動して、電気負荷108(少なくとも燃料噴射電磁弁を含む)と、排気ガスセンサ105A内の電熱ヒータ107と、に対する駆動制御を行う。
【0056】
ただし、これらの通常運転制御に先立って、図3内のラベル抵抗106の測定動作が行われる。
また、電源スイッチ102が開路されると、マイクロプロセッサ120Aは、図3内の退避動作を実行してから、自己保持指令信号DR3を停止する。これにより、電源リレー103が消勢されて出力接点103aが開路し、車載エンジン制御装置100Aへの給電が停止される。
【0057】
図3において、まず、マイクロプロセッサ120Aは、ラベル抵抗106の測定動作を開始し(ステップ300)、電源投入監視回路112からの電源投入モニタ信号SWを監視することにより、電源スイッチ102が開路状態(OFF)から閉路状態(ON)に変化したか否かを判定する(ステップ301a)。
【0058】
このとき、閉路直後であれば、ステップ301aにおいて、開路状態(OFF)から閉路状態(ON)への変化が検出され、「YES」と判定されるので、ステップ301bに移行する。一方、既に閉路している継続動作時には、ステップ301aにおいて、電源投入モニタ信号SWの無変化が検出され、「NO」と判定されるので、ステップ314(後述する)に移行する。
【0059】
ステップ301bにおいては、ステップ326a(後述する)によりラベル抵抗106の判定結果が不揮発データメモリ123に保存されている(判定済である)か否かを確認する。
ステップ301bにおいて、判定済であれば、「YES」と判定してステップ306cに移行し、未判定であれば、「NO」と判定してステップ302に移行する。
【0060】
ステップ302においては、第1の電源リレー103の励磁コイル103bを自己保持付勢するための自己保持指令信号DR3の論理レベルを「H」にセットする。
続いて、負荷電源投入指令信号DR4や電気負荷駆動指令信号DRjの駆動を禁止した後(ステップ303a)、第1のモニタ電圧Vb1および第2のモニタ電圧Vb2をRAMメモリ122に読出して読込・判定を行い、ラベル抵抗106の判別を行う(ステップ304)。
【0061】
なお、ステップ304において、第1のモニタ電圧Vb1は、第1の電源線141から供給される第1の給電電圧VB1を用いて、以下の式(3)で表される。
【0062】
Vb1=VB1×R113b/(R113a+R113b) ・・・(3)
【0063】
ただし、式(3)において、R113a、R113bは、分圧抵抗113a、113bの抵抗値であり、これらの抵抗値は不揮発プログラムメモリ121Aにあらかじめ格納されている。
したがって、マイクロプロセッサ120Aは、第1のモニタ電圧Vb1を読み出すことによって、第1の給電電圧VB1の値を算出することができる。
【0064】
また、ステップ304において、第2のモニタ電圧Vb2は、第2の電源線142Aから供給される第2の給電電圧VB2を用いて、以下の式(4)で表される。
【0065】
Vb2=VB2×R0/(R0+Rx) ・・・(4)
【0066】
ただし、式(4)において、Rxはラベル抵抗106の抵抗値、R0は固定抵抗116の抵抗値であり、抵抗値R0は不揮発プログラムメモリ121Aにあらかじめ格納されている。
【0067】
一方、図1において、第1および第2の電源線141、142Aは、いずれも第1の電源リレー103の出力接点103aに接続されているので、第1の給電電圧VB1と第2の給電電圧VB2とは、ほぼ等しい状態にある。
【0068】
よって、式(4)内の第2の給電電圧VB2に代えて、式(3)から算出される第1の給電電圧VB1を代入することができ、以下の式(5)が得られる。
【0069】
R0/(R0+Rx)=(Vb2/Vb1)×R113b/(R113a+R113b) ・・・(5)
【0070】
ただし、式(5)において、第1および第2のモニタ電圧Vb1、Vb2は、マイクロプロセッサ120A内の多チャンネルAD変換器124を介してRAMメモリ122に読み出された測定値である。また、固定抵抗116の抵抗値R0、分圧抵抗113a、113bの抵抗値R113a、R113bは、不揮発プログラムメモリ121Aに格納された既知の値である。
したがって、マイクロプロセッサ120Aは、式(5)に基づいてラベル抵抗106の抵抗値Rxを演算算出することができる。
【0071】
なお、図1の回路構成に代えて、第2の電源線142Aが第2の電源リレー104の出力接点104aに接続されている場合(後述する図5の場合)には、ステップ303aにおいて、負荷電源投入指令信号DR4を発生して、第2の電源リレー104の励磁コイル104bを付勢するとともに、電気負荷駆動指令信号DRjの駆動を禁止しておくことにより、排気ガスセンサ105Aへの給電を行うようになっている。
【0072】
このように、第2の電源線142Aが第2の電源リレー104の出力接点104aに接続されている場合でも、電気負荷108が駆動停止されていることによって、第1の給電電圧VB1と第2の給電電圧VB2とは、ほぼ等しい状態にあり、式(5)からラベル抵抗106の抵抗値Rxを演算算出することができる。
【0073】
一方、ラベル抵抗106の抵抗値の基準値をRi(i=1、2、・・・、n)とし、ラベル抵抗106の順位iを1ランク上げて、RiからRi+1に増加したときに、第2のモニタ電圧Vb2の値が一定比率γで減少するものとすると、以下の式(6)の関係が成立する。
【0074】
γ×R0/(R0+Ri+1)=R0/(R0+Ri) ・・・(6)
【0075】
ただし、式(6)において、Ri+1>Ri、γ>1である。
具体例として、R0=1KΩ、γ=1.2を式(6)に代入すると、以下の式(7)が得られる。
【0076】
i+1=1.2×Ri+0.2 ・・・(7)
【0077】
ここで、第2のモニタ電圧Vb2を5V以下とするために、R1=2.2KΩとし、これを式(7)に代入すると、R2=2.84KΩとなるが、ラベル抵抗106として公的規格(E24系列の標準数値)を用いると、R2=3.0KΩとなる。
以下、同様に、R2=3.0KΩを式(7)に代入すると、R3=3.8KΩとなるが、同じくE24系列の標準数値を用いると、R3=3.9KΩとなる。
【0078】
図4は上記のように算出された基準値Ri(i=1、2、・・・、21)の一覧表を示している。
ラベル抵抗106としては、たとえば図4で示された基準値Riの±2%精度のものが使用されている。
【0079】
図3内のステップ304においては、第1および第2のモニタ電圧Vb1、Vb2の読出しを行い、式(5)に基づいてラベル抵抗106の抵抗値Rxを算出すると、算出された抵抗値Rxが図4内のどの順位iの基準値Riに接近した値であるかを検索する。
【0080】
図4においては、基準値Ri+1を中心として、1.1×Ri以上で1.1×Ri+1未満の値が、基準値Ri+1に接近した値の判定下限Rminと判定上限Rmaxとの間の範囲内であると定めている。
また、図4において、基準値Riに対応した補正係数Kは、以下の式(8)に基づいて割り付けられている。
【0081】
K=1+0.02×(i−11) ・・・(8)
【0082】
ただし、式(8)において、i=1〜21である。
したがって、算出された抵抗値Rxが、どの順位iの基準値Riに接近した値であるかを判定すれば、適用される補正係数Kが確定することになる。
【0083】
図4において、算出された抵抗値Rxが2.0KΩ未満である場合は、ラベル順位iは「0」となっており、これはラベル抵抗106が異常短絡しているか、ラベル抵抗106の負端子配線が電源線と混触する天絡異常状態となっていることを意味している。
この場合の補正係数Kは、K=1.0とするか、または既に選択された補正係数Kの値を変更しないで、そのままの値を適用するようになっている。
【0084】
一方、算出された抵抗値Rxが242KΩ以上である場合は、ラベル順位iは「22」となっており、これはラベル抵抗106が断線しているか、ラベル抵抗106の負端子配線が車体と混触する地絡異常状態となっていることを意味している。
この場合も、補正係数Kは、K=1.0とするか、または既に選択された補正係数Kの値を変更しないで、そのままの値を適用するようになっている。
【0085】
図3に戻り、ステップ304に続いて、ステップ304で読込・判定されたラベル抵抗106の抵抗値Rxの値が、異常(過大または過小)であるか否(正常範囲)かを判定し(ステップ305)、もし異常であれば、「YES」と判定してステップ306bに移行し、正常であれば、「NO」と判定してステップ306aに移行する。
【0086】
ステップ306aにおいては、ステップ304で判定されたラベル抵抗106の順位iに基づく補正係数Kを、RAMメモリ122の第1所定アドレスに書込む。
一方、ステップ306bにおいては、補正係数Kとして、K=1.00の基準値を選択し、RAMメモリ122の第1所定アドレスに書込む。
【0087】
また、ステップ306bに続いて、ステップ305の判定結果(ラベル抵抗異常)がラベル抵抗106の短絡・天絡異常であったのか、断線・地絡異常であったのかを識別し、異常報知指令信号を発生して警報表示器(図示せず)を作動させるとともに、異常識別結果(異常情報)をRAMメモリ122の第2所定アドレスに書込む(ステップ307)。
【0088】
次に、ステップ306aまたはステップ307に続いて、ステップ303aによる電気負荷108の駆動禁止状態を解除した後(ステップ303b)、ステップ321に移行する。
一方、ステップ301bから分岐したステップ306cにおいては、ステップ326a(後述する)により不揮発データメモリ123の第1所定アドレスに書込み保存されている補正係数Kの値をRAMメモリ122の第1所定アドレスに転送書込みして、ステップ321に移行する。
【0089】
一方、ステップ301aから分岐したステップ314においては、ステップ304と同様に、ラベル抵抗106の抵抗値Rxを算出して順位iを判定する。
なお、ステップ314は、マイクロプロセッサ120Aの継続運転中に繰返して実行されることになるが、ここでは、たとえ異なる順位iが得られたとしても、補正係数Kは変更しない。
【0090】
続いて、ステップ305と同様に、ラベル抵抗106の異常の有無を判定し(ステップ315)、もし異常があれば、「YES」と判定してステップ317に移行し、正常であれば、「NO」と判定して、ステップ317を実行せずにステップ319に移行する。
【0091】
ステップ317においては、ステップ307と同様に、ステップ315で判定されたラベル抵抗106の異常情報をRAMメモリ122の第3所定アドレスに書込むとともに、異常報知指令信号を発生して警報表示器(図示せず)を作動させる。
【0092】
続いて、ステップ319においては、排気ガスセンサ105Aの検出信号出力Ipに対応して、多チャンネルAD変換器124に入力された補正入力信号電圧Vin(=Vg+Ip×Rs)のデジタル変換値から、バイアス加算分のデジタル値を減算し、電流検出抵抗Rsの値で除算して得られる正負の値(ポンプ電流Ip)を算出する。
【0093】
また、ステップ319においては、ステップ306a、306b、306cのいずれかでRAMメモリ122の第1所定アドレスに書込まれた補正係数Kを乗算して、校正ポンプ電流Ippを、以下の式(9)から求めるとともに、図2の標準出力特性200に対応したデータテーブルから空燃比(A/F)を算出する。
【0094】
Ipp=K×Ip ・・・(9)
【0095】
標準出力特性200に対応したデータテーブルは、不揮発プログラムメモリ121Aにあらかじめ格納されている。
なお、標準出力特性200に関するデータテーブルに代えて、式(2)の近似式から、空燃比λ=(A/F)/14.57を算出することができる。
【0096】
ステップ303b、306c、319に続いて実行されるステップ321においては、電源スイッチ102が開路されたか否かを判定し、開路されていれば、「YES」と判定してステップ323に移行し、開路されていなければ、「NO」と判定して、図3の測定動作を終了する(ステップ322)。
【0097】
なお、ステップ322において、マイクロプロセッサ120Aは、他の制御プログラムを実行し、所定時間までには再度動作開始ステップ300に復帰して、ステップ301a以下の制御フローを繰返し実行するようになっている。
【0098】
ステップ323においては、ステップ303aと同様に、電気負荷108の駆動を禁止する。
続いて、ステップ304と同様に、ラベル抵抗106の抵抗値Rxを算出して順位iを判定した後(ステップ324)、ステップ305と同様に、ラベル抵抗106の異常の有無を判定して(ステップ325)、異常があれば、「YES」と判定してステップ326bに移行し、正常であれば、「NO」と判定してステップ326aに移行する。
【0099】
ステップ326aにおいては、ステップ324で判定されたラベル抵抗106の順位iに基づく補正係数Kを、不揮発データメモリ123の第1所定アドレスに書込保存する。
ステップ326bにおいては、補正係数Kとして、K=1.00の基準値を選択して、不揮発データメモリ123の第1所定アドレスに書込保存するか、または、不揮発データメモリ123の第1所定アドレスに既に補正係数Kが格納されている場合には、保存済の補正係数Kを変更しないでおく。
【0100】
次に、ステップ326aまたは326bに続いて、ステップ307、317によりRAMメモリ122の第2および第3所定アドレスに書込まれていた異常履歴情報を、不揮発データメモリ123の第2および第3所定アドレスに累積加算して保存するとともに、ステップ325で判定されたラベル抵抗の異常情報を不揮発データメモリ123の第4所定アドレスに書込保存する(ステップ327)。
【0101】
最後に、自己保持指令信号DR3を停止して、第1の電源リレー103の励磁コイル103bを消勢した後(ステップ328)、車載エンジン制御装置100Aに対する電源供給を遮断してマイクロプロセッサ(CPU)120Aを停止させて(ステップ329)、図3の測定処理を終了する。
【0102】
以上の制御フロー(図3)を概括説明すると、ステップ323〜329の一連の処理は、投入されていた電源スイッチ102が開路された後に実行される。
特に、ステップ324はラベル抵抗判別手段に対応し、ステップ325はラベル抵抗異常判定手段に対応し、ステップ326aは判定記憶保存手段に対応し、ステップ326bは暫定情報選択手段に対応し、ステップ327は異常発生情報保存手段に対応する。
【0103】
また、ステップ301b〜303bの一連の処理は、電源スイッチ102が閉路された直後に実行される。
特に、ステップ301bは保存確認手段に対応し、ステップ304はラベル抵抗判別手段に対応し、ステップ305はラベル抵抗異常判定手段に対応し、ステップ306bは暫定情報選択手段に対応する。
【0104】
さらに、ステップ301a〜319の一連の処理は、電源スイッチ102が継続投入されているときに反復実行される。
特に、ステップ315は定期異常判定手段に対応し、ステップ317は異常報知手段に対応し、ステップ319は空燃比校正検出手段に対応する。
【0105】
図3の制御フローによれば、ステップ326aによって一旦ラベル抵抗の判定結果が記憶保存されると、ステップ304によるラベル抵抗の判別動作は不要となるので、エンジン始動時のマイクロプロセッサ120Aの制御負担が軽減されるようになっている。
【0106】
なお、図1では、第1の電源リレー103の出力接点103aは、車載エンジン制御装置100Aおよび排気ガスセンサ105Aに対して給電し、第2の電源リレー104の出力接点104aは、電気負荷108に対して給電する構成としたが、出力接点103aから電気負荷108の一部に給電したり、電源スイッチ102から他の一部の電気負荷に給電したり、車載エンジン制御装置100Aが関与しないその他の電気負荷108に対する電源リレー(図示せず)が付加される構成としてもよい。
【0107】
また、排気ガスセンサ105Aに給電する第2の電源線142Aを出力接点103aに接続したが、出力接点103aに接続せずに、電源スイッチ102、出力接点104aなどに接続することができる。
この場合、第2の給電電圧VB2と第1の給電電圧VB1との間に微差が発生するが、ラベル抵抗106の抵抗値Rxは段階的に変化するので、ラベル抵抗106の順位iを誤判定することはない。
【0108】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1〜図4)に係る車載エンジン制御装置100Aは、第1(請求項1に対応)の特徴として、空燃比を測定するための排気ガスセンサ105Aと、車載エンジンの運転状態を監視するためのセンサ130(少なくとも、吸気量を測定または推定する吸気量センサを含む)との動作状態に応動し、電源スイッチ102が投入されているときに車載バッテリ101から第1の電源線141を介して給電されて、エンジン駆動用の電気負荷108(燃料噴射用電磁弁を含む)を制御する構成を備えている。
【0109】
排気ガスセンサ105Aは、空燃比測定素子105a、105bの特性バラツキに対する補正係数Kを選択するための指標となるラベル抵抗106と、排気ガスセンサ105Aの温度を早期に活性化温度にするための電熱ヒータ107とを備えている。
【0110】
ラベル抵抗106の一端と電熱ヒータ107の一端とが接続された正端子は、第2の電源線142Aを介して車載バッテリ101に接続されている。また、ラベル抵抗106の負端と電熱ヒータ107の負端とは、それぞれ個別の配線によって車載エンジン制御装置100Aに接続されている。
ラベル抵抗106の抵抗値Rxは、多段階に変化する数値列の中の1つを基準として、所定の誤差範囲にあるものが数値列の中から選択使用される。
【0111】
車載エンジン制御装置100Aは、マイクロプロセッサ120Aと、マイクロプロセッサ120A内で互いに協働する不揮発プログラムメモリ121A、RAMメモリ122、不揮発データメモリ123および多チャンネルAD変換器124とを備えるとともに、ラベル抵抗106の正端電位測定回路113a、113bと、ラベル抵抗106の負端に直列接続された既知の固定抵抗116の両端電圧を測定するための負端電位測定回路とを、さらに備えている。
【0112】
さらに、不揮発プログラムメモリ121Aは、ラベル抵抗判別手段(ステップ304、324)を構成する制御プログラムと、変換データ121aとを備えている。
変換データ121aは、排気ガスセンサ105Aの検出信号出力Ip対空燃比A/Fの標準特性200に関するデータテーブル(または、近似算式)と、判別されたラベル抵抗106に対応した補正係数Kの値に関するデータテーブル(または、近似算式)とを含む。
【0113】
正端電位測定回路は、固定抵抗116の両端電圧を多チャンネルAD変換器124に入力する回路であり、車載バッテリ101の負端子が接続された車体電位を基準として、ラベル抵抗106の正端子に印加された車載バッテリ101からの給電電圧VB2を推定するために、第1の電源線141から給電される第1の給電電圧VB1を分圧して、多チャンネルAD変換器124に入力する分圧抵抗113a、113bにより構成されている。
【0114】
ラベル抵抗判別手段(ステップ304、324)は、多チャンネルAD変換器124を介してマイクロプロセッサ120Aに入力された固定抵抗116の両端電圧を、既知の固定抵抗値で除算してラベル抵抗106の通電電流を算出する。
また、ラベル抵抗106の正端電位から負端電位を減算して得られるラベル抵抗106の両端電圧を、通電電流で除算してラベル抵抗106の抵抗値Rxを算出し、算出された抵抗値Rxが、変換データ121aとして格納されたどの順位iのラベル抵抗であるかを特定する。
【0115】
さらに、マイクロプロセッサ120Aは、排気ガスセンサ105Aの検出信号出力Ipの値と、ラベル抵抗106の抵抗値Rxと、変換データ121aの値に応動して、所定の空燃比(A/F)が得られるように、燃料噴射量の制御を行う。
【0116】
また、第2(請求項2に対応)の特徴として、正端電位測定回路113a、113bは、第2の電源線142Aを介してラベル抵抗106の正端子に印加された第2の給電電圧VB2に相当する電圧として、第1の電源線141を介して車載エンジン制御装置100Aに印加された第1の給電電圧VB1を分圧して多チャンネルAD変換器124に入力する。
【0117】
さらに、ラベル抵抗判別手段(ステップ304、324)は、電源スイッチ102が投入された直後の時点において、または、電源スイッチ102が遮断されてから車載エンジン制御装置100Aに対して暫時給電持続されている期間であって、少なくとも電熱ヒータ107と電気負荷108の全部または一部とに対する給電が行われていない時点において、ラベル抵抗106の抵抗値Rxの判定を行う。
【0118】
このように、ラベル抵抗106の正端電位は、車載エンジン制御装置100Aに対する給電電圧によって測定され、ラベル抵抗判定手段(ステップ304、324)は、電気負荷108に対する給電を停止した状態において実行される。
したがって、電気負荷108に対する給電が停止されていて、電源線141、142Aにおける電圧降下が少ないので、車載エンジン制御装置100Aに印加された電圧を測定することによって、手軽にラベル抵抗106の正端子に印加された電圧を推定することができる。
【0119】
また、車載エンジン制御装置100Aに印加された電圧を測定しておくことは、車載エンジン制御装置100Aによる制御(たとえば、電気負荷108に対する給電電圧の制御など)において、他の目的にも使用されるので、無駄のない安価な制御装置を得ることができる。
【0120】
また、第3(請求項3に対応)の特徴として、車載エンジン制御装置100Aは、電源スイッチ102が閉路しているときに付勢される第1の電源リレー103の出力接点103aを介して給電され、排気ガスセンサ105Aも第1の電源リレー103の出力接点103aを介して給電され、車載バッテリ101から第1の電源リレー103の出力接点103aまでの電源線としては、共通の電源線が使用されている。
【0121】
このように、車載エンジン制御装置100Aと排気ガスセンサ105Aとは、第1の電源リレー103を介して給電されるように構成されている。
したがって、車載エンジン制御装置100Aによって制御されない車載電気負荷に対する給電によって車載バッテリ101の電源線の電圧降下が変動しても、車載エンジン制御装置100Aに印加された電圧を測定することにより、正確にラベル抵抗106の正端子に印加された電圧を推定することができる。
【0122】
また、第4(請求項9に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Aは、判定記憶保存手段(ステップ326a)および保存確認手段(ステップ301b)を構成する制御プログラムを、さらに備えている。
【0123】
判定記憶保存手段(ステップ326a)は、電源スイッチ102が開路されてから車載エンジン制御装置100Aに対して暫時持続給電されている所定期間において、ラベル抵抗判別手段(ステップ324)によるラベル抵抗106の判別を行い、判別されたラベル抵抗106の基準値Ri、または基準値Riの順位i、または基準値Riに対応した補正係数Kの値を不揮発データメモリ123に格納保存する。
【0124】
保存確認手段(ステップ301b)は、電源スイッチ102が閉路された直後において実行され、判定記憶保存手段(ステップ326a)によって既に不揮発データメモリ123がラベル抵抗の判別結果を記憶しているか否かを判定し、確認記憶済であれば、不揮発データメモリ123に保存されている判別結果をRAMメモリ122に読出記憶し、不揮発データメモリ123に判別結果が保存されていなければ、ラベル抵抗判別手段(ステップ304)を実行して、判別結果をRAMメモリ122に書込記憶する。
【0125】
このように、電源スイッチ102を開路した直後に測定されたラベル抵抗106に基づく判別結果を不揮発データメモリ123に保存し、電源スイッチ102が再度閉路されたときには、保存済の判別結果を適用し、電源スイッチ102が閉路されたときに判別結果が保存されていなければ、ラベル抵抗106の測定処理を実行して新たな判別結果を得るようになっている。
【0126】
したがって、自動車の製造ラインにおいて、排気ガスセンサ105Aと車載エンジン制御装置100Aとが接続されて、始めて電源スイッチが投入されたとき以外では、電源スイッチ102の投入直後におけるラベル抵抗判別手段(ステップ324)が実行されないので、運転開始直後のマイクロプロセッサ120Aの制御負担を軽減することができる。
また、排気ガスセンサ105Aや車載エンジン制御装置100Aを取換え交換したような場合には、一旦電源スイッチ102を投入してから遮断することによって、手軽にラベル抵抗106の判別を行うことができる。
【0127】
また、第5(請求項10に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Aは、ラベル抵抗異常判定手段(ステップ305、325)と、暫定情報選択手段(ステップ306b、326b)と、異常発生情報保存手段(ステップ327)とを構成する制御プログラムを、さらに備えている。
【0128】
ラベル抵抗異常判定手段(ステップ305、325)は、ラベル抵抗判別手段(ステップ304、324)によって測定されたラベル抵抗106の抵抗値Rxが所定の基準値Riから逸脱した値であった場合に、ラベル抵抗106の断線・短絡異常であると判定する。
【0129】
暫定情報選択手段(ステップ306b、326b)は、ラベル抵抗異常判定手段(ステップ305、325)によってラベル抵抗106の断線・短絡異常が判定されたときに実行され、補正係数KがK=1.0となる基準係数を選択するか、または既に選択された補正係数Kが存在する場合には、補正係数Kを継続使用する。
【0130】
異常発生情報保存手段(ステップ327)は、ラベル抵抗異常判定手段(ステップ305、325)がラベル抵抗106の断線・短絡異常を判定したことを、不揮発データメモリ123に転送書込みする。
【0131】
このように、不揮発プログラムメモリ123は、ラベル抵抗異常判定手段(ステップ305、325)と、暫定情報選択手段(ステップ306b、326b)と、異常発生情報保存手段(ステップ327)とを構成する制御プログラムを備えているので、ラベル抵抗106の断線・短絡異常が発生した場合に、暫定の補正係数Kが適用されて運転が続行され、異常発生情報に基づいて保守点検を行うことができる。
【0132】
また、第6(請求項11に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Aは、定期異常判定手段(ステップ315)および異常報知手段(ステップ317)を構成する制御プログラムを、さらに備えている。
【0133】
定期異常判定手段(ステップ315)は、電源スイッチ102の閉路状態が持続しているマイクロプロセッサ120Aの運転中において定期的に実行され、ラベル抵抗106の抵抗値Rxが所定の下限値未満であるか、または上限値以上であることによって、ラベル抵抗106またはその配線の短絡・断線異常の有無を判定する。
【0134】
また、異常報知手段(ステップ317)は、定期異常判定手段(ステップ315)が異常状態を判定したときに、異常報知指令信号を発生するとともに、電源スイッチ102が遮断された直後においては、異常報知履歴情報を不揮発データメモリ123に格納保存する。
【0135】
このように、不揮発プログラムメモリ123は、ラベル抵抗106の定期異常判定手段(ステップ315)と、異常報知手段(ステップ317)とを備えているので、電源スイッチ102の投入直後や遮断後において、ラベル抵抗106の異常が発生していなくても、運転中の車体振動によるコネクタの接触不良などによる異常が発生した場合に、ラベル抵抗判別手段(ステップ314)を用いて手軽にこれを検出して保守点検を促すことができる。
【0136】
また、第7(請求項12に対応)の特徴として、多チャンネルAD変換器124を介してマイクロプロセッサ120Aに入力されるラベル抵抗106と固定抵抗116との接続点の計測電位は、ラベル抵抗106の理論値の順位を変更すると、所定倍率の等比級数として変化する数列となり、実際のラベル抵抗106の抵抗値は、公的規格に基づく標準数値列の中から選択される。
【0137】
この結果、実際のラベル抵抗106の順位iを変更すると、計測電位は所定倍率の等比級数よりも大きな比率で変化する。
このように、ラベル抵抗106は、標準数値列の中から選択され、ラベル抵抗106の順位iを変更すると、固定抵抗との接続点の電位は所定値以上の比率で変化するので、ラベル抵抗106の両端電位に所定範囲の測定誤差があっても、適用されたラベル抵抗106の順位iを正確に判定することができる。
【0138】
また、第8(請求項13に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Aは、空燃比校正検出手段(ステップ319)を構成する制御プログラムを、さらに備えている。
空燃比校正検出手段(ステップ319)は、排気ガスセンサ105Aによって得られる空燃比に対応した検出信号出力Ipに対して、ラベル抵抗判別手段(ステップ304、324)によって特定されたラベル抵抗106の順位iに基づく補正係数Kを乗算して、校正検出信号出力Ipp(=K×Ip)を算出し、排気ガスセンサ105Aの標準出力特性200に関するデータテーブル(または、近似算式)から現在の空燃比を演算推定する。
【0139】
このように、ラベル抵抗判別手段(ステップ304、324)によって特定されたラベル抵抗106の順位iで決定される補正係数Kと、排気ガスセンサ105Aの標準出力特性200のデータを用いて校正された空燃比とが演算算出されるので、ハードウエアに依存することなく、簡単な演算によって排気ガスセンサ105Aの固体バラツキ変動を校正して、正確な空燃比を測定することができる。
【0140】
また、第9(請求項14に対応)の特徴として、排気ガスセンサ105Aによって得られる検出信号出力Ipは、正負の電流値であり、検出信号出力Ipを生成する回路には、電流検出抵抗Rsとバイアス電圧Vgを加算する回路が付加されており、常に正の値となる補正入力信号電圧Vin(=Ip×Rs+Vg)として多チャンネルAD変換器124に入力される。
【0141】
この場合、マイクロプロセッサ120Aは、補正入力信号電圧Vinのデジタル変換値からバイアス電圧Vgに相当するデジタル変換値を減算し、電流検出抵抗Rsの値で除算することによって、検出信号出力Ipに比例したデジタル変換値を得る。
【0142】
このように、排気ガスセンサ105Aによる検出信号出力Ipは、常に正の値となる補正入力信号電圧Ippとして多チャンネルAD変換器124に入力され、補正入力信号電圧Vinのデジタル変換値から、入力回路で加算されたバイアス電圧に相当したデジタル変換値を減算して、検出信号出力Ipに比例したデジタル変換値を得るように構成されている。
したがって、多チャンネルAD変換器124は、正負の入力信号電圧を扱うことがないので、負電源を必要とせず、安価な回路構成にすることができる。
【0143】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1)では、排気ガスセンサ105Aに給電するための第2の電源線142Aを第1の電源リレー103に接続したが、図5のように、第2の電源線142Bを第2の電源リレー104に接続してもよい。
図5はこの発明の実施の形態2に係る車載エンジン制御装置100Bの全体構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「B」を付して詳述を省略する。
【0144】
以下、図5に示したこの発明の実施の形態2について、前述(図1)との相違点について説明する。
なお、図5の構成においても、排気ガスセンサ105Bの出力特性は、図2に示した通りであり、排気ガスセンサ105Bの変換データは、図4のデータ表がそのまま適用されるものとする。
【0145】
図5において、図1との主な相違点は、排気ガスセンサ105Bに給電する第2の電源線142Bが第2の電源リレー104の出力接点104aに接続された点に加えて、第2の給電電圧VB2の算定方法が異なっていることのみである。
【0146】
この場合、車載エンジン制御装置100Bは、マイクロプロセッサ(CPU)120Bを主体として構成されており、マイクロプロセッサ120Bと協働する内部構成として、前述と同様の、制御電源110、電源リレー駆動回路111、電源投入監視回路112、分圧抵抗113a、113b、駆動素子114、制御回路115、固定抵抗116c、開閉素子117および電気負荷駆動素子118に加えて、分圧抵抗116a、116bと、選択開閉素子116d、116eとを備えている。
【0147】
マイクロプロセッサ120Bは、相互に協働する不揮発プログラムメモリ121B、RAMメモリ122、不揮発データメモリ123および多チャンネルAD変換器124を備えており、不揮発プログラムメモリ121Bは、変換データ121bを備えている。
【0148】
車載エンジン制御装置100Bには、前述と同様に、電源スイッチ102、第1の電源リレー103、第2の電源リレー104、電気負荷108、センサ130および排気ガスセンサ105Bが接続されている。
【0149】
車載エンジン制御装置100B内において、高抵抗の分圧抵抗116a、116bは、ラベル抵抗106の負端子に直列接続されており、一方の抵抗106bは、選択開閉素子116eの出力論理レベルが「L」となったときにグランド回路GNDに接続される。
分圧抵抗116a、116bの接続点は、第2のモニタ電圧Vb2としてマイクロプロセッサ120Bに入力されている。
【0150】
固定抵抗116cの一端は、ラベル抵抗106の負端子に接続されており、固定抵抗116cの他端は、選択開閉素子116dの出力論理レベルが「L」となったときにグランド回路GNDに接続される。
【0151】
選択開閉素子116dは、マイクロプロセッサ120Bが発生する選択指令信号DR2の論理レベルに対して反転論理出力を発生する。
選択開閉素子116eの入力端子は、選択開閉素子116dの出力端子に接続されており、選択開閉素子116dの出力論理レベルに対して反転論理出力を発生する。
【0152】
上記構成において、選択指令信号DR2の論理レベルが「L」となっているときには、固定抵抗116cが非接続状態となり、その代わりに、分圧抵抗116a、116bが接続される。
【0153】
よって、選択指令信号DR2の論理レベルが「L」となっているときの、第2のモニタ電圧Vb2の値を開放電圧VLとすると、開放電圧VLは、第2の給電電圧VB2(ラベル抵抗106の正端子電圧)と、ラベル抵抗106の抵抗値Rxと、分圧抵抗116a、116bの抵抗値R116a、R116bとを用いて、以下の式(10)で表される。
【0154】
VL=VB2×R116b/(Rx+R116a+R116b) ・・・(10)
【0155】
ただし、式(10)において、抵抗値R116a、R116bの値は、不揮発プログラムメモリ121Bにあらかじめ格納されている既知の値である。
【0156】
一方、選択指令信号DR2の論理レベルが「H」となっているときには、分圧抵抗116bが非接続状態となり、その代わりに、固定抵抗116cが接続される。
よって、選択指令信号DR2の論理レベルが「H」となっているときの、第2のモニタ電圧Vb2の値を閉路電圧Vhとすると、閉路電圧Vhは、固定抵抗116cの抵抗値R0を用いて、以下の式(11)で表される。
【0157】
Vh=VB2×R0/(Rx+R0) ・・・(11)
【0158】
ただし、式(10)において、抵抗値R0の値は、不揮発プログラムメモリ121Bにあらかじめ格納されている既知の値である。
【0159】
ここで、選択指令信号DR2の論理レベルが「L」の場合の第2の給電電圧VB2と、選択指令信号DR2の論理レベルが「H」の場合の第2の給電電圧VB2とが同じ値であったと仮定すると、式(10)、式(11)から、第2の給電電圧VB2の値と、ラベル抵抗106の抵抗値Rxの値とを算出することができる。
抵抗値Rxが算出されると、前述と同様に図4のデータ表から、ラベル抵抗106の基準値Ri、またはラベル順位i、または補正係数Kの値が確定する。
【0160】
以下、図6および図7のフローチャートを参照しながら、図5に示したこの発明の実施の形態2によるラベル抵抗106の測定動作について説明する。
まず、図5において、電源スイッチ102が閉路して、電源リレー駆動回路111を介して励磁コイル103bが付勢されると、電源リレー103の出力接点103aを介して車載エンジン制御装置100Bに対して車載バッテリ101が接続され、制御電源110を介して、駆動電圧Vccがマイクロプロセッサ120Bに印加される。
【0161】
マイクロプロセッサ120Bは、センサ130(少なくとも、吸気量を測定または推定する吸気量センサを含む)および排気ガスセンサ105Bの動作状態と、不揮発プログラムメモリ121B内の制御プログラムの内容とに応動して、電気負荷108(少なくとも燃料噴射電磁弁を含む)と、排気ガスセンサ105B内の電熱ヒータ107との駆動制御を行う。
【0162】
ただし、これらの通常運転制御に先立って、図6(後述する)によるラベル抵抗106の測定動作が行われる。
一方、電源スイッチ102が開路されると、マイクロプロセッサ120Bは、図6内の退避動作を実行してから、自己保持指令信号DR3を停止する。これにより、第1の電源リレー103が消勢されて出力接点103aが開路し、車載エンジン制御装置100Bへの給電が停止されるようになっている。
【0163】
図6において、すべての制御フロー(ステップ500〜529)は、図3の制御フロー(ステップ300〜329)と同等である。
ただし、図6内のステップ504、514、524(図3内のステップ304、314、324に対応)の内容のみが前述と異なっており、ステップ504、514、524の詳細は、図7のフローチャートに示されている。
【0164】
図7において、まず、ステップ600は、サブルーチンプログラムの開始処理であり、図6内のステップ501aの判定結果が「NO」であった場合に実行されるか、または、図6内のステップ503a、523に続いて実行される。
【0165】
ステップ600に続いて、マイクロプロセッサ120Bは、選択指令信号DR2の論理レベルを「L」にセットすることにより、固定抵抗116cの負端を開放し、分圧抵抗116bの負端をグランド回路GNDに接続する(ステップ601a)。
【0166】
次に、マイクロプロセッサ120Bは、第2のモニタ電圧Vb2の値を、多チャンネルAD変換器124を介して、RAMメモリ122に読み込む(ステップ602a)。
ステップ602aで読み込まれた第2のモニタ電圧Vb2の値は、前述の式(10)で示した開放電圧VLに相当する。
【0167】
次に、マイクロプロセッサ120Bは、選択指令信号DR2の論理レベルを「H」にセットすることにより、固定抵抗116cの負端をグランド回路GNDに接続して、分圧抵抗116bの負端を開放した後(ステップ603a)、第2のモニタ電圧Vb2の値を、多チャンネルAD変換器124を介してRAMメモリ122に読み込む(ステップ604a)。
ステップ604aで読み込まれた第2のモニタ電圧Vb2の値は、前述の式(11)で示した閉路電圧Vhに相当する。
【0168】
続いて、マイクロプロセッサ120Bは、選択指令信号DR2の論理レベルを再度「L」にセットすることにより、固定抵抗116cの負端を開放して、分圧抵抗116bの負端をグランド回路GNDに接続した後(ステップ601b)、第2のモニタ電圧Vb2の値を、多チャンネルAD変換器124を介してRAMメモリ122に読み込む(ステップ602b)。
ステップ602bで読み込まれた第2のモニタ電圧Vb2の値は、前述の式(10)で示した開放電圧VLに相当する。
【0169】
次に、マイクロプロセッサ120Bは、ステップ602aで読み込まれた開放電圧VLの値と、ステップ602bで再度読み込まれた開放電圧VLの値とが、所定の許容誤差範囲内で一致しているか否かを判定し(ステップ605)、両者の変動が大であれば、「YES」と判定してステップ607に移行し、変動が少なければ、「NO」と判定してステップ606に移行する。
【0170】
なお、ステップ602aが実行されてからステップ602bが実行されるまでの短時間の間に、第2の給電電圧VB2の変動が少なければ、通常は、式(10)で示した開放電圧VLの変動も少ないので、ステップ605においては、「NO」と判定されてステップ606に移行することになる。
【0171】
ただし、ステップ602aが実行されてからステップ602bが実行されるまでの短時間の間に、第2の給電電圧VB2の脈動またはノイズ変動が発生すると、ステップ605において、「YES」と判定されてステップ607に移行することがある。
【0172】
ステップ606においては、ステップ602aまたはステップ602bで読み出された開放電圧VLのどちらか一方の値(または、両者に微差があればその平均値)と、ステップ604aで読み出された閉路電圧Vhの値とを、式(10)、式(11)に代入することにより、ラベル抵抗106の抵抗値Rxを演算算出する。
【0173】
ステップ607においては、ステップ607が実行開始されてからの経過時間を計測し、この経過時間が所定の制限時間以内であるか否かを判定し、時間が未経過であれば、「NO」と判定してステップ603aに復帰し、時間超過であれば、「YES」と判定してステップ608に移行する。
【0174】
なお、ステップ607で「NO」と判定されて、ステップ603a〜605の処理が再度実行される場合に、ステップ605においては、前回のステップ602bで測定された開放電圧VLの値と、今回のステップ602bで測定された開放電圧VLの値とを比較して、両者の変動の多寡を判定する。
【0175】
一方、ステップ608においては、ステップ607でタイムアウト(「YES」)が判定されたことを、RAMメモリ122の第5所定アドレスに異常情報として書込む。
最後に、ステップ606、608においては、ステップ607で起動されたタイムアウト計時用のタイマをリセットしてから、サブ復帰処理(ステップ609)に移行し、図7のサブルーチンを終了する。
【0176】
以下、図7内のステップ609から、図6内のステップ505、515、525のいずれかに移行する。
なお、図7において、ステップ602aは正端電位測定手段に対応し、ステップ602bは正端電位確認手段に対応し、ステップ604aは負端電位測定手段に対応する。
【0177】
以上のように、この発明の実施の形態2(図5〜図7)に係る車載エンジン制御装置100Bは、第1(請求項1に対応)の特徴として、空燃比を測定するための排気ガスセンサ105Bと、車載エンジンの運転状態を監視するためのセンサ130(少なくとも、吸気量を測定または推定する吸気量センサを含む)との動作状態に応動し、電源スイッチ102が投入されているときに車載バッテリ101から第1の電源線141を介して給電されて、エンジン駆動用の電気負荷108(燃料噴射用電磁弁を含む)を制御する構成を備えている。
【0178】
排気ガスセンサ105Bは、空燃比測定素子105a、105bの特性バラツキに対する補正係数Kを選択するための指標となるラベル抵抗106と、排気ガスセンサ105Bの温度を早期に活性化温度にするための電熱ヒータ107とを備えている。
【0179】
ラベル抵抗106の一端と電熱ヒータ107の一端とが接続された正端子は、第2の電源線142Bを介して車載バッテリ101に接続されている。また、ラベル抵抗106の負端と電熱ヒータ107の負端とは、それぞれ個別の配線によって車載エンジン制御装置100Bに接続されている。
【0180】
ラベル抵抗106の抵抗値は、多段階に変化する数値列の中の1つを基準として、所定の誤差範囲にあるものが、数値列の中から選択使用される。
車載エンジン制御装置100Bは、互いに協働するマイクロプロセッサ120B、不揮発プログラムメモリ121B、RAMメモリ122、不揮発データメモリ123および多チャンネルAD変換器124を備えるとともに、ラベル抵抗106の正端電位測定回路116a、116bと、ラベル抵抗106の負端に直列接続された既知の固定抵抗116cの両端電圧を測定する負端電位測定回路とを、さらに備えている。
【0181】
不揮発プログラムメモリ121Bは、ラベル抵抗判別手段(ステップ504、524)を構成する制御プログラムと、変換データ121bとを、さらに備えている。
変換データ121bは、排気ガスセンサ105Bの検出信号出力Ipの対空燃比A/Fの標準出力特性200(図2)に関するデータテーブル(または、近似算式)と、判別されたラベル抵抗106に対応した補正係数Kの値に関するデータテーブル(または、近似算式)とを含む。
【0182】
正端電位測定回路は、車載バッテリ101の負端子が接続された車体電位を基準として、ラベル抵抗106の正端子に印加された車載バッテリ101からの給電電圧を推定するために、第2の電源線142Bから給電される第2の給電電圧VB2を分圧して、多チャンネルAD変換器124に入力する分圧抵抗116a、116bにより構成されている。
負端電位測定回路は、固定抵抗116cの両端電圧を多チャンネルAD変換器124に入力する。
【0183】
ラベル抵抗判別手段(ステップ504、524)は、多チャンネルAD変換器124を介してマイクロプロセッサ120Bに入力された固定抵抗116cの両端電圧を、既知の固定抵抗値で除算してラベル抵抗106の通電電流を算出し、また、ラベル抵抗106の正端電位から負端電位を減算して得られるラベル抵抗106の両端電圧を、通電電流で除算してラベル抵抗116cの抵抗値を算出し、算出された抵抗値が、変換データ121bとして格納されたどの順位iのラベル抵抗であるかを特定する。
【0184】
マイクロプロセッサ120Bは、排気ガスセンサ105Bの検出信号出力Ipの値と、ラベル抵抗106の抵抗値と、変換データ121bの値に応動して、所定の空燃比A/Fが得られるように燃料噴射量の制御を行うようになっている。
【0185】
また、第2(請求項4に対応)の特徴として、正端電位測定回路は、第2の電源線142Bを介してラベル抵抗106の正端子に印加された第2の給電電圧VB2を分圧して、多チャンネルAD変換器124に入力するための高抵抗の分圧抵抗116a、116bにより構成されている。
【0186】
負端電位測定回路は、マイクロプロセッサ120Bの選択指令信号DR2に応答して、固定抵抗116cを接続するとともに、分圧抵抗116a、116bの下流側を開路して、固定抵抗116cの両端電圧を多チャンネルAD変換器124の同一チャンネルに入力する選択開閉素子116d、116eにより構成されている。
【0187】
ラベル抵抗判別手段(ステップ504、524)は、固定抵抗116cを接続しない状態でラベル抵抗106の正端電位を測定する正端電位測定手段(ステップ602a)と、固定抵抗116cを接続してから固定抵抗116cの両端電圧を測定する負端電位測定手段(ステップ604a)とを備えている。
【0188】
このように、ラベル抵抗106の正端電位および負端電位は、同一のアナログ信号回路を介して多チャンネルAD変換器124に入力され、マイクロプロセッサ120Bからの選択指令信号DR2によって時分割読込みされるので、車載エンジン制御装置100Bに対する第1の給電電圧VB1と、排気ガスセンサ105Bに対する第2の給電電圧VB2とが異なっていても、正確にラベル抵抗106の判定を行うことができるうえ、アナログ入力チャンネルが増加しないという効果がある。
【0189】
また、第3(請求項5に対応)の特徴として、ラベル抵抗判別手段(ステップ504、524)は、正端電位確認手段(ステップ602b)を、さらに備えている。
正端電位確認手段(ステップ602b)は、負端電位測定手段(ステップ604a)によるラベル抵抗106の負端子電位の測定前後において、正端電位測定手段(ステップ602a)と正端電位確認手段(ステップ602b)とによって測定された正端子電位が、所定の許容誤差内で一致していることを確認する。
【0190】
このように、ラベル抵抗判別手段(ステップ504、524)は、正端電位確認手段(ステップ602b)をさらに備え、ラベル抵抗106の負端子電位の測定前後において、正端電位測定手段(ステップ602a)と正端電位確認手段(ステップ602b)とによって測定された正端子電位が一致していることを確認するので、第2の電源線142Bを介して得られる排気ガスセンサ105Bへの第2の給電電圧VB2が変動していた場合に、ラベル抵抗106の判別処理を実行し直して、正確な判定を行うことができる。
【0191】
また、第4(請求項9に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Bは、判定記憶保存手段(ステップ526a)および保存確認手段(ステップ501b)を構成する制御プログラムを、さらに備えている。
【0192】
判定記憶保存手段(ステップ526a)は、電源スイッチ102が開路されてから、車載エンジン制御装置100Bに対して暫時持続給電されている所定期間において、ラベル抵抗判別手段(ステップ524)によるラベル抵抗106の判別処理を実行し、判別されたラベル抵抗106の基準値Ri、または基準値Riの順位i、または基準値Riに対応した補正係数Kの値を、不揮発データメモリ123に格納保存する。
【0193】
保存確認手段(ステップ501b)は、電源スイッチ102が閉路された直後に実行され、判定記憶保存手段(ステップ526a)によって既に不揮発データメモリ123がラベル抵抗106の判別結果を記憶しているか否かを判定し、確認記憶済であれば、不揮発データメモリ123に保存されている判別結果をRAMメモリ122に読出記憶し、不揮発データメモリ123に判別結果が保存されていなければ、ラベル抵抗判別手段(ステップ504)を実行して、判別結果をRAMメモリ122に書込記憶する。
【0194】
また、第5(請求項10に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Bは、ラベル抵抗異常判定手段(ステップ505、525)と、暫定情報選択手段(ステップ506b、526b)と、異常発生情報保存手段(ステップ527)とを構成する制御プログラムを、さらに備えている。
【0195】
ラベル抵抗異常判定手段(ステップ505、525)は、ラベル抵抗判別手段(ステップ504、524)によって測定されたラベル抵抗106の抵抗値が、所定の基準値Riから逸脱した値であった場合に、ラベル抵抗106の断線・短絡異常であると判定する。
【0196】
暫定情報選択手段(ステップ506b、526b)は、ラベル抵抗異常判定手段(ステップ505、525)によってラベル抵抗106の断線・短絡異常が判定されたときに実行され、補正係数KがK=1.0となる基準係数を選択するか、または、既に選択された補正係数Kがある場合には、補正係数Kを継続使用する。
【0197】
異常発生情報保存手段(ステップ527)は、ラベル抵抗異常判定手段(ステップ505、525)がラベル抵抗106の断線・短絡異常を判定したことを、不揮発データメモリ123に転送書込みする。
【0198】
また、第6(請求項11に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Bは、定期異常判定手段(ステップ515)および異常報知手段(ステップ517)を構成する制御プログラムを、さらに備えている。
【0199】
定期異常判定手段(ステップ515)は、電源スイッチ102の閉路状態が持続しているマイクロプロセッサ120Bの運転中において定期的に実行され、ラベル抵抗106の抵抗値Rxが所定の下限値未満であるか、または上限値以上であることによって、ラベル抵抗106またはその配線の短絡・断線異常の有無を判定する。
【0200】
異常報知手段(ステップ517)は、定期異常判定手段(ステップ515)が異常状態を判定したときに、異常報知指令信号を発生するとともに、電源スイッチ102が遮断された直後においては、異常報知履歴情報を不揮発データメモリ123に格納保存する。
【0201】
また、第7(請求項12に対応)の特徴として、多チャンネルAD変換器124を介してマイクロプロセッサ120Bに入力されるラベル抵抗106と固定抵抗116cとの接続点の計測電位は、ラベル抵抗106の理論値の順位を変更すると、所定倍率の等比級数として変化する数列となり、実際のラベル抵抗106の抵抗値は、公的規格に基づく標準数値列の中から選択される。
したがって、実際のラベル抵抗106の順位iを変更すると、計測電位は、所定倍率の等比級数よりも大きな比率で変化する。
【0202】
また、第8(請求項13に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Bは、空燃比校正検出手段(ステップ519)を構成する制御プログラムを、さらに備えている。
空燃比校正検出手段(ステップ519)は、排気ガスセンサ105Bによって得られる空燃比(A/F)に対応した検出信号出力Ipに対して、ラベル抵抗判別手段(ステップ504、524)によって特定されたラベル抵抗106の順位iに基づく補正係数Kを乗算して、校正検出信号出力Ipp(=K×Ip)を算出し、排気ガスセンサ105Bの標準出力特性200(図2)に関するデータテーブル(または、近似算式)から現在の空燃比を演算推定する。
【0203】
また、第9(請求項14に対応)の特徴として、排気ガスセンサ105Bによって得られる検出信号出力Ipは、正負の電流値であり、検出信号出力Ipを生成する回路には、電流検出抵抗Rsとバイアス電圧Vgを加算する回路が付加されて、常に正の値となる補正入力信号電圧Vin(=Ip×Rs+Vg)として多チャンネルAD変換器124に入力される。
【0204】
この場合、マイクロプロセッサ120Bは、補正入力信号電圧Vinのデジタル変換値から、バイアス電圧Vgに相当するデジタル変換値を減算し、電流検出抵抗Rsの値で除算することによって、検出信号出力Ipに比例したデジタル変換値を得るようになっている。
【0205】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2(図5)では、第2の給電電圧VB2に関連した回路構成として、ラベル抵抗106に加えて、選択指令信号DR2に応答する選択開閉素子116d、116eと、選択開閉素子116eに接続された分圧抵抗116a、116bと、選択開閉素子116dに接続された固定抵抗116cとを設けたが、図8のように、ラベル抵抗106および回路構成116a〜116eを省略して、開閉指令信号DR1に応答する開閉素子117側に、ラベル抵抗109と、分圧抵抗119a、119bと、固定抵抗119cとを設けてもよい。
【0206】
図8はこの発明の実施の形態3に係る車載エンジン制御装置100Cの全体構成を示すブロック図であり、前述(図1、図5参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「C」を付して詳述を省略する。
【0207】
以下、図8に示したこの発明の実施の形態3について、図1との相違点について説明する。
なお、この発明の実施の形態3においても、排気ガスセンサ105Cの出力特性は、図2に示した通りである。ただし、排気ガスセンサ105Cの変換データとしては、図4に代えて、図9のデータ表が適用される。
【0208】
図8において、図1との主な相違点は、排気ガスセンサ105Cに給電する第2の電源線142Cが第2の電源リレー104の出力接点104aに接続されている点に加えて、ラベル抵抗109が電熱ヒータ107の負端子に接続されている点である。
【0209】
この場合、車載エンジン制御装置100Cは、マイクロプロセッサ120Cを主体として構成されており、マイクロプロセッサ120Cは、マイクロプロセッサ120Cと協働する内部構成として、前述と同様の、制御電源110、電源リレー駆動回路111、電源投入監視回路112、分圧抵抗113a、113b、駆動素子114、制御回路115、開閉素子117および電気負荷駆動素子118に加えて、分圧抵抗119a、119bと、固定抵抗119cとを備えている。
【0210】
マイクロプロセッサ120Cは、相互に協働する不揮発プログラムメモリ121C、RAMメモリ122、不揮発データメモリ123および多チャンネルAD変換器124を備えており、不揮発プログラムメモリ121Cは、変換データ121cを備えている。
【0211】
車載エンジン制御装置100Cには、前述と同様に、電源スイッチ102、第1の電源リレー103、第2の電源リレー104、電気負荷108、センサ130および排気ガスセンサ105Cが接続されている。
【0212】
車載エンジン制御装置100C内において、固定抵抗119cの一端には、駆動電圧Vccが印加されており、固定抵抗119cの他端は、ラベル抵抗109の正端子に接続されている。
また、固定抵抗119cとラベル抵抗109との接続点の電圧は、分圧電圧Vb3としてマイクロプロセッサ120Cに入力されている。
【0213】
高抵抗値を有する分圧抵抗119a、119bは、電熱ヒータ107の負端子に直列接続され、分圧抵抗119aと分圧抵抗119bとの接続点の電圧は、閉路分圧電圧Vb4としてマイクロプロセッサ120Cに入力されている。
【0214】
したがって、開閉指令信号DR1の論理レベルが「H」となって開閉素子117が閉路しているときの閉路分圧電圧Vb4は、開閉素子117の閉路電圧Vonと、分圧抵抗119a、119bの各抵抗値R119a、R119bとを用いて、以下の式(12)で表される。
【0215】
Vb4=Von×R119b/(R119a+R119b) ・・・(12)
【0216】
なお、各抵抗値R119a、R119bの値は、不揮発プログラムメモリ121Cにあらかじめ格納されている既知の値である。
したがって、閉路分圧電圧Vb4を測定することにより、式(12)を用いて閉路電圧Vonを算出することができる。
【0217】
また、開閉指令信号DR1の論理レベルが「H」となって開閉素子117が閉路しているときの分圧電圧Vb3は、ラベル抵抗109の抵抗値Rxと、固定抵抗119cの抵抗値R0とを用いて、以下の式(13)で表される。
【0218】
Vb3=(Vcc−Von)×Rx/(R0+Rx)+Von ・・・(13)
【0219】
ただし、式(13)において、固定抵抗119cの抵抗値R0は、不揮発プログラムメモリ121Cにあらかじめ格納されている。
したがって、式(13)を用いれば、ラベル抵抗109の抵抗値Rxは、分圧電圧Vb3の測定値と、式(12)を用いて算出された閉路電圧Von値とから、算出することができる。
【0220】
ここで、具体例として、R0=100KΩ、Vcc=5V、Von=0.5V、とすると、式(13)から以下の式(14)が得られる。
【0221】
Vb3=4.5/(1+100/Rx)+0.5 ・・・(14)
【0222】
また、ラベル抵抗109の抵抗値Rxが、基準値Riから基準値Ri+1にランクアップしたときに、分圧電圧Vb3が倍率γ=1.1倍(等比方式)に増加する、と仮定した場合には、式(14)から、以下の式(15)が得られる。
【0223】
1.1×[4.5/(1+100/Ri)+0.5]
=4.5/(1+100/Ri+1)+0.5 ・・・(15)
【0224】
さらに、式(15)を整理すると、以下の式(16)が得られる。
【0225】
i+1=100×(1+1/Ri)/(90/Ri−0.1) ・・・(16)
【0226】
図9はこの発明の実施の形態3による排気ガスセンサ105Cの変換データ表を示す説明図であり、R1=1.1KΩとして、R2、R3、・・・を順次算出した結果を示している。
図9において、実際に適用される基準値Riは、前述と同様に、公的規格である標準数E24に基づいている。また、判定下限値Rminは、基準値Ri−1の95%であり、判定上限値Rmaxは、基準値Riの105%となっている。
【0227】
式(14)を用いて算出されたラベル抵抗109の抵抗値Rxが、図9のどの順位iのラベル抵抗であるかを判別すると、図9によって補正係数Kが特定される。
たとえば、ラベル抵抗109の抵抗値Rxが1.04KΩ未満であれば、ラベル抵抗109の短絡異常(または、正端子配線がグランド回路と混触する地絡異常)であると判定され、補正係数は、K=1.0(または、現状維持)に設定されるようになっている。
【0228】
一方、ラベル抵抗109の抵抗値Rxが651KΩ未満であれば、ラベル抵抗109の断線異常(または、正端子配線が電源線と混触する天絡異常)であると判定され、補正係数は、K=1.0(または、現状維持)に設定されるようになっている。
【0229】
なお、図8においては、固定抵抗119cおよびラベル抵抗109からなる直列回路に対して、一定電圧である駆動電圧Vccが印加されているので、ラベル抵抗109の抵抗値Rxが、基準値Riから基準値Ri+1にランクアップしたときに、上記等比方式に代えて、分圧電圧Vb3が一定増分値ΔVだけ増加するような等差方式にすることも可能である。
【0230】
以下、図2および図9の説明図とともに、図10のフローチャートを参照しながら、図8に示したこの発明の実施の形態3によるラベル抵抗109の測定動作について説明する。
まず、図8において、電源スイッチ102が閉路し、電源リレー駆動回路111を介して励磁コイル103bが付勢されると、前述と同様に、電源リレー103の出力接点103aを介して、車載エンジン制御装置100Cに対して車載バッテリ101が接続される。これにより、制御電源110を介して、駆動電圧Vccがマイクロプロセッサ120Cに印加される。
【0231】
マイクロプロセッサ120Cは、センサ130(少なくとも、吸気量を測定または推定する吸気量センサを含む)および排気ガスセンサ105Cの動作状態と、不揮発プログラムメモリ121C内の制御プログラムの内容とに応動して、電気負荷108(少なくとも燃料噴射電磁弁を含む)と、排気ガスセンサ105C内の電熱ヒータ107との駆動制御を行う。
ただし、これらの通常運転制御に先立って、図10によるラベル抵抗109の測定動作が行われる。
【0232】
一方、電源スイッチ102が開路されると、マイクロプロセッサ120Cは、図10内の退避動作を実行してから、自己保持指令信号DR3を停止する。これにより、電源リレー103が消勢されて出力接点103aが開路し、車載エンジン制御装置100Cへの給電が停止されるようになっている。
【0233】
図10において、まず、マイクロプロセッサ120Cは、ラベル抵抗109の測定動作を開始し(ステップ800)、電源投入監視回路112からの電源投入モニタ信号SWを監視することにより、電源スイッチ102が開路状態(OFF)から閉路状態(ON)に変化したか否かを判定する(ステップ801)。
【0234】
ステップ801において、電源スイッチ102が開路状態から閉路状態に変化したこと(閉路直後)が検出されれば、「YES」と判定してステップ802に移行し、既に閉路している継続動作時には、「NO」と判定してステップ813aに移行する。
【0235】
ステップ802においては、第1の電源リレー103の励磁コイル103bを自己保持付勢するための自己保持指令信号DR3の論理レベルを「H」にセットする。
続いて、開閉指令信号DR1の論理レベルを「H」にセットして開閉素子117を強制閉路駆動するとともに、望ましくは、指令信号DR4の論理レベルを「L」にセットして第2の電源リレー104の付勢を禁止する(ステップ803a)。
【0236】
次に、分圧電圧Vb3および閉路分圧電圧Vb4の値をRAMメモリ122に読出して、ラベル抵抗109の読込・判定を行う(ステップ804)。
なお、プ804において、開閉素子117の閉路電圧Vonを、ほぼ一定の固定値として不揮発プログラムメモリ121Cにあらかじめ格納しておけば、閉路分圧電圧Vb4の読出しと、式(12)による閉路電圧Vonの算出は不要である。
【0237】
ステップ804において、マイクロプロセッサ120Cは、式(14)に基づいてラベル抵抗109の抵抗値Rxを算出して、算出された抵抗値Rxが、図9内のどの順位iの基準値Riに接近した値であるかを検索し、適用される補正係数Kを特定する。
【0238】
続いて、ラベル抵抗109の抵抗値Rxの値が異常(過大または過小)であるか否(正常範囲)かを判定し(ステップ805)、もし異常であれば、「YES」と判定してステップ806bに移行し、正常であれば、「NO」と判定してステップ806aに移行する。
【0239】
ステップ806aにおいては、ステップ804で判定されたラベル抵抗109の順位iに基づく補正係数Kを、RAMメモリ122の第1所定アドレスに書込む。
一方、ステップ806bにおいては、補正係数Kとして既存の記憶値(後述のステップ826で保存記憶した値)が存在すれば、その値を維持し、保存記憶値が存在しなければ、K=1.00の基準値を選択して、RAMメモリ122の第1所定アドレスに書込む。
【0240】
ステップ806bに続くステップ807においては、ステップ805で判定されたラベル抵抗109の異常が、ラベル抵抗109の短絡・地絡異常であったのか、または断線・天絡異常であったのかを識別して、RAMメモリ122の第2所定アドレスに異常情報を書込む。
【0241】
ステップ806aまたはステップ807に続いて、ステップ803bにおいては、ステップ803aによる第2の電源リレー104の付勢禁止状態を解除するとともに、開閉素子117の強制導通状態を解除して、ステップ821(後述する)に移行する。
【0242】
一方、ステップ801で「NO」と判定された場合に実行されるステップ813aにおいては、ステップ803aと同様に、開閉指令信号DR1の論理レベルを「H」にセットして開閉素子117を強制閉路駆動する。
【0243】
なお、ステップ813aは、マイクロプロセッサ120Cの継続運転中に繰返し実行される処理であり、このときの指令信号DR4は論理レベルが「H」に維持され、第2の電源リレー104は継続して付勢状態に維持されている。
【0244】
ステップ813aに続くステップ814においては、ステップ304と同様に、ラベル抵抗109の抵抗値Rxを算出して順位iを判定する。なお、ステップ814においては、たとえ異なる順位iが得られたとしても、補正係数Kは変更しない。
【0245】
続いて、ステップ813aによる開閉素子117の強制駆動状態を解除する(ステップ813b)。
以降は、図示しない制御フローによって、排気ガスセンサ105Cの環境温度を制御するための制御モードに移行する。
【0246】
次に、ステップ805と同様に、ラベル抵抗109の異常の有無を判定し(ステップ815)、異常があれば、「YES」と判定してステップ817に移行し、正常であれば、「NO」と判定してステップ819に移行する。
【0247】
ステップ817においては、ステップ807と同様に、ステップ815で判定されたラベル抵抗の異常情報を、RAMメモリ122の第3所定アドレスに書込むとともに、異常報知指令信号を発生して、警報表示器(図示せず)を作動させる。
【0248】
ステップ817に続くステップ819においては、排気ガスセンサ105Cの検出信号出力Ipに対応して多チャンネルAD変換器124に入力された補正入力信号電圧Vin(=Vg+Ip×Rs)のデジタル変換値から、バイアス加算分のデジタル値を減算し、電流検出抵抗Rsの値で除算して得られる正負の値(ポンプ電流Ip)を算出する。
【0249】
また、ステップ819においては、ステップ806aまたはステップ806bにおいてRAMメモリ122の第1所定アドレスに書込まれた補正係数Kを乗算して、校正ポンプ電流Ipp(=K×Ip)を求めるとともに、図2内の標準出力特性200に対応したデータテーブルから空燃比(A/F)を算出する。
なお、図2のデータテーブルは、不揮発プログラムメモリ121Cにあらかじめ格納されている。
【0250】
ステップ803bまたはステップ819に続いて実行されるステップ821においては、電源スイッチ102が開路されたか否かを判定し、開路されていれば、「YES」と判定してステップ826に移行し、開路されていなければ、「NO」と判定して動作終了ステップ822に移行する。
なお、動作終了ステップ822において、マイクロプロセッサ120Cは、他の制御プログラムを実行し、所定時間までには再度動作開始ステップ800に復帰して、以下の制御フローを繰返し実行するようになっている。
【0251】
ステップ826においては、ステップ806aまたはステップ806bで判定されたラベル抵抗109の順位iに基づく補正係数Kを、不揮発データメモリ123の第1所定アドレスに書込保存する。
続いて、ステップ807、817によりRAMメモリ122の第2および第3所定アドレスに書込まれていた異常履歴情報を、不揮発データメモリ123の第2および第3所定アドレスに累積加算して保存する(ステップ827)。
【0252】
また、自己保持指令信号DR3を停止して、第1の電源リレー103の励磁コイル103bを消勢し(ステップ828)、最後に、車載エンジン制御装置100Cに対する電源供給を停止して(ステップ829)、図10の処理ルーチンを終了する。
【0253】
以上の制御フロー(図10)を概括説明すると、ステップ802〜803bの一連の処理は、電源スイッチ102が閉路された直後に実行され、ステップ804はラベル抵抗判別手段に対応し、ステップ805はラベル抵抗異常判定手段に対応し、ステップ806bは暫定情報選択手段に対応する。
【0254】
また、ステップ801〜819の一連の処理は、電源スイッチ102が継続投入されているときに反復実行され、ステップ815は定期異常判定手段に対応し、ステップ817は異常報知手段に対応し、ステップ819は空燃比校正検出手段に対応する。
【0255】
さらに、ステップ826〜829の一連の処理は、投入されていた電源スイッチ102が開路された後に実行され、ステップ826は判定記憶保存手段に対応し、ステップ827は異常発生情報保存手段に対応する。
【0256】
この発明の実施の形態3においては、ラベル抵抗109の判定処理が運転開始時のステップ804で実行されるので、車載エンジン制御装置100Cと排気ガスセンサ105Cとが接続されてから初めて電源投入が行われたときに判別されることになる。
または、排気ガスセンサ105Cを保守交換した場合や、車載エンジン制御装置100C自体を保守交換した場合には、電源スイッチ102が投入された直後に新しく接続された排気ガスセンサ105Cのラベル抵抗109が直ちに判別されることになる。
【0257】
判別されたラベル抵抗109に基づく補正係数Kの値は、電源スイッチ102が開路された時点で、ステップ826によって不揮発データメモリ123に書込み保存されるが、この保存データは、運転開始時にステップ805の判定結果が異常であった場合に、ステップ806bにより暫定係数として活用されるようになっている。
【0258】
なお、図8においては、第1の電源リレー103の出力接点103aは、車載エンジン制御装置100Cに対して給電し、第2の電源リレー104の出力接点104aは、電気負荷108と排気ガスセンサ105Cに対して給電したが、他の回路構成を適用してもよい。
【0259】
たとえば、出力接点103aから電気負荷108の一部および排気ガスセンサ105Cに給電したり、電源スイッチ102から他の一部の電気負荷に給電したり、車載エンジン制御装置100Cが関与しないその他の電気負荷に対する電源リレー(図示せず)が付加されることも可能である。
また、排気ガスセンサ105Cに給電する第2の電源線142Cは、出力接点103aや出力接点104aに接続せずに、電源スイッチ102に接続することができる。
【0260】
仮に、排気ガスセンサ105Cに給電する第2の電源線142Cを、出力接点103aや電源スイッチ102に接続した場合には、ラベル抵抗判別手段(ステップ804、814)を実行するときに、開閉素子117を強制駆動すると、開閉素子117に電熱ヒータ107への給電電流が流れ、開閉素子117の閉路電圧Vonは無視できない値になるうえ、電熱ヒータ107の温度変動に基づいて給電電流も変化するので、閉路電圧Vonも変動することになる。
【0261】
閉路分圧電圧Vb4は、変動する閉路電圧Vonを測定するための監視信号として使用されている。
ただし、図8に示すように、排気ガスセンサ105Cに給電する第2の電源線142Cを出力接点104aに接続した場合には、ラベル抵抗判別手段(ステップ804)を実行するときに、第2の電源リレー104を消勢しておくことにより、開閉素子117を強制駆動しても、開閉素子117には電熱ヒータ107への給電電流が流れず、開閉素子117の閉路電圧Vonがほぼ一定の微小値となるので、マイクロプロセッサ120Cへの閉路分圧電圧Vb4(監視信号)の入力を省略することもできる。
【0262】
また、図10動作によれば、ラベル抵抗109の判別は、運転開始時のステップ804において行われるが、前述(図3、図6)のように、初回判別時を除いて、電源スイッチ102が開路された時点で実行するようにすることもできる。
【0263】
図11はこの発明の実施の形態3による他の測定動作例を示すフローチャートであり、ステップ900、901a、902〜922、927〜929は、前述(図10参照)のステップ800、801、802〜822、827〜829と同様の処理である。
また、ステップ901b、906c、924〜926bは、前述(図3参照)のステップ301b、306c、324〜326bと同様の処理である。
【0264】
以下、図10との相違点について説明する。
この場合、図8内の不揮発プログラムメモリ121Cには、図10の制御プログラムに代わって、図11の制御プログラムが格納されている。
【0265】
まず、動作開始ステップ900に続いて、電源投入モニタ信号SWを監視することにより、電源スイッチ102が開路状態から閉路状態に変化したことを判定し(ステップ901a)、閉路直後には「YES」と判定してステップ901bに移行し、既に閉路している継続動作時には「NO」と判定してステップ913aに移行する。
【0266】
ステップ901bにおいては、後述のステップ926aでラベル抵抗109の判定結果が不揮発データメモリ123に保存されているか否かを確認し、判定(保存)済であれば、「YES」と判定してステップ906cに移行し、未判定であれば、「NO」と判定してステップ902に移行する。
【0267】
ステップ906cにおいては、後述のステップ926aで不揮発データメモリ123の第1所定アドレスに書込み保存されている補正係数Kの値を、RAMメモリ122の第1所定アドレスに転送書込みして、判定ステップ921に移行する。
【0268】
ステップ921の判定結果が「YES」の場合に実行されるステップ923においては、ステップ903a(図10内のステップ803a)と同様に、開閉指令信号DR1の論理レベルを「H」にセットして、開閉素子117を強制閉路駆動するとともに、指令信号DR4の論理レベルを「L」にセットして、第2の電源リレー104の付勢を禁止する。
【0269】
続いて、ステップ924においては、ステップ904(図10内のステップ804)と同様に、ラベル抵抗109の抵抗値Rxを算出して順位iを判定する。
また、ステップ925においては、ステップ905(図10内のステップ805)と同様に、ラベル抵抗109の異常の有無を判定し、異常があれば、「YES」と判定してステップ926bに移行し、正常であれば、「NO」と判定してステップ926aに移行する。
【0270】
ステップ926aにおいては、ステップ924で判定されたラベル抵抗109の順位iに基づく補正係数Kを、不揮発データメモリ123の第1所定アドレスに書込保存する。
ステップ926bにおいては、補正係数Kとして、K=1.00の基準値を選択して不揮発データメモリ123の第1所定アドレスに書込保存するか、または、不揮発データメモリ123の第1所定アドレスに既に補正係数Kが格納されている場合には、保存済の補正係数Kを変更せずに維持する。
【0271】
以上の制御フロー(図11)を概括説明すると、ステップ923〜929の一連の処理は、投入されていた電源スイッチ102が開路された後に実行され、ステップ924はラベル抵抗判別手段に対応し、ステップ925はラベル抵抗異常判定手段に対応し、ステップ926aは判定記憶保存手段に対応し、ステップ926bは暫定情報選択手段に対応し、ステップ927は異常発生情報保存手段に対応する。
【0272】
また、ステップ901b〜903bの一連の処理は、電源スイッチ102が閉路された直後に実行され、ステップ901bは保存確認手段に対応し、ステップ904はラベル抵抗判別手段に対応し、ステップ905はラベル抵抗異常判定手段に対応し、ステップ906bは暫定情報選択手段に対応する。
【0273】
さらに、ステップ901a〜919の一連の処理は、電源スイッチ102が継続投入されているときに反復実行され、ステップ915は定期異常判定手段に対応し、ステップ917は異常報知手段に対応し、ステップ919は空燃比校正検出手段に対応する。
【0274】
なお、図11の制御フローによれば、ステップ926aによって一旦ラベル抵抗の判定結果が記憶保存されると、ステップ904によるラベル抵抗の判別動作は不要となるので、エンジン始動時のマイクロプロセッサ120Cの制御負担が軽減されるようになっている。
【0275】
以上のように、この発明の実施の形態3(図8〜図11)に係る車載エンジン制御装置100Cは、第1(請求項6に対応)の特徴として、空燃比を測定するための排気ガスセンサ105Cと、車載エンジンの運転状態を監視するためのセンサ130(少なくとも、吸気量を測定または推定する吸気量センサを含む)との動作状態に応動し、電源スイッチ102が投入されているときに、車載バッテリ101から第1の電源線141を介して給電されて、エンジン駆動用の電気負荷108(燃料噴射用電磁弁を含む)を制御する。
【0276】
排気ガスセンサ105Cは、空燃比測定素子105a、105bの特性バラツキに対する補正係数Kを選択するための指標となるラベル抵抗109と、排気ガスセンサ105Cの温度を早期に活性化温度にするための電熱ヒータ107とを備えている。
【0277】
電熱ヒータ107の正端子は、第2の電源線142Cを介して車載バッテリ101に接続され、電熱ヒータ107の負端子は、ヒータ用配線により車載エンジン制御装置100Cに接続されている。
【0278】
ラベル抵抗109の負端子は、電熱ヒータ107の負端子に接続され、ラベル抵抗109の正端子は、個別の信号配線により車載エンジン制御装置100Cに接続されている。ラベル抵抗109の抵抗値は、多段階に変化する数値列の中の1つを基準として、所定の誤差範囲にあるものが、数値列の中から選択使用される。
【0279】
車載エンジン制御装置100Cは、互いに協働するマイクロプロセッサ120C、不揮発プログラムメモリ121C、RAMメモリ122、不揮発データメモリ123および多チャンネルAD変換器124を備えている。
【0280】
さらに、車載エンジン制御装置100Cは、ラベル抵抗109の正端子に直列接続されて駆動電圧Vccが印加される既知抵抗値の固定抵抗119cと、ラベル抵抗109と固定抵抗119cとの接続点の電位を多チャンネルAD変換器124に入力する分圧電圧測定回路と、マイクロプロセッサ120Cからの開閉指令信号DR1により電熱ヒータ107の負端子をグランド回路GNDに接続して電熱ヒータ107に給電する開閉素子117とを備えている。
【0281】
不揮発プログラムメモリ121Cは、ラベル抵抗判別手段(ステップ804、904、924)を構成する制御プログラムを備えるとともに、排気ガスセンサ105Cの検出信号出力Ip対空燃比A/Fの標準特性200に関するデータテーブル(または、近似算式)と、判別されたラベル抵抗109の抵抗値Rxに対応した補正係数Kの値に関するデータテーブル(または、近似算式)とを含む変換データ121cを備えている。
【0282】
ラベル抵抗判別手段(ステップ804、904、924)は、開閉素子117を強制閉路して、ラベル抵抗109の負端子の論理レベルが低電圧レベルとなったときに、多チャンネルAD変換器124に入力された分圧電圧Vb3の値と、既知の固定抵抗119cに印加された駆動電圧Vccの値とから、ラベル抵抗109の抵抗値Rxを算出し、算出された抵抗値Rxが、変換データ121cとして格納されたどの順位iのラベル抵抗109であるかを特定する。
【0283】
マイクロプロセッサ120Cは、排気ガスセンサ105Cの検出信号出力Ipの値と、ラベル抵抗109の抵抗値Rxと、変換データ121cの値とに応動して、所定の空燃比A/Fが得られるように燃料噴射量の制御を行う。
【0284】
このように、排気ガスセンサ105Cによる空燃比の検出信号出力Ipに応動して燃料噴射量を制御する車載エンジン制御装置100Cにおいて、排気ガスセンサ105Cの検出信号出力Ipの固体バラツキ変動を補正するための補正係数Kが、排気ガスセンサ105Cに付属されたラベル抵抗109の抵抗値Rxによって選択され、しかも、ラベル抵抗109の一端は、電熱ヒータ107の負端子に接続されている。
【0285】
したがって、選択された補正係数Kによって、個別の排気ガスセンサ105Cの出力特性が正確に補正されるとともに、排気ガスセンサ105Cのコネクタのピン数や配線本数を抑制することができる。
【0286】
また、ラベル抵抗109の抵抗値Rxは、ラベル抵抗109および既知の固定抵抗119cに印加された駆動電圧の分圧電圧値を用いて算出されるとともに、適用されるラベル抵抗109の抵抗値Rxは、多段階の数値列の中の1つを基準として所定の誤差範囲にあるものが使用される。
したがって、ラベル抵抗109の抵抗値Rxが環境温度によって変化しても、または、電源線の電圧変動が発生しても、所定の変動幅以内のものであれば、適用される補正係数Kを正確に特定することができる。
【0287】
また、第2(請求項7に対応)の特徴として、開閉素子117の出力電圧は、分圧抵抗119a、119bを介して多チャンネルAD変換器124に入力されており、開閉素子117を強制閉路して、ラベル抵抗109の負端子の論理レベルが低電圧レベルとなったときの電圧レベルは、分圧抵抗119a、119bの閉路分圧電圧Vb4によって測定される。
【0288】
ラベル抵抗判別手段(ステップ804、904、924)は、閉路分圧電圧Vb4から算出される開閉素子117の閉路電圧を算出し、固定抵抗119cおよびラベル抵抗109による分圧電圧Vb3の値から、開閉素子117の閉路電圧に比例した電圧を減算し、既知の固定抵抗119cに印加された駆動電圧Vccの値から、ラベル抵抗109の抵抗値Rxを算出し、算出された抵抗値Rxが、変換データ121cとして格納されたどの順位iのラベル抵抗109であるかを特定する。
【0289】
このように、ラベル抵抗判別手段(ステップ804、904、924)は、電熱ヒータ107を駆動するための開閉素子117の閉路電圧を測定する手段をさらに備えているので、開閉素子117の閉路電圧を用いて、正確にラベル抵抗109を測定することができる。
【0290】
また、第3(請求項8に対応)の特徴として、排気ガスセンサ105Cは、車載バッテリ101から、第2の電源リレー104の出力接点104aを介して給電され、ラベル抵抗判別手段(ステップ804、904、924)は、第2の電源リレー104を消勢した状態で実行される。
【0291】
このように、ラベル抵抗判別手段(ステップ804、904、924)は、排気ガスセンサ105Cに給電する第2の電源リレー104を消勢した状態で実行されるので、開閉素子117を閉路したときに、電熱ヒータ107およびヒータ用配線にヒータ電流が流れることはない。
したがって、ヒータ用配線の電圧降下が発生せず、高精度にラベル抵抗19の抵抗値Rxを測定することができる。
【0292】
また、第4(請求項9に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Cは、判定記憶保存手段(ステップ926a)と、保存確認手段(ステップ901b)とを構成する制御プログラムをさらに含む。
【0293】
判定記憶保存手段(ステップ926a)は、電源スイッチ102が開路されてから、車載エンジン制御装置100Cに対して暫時持続給電されている所定期間において、ラベル抵抗判別手段(ステップ924)によるラベル抵抗109の判別を行い、判別されたラベル抵抗109の基準値Ri、基準値Riの順位i、または、基準値Riに対応した補正係数Kの値を、不揮発データメモリ123に格納保存する。
【0294】
保存確認手段(ステップ901b)は、電源スイッチ102が閉路された直後に実行され、判定記憶保存手段(ステップ926a)で既に不揮発データメモリ123がラベル抵抗109の判別結果を記憶しているか否かを判定して、確認記憶済(判定済)であれば、不揮発データメモリ123に保存されている判別結果をRAMメモリ122に読出記憶し、不揮発データメモリ123に判別結果が保存されていなければ、ラベル抵抗判別手段(ステップ904)を実行して、判別結果をRAMメモリ122に書込記憶する。
【0295】
また、第5(請求項10に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Cは、ラベル抵抗異常判定手段(ステップ805、905、925)と、暫定情報選択手段(ステップ806b、906b、926b)と、異常発生情報保存手段(ステップ827、927)とを構成する制御プログラムをさらに含む。
【0296】
ラベル抵抗異常判定手段(ステップ805、905、925)は、ラベル抵抗判別手段(ステップ804、904、924)で測定されたラベル抵抗109の抵抗値Rxが、所定の基準値Riから逸脱した値であった場合に、ラベル抵抗109の断線・短絡異常であると判定する。
【0297】
暫定情報選択手段(ステップ806b、906b、926b)は、ラベル抵抗異常判定手段でラベル抵抗109の断線・短絡異常が判定されたときに実行され、補正係数KがK=1.0となる基準係数を選択するか、または、既に選択された補正係数Kが存在する場合には、補正係数Kを継続使用する。
異常発生情報保存手段(ステップ827、927)は、ラベル抵抗異常判定手段が、ラベル抵抗109の断線・短絡異常を判定したことを、不揮発データメモリ123に転送書込みする。
【0298】
また、第6(請求項11に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Cは、定期異常判定手段(ステップ815、915)と、異常報知手段(ステップ817、917)とを構成する制御プログラムを、さらに備えている。
【0299】
定期異常判定手段(ステップ815、915)は、電源スイッチ102の閉路状態が持続しているマイクロプロセッサ120Cの運転中において定期的に実行され、ラベル抵抗109の抵抗値Rxが所定の下限値未満であるか、または上限値以上であることにより、ラベル抵抗109またはその配線の短絡・断線異常の有無を判定する。
【0300】
異常報知手段(ステップ817、917)は、定期異常判定手段(ステップ815、915)が異常状態であること判定したときに、異常報知指令信号を発生するとともに、電源スイッチ102が遮断された直後においては、異常報知履歴情報を不揮発データメモリ123に格納保存させる。
【0301】
また、第7(請求項12に対応)の特徴として、多チャンネルAD変換器124を介してマイクロプロセッサ120Cに入力される、ラベル抵抗109と固定抵抗119cとの接続点の計測電位(分圧電圧Vb3)は、ラベル抵抗109の理論値の順位を変更すると所定倍率の等比級数として変化する数列となり、実際のラベル抵抗109の抵抗値は、公的規格に基づく標準数値列の中から選択される。
この結果として、実際のラベル抵抗106の順位iを変更すると、計測電位は、所定倍率の等比級数よりも大きな比率で変化する。
【0302】
また、第8(請求項13に対応)の特徴として、不揮発プログラムメモリ121Cは、空燃比校正検出手段(ステップ819、919)を構成する制御プログラムを、さらに備えている。
空燃比校正検出手段(ステップ819、919)は、排気ガスセンサ105Cによって得られる空燃比(A/F)に対応した検出信号出力Ipに対して、ラベル抵抗判別手段(ステップ804、904、924)によって特定されたラベル抵抗106の順位iに基づく補正係数Kを乗算して、校正検出信号出力Ipp(=K×Ip)を算出し、排気ガスセンサ105Cの標準出力特性に関するデータテーブル(または、近似算式)から、現在の空燃比を演算推定する。
【0303】
また、第9(請求項14に対応)の特徴として、排気ガスセンサ105Cによって得られる検出信号出力Ipは、正負の電流値であり、検出信号出力Ipを生成する回路には、電流検出抵抗Rsとバイアス電圧Vgとを加算する回路が付加されて、常に正の値となる補正入力信号電圧Vin(=Ip×Rs+Vg)として、多チャンネルAD変換器124に入力される。
マイクロプロセッサ120Cは、補正入力信号電圧Vinのデジタル変換値からバイアス電圧Vgに相当するデジタル変換値を減算し、電流検出抵抗Rsの値で除算することにより、検出信号出力Ipに比例したデジタル変換値を得るようになっている。
【符号の説明】
【0304】
100A、100B、100C 車載エンジン制御装置、101 車載バッテリ、102 電源スイッチ、103 第1の電源リレー、104 第2の電源リレー、105A、105B、105C 排気ガスセンサ、105a 酸素濃淡電池素子(空燃比測定素子)、105b 酸素ポンプ素子(空燃比測定素子)、106、106、109 ラベル抵抗、107 電熱ヒータ、108 電気負荷群(電気負荷)、110 制御電源、113a、113b 分圧抵抗(正端電位測定回路)、116a、116b 分圧抵抗(正端電位測定回路)、116、116c、119c 固定抵抗、116d、116e 選択開閉素子、117 開閉素子、119a、119b 分圧抵抗、120A、120B、120C マイクロプロセッサ、121A、121B、121C 不揮発プログラムメモリ、121a、121b、121c 変換データ、122 RAMメモリ、123 不揮発データメモリ、124 多チャンネルAD変換器、130 センサ群(センサ)、141 第1の電源線、142A、142B、142C 第2の電源線、301b、501b、901b 保存確認手段、304、504、904 ラベル抵抗判別手段、305、505、905 ラベル抵抗異常判定手段、306b、506b、806b、906b 暫定情報選択手段、315、515、815、915 定期異常判定手段、317、517、817、917 異常報知手段、319、519、819、919 空燃比校正検出手段、324、524、924 ラベル抵抗判別手段、325、525、925 ラベル抵抗異常判定手段、326a、526a、926a 判定記憶保存手段、326b、526b、926b 暫定情報選択手段、327、527、927 異常発生情報保存手段、602a 正端電位測定手段、602b 正端電位確認手段、604a 負端電位測定手段、804 ラベル抵抗判別手段、805 ラベル抵抗異常判定手段、815 ラベル抵抗異常判定手段、826 判定記憶保存手段、827 異常発生情報保存手段、DR1 開閉指令信号、DR2 選択指令信号、VB1 第1の給電電圧、VB2 第2の給電電圧、Vb1 第1のモニタ電圧、Vb2 第2のモニタ電圧、Vb3 分圧電圧、Vb4 閉路分圧電圧、Vcc 駆動電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空燃比を測定するための排気ガスセンサと、車載エンジンの運転状態を監視するための少なくとも吸気量を測定または推定する吸気量センサを含むセンサ群と、の動作状態に応動し、電源スイッチが投入されているときに車載バッテリから第1の電源線を介して給電されて、燃料噴射用電磁弁を含むエンジン駆動用の電気負荷群を制御する車載エンジン制御装置であって、
前記排気ガスセンサは、空燃比測定素子の特性バラツキに対する補正係数を選択するための指標となるラベル抵抗と、前記排気ガスセンサの温度を早期に活性化温度にするための電熱ヒータとを備え、
前記ラベル抵抗の一端と電熱ヒータの一端とが接続された正端子は、第2の電源線を介して前記車載バッテリに接続され、
前記ラベル抵抗の負端および前記電熱ヒータの負端は、それぞれ個別の配線によって前記車載エンジン制御装置に接続されており、
前記ラベル抵抗の抵抗値は、多段階に変化する数値列の中の1つを基準として、所定の誤差範囲にあるものが前記数値列の中から選択使用され、
前記車載エンジン制御装置は、互いに協働するマイクロプロセッサ、不揮発プログラムメモリ、RAMメモリ、不揮発データメモリおよび多チャンネルAD変換器を含むとともに、前記ラベル抵抗の正端電位測定回路と、前記ラベル抵抗の負端に直列接続された既知の固定抵抗の両端電圧を測定する負端電位測定回路とを、さらに備え、
前記不揮発プログラムメモリは、ラベル抵抗判別手段を構成する制御プログラムと、前記排気ガスセンサの検出信号出力対空燃比の標準特性に関するデータテーブルまたは近似算式、並びに判別されたラベル抵抗に対応した補正係数Kの値に関するデータテーブルまたは近似算式である変換データとを、さらに備え、
前記正端電位測定回路は、前記第1の電源線または前記第2の電源線から給電される第1または第2の給電電圧を分圧して前記多チャンネルAD変換器に入力する分圧抵抗によって構成され、
前記負端電位測定回路は、前記固定抵抗の両端電圧を前記多チャンネルAD変換器に入力する回路であり、
前記ラベル抵抗判別手段は、前記マイクロプロセッサにより算出された前記ラベル抵抗の抵抗値が、前記変換データとして格納されたどの順位のラベル抵抗であるかを特定し、
前記マイクロプロセッサは、前記排気ガスセンサの検出信号出力の値と、前記ラベル抵抗の抵抗値と、前記変換データの値とに応動して、所定の空燃比が得られるように燃料噴射量の制御を行う
ことを特徴とする車載エンジン制御装置。
【請求項2】
前記正端電位測定回路は、前記第2の電源線を介して前記ラベル抵抗の正端子に印加された前記第2の給電電圧に相当する電圧として、前記第1の電源線を介して前記車載エンジン制御装置に印加された前記第1の給電電圧を分圧して、前記多チャンネルAD変換器に入力し、
前記ラベル抵抗判別手段は、前記電源スイッチが投入された直後であるか、または前記電源スイッチが遮断されてから前記車載エンジン制御装置に対して暫時給電持続されている期間であって、少なくとも前記電熱ヒータを含む前記電気負荷群の全部または一部に対する給電が行われていない時点において、ラベル抵抗の抵抗値の判定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項3】
前記車載エンジン制御装置および前記排気ガスセンサは、前記電源スイッチが閉路しているときに付勢される第1の電源リレーの出力接点を介して給電され、
前記車載バッテリから前記第1の電源リレーの出力接点までの電源線は、共通の電源線が使用されている
ことを特徴とする請求項2に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項4】
前記正端電位測定回路は、前記第2の電源線を介して前記ラベル抵抗の正端子に印加された前記第2の給電電圧を分圧して、前記多チャンネルAD変換器に入力する高抵抗の分圧抵抗によって構成され、
前記負端電位測定回路は、前記マイクロプロセッサの選択指令信号に応答して前記固定抵抗を接続するとともに、前記分圧抵抗の下流側を開路して、前記固定抵抗の両端電圧を前記多チャンネルAD変換器の同一チャンネルに入力する選択開閉素子によって構成され、
前記ラベル抵抗判別手段は、前記固定抵抗を接続しない状態で前記ラベル抵抗の正端電位を測定する正端電位測定手段と、前記固定抵抗を接続してから前記固定抵抗の両端電圧を測定する負端電位測定手段とを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項5】
前記ラベル抵抗判別手段は、正端電位確認手段をさらに備え、
前記正端電位確認手段は、前記負端電位測定手段による前記ラベル抵抗の負端子電位の測定前後において、前記正端電位測定手段と前記正端電位確認手段とによって測定された正端子電位が所定の許容誤差内で一致していることを確認する
ことを特徴とする請求項4に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項6】
空燃比を測定するための排気ガスセンサと、車載エンジンの運転状態を監視するための少なくとも吸気量を測定または推定する吸気量センサを含むセンサ群と、の動作状態に応動し、電源スイッチが投入されているときに車載バッテリから第1の電源線を介して給電されて、燃料噴射用電磁弁を含むエンジン駆動用の電気負荷群を制御する車載エンジン制御装置であって、
前記排気ガスセンサは、空燃比測定素子の特性バラツキに対する補正係数を選択するための指標となるラベル抵抗と、前記排気ガスセンサの温度を早期に活性化温度にするための電熱ヒータとを備え、
前記電熱ヒータの正端子は、第2の電源線を介して前記車載バッテリに接続され、
前記電熱ヒータの負端子は、ヒータ用配線によって前記車載エンジン制御装置に接続され、
前記ラベル抵抗の負端子は、前記電熱ヒータの負端子に接続され、
前記ラベル抵抗の正端子は、個別の信号配線によって前記車載エンジン制御装置に接続されており、
前記ラベル抵抗の抵抗値は、多段階に変化する数値列の中の1つを基準として、所定の誤差範囲にあるものが前記数値列の中から選択使用され、
前記車載エンジン制御装置は、互いに協働するマイクロプロセッサ、不揮発プログラムメモリ、RAMメモリ、不揮発データメモリおよび多チャンネルAD変換器を含むとともに、前記ラベル抵抗の正端子に直列接続されて駆動電圧が印加される既知抵抗値の固定抵抗と、前記ラベル抵抗と固定抵抗との接続点の電位を前記多チャンネルAD変換器に入力する分圧電圧測定回路と、前記マイクロプロセッサからの開閉指令信号に応答して、前記電熱ヒータの負端子をグランド回路に接続して前記電熱ヒータに給電する開閉素子とを、さらに備え、
前記不揮発プログラムメモリは、ラベル抵抗判別手段を構成する制御プログラムと、前記排気ガスセンサの検出信号出力対空燃比の標準特性に関するデータテーブルまたは近似算式、並びに判別されたラベル抵抗に対応した補正係数Kの値に関するデータテーブルまたは近似算式である変換データとを、さらに備え、
前記ラベル抵抗判別手段は、前記開閉素子を強制閉路して前記ラベル抵抗の負端子の論理レベルが低電圧レベルとなったときに、前記多チャンネルAD変換器に入力された分圧電圧の値と、前記既知の固定抵抗に印加された前記駆動電圧の値とから、前記ラベル抵抗の抵抗値を算出し、算出された前記ラベル抵抗の抵抗値が、前記変換データとして格納されたどの順位のラベル抵抗であるかを特定し、
前記マイクロプロセッサは、前記排気ガスセンサの検出信号出力の値と、前記ラベル抵抗の抵抗値と、前記変換データの値とに応動して、所定の空燃比が得られるように燃料噴射量の制御を行う
ことを特徴とする車載エンジン制御装置。
【請求項7】
前記開閉素子の出力電圧は、分圧抵抗を介して前記多チャンネルAD変換器に入力されており、
前記開閉素子を強制閉路して前記ラベル抵抗の負端子の論理レベルが低電圧レベルとなったときの電圧レベルは、前記分圧抵抗の閉路分圧電圧によって測定され、
前記ラベル抵抗判別手段は、前記閉路分圧電圧から算出される前記開閉素子の閉路電圧を算出し、前記固定抵抗および前記ラベル抵抗による分圧電圧の値から、前記開閉素子の閉路電圧に比例した電圧を減算し、前記既知の固定抵抗に印加された駆動電圧の値から前記ラベル抵抗の抵抗値を算出し、算出された前記ラベル抵抗の抵抗値が、前記変換データとして格納されたどの順位のラベル抵抗であるかを特定する
ことを特徴とする請求項6に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項8】
前記排気ガスセンサは、前記車載バッテリから第2の電源リレーの出力接点を介して給電され、
前記ラベル抵抗判別手段は、前記第2の電源リレーを消勢した状態で実行される
ことを特徴とする請求項6に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項9】
前記不揮発プログラムメモリは、判定記憶保存手段および保存確認手段を構成する制御プログラムを、さらに含み、
前記判定記憶保存手段は、前記電源スイッチが開路されてから前記車載エンジン制御装置に対して暫時持続給電されている所定期間において、前記ラベル抵抗判別手段による前記ラベル抵抗の判別を行い、判別された前記ラベル抵抗の基準値、または前記基準値の順位、または前記基準値、に対応した補正係数の値を、前記不揮発データメモリに格納保存し、
前記保存確認手段は、前記電源スイッチが閉路された直後において実行され、前記判定記憶保存手段によって既に前記不揮発データメモリが前記ラベル抵抗の判別結果を記憶しているか否かを判定し、確認記憶済であれば、前記不揮発データメモリに保存されている前記記憶されている判別結果を前記RAMメモリに読出記憶し、前記不揮発データメモリに判別結果が保存されていないときには、前記ラベル抵抗判別手段を実行して、今回の判別結果を前記RAMメモリに書込記憶する
ことを特徴とする請求項1または請求項6に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項10】
前記不揮発プログラムメモリは、ラベル抵抗異常判定手段と、暫定情報選択手段と、異常発生情報保存手段と、を構成する制御プログラムを、さらに含み、
前記ラベル抵抗異常判定手段は、前記ラベル抵抗判別手段によって測定された前記ラベル抵抗の抵抗値が所定の基準値から逸脱した値であったときに、前記ラベル抵抗の断線・短絡異常であると判定し、
前記暫定情報選択手段は、前記ラベル抵抗異常判定手段によって前記ラベル抵抗の断線・短絡異常が判定されたときに実行され、補正係数Kが1.0となる基準係数を選択するか、または既に選択された補正係数がある場合には、前記既存の補正係数を継続使用し、
前記異常発生情報保存手段は、前記ラベル抵抗異常判定手段が前記ラベル抵抗の断線・短絡異常を判定したことを前記不揮発データメモリに転送書込みする
ことを特徴とする請求項1または請求項6に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項11】
前記不揮発プログラムメモリは、定期異常判定手段および異常報知手段を構成する制御プログラムを、さらに含み、
前記定期異常判定手段は、前記電源スイッチの閉路状態が持続している前記マイクロプロセッサの運転中において定期的に実行され、前記ラベル抵抗の抵抗値が所定の下限値未満であるか、または上限値以上であることに応答して、前記ラベル抵抗または前記ラベル抵抗の配線の短絡・断線異常の有無を判定し、
前記異常報知手段は、前記定期異常判定手段が異常判定処理を実行したときに、異常報知指令信号を発生するとともに、前記電源スイッチが遮断された直後においては、異常報知履歴情報を前記不揮発データメモリに格納保存させる
ことを特徴とする請求項1または請求項6に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項12】
前記多チャンネルAD変換器を介して前記マイクロプロセッサに入力される前記ラベル抵抗と前記固定抵抗との接続点の計測電位は、前記ラベル抵抗の理論値の順位を変更すると、所定倍率の等比級数として変化する数列となり、
実際の前記ラベル抵抗の抵抗値は、公的規格に基づく標準数値列の中から選択され、
この結果として、実際の前記ラベル抵抗の順位を変更すると、前記計測電位は、前記所定倍率の等比級数よりも大きな比率で変化する
ことを特徴とする請求項1または請求項6に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項13】
前記不揮発プログラムメモリは、空燃比校正検出手段を構成する制御プログラムを、さらに含み、
前記空燃比校正検出手段は、前記排気ガスセンサによって得られる空燃比に対応した検出信号出力に対して、前記ラベル抵抗判別手段によって特定されたラベル抵抗の順位に基づく補正係数を乗算して校正検出信号出力を算出し、前記排気ガスセンサの標準出力特性に関するデータテーブルまたは近似算式から現在の空燃比を演算推定する
ことを特徴とする請求項1または請求項6に記載の車載エンジン制御装置。
【請求項14】
前記排気ガスセンサによって得られる検出信号出力は、正負の電流値であり、
前記検出信号出力を生成する回路には、電流検出抵抗とバイアス電圧を加算する回路とが付加されており、常に正の値となる補正入力信号電圧として前記多チャンネルAD変換器に入力され、
前記マイクロプロセッサは、前記補正入力信号電圧のデジタル変換値から、前記バイアス電圧に相当するデジタル変換値を減算し、前記電流検出抵抗の値で除算することによって、前記検出信号出力に比例したデジタル変換値を得る
ことを特徴とする請求項13に記載の車載エンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−185442(P2010−185442A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31676(P2009−31676)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】