説明

車載パワーユニットの変速制御装置

【課題】変速操作ごとに常に適切な設定によって変速クラッチを接続することが可能な車載パワーユニットの変速制御装置を供する。
【解決手段】内燃機関Eの動力が湿式の変速クラッチCおよび複数の変速段を有する多段の変速装置Mを介して出力される車載パワーユニット1の変速制御装置2において、燃焼制御手段41とクラッチ作動機構24とクラッチ作動状態検出手段と変速指示手段とクラッチ入出力回転数差検出手段53、54と変速制御手段40とを備え、変速制御手段40は、クラッチ入出力回転数差ΔCnから変速クラッチのひきずり程度Gを導出し、ひきずり程度Gをパラメータとしてアクチュエータ駆動指令量Rを求め、アクチュエータ駆動指令量Rに基づきアクチュエータ34を駆動して前記変速クラッチの締結を制御する車載パワーユニット1の変速制御装置2。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式変速クラッチを介して動力が伝達される変速機構を備えた車載パワーユニットの変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の変速機構は、変速クラッチを介して動力が伝達され、変速操作の際には、変速クラッチを切断して駆動ギアと被駆動ギアの噛み合わせを変更し、その後変速クラッチを接続する。
【0003】
変速クラッチが接続される際のクラッチの作動は、作動時における変速クラッチのオイルの油温や変速クラッチの経年変化等によって、変速クラッチの状態が変化し、常に最適な変速クラッチの接続を行うことが困難であった。
【0004】
このような不都合を解消するために、変速クラッチの接続状態を常に一定に保つことを目的とした車両の変速装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−183812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載された車両の変速制御装置は、変速装置の変速操作に連動して駆動する油圧クラッチを、予め記憶された設定時間に基づいて昇圧して締結し、変速の際に該設定時間よりも短時間でクラッチ接続時間が行われた場合には、短縮された時間を前記設定時間と置き換えて新たな設定時間とし、次のクラッチ接続時には新たな設定時間に基づいてクラッチを昇圧し締結するものである。
【0007】
しかし、このような車両の変速装置では、変速を行った際のクラッチ接続時間を記憶し、次の変速操作の際のクラッチ接続に利用するので、最初の1回目の変速操作におけるクラッチ接続時には、適切に行うための処理ができず、適切な設定によって変速クラッチ接続を行うことができないものであった。
さらに、変速操作から次の変速操作までの時間が長い場合には、その間の変速クラッチのオイルの温度変化によってオイル粘度が変化する等、変速クラッチの状態が変化してしまい、適切な設定によって変速クラッチの接続を行うことができない等の不都合があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、変速クラッチの状態をクラッチ切断時ごとに検出して判断し、変速クラッチの切断時における変速クラッチの状態に基づいて、そのつど変速クラッチの接続動作を制御し、変速操作ごとに常に適切な設定によって変速クラッチを接続することが可能な車載パワーユニットの変速制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決したものであって、請求項1に記載の発明は、内燃機関の動力が、オイル雰囲気中に配置された湿式の変速クラッチおよび複数の変速段を有する多段の変速装置を介して出力される車載パワーユニットの変速制御装置において、内燃機関の燃焼を制御する燃焼制御手段と、アクチュエータの駆動により前記変速クラッチを作動させるクラッチ作動機構と、前記変速クラッチの作動状態を検出するクラッチ作動状態検出手段と、変速段の切換えを指示する変速指示手段と、前記変速クラッチの入力側と出力側の回転数の差であるクラッチ入出力回転数差(ΔCn)を検出するクラッチ入出力回転数差検出手段と、前記変速指示手段の変速指示信号と前記クラッチ入出力回転数差検出手段が検出したクラッチ入出力回転数差(ΔCn)と前記クラッチ作動状態検出手段が検出したクラッチ作動状態とを入力し、前記燃焼制御手段と前記クラッチ作動機構を制御する変速制御手段とを備え、前記変速制御手段は、変速指示信号を入力すると、前記クラッチ作動機構を駆動し、前記クラッチ作動状態検出手段が前記変速クラッチの切断開始を検出した時、燃焼制御手段により前記内燃機関の燃焼を停止し、クラッチ切断処理中に前記クラッチ入出力回転数差検出手段によりクラッチ入出力回転数差(ΔCn)を検出し、前記クラッチ入出力回転数差(ΔCn)から前記変速クラッチのひきずり程度(G)を導出し、
前記クラッチ状態検出手段が前記変速クラッチの締結を検出すると、前記ひきずり程度Gをパラメータとしてアクチュエータ駆動指令量(R)を求め、同アクチュエータ駆動指令量(R)に基づき前記アクチュエータを駆動して前記変速クラッチの締結を制御することを特徴とした車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載パワーユニットの制御装置において、前記ひきずり程度(G)は、クラッチ入出力回転数差(ΔCn)に基づいてあらかじめ作成されたマップにより導出されることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の車載パワーユニットの制御装置において、前記燃焼制御手段は、前記内燃機関の点火停止および燃料噴射停止により、前記内燃機関の燃焼を停止することを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車載パワーユニットの制御装置において、前記クラッチ作動機構は前記アクチュエータの駆動をシフトスピンドルの回動に伝達し、同シフトスピンドルの回動を前記変速クラッチの作動に変換する機構であり、前記クラッチ作動状態検出手段は、前記シフトスピンドルの回動角度であるシフトスピンドル角度(α)によりクラッチの作動状態を検出することを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の車載パワーユニットの制御装置において、前記変速制御手段は、変速指示信号を入力すると、前記アクチュエータを正転駆動して前記シフトスピンドルを往動回動し、前記シフトスピンドル角度αが前記変速クラッチの切断を開始するクラッチ切断開始角度(α1)に達したとき、燃焼制御手段に燃焼制御信号を出力して内燃機関の燃焼を停止し、同時にクラッチ切断時機関回転数(Nc)を入力し、シフト後予測機関回転数(Ny)を、前記クラッチ切断時機関回転数(Nc)に、シフト後ギアレシオ(Rb)をシフト前ギアレシオ(Ra)で除したものを乗じて算出し、該シフト後予測機関回転数(Ny)に基づいて前記変速クラッチの締結を制御することを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の車載パワーユニットの制御装置において、前記変速制御手段は、クラッチ締結開始からクラッチ締結終了までのクラッチ締結時間(Tt)を、クラッチ接続開始時のスロットル開度(θ)に基づいて、あらかじめ設定されたマップにより導出して制御することを特徴とするものである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の車載パワーユニットの制御装置において、前記変速制御手段は、処理1ループ当たりの目標回転数増減量(ΔN)を、前記シフト後予測回転数(Ny)から前記クラッチ切断時機関回転数(Nc)を減じたものを、前記クラッチ締結時間(Tt)に対応した処理ループ回数で除することにより算出し、前記クラッチ切断時機関回転数(Nc)から処理ループごとに、前記目標回転数増減量(ΔN)を減じたものを、新たなクラッチ締結目標回転数(Nm)とし、前記クラッチ締結目標回転数(Nm)に基づいて前記変速クラッチを作動制御することを特徴とするものである。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の車載パワーユニットの制御装置において、前記変速制御手段は、前記変速クラッチのアクチュエータ駆動指令量(R)を、所定時間経過後の前記クラッチ締結目標回転数(Nm)と実測機関回転数(Nj)と前記ひきずり程度(G)から求め、同アクチュエータ駆動指令量(R)に基づき前記アクチュエータを駆動して前記変速クラッチを作動制御することを特徴とするものである。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の車載パワーユニットの制御装置において、前記変速クラッチのアクチュエータ駆動指令補正量(ΔR)を、前記実測機関回転数(Nj)と前記クラッチ締結目標回転数(Nm)との偏差に、前記ひきずり程度(G)を乗じたものとして算出し、前記アクチュエータ駆動指令量(R)を、予め設定されている基本アクチュエータ駆動指令量(Rk)と前記アクチュエータ駆動指令補正量(ΔR)を加えたものとして算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の車載パワーユニットの変速制御装置によれば、変速制御手段が、変速クラッチの切断開始時に、内燃機関の燃焼を停止すると同時に、変速クラッチの入出力回転数差(ΔCn)を検出し、該変速クラッチの入出力回転数差(ΔCn)に基づいて、変速クラッチの切断開始時におけるクラッチひきずり程度(G)を導出し、該クラッチひきずり程度(G)から変速クラッチのアクチュエータ駆動指令量を求め、該アクチュエータ駆動指令量に基づいて変速クラッチの締結を制御するので、変速クラッチの切断ごとに、そのクラッチ切断時における変速クラッチのオイル粘度等によって変化する変速クラッチの状態を算出して変速クラッチの締結を制御することが可能となり、すなわち変速クラッチが締結される直前の変速クラッチの状態に基づいて変速クラッチの締結を制御することができるので、変速操作ごとに常に適切な設定により変速クラッチの接続を行うことが可能となり、円滑な変速切替えを行うことができる。
【0019】
さらに、変速制御手段が、変速クラッチの切断開始時に、内燃機関の燃焼を停止すると同時に変速クラッチの入出力回転数差(ΔCn)を検出するので、車両の運転者のスロットル操作による機関回転数の変化の影響を受けずに、クラッチ切断時のクラッチの状態を判断することができ、クラッチ切断時により精度の高いひきずり程度(G)を求めることが可能となり、変速操作ごとの変速クラッチの接続をより適切に行うことができる。
【0020】
請求項2記載の車載パワーユニットの変速制御装置によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、変速クラッチのひきずり程度(G)が、クラッチ入出力回転数差(ΔCn)に基づいてあらかじめ作成されたマップにより導出されるので、ひきずり程度(G)を容易に求めることができ、変速クラッチの接続の制御を容易に行うことができる。
【0021】
請求項3の車載パワーユニットの変速制御装置によれば、請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加えて、燃焼制御手段は、内燃機関の点火停止および燃料噴射停止によって、内燃機関の燃焼を停止しているので、内燃機関の燃焼制御を確実かつ容易に行うことができる。
【0022】
請求項4の車載パワーユニットの変速制御装置によれば、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、クラッチ作動機構は、アクチュエータの駆動をシフトスピンドルの回動に伝達し、シフトスピンドルの回動を変速クラッチの作動に変換しているので、アクチュエータの駆動により変速クラッチを正確に作動させることができる。
【0023】
さらに、クラッチ作動状態検出手段は、シフトスピンドル角度(α)によって変速クラッチの作動状態を検出しているので、変速クラッチの作動状態を容易に検出することができる。
【0024】
請求項5の車載パワーユニットの変速制御装置によれば、請求項4に記載の発明の効果に加えて、シフトスピンドル角度(α)がクラッチ切断開始角度(α1)に達したときを変速クラッチの切断の開始がされた状態と判断し、内燃機関の燃焼停止とクラッチ切断時機関回転数(Nc)を入力し、クラッチ切断時機関回転数(Nc)とシフト後ギアレシオ(Rb)およびシフト前ギアレシオ(Ra)に基づいて、シフト後予測機関回転数(Ny)を算出するので、正確にシフト後予測機関回転数(Ny)を求めることができ、該シフト後予測機関回転数(Ny)に基づいて、変速クラッチの締結を制御するので、より適切に変速クラッチを接続することが可能となる。
【0025】
請求項6の車載パワーユニットの変速制御装置によれば、請求項5に記載の発明の効果に加えて、クラッチ締結開始からクラッチ締結終了までのクラッチ締結時間(Tt)を、クラッチ接続開始時のスロットル開度(θ)に基づいて、あらかじめ設定されたマップにより導出して制御するので、運転者が車両の速度を上げようとしてスロットルを開いている場合には、クラッチ締結時間(Tt)を短くして、内燃機関から車輪への動力伝達が断絶される時間を短くすることができ、運転者の意図に基づいて、より車両の速度を上げることが可能となる。
【0026】
請求項7の車載パワーユニットの変速制御装置によれば、請求項6に記載の発明の効果に加えて、前記変速制御手段は、処理1ループ当たりの目標回転数増減量(ΔN)を、
シフト後予測回転数(Ny)、クラッチ切断時機関回転数(Nc)、およびクラッチ締結時間(Tt)に対応した処理ループ回数により算出し、処理ループごとにクラッチ締結目標回転数(Nm)を求めて、該クラッチ締結目標回転数(Nm)に基づいて変速クラッチを作動制御するので、変速クラッチの接続をより適切に行うことができる。
【0027】
請求項8の車載パワーユニットの変速制御装置によれば、請求項7に記載の発明の効果に加えて、変速クラッチのアクチュエータ駆動指令量(R)を、所定時間経過後の前記クラッチ締結目標回転数(Nm)と実測機関回転数(Nj)と前記ひきずり程度(G)から求め、アクチュエータ駆動指令量(R)に基づきアクチュエータを駆動して変速クラッチを作動制御するので、所定時間経過ごとの変速クラッチの状態に基づいたアクチュエータ駆動指令量(R)を算出することができ、所定時間経過ごとに変速クラッチの状態に合致した、変速クラッチの接続を行うことができる。
【0028】
請求項9の車載パワーユニットの変速制御装置によれば、請求項8に記載の発明の効果に加えて、変速クラッチのアクチュエータ駆動指令補正量(ΔR)を、実測機関回転数(Nj)とクラッチ締結目標回転数(Nm)との偏差に、ひきずり程度(G)を乗じたものとして算出し、アクチュエータ駆動指令量(R)を、予め設定されている基本アクチュエータ駆動指令量(Rk)とアクチュエータ駆動指令補正量(ΔR)を加えたものとして算出して変速クラッチの締結を制御するので、適切なアクチュエータ駆動指令量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例である車載パワーユニットの変速制御装置の構成を示す図である。
【図2】変速制御装置のタイミングチャートである。
【図3】シフトスピンドル角度と時間によりシフトスピンドル状態を判定するシフトスピンドル判定処理図である。
【図4】クラッチ入出力回転数差(ΔCn)に基づきひきずり程度(G)を導出するマップである。
【図5】スロットル開度(θ)に基づきクラッチ締結目標時間(Tt)を導出するマップである。
【図6】変速制御装置の主制御を示すフローチャートである。
【図7】ATモードにおけるシフト実施判定を示すフローチャートである。
【図8】MTモードにおけるシフト実施判定を示すフローチャートである。
【図9】シフトアップ処理を示すフローチャート図である。
【図10】クラッチ切断中処理を示すフローチャートである。
【図11】シフト中処理を示すフローチャートである。
【図12】クラッチ締結中処理を示すフローチャートである。
【図13】クラッチ締結目標機関回転数Nm設定処理を示すフローチャートである。
【図14】実測機関回転数Njによるフィードバック制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施例を図1ないし図14を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施例である車載パワーユニット1および変速制御装置2の構成図である。図1に示した内燃機関Eは、自動二輪車に搭載される4ストローク内燃機関であって、図示されない左右割のシリンダケース、シリンダブロック3、シリンダヘッド4および図示されないヘッドカバーが上下方向に順次重ねられ一体に締結され、シリンダブロック3には上下方向に貫通するシリンダボア5が形成され、該ボア5内にピストン6が嵌合され、該ピストン6は、コンロッド7を介して、クランクケースに回転可能に支持されたクランク軸8のクランクピン7と連結されている。
【0032】
シリンダヘッド4とピストン6の間には燃焼室10が形成されており、シリンダヘッド4には燃焼室10に通じる吸気ポート11および排気ポート12が設けられ、吸気ポート11および排気ポート12を開閉する吸気弁13、排気弁14が配設されている。吸気ポート11および排気ポート12には、それぞれ吸気管15および排気管16が接続され、吸気管15には吸気ポート11に向かって燃料を噴射する噴射弁17が設けられており、吸気ポート11から吸入される空気と噴射弁17から噴射された燃料が混合されて燃焼室内に送られるようになっている。燃焼室10に臨んで、混合気に点火するための点火栓18が、シリンダヘッド4に螺合されている。内燃機関Eの燃焼室10における燃焼エネルギーは、ピストン6の運動エネルギーへと変換されて、ピストン6が上下動される。該ピストン6の上下動によりコンロッド7を介してクランク軸8が回転駆動されるようになっている。
【0033】
クランク軸8、メイン軸20およびカウンタ軸21はその軸線方向が平行になるように配設され、左右のクランクケース4に設けられた図示されない軸受けによりそれぞれ回転自在に支持されている。クランク軸8の回転駆動力は、断続可能なクラッチCを介してメイン軸20に伝達され、さらに歯車変速機構Gを備えた変速機構Mを介してカウンタ軸21に伝達されるようになっている。
【0034】
該変速機構Mは、メイン軸20およびカウンタ軸21に支持される複数の歯車を備えた歯車変速機構Gを具備し、メイン軸20には駆動ギア22、カウンタ軸21には被駆動ギア23がそれぞれ軸支されており、本歯車変速機構Gは、常時噛み合い式の変速ギア機構であり、対応する駆動ギア22と被駆動ギア23は常時噛み合っている。
【0035】
さらに、メイン軸20とカウンタ軸21の下方には、図示されないシフトフォーク支持軸およびシフトドラム30が左右のクランクケース4により回転自在に架設支持されており、シフトフォーク軸には、前記車変速機構Gの歯車の噛み合いを変更するためのシフトフォーク31が軸方向に摺動自在に支持されている。
【0036】
シフトドラム30のドラム表面には、図示されないカム溝が形成され、前記シフトフォーク31の突部のそれぞれが、カム溝に噛み合うようになっている。シフトドラム30が所定角度回転されると、カム溝に案内されてシフトフォーク31の突部がシフトドラム軸方向に移動されるので、シフトドラム30の回転角度によりシフトフォーク31のシフトドラム30の軸線方向における位置が定められ、所定位置へと移動されるようになっている。
【0037】
これらのシフトフォーク31がシフトフォーク支持軸の軸線方向に沿ってそれぞれ所定位置へ移動されると、メイン軸20にスプライン嵌合された駆動ギア22、もしくはカウンタ軸21にスプライン嵌合された被駆動ギア23が、シフトフォーク31により左右方向の所定位置に移動され、これらの側面に設けられた図示されないドグクラッチが隣接するギアに嵌合されることにより、変速段の切換が行われるようになっている。
【0038】
メイン軸20およびカウンタ軸21に平行に、シフトスピンドル32が、クランクケース4に回動自在に支持されている。シフトスピンドル32と前記シフトドラム30の間にはシフト送り機構33が配設され、シフトスピンドル32の回動によって、シフト送り機構33が操作され、シフトドラム30は所定角度回動されて、変速装置Mの変速段が切替られるようになっている。
【0039】
変速クラッチCは、オイル雰囲気中に配置される湿式の変速クラッチCであって、メイン軸20の右端に配設されており、図示されないクラッチアウタはクランク軸8からギアを介して駆動力が伝達され、図示されないクラッチインナはメイン軸20に嵌着されている。
【0040】
クラッチアウタとクラッチインナの間には、クラッチアウタの内周壁にスプライン嵌合される図示されない摩擦板と、クラッチインナの外周壁にスプライン嵌合される図示されない摩擦板が交互に軸方向に配設され、図示されないバネにより付勢されたプレッシャープレートが、軸方向に沿ってクラッチインナに向かって摩擦板を押圧し、変速クラッチCは接続状態に保持されている。
【0041】
また、前記プレッシャープレートは、前記シフトスピンドル32の回動に伴って作動するクラッチ作動機構24により、軸方向に摩擦板の押圧を解除する方向に移動され、変速クラッチCは切断されるようになっている。
【0042】
前記シフトスピンドル32は、変速制御装置2のT/Mコントロールユニット40により制御されるアクチュエータ34により回動角度が制御されている。図2のタイミングチャートに示すようなタイミングで、シフトスピンドル角度の回動に伴い、クラッチ容量が変位して変速クラッチCの切断、接続が行われ、かつシフトドラム30の回転角度が変位するようになっている。
【0043】
変速クラッチCが基本作動状態である場合において、シフトスピンドル32が回動し始めてクラッチCの切断が開始し始めたときのシフトスピンドル32の角度αをクラッチ切断開始角度α1と、クラッチCの切断が終了したときのシフトスピンドル角度をクラッチ切断角度α2と、シフトスピンドル32がそれ以上回動しないシフトスピンドル32の角度をスピンドル停止角度α3とそれぞれ定義する。
【0044】
変速クラッチCの基本状態とは、変速クラッチCの切断接続操作において設定された変速クラッチCの基本的な状態をいい、この基本状態をもとにクラッチの状態の変化に対応して、変速クラッチCの制御が行われるようになっている。
【0045】
変速クラッチCが基本状態にある場合には、αがα1以下の時には、変速クラッチCは接続された状態となり、αがα1以上でα2以下の時には、変速クラッチCは半クラッチ状態となり、αがα2以上であるときにはクラッチが切断された状態となる。
【0046】
前記シフトスピンドル32はアクチュエータに34により回転駆動されるようになっており、アクチュエータ34駆動は、T/Mコントロールユニット40により制御されるようになっており、
【0047】
さらに、車両には、図示されないフロントホールの回転数を検出するフロントホイール回転数センサ50、内燃機関Eの機関回転数を検出する機関回転数センサ51、スロットル開度θを検出するスロットル開度センサ52、クラッチ入力側回転数を検出するクラッチ入力側回転数検出センサ53、クラッチ出力側回転数を検出するクラッチ出力側回転数検出センサ54、カウンタシャフト回転数を検出するカウンタシャフト回転数センサ55、シフトドラム30の回動角度βを検出するシフトドラムアングルセンサ56、シフトスピンドル32の回動角度αを検出するシフトスピンドルアングルセンサ57が設けられ、また、シフトスイッチ42およびAT/MT切替スイッチ43が設けられている。
【0048】
これらのセンサ51、52、53、54、55、56、57によって検出された値、シフトスイッチ42からシフト状態の信号、およびAT/MT切替スイッチ43から変速状態の信号が、T/Mコントロールユニット40に送られるようになっている。
【0049】
これらの信号に基づき、T/Mコントロールユニット40が、変速装置Mの変速操作、変速クラッチCの作動、および内燃機関Eの燃焼制御について判断し、T/Mコントロールユニット40からアクチュエータ34に制御信号が送られ、変速クラッチCの切断、接続、および変速装置Mの変速段の切替が行われ、さらにT/Mコントロールユニット40か燃焼制御ユニット41に燃焼制御信号が送られ、燃焼制御ユニット41から、内燃機関Eの燃料噴射弁17および点火栓18に信号が送られて、内燃機関Eの燃焼が制御されるようになっている。
【0050】
変速制御装置2のT/Mコントロールユニット40による主制御は、図6のフローチャートによって処理され、本処理は一定周期で実施されるものである。以下図6に基づいて、該主制御の処理について詳細に説明する。
【0051】
ステップS1では、変速制御装置であるT/Mコントロールユニット40が、各種センサの値、例えばスロットル開度センサ52によるスロットル開度θ、機関回転数センサ51による実測機関回転数Nj、クラッチ入力側回転数センサ53およびクラッチ出力側回転数センサ54によるクラッチ入出力回転数差ΔCn、フロントホイール回転数センサ50により計算される車速V、シフトドラムアングルセンサ56によるシフトドラム角度β、シフトスピンドルアングルセンサ57によるシフトスピンドル角度α、AT/MT切替スイッチ43による現在のATモードあるいはMTモードの状態、シフトスイッチ42によるシフトアップ指令あるいはシフトダウン指令の状態等を読み込む。
【0052】
変速クラッチCは、オイル雰囲気中に配置される湿式の変速クラッチCであるので、変速クラッチCのオイルの温度が低い場合にはオイル粘度が高くなり、変速クラッチCの引きずりの程度が大きくなって、クラッチ入力側回転数とクラッチ出力側回転数の差ΔCnが少なくなる。また、変速クラッチCのオイルの温度が高い場合にはオイル粘度が低くなり、変速クラッチの引きずり程度が小さくなり、ΔCnは大きくなる。ステップS1で、クラッチ入出力回転数差ΔCnを検出して読み込むことにより、変速クラッチCの引きずりの程度を判別することができる。
【0053】
ステップ1が終了すると、ステップS2へ移行する。ステップS2では、ステップS1で読み込んだATモードあるいはMTモードの情報に基づき判断し、ATモードのときはATモード時シフト実施判定処理(ステップS3)へ移行し、MTモードのときはMTモード時シフト実施判定処理(ステップS4)へ移行する。
【0054】
その後ステップS3またはステップS4で判断されたシフト指令を判別し(ステップS5)、シフトアップ指令が判別されるとシフトアップ処理(ステップS6)に移行し、シフトダウン指令が判別されるとシフトダウン処理(ステップS7)に移行し、シフト指令があるがシフトすることができないと判別されるとアクチュエータ停止(ステップS8)に移行し、シフト指令に基づいてシフト処理が行われるようになっており、シフト処理が終了し、あるいはステップS5においてシフト指令がないと判別されると、主制御は終了する。
【0055】
以下、ATモード時シフト実施判定処理(ステップS3)、およびMTモード時シフト実施判定処理(ステップS4)について詳細に説明する。
【0056】
図7は、図6のATモードシフト実施判定(ステップS3)を示すフローチャートである。
【0057】
まず、ステップS1で読み込まれたスロットル開度θおよび車速Vに基づいて、予め作成されている変速マップにより目標とする目標ギアポジションGPoが検索される(ステップS11)。
【0058】
さらに、目標ギアポジションGPoと現在の変速段に基づいた現在のギアポジションGPを比較し(ステップS12)、現在のギアポジションGPが目標ギアポジションGPoより小さいときには、シフト指令をシフトアップとし(ステップS13)、現在のギアポジションGPが目標ギアポジションGPoより大きいときにはシフト指令をシフトダウンとし(ステップS14)、現在のギアポジションGPが目標ギアポジションGPoと等しいときには、シフト指令をシフトなしとして(ステップS15)、ATモード時シフト実施判定処理は終了する。
【0059】
また、図8は、図6のMTモード時シフト実施判定(ステップS4)を示すフローチャートである。
【0060】
まず、ステップS1で読み込んだシフトスイッチ42の情報に基づき、シフトスイッチ42の状態を判定する(ステップS21)。シフトアップを指令するアップスイッチがオンであれば、新たな目標ギアポジションGPoを現在の目標ギアポジションGPoに1を加算した値として新たに設定し(ステップS22)、その後ステップS24に移行する。シフトダウンを指令するダウンスイッチがオンであれば、新たな目標ギアポジションGPoを現在の目標ギアポジションGPoに1を減算した値として新たに設定し(ステップS23)、その後ステップS24に移行する。また、シフトスイッチ42がオフであれば、現在の目標ギアポジションをその値のままで、ステップS24に移行する。
【0061】
その後、現在のギアポジションGPと目標ギアポジションGPoとを比較し(ステップS24)、現在のギアポジションGPが目標ギアポジションGPoより小さいときには、シフト指令をシフトアップとし(ステップS25)、現在のギアポジションGPが目標ギアポジションGPoより大きいときにはシフト指令をシフトダウンとし(ステップS26)、現在のギアポジションGPが目標ギアポジションGPoと等しいときには、シフト指令をシフトなしとして(ステップS27)、MTモード時シフト実施判定処理は終了する。
【0062】
ATモード時シフト実施判定処理またはMTモード時シフト実施判定によって、ギアポジションGPと目標ギアポジションGPoを比較し、現在のギアポジションGPを目標ギアポジションGPoに近づけるようにシフト指令を出すことができる。
【0063】
さらに、それぞれのシフト実施判定に基づいて(ステップS3、ステップS4)、シフト指令があるか否か、シフト指令がどの状態かについて判定する(ステップS5)。
【0064】
シフトアップ指令であるときは、シフトアップ処理(ステップS6)へ、シフトダウン指令であるときは、シフトダウン処理(ステップS7)へ移行する。さらに、シフト指令はあるがシフトすることが不可能なとき、すなわち最高速ギアの状態であってシフトアップ指令がある場合、あるいは最低速ギアの状態であってシフトダウン指令がある場合には、シフトさせることが不可能であり、このような場合はアクチュエータ34を停止するアクチュエータ停止処理(ステップS8)が行われる。また、シフト指令がない場合も、アクチュエータ停止処理(ステップS8)が行われる。
【0065】
以下、シフトアップ処理(ステップS6)について詳細に説明する。
ステップS5の判定によりシフトアップ処理(ステップS6)に移行すると、図9に示したフローチャートに基づいてシフトアップ処理が開始される。
【0066】
シフトアップ処理(ステップS6)では、まずシフトスピンドル状態を判定する(ステップS31〜ステップS36)。図3に示される図により、シフトスピンドル32の回動角度αおよび時間に基づいて、変速クラッチCが、クラッチ切断中、シフト中、クラッチ締結中、それ以外、のいずれかの状態にあるかを判定し、その変速クラッチCの状態に合わせてシフトアップの処理(ステップS26〜ステップS39)を行うものである。
【0067】
シフトスピンドル状態の判定(ステップS31)は、シフトスピンドル角度αの値と、シフトスピンドル角度αの微分値、すなわちシフトスピンドル角度の時間当たりの変位量に基づいて、図3のグラフにより判定される。シフトスピンドル角度αが変速クラッチCの切断が開始される角度であるクラッチ切断開始角度α1以上かつクラッチの切断が完了しているクラッチ切断角度α2以下であって、Δαが0以上の場合はクラッチ切断中であり、クラッチ切断角度αがα2以上の場合はシフト中であり、クラッチ切断角度αがα1以上かつα2以下であり、Δαが0より小さい場合はクラッチ締結中と判断される。
【0068】
以下、図9のフローチャートに基づいて、シフトスピンドル状態の判定と、シフトアップの処理について詳しく説明する。
【0069】
まず、シフトスピンドル角度αが、クラッチ切断開始角度α1より大きいかを判定する(ステップS32)。
【0070】
ステップS32でαがα1より大きいと判定されると、ステップS33に移行し、シフトスピンドル角度αの微分値Δαの正負を判定する。
【0071】
ステップS33で、Δαが0以上と判定されると、ステップ34に移行し、αがクラッチ切断角度α2以下であるかを判定し、αがα2以下であればクラッチ切断中と判定され、クラッチ切断中処理に移行する(ステップS37)。
【0072】
ステップS34で、αがα2以上と判定されれば、シフト中処理(ステップS38)に移行する。
【0073】
ステップS33で、Δαが0以上でないと判定されれば、ステップS35に進み、αがα2以上か否かが判定され、αがα2以上であれば、シフト中処理(ステップS38)に移行する。αがα2以上でないと判定されれば、クラッチ締結中処理(ステップS39)に移行する。
【0074】
また、ステップS32でαがα1以上でないと判定されると、ステップS36に進み、Δαが0以上かを判定し、Δαが0以上であればアクチュエータ34は正転方向に駆動され(ステップS40)、Δαが0以上でなければアクチュエータ34は逆転方向に駆動される(ステップS41)。
【0075】
シフト開始から処理を経時的にみると、シフト開始時において、シフトスピンドル角度αは0であり、α<α1であって、Δα=0であるのでステップS40に移行し、アクチュエータ34は正転方向に駆動される。シフトスピンドル32が正転方向に回動されるので、所定時間経過すると、α>α1となり、またシフトスピンドル32は正転方向に回動されているので、Δα≧α1となりクラッチ切断中処理(ステップS37)に移行する。さらにシフトスピンドル32が正転方向に回動され、α≧α2となりシフト中処理(ステップS38)に移行する。シフト中処理により所定時間経過するとアクチュエータ34は逆転方向に回動され始め、シフトスピンドル32は逆転方向に回動されΔα≦0となり、さらにα≦α2となると、クラッチ締結中処理(ステップS39)に移行する。さらにα≦α1となると、シフトアクチュエータは逆転方向の駆動が維持され、シフト処理は終了する。
【0076】
以下、クラッチ切断中処理(ステップS37)、シフト中処理(ステップS38)、クラッチ締結中処理(ステップS39)についてそれぞれ詳しく説明する。
【0077】
図9のステップS34でクラッチ切断中処理(ステップS37)へ移行すると、図10に示すクラッチ切断中処理のフローチャートに従って処理される。
【0078】
まず、T/Mコントロールユニット40から燃焼制御ユニット41へと信号が送られ、さらに燃焼制御ユニット41から、内燃機関Eの燃焼室10の点火栓18および燃料噴射弁17へと信号が送られ、燃焼室10の点火および燃料噴射弁17の燃料噴射が停止される(ステップS42)。
【0079】
その後、クラッチ切断時の機関回転数のNcの保存フラグFcが0に等しいかを判定し(ステップS43)、Fc=0ならばNcが保存されていないので、Ncをその時点の実測機関回転数Njとする(ステップS44)。さらにNc保存済みフラグFcを1とし(ステップS45)、シフト中処理(ステップS38)においてシフトスピンドル32が停止する時間をカウントするスピンドル停止カウンタをリセットし(ステップS47)、クラッチ締結中処理(ステップS39)におけるクラッチ締結目標機関回転数Nm設定処理におけるNm設定済みフラグFmをリセットし(ステップS48)、クラッチ締結時目標回転機関回転数Nm設定処理(ステップS39)において所定時間におけるNmを設定するための所定時間をカウントするクラッチ締結カウンタをリセットし(ステップS49)、ステップS50へと移行する。
【0080】
ステップS50では、アクチュエータ34が駆動され、シフトスピンドル32が変速クラッチCを切断させる正転方向に回転され、クラッチ切断中処理は終了する。
【0081】
また、前記ステップS43でNcが設定されておりFc=1であれば、ステップS43からステップS50へ進み、クラッチ切断中処理は終了する。
【0082】
その後、シフトスピンドル角度αが増大していきα≧α2となると、クラッチ切断中処理(ステップS37)から、シフト中処理(ステップS38)に移行する。
【0083】
シフト中処理(ステップS38)は図11に示すフローチャートに従って処理される。
【0084】
まず、シフトスピンドル角度αがスピンドル停止角度α3より大きいかを判定し(ステップS51)、αがα3に達していなければ、アクチュエータ34を回転方向の変化をしないまま駆動させる(ステップS60)。
【0085】
アクチュエータ34が駆動され続けてαがα3以上になると、ステップS51においてα>α3と判定されると、ステップS52に移行する。
ステップS52では、スピンドル停止カウンタjが所定ループJに達しているかを判定し、jがJに達していなければ(j≠J)ステップS58に移行し、アクチュエータ34を停止し(ステップS58)シフトスピンドル32の回動が停止され、スピンドル停止カウンタがインクリメントされる(ステップS59)。
【0086】
シフトスピンドルを停止した後、所定ループの処理が繰り返されて、j=Jとなると、ステップS53に移行する。
【0087】
ステップS53では、現在のシフト処理を行っている間のクラッチの引きずり程度Gが設定されているか否かについて判断する。引きずり程度Gが設定されているか否かのフラグFGが0であれば、ステップS54に移行し、その時点のクラッチの入出力回転数差デルタCnを読み込み(ステップS54)、図4に示される予め作成されたマップに基づいて、クラッチ入出力回転数差ΔCnの値から、クラッチの引きずり程度Gを検索し設定し(ステップS55)、FGを1とし(ステップS56)、ステップS57へ移行し、アクチュエータ34は逆転方向へ駆動される。
【0088】
シフト中処理において、一度引きずり程度Gを検索し設定すると、FG=1となるので、その後は、ステップS53からステップS57へ移行し、再度引きずり程度Gが検索され設定されることはない。
【0089】
アクチュエータ34が逆転方向に駆動され、αがα3以下になるとステップS51からステップS60へと移行し、アクチュエータの回転方向を変化させずに駆動させるので、アクチュエータの逆転方向への駆動が維持される。
【0090】
その後、シフトスピンドル角度αが減少していきα<α2となると、クラッチ締結中処理に移行する(ステップS39)。該クラッチ締結中処理は、図12に示すようなフローチャートに従って処理される。
【0091】
まず、クラッチ締結目標機関回転数Nm設定処理が行われ(ステップS61)、その後実測機関回転数Njによるフィードバック処理が行われ(ステップS62)、T/Mコントロールユニット40から燃焼制御ユニット41へと信号が送られ、内燃機関Eの点火栓18の点火および燃料噴射弁17の燃料噴射が行われ(ステップS63)、内燃機関Eの燃焼が開始される。さらにクラッチ切断時機関回転数Nc保存フラグFcがリセットされ(ステップS64)、クラッチ締結中処理が終了する。
【0092】
前記クラッチ締結目標機関回転数Nm設定処理(ステップS61)、および実測機関回転数Njによるフィードバック処理(ステップS62)について以下詳しく説明する。
【0093】
前記クラッチ締結目標機関回転数Nm設定処理(ステップS61)は、シフト後予測機関回転数Nyを、クラッチ切断時の機関回転数と変速前のギアレシオRaと変速後のギアレシオRbに基づいて算出し、該NyとNcに基づいてシフト処理1ループごとの目標とする機関回転数のNmを算出する処理であり、図13に示したフローチャートに基づいて処理が行われる。
【0094】
クラッチ締結目標機関回転数Nmの設定済みフラグFmが0か否かを判定し(ステップS71)、Fm=0ならステップS72に移行し、シフト後予測機関回転数Nyを算出する。Nyは、図10のクラッチ切断中処理におけるステップS44で読み込んだクラッチ切断時機関回転数Ncに、シフト後ギアレシオRbをシフト前ギアレシオRaで除したものを乗じて算出する(ステップS72)。
【0095】
その後、スロットル開度θをスロットル開度センサから読み込み(ステップS73)、該スロットル開度θと、図5に示したクラッチ締結目標時間テーブルに基づいて、クラッチ締結開始からクラッチ締結終了までのクラッチ締結時間Ttを検索し(ステップS74)、処理1ループ当たりの目標機関回転数の増減量ΔNを、(Ny−Nc)/(Tt/Tl)の計算式により算出する(ステップS73)。NyからNcを減ずることより、クラッチ締結時間における機関回転数の増減数が求められ、クラッチ締結時間Ttを1ループ当たりの処理時間Tlで除することにより、クラッチ締結時間Tt内に何ループの処理が行われるか算出されるので、処理1ループ当たりの目標機関回転数の増減量ΔNは、(Ny−Nc)/(Tt/Tl)の計算式により求められる。
【0096】
その後、クラッチ締結目標機関回転数Nmをクラッチ切断時機関回転数Ncとし(ステップS76)、さらにNmの設定済みフラグFmを1とし(ステップS77)、クラッチ締結カウンタiをインクリメントし(ステップS78)、クラッチ締結目標機関回転数Nm設定処理は終了する。
【0097】
2回目の処理ループ時からは、1回目の処理ループによりFm=1に設定されているので(ステップS77)、ステップS71からステップS78に移行し、その処理ループ時におけるクラッチ締結目標機関回転数Nmは、クラッチ切断時機関回転数Ncから、処理1ループ当たりの目標機関回転数増減量ΔNにその処理ループ数を乗じたものを除して算出され(ステップS78)、ステップS79に移行しクラッチ締結カウンタiをインクリメントし、クラッチ締結目標機関回転数Nm設定処理は終了する。
【0098】
クラッチ締結目標機関回転数Nm設定処理(ステップS61)が終了すると、機関回転数によるフィードバック処理(ステップS62)に移行する。
【0099】
機関回転数によるフィードバック処理(ステップS62)は、図14のフローチャートに従って処理される。まず、基本アクチュエータ駆動指令量Rkが、シフトスピンドル角度αおよびスロットル開度θに基づいて、予め設定されたマップにより導出される(ステップS81)。このマップは、変速クラッチCが基本状態にあるときに、変速クラッチCの締結が最適に行われるように設定されているものである。
【0100】
その後アクチュエータ駆動指令補正量ΔRを求める。アクチュエータ駆動指令補正量ΔRは、実測機関回転数Njとクラッチ締結目標機関回転数Nmとの偏差に、クラッチの引きずり程度Gを乗じて算出するものである(ステップS82)。
【0101】
さらに、前記基本アクチュエータ駆動指令量Rkに前記アクチュエータ駆動指令補正量ΔRを加えて、アクチュエータ駆動指令量Rを算出し(ステップS83)、このRに基づいてアクチュエータ34が駆動されて、実測機関回転数Njによるフィードバック制御は終了する。
【0102】
実測機関回転数Njによるフィードバック制御(ステップS62)が終了すると、図12のフローチャートに従って、内燃機関Eの点火、燃料噴射が開始され(ステップS63)、Nc保存済みフラグFcを0とし(ステップS64)、クラッチ締結中処理(ステップS37)が終了し、図9に示されるシフトアップ処理(ステップS6)は終了し、主制御は一定周期で実施される。
【0103】
シフトアップ処理(ステップS6)について、前述したように詳細に説明したが、シフタダウン処理(ステップS7)では、アクチュエータ34により、シフトスピンドル32の回動がシフトアップ時とは反対に逆転方向に回動されてシフト処理が開始され、その後正転方向に回動されシフト処理の終了に向かうようになっているが、シフトアップ処理と同様の処理によって行われる。
【0104】
本実施例では、変速制御装置2が、変速クラッチCの切断開始時に、内燃機関Eの燃焼を停止すると同時に、変速クラッチCの入出力回転数差ΔCnを検出し、該変速クラッチCの入出力回転数差ΔCnに基づいて、変速クラッチCの切断開始時におけるクラッチひきずり程度Gを導出し、該クラッチひきずり程度Gから変速クラッチのアクチュエータ駆動指令量Rを求め、該アクチュエータ駆動指令量Rに基づいて変速クラッチの締結を制御するので、変速クラッチの切断ごとに、そのクラッチ切断時における変速クラッチのオイル粘度等によって変化する変速クラッチの状態を算出して変速クラッチの締結を制御することが可能となり、すなわち変速クラッチが締結される直前の変速クラッチの状態に基づいて変速クラッチの締結を制御することができるので、変速操作ごとに常に適切な設定により変速クラッチの接続を行うことが可能となり、円滑な変速切替えを行うことができる。
【0105】
さらに、変速制御装置2が、変速クラッチCの切断開始時に、内燃機関Eの燃焼を停止すると同時に変速クラッチCの入出力回転数差ΔCnを検出するので、車両の運転者のスロットル操作による機関回転数の変化の影響を受けずに、クラッチ切断時のクラッチの状態を判断することができ、クラッチ切断時により精度の高いひきずり程度Gを求めることが可能となり、変速操作ごとの変速クラッチの接続をより適切に行うことができる。
【0106】
また、変速クラッチのひきずり程度Gが、クラッチ入出力回転数差ΔCnに基づいてあらかじめ作成されたマップにより導出されるので、ひきずり程度Gを容易に求めることができ、変速クラッチの接続の制御を容易に行うことができる。
【0107】
さらにまた、燃焼制御装置2は、内燃機関Eの点火停止および燃料噴射停止によって、内燃機関Eの燃焼を停止しているので、内燃機関Eの燃焼制御を確実かつ容易に行うことができる。
【0108】
また、クラッチ作動機構は24、アクチュエータ34の駆動をシフトスピンドル32の回動に伝達し、シフトスピンドル32の回動を変速クラッチCの作動に変換しているので、アクチュエータ34の駆動により変速クラッチCを正確に作動させることができる。
【0109】
さらに、クラッチ作動状態の検出は、シフトスピンドル角度αによって変速クラッチCの作動状態を検出しているので、変速クラッチCの作動状態を容易に検出することができる。
【0110】
さらにまた、シフトスピンドル角度αがクラッチ切断開始角度α1に達したときを変速クラッチの切断の開始がされた状態と判断し、内燃機関Eの燃焼停止とクラッチ切断時機関回転数Ncを入力し、クラッチ切断時機関回転数Ncとシフト後ギアレシオRbおよびシフト前ギアレシオRaに基づいて、シフト後予測機関回転数Nyを算出するので、正確にシフト後予測機関回転数Nyを求めることができ、該シフト後予測機関回転数Nyに基づいて、変速クラッチCの締結を制御するので、より適切に変速クラッチCを接続することが可能となる。
【0111】
また、クラッチ締結開始からクラッチ締結終了までのクラッチ締結時間Ttを、クラッチ接続開始時のスロットル開度θに基づいて、あらかじめ設定されたマップにより導出して制御するので、運転者が車両の速度を上げようとしてスロットルを開いている場合には、クラッチ締結時間Ttを短くして、内燃機関から車輪への動力伝達が断絶される時間を短くすることができ、運転者の意図に基づいて、より車両の速度を上げることが可能となる。
【0112】
さらに、変速制御装置2は、処理1ループ当たりの目標回転数増減量ΔNを、シフト後予測回転数Ny、クラッチ切断時機関回転数Nc、およびクラッチ締結時間Ttに対応した処理ループ回数により算出し、処理ループごとにクラッチ締結目標回転数Nmを求めて、該クラッチ締結目標回転数Nmに基づいて変速クラッチCを作動制御するので、変速クラッチCの接続をより適切に行うことができる。
【0113】
さらにまた、変速クラッチCのアクチュエータ駆動指令量Rを、所定時間経過後のクラッチ締結目標回転数Nmと実測機関回転数Njとひきずり程度Gから求め、アクチュエータ駆動指令量Rに基づきアクチュエータを駆動して変速クラッチCを作動制御するので、所定時間経過ごとの変速クラッチの状態に基づいたアクチュエータ駆動指令量Rを算出することができ、所定時間経過ごとに変速クラッチCの状態に合致した、変速クラッチCの接続を行うことができる。
【0114】
また、変速クラッチCのアクチュエータ駆動指令補正量ΔRを、実測機関回転数Njとクラッチ締結目標回転数Nmとの偏差に、ひきずり程度Gを乗じたものとして算出し、アクチュエータ駆動指令量Rを、予め設定されている基本アクチュエータ駆動指令量Rkとアクチュエータ駆動指令補正量ΔRを加えたものとして算出して変速クラッチの締結を制御するので、適切なアクチュエータ駆動指令量を算出することができる。
【0115】
さらに、基本アクチュエータ駆動指令量Rkを、その処理ループごとに読み込んだ実測機関回転数Nj(ステップS1)と、その処理ループごとに算出したクラッチ締結目標機関回転数Nm(ステップS76、ステップS78)との偏差および、クラッチ締結開始直前にクラッチ入出力回転数差ΔCnより導出した引きずり程度G(ステップS55)に基づいて算出したアクチュエータ駆動指令補正量ΔRで補正して、アクチュエータ駆動指令量Rを算出し、該アクチュエータ駆動指令量Rによって変速クラッチの締結を制御しているので、クラッチ締結直前のクラッチの状態に基づいて変速クラッチの締結を制御することが可能となり、内燃機関始動直後の変速や、前の変速から時間が経過し変速クラッチのオイル粘度が変化してしまった場合の変速であっても、常に適切なクラッチ制御を行うことができ、スムーズな変速操作を行うことが可能となる。
【0116】
先の実施例では、1つのアクチュエータ34によりシフトスピンドル32を回動させて、変速クラッチCおよび変速装置Mの制御および操作を行っていたが、変速クラッチC、変速装置Mのそれぞれを別々に、制御および操作するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
E…内燃機関、C…変速クラッチ、Cs…発進クラッチ、M…変速機構、G…歯車群、Pdn…プライマリドリブンギア、
1…車載パワーユニット、2…変速制御装置、10…燃焼室、17…燃料噴射弁、18…点火栓、20…メイン軸、21…カウンタ軸、22…駆動ギア、23…被駆動ギア、23…クラッチアウタ、24…クラッチインナ、30…シフトドラム、31…シフトフォーク、32…シフトスピンドル、33…シフト送り装置、34…アクチュエータ、40…T/Mコントロールユニット、41…燃焼制御ユニット、42…シフトスイッチ、43…AT/MT切替スイッチ、50…フロントホイール回転センサ、51…機関回転センサ、52…スロットル開度センサ、53…クラッチ入力側回転センサ、54…クラッチ出力側回転センサ、55…カウンタシャフト回転数センサ、56…シフトドラムアングルセンサ、57…シフトスピンドルアングルセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(E)の動力が、オイル雰囲気中に配置された湿式の変速クラッチ(C)および複数の変速段を有する多段の変速装置(M)を介して出力される車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)において、
内燃機関(E)の燃焼を制御する燃焼制御手段(41)と、
アクチュエータ(34)の駆動により前記変速クラッチ(C)を作動させるクラッチ作動機構(24)と、
前記変速クラッチ(C)の作動状態を検出するクラッチ作動状態検出手段と、
変速段の切換えを指示する変速指示手段と、
前記変速クラッチ(C)の入力側と出力側の回転数の差であるクラッチ入出力回転数差(ΔCn)を検出するクラッチ入出力回転数差検出手段(53、54)と、
前記変速指示手段の変速指示信号と前記クラッチ入出力回転数差検出手段(53、54)が検出したクラッチ入出力回転数差(ΔCn)と前記クラッチ作動状態検出手段が検出したクラッチ作動状態とを入力し、前記燃焼制御手段(41)と前記クラッチ作動機構(24)を制御する変速制御手段(40)とを備え、
前記変速制御手段(40)は、
変速指示信号を入力すると、前記クラッチ作動機構を駆動し、
前記クラッチ作動状態検出手段が前記変速クラッチ(C)の切断開始を検出した時、燃焼制御手段(41)により前記内燃機関(E)の燃焼を停止し、クラッチ切断処理中に前記クラッチ入出力回転数差検出手段(53、54)によりクラッチ入出力回転数差(ΔCn)を検出し、
前記クラッチ入出力回転数差(ΔCn)から前記変速クラッチのひきずり程度(G)を導出し、
前記クラッチ状態検出手段が前記変速クラッチ(C)の締結を検出すると、前記ひきずり程度(G)をパラメータとしてアクチュエータ駆動指令量(R)を求め、同アクチュエータ駆動指令量(R)に基づき前記アクチュエータ(34)を駆動して前記変速クラッチの締結を制御することを特徴とする車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)。
【請求項2】
前記ひきずり程度(G)は、クラッチ入出力回転数差(ΔCn)に基づいてあらかじめ作成されたマップにより導出されることを特徴とする請求項1に記載の車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)。
【請求項3】
前記燃焼制御手段は、前記内燃機関(E)の点火停止および燃料噴射停止により、前記内燃機関の燃焼を停止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)。
【請求項4】
前記クラッチ作動機構(24)は前記アクチュエータ(34)の駆動をシフトスピンドル(32)の回動に伝達し、同シフトスピンドル(32)の回動を前記変速クラッチ(C)の作動に変換する機構であり、
前記クラッチ作動状態検出手段は、前記シフトスピンドル(32)の回動角度であるシフトスピンドル角度(α)によりクラッチの作動状態を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれかに記載の車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)。
【請求項5】
前記変速制御手段は、
変速指示信号を入力すると、前記アクチュエータ(34)を正転駆動して前記シフトスピンドル(32)を往動回動し、
前記シフトスピンドル角度αが前記変速クラッチ(C)の切断を開始するクラッチ切断開始角度(α1)に達したとき、燃焼制御手段に燃焼制御信号を出力して内燃機関(E)の燃焼を停止し、同時にクラッチ切断時機関回転数(Nc)を入力し、
シフト後予測機関回転数(Ny)を、前記クラッチ切断時機関回転数(Nc)に、シフト後ギアレシオ(Rb)をシフト前ギアレシオ(Ra)で除したものを乗じて算出し、
該シフト後予測機関回転数(Ny)に基づいて前記変速クラッチ(C)の締結を制御することを特徴とする請求項4記載の車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)。
【請求項6】
前記変速制御手段は、クラッチ締結開始からクラッチ締結終了までのクラッチ締結時間(Tt)を、クラッチ接続開始時のスロットル開度(θ)に基づいて、あらかじめ設定されたマップにより導出して制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか記載の車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)。
【請求項7】
前記変速制御手段は、
処理1ループ当たりの目標回転数増減量(ΔN)を、
前記シフト後予測回転数(Ny)から前記クラッチ切断時機関回転数(Nc)を減じたものを、前記クラッチ締結時間(Tt)に対応した処理ループ回数で除することにより算出し、
前記クラッチ切断時機関回転数(Nc)から処理ループごとに、前記目標回転数増減量(ΔN)を減じたものを、新たなクラッチ締結目標回転数(Nm)とし、
前記クラッチ締結目標回転数(Nm)に基づいて前記変速クラッチ(C)を作動制御することを特徴とする請求項6記載の車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)。
【請求項8】
前記変速制御手段は、
前記変速クラッチ(C)のアクチュエータ駆動指令量(R)を、所定時間経過後の前記クラッチ締結目標回転数(Nm)と実測機関回転数(Nj)と前記ひきずり程度(G)から求め、
同アクチュエータ駆動指令量(R)に基づき前記アクチュエータ(34)を駆動して前記変速クラッチ(C)を作動制御することを特徴とする請求項7記載の車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)。
【請求項9】
前記変速制御手段は、
前記変速クラッチ(C)のアクチュエータ駆動指令補正量(ΔR)を、前記実測機関回転数(Nj)と前記クラッチ締結目標回転数(Nm)との偏差に、前記ひきずり程度(G)を乗じたものとして算出し、
前記アクチュエータ駆動指令量(R)を、予め設定されている基本アクチュエータ駆動指令量(Rk)と前記アクチュエータ駆動指令補正量(ΔR)を加えたものとして算出することを特徴とする請求項8記載の車載パワーユニット(1)の変速制御装置(2)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−215273(P2012−215273A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82166(P2011−82166)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】