説明

車載レインセンサ装置

【課題】降雨判定精度に優れ、特に温度変動によるその低下を抑止可能な車載レインセンサを提供すること。
【解決手段】車載レインセンサのLED2から出た光の一部を基準光として基準光量検出用PD4により、ガラス面から反射した光を検出光として雨検出用PD3により検出し、検出光と基準光との比率である光量比を算出する(ステップS106)。温度と晴れ時における光量比との関係を学習しておき(ステップS114)、現在温度とこの学習した関係とから求めた現在の晴れ時光量比と、今回算出した光量比との大小により降雨を判定する(ステップS110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて降雨を検出し、判定する車載レインセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、周囲温度の変動に応じて受光手段からの信号電圧の増幅利得を変更することにより車載レインセンサの温度特性を補正することを提案している。
【0003】
本出願人の出願になる下記の特許文献2は、あらかじめ記憶する車載レインセンサの受光素子出力と温度との関係を示す温度特性と、温度センサにより検出した現在の温度とに基づいて、受光素子出力を補正することにより受光素子出力が温度により変動するのを抑止することを提案している。
【0004】
上記した技術を用いる場合、受光素子出力が温度により変動して降雨判定精度が低下するという問題を解消することができるはずである。ただし、これには、出荷する各車載レインセンサの受光素子出力の温度特性が互いに等しいということが前提となる。しかしながら、現実には、各車載レインセンサの受光素子出力の温度特性は各車載レインセンサごとに無視できないばらつきをもつことが知られている。
【0005】
また、上記特許文献1は、エンジン始動時点で雨無し状態と判定した場合に受光素子出力(すなわち受光部の入射光量)と温度とのデータペアを記憶することにより、受光素子出力の温度特性を学習することも提案している。具体的には、晴れ時での受光素子出力(晴れ時光量)を種々の温度でメモリに記憶しておき、温度センサで検出した現在温度に一致する晴れ時光量をメモリから読み出し、この晴れ時光量と今回の受光素子出力(検出光量)とを比較して降雨判定を行う。したがって、この学習が理想的に行われれば、各車載レインセンサごとの受光素子出力の温度特性のばらつきは良好に解消されるはずである。
【特許文献1】特開平11−326186号公報
【特許文献2】特開2001−349961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車載レインセンサ固有の温度特性を高精度に補償するためには、細かく区分された種々の温度ごとの受光素子出力を取得して、精細な温度特性を各車載レインセンサごとに個別に完成(学習)させる必要がある。したがって、この学習を出荷前に行う場合には、製造サイドに大きな設備、作業負担が生じて現実的でなく、また、出荷後に広い温度範囲にわたって精細な温度区分で上記学習を完全に完成するには、長期の学習期間が必要となるという問題があった。
【0007】
車載レインセンサを出荷前に学習させる場合について更に具体的に説明すると、実車環境を模した試験用ガラス面に車載レインセンサを装着し、種々温度を変更してデータを採取することになるが、その後に車載レインセンサが装着される実車とこの試験用ガラス面とは光学的、熱的、形状的にばらつきが存在し、そのうえ、車載レインセンサとガラス面との間の透明緩衝層の状態も異なるため、実車を用いない学習による温度補償の効果は限定的となる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、製造サイドに多大な負担を掛けることなく、しかも出荷後比較的早期に降雨判定精度を向上可能な車載レインセンサを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1発明の車載レインセンサは、光を車両のガラス面に照射する発光部と、温度を検出する温度検出部と、前記ガラス面から反射して検出された検出光の量である検出光を光電変換して前記検出光に相当する検出信号を出力する検出光検出部と、前記検出信号及び検出温度に基づいて降雨を判定する信号処理部とを備える車載レインセンサにおいて、前記発光量の所定割合からなる基準光を光電変換して前記基準光に相当する基準信号を出力する基準光検出部を備え、前記信号処理部は、前記基準信号及び検出信号を増幅する増幅部と、前記基準信号に対する前記検出信号の比である光量比を算出する光量比算出部と、雨無し判定時の前記光量比に相当する晴れ時光量比と前記温度との関係を記憶する記憶部と、検出温度に対応する前記晴れ時光量比を前記記憶部から読み出した後、前記光量比を前記晴れ時光量比と比較して降雨の有無を判定する判定部と、前記判定部により雨無しと判定された場合に前記検出温度及び前記光量比を前記記憶部に書き込んで前記関係を学習する学習部とを有することを特徴としている。
【0010】
すなわち、この発明では、発光部は、降雨を検出するべきガラス面に照射する検出光に対して一定の光量比となる基準光を所定の基準反射面に放射する。反射した基準光は基準光検出部にて光電変換されて基準信号となり、反射した検出光は検出光検出部にて光電変換されて検出信号となる。好適には、基準反射面は上記ガラス面とできるだけ近接させて配置され、両光の光路特性の差を低減させるべきである。検出光量は、ガラス面への雨滴付着により変調されるので、雨滴付着により光量比(検出光量/基準光量)は減少する。したがって、求めた光量比を、降雨判定しきい値である晴れ時光量比と比較することにより、降雨判定を行うことができる。以下、この降雨検出方式を光量比判定型降雨検出方式と称する。
【0011】
この光量比判定型降雨検出方式によれば、降雨検出部の温度変化による判定精度低下を格段に向上することができる。以下、この理由を説明する。降雨検出部の温度変化による検出光量の変化は、温度変化による発光部(通常はLED)の発光光量の変化と、温度変化による光路系の伝送光量の変化に起因する。ここで言う光路系の伝送光量とは、発光部から出た光が検出光検出部に入射する光量を言う。
【0012】
温度変化により発光光量が変化すると基準光量も変動するため、光量比は発光部の温度変化の影響を受けない。したがって、光量比によって降雨判定を行えば、発光部の発光量の温度影響をキャンセルして優れた降雨判定精度を達成することができる。
【0013】
本発明では更に、温度変化による上記光量比の変動を学習して補正する。これにより、降雨判定精度を更に向上できることが判明した。この理由を詳しく説明する。上記説明したように光量比判定型降雨検出方式では、発光部への温度影響を防止する。しかし、光路系の伝送特性への温度変化の影響はこの光量比判定方式によりキャンセルすることはできない。逆に、光量比判定方式では、発光部から基準光検出部に至る光路系への温度影響が加味される。したがって、温度変化による光路系の伝送特性変化が非常に重要となる。この知見に鑑み、本発明では、温度と晴れ時光量比との関係を学習するとともに温度を検出し、検出温度に対応する晴れ時光量比を読み出し、この晴れ時光量比と今回検出した検出光量とを実質的に比較して降雨判定を行う。これにより、光量比判定により発光部への温度影響のキャンセルに加えて、温度変化が光路系の伝送効率変動に与える影響も相殺できるため、従来に比べて格段に優れた降雨判定精度を達成することができた。
【0014】
好適な態様において、前記信号処理部は、車両始動直後の光量比学習のための雨判定動作である初期雨判定に雨無しと判定した場合に前記光量比の学習を行うとともに、その後の車両走行時に実施される降雨判定動作である通常雨判定に雨無しと判定した場合にも前記学習を行う。
【0015】
すなわち、従来の温度特性学習型レインセンサが、車両始動初期に雨無し判定した際の光量を晴れ時光量としてその時の温度とともに学習するのに比べて、この態様の温度学習型車載レインセンサは、雨無しと判定した場合の光量比と温度とを学習するに加えて、その後の走行中において雨無しと判定した場合の光量比と温度とを学習する。
【0016】
このようにすれば、車両出荷から短期間にて精細な温度−光量比関係を習得することが可能となり、早期に精密な降雨判定が可能となる。言い換えれば、雨無し条件にて車両始動時に比べ、車両走行時には温度が種々変化するため、精細な温度−光量比関係を短期に取得することができるわけである。その結果、早期に良好な判定精度に達することが可能となる。
【0017】
好適な態様において、前記信号処理部は、前記初期雨判定において少なくとも前記基準光量が所定範囲となるように、前記発光部の発光量をフィードバック制御する。
【0018】
すなわち、この態様によれば、車両始動直後に光量比を学習する際に、たとえば温度変化等により発光部の発光光量が変動したとしても一定の最適光量の基準光が基準光検出部に入射するため、増幅部から出力される基準光相当電圧や検出光相当電圧を最適な大きさとすることができ、増幅率の安定度を向上することができる。その結果として降雨判定精度を向上することができる。
【0019】
好適な態様において、前記信号処理部は、前記通常雨判定において前記検出光量が降雨判定に好適な大きさとなるように、前記発光部の発光量を前記初期雨判定における前記発光部の発光量よりも増大させるフィードバック制御を行う。これにより、通常の雨判定に際して検出光量を最適なレベルとすることができる。
【0020】
上記課題を解決する第2発明の車載レインセンサは、光を車両のガラス面に照射する発光部と、前記ガラス面から反射して検出された検出光の量である検出光を光電変換して前記検出光に相当する検出信号を出力する検出光検出部と、前記検出信号に基づいて降雨を判定する信号処理部とを備える車載レインセンサにおいて、前記発光量の所定割合からなる基準光を光電変換して前記基準光に相当する基準信号を出力する基準光検出部を備え、前記信号処理部は、前記基準信号及び検出信号を増幅する増幅部と、前記基準信号に対する前記検出信号の比である光量比を算出する光量比算出部と、雨無し判定時の前記光量比である所定の晴れ時光量比と前記光量比とを比較して降雨の有無を判定する判定部とを有し、前記増幅部は、前記検出信号を前記基準信号よりも大きなゲインで増幅するとともに、前記検出信号を所定のオフセット量だけシフトすることにより、雨無し判定時における前記検出信号の出力電圧を前記増幅部の出力ダイナミックレンジ内にて出力することを特徴としている。
【0021】
この発明では、既述した光量比学習のための降雨判定を行うため、温度変化による発光部の発光量の変動の影響をキャンセルして、降雨判定精度を向上することができる。
【0022】
そのうえ、この発明は、検出光検出部からの検出信号(検出光相当)と基準光検出部からの基準信号(基準光相当)とを増幅するに際して、検出信号増幅におけるゲイン(検出光ゲインとも言う)を基準信号増幅におけるゲイン(基準光ゲインとも言う)よりも大きく設定し、更に検出信号出力電圧を減少させる方向にオフセットを与えて検出信号出力電圧を増幅部の出力ダイナミックレンジ内に収める構成を採用する。なお、ここで言う増幅部の出力ダイナミックレンジとは、増幅部の出力電圧の最小値と最大値との間の範囲を言う。このようにすれば、雨滴判定精度を向上することができる。以下、この点を更に詳しく説明する。
【0023】
雨滴判定精度を高めるには、ガラス面に付着した雨滴量変化による検出信号の変化量すなわち増幅部の出力電圧変化量を大きくすることが好適であり、このためには増幅部のゲインを増大する必要がある。ただし、増幅部のゲイン増大は、増幅部の出力電圧の増大を招き、非常に大きな出力ダイナミックレンジをもつ増幅部が必要となる。増幅部の出力ダイナミックレンジは、増幅部の電源電圧値などにより所定の限界があり、その出力ダイナミックレンジの無制限の増大は製作困難である。
【0024】
そこで、この発明では、検出信号に対するゲインを増大するとともに増幅部の出力電圧に必要量のオフセットを与えることにより、晴れ時光量に相当する出力電圧をこの出力ダイナミックレンジ内に収める。これにより、増幅部の出力ダイナミックレンジの範囲内にて高い雨滴検出感度を得ることができる。
【0025】
更に、この発明では、増幅部は基準信号に対しては相対的に小さいゲインの増幅を行う。これにより、基準信号に対しては検出信号に与えたような出力オフセット電圧範囲は生じない。したがって、晴れ時の検出光量に比べて基準光量を小さくしても基準信号に対応してそれに相当する出力電圧を出力することができる。このため、発光部の発光量を基準光量増大のために増大させる必要が無く、この基準光量増大による発光部の発熱増大、温度上昇増大を防止し、それによる発光光量変動も低減できる。
【0026】
好適態様において、前記増幅部は、前記検出信号の出力電圧が実質的に0となる入力電圧範囲において、前記増幅器の出力ダイナミックレンジ範囲内の基準信号の出力電圧を出力する。これにより、検出信号感度を増大しつつ、基準光量を低減することができる。
【0027】
好適態様において、前記増幅部は、ゲインを切り替え可能なゲイン切り替え回路と、オフセット量を切り替え可能なオフセット切り替え回路とを有する共通の増幅回路からなり、前記ゲイン切り替え回路は、検出信号増幅期間に、前記ゲインを所定割合だけ増加させ、かつ、出力電圧を前記オフセット量だけ減少させる。これにより、増幅部の回路構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の好適な実施形態を以下の実施形態により説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定解釈されるべきではなく、本発明の技術思想を他の技術を組み合わせて実施してもよいことはもちろんである。
【0029】
(回路構成)
回路構成を図1を参照して説明する。図1は、車両に搭載されたこの実施形態のレインセンサの回路構成を示すブロック回路図である。このレインセンサは、車両などのガラス面に付着した雨滴からの反射光量の変化に基づいて降雨を判定する反射光量判定方式のレインセンサである。
【0030】
図1において、1はLED駆動回路、2はLED、3は雨検出用PD、4は基準光量検出用PDである。周知のように、ここで言うLEDは発光ダイオードを意味し、PDはフォトダイオードを意味している。LEDを公知のその他の電光変換素子に置換すること、又は、PDを公知のその他の光電変換素子たとえばフォトトランジスタなどに置換することは当然可能である。
【0031】
5は、雨検出用PD3と基準光量検出用PD4とを切り替えるための切り替えスイッチであり、アナログマルチプレクサ回路により実現される。このアナログマルチプレクサ回路は好適には、たとえばCMOSトランスファスイッチを二つ用い、一方をオンし、他方をオフすることにより簡単に実現できるが、共通エミッタ接続差動回路などのバイポーラトランジスタ回路においても簡単に実現することができる。切り替えスイッチ5は、雨検出用PD3の出力信号と基準光量検出用PD4の出力信号とのどちらかを選択して後述するアンプ6に入力する。
【0032】
6は、切り替えスイッチ5を通じて雨検出用PD3又は基準光量検出用PD4からの入力信号を電圧増幅するアンプであり、アンプ6が電圧増幅の他に必要な電力増幅を行うことは当然である。アンプ6は、好適には通常のオペアンプ電圧増幅回路により構成される。好適には、雨検出用PD3及び基準光量検出用PD4の出力信号は、受光光量に比例する光電流であり、これらの光電流は、切り替えスイッチ5を通じてアンプ6の入力抵抗による電圧降下により信号電圧に変換される。その他の形式のオペアンプ回路を採用してもよい。アンプ6は、外部からのゲイン切り替え指令によりゲインGを切り替える機能と、外部からのオフセット切り替え指令により入力オフセット電圧(単にオフセットとも称する)を切り替える機能とを装備している。たとえば、オペアンプ電圧増幅回路のゲイン切り替えはその入力抵抗又は帰還抵抗の切り替えにより行うことができ、オフセットの切り替えも+入力端に入力するオフセット電圧の切り替えにより行うことができる。オペアンプ電圧増幅回路のゲインやオフセットの切り替え自体は慣用技術であるため、これ以上の説明を省略する。
【0033】
7は、温度検知回路であり、たとえば回路基板に実装された温度センサである。温度検知回路7は、使用温度範囲にて温度に対して略直線的に変化する出力電圧を出力する。この種の温度検知回路7は、たとえば回路基板に実装されたサーミスタ式温度センサとして広く実用されている。
【0034】
8は、EEPROM9とともにマイクロコンピュータを構成するCPUである。CPU8は、EEPROM9又は自己内のメモリ領域に格納されたプログラムに基づいて、降雨判定のための学習動作ルーチンとこの学習結果に基づく降雨判定ルーチン動作とを含む降雨検出動作を行う。学習動作ルーチンにおいて、CPU8は、温度検知回路7から入力される温度信号と、アンプ6からの出力電圧に基づいて学習を行う。この学習動作の詳細については後述する。10は、アンプ6の出力電圧をデジタル信号に変換してCPU8に入力するA/Dコンバータである。
【0035】
(変形態様)
上記実施例では、切り替えスイッチ5を用いることにより、雨検出用PD3の出力信号と基準光量検出用PD4の出力信号とを一定インタバルにて切り替えることによりアンプ6を共通化したが、これに限定されず、雨検出用PD3専用のアンプと基準光量検出用PD4専用のアンプとを併用してもよい。
【0036】
(変形態様)
なお、外乱光除去などのためにLED2が所定周波数で発光し、アンプ6がこの周波数を含む狭帯域を通過させる帯域フィルタを有するようにしてもよい。この場合には、この帯域フィルタを通過した信号電圧を検波してからゲイン及びオフセットの切り替えを行ってもよく、あるいは帯域フィルタの手前でそれらを行ってもよい。
【0037】
図1のレインセンサの基本的な動作を以下に説明する。
【0038】
CPU8は、イグニッションスイッチのオンにより起動され、LED駆動回路1に所定の発光量での発光を指令し、LED駆動回路1はLED2をこの発光量にて発光させる。この発光量は、通常の降雨条件にて、アンプ6が出力する雨検出用PD3の出力信号電圧が晴れ時に最適な電圧(約3V)となるように設定されている。
【0039】
このレインセンサは、車両用のフロントガラス(図示省略)の内側表面に接着固定されたハウジングを有し、このハウジングにはLED2、雨検出用PD3及び基準光量検出用PD4及びプリズムが固定されている。LED2はプリズムを通じてフロントガラスへ向けて斜めに赤外光を照射する。LED2は、出力する赤外光がフロントガラスの外表面にて全反射するように配置されている。フロントガラス外表面に雨滴が付着すると、その付着部分では光は全反射せず外部へ透過するため、フロントガラスで反射しプリズムを通じて雨検出用PD3に入射する検出光が減少する。基準光量検出用PD4はハウジングの所定の反射面から反射する光を受光する位置に配置されている。同じく、LED2から照射された赤外光は、プリズムの所定の反射面で反射して基準光量検出用PD4に入射される。したがって、基準光量検出用PD4の出力電圧は降雨の影響をまったく受けない。
【0040】
雨検出用PD3は入射光量(検出光量)に相当する電流(検出信号)を、基準光量検出用PD4は入射光量(基準光量)に相当する電流(基準信号)をアンプ6へ入力し、アンプ6はこれらの信号を交互に増幅する。アンプ6の出力電圧はA/Dコンバータ10でデジタル信号に変換されてCPU8へ入力される。
【0041】
降雨検出動作の好適な具体例を図2に示すフローチャートを参照して具体的に説明する。
【0042】
まず、温度を検出し(S100)、検出温度に対応する晴れ時光量比をEEPROM9から読み出す(S102)。なお、EEPROM9には出荷時に基本的な温度ー晴れ時光量比の関係が書き込まれており、出荷直後でも晴れ時光量比を読み出すことができるものとする。
【0043】
次のステップS104では、基準信号及び検出信号に対するアンプのゲインを初期光量比取得用ゲインG1に切り替えるとともに、基準信号及び晴れ時検出信号に対してアンプ6の出力電圧がそれぞれ好適値となるように、LED2の発光量をフィードバック制御する。この実施形態では、基準信号、晴れ時検出信号ともに、約1から4Vの出力電圧が出力されるようにLED2の発光量をフィードバック制御している。また、1種類のゲインで、基準信号、晴れ時検出信号をともに、好適な範囲に制御することが困難な場合は、アンプ6のゲインを多段に制御可能とし、基準信号、晴れ時検出信号のゲインを独立に制御することも可能である。なお、この種のLEDのフィードバック制御自体は周知事項であり、詳細な説明は省略する。これにより、検出信号に対するアンプ6の出力電圧も基準信号に対する出力電圧もアンプ6の好適な出力ダイナミックレンジの範囲内に収めることができる。なお、この好適な出力ダイナミックレンジとは、アンプ6の出力電圧をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ10の好適な入力ダイナミックレンジでもある。
【0044】
(変形態様)
上記実施形態では、LED2の発光量をフィードバック制御したが、想定した所定の発光量となるように、LED駆動回路1に所定の発光量指令を与えるオープン制御を採用してもよい。
【0045】
次に、アンプ6からA/Dコンバータ10を通じて、検出信号に対する出力電圧と、基準信号に対する出力電圧とを出力する(S106)。当然、この時、切り替えスイッチ5により雨検出用PD3と基準光量検出用PD4とが切り替える制御が行われる。
【0046】
次に、求めた検出信号に対する出力電圧と基準信号に対する出力電圧から、アンプ特性を逆算して、アンプへの入力電圧を計算し、入力電圧の比すなわち検出光量と基準光量との比である光量比を算出する(S108)。
【0047】
次に、算出した光量比とステップS100にて読み出した晴れ時光量比とを比較し(S110)、算出した光量比が晴れ時光量比以上であれば雨無しと判定し(S112)、算出した光量比と温度との関係を新しい学習データとして利用して温度−光量比マップの修正演算を行い(S114)、この修正したマップをEEPROM9に書き込む(S116)。ステップS110にて、算出光量比が晴れ時光量比未満であれば雨有りと判定し(S118)、ワイパー作動を指令してステップS120に進む。
【0048】
すなわち、ステップS100〜S118では、晴れと仮定してそれに適したゲインを基準信号増幅時も検出信号増幅時もアンプ6に与え、かつ、それに適した発光量をLED2に与えて初期雨判定を行い、雨無し判定時に温度と光量比との関係の学習を行う。
【0049】
その後の走行中では、後述するように上記とは異なり、雨判定に最適な条件にて雨判定を行う(通常雨判定と称する)。これは、通常雨判定の精度を優先するためである。しかし、この通常雨判定においても雨無しと判定した場合には、温度と光量比との関係の学習をあえて行って上記マップの学習促進を図る。この通常雨判定の制御を以下に詳しく説明する。
【0050】
まず、ステップS120にて、LED2の発光量を後述する通常雨判定に最適な発光量にフィードバック制御する。更に、この発光量に対してアンプ6の出力電圧が通常雨判定において最適値(この実施例では約3V)となるように、アンプ6のゲインを通常雨判定用ゲインG2に切り替える。この時、アンプ6にオフセットΔVを与えることによりアンプ6の出力電圧をA/D入力の好適範囲に調整し、高感度の降雨の有無判定を行う。更に説明すると、このステップS120では、晴れ時において入力される検出信号に対するアンプ6の出力電圧が、アンプ6及びその後段のA/Dコンバータ10において最も高精度となる電圧範囲(ここでは3V近傍)となり、かつ、検出信号の変化に対するアンプ6のゲインが大きくなるように、LED2の発光量をフィードバック制御する。なお、フィードバック制御の代わりに単なる切り替え制御としてもよい。
【0051】
(変形態様)
なお、この場合も、フィードバック制御の代わりに、この発光量を発光させるようにLED駆動回路1に発光指令を与えるオープン制御を採用してもよい。
【0052】
次のステップS122では、雨検出用PD3からアンプ6に検出信号を与え、この検出信号に対応する出力電圧をアンプ6からA/Dコンバータ10を通じてCPU8に与え、CPU8にて入力された出力電圧を利用して通常雨判定のための信号である通常雨判定用信号を創成する。なお、この実施例では、この通常雨判定用信号は、雨検出用PD3にて検出した光量である検出光量を平均化処理した信号である。
【0053】
次のステップS124では、通常雨判定用信号をあらかじめ記憶する通常雨判定用しきい値と比較し、通常雨判定用信号が示す検出光量が通常雨判定用しきい値に相当するしきい値光量未満であれば、雨あり判定してワイパー作動を要求し(S126)、検出光量がしきい値光量以上であれば雨無しと判定してステップS128に進む。
【0054】
次に、通常雨判定用ゲインG2とオフセットΔVを用いて、雨検出用PD3の出力信号である検出信号に相当する検出光量を読み込む(S128)。
【0055】
次に、アンプ6のオフセットを無くし、ゲインを基準光検出用ゲインG3に切り替えて基準光量検出用PD4の出力電圧である基準信号をアンプ6に入力し、基準光量を読み込む(S130)。なお、基準光量及び検出光量の算出に際して、アンプ6のゲインが異なることを加味して演算を行うことはもちろんである。
【0056】
次に、検出した検出光量と基準光量との比である光量比(検出光量/基準光量)を晴れ時光量比として算出し(S132)、温度を読み込み(S134)、この温度と晴れ時光量比とのデータペアを用いてEEPROM9に記憶している温度ー晴れ時光量比のマップの修正処理を行い(S136)、修正したマップをEEPROM9に書き込み(S138)、ステップS122にリターンする。
【0057】
(ゲイン設定の説明)
なお、この実施形態では、上記した光量データ取得時(S106)において用いるゲインG1は、通常雨判定後の光量比取得のための基準光量検出において用いるゲインG3と等しくしている。また、上記した通常雨判定(S124)のために検出光量を検出するステップ(S122)で用いるゲインG2及びオフセット電圧ΔVを、通常雨判定後の光量比取得のための検出光量検出において用いるゲインG2及びオフセット電圧ΔVと等しくしている。これにより、アンプ6のゲイン切り替え回路及びオフセット切り替え回路を簡素化することができる。もちろん、これらゲイン切り替え段数やオフセット切り替え段数を更に多数とすれば、上記ゲイン共通化は必須ではない。
【0058】
各光量取得時のアンプ6の入出力特性を図4に示す。通常雨判定に際して晴れ時検出光量に相当するアンプ6の出力電圧を約3Vとに設定すると、多少の雨滴付着により低下した検出信号に相当する出力電圧Vdは2〜3V程度となり、アンプ6やA/Dコンバータ10のSN比やリニアリティが高い範囲を用いるため、高精度の検出光量の検出が可能となる。
【0059】
CPU8にてその比率(光量比)が演算され、この比率が所定の雨判定用しきい値と比較されて降雨判定がなされる。これにより、LED2の発光量に対する温度変化の影響がキャンセルされる。しかしながら、基準光光路系及び雨検出用光路系の伝送効率は温度変化の影響を受けて変動し、温度変化により光量比が変動する。
【0060】
そこで、この実施形態では、光路系に対する上記温度影響を排除するため、温度変化に対する光量比の変化特性を学習し、これを利用して検出した光量比による降雨判定に用いる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の車載レインセンサのブロック回路図である。
【図2】図1の車載レインセンサの降雨検出動作を示すフローチャートである。
【図3】図1の車載レインセンサの降雨検出動作を示すフローチャートである。
【図4】各ステップでのアンプの入出力特性を示す特性図である。
【符号の説明】
【0062】
1 LED駆動回路(発光部)
2 LED(発光部)
3 雨検出用PD(検出光検出部)
4 基準光量検出用PD(基準光検出部)
5 切り替えスイッチ(信号処理部)
6 アンプ(信号処理部)
7 温度検知回路(温度検出部)
8 CPU(信号処理部)
9 EEPROM(記憶部)
10 A/Dコンバータ(信号処理部)
ステップS108、S132(光量比算出部)
ステップS110(判定部)
ステップS114、S136(学習部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を車両のガラス面に照射する発光部と、
温度を検出する温度検出部と、
前記ガラス面から反射して検出された検出光の量である検出光を光電変換して前記検出光に相当する検出信号を出力する検出光検出部と、
前記検出信号及び検出温度に基づいて降雨を判定する信号処理部と、
を備える車載レインセンサにおいて、
前記発光量の所定割合からなる基準光を光電変換して前記基準光に相当する基準信号を出力する基準光検出部を備え、
前記信号処理部は、
前記基準信号及び検出信号を増幅する増幅部と、
前記基準信号に対する前記検出信号の比である光量比を算出する光量比算出部と、
雨無し判定時の前記光量比に相当する晴れ時光量比と前記温度との関係を記憶する記憶部と、
検出温度に対応する前記晴れ時光量比を前記記憶部から読み出した後、前記光量比を前記晴れ時光量比と比較して降雨の有無を判定する判定部と、
前記判定部により雨無しと判定された場合に前記検出温度及び前記光量比を前記記憶部に書き込んで前記関係を学習する学習部と、
を有することを特徴とする車載レインセンサ。
【請求項2】
請求項1記載の車載レインセンサにおいて、
前記信号処理部は、
車両始動直後の光量比学習のための雨判定動作である初期雨判定において雨無しと判定した場合に前記光量比の学習を行うとともに、その後の車両走行時に実施される降雨判定動作である通常雨判定において雨無しと判定した場合にも前記学習を行う車載レインセンサ。
【請求項3】
請求項2記載の車載レインセンサにおいて、
前記信号処理部は、
前記初期雨判定において少なくとも前記基準光量が所定範囲となるように前記発光部の発光量をフィードバック制御する車載レインセンサ。
【請求項4】
請求項3記載の車載レインセンサにおいて、
前記信号処理部は、
前記通常雨判定において前記検出光量が降雨判定に好適な大きさとなるように前記発光部の発光量を前記初期雨判定における前記発光部の発光量よりも増大させるフィードバック制御を行う車載レインセンサ。
【請求項5】
光を車両のガラス面に照射する発光部と、
前記ガラス面から反射して検出された検出光の量である検出光を光電変換して前記検出光に相当する検出信号を出力する検出光検出部と、
前記検出信号に基づいて降雨を判定する信号処理部と、
を備える車載レインセンサにおいて、
前記発光量の所定割合からなる基準光を光電変換して前記基準光に相当する基準信号を出力する基準光検出部を備え、
前記信号処理部は、
前記基準信号及び検出信号を増幅する増幅部と、
前記基準信号に対する前記検出信号の比である光量比を算出する光量比算出部と、
雨無し判定時の前記光量比である所定の晴れ時光量比と前記光量比とを比較して降雨の有無を判定する判定部と、
を有し、
前記増幅部は、
前記検出信号を前記基準信号よりも大きなゲインで増幅するとともに、前記検出信号を所定のオフセット量だけシフトすることにより雨無し判定時における前記検出信号の出力電圧を前記増幅部の出力ダイナミックレンジ内にて出力することを特徴とする車載レインセンサ。
【請求項6】
請求項5記載の車載レインセンサにおいて、
前記増幅部は、
雨無し判定時における前記検出信号の出力電圧を前記増幅部の出力ダイナミックレンジの35〜65%の範囲内にて出力する車載レインセンサ。
【請求項7】
請求項5記載の車載レインセンサにおいて、
前記増幅部は、
ゲインを切り替え可能なゲイン切り替え回路と、オフセット量を切り替え可能なオフセット切り替え回路とを有する共通の増幅回路からなり、
前記ゲイン切り替え回路は、検出信号増幅期間に、前記ゲインを所定割合だけ増加させ、かつ、出力電圧を前記オフセット量だけ減少させる車載レインセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−240186(P2007−240186A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59434(P2006−59434)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】