説明

車載受信装置、及び、車載受信装置の制御方法

【課題】出力する放送をデジタル放送と、アナログ放送とのいずれか一方に固定するモードに移行した後において、出力する放送の切り替えが行われることを抑制しつつ、出力する放送の音質を確保する。
【解決手段】車載受信装置1は、出力固定モードに移行中、出力する放送がデジタル放送に固定されている場合であっても、車両が継続して走行したと判別した場合は、固定する放送を、アナログ放送に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送と、デジタル放送に対応したアナログ放送と、を受信可能な車載受信装置、及び、当該車載受信装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル用チューナーと、アナログ用チューナーとを備え、デジタル放送、及び、アナログ放送の双方を受信し、出力可能な受信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の受信装置では、受信強度に応じて、デジタル放送とアナログ放送との間で出力する放送を切り替える機能を有する装置があり、さらに、デジタル放送とアナログ放送との間における切り替えを抑制することが求められるような状況下では、出力する放送をいずれか一方に固定する機能を有する装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−261713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記機能により、出力する放送をデジタル放送と、アナログ放送とのいずれか一方に固定した場合、出力する放送の切り替えを抑制することができるものの、受信強度等の状況により、聞きづらい状態で放送が出力されることがあった。特に、出力する放送をデジタル放送に固定した場合において、デジタル放送の受信強度が低かったり、デジタル放送に係る受信信号の品質のレベルが低かったりした場合、デコードエラーに起因して、無音状態となる可能性もあり、出力される放送が非常に聞きづらいものとなることがあった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、出力する放送をデジタル放送と、アナログ放送とのいずれか一方に固定するモードに移行した後において、出力する放送の切り替えが行われることを抑制しつつ、出力する放送の音質を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、車両に搭載され、デジタル放送と、デジタル放送に対応したアナログ放送と、を受信可能な車載受信装置において、動作モードとして、出力する放送を、デジタル放送と、アナログ放送とのいずれか一方に固定する出力固定モードを備え、前記出力固定モードに移行中、出力する放送がデジタル放送に固定されている場合であっても、前記車両が継続して走行したと判別した場合は、固定する放送を、アナログ放送に切り替えることを特徴とする。
【0006】
また、上記発明の車載受信装置において、本発明は、所定時間以上の間、所定の速度以上で前記車両が走行した場合、前記車両が継続して走行したと判別することを特徴とする。
【0007】
また、上記発明の車載受信装置において、本発明は、所定時間に所定距離以上前記車両が走行した場合、前記車両が継続して走行したと判別することを特徴とする。
【0008】
また、上記発明の車載受信装置において、本発明は、前記車両が継続して走行したと判別した場合、又は、デジタル放送を正常に受信できない場合に、固定する放送を、アナログ放送に切り替えることを特徴とする。
【0009】
また、上記発明の車載受信装置において、本発明は、放送局から、デジタル放送、及び、アナログ放送に対応する番組が、放送の出力中にデジタル放送とアナログ放送とを切り替えることを抑制することが推奨される番組である旨を示す所定の信号を受信したことをトリガーとして、前記出力固定モードに移行することを特徴とする。
【0010】
また、上記発明の車載受信装置において、本発明は、前記所定の信号とは、ボールゲームモード信号であることを特徴とする。
【0011】
また、上記発明の車載受信装置において、本発明は、前記出力固定モードに移行中、ユーザーが、出力する放送として固定する放送を、デジタル放送と、アナログ放送との間で切り替え可能としたことを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明は、車両に搭載され、デジタル放送と、デジタル放送に対応したアナログ放送と、を受信可能に構成され、動作モードとして、出力する放送を、デジタル放送と、アナログ放送とのいずれか一方に固定する出力固定モードを備えた車載受信装置を制御して、前記出力固定モードに移行中、出力する放送がデジタル放送に固定されている場合、前記車両が継続して走行したか否か判別し、前記車両が継続して走行したと判別した場合は、固定する放送を、アナログ放送に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出力する放送をデジタル放送と、アナログ放送とのいずれか一方に固定するモードに移行した後において、出力する放送の切り替えが行われることを抑制しつつ、出力する放送の音質を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車載受信装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】車載受信装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る車載受信装置1の機能的構成を示すブロック図である。
車載受信装置1は、車両に搭載される受信装置であり、ラジオ放送局がIBOC(in-hand on channel)方式によって放送したラジオ放送を受信可能に構成されている。
IBOC方式は、アナログラジオ放送に割り当てられた周波数帯域を使用してデジタルラジオ放送を行う方式である。IBOC方式では、信号フォーマットとして、既存のアナログラジオ放送の信号にデジタルラジオ放送の信号を重畳させたハイブリッドフォーマットや、デジタル信号のみからなるオールデジタルフォーマット等、複数の信号フォーマットが規定されている。そして、ハイブリッドフォーマットによれば、既存のアナログラジオ放送に割り当てられた周波数帯を有効に活用して、アナログラジオ放送とデジタルラジオ放送とが、同一チャンネルを使用して同時に伝送される。後述するように、ハイブリッドフォーマットに準拠した信号を受信中、車載受信装置1は、デジタルラジオ放送、及び、アナログラジオ放送の双方に基づいてラジオ放送の出力を実行可能である。
【0016】
図1を参照し、制御部10は、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路を備え、車載受信装置1の各部を中枢的に制御する。制御部10は、図示せぬ発振器が出力する基準クロックに基づいて、経過時間の計測等、各種計時動作を実行可能である。
チューナー部11は、制御部10によるPLL回路12を介しての制御の下、アンテナ13が受信した電波から選局チャンネルのRF(Radio Frequency)信号を抽出し、抽出したRF信号をフィルタリング等の信号処理に適した中間周波数に周波数変換する。チューナー部11は、RF信号の周波数変換によって得られたIF(Intermediate Frequency)信号を増幅し、DSP(Digital Signal Processor)14のA/Dコンバーター15に出力する。
A/Dコンバーター15は、チューナー部11から入力されたIF信号を、A/D変換し、アナログ側信号処理部16と、IDM(IBOC Digital Module)17に出力する。
【0017】
アナログ側信号処理部16は、アナログラジオ放送に係る受信信号の復調処理等を行う。具体的には、アナログ側信号処理部16は、A/Dコンバーター15から入力されたIF信号をアナログ搬送波の帯域のIF信号に帯域制限する。次いで、アナログ側信号処理部16は、帯域制限されたIF信号をアナログラジオ放送のオーディオ信号(以下、「アナログオーディオ信号」という)に復調する。アナログ側信号処理部16は、復調したアナログオーディオ信号に、ノイズ成分除去、ミュート、ハイカット、セパレーション制御等の選局チャンネルの受信状態に応じた処理を施した上で、アナログオーディオ信号を、IBOCブレンド処理部18に出力する。
【0018】
IDM17は、IBOC方式のデジタルラジオ放送に係る受信信号の処理用に設計されたモジュールである。
IDM17は、A/Dコンバーター15から入力されたIF信号を復調し、復調して得られた信号をデコードして所定の誤り訂正処理を行い、デジタルラジオ放送のオーディオ信号(以下、「デジタルオーディオ信号」という)と、付随データに分離する。IDM17は、分離したデジタルオーディオ信号をIBOCブレンド処理部18に出力し、分離した付随データを制御部10に出力する。
なお、選局チャンネルに係る受信信号には、当該選局チャンネルの番組が所定の番組であることを示すボールゲームモード信号(後述)が含まれている場合があり、その場合、IDM17は、ボールゲームモード信号に係る付随データを分離し、制御部10に出力する。これにより、制御部10は、ボールゲームモード信号を受信したこと、及び、選局チャンネルの番組が所定の番組であることを検出できる。
【0019】
また、IDM17は、選局チャンネルに係る受信信号にデジタルラジオ放送に係る受信信号が含まれているか否かを判別し、判別結果をステータス情報としてブレンド信号生成部20に出力する。ステータス情報には、受信信号に復号可能なデジタルラジオ放送に係る信号が含まれていないことを示すものと、受信信号に復号可能なデジタルラジオ放送に係る信号が含まれていることを示すもの、との2種類がある。受信信号に復号可能なデジタル放送に係る信号が含まれている場合として、選局チャンネルがオールデジタルフォーマット放送、又は、ハイブリッドフォーマット放送である場合がある。
【0020】
また、IDM17は、復調処理で得られる信号のCN比やSN比、デコード処理で得られるデータのエラービットレート等に基づいてデジタルラジオ放送に係る受信信号の品質レベルを測定し、品質情報としてブレンド信号生成部20に出力する。さらに、IDM17は、品質情報を制御部10に出力する。
【0021】
ブレンド信号生成部20は、IDM17から入力されたステータス情報、及び、品質情報に基づいて、ブレンド信号を生成し、IBOCブレンド処理部18に出力する。
詳述すると、IDM17から入力されたステータス情報が、受信信号に復号可能なデジタルラジオ放送に係る信号が含まれていないことを示すものである場合、ブレンド信号生成部20は、IBOCブレンド処理部18の出力をアナログオーディオ信号とする旨のブレンド信号(以下、適宜、「ブレンド信号A」と表現する)を生成し、IBOCブレンド処理部18に出力する。
また、IDM17から入力されたステータス情報が、受信信号に復号可能なデジタルラジオ放送に係る信号が含まれていることを示すものである場合であって、品質情報が示す受信信号の品質レベルが、デジタルオーディオ信号を正常にデコードできる程度か否かの基準として設定された所定の閾値を上回る場合、ブレンド信号生成部20は、IBOCブレンド処理部18の出力をデジタルオーディオ信号とする旨のブレンド信号(以下、適宜、「ブレンド信号D」と表現する)を生成し、IBOCブレンド処理部18に出力する。
また、IDM17から入力されたステータス情報が、受信信号に復号可能なデジタルラジオ放送に係る信号が含まれていることを示すものである場合であって、品質情報が示す受信信号の品質レベルが、上記所定の閾値を下回る場合、ブレンド信号生成部20は、IBOCブレンド処理部18の出力をアナログオーディオ信号とする旨のブレンド信号(=ブレンド信号A)を生成し、IBOCブレンド処理部18に出力する。
つまり、受信信号に、復号可能なデジタルラジオ放送に係る信号が含まれている状況下では、デジタルオーディオ信号を正常にデコードできる限り、ブレンド信号生成部20からIBOCブレンド処理部18に対して、ブレンド信号Dが出力される。
【0022】
IBOCブレンド処理部18は、ブレンド処理部18aと、オーディオ処理部18bと、を備えている。
ブレンド処理部18aは、ブレンド信号生成部20から入力されたブレンド信号に基づいて、アナログ側信号処理部16から入力されたアナログオーディオ信号と、IDM17から入力されたデジタルオーディオ信号とに対してブレンド処理を行う。
具体的には、ブレンド信号生成部20からブレンド信号Dが入力されている場合には、実質的にデジタルオーディオ信号のみが出力されるようにアナログオーディオ信号を減衰する。一方、ブレンド信号生成部20からブレンド信号Aが入力されている場合には、実質的にアナログオーディオ信号のみが出力されるようにデジタルオーディオ信号を減衰する。また、ブレンド信号生成部20から入力されるブレンド信号が、ブレンド信号Aからブレンド信号Dに変わり、また、ブレンド信号Dからブレンド信号Aへ変わった場合、ブレンド処理部18aは、アナログオーディオ信号とデジタルオーディオ信号との遅延量、品質差等を考慮した補正を行いながら、これら信号のミキシングを行いつつ、音声がスムーズにつながるように、出力するオーディオ信号を切り替える。ブレンド処理部18aが出力したオーディオ信号は、オーディオ処理部18bに出力され、当該オーディオ処理部18bにより所定の処理が施された後、D/Aコンバーター21に出力される。
【0023】
D/Aコンバーター21は、IBOCブレンド処理部18から入力されたオーディオ信号をD/A変換した後、パワーアンプ22に出力する。
パワーアンプ22は、入力されたオーディオ信号をユーザーにより指定されたボリュームに応じて増幅し、スピーカー23を介して放音する。以上のようにして、選局チャンネルのラジオ放送が出力される。
【0024】
なお、以下の説明では、IBOCブレンド処理部18からD/Aコンバーター21に対してデジタルオーディオ信号が出力され、その結果、デジタルオーディオ信号に基づいてスピーカー23から音声が出力されることを、「デジタルラジオ放送が出力される」と表現し、一方、IBOCブレンド処理部18からD/Aコンバーター21に対してアナログオーディオ信号が出力され、その結果、アナログオーディオ信号に基づいてスピーカー23から音声が出力されることを、「アナログラジオ放送が出力される」と表現することがあるものとする。
【0025】
図1を参照し、表示部25は、制御部10の制御の下、液晶表示パネル等からなる表示パネル25aに各種情報を表示する。
操作部26は、車載受信装置1に設けられた各種の操作スイッチ26a、及び、タッチパネル26bに接続され、これら操作スイッチ26a、及び、タッチパネル26bに対するユーザーの操作を検出し、制御部10に出力する。
自車位置検出部27は、図示しないGPS受信機やジャイロセンサーを備え、車両の絶対的な位置(緯度・経度)や、相対的な方位を検出する。
受信強度検出部28は、チューナー部11から、受信信号の受信強度を示す信号が入力され、入力された信号に基づいて、受信信号の受信強度を検出し、制御部10に出力する。
速度検出部29は、車両から入力される車速パルスに基づいて、車両の車速を検出し、制御部10に出力する。
【0026】
ところで、上述したラジオ放送局は、所定の番組に係るラジオ放送を放送する際、当該ラジオ放送に係る信号と併せて、ボールゲームモード(Ballgame mode)信号を出力する場合がある。
所定の番組とは、野球やサッカー等のスポーツのライブ放送等に係る番組である。ライブ放送の場合、重要な場面(例えば、野球における逆転の場面)がいつ到来するか不明なため、出力中のラジオ放送について、できるだけ途切れることなく、一定の音質で継続して出力されている状態が維持されることが求められる。
【0027】
ここで、上述したように、本実施形態に係る車載受信装置1では、デジタルラジオ放送に係る受信信号の品質に応じて、出力する放送が、デジタルラジオ放送と、アナログラジオ放送との間で切り替わる構成となっている。しかしながら、デジタルラジオ放送と、アナログラジオ放送とでは、その音質に格段の差が存在するため、これらラジオ放送間で出力放送が切り替わった場合、音質の差に起因して、さらには、切り替えに伴って生じるタイムラグに起因して、ラジオ放送が聞き取りにくい状況に至ることがある。特に、切り替えが頻繁に行われる場合、ラジオ放送の聞き取りにくさが増すこととなる。従って、ライブ放送に係る番組に係るラジオ放送の出力中には、デジタルラジオ放送と、アナログラジオ放送との間における切り替えをできるだけ抑制したいとするニーズがある。
以上のことを踏まえ、従来の車載受信装置では、ボールゲームモード信号を受信した場合、そのことをトリガーとして、出力するラジオ放送を、デジタルラジオ放送とアナログラジオ放送とのいずれか一方に固定する動作モード(出力固定モード)に移行し、ライブ放送に係る番組に係るラジオ放送の出力中に、上記切り替えが行われないようにしていた。
【0028】
しかしながら、従来の車載受信装置において、ボールゲームモード信号を受信したことをトリガーとして、出力するラジオ放送をデジタルラジオ放送に固定した場合、その後のデジタルラジオ放送に係る受信信号の品質によっては、出力されるラジオ放送が非常に聞きづらいものとなってしまうことがあった。特に、デジタルラジオ放送は、受信信号の品質によっては、デコードエラーが発生し、長い時間、無音状態となる可能性もあり、出力されるラジオ放送が非常に聞きづらいものとなることがあった。
これらのことを鑑み、本実施形態に係る車載受信装置1では、以下の動作を実行し、ボールゲームモード信号の受信後、できるだけデジタルラジオ放送とアナログラジオ放送との間での切り替えを行うことなく、出力するラジオ放送の音質を確保している。
【0029】
図2は、車載受信装置1の動作を示すフローチャートである。
図2のフローチャートにおいて、動作の開始時点では、出力固定モードに移行しておらず、通常の動作モードで、アナログラジオ放送、又は、デジタルラジオ放送を出力中であるものとする。
車載受信装置1の制御部10は、ボールゲームモード信号を受信したか否かを監視する(ステップSA1)。ボールゲームモード信号を受信した場合、制御部10は、動作モードを、出力固定モードへ移行する(ステップSA2)。上述したように、出力固定モードとは、ライブ放送に係る番組等の所定の番組に係るラジオ放送の出力中におけるデジタルラジオ放送とアナログラジオ放送との間の切り替えを抑制すべく、出力するラジオ放送を、デジタルラジオ放送と、アナログラジオ放送とのいずれか一方に固定する動作モードである。
【0030】
次いで、制御部10は、デジタルラジオ放送を正常に受信可能な状態であるか否かを判別する(ステップSA3)。このステップSA3では、制御部10は、受信強度検出部28によって検出された受信強度が、予め定められた所定の閾値を上回るか否かを判別し、当該所定の閾値を上回る場合は、デジタルラジオ放送を正常に受信できると判別し、また、IDM17から入力された品質情報に基づいて、デジタルラジオ放送に係る受信信号の品質レベルが、デコードエラーが生じないような所定のレベルを上回る場合は、デジタルラジオ放送を正常に受信できると判別する。
デジタルラジオ放送を正常に受信可能な状態ではない場合(ステップSA3:NO)、制御部10は、出力するラジオ放送を、アナログラジオ放送に固定する(ステップSA4)。具体的には、制御部10は、ブレンド信号生成部20に制御信号を出力し、ブレンド信号生成部20からIBOCブレンド処理部18にブレンド信号Aが出力される状態を維持し、これによりIBOCブレンド処理部18からD/Aコンバーター21に対してアナログオーディオ信号が出力される状態を維持する。
このように、本実施形態では、デジタルラジオ放送を正常に受信可能な状態でない場合は、出力するラジオ放送をアナログラジオ放送に固定する。これにより、デジタル放送が正常に受信できない状態で、デジタルラジオ放送を出力し、これにより、デコードエラーや、受信エラーに起因した無音状態が発生することを効果的に防止できる。
なお、出力する放送がアナログラジオ放送に固定された状態は、出力固定モードへの移行が解除されるまで行われる。出力固定モードへの移行の解除は、例えば、選局チャンネルの変更をトリガーとして行われる。
【0031】
一方、デジタルラジオ放送を正常に受信可能な状態の場合、制御部10は、出力するラジオ放送を、デジタルラジオ放送に固定する(ステップSA5)。具体的には、制御部10は、ブレンド信号生成部20に制御信号を出力し、ブレンド信号生成部20からIBOCブレンド処理部18にブレンド信号Dが出力される状態を維持し、これによりIBOCブレンド処理部18からD/Aコンバーター21に対してデジタルオーディオ信号が出力される状態を維持する。
次いで、制御部10は、車両が継続して走行したか否かを監視する(ステップSA6)。
詳述すると、ステップSA6において、制御部10は、速度検出部29からの入力値に基づいて、所定時間以上の間、所定の速度以上で車両が継続して走行したか否かを監視し、所定時間以上の間、所定の速度以上で車両が継続して走行した場合、車両が継続して走行したと判別する。そして、所定時間以上の間、所定の速度以上で車両が継続して走行していない場合(ステップSA6:NO)、制御部10は、処理手順をステップSA5へ戻して、出力するラジオ放送がデジタルラジオ放送に固定された状態を維持する。
一方、所定時間以上の間、所定の速度以上で車両が継続して走行した場合(ステップSA6:YES)、制御部10は、固定するラジオ放送を、デジタルラジオ放送からアナログラジオ放送へと切り替える(ステップSA4)。
ここで、「所定時間以上の間、所定の速度以上で車両が継続して走行する」とは、車両が停車しておらず、かつ、渋滞その他の要因により非常に遅い速度で走行している状態ではなく、一定期間の間、車両がスムーズに走行していることを示す(本実施形態では、このことを示すように所定時間、及び、所定の速度が適切に規定されている)。
そして、車両がスムーズに走行している場合は、車両の走行に伴って、車両を取り巻く外部環境が頻繁に変わり、この外部環境の変化に応じて、電界強度が急激に変位し、また、デジタルラジオ放送に係る受信信号のレベルが急激に変位する可能性がある。例えば、車両がスムーズに走行している状況下では、車両が弱電界地域への進入、退出を繰り返す場合があり、また、車両が通過するトンネルや、横切るビル群等に起因した各種フェージングの発生状況が急激に変化する場合がある。
このように、電界強度が急激に変位し、また、デジタルラジオ放送に係る受信信号の品質レベルが急激に変位する可能性がある状況下で、出力するラジオ放送をデジタルラジオ放送に固定した状態を維持した場合、例えば、デコードエラーによって、長い時間、無音状態となる可能性もあり、ユーザーの利便性を損なう可能性がある。
これを踏まえ、本実施形態では、所定時間以上の間、所定の速度以上で車両が継続して走行した場合は、出力するラジオ放送として固定するラジオ放送を、デジタルラジオ放送からアナログラジオ放送に切り替え、以後は、アナログラジオ放送に固定した状態を維持する。これにより、ラジオ放送の切り替えの回数を最小限の回数に留めた上で、車両がスムーズに走行している状況下でデジタルラジオ放送に固定することの弊害を取り除き、もってユーザーの利便性を向上している。
【0032】
なお、本実施形態では、ステップSA6において、所定時間以上の間、所定の速度以上で車両が継続して走行したか否かを監視する構成となっているが、これを、所定時間の間に所定距離以上、車両が走行したか否かを監視する構成としてもよい。なお、車両の走行距離は、例えば、自車位置検出部27からの入力値に基づいて、単位時間が経過する毎に、車両の位置を検出すると共に、単位時間が経過したとき毎の車両の位置を所定の記憶領域に記憶し、記憶した情報に基づいて検出するようにしてもよく、また、地図データを記憶している場合は、地図データを利用して走行距離を検出するようにしてもよい。
「所定時間の間に所定距離以上、車両が走行する」とは、車両が停車しておらず、かつ、渋滞その他の要因により非常に遅い速度で走行している状態ではなく、所定時間の間に所定距離以上走行可能な程度に、車両がスムーズに走行していることを示す(本実施形態では、このことを示すように所定時間、及び、所定距離が適切に規定されている)。
ステップSA6において、このような判別を行うことによっても、上述した効果と同様の効果を得ることができ、さらに、車両がスムーズに走行しているのにもかかわらず、赤信号等に起因して所定時間以上の間、所定の速度以上で継続した走行が行われない場合であっても、適切に、車両がスムーズに走行していることを検出できる。
さらに、所定時間以上の間、所定の速度以上で車両が継続して走行したか否かを監視すると共に、所定時間の間に所定距離以上、車両が走行したか否かを監視し、これら監視結果の組み合わせに応じて、判別結果を変更する構成としてもよい。例えば、所定時間以上の間、所定の速度以上で車両が継続して走行したことを条件1とし、所定時間の間に所定距離以上、車両が走行したことを条件2とすると、ステップSA6において、条件1と条件2とが共に成立した場合に、ステップSA4へ移行し、出力するラジオ放送をアナログラジオ放送に固定するようにしてもよく、また、条件1及び条件2のいずれかが成立した場合に、ステップSA4へ移行するようにしてもよい。
【0033】
また、本実施形態に係る車載受信装置1は、以下の特有の構成を有している。
すなわち、従来の車載受信装置は、ボールゲームモード信号を受信し、出力固定モードに移行した後は、この出力固定モードへの移行が解除されるまで、ユーザーによって固定するラジオ放送を切り替えることはできなかった。一方で、本実施形態に係る車載受信装置1では、出力固定モードへ移行中、制御部10は、表示部25を制御して、受信強度検出部28の検出値に基づいて、表示パネル25aに受信強度を示すインジケーターを表示する。そして、車載受信装置1は、ユーザーが、操作スイッチ26aや、タッチパネル26bを操作することにより、出力固定モードへ移行中であっても、固定するラジオ放送を切り替えることができる構成となっている。これにより、ユーザーは、出力固定モードへ移行中であっても、実際の受信強度に応じて、固定するラジオ放送を切り替えることができることとなり、ユーザーの利便性が向上する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る車載受信装置1は、出力固定モードに移行中、出力する放送がデジタル放送に固定されている場合であっても、車両が継続して走行したと判別した場合は、固定する放送を、アナログ放送に切り替える。
これによれば、ラジオ放送の切り替えの回数を最小限の回数に留めた上で、車両がスムーズに走行している状況下でデジタルラジオ放送に固定することに起因して、デコードエラーによる長期間の無音状態の発生することを防止し、出力するラジオ放送の音質を確保できる。
【0035】
また、本実施形態では、所定時間以上の間、所定の速度以上で車両が走行した場合、車両が継続して走行したと判別する。
これによれば、車両がスムーズに走行しているような状況を、的確に判別できる。
【0036】
また、本実施形態では、所定時間に所定距離以上車両が走行した場合、車両が継続して走行したと判別する。
これによれば、車両がスムーズに走行しているような状況を、的確に判別できる。特に、赤信号等に起因して所定時間以上の間、所定の速度以上で継続した走行が行われない場合であっても、適切に、車両がスムーズに走行していることを検出できる。
【0037】
また、本実施形態では、車両が継続して走行したと判別した場合のほか、デジタル放送を正常に受信できない場合に、固定する放送を、アナログ放送に切り替える。
これにより、デジタル放送が正常に受信できない状態で、デジタルラジオ放送を出力し、デコードエラーや、受信エラーに起因した無音状態が発生することを効果的に防止できる。
【0038】
また、本実施形態では、放送局から、デジタルラジオ放送、及び、アナログラジオ放送に対応する番組が、放送の出力中にデジタルラジオ放送とアナログラジオ放送とを切り替えることを抑制することが推奨される番組(ライブ放送に係る番組)である旨を示す所定の信号(ボールゲームモード信号)を受信したことをトリガーとして、出力固定モードに移行する。
これによれば、デジタルラジオ放送とアナログラジオ放送との間での切り替えを抑制すべきときに、適切に当該切り替えを抑制できる。
【0039】
また、本実施形態では、出力固定モードに移行中、ユーザーが、出力する放送として固定する放送を、デジタルラジオ放送と、アナログラジオ放送との間で切り替え可能である。
これにより、ユーザーは、出力固定モードへ移行中であっても、実際の受信強度に応じて、固定するラジオ放送を切り替えることができることとなり、ユーザーの利便性が向上する。
【0040】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、車載受信装置1の機能的構成は図1に例示したものに限らず、デジタルチューナーと、アナログチューナーとを備え、デジタルチューナーによって復調されたデジタルオーディオ信号と、アナログチューナーによって復調されたアナログオーディオ信号との間で出力信号を切り替える構成であってもよい。すなわち、本発明は、デジタル放送と、アナログ放送とを受信可能な受信装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 車載受信装置
10 制御部
27 自車位置検出部
28 受信強度検出部
29 速度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、デジタル放送と、デジタル放送に対応したアナログ放送と、を受信可能な車載受信装置において、
動作モードとして、出力する放送を、デジタル放送と、アナログ放送とのいずれか一方に固定する出力固定モードを備え、
前記出力固定モードに移行中、出力する放送がデジタル放送に固定されている場合であっても、前記車両が継続して走行したと判別した場合は、固定する放送を、アナログ放送に切り替えることを特徴とする車載受信装置。
【請求項2】
所定時間以上の間、所定の速度以上で前記車両が走行した場合、前記車両が継続して走行したと判別することを特徴とする請求項1に記載の車載受信装置。
【請求項3】
所定時間に所定距離以上前記車両が走行した場合、前記車両が継続して走行したと判別することを特徴とする請求項1に記載の車載受信装置。
【請求項4】
前記車両が継続して走行したと判別した場合、又は、デジタル放送を正常に受信できない場合に、固定する放送を、アナログ放送に切り替えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車載受信装置。
【請求項5】
放送局から、デジタル放送、及び、アナログ放送に対応する番組が、放送の出力中にデジタル放送とアナログ放送とを切り替えることを抑制することが推奨される番組である旨を示す所定の信号を受信したことをトリガーとして、前記出力固定モードに移行することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車載受信装置。
【請求項6】
前記所定の信号とは、ボールゲームモード信号であることを特徴とする請求項5に記載の車載受信装置。
【請求項7】
前記出力固定モードに移行中、ユーザーが、出力する放送として固定する放送を、デジタル放送と、アナログ放送との間で切り替え可能としたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の車載受信装置。
【請求項8】
車両に搭載され、デジタル放送と、デジタル放送に対応したアナログ放送と、を受信可能に構成され、動作モードとして、出力する放送を、デジタル放送と、アナログ放送とのいずれか一方に固定する出力固定モードを備えた車載受信装置を制御して、
前記出力固定モードに移行中、出力する放送がデジタル放送に固定されている場合、前記車両が継続して走行したか否か判別し、前記車両が継続して走行したと判別した場合は、固定する放送を、アナログ放送に切り替えることを特徴とする車載受信装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−104910(P2012−104910A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249492(P2010−249492)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】