説明

車載器及び情報配信システム

【課題】車載器を搭載した車両の進行方向が変更される場合であっても、進行方向の判別誤りを防止する。
【解決手段】環状道路の出入口に設置された第1路側無線装置と、放射道路又は環状道路に設置された第2路側無線装置と、リセットコマンドを含む第1配信情報を含むデータを第1路側無線装置に送信し、また、第2路側無線装置の路側IDとコンテンツ情報とを含む第2配信情報を含むデータを第2路側無線装置に送信するセンター装置と、第1配信情報及び第2配信情報を受信するDSRC部、今回IDと前回IDとの比較結果に基づいて進行方向を判別し、DSRC部により第1配信情報を含むデータが受信された場合、リセットコマンドに応じて進行方向の判別結果の初期化する制御部、を有する車載器と、を備えた情報配信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器及び情報配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DSRC(Dedicated Short Range Communication)を利用して路上に設置された路側無線装置と狭域無線通信を行い、当該路側無線装置を介してセンター装置から情報提供を受けることが可能な車載器がある。
【0003】
このような車載器を用いたシステムとして、料金所に設けられた送受信アンテナと自動料金収受機能を有する車載器を搭載した車両との間で料金収受のための無線通信を行い、車両を一時停止させることなく料金を自動的に収受するETC(Electronic Toll Collection System)が知られている。このETCの技術は、送受信アンテナの通信領域内における電波の漏洩が問題となっていた。
【0004】
そこで、ETCにおける電波の漏洩を防止する技術として、例えば、送受信アンテナの通信領域内における電波の漏洩を抑制するために、電波吸収本体部材と電波吸収補助部材とを備える電波吸収体が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−237719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようなETCにおける漏洩防止技術は、予め車両の進行方向が定められており、通信を行う道路を特定できる構成の道路では有効であるが、特に進行方向が定められていない道路であったり、電波吸収体を設置できるスペースが無い道路であったりする場合には、電波の漏洩を防止することは困難である。
【0006】
特に、GPS(Global Positioning System)や地図情報を有さない車載器は、当該車載器を搭載した車両の位置や進行方向を認識することができない。そのため、対向車線に設置された路側無線装置からの電波の漏洩がある場合、車載器は、漏洩電波を受信して出力してしまうため、不要な情報がユーザに提供されてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、路側無線装置毎に予め設定された識別情報を用いて、車載器を搭載した車両の進行方向を判別する必要がある。例えば、各路側無線装置から受信する識別情報が予め設定された傾向にある場合には上り方向、上り方向とは異なる傾向にある場合には下り方向、と判別しなくてはならない。
【0008】
しかし、郊外から都心へ向かい環状道路に進入した後に郊外に向かう場合、環状道路に進入する前と後では進行方向が逆となる。そのため、進行方向を判別するために受信する識別情報が不連続となり、正確な判断を行なうことができなくなり、誤った情報をユーザに報知する恐れがある。
【0009】
本発明の課題は、路側無線装置から無線通信により受信した情報を音声により提供する車載器において、当該車載器を搭載した車両の進行方向が変更される場合であっても、進行方向の判別誤りを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1道路と第2道路との合流地点近傍に設置され、受信したデータを予め設定された範囲内に無線送信する第1路側無線装置と、前記第1道路又は前記第2道路に設置され、受信したデータを予め設定された範囲内に無線送信する第2路側無線装置と、進行方向の判別結果を初期化させる初期化指示情報を含む第1配信情報を含むデータを第1路側無線装置に送信し、また、前記第2路側無線装置を個別に識別するために予め設定された識別情報とコンテンツ情報とを含む第2配信情報を含むデータを前記第2路側無線装置に送信するセンター装置と、前記第1路側無線装置から送信される前記第1配信情報及び前記第2路側無線装置から送信される前記第2配信情報を受信する通信手段、前記通信手段により前記第1配信情報を含むデータが受信された場合、前記初期化指示情報に応じて進行方向を初期化する制御手段、を有する車載器と、を備えた情報配信システム、であることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報配信システムにおいて、前記制御手段は、前記通信手段により受信された第2配信情報に含まれる識別情報と、当該第2配信情報が受信される前に前記記憶手段に記憶されている前記第2配信情報に含まれている識別情報との比較結果に基づいて進行方向を判別する、ことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の情報配信システムにおいて、前記第1道路は、放射道路であり、前記第2道路は、環状道路であり、前記第1路側無線装置は、放射道路と前記環状道路の出入口となるどちらか一方の道路に設置されている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報配信システムにおいて、前記進行方向を判別結果とは、前記通信手段により前記第1配信情報を含むデータが受信された後、前記通信手段より受信された前記第2配信情報に含まれる識別情報を前記記憶手段に記憶させ、前記記憶手段に記憶された当該識別情報と、当該第2配信情報が受信された後に前記通信手段により受信された第2配信情報に含まれる識別情報との比較結果に基づいて進行方向を新たに判別する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、1道路と第2道路との合流地点近傍に設置され受信したデータを予め設定された範囲内に無線送信する第1路側無線装置から送信される進行方向の判別結果を初期化させる初期化指示情報を含む第1配信情報、及び、前記第1道路又は前記第2道路に設置され受信したデータを予め設定された範囲内に無線送信する第2路側無線装置から送信される当該第2路側無線装置を個別に識別するために予め設定された識別情報とコンテンツ情報とを含む第2配信情報、を受信する通信手段と、前記通信手段により前記第1配信情報を含むデータが受信された場合、前記初期化指示情報に応じて進行方向を初期化する制御手段と、を備える車載器であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、路側無線装置から無線通信により受信した情報を音声により提供する車載器において、当該車載器を搭載した車両の進行方向が変更される場合であっても、進行方向の判別誤りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、発話型車載器に関して実施の形態に記載するが、発明の範囲は図示例に限定されず、センター装置から路側無線装置を介して車載器と通信を行うITS(Intelligent Transport Systems)車載器において、ナビゲーション機能を有した機器と接続し、音声情報の他に画像情報、テキスト情報等を含んだ車載器にも適用される。
まず、構成を説明する。
図1に、本実施の形態における車載器を含む情報配信システム100のシステム構成を示す。
情報配信システム100は、図1に示すように、車両Cに搭載された車載器10、複数の第1路側無線装置21、複数の第2路側無線装置22、センター装置30を含んで構成され、センター装置30が第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22を介して車載器10に第1配信情報を含むデータと第2配信情報を含むデータとを配信する。
【0017】
第1配信情報は、各第1路側無線装置21を個別に識別するために予め設定された識別情報(路側ID)と進行方向の判別結果を初期化(リセット)させる初期化指示情報(リセットコマンド)を含む情報である。
【0018】
第2配信情報は、各第2路側無線装置22を個別に識別するために予め設定された識別情報(路側ID)と、コンテンツ情報と、を含む情報である。
【0019】
本実施の形態における第2路側無線装置の路側IDは、郊外に設置された第2路側無線装置の路側IDよりも都心に設置された第2路側無線装置の路側IDの方が大きい値を示す情報とする。即ち、本実施の形態における各第2路側無線装置の路側IDは、郊外から都心に向けて大きい値となる。このことから、郊外から都心に向かう方向、即ち、進行方向が上りの車両に搭載された車載器が受信する路側IDは、原則として、所定の第2路側無線装置により受信した路側IDは、当該路側IDよりも前に受信した路側IDよりも大きいこととなる。そして、都心から郊外に向かう方向、即ち、進行方向が下りの車両に搭載された車載器が受信する路側IDは、所定の第2路側無線装置により受信した路側IDは、当該路側IDよりも前に受信した路側ID以下となる。
【0020】
コンテンツ情報とは、主にユーザに提供する読み上げ情報(TTS情報)や音声情報を含む情報である。
【0021】
以下、各構成装置について詳細に説明する。
センター装置30は、第1配信情報を含むデータと第2配信情報を含むデータとを記憶し、第1配信情報を含むデータを第1路側無線装置21に送信して第1路側無線装置21を介して車載器10に配信し、第2配信情報を含むデータを第2路側無線装置22に送信して第2路側無線装置22を解して車載器10に配信する。センター装置30としては、配信制御を行う制御部、第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22と通信を行う通信部、第1配信情報を含むデータと第2配信情報を含むデータとを記憶する記憶部を備えたコンピュータ端末等を適用可能である。
【0022】
図1では1台のセンター装置30のみ示したが、第1配信情報及び第2配信情報を含むデータを配信する配信事業者は複数あり、センター装置30は配信事業者毎に備えられるものであってもよい。
【0023】
ここで、センター装置30が配信する第2配信情報に含まれるコンテンツ情報について説明する。
図2に、コンテンツ情報を含むデータの一例を示す。
データには、音声読み上げ情報を始めとするコンテンツ情報としての発話情報D1の他、道路種別(例えば、高速道路、一般道、主要地方道・・・)、方向コード(上り、下り、内回り、外回り、情報なし)等の現在位置情報が含まれる。
【0024】
コンテンツ情報は、その内容によって識別情報が付与されている。この識別情報は、内容によって情報を分類したときのその分類を示す情報である。分類の例としては、例えば緊急メッセージ情報、安全運転支援情報、長文読み上げ情報等が挙げられる。コンテンツ情報には、その内容によって分類された場合、当該分類に応じて予め設定された識別情報が付与されることとなる。
【0025】
また、コンテンツ情報には、TTS(Text to Speech)からなる長文読み上げ情報が含まれる他に表示用テキスト情報が含まれることもある。TTSは音声合成用の情報であり、読み上げ情報を再生する場合には、TTSに基づいて音声情報を生成する処理が必要となる。
【0026】
また、コンテンツ情報には車両の交通に関連する事象を示す情報が含まれる。事象とは出来事や事柄をいい、事象を示す情報としては例えば通行規制情報、災害規制情報、渋滞情報、気象情報、駐車場情報、SA(サービスエリア)・PA(パーキングエリア)情報、施設情報、経路案内情報、工事情報、路面情報、地震情報等がある。
【0027】
また、コンテンツ情報は実行の優先度によって、最優先情報、優先情報、選択可能情報に分類され、この情報を解析することによりコンテンツ情報の優先度が判別される。優先度は最優先情報、優先情報、選択可能情報の順に高い。最優先情報は受信後すぐに再生するコンテンツ情報である。最優先情報としては、例えば地震の通知等の緊急メッセージ情報が挙げられる。優先情報は受信後必ず再生するが、再生のタイミングは特に指定しないものである。例えば、事故等の注意警戒情報が挙げられる。選択可能情報は再生するか否かはユーザが選択でき、その再生のタイミングについても特に指定がないものである。例えば、ハイウェイラジオのような情報等が該当する。
【0028】
第1路側無線装置21は、第1道路としての放射道路と第2道路としての環状道路との接続部、即ち、環状道路の出入口となる道路に設置され、各第1路側無線装置21はネットワークNを介してセンター装置30と接続されている。また、第1路側無線装置21と、路上を走行する車両Cの車載器10とは無線通信が可能である。
【0029】
第2路側無線装置22は、第1道路又は第2道路、即ち、環状道路の出入口となる道路を除く放射道路や環状道路、駐車場の出入口の道路等の道路上に複数設置され、各第2路側無線装置22はネットワークNを介してセンター装置30と接続されている。また、第2路側無線装置22と、路上を走行する車両Cの車載器10とは無線通信が可能である。
【0030】
環状道路とは、都心からほぼ一定の距離を保ちながら、都心と郊外あるいは他の都市に向かって放射状に延びた道路(放射道路)と交わる道路である。
【0031】
第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22は、図3に示すように本体装置20aとアンテナ20bとから構成されている。第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22は、道路脇や道路上方に設置されたアンテナ20bから、到達距離が限定されたDSRCの電波を放射して、第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22それぞれの近傍に路側エリアZを形成する。この路側エリアZ内にある車両Cの車載器10とだけ双方向狭域無線通信が可能となる。以下、第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22と車載器10間の狭域無線通信を路車間通信という場合がある。
【0032】
DSRCは、5.8GHz帯域の電波を使った通信方式であり、その通信範囲は例えば数メートルから数十メートルである。第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22からのDSRCの送信出力は何れも同じ程度に設定されているので、第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22がそれぞれ形成する路側エリアZは設置場所に関係なく、ほぼ一定である。路側無線装置の設置位置について、地形的に電波の混信がやむ得なく起こるような場所に設置する場合があり、その場合は、第1路側無線装置21は電波の混信が起こらないような場所に設置することが可能である。
【0033】
本体装置20aは、車載器10とセンター装置30間の情報のやりとりを仲介するための処理を行う。すなわち、本体装置20aは、予めセンター装置30から送信された発話型提供情報を始めとする各種情報を記憶しており、通信エリアZ内に車両Cが進入すると、この車両Cに搭載された車載器10とアンテナ20bを介して通信を行って、センター装置30から送信された各種情報を車載器10に配信する。本体装置20aは、情報処理や通信制御を行う制御部、記憶部等を備えたコンピュータ端末を適用することができる。
【0034】
図4に、車載器10の構成を示す。
図4に示すように、車載器10は、制御部1、記憶部2、ROM(Read Only Memory)3、RAM(Random Access Memory)4、操作表示部5、DSRC部6、再生部7、I/O部8等を備えて構成されている。
【0035】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)等から構成され、ROM3に記憶された制御プログラムや必要なデータをRAM4に展開し、各種演算を行う他、各部の集中制御を行う。例えば、第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22との路車間通信を行う際にはDSRC部6の通信動作を制御する。なお、DSRC部6の制御にあたってはDSRC部6のDSRC制御部との協働により制御を行う。また、DSRC部6を介してセンター装置30から受信したデータの保存、実行制御等を行う。
【0036】
本実施の形態における制御部1は、記憶部2に記憶されたプログラムや必要なデータをRAMに展開し、DSRC部6により受信された第2配信情報に含まれる路側IDと、当該第2配信情報が受信される前に記憶部2に記憶されている第2配信情報に含まれている路側IDとの比較結果に基づいて進行方向を判別して当該判別結果に応じてコンテンツ情報の有効性を判定し、また、DSRC部6により第1配信情報を含むデータが受信された場合、初期化指示情報に応じて進行方向を初期化する進行方向判定処理を制御する。
【0037】
本実施の形態における進行方向を初期化する処理とは、DSRC部6により第1配信情報を含むデータが受信された後、DSRC部6より受信された第2配信情報に含まれる路側IDを記憶部2に記憶させ、当該記憶部2に記憶された路側IDを含む第2配信情報が受信された後に、DSRC部6により受信された第2配信情報に含まれる路側IDを受信した場合、記憶部2に記憶されていた路側ID(前回ID)と受信した路側ID(今回ID)との比較結果に基づいて進行方向を新たに判別する処理である。
【0038】
記憶部2は、不揮発性のメモリから構成され、進行方向判定処理を実行させるためのプログラムや当該プログラムの実行に必要なパラメータやデータ、第1路側無線装置21を介してセンター装置30から受信した第1配信情報、及び、第2路側無線装置22を介してセンター装置30から受信した第2配信情報を含むデータを記憶し、当該第2配信情報に含まれる路側IDを記憶する。
【0039】
ROM3は、制御部1により実行される制御プログラム、当該制御プログラムの実行に必要なデータ等を記憶している。なお、ROM3は、読出し専用の記憶装置であれば良く、磁気的、光学的記憶媒体又は半導体メモリで構成されていても良い。
【0040】
RAM4は、制御部1により制御実行される各種処理において、記憶部2やROM3から読み出された各種プログラム、入力、若しくは出力データ及びパラメータなどの一時的な格納領域となる。
【0041】
操作表示部5は、LED(Light Emitting Diode)などの表示器と操作キー群から構成されている。操作表示部5は、制御部1から入力される表示信号に従って、表示器上に各種情報を表示したり、操作キー群から入力される操作信号を制御部1に出力したりする。
【0042】
DSRC部6は、センター装置30からデータを受信するための通信処理等を行い、通信手段として機能する。
DSRC部6は、図4に示すようにDSRC制御部6a、通信部6b、記憶部6c等を備えて構成されている。
【0043】
DSRC制御部6aは、CPU、RAM等から構成され、記憶部6cに記憶されている制御プログラムとの協働によりDSRC部6の各部の動作を制御する。例えば、通信部6bにより第1路側無線装置21又は第2路側無線装置22を介してデータを受信した場合には、これを制御部1に出力する。
【0044】
通信部6bは、車両Cのダッシュボード上でフロントガラス近傍に固設されたアンテナを備え、このアンテナを介して第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22等とDSRCの電波の送受信を行う。
記憶部6cは、DSRC制御部6aにより実行される制御プログラム等を記憶している。
【0045】
再生部7は、スピーカ7a等を備え、第2配信情報に含まれているコンテンツ情報に応じた動作(例えば、音による再生)を実行する実行手段として機能する。
読み上げ情報の再生を行う場合、読み上げ情報は中間言語で記述されているので、再生部7は読み上げ情報を音声情報に変換して再生する読み上げ再生処理(TTS(Text to Speech)処理)を行う。読み上げ再生処理では、読み上げ情報を解析して音声合成に必要なパラメータ(音声素片、音韻の継続時間長、ピッチ、振幅の時間変化パターン等)を生成する。そして、生成したパラメータを用いて音声波形を合成する。再生部7は合成音声の信号をスピーカ7aにより出力し、音声による再生を行う。
【0046】
I/O部8は、外部装置との通信を行うインターフェースである。外部装置との通信制御は、制御部1からの指示に従って行われる。例えば、I/O部8を介して接続された外部装置にコンテンツ情報や各種プログラム等のデータの入出力を行なうことができる。
【0047】
次に、動作について説明する。
図5及び図6に、車載器10の制御部1により実行される進行方向判定処理を説明するフローチャートを示す。なお、進行方向判定処理は、車載器10に電力が供給されている間、実行される処理とする。
【0048】
制御部1は、まず、進行方向の初期化を実行するか否かを示す初期フラグ(Init)を0に設定し(ステップS1)、路側IDを受信したか否かを判別し(ステップS2)、路側IDを受信していない場合(ステップS2;No)、ステップS2に戻る。
【0049】
制御部1は、路側IDを受信した場合(ステップS2;Yes)、リセットコマンドを受信したか否か、即ち、第1配信情報を含むデータを受信したか否かを判別する(ステップS3)。リセットコマンドを受信した場合(ステップS3;Yes)、初期フラグを0に設定する(ステップS4)。
【0050】
制御部1は、リセットコマンドを受信していない場合(ステップS3;No)、受信した路側IDを既に記憶部2に記憶されている路側IDと比較する路側ID(今回ID)として設定する(ステップS5)。そして、制御部1は、ステップS4後又はステップS5後、初期フラグは1か否かを判別する(ステップS6)。
【0051】
制御部1は、初期フラグが1でない場合、即ち、リセットコマンドを受信して初期フラグが0に設定されている場合(ステップS6;No)、路側IDを受信したか否かを判別し(ステップS7)、路側IDを受信していない場合(ステップS7;No)、路側IDを受信するまで待機する(ステップS7に戻る)。
【0052】
制御部1は、路側IDを受信した場合(ステップS7;Yes)、受信した路側IDを次に受信する路側IDと比較するための路側ID(前回ID)として設定し(ステップS8)、ステップS7;Yes後に、路側IDを受信したか否かを判別し(ステップS9)、路側IDを受信していない場合(ステップS9;No)、路側IDを受信するまで待機する(ステップS9に戻る)。
【0053】
制御部1は、路側IDを受信した場合(ステップS9;Yes)、受信した路側IDを今回IDとして設定し(ステップS10)、今回IDは前回IDよりも大きいか否かを判別する(ステップS11)。
【0054】
制御部1は、今回IDが前回IDよりも大きい場合(ステップS11;Yes)、車載器10を搭載している車両の進行方向は上りであると判別して進行方向を上りに設定し(ステップS12)、今回IDが前回ID以下である場合(ステップS11;No)、車載器10を搭載している車両の進行方向は下りであると判別して進行方向を下りに設定する(ステップS13)。
【0055】
制御部1は、ステップS12又はステップS13後、今回IDを前回IDに設定し(ステップS14)、初期フラグを1に設定して(ステップS15)、ステップS2に戻る。
【0056】
即ち、ステップS7〜S15の処理は、ステップS7が実行される前までに設定されていた進行方向を新たに判別して設定する進行方向の判別結果の初期化処理に相当する。
【0057】
制御部1は、初期フラグが1である場合(ステップS6;Yes)、進行方向は上りに設定されているか否かを判別する(ステップS16)。
【0058】
制御部1は、進行方向が上りに設定されている場合(ステップS16;Yes)、今回IDは前回IDよりも大きいか否かを判別する(ステップS17)。
【0059】
制御部1は、今回IDが前回IDよりも大きい場合(ステップS17;Yes)、今回IDと共に第2配信情報に含まれているコンテンツ情報は、再生部7による実行が有効となる情報であると判別し、再生部7により当該コンテンツ情報を実行させ(ステップS18)、今回IDを前回IDに設定し(ステップS19)、ステップS2に戻る。
【0060】
制御部1は、今回IDが前回ID以下である場合(ステップS17;No)、今回IDと共に第2配信情報に含まれているコンテンツ情報は、再生部7による実行が無効となる情報であると判別し、再生部7により当該コンテンツ情報を実行させず(ステップS21)、ステップS2に戻る。
【0061】
制御部1は、進行方向が上りに設定されていない場合、即ち、進行方向が下りに設定されている場合(ステップS16;No)、今回IDは前回IDよりも小さいか否かを判別し(ステップS20)、今回IDが前回IDよりも小さい場合(ステップS20;Yes)、ステップS18に進み、今回IDが前回ID以上である場合(ステップS20;No)、ステップS21に進む。
【0062】
図7に、第1路側無線装置21及び第2路側無線装置22の設置位置の例を示し、当該例における車載器10の進行方向判定処理の動作例を説明する。
【0063】
図7に示すように、第1路側無線装置21a〜21hを環状道路Aの出入口に設定し、第2路側無線装置22a〜22dを第1放射道路B1に設置し、第2路側無線装置22e〜22hを第2放射道路B2に設置し、第2路側無線装置22i、22jを環状道路Aに設置する。
【0064】
第1路側無線装置21aは、第1放射道路B1の上り車線から環状道路Aの外回りの車線に向かう道路に設置されている。第1路側無線装置21bは、第1放射道路B1の上り車線から環状道路Aの内回りの車線に向かう道路に設置されている。第1路側無線装置21cは、環状道路Aの内回りの車線から第1放射道路B1の下り車線に向かう道路に設置されている。第1路側無線装置21dは、環状道路Aの外回りの車線から第1放射道路B1の下り車線に向かう道路に設置されている。
【0065】
第1路側無線装置21eは、第2放射道路B2の上り車線から環状道路Aの外回りの車線に向かう道路に設置されている。第1路側無線装置21fは、第2放射道路B2の上り車線から環状道路Aの内回りの車線に向かう道路に設置されている。第1路側無線装置21gは、環状道路Aの内回りの車線から第2放射道路B2の下り車線に向かう道路に設置されている。第1路側無線装置21hは、環状道路Aの外回りの車線から第2放射道路B2の下り車線に向かう道路に設置されている。
【0066】
第1放射道路B1の上り車線から環状道路Aの外回りを経て第2放射道路B2の下り車線を走行する車両に搭載された車載器10の進行方向判定処理を説明する。
【0067】
まず、第1放射道路B1の上り車線を走行中の車両に搭載された車載器10は、第2路側無線装置22aから第2配信情報を含むデータを受信すると、当該第2配信情報に含まれている路側IDを今回IDとして設定し、当該路側IDを受信する前に受信し前回IDとして設定されている路側IDと当該今回IDとを比較して、コンテンツ情報の有効性を判別して実行し、また、当該今回IDを前回IDとして設定する。
【0068】
その後、第2路側無線装置22bから第2配信情報を含むデータを受信すると、当該第2配信情報に含まれている路側IDを今回IDとして設定し、当該路側IDを受信する前に受信し前回IDとして設定されている路側ID(第2路側無線装置22aから受信した路側ID)と当該今回IDとを比較して、コンテンツ情報の有効性を判別して実行し、また、当該今回IDを前回IDとして設定する。
【0069】
そして、第1放射道路B1の上り車線から環状道路Aの外回りに向かう道路に進入すると、第1路側無線装置21aから第1配信情報を含むデータを受信し、当該第1配信情報に含まれているリセットコマンドに応じて初期フラグを0に設定する。
【0070】
その後、環状道路Aの外回りの道路を走行中に、第2路側無線装置22iから第2配信情報を含むデータを受信すると、当該第2配信情報に含まれている路側IDを前回IDとして設定し、当該第2配信情報に含まれているコンテンツ情報の実行の有効性の判別及び実行は行われない。
【0071】
第2路側無線装置22iからデータを受信した後、更に環状道路Aの外回りの道路を走行中に第2路側無線装置22jから第2配信情報を含むデータを受信すると、当該第2配信情報に含まれている路側IDを今回IDとして設定し、当該路側IDを受信する前に受信し前回IDとして設定されている路側ID(第2路側無線装置22iから受信した路側ID)と当該今回IDとを比較して、進行方向の判別を行い、また、当該今回IDを前回IDとして設定し、初期フラグを1に設定する。
【0072】
そして、環状道路Aの外回りから第2放射道路B2の下り車線に向かう道路に進入すると、第1路側無線装置21hから第1配信情報を含むデータを受信し、当該第1配信情報に含まれているリセットコマンドに応じて初期フラグを0に設定する。
【0073】
その後、第2放射道路B2の下り車線を走行中に、第2路側無線装置22eから第2配信情報を含むデータを受信すると、当該第2配信情報に含まれている路側IDを前回IDとして設定し、当該第2配信情報に含まれているコンテンツ情報の実行の有効性の判別及び実行は行なわれない。
【0074】
第2路側無線装置22eからデータを受信した後、更に環状道路Aの外回りの道路を走行中に第2路側無線装置22fから第2配信情報を含むデータを受信すると、当該第2配信情報に含まれている路側IDを今回IDとして設定し、当該路側IDを受信する前に受信し前回IDとして設定されている路側ID(第2路側無線装置22eから受信した路側ID)と当該今回IDとを比較して、進行方向の判別を行い、また、当該今回IDを前回IDとして設定し、初期フラグを1に設定する。
【0075】
以上のように、本実施形態によれば、路側無線装置から無線通信により受信した情報を音声により提供する車載器において、当該車載器を搭載した車両の進行方向が変更される場合であっても、進行方向の判別誤りを防止することができる。
【0076】
また、上記フローで、リセットコマンドに応じて初期フラグを0に設定した後にデータを受信してもコンテンツ情報の実行の有効性の判別は行わないが、実行はしても良い。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、本実施形態では、車載器10が受信する路側IDが増加する方向を上り、減少する方向を下りとして説明したが、減少する方向を上り、増加する方向を下りとしてもよい。また、前回IDは、今回IDとして設定される路側IDが受信される直前に受信され路側IDとしたが、今回IDとして設定される路側IDが受信される前に受信された複数の路側IDを前回IDとして設定し、これら前回IDとして設定された複数の路側IDのうちいずれかよりも大きい又は小さい場合、上り又は下りとして判別してもよく、第2路側無線装置が設置される道路の状況に応じて適宜設定することが好ましい。
【0078】
また、上記実施の形態における情報配信システムに関して、上記実施の形態は緯度経度や方向を判別する手段を有しない発話型車載器に適用されるのが好ましいが、車載器は発話型には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施の形態における車載器を含む情報配信システムのシステム構成を示す図である。
【図2】コンテンツ情報の一例を示す図である。
【図3】図1の路側無線装置の路側エリアを説明する図である。
【図4】車載器の構成を示す図である。
【図5】進行方向判定処理を説明するフローチャートである。
【図6】進行方向判定処理を説明するフローチャートである(図5の続き)。
【図7】第1路側無線装置及び第2路側無線装置の設置位置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 制御部
2 記憶部
3 ROM
4 RAM
5 操作表示部
6 DSRC部
6a DSRC制御部
6b 通信部
6c 記憶部
7 再生部
7a スピーカ
8 I/O部
10 車載器
20a 本体装置
20b アンテナ
21 第1路側無線装置
22 第2路側無線装置
30 センター装置
100 情報配信システム
A 環状道路
B1 第1放射道路
B2 第2放射道路
C 車両
N ネットワーク
Z 路側エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1道路と第2道路との合流地点近傍に設置され、受信したデータを予め設定された範囲内に無線送信する第1路側無線装置と、
前記第1道路又は前記第2道路に設置され、受信したデータを予め設定された範囲内に無線送信する第2路側無線装置と、
進行方向の判別結果を初期化させる初期化指示情報を含む第1配信情報を含むデータを第1路側無線装置に送信し、また、前記第2路側無線装置を個別に識別するために予め設定された識別情報とコンテンツ情報とを含む第2配信情報を含むデータを前記第2路側無線装置に送信するセンター装置と、
前記第1路側無線装置から送信される前記第1配信情報及び前記第2路側無線装置から送信される前記第2配信情報を受信する通信手段、
前記通信手段により前記第1配信情報を含むデータが受信された場合、前記初期化指示情報に応じて進行方向を初期化する制御手段、
を有する車載器と、
を備えた情報配信システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記通信手段により受信された第2配信情報に含まれる識別情報と、当該第2配信情報が受信される前に前記記憶手段に記憶されている前記第2配信情報に含まれている識別情報との比較結果に基づいて進行方向を判別する、
請求項1に記載の情報配信システム。
【請求項3】
前記第1道路は、放射道路であり、
前記第2道路は、環状道路であり、
前記第1路側無線装置は、前記放射道路と前記環状道路の出入口となるどちらか一方の道路に設置されている、
請求項1又は2に記載の情報配信システム。
【請求項4】
前記進行方向を初期化とは、
前記通信手段により前記第1配信情報を含むデータが受信された後、前記通信手段より受信された前記第2配信情報に含まれる識別情報を前記記憶手段に記憶させ、前記記憶手段に記憶された当該識別情報と、当該第2配信情報が受信された後に前記通信手段により受信された第2配信情報に含まれる識別情報との比較結果に基づいて進行方向を新たに判別する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報配信システム。
【請求項5】
第1道路と第2道路との合流地点近傍に設置され受信したデータを予め設定された範囲内に無線送信する第1路側無線装置から送信される進行方向の判別結果を初期化させる初期化指示情報を含む第1配信情報、及び、前記第1道路又は前記第2道路に設置され受信したデータを予め設定された範囲内に無線送信する第2路側無線装置から送信される当該第2路側無線装置を個別に識別するために予め設定された識別情報とコンテンツ情報とを含む第2配信情報、を受信する通信手段と、
前記通信手段により前記第1配信情報を含むデータが受信された場合、前記初期化指示情報に応じて進行方向を初期化する制御手段と、
を備える車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−151674(P2009−151674A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330590(P2007−330590)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】