説明

車載用充電システム及びこれを備えるプラグイン式電気自動車

【課題】車体に接触した者を感電事故から守ることが可能な車載用充電システムを提供する。
【効果】車載用充電システム120によると、車体Cbに設置された充電用コネクタ110と車輌内に配置されたメインバッテリ130との間にブレーカー121が設けられるので、商用電力を印加させた際に漏電電流が車輌内に発生すると、充電用コネクタ110と車輌の電力系統100との電気的接続を遮断させ、漏電電流の発生を断ち、これにより、当該車載用充電システムを搭載させたプラグイン式電気自動車では、車体に接触した者を漏電電流に起因する感電事故から守ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用充電システム及びこれを備えるプラグイン式電気自動車に関し、特に、感電事故に対する安全性の向上を図る際に用いて好適のものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータ及び内燃機関の系統を適宜に選択させ駆動輪に動力を与えるHEV(Hybrid Electric
Vehicle)が実用化されている。更には、車載用バッテリに関する技術開発の進歩に伴い、バッテリ電力による長距離走行が可能となり、これを受けて、プラグイン式の充電機構を具備するHEV(Hybrid Electric Vehicle)についても商品化が行なわれている。加えて、車輌の構成から内燃機関を排除させ、電動モータのみの構成で車輌を走行させるEV(Electric Vehicle)が登場するに至っている。以下、プラグイン式HEV及びEVをプラグイン式電気自動車と呼ぶ。
【0003】
プラグイン式電気自動車1は、図7に示す如く、高圧側電力系統10a及び低圧側電力系統10bとから成る電力系統10が車輌内に組み込まれている。このうち、高圧側電力系統10aは、車輌のボディーに設けられた充電用コネクタ11と、当該充電用コネクタ11に接続され商用電力を直流電力に変換させる車載用充電システム12と、車載用充電システム12の出力電力によって充電されるメインバッテリ13と、メインバッテリ13から電力を受け3相交流電力を生成させるインバータ14と、インバータ14によって駆動されるメインモータ15とから構成されている。高圧側電力系統10aでは、家庭用コンセントに充電用コネクタ11が接続されると、出力電圧が300V〜400V程度のメインバッテリ13を充電させ、当該メインバッテリ13の電力を更にインバータ14にて変換させることにより、メインモータ15を適宜に駆動させる。当該高圧側電力系統10aは、高電圧が加えられるため、車輌のシャーシCb1又はボディーCb2から絶縁状態Zが保たれ、これにより、搭乗者等は、ボディーCb2に接触しても、高電圧による感電から保護される。以下、シャーシCb1又はボディーCb2を「車体Cb」と呼ぶ。
【0004】
低圧側電力系統10bは、メインバッテリ13の後段に接続され数百ボルトの高電圧を14ボルト程度の低電圧へ変換させるDC−DCコンバータ16と、DC−DCコンバータ16の出力電力によって充電されるサブバッテリ17と、当該サブバッテリ17によって駆動される図示されない車載用機器(パワーウインドウ、パワーステアリング、フューエルポンプ、照明機器、オーディオ等)とから構成される。低圧側電力系統10bは、供給された高電圧を14ボルト程度の低電圧に変換させると供に、当該低電圧によってサブバッテリ17を充電させる。そして、サブバッテリ17から12ボルト程度の電圧が出力されることにより、後段の各種車載用機器に電力が与えられる。低圧側電力系統10bは、陽極側に接続される電源ラインPpと陰極側に接続される電源ラインPnとによって配線され、陰極側の電源ラインPnは、車体Cbと同電位にされている。
【0005】
上述した従来例に係るプラグイン式電気自動車は、特開平10−136510号公報(特許文献1)、特開平11−069512号公報(特許文献2)、特開2001−219733号公報(特許文献3)、特開2009−017675号公報(特許文献4)、特開2009−095157号公報(特許文献5)、等で紹介されており、この他、かかる技術分野において広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−136510号公報
【特許文献2】特開平11−069512号公報
【特許文献3】特開2001−219733号公報
【特許文献4】特開2009−017675号公報
【特許文献5】特開2009−095157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図7で説明された技術では、何らかの絶縁不良が起きて、高圧側電力系統10aから車体Cbへと漏電電流が流れると、車体Cbは、当該車体と接地面とが絶縁されているので、漏電電流に伴って車体表面に高電荷を帯電させてしまう。このとき、車体に接触した者(例えば、搭乗者、充電作業者等)は、車体と接地面との電位差によって体内にアース電流が流れ、其の電流値によっては感電してしまう惧れがある。尚、車内に生じる漏電電流は、ハーネスの接続が解かれて端子部が車体に接触してしまう場面、又は、イオンマイグレーション、車載機器のヒートシンクと実装素子との絶縁劣化等、種々の要因で起こり得る。また、当該漏電電流は、高圧側電力系統10aから低圧側電力系統10bを介して車体へと流れることも有る。
【0008】
かかる問題の回避策として、電源ラインを非常遮断させる装置を用いても、漏電電流の検知ミスが偶発的に起きてしまうと、電源ラインの遮断装置(特許請求の範囲における遮断手段に相当)が作動せず、上述同様、車体に漏電電流が流れ、当該車体に接触した者が感電してしまうとの問題が起こり得る。そこで、車載用充電システムでは、漏電電流の検知ミスが生じても遮断装置を駆動させるリカバリー機能を与え、センサー故障等の不測の事態が生じても人体を感電事故から保護できるよう多重の安全設計が求められる。更に、車載用充電システムは、車体に漏電電流が流れてしまうと感電事故を起こす危険度が高くなるため、車体に漏電電流が流れる前に遮断装置を作動させ、感電事故の発生を未然に防ぐ安全機能が求められる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み、車体に接触した者を感電事故から守ることが可能な車載用充電システム及びこれを備えるプラグイン式電気自動車の提供を第1の目的とする。また、感電事故を防止する遮断装置を確実に機能させることが出来る車載用充電システム及びこれを備えるプラグイン式電気自動車の提供を第2の目的とする。更に、感電事故の発生を未然に防ぐ安全機能が与えられた車載用充電システム及びこれを備えるプラグイン式電気自動車の提供を第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では次のような車載用充電システムの構成とする。即ち、車体に設けられた充電用コネクタと、電源ラインを介して供給される商用電力を変換させ車輌に搭載された高圧用バッテリへ充電電力を供給する電力変換回路と、前記商用電力を供給しているときに漏電状態を検出すると前記電源ラインを遮断させ前記商用電力による前記電力変換回路への電力供給を停止させる遮断手段とを少なくとも備え、
前記遮断手段は、前記充電用コネクタと前記電力変換回路との間に接続されていることとする。
【0011】
また、本発明では次のような車載用充電システムの構成としても良い。即ち、電源ラインを介して供給される商用電力を変換させ車輌に搭載された高圧用バッテリへ充電電力を供給する電力変換回路と、前記商用電力を供給しているときに漏電状態を検出すると前記電源ラインを遮断させ前記商用電力による前記電力変換回路への電力供給を停止させる遮断手段と、車両に構成された電力系統と車体との間の絶縁状態が良好か不良かの判定を行なう絶縁状態判定回路と、前記絶縁状態判定回路の判定信号に応じて前記遮断手段を遮断動作させる遮断動作誘発回路とを少なくとも備えることとする。
【0012】
好ましくは、前記絶縁状態判定回路は、車両に構成された電力系統と車体との絶縁状態が不良となった場合に絶縁不良電流を生じさせる電流発生回路と、前記絶縁不良電流の発生を検出し前記判定信号を生成出力させる信号生成回路とを備えていることとする。
【0013】
好ましくは、前記判定信号は、車輌に搭載された制御回路を介して前記遮断動作誘発回路へ入力されることとする。
【0014】
好ましくは、前記遮断動作誘発回路は、前記ブレーカー近傍の電源ラインのうち一方の電源ラインに対して前記ブレーカーの入力側で一端が接続され、前記ブレーカー近傍の電源ラインのうち他方の電源ラインに対して前記ブレーカーの出力側で他端が接続され、前記一方の電源ラインの入力側と前記他方の電源ラインの出力側とを導通又は非導通とさせる第1の導通手段を具備することとする。
【0015】
好ましくは、前記遮断動作誘発回路は、前記第1の導通手段と、前記ブレーカーの出力側での前記一方の電源ライン及び前記他方の電源ラインを導通又は非導通とさせる第2の導通手段とを具備し、
前記第2の導通手段は、前記漏電検出回路の検出信号に応じて導通又は非導通の状態が切換えられ、前記第1の導通手段は、前記第2の導通手段の切換状態に応じて導通又は非導通の状態が切換えられることとする。
【0016】
好ましくは、前記遮断手段は、前記複数の電源ラインの電流バランスが崩れると作動されることとする。より好ましくは、前記遮断手段は、ブレーカーであることとする。
【0017】
更に、本発明では、上述した発明の何れかに記載の車載用充電システムを搭載させたプラグイン式電気自動車としても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車載用充電システムによると、車体に設置された充電用コネクタと車輌内に配置された電力変換回路との間にブレーカーが設けられるので、漏電電流が車輌内で発生すると、充電用コネクタと車載用充電システムとを電気的に遮断させ、これにより、当該車載用充電システムを搭載させたプラグイン式電気自動車では、車体に接触した者を漏電電流に起因する感電事故から守ることが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る車載用充電システムによると、車輌の電源をオン状態とさせた段階で判定信号が出力されるので、当該判定信号が絶縁不良を示す場合、商用電源を充電用コネクタへ接続させた瞬間、ブレーカーが強制遮断され、充電用コネクタと車輌の電力系統との電気的接続が直ちに遮断されることとなる。また、本発明に係るプラグイン式電気自動車によると、電力系統の絶縁不良が確認されている場合、商用電源を充電用コネクタへ接続させた瞬間、直ちに電源ラインが遮断されるので、車体への漏電電流の流れが未然に防止され、車体に接触する人(搭乗者、充電作業者等)を感電事故から守ることが可能となる。
【0020】
更に、本発明に係る車載用充電システムによると、回路故障等の不測の事態に備えて二重の安全設計が設けられることにより、ブレーカーの遮断動作を確実に実施させることが可能となる。また、本発明に係るプラグイン式電気自動車では、二重の安全設計によってブレーカーの遮断動作が確実に実施されるので、漏電電流の流れが完全に抑えられ、これにより、車体に接触する人(搭乗者、充電作業者等)を感電事故から守ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係るプラグイン式電気自動車の電力系統の構成を示す図。
【図2】実施例1に係る車載用充電システムの構成を示す図。
【図3】実施例1に係る車載用充電システムの他の構成を示す図。
【図4】実施例1に係る車載用充電システムの動作を示す図。
【図5】実施例2に係る車載用充電システムに適用される電力変換回路の構成を示す図。
【図6】実施例2に係る車載用充電システムに適用される電力変換回路の構成を示す図。
【図7】従来例に係るプラグイン式電気自動車の電力系統の構成を示す図。
【図8】従来例に係る車載用充電システムに適用される電力変換回路の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1に示す如く、プラグイン式電気自動車の電力系統100は、高圧側電力系統100aと低圧側電力系統100bとから構成される。このうち、高圧側電力系統100aは、充電用コネクタ110と、充電用コネクタ110に接続された車載用充電システム120と、車載用充電システム120に接続されたメインバッテリ130(特許請求の範囲における高電圧バッテリ)と、メインバッテリ130に接続されたインバータ140と、インバータ140に接続されたメインモータ150とから構成され、かかる構成により、メインモータ150を数百ボルトの高電圧で駆動制御させ、車輌を適宜に走行させる。また、低圧側電力系統100bは、高圧側電力系統100aの接点部Aに接続されたDC−DCコンバータ160と、DC−DCコンバータ160に接続されたサブバッテリ170と、サブバッテリ170に接続された車載用負荷(パワーウインドウ、パワーステアリング、フューエルポンプ、照明機器、オーディオ等)180とから構成され、かかる構成により、車載用負荷を12ボルト程度の低電圧で制御させる。尚、低圧側電力系統100bは、Pp2が陽極側の電源ラインとされ、Pn2が陰極側の電源ラインとされ、当該電源ラインPn2は車輌のシャーシ又はボディー(以下、車体Cbと呼ぶ)に電気的に接続されている。また、高圧側電力系統100aは、理想的な場合、図示の如く車体Cbとの絶縁状態が維持されている。
【0023】
車載用充電システム120は、遮断手段121と電力変換回路122とから構成されている。このうち、電力変換回路122は、複数の電源ラインPp1,Pn1を介して供給される商用電力を変換させ、車輌に搭載されたメインバッテリ130へ充電電力を供給する。一方、遮断手段121は、商用電力が充電用コネクタ110に接続されてから、印加された商用電力の状態に基づいて、車輌内に漏電電流が流れたか否かの事実を検知する。そして、当該遮断手段121は、漏電電流を検知すると、機械的可動機構を作動させ、これにより、電源ラインPp1又はPn1の各々を遮断させ、商用電力による電力変換回路122への電力供給を停止させる。かかる遮断手段121は、電磁的に駆動されるリレー装置であっても良く、電源ラインPp1,Pn1の電流バランスが崩れた際に作動されるブレーカー装置であっても良い。但し、何れの場合であっても、電力系統100の漏電電流を何らかの手段によって検出し、その検出値に応じて遮断動作を発生させる装置が必要となる。
【0024】
漏電電流は、車輌に設けられた電力系統100の何れかの部分で絶縁不良が生じていると、商用電力を投入した際、絶縁不良に陥った箇所を伝って電流が車体に流れ、当該車体に接触している者の体内にアース電流を流す原因となる。かかるアース電流は、10mA〜20mAになると人体の筋肉を痙攣させ自力で車体から離れることが困難となり、50mAに上ると人体を死に至らしめてしまう。このため、本実施の形態の場合、漏電電流の電流値が大きくなる前に当該電流を検出できる装置が好ましい。このため、適宜な感度設定が行い得るブレーカー装置を用いるのが好ましい。
【0025】
本実施の形態に係る車載用充電システム120によると、車体Cbに設置された充電用コネクタ110と車輌内に配置されたメインバッテリ130との間にブレーカー121が設けられるので、商用電力を印加させた際に漏電電流が車輌内に発生すると、充電用コネクタ110と車輌の電力系統100との電気的接続を遮断させ、漏電電流の発生を断ち、これにより、当該車載用充電システムを搭載させたプラグイン式電気自動車では、車体に接触した者を漏電電流に起因する感電事故から守ることが可能となる。
【0026】
ところで、ブレーカー121は、当該ブレーカー121の前段側に不要な配線が接続されると、電源ラインPn1,Pp1をブレーカー121で遮断させても、商用電力と車輌に配された電力系統100とを完全に遮断できない場合がある。その一例を挙げると、車載ECUで電源ラインPp1の電圧値を検出し充電用コネクタ110に商用電力が接続されたか否かの判断を遠隔的に行なうシステムでは、ブレーカー121の前段の電源ラインに電圧検出用の信号ラインが接続されるので、車載ECU内で絶縁不良が起きてしまうと、当該信号ライン及び車載ECUを介して商用電力の一部が車輌の電力系統100に印加されてしまう場合がある。そして、このような事態に陥ると、電力系統側の絶縁不良箇所から車体Cbへ向けて漏電電流が流れ、車体に接触する者が感電する惧れが有る。
【0027】
このため、本実施の形態に係る車載用充電システム120では、図示の如く、車輌に設けられた充電用コネクタ110と電力変換回路122との間にブレーカー121を接続させている。これにより、ブレーカー121は充電用コネクタ110の直後に配置されることとなり、電圧検出用又はこの他の用途で用いられる信号ライン等をブレーカー121の後段で電源ラインに接続配線させることが容易となり、ブレーカー121の前段では、電源ラインPp1,Pn1に接続される不要な配線が極力排除されることとなる。
【0028】
従って、同図の車載用充電システム120によると、充電用コネクタ110の直後にブレーカー121が設けられるので、ブレーカー121の後段で信号ライン等の接続配線が行なわれ、これにより、ブレーカー121が遮断動作すると、商用電力を印加させた充電用コネクタ110と車体側の電力系統100との電気的接続が確実に遮断され、車体への漏電電流の発生原因を根絶することが可能となる。従って、当該車載用充電システムを搭載させたプラグイン式電気自動車では、感電事故に繋がる危険な状況下において、漏電電流の流れが確実にカットされるので、車体に接触する者を感電事故から確実に守ることが可能となる。
【0029】
ここで、車載用の電力系統100では、感電事故に対する安全確保の観点から、漏電電流の検知ミスが生じてもブレーカー121を駆動させ得るリカバリー機能を与え、センサー故障等の不測の事態が生じても人体を感電事故から保護できるよう多重の安全設計が求められる。また、車載用充電システムは、車体に漏電電流が流れてしまうと感電事故を起こす危険度が高くなるため、車体に漏電電流が流れる前に遮断装置を作動させ、感電事故の発生を未然に防ぐ安全機能が求められる。しかしながら、これらの要求事項を充足させるためには、図1にて説明した車載用充電システム120の構成では実現不可能であるため、当該車載用充電システム120に更なる回路構成を追加させる必要がある。以下、上述した要求事項を充足させる車載用充電システムについて説明する。
【実施例1】
【0030】
図2は、本実施例に係る車載用充電システム120の回路構成が示されている。当該車載用充電システム120は、ブレーカー121と電力変換回路122と上位制御回路123と絶縁状態判定回路124と遮断動作誘発回路125とから構成されている。本実施例に係る車載用充電システムでは、実施の形態にて説明した車載用充電システムの構成に加えて、上位制御回路123と絶縁状態判定回路124と遮断動作誘発回路125とが追加構成され、絶縁状態判定回路124と遮断動作誘発回路125とによって、上述した要求事項が充足されることとなる。尚、充電用コネクタ110は、従来例にて説明したように、車輌のボディーの一部に設けられ、外部コネクタとの着脱が作業者によって自由に行なわれる。
【0031】
ブレーカー121は、零相変流器ZCTと増幅器ISと引きはずし装置MSとから構成されている。零相変流器ZCTは、電源ラインを挿通させる鉄心と当該鉄心に捲回された二次コイルとを備え、電源ラインPp1及び電源ラインPn1に流れる入力電流と帰還電流とのバランスを検出する。当該零相変流器ZCTは、相電流のバランスが崩れた場合、二次コイルを誘起させ、電流バランスが乱れた旨の情報を出力させる。増幅器ISは、零相変流器ZCTからの信号を受信し、当該信号を適宜な値に増幅させる。また、増幅器ISでは、図示されない感度調整部を伴って、遮断動作の感度調整をも行なう。引きはずし装置MSは、増幅器ISの信号を受信すると、機械的機構を作動させて電源ラインの各々を完全に絶縁遮断させる。当該引きはずし装置MSは、一度遮断動作されると、手動復帰させない限り、導通状態へ復帰することは出来ない機構とされている。引きはずし装置MSには、電磁式の装置や電子式の装置が用いられる。尚、同図に示される零相変流器ZCTは、3相交流電力にも使用できるよう電源ラインが3本設けられているが、本実施の形態では、2相交流電力を接続させるため、このうちの2本の電源ラインのみが接続される。
【0032】
電力変換回路122は、複数のパワートランジスタ及びコイル等から成る主回路部と、当該主回路部を制御させる各種制御回路とから構成される。電力変換回路122は、上位制御回路123から指令信号を受けると、これに基づいて内部の制御回路がパワートランジスタを駆動させ、これにより、交流電力(商用電力)を数百ボルト(例えば、300ボルト〜400ボルト程度)の直流電力へと変換させる。尚、電力変換回路122の具体的構成については、図6にて詳述することとする。
【0033】
上位制御回路123は、車体制御の機能を主として司るBCU(Body Control Unit)であって、車輌内のセンサーから受信した情報を保有し、当該情報に基づいて適宜な信号を生成出力させる装置である。上位制御回路123は、家庭用電源が充電用コネクタ110に接続されると、電源ラインの電位上昇を伝達させる信号ラインを介して、その旨の情報を受信する。そして、上位制御回路123では、電源ラインの電圧値上昇に係る情報が電力変換回路122を起動させる一つの条件として設定されており、電圧値上昇に係る情報及び他に設定された情報が揃うと、電力変換回路122の起動指令を出力する。
【0034】
絶縁状態判定回路124は、車両に構成された電力系統と車体との間の絶縁状態が良好か不良かの判定を行なう。当該絶縁状態判定回路124は、電流発生回路124aと信号生成回路124bとによって構成される。このうち、電流発生回路124aは、車両に構成された電力系統100と車体Cbとの絶縁状態が不良となった場合に、絶縁不良電流Ijを生じさせる。一方、信号生成回路124bは、電流発生回路124aで生じた絶縁不良電流Ijの発生を検出し、当該絶縁不良電流Ijの状態に応じて、絶縁状態が維持されているか不良とされているかを示す判定信号Scを生成出力させる。
【0035】
図2には、電流発生回路124a及び信号生成回路124bを具備する回路構成の一例が示されている。電流発生回路124aは、交流波を出力させるオシレータOSCと、一端がオシレータOSCに接続され他端が接点部Eに接続された抵抗Rzと、車体Cb及び接点部Eの間に接続されたコンデンサCyと、接点部Dと接点部Eとの間に直列接続されたコンデンサCx及び抵抗Rxとから構成されている。電流発生回路124aは、電力系統100での絶縁状態が維持されていると、オシレータから与えられる交流波が接点部Eで所定電位に設定され、このときは、接点部D及び電源ラインPp1へ絶縁不良電流Ijが流れることはない。これに対し、電力系統100での絶縁状態が維持されていない場合、電流発生回路124aでは、コンデンサに蓄積されていた電荷の移動により、絶縁不良電流Ijが流れ、このとき、接点部Eで設定されていた電位が低下することとなる。
【0036】
信号生成回路124bは、コンパレータCOMPによって構成され、当該コンパレータCOMPは、非反転入力端子に基準電位Vthが印加され、反転入力端子に電流発生回路124aの接点部Eが接続される。コンパレータCOMPは、反転入力端子の印加電圧が基準電位Vthより大きいと、出力端子からLow信号(絶縁良好を示す判定信号Sc)を出力させ、反転入力端子の印加電圧が基準電位Vthより低下すると、出力端子からHigh信号(絶縁不良を示す判定信号Sc)を出力させる。
【0037】
従って、これらの回路を具備する絶縁状態判定回路124は、電力系統100の絶縁状態が良好である場合、接点部Eでの電位が基準電位Vthより高く設定され、コンパレータの出力端子から、絶縁良好を示す信号、即ち、Low信号を出力させる。一方、電力系統100の絶縁状態が不良である場合、絶縁状態判定回路124では、接点部Eでの電位が基準電位Vthより低下し、コンパレータの出力端子から、絶縁不良を示す信号、即ち、High信号を出力させる。
【0038】
本実施例に係る絶縁状態判定回路124は、商用電源の印加が行なわれるか否かに関係なく、サブバッテリから供給される5V〜12Vの低電圧(以下、制御系電圧、制御系電力とも呼ぶ)を用いて判定信号Scが処理される。従って、電力系統の制御系回路に電源が投入されていれば、商用電源の接続前に、絶縁状態の良否を判定することが可能となる。
【0039】
また、当該絶縁判定回路124は、商用電源の接続前に絶縁状態の良否判定を実施するので、良否判定された判定信号Scを遮断誘発回路125へ予め供給しておくことが可能となる。
【0040】
尚、同図では、コンパレータCOMPの出力ラインにトランジスタTrmが接続され、制御系電圧(例えば、12ボルト)によって、コンパレータからの検出信号を増幅させるようにしている。但し、判定信号Scの電圧値が十分高く、後段の遮断動作誘発回路125正しく動作させることが可能であれば、判定信号Scを増幅させる構成は省略して良い。また、DC−DCコンバータ160等で生成された制御系電圧(例えば、5V〜12V)によって上位制御回路123が駆動されるので、図3に示すように、コンパレータCOMPからの判定信号Scを上位制御回路126のマイコン等で増幅させるようにしても良い。
【0041】
遮断動作誘発回路125は、図2に示す如く、抵抗Rrとリレー装置Ry1,Ry2とから構成され、絶縁状態判定回路124の判定信号Scに応じてブレーカー121を遮断動作させる。リレー装置は、導通状態又は遮断状態を択一的に形成させるものであって、機械的なスイッチ機構と当該スイッチ機構を駆動させるコイル部とから構成される。また、遮断動作誘発回路125には、先の抵抗Rr及びリレー装置Ry1,Ry2及び種々の配線によって、第1の導通手段L1と第2の導通手段L2と判定信号伝達手段L3とが形成される。
【0042】
第1の導通手段L1は、一方の電源ラインPn1に対してブレーカー121の入力側(接点部C)で配線の一端が接続され、他方の電源ラインPp1に対してブレーカー121の出力側(接点部B1)で配線の他端が接続されている。また、当該配線には、図示の如く、抵抗Rrとリレー装置Ry1のスイッチ機構とが接続されている。第1の導通手段L1は、リレー装置Ry1のコイル部で磁束変化が生じると、リレー装置Ry1のスイッチ機構は、電磁的に駆動され、導通状態から遮断状態(非導通状態)へと切換えられる。即ち、第1の導通手段L1は、接点部Cと接点部B1とを導通又は非導通の状態に切換える役割を担う。尚、第1の導通手段L1は、ブレーカー121の入力側で電源ラインPp1に接続させ、ブレーカー121の出力側でPn1に接続させるようにしても良い。
【0043】
一方、第2の導通手段L2は、図示の如く、ブレーカー121の出力側において、配線の一端(接点部B1)が電源ラインPp1に接続され、配線の他端(接点部B2)が電源ラインPn1に接続される。また、第2の導通手段L2には、リレー装置Ry2のスイッチ機構とリレー装置Ry1のコイル部とが直列に接続されている。当該第2の導通手段L2は、リレー装置Ry2のスイッチ機構が閉成されると、接点部B1及び接点部B2を導通させる。
【0044】
判定信号伝達手段L3は、リレー装置Ry2のコイル部を備え、一端がトランジスタTrmの出力端子(又は、上位制御回路123の信号出力端子)に接続され、他端が車輌の車体Cbに接続されている。判定信号伝達手段L3では、絶縁状態判別回路側から供給された判定信号Sc(判定信号Scが増幅された信号SC’を含む)がHigh状態とされるとき、リレー装置Ry2のコイル部を励起させ、当該リレー装置Ry2のスイッチ機構を閉成させる。
【0045】
車載用充電システム120の動作について、図4及び図5を参照して以下説明する。図4及び図5では、車載用充電システム120の一部構成のみが便宜的に示されており、図4では、車輌の電源スイッチがオンされて制御用電力が投入された後であって、判定信号が絶縁良好とされている。一方、図5では、制御用電力が投入された後であって、判定信号が絶縁不良とされている。尚、当該図4及び図5では、特段のことわりが無い限り、ブレーカー121で漏電電流が検出されていないこととする。
【0046】
先ず、図4を参照して、判定信号が絶縁良好とされる場面について説明する。充電用コネクタ110に商用電源が接続されると、判定信号が絶縁良好の旨を示しているので、トランジスタTrmは予めオフ状態とされ、リレー装置Ry2のコイル部は励磁されず、リレー装置Ry2のスイッチ機構は開状態を維持する。このとき、リレー装置Ry1では、自身のコイル部が励起されないので、当該リレー装置Ry1のスイッチ機構も開状態のままとされる。このようなスイッチング状態の場合、電源ラインPp1と電源ラインPn1との電流バランスに乱れは起きないので、遮断動作誘発回路125によってブレーカー121が作動されることはない。即ち、ブレーカー121の引きはずし装置MSは、閉成状態を維持し、外部からの商用電力を電力変換回路122へと供給させることとなる。
【0047】
次に、図5を参照して、判定信号が絶縁不良とされる場面について説明する。上述の如く、判定信号は制御系電力の投入と同時期に出力されるので、図5(a)に示す如く、判定信号伝達手段L3には、トランジスタTrmによって増幅された判定信号Sc’が流れ込む。このとき、リレー装置Ry2では、コイル部が励起されスイッチ機構が閉成される。すると、電源ラインPp1の接点部B1と電源ラインPn1の接点部B2との間には電位差が生じているので、第2の導通手段L2に電源ライン間の相関電流が流れ、これにより、リレー装置Ry1では、当該リレー装置Ry1のコイル部が励起され、同装置のスイッチ機構が閉成されることとなる。このとき、接点部Cと接点部B1とが導通されるので、第1の導通手段L1には相間電流Ikが流れることとなる。尚、第1の導通手段L1では、相間電流Ikが抵抗Rrによって調整されている。
【0048】
図5(b)に示す如く、第1の導通手段L1に相間電流Ikが流れると、入力方向へ流れる電流と帰還方向へ流れる電流とのバランスが崩れるので、零相変流器ZCTでは、磁束変化を受けて二次コイルから検出電圧を出力させ、増幅器ISは、当該検出電圧を受けて電圧値を増幅させ、電圧の印加先とされる引きはずし装置MSを遮断させる。即ち、第1の導通手段L1は、零相変流器ZCTでの電源ラインの電流バランスを強制的に乱し、ブレーカー121を強制的に遮断動作させる役割を担う。
【0049】
ブレーカー121が遮断動作されると、双方の電源ラインには電力の印加が無くなるので、図5(c)に示す如く、リレー装置Ry1が開成状態に復帰し、第1の導通手段L1は、接点部Cと接点部B1との導通を解く。このとき、判定信号が絶縁不良を指していたとしても、本実施例に係る充電システム120では、引きはずし装置MSの入力側と出力側との遮断状態が手動復帰操作されるまで維持され、リレー装置Ry1の遮断状態(開成)が引きはずし装置MSの遮断状態(開成)に応じて維持される。従って、充電用コネクタ110を介して供給される商用電力は、ブレーカー121の入力側と出力側との全ての配線が遮断状態(開成)とされるため、当該商用電力が電力変換回路122へ供給されることは無い。よって、判定信号が絶縁不良を示している際の車載用充電システム120では、車輌の電源を入れた段階で判定信号が既に決定されるので、充電用コネクタ110へ商用電力を接続させると、直ちにブレーカー121を強制遮断させる。即ち、当該車載用充電システム121では、車体Cbへ漏電電流が流れる前にブレーカー121を強制遮断させ、車体に接触している人を感電事故から守ることが可能となる。
【0050】
尚、図4及び図5では、ブレーカー121が自発的に作動しない場合について説明を行なった。但し、電源ラインにおける相電流のバランスが崩れた場合には、判定信号Scの有無に関わらず、自発的に電源ラインを遮断させ、車体Cbへ流れる漏電電流を防止できる。即ち、本実施例に係るブレーカー121は、相電流のバランス検出によって自発的に遮断動作させる場合と、判定信号の指示に従って強制的に遮断動作される場合とが有り得る。従って、零相変流器ZCT又は増幅器ISに不具合が生じブレーカー121の動作感度が鈍化した場合であっても、遮断動作誘発回路125によってブレーカー内の相電流のバランスを大きく崩すことが出来るため、絶縁状態判定回路124の判定信号に基づいて、ブレーカー121を強制的に遮断動作させることが可能となる(多重の安全設計の第一形態)。また、絶縁状態判定回路124の不具合が生じて、本来出力されるべき「絶縁不良を示す旨の判定信号」が出力されなくなっても、電力系統100から車体Cbに漏電電流が流れると、自発的な遮断動作が働くので、電源ラインの各々をブレーカー121によって遮断させることが可能となる(多重の安全設計の第二形態)。
【0051】
上述の如く、本実施例に係る車載用充電システム120によると、車輌の電源をオン状態とさせた段階で判定信号Scが出力されるので、当該判定信号Scが絶縁不良を示す場合、商用電源を充電用コネクタ110へ接続させた瞬間、ブレーカー121が強制遮断され、充電用コネクタ110と車輌の電力系統100との電気的接続が直ちに遮断されることとなる。また、本実施例に係るプラグイン式電気自動車によると、電力系統100の絶縁不良が確認されている場合、商用電源を充電用コネクタ110へ接続させた瞬間、直ちに電源ラインが遮断されるので、車体Cbへの漏電電流の流れが未然に防止され、車体に接触する人(搭乗者、充電作業者等)を感電事故から守ることが可能となる。
【0052】
また、ブレーカー121は、当該ブレーカー自身の自発的な遮断動作を実施させると供に、絶縁状態判定回路124及び遮断動作誘発回路125による強制的な遮断動作が実施される。そして、当該ブレーカー121は、自発的な遮断動作が機能しなくなっても、強制的な遮断動作が機能する限り、漏電電流の発生を未然に防止することが出来、一方、強制的な遮断動作が機能しなくなっても、自発的な遮断動作が機能することにより、漏電電流が人体に影響を及ぼす電流値になる前に当該漏電電流を停止させることが可能となる。
【0053】
即ち、本実施例に係る車載用充電システム120によると、回路故障等の不測の事態に備えて二重の安全設計が設けられることにより、ブレーカー121の遮断動作を確実に実施させることが可能となる。また、本実施例に係るプラグイン式電気自動車では、二重の安全設計によってブレーカー121の遮断動作が確実に実施されるので、漏電電流の流れが完全に抑えられ、これにより、車体に接触する人(搭乗者、充電作業者等)を感電事故から守ることが可能となる。
【0054】
尚、一般に、従来例に係るプラグイン式電気自動車1(図7参照)では、充電システム12に内蔵される電力変換回路に絶縁構造を設け、充電用コネクタ11とメインバッテリ13との電気的接触を断ち、車体への漏電電流の漏出を極力排除できる回路構成を採用している。以下、図8を参照し、充電システム12に内蔵される電力変換回路22について説明する。
【0055】
従来例に係る電力変換回路22は、ダイオードブリッジから成る整流回路22aと、力率を改善させ入力電圧を昇圧させるPFC回路22bと、PFC回路から受けた電圧を調整し適宜な充電電圧を生成するトランス式昇降圧回路22cとから構成されている。このうち、トランス式昇降圧回路22cは、2本のインバータアームの間に一次コイルを設けたフルブリッジ回路Brと、二次コイルの端部に接続されたダイオードDv及びDwと、当該二次コイルの中点に接続されたリアクトルL4と、一端がダイオードDv及びDwのアノード側に接続され他端がリアクトルL4の出力側に接続された平滑コンデンサCsとから構成され、一次コイル及び二次コイルは、鉄心を介して絶縁トランスT1を形成している。かかる構成を具備するトランス式昇降圧トランス22cは、図示されない制御回路によってフルブリッジ回路Brが駆動されると、これに応じて、絶縁トランスT1で二次電圧が生じる。そして、平滑コンデンサCsでは、二次電圧とリアクトルL4の作用により、メインバッテリ13の充電電圧を生成させるための電荷が蓄積される。また、かかるトランス式昇降圧回路22cは、内部に絶縁トランスT1が形成されているので、絶縁トランスT1の一次側と二次側とを電気的に絶縁させ、トランス後段での漏電電流の漏出を防ぎ、これにより、車体に接触する人(搭乗者、充電作業者等)を感電事故から守ることとしている。
【0056】
しかし、図8で説明された技術では、絶縁トランスT1を充電システム12へ組み込んだ構成とされるので、当該システムの大型化に繋がるとの問題が生じる。また、絶縁トランスT1を駆動させるフルブリッジ回路Brは、4個のパワートランジスタを個別に制御させるため、スイッチングノイズが大きくなり、これにより、フィルター回路を大型化させてしまうとの問題も生じる。しかし、上述した実施の形態又は実施例に係る電力変換回路122は、ブレーカー121が車載用充電システムへ組み込まれているので、従来例の電力変換回路の構成に関する問題が以下の如く一掃される。
【実施例2】
【0057】
図6は、充電システム120を構成する電力変換回路122が示されている。かかる電力変換回路122は、図示の如く、整流ブリッジ122aとPFC回路122bとPFC制御回路122cと降圧コンバータ122dと降圧コンバータ制御回路122eとから構成され、このうち、PFC制御回路122cと降圧コンバータ制御回路122eとは、上位制御回路123から、指令信号が各々送られる。
【0058】
整流ブリッジ122aは、図示の如く、ダイオードD1〜D4がブリッジ状に配線され、入力された交流電力を全波整流させる。また、整流ブリッジ122aの後段には、図示されないフィルター回路が設けられる。
【0059】
PFC回路122bは、リアクトルL1及びL2と、ダイオードD5及びD6と、パワートランジスタTr1及びTr2と、平滑コンデンサCpと、シャント抵抗Rsとから構成され、整流ブリッジから出力された全波整流波形の力率を改善させると供に、平滑コンデンサCpから直流電圧を適宜に制御させて出力させる。また、PFC制御回路122cは、入力電圧及び出力電圧及びシャント抵抗からの信号値に基づいて、適宜なPWM信号を生成出力させ、パワートランジスタT1及びTr2を制御させる。かかるPFC回路122bは、インターリーブ制御が導入されているので、平滑コンデンサCpのピーク電圧が低減される。また、PWM制御によって重畳される電源ラインのノイズも抑制することができる。
【0060】
降圧コンバータ122dは、パワートランジスタTr3と、当該パワートランジスタTr3に直列接続されるリアクトルL3と、フリーホイーリングダイオードD7と、平滑コンデンサCqとから構成され、パワートランジスタTr3は、降圧コンバータ制御回路122eによって制御される。当該降圧コンバータ122dは、パワートランジスタTr3の動作に応じて、入力電圧を降圧変換させる一般的な回路であって、回路構成が非常に簡素なものとされる。
【0061】
そして、電力変換回路122は、整流ブリッジ122aとPFC回路122bと降圧コンバータ122dとによって、商用電力(交流電力)を直流電力に変換させ、当該直流電力の電圧値を適宜な値に制御させる。また、充電用コネクタ110の直後にブレーカー121が設置されるので、図8(従来例)に示されるような絶縁トランスT1を設けなくとも、感電事故に対する充電作業者の保護が図られる。
【0062】
本実施の形態に係る車載用充電システム120によると、電力変換回路122の構成について絶縁トランスT1を省略できるので、装置の簡素化及び小型化が図られる。更に、絶縁トランスの省略及びこれに伴うフルブリッジ回路の省略により、スイッチング回数が抑えられ、これにより、フィルター回路の小型化、低ノイズ化が可能となる。
【0063】
また、車載用充電システムを搭載させたプラグイン式電気自動車によると、充電システムの小型化及び低コスト化に伴い、車輌全体の小型化及び低コスト化に資するものとなる。また、充電システムの低ノイズ化に伴い、車輌内の電力系統全体の安定動作が期待できる。
【符号の説明】
【0064】
100 電力系統
110 充電用コネクタ
120 充電システム
121 遮断手段
122 電力変換回路
123 上位制御回路
124 絶縁状態判定回路
125 遮断動作誘発回路
Ry1 リレー(第1の導通手段)
Ry2 リレー(第2の導通手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた充電用コネクタと、電源ラインを介して供給される商用電力を変換させ車輌に搭載された高圧用バッテリへ充電電力を供給する電力変換回路と、前記商用電力を供給しているときに漏電状態を検出すると前記電源ラインを遮断させ前記商用電力による前記電力変換回路への電力供給を停止させる遮断手段とを少なくとも備え、
前記遮断手段は、前記充電用コネクタと前記電力変換回路との間に接続されていることを特徴とする車載用充電システム。
【請求項2】
電源ラインを介して供給される商用電力を変換させ車輌に搭載された高圧用バッテリへ充電電力を供給する電力変換回路と、前記商用電力を供給しているときに漏電状態を検出すると前記電源ラインを遮断させ前記商用電力による前記電力変換回路への電力供給を停止させる遮断手段と、車両に構成された電力系統と車体との間の絶縁状態が良好か不良かの判定を行なう絶縁状態判定回路と、前記絶縁状態判定回路の判定信号に応じて前記遮断手段を遮断動作させる遮断動作誘発回路とを少なくとも備えることを特徴とする車載用充電システム。
【請求項3】
前記絶縁状態判定回路は、車両に構成された電力系統と車体との絶縁状態が不良となった場合に絶縁不良電流を生じさせる電流発生回路と、前記絶縁不良電流の発生を検出し前記判定信号を生成出力させる信号生成回路とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の車載用充電システム。
【請求項4】
前記判定信号は、車輌に搭載された制御回路を介して前記遮断動作誘発回路へ入力されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車載用充電システム。
【請求項5】
前記遮断動作誘発回路は、前記ブレーカー近傍の電源ラインのうち一方の電源ラインに対して前記ブレーカーの入力側で一端が接続され、前記ブレーカー近傍の電源ラインのうち他方の電源ラインに対して前記ブレーカーの出力側で他端が接続され、前記一方の電源ラインの入力側と前記他方の電源ラインの出力側とを導通又は非導通とさせる第1の導通手段を具備することを特徴とする請求項2乃至請求項4に記載の車載用充電システム。
【請求項6】
前記遮断動作誘発回路は、前記第1の導通手段と、前記ブレーカーの出力側での前記一方の電源ライン及び前記他方の電源ラインを導通又は非導通とさせる第2の導通手段とを具備し、
前記第2の導通手段は、前記漏電検出回路の検出信号に応じて導通又は非導通の状態が切換えられ、
前記第1の導通手段は、前記第2の導通手段の切換状態に応じて導通又は非導通の状態が切換えられることを特徴とする請求項5に記載の車載用充電システム。
【請求項7】
前記遮断手段は、前記複数の電源ラインの電流バランスが崩れると作動されることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の車載用充電システム。
【請求項8】
前記遮断手段は、ブレーカーであることを特徴とする請求項7に記載の車載用充電システム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の車載用充電システムを搭載させたプラグイン式電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−135663(P2011−135663A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291660(P2009−291660)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】