説明

車載用電気電子部品

【課題】車載用電気電子部品の内部に収納されている電子部品を、腐食性の硫黄系化合物ガス、窒素酸化物ガス等の腐食性酸性ガスやアルカリ性ガスによる腐食より保護する、耐腐食信頼性の高い車載用電気電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品が搭載された回路基板等の電気が印加されて機能する電子部品と、前記電子部品を内蔵するケース3と、前記電子部品が配置された前記ケース3の開放面を覆うカバー5とを有する車載用電気電子部品において、前記ケース3と前記カバー5とが腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤により接合されてなることを特徴とする車載用電気電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電気電子部品に関する。特には、エンジンルーム内に設置される、各種物理量を検出するセンシングエレメントと前記センシングエレメントを制御する電子回路により、各種物理量を電気的信号として出力する各種センサ等の車載用電気電子部品、及び前記各種センサの電気信号を受けて車両の各種状態を制御するマイクロプロセッサ演算機を有するコントロールユニット等の車載用電気電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の車載用電気電子部品の封止構造としては、特開平6−11373号公報(特許文献1)に示す熱式空気量計のように、多くのエンジンルーム内の物理検出装置や制御装置の基本構造として採用されている。これらの装置のケースやカバー等の接着剤として、エポキシ接着剤、或いはシリコーン接着剤が使用されることが多い。
【0003】
上記従来技術は、シリコーン接着剤で接着封止した場合、そこに腐食性ガス雰囲気が存在すると、前記シリコーン接着封止部より腐食性ガスは透過し、ケース内部に侵入してしまう。
【0004】
これに対し、シリコーン樹脂中に金属粉を配合して腐食性ガスを吸着する方法が提案されている(特開2003−96301号公報:特許文献2)。しかしながら、前記シリコーン樹脂は、腐食性ガスを吸着する効果は出るものの、車載時に曝されるガソリンやエンジンオイル等により膨潤、劣化してしまうため、前記雰囲気下では使用に耐えることができない。
【0005】
また、ガソリンやエンジンオイル等に対し耐性のある材料として、パーフロロポリエーテルゴム組成物が提案されているが、気体としての酸性ガス及び硫黄含有ガスによる腐食を防止、遅延する効果はシリコーン樹脂と比較して優れているものの、長期の暴露に耐えるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−11373号公報
【特許文献2】特開2003−96301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、車載用電気電子部品の内部に収納されている電子部品を、腐食性の硫黄系化合物ガス、窒素酸化物ガス等の腐食性酸性ガスやアルカリ性ガスによる腐食より保護する、耐腐食信頼性の高い車載用電気電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、車載用電気電子部品の接着剤、封止剤として、腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤、フッ素系封止剤を用いることにより、耐溶剤性、耐薬品性等に優れている上、特に酸性ガス及び硫黄含有ガスの低透過性に優れたフッ素系接着剤及び/又はフッ素系封止剤により保護された車載用電気電子部品が得られ、これにより車載用電気電子部品の内部に収納されている電子部品を、腐食性の硫黄系化合物ガス、窒素酸化物ガス等の腐食性酸性ガスやアルカリ性ガスによる腐食より保護し得る、耐腐食信頼性の高い車載用電気電子部品が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記車載用電気電子部品を提供する。
〔1〕 電子部品が搭載された回路基板等の電気が印加されて機能する電子部品と、前記電子部品を内蔵するケースと、前記電子部品が配置された前記ケースの開放面を覆うカバーとを有する車載用電気電子部品において、
前記ケースと前記カバーとが腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤により接合されてなることを特徴とする車載用電気電子部品。
〔2〕 電子部品が搭載された回路基板等の電気が印加されて機能する電子部品と、前記電子部品が固定されるベースと、前記電子部品の周囲を囲うケースと、前記ケースの開放面を覆うカバーとを有する車載用電気電子部品において、
前記ケースと前記ベース、及び/又は、前記ケースと前記カバーが腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤により接合されてなることを特徴とする車載用電気電子部品。
〔3〕 電子部品が搭載された回路基板等の電気が印加されて機能する電子部品と、前記電子部品が固定されるベースと、前記電子部品の周囲を囲うケースと、必要により前記ケースの開放面を覆うカバーとを有する車載用電気電子部品において、
電子部品が腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系封止剤により封止されてなり、必要により前記ケースと前記ベース、及び/又は、前記ケースと前記カバーが腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤により接合されてなることを特徴とする車載用電気電子部品。
【0010】
本発明は、フッ素系接着剤として、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に−Ca2aO−の繰り返し単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する、直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(aは1〜6の整数): 100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物: 硬化有効量、
(C)酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを、化学的及び/又は物理的に吸着し得る無機粉体: 0.1〜50質量部、
(D)ヒドロシリル化反応触媒: 触媒量
を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゴム組成物を用いることが好ましく、
フッ素系封止剤として、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に−Ca2aO−の繰り返し単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する、直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(aは1〜6の整数): 25〜65質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物: 硬化有効量、
(C)酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを、化学的及び/又は物理的に吸着し得る無機粉体: 0.1〜50質量部、
(D)ヒドロシリル化反応触媒: 触媒量、
(E)1分子中に1個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する、ポリフルオロモノアルケニル化合物: 75〜35質量部
(但し、(A),(E)成分の合計が100質量部である。)
を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物を用いることが好ましい。
特に、本発明においては、該無機粉体として、金属粉、粉体活性炭、ハイドロタルサイト構造を有する粉体化合物を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車載用電気電子部品の内部に収納されているハイブリッドIC基板等の電子部品を、腐食性の硫黄系化合物ガス、窒素酸化物ガス等の腐食性酸性ガスやアルカリ性ガスからの腐食より保護する、耐腐食信頼性の高い車載用電気電子部品を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の車載用電気電子部品は、電子部品が搭載された回路基板等の電気が印加されて機能する電子部品と、前記電子部品を内蔵してなるケース、又は前記電子部品が固定されてなるベース及び前記電子部品の周囲を囲うケースと、必要により前記ケースの開放面を覆うカバーとを有するものである。
本発明は、前記ケースと前記ベース、前記ケースと前記カバーを、腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤により接合すること、或いは、電子部品を、腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系封止剤により封止することを特徴とするものである。
即ち、本発明の耐溶剤性、耐薬品性等に優れている上、特に酸性ガス及び硫黄含有ガス等の腐食性ガスの低透過性に優れたフッ素系接着剤及び/又はフッ素系封止剤により保護された車載用電気電子部品は、腐食性の硫黄ガス、硫黄系化合物ガス、窒素酸化物ガス、COxガス等の腐食性酸性ガス、塩素系の化合物ガスやアルカリ性ガスが車載用電気電子部品内部に透過することなく、電子部品の腐食を防止し得るものである。
【0013】
本発明の車載用電気電子部品としては、ガス圧センサ、液圧センサ、温度センサ、湿度センサ、回転センサ、Gセンサ、タイミングセンサ、エアフローメーター、電子回路、半導体モジュール、各種コントロールユニット等が挙げられる。
センサは、吸入空気流量、空気温度、大気圧、ブースト圧、燃料圧、排気圧等の物理量を検出し、半導体モジュールやコントロールユニットは、センサの信号を受け、シリンダ内での燃焼状態を制御したり、ATF系統を制御したりする機能である。
【0014】
本発明の形態を以下に説明し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、下記の記載によって、何等の制約を受けるものでないことは言うまでもない。
本発明の車載用電気電子部品の代表的な断面構造を図1〜3に示す。
【0015】
図1は、電子駆動回路又は電子制御回路1を有する平面基板6が樹脂製或いは金属製のベース2に接着固定され、前記回路1を収納するケース3をベース2に、腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤4にて接着固定し、更に上面をカバー5で前記接着剤4にて接着固定した車載用電気電子部品を示す。
【0016】
前述した電子駆動回路又は電子制御回路1としては、セラミック等の無機材により形成された平面基板6の表面に、回路の導体となる導体配線と抵抗を印刷し、焼成することより形成された表面にコンデンサ、ダイオード、半導体集積回路を実装した形態のハイブリッドIC基板が多く使用される。
【0017】
ハイブリッドIC基板を収納するケース3、上面を覆うカバー5及びベース2は、電子駆動回路1の入出力信号インターフェースとなるコネクターと一体となった形状であり、樹脂内部に電気的信号の伝達を司る導電性部材より成るターミナル7をインサート成型して埋設する構造が多く採用されている。
【0018】
図2は、カバー5を使用せず、ハイブリッドIC基板を、腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系封止剤8にて封止した構造を有する車載用電気電子部品を示す。
【0019】
図3は、図1に示す車載用電気電子部品内部を、更に腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系封止剤8にて封止した構造を有する車載用電気電子部品を示す。
【0020】
ここで、ベース2、ケース3及びカバー5を形成する樹脂部材としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ナイロン6、ナイロン66等の射出成形性の優れた樹脂が多く採用されている。
【0021】
車載用電気電子部品は、車両のエンジンルーム内に搭載されるため、エンジンからの燃焼ガスの吹き返し、未燃焼ガスの戻し、ハイドロカーボンの滞留、排気ガス等の雰囲気に晒される。また、エンジン構成部品に多く使用されている硫黄を多く含むゴムホース等が群集した状態であり、腐食性の硫黄系化合物ガス、窒素酸化物ガス等の腐食性酸性ガスやアルカリ性ガスに対して抗力のある車載用電気電子部品により、信頼性を向上させる必要がある。それは、これら車載用電気電子部品において、多くの電子駆動回路のセラミック基板上に形成される導体配線は、銀、銅、或いはその合金により形成されている場合が多く、腐食性ガスに晒された場合、導体配線部分は、硫化腐食等を起こして断線し、電子駆動回路が作動しない状態となる可能性があるためである。
【0022】
そのために、腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤4或いはフッ素系封止剤8を使用し、硫化腐食等を防止することが必要である。腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤及びフッ素系封止剤としては、特開2006−249416号公報に記載されているパーフロロポリエーテルゴム組成物が特に有用である。特に、金属粉、粉体活性炭、ハイドロタルサイト構造を有する粉体化合物が有用と推される。
【0023】
具体的に、本発明の腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤としては、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に−Ca2aO−の繰り返し単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する、直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(aは1〜6の整数)、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物、
(C)酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを、化学的及び/又は物理的に吸着し得る無機粉体、
(D)ヒドロシリル化反応触媒
を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゴム組成物であることが好ましい。
【0024】
また、腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系封止剤としては、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に−Ca2aO−の繰り返し単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する、直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(aは1〜6の整数)、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物、
(C)酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを化学的及び/又は物理的に吸着し得る無機粉体、
(D)ヒドロシリル化反応触媒、
(E)1分子中に1個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する、ポリフルオロモノアルケニル化合物
を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物であることが好ましい。
【0025】
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造、好ましくは二価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有するものである。
【0026】
ここで、パーフルオロアルキルエーテル構造としては、−Ca2aO−(式中、各単位のaは独立に1〜6の整数である。)の多数の繰り返し単位を含むもので、例えば下記一般式(5)で示されるものなどが挙げられる。
(Ca2aO)q (5)
(式中、qは50〜600、好ましくは50〜400、より好ましくは50〜200の整数である。)
【0027】
上記式(5)で示される繰り返し単位−Ca2aO−としては、例えば下記の単位等が挙げられる。なお、上記パーフルオロアルキルエーテル構造は、これらの繰り返し単位の1種単独で構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0028】
−CF2O−
−CF2CF2O−
−CF2CF2CF2O−
−CF(CF3)CF2O−
−CF2CF2CF2CF2O−
−CF2CF2CF2CF2CF2CF2O−
−C(CF32O−
これらの中では、特に下記単位が好適である。
−CF2O−
−CF2CF2O−
−CF2CF2CF2O−
−CF(CF3)CF2O−
【0029】
この(A)成分の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物におけるアルケニル基としては、炭素数2〜8、特に炭素数2〜6で、かつ末端にCH2=CH−構造を有するものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の末端にCH2=CH−構造を有する基、特にビニル基、アリル基等が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物の主鎖の両端部に直接結合していてもよいし、二価の連結基、例えば、−CH2−、−CH2O−又は−Y−NR−CO−[但し、Yは−CH2−又は
【0030】
【化1】

(o,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基)
であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基である。]等を介して結合していてもよい。アルケニル基は1分子中に少なくとも2個有する。
【0031】
(A)成分としては、下記一般式(6)又は(7)で表されるポリフルオロジアルケニル化合物を挙げることができる。
CH2=CH−(X)p−Rf2−(X’)p−CH=CH2 (6)
CH2=CH−(X)p−Q−Rf2−Q−(X’)p−CH=CH2 (7)
[式中、Xは独立に−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−(但し、Yは−CH2−又は下記構造式(Z)で示される基であり、R1は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基である。)であり、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR2−Y’−(但し、Y’は−CH2−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、R2は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基である。)である。
【0032】
【化2】

(o,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基)
【0033】
【化3】

(o,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基)
Rf2は二価のパーフルオロポリエーテル構造であり、上記式(5)、即ち(Ca2aO)qで示されるものが好ましい。Qは炭素数1〜15の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を含んでいてもよく、具体的にはアルキレン基、エーテル結合を含んでいてもよいアルキレン基である。pは独立に0又は1である。]
【0034】
このような(A)成分の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物としては、特に下記一般式(1)で示されるものが好適である。
【0035】
【化4】

[式中、X、X’及びpは前記と同じであり、rは2〜6の整数、m、nはそれぞれ0〜600の整数であり、更にmとnの和が50〜600である。]
【0036】
上記式(1)の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレン換算重量平均分子量が10,000〜100,000、特に10,000〜50,000であることが望ましい。分子量が10,000未満の場合は、ガソリンや各種溶剤に対する膨潤が大きくなる。特に、ガソリンに対する膨潤が6%以上となり、耐ガソリン性が要求される部材としては特性を満足することができない。また、分子量が100,000を超える場合は、粘度が高く、作業性に劣るため実用性がない。
【0037】
一般式(1)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

(式中、m及びnはそれぞれ0〜600、好ましくは0〜200、m+n=50〜600、好ましくはm+n=50〜200を満足する整数を示す。)
【0041】
更に、本発明では、上記式(1)の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物を目的に応じた所望の重量平均分子量に調節するため、予め上記したような直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物を分子内にSiH基を2個含有する有機ケイ素化合物と通常の方法及び条件でヒドロシリル化反応させ、鎖長延長した生成物を(A)成分として使用することも可能である。
【0042】
[(B)成分]
(B)成分は、(A)成分の架橋剤、鎖長延長剤として作用するものである。この(B)成分は、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物である。但し、(A)成分又は後述する(E),(F)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性等の観点から、1分子中に1個以上の一価のパーフルオロアルキル基、一価のパーフルオロオキシアルキル基、二価のパーフルオロアルキレン基又は二価のパーフルオロオキシアルキレン基を有しているものを使用することができる。
【0043】
かかる(B)成分としては、特許第2990646号公報及び特開2000−248166号公報記載の公知の有機ケイ素化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0044】
このような有機ケイ素化合物としては、特に下記一般式(8)で示されるものが有用である。
【化8】

(式中、Rf3は一価のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基、R3は炭素数1〜20の一価炭化水素基、R4は炭素数2〜20の二価炭化水素基であり、エーテル結合、アミド結合、カルボニル結合、又はエステル結合を含んでもよい。kは2以上の整数、lは1〜6の整数、k+l=3〜10の整数である。)
【0045】
Rf3の一価のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基としては、下記一般式で示される基を例示することができる。
一価のパーフルオロアルキル基:
b2b+1
(但し、bは1〜20、好ましくは2〜10の整数である。)
【0046】
一価のパーフルオロオキシアルキル基:
【化9】

(式中、nは2〜200、好ましくは2〜100の整数である。)
【0047】
3は炭素数1〜20、特に炭素数1〜12の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられるが、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものが好ましい。
【0048】
また、R4は炭素数2〜20の二価炭化水素基であり、エーテル結合、アミド結合、カルボニル結合、又はエステル結合を含んでもよい二価の連結基である。かかる連結基としては、アルキレン基、アリーレン基やこれらの組み合わせでも、或いはこれらにエーテル結合酸素原子(−O−)、アミド結合(−NRCO−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)の1種又は2種以上を介在するものであってもよく、炭素数2〜12のものが好ましく、下記の基等が挙げられる。なお、−NRCO−基におけるRは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基である。
−CH2CH2
−CH2CH2CH2
−CH2CH2CH2OCH2
−CH2CH2CH2−NH−CO−
−CH2CH2CH2−N(Ph)−CO−
(但し、Phはフェニル基である。)
−CH2CH2CH2−N(CH3)−CO−
−CH2CH2CH2−O−CO−
【0049】
上記(B)成分の配合量は、(A)成分及び後述の(E)成分を硬化する有効量であり、特に本組成物中の上記(A)成分及び(E)成分が有するアルケニル基の合計の1モルに対し、(B)成分のヒドロシリル基(Si−H)が好ましくは0.2〜2モル、より好ましくは0.5〜1.5モルとなる量である。ヒドロシリル基(Si−H)が少なすぎると、架橋度合が不十分となる結果、硬化物が得られない場合があり、また、多すぎると硬化時に発泡してしまう場合がある。
【0050】
[(C)成分]
本発明の(C)成分である、酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを、化学的及び/又は物理的に吸着し得る無機粉体は、一般に金属粉、ハイドロタルサイト構造を有する粉体化合物等の酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを化学的に吸着しうるもの、又は細孔構造を有する粉体活性炭等の酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを物理的に吸着しうるものが挙げられる。
【0051】
ここで、酸性ガス、硫黄含有ガスとは、一般的に腐食性ガスとして知られているもので、具体的にはNOx、SOx、酢酸、蟻酸、硝酸、硫酸、硫黄、亜硫酸等のガスが挙げられる。
【0052】
(C)成分としての金属粉は、酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを化学的に酸化或いは硫化することにより、酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスの電気電子部品への到達を防止もしくは遅延することを可能とするものである。その効果があるものとして、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、錫、亜鉛などが例示される。この中でも金属粉の安定性、価格的な面から、銅粉が好ましい。
また、その形状・性質は、効果を得るためには制限はないが、組成物に与える不純物・流動性などの点から、アトマイズ粉が好ましい。
かかる金属粉としては、銅粉末(鱗片状)3L3(福田金属箔工業株式会社製商品名)、銅粉末(アトマイズ粉)FCC−SP−99(福田金属箔工業株式会社製商品名)、鉄粉末(アトマイズ粉)アトメル300M(株式会社神戸製鋼所製商品名)等が挙げられる。
【0053】
ハイドロタルサイト構造を有する粉体化合物は、マグネシウムとアルミニウムの化合物であり、酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスのアニオンとの交換性を有しており、酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスの電気電子部品への到達を防止もしくは遅延することを可能とするものである。
【0054】
ハイドロタルサイトは、従来公知のものを使用することができる。具体的には、特許第2501820号公報、特許第2519277号公報、特許第2712898号公報、特許第3167853号公報、特公平06−051826号公報、特開平09−118810号公報、特開平10−158360号公報、特開平11−240937号公報、特開平11−310766号公報、特開2000−159520号公報、特開2000−230110号公報、特開2002−080566号公報等で、半導体封止材料のイオントラップ材として耐湿信頼性、耐熱特性向上のために数多くの使用例が挙げられており、これらに記載されているものであればいずれでもよい。
【0055】
特に、下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
MgxAly(OH)2x+3y-2z(CO3z・αH2O (9)
(x,y,zはそれぞれ0<y/x≦1、0≦z/y<1.5なる関係を有し、αは整数を示す。)
【0056】
かかるハイドロタルサイト構造を有する粉体化合物としては、具体的には
1.25Mg(OH)2・Al(OH)3・zCO3・αH2
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2
Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2
等が例示される。
【0057】
ハイドロタルサイトはアニオン交換性を有しており、例えばHClガスに対しては下記反応式により示す化学吸着が行われる。
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O+2HCl
→ Mg6Al2(OH)13Cl2・nH2O+H2O+CO2
【0058】
かかるハイドロタルサイト構造を有する粉体化合物としては、キョーワード500、キョーワード1000、DHT−4A−2(いずれも協和化学工業株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0059】
また、本発明の(C)成分である、酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを物理的に吸着し得る無機粉体は、細孔構造を有する粉体活性炭であり、その細孔構造中に酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスに対し選択的吸着性を有しており、酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスの電気電子部品への到達を防止もしくは遅延することを可能とするものである。粉体活性炭としては、木質系原料をベースに賦活法により生産した水蒸気炭、薬品賦活法により精製した塩化亜鉛炭等が例示される。
【0060】
かかる細孔構造を有する粉体活性炭としては、活性炭白鷺A、白鷺C、白鷺M、白鷺P(いずれも日本エンバイロケミカルズ株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0061】
上記(C)成分の無機粉体の添加量は、酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスの電気電子部品への到達を防止もしくは遅延する効果が得られる量が必要であり、その目的を達成するために、(A)成分又は(A),(E)成分の合計100質量部に対し0.1〜50質量部が添加される。組成物の流動性や、硬化物の体積抵抗率を維持するため、好ましくは0.3〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部である。
【0062】
また、パーフルオロポリエーテル硬化物が導電性(体積抵抗率:1×109Ω・cm未満)となると、電気電子部品としては不満足となるため、体積抵抗率を維持できるようにする必要があり、粉体の種類及び配合量を、パーフルオロポリエーテル硬化物の体積抵抗率が1×109Ω・cm以上、特に1×1010Ω・cm以上となるように選定することが必要である。
【0063】
[(D)成分]
本発明の(D)成分のヒドロシリル化反応触媒は、(A)成分及び(E)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のヒドロシリル基との付加反応を促進する触媒である。このヒドロシリル化反応触媒は、一般に貴金属の化合物であり、高価格であることから、比較的入手しやすい白金又は白金化合物がよく用いられる。
【0064】
白金化合物としては、例えば塩化白金酸又は塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体、アルコールやビニルシロキサンとの錯体、シリカ、アルミナ、カーボン等を担持した金属白金等を挙げることができる。白金化合物以外の白金族金属触媒として、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム系化合物も知られており、例えばRhCl(PPh33、RhCl(CO)(PPh32、Ru3(CO)12、IrCl(CO)(PPh32、Pd(PPh34等を例示することができる。
【0065】
ヒドロシリル化反応触媒の配合量は、触媒量とすることができるが、通常(A)、(B)及び(E)成分の合計量100質量部に対して0.1〜100ppm(白金換算)の割合で配合することが好ましい。
【0066】
[(E)成分]
(E)成分は、1分子中に1個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する、ポリフルオロモノアルケニル化合物である。特に、下記式(2)のポリフルオロモノアルケニル化合物が好ましい。
Rf1−(X’)p−CH=CH2 (2)
[式中、X’及びpは上記と同じであり、Rf1は、下記一般式で示される。
F−[CF(CF3)CF2O]w−CF(CF3)−
(式中、wは1〜500、好ましくは2〜200の整数で表される。)]
【0067】
上記一般式(2)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0068】
【化10】

(上記式において、mは1〜200、特に2〜100の整数である。)
【0069】
上記式(2)のポリフルオロモノアルケニル化合物の配合量は、硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物において、本組成物中の上記(A)成分の直鎖状パーフルオロポリエーテルジアルケニル化合物とこの(E)成分とが、(A)成分25〜65質量部、(E)成分75〜35質量部の割合で、(A)成分と(E)成分の合計量が100質量部となるように選定される。
【0070】
[(F)成分]
本発明のパーフルオロポリエーテルゴム及びゲル組成物は、(F)成分として−Ca2aO−の繰り返し(aは上記したと同じ)単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する、アルケニル基を含有しない無官能フッ素ポリマーを更に含有することができる。この無官能フッ素ポリマーは、特に直鎖状のものが好ましい。
【0071】
(F)成分である直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物は、該成分を配合することにより、物性等を損なうことなく、耐薬品性、耐溶剤性、低温特性に優れた組成物を与える。特に、パーフルオロポリエーテルゴム組成物及びゲル組成物に配合した場合には、ガラス転移温度を下げるなど低温特性に優れた特性を付与することができる。
【0072】
(F)成分としては、下記一般式(3)、(4)で表される化合物からなる群から選ばれる直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物が好ましく用いられる。
A−O−(CF2CF2CF2O)d−A (3)
(式中、Aは式:Ce2e+1−(eは1〜3)で表される基であり、dは1〜500、好ましくは2〜200の整数。)
A−O−(CF2O)f(CF2CF2O)h−A (4)
(式中、Aは上記と同じであり、f及びhはそれぞれ1〜300、好ましくは1〜100の整数。)
【0073】
(F)成分の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。
CF3O−(CF2CF2CF2O)n′−CF2CF3
CF3−[(OCF2CF2n′(OCF2m′]−O−CF3
(m′+n′=1〜200、m′=1〜200、n′=1〜200)
【0074】
(F)成分の配合量は、パーフルオロポリエーテルゴム及びゲル組成物において異なるが、パーフルオロポリエーテルゲル組成物においては、前記(A)成分及び(E)成分(ポリフルオロジアルケニル化合物とポリフルオロモノアルケニル化合物の合計量)100質量部に対して20〜100質量部の割合であることが好ましい。また、パーフルオロポリエーテルゴム組成物においては、前記(A)成分100質量部に対して10〜50質量部の割合であることが好ましい。(F)成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0075】
[その他の成分]
本組成物においては、上記の(A)〜(F)成分以外にも、各種配合剤を添加することは任意である。ヒドロシリル化反応触媒の制御剤として、例えば1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノールなどのアセチレンアルコールや、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等、或いはポリメチルビニルシロキサン環式化合物、有機リン化合物等が挙げられ、その添加により硬化反応性と保存安定性を適度に保つことができる。
【0076】
無機質充填剤として、例えば煙霧質シリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、カーボンブラック等が挙げられ、その添加により本組成物から得られる硬化物の硬さ・機械的強度を調整することができる。中空無機質充填剤又はゴム質の球状充填剤も添加できる。
【0077】
また、接着性を付与するためにエポキシ基、アルコキシ基等を含有する、公知の接着性付与剤を添加することもできる。これらの配合成分の使用量は、得られる組成物の特性及び硬化物の物性を損なわない限りにおいて任意である。
【0078】
[組成物及び硬化物]
本発明の硬化性パーフルオロポリエーテルゴム組成物は、(A)成分100質量部に対して、(B)成分を(A)成分が有するアルケニル基の合計のモル数1に対して(B)成分のヒドロシリル基が0.2〜2.0モルとなる量、(C)成分が0.1〜50質量部、(D)成分が(A)、(B)成分の合計質量に対して白金換算で0.1〜100ppmの割合で混合することにより得ることができる。更には、ガラス転移温度低下の目的で(F)成分を10〜50質量部添加することは任意である。
【0079】
硬化性パーフルオロポリエーテルゴム組成物の硬化は、通常60〜150℃の温度で30〜180分程度の加熱処理によって容易に行うことができる。このようにして得られたゴム硬化物は、JIS K6249による硬さ(デュロメータA型による硬度)が10〜80であり、ガラス転移温度が−50℃以下のゴム材料となり得る。
【0080】
このようにして得られた硬化性パーフルオロポリエーテルゴム組成物は、上述した車載用電気電子部品の接着剤として用いるものであり、接着剤としての使用方法は、組成物を基板上にコーティングしたり塗布した後に硬化を行う。また、接着剤の硬化は、通常60〜150℃の温度で30〜180分程度の加熱処理によって容易に行うことができる。
【0081】
また、本発明の硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物は、(A)成分25〜65質量部に対して、(E)成分が75〜35質量部で、(A),(E)成分の合計が100質量部であり、(B)成分が(A)成分及び(E)成分が有するアルケニル基の合計のモル数1に対して(B)成分のヒドロシリル基が0.2〜2.0モルとなる量、(C)成分が0.1〜50質量部、(D)成分が(A),(B),(E)成分の合計質量に対して白金換算で0.1〜100ppmの割合で混合することにより得ることができる。更には、ガラス転移温度低下の目的で(F)成分を20〜100質量部添加することは任意である。
【0082】
硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物の硬化は、通常60〜150℃の温度で30〜180分程度の加熱処理によって容易に行うことができる。このようにして得られたゲル硬化物は、JIS K2220(又はASTM D−1403)稠度試験法(1/4コーン使用)で規定される針入度が10〜150であり、ガラス転移温度が−50℃以下のゲル材料となり得る。
【0083】
このようにして得られた硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物は、上述した車載用電気電子部品の封止剤として用いるものである。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0085】
[調製例1,2]
下記原料を使用し、表1に示すパーフルオロポリエーテルゴム組成物及びパーフルオロポリエーテルゲル組成物を調製した。
このゴム組成物及びゲル組成物を150℃、1時間の硬化条件にて硬化し、その硬さを測定した。結果を表1に併記する。
【0086】
原料
(a)無機粉末
(a−1)銅粉末(鱗片状)(3L3:福田金属箔工業株式会社製商品名)
(a−2)合成ハイドロタルサイト(キョーワード500:協和化学工業株式会社製商品名)
【0087】
(b)パーフルオロポリエーテルオイル
(b−1)
【化11】

【0088】
(b−2)
【化12】

【0089】
(b−3)
【化13】

【0090】
(c)ハイドロシロキサン
(c−1)
【化14】

【0091】
(c−2)
【化15】

【0092】
(d)白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体/トルエン溶液(白金含有量0.5%)
(e)硬化制御剤 エチニルシクロヘキサノール/50%トルエン溶液
【0093】
【表1】

【0094】
[実施例1]
上記パーフルオロポリエーテルゴム組成物(組成物1)を接着剤として用いて、図1に示すベース2とケース3との間、ケース3とカバー5との間及びベース2と基板6との間を接着4して、図1の車載用電気電子部品を製造した。なお、ケース3内に収容され、ベース2と接着された基板6上に形成された回路1は銀により形成されたものである。
この部品を5%の硫化水素(H2S)雰囲気下に1ヶ月間放置した後、カバー5を外して回路1の状態を確認したが、回路1に腐食は生じていないものであった。
【0095】
[実施例2]
上記パーフルオロポリエーテルゴム組成物(組成物1)を接着剤として用いて、図2に示すベース2とケース3との間及びベース2と基板6との間を接着4すると共に、上記パーフルオロポリエーテルゲル組成物(組成物2)を封止材として用いて、基板6上に形成された銀製回路1を封止8して、図2の車載用電気電子部品を製造した。
この部品を10%のNOx(NO,NO2,N2Oの混合物)雰囲気下に1ヶ月間放置した後、上記封止材を除去して回路1の状態を確認したが、回路1に腐食は生じていないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の車載用電気電子部品の構造の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の車載用電気電子部品の構造の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の車載用電気電子部品の構造の更に他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 回路
2 ベース
3 ケース
4 接着剤
5 カバー
6 平面基板
7 ターミナル
8 封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載された回路基板等の電気が印加されて機能する電子部品と、前記電子部品を内蔵するケースと、前記電子部品が配置された前記ケースの開放面を覆うカバーとを有する車載用電気電子部品において、
前記ケースと前記カバーとが腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤により接合されてなることを特徴とする車載用電気電子部品。
【請求項2】
電子部品が搭載された回路基板等の電気が印加されて機能する電子部品と、前記電子部品が固定されるベースと、前記電子部品の周囲を囲うケースと、前記ケースの開放面を覆うカバーとを有する車載用電気電子部品において、
前記ケースと前記ベース、及び/又は、前記ケースと前記カバーが腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤により接合されてなることを特徴とする車載用電気電子部品。
【請求項3】
電子部品が搭載された回路基板等の電気が印加されて機能する電子部品と、前記電子部品が固定されるベースと、前記電子部品の周囲を囲うケースと、必要により前記ケースの開放面を覆うカバーとを有する車載用電気電子部品において、
電子部品が腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系封止剤により封止されてなり、必要により前記ケースと前記ベース、及び/又は、前記ケースと前記カバーが腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系接着剤により接合されてなることを特徴とする車載用電気電子部品。
【請求項4】
前記電子部品を格納する前記ケース又は前記ベースに、これに埋設された前記電子部品と外部との電気的接続を得るためのターミナルが固定され、必要により前記ターミナルと前記ケース、前記カバー、前記ベースの何れかの隙間を埋めるための封止剤として、腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するフッ素系封止剤を用いて封止した構造であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の車載用電気電子部品。
【請求項5】
フッ素系接着剤及びフッ素系封止剤が、それぞれ硫黄ガス、硫黄系の化合物ガス、窒素酸化物ガス、COxガス及び塩素系の化合物ガスから選ばれる腐食性ガスを化学的及び/又は物理的に吸着する機能を有するものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車載用電気電子部品。
【請求項6】
フッ素系接着剤が、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に−Ca2aO−の繰り返し単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する、直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(aは1〜6の整数): 100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物: 硬化有効量、
(C)酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを、化学的及び/又は物理的に吸着し得る無機粉体: 0.1〜50質量部、
(D)ヒドロシリル化反応触媒: 触媒量
を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゴム組成物であることを特徴とする請求項5記載の車載用電気電子部品。
【請求項7】
フッ素系封止剤が、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に−Ca2aO−の繰り返し単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する、直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(aは1〜6の整数): 25〜65質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物: 硬化有効量、
(C)酸性ガス及び/又は硫黄含有ガスを、化学的及び/又は物理的に吸着し得る無機粉体: 0.1〜50質量部、
(D)ヒドロシリル化反応触媒: 触媒量、
(E)1分子中に1個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する、ポリフルオロモノアルケニル化合物: 75〜35質量部
(但し、(A),(E)成分の合計が100質量部である。)
を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物であることを特徴とする請求項5記載の車載用電気電子部品。
【請求項8】
パーフルオロポリエーテル組成物の(C)成分が、金属粉である請求項6又は7記載の車載用電気電子部品。
【請求項9】
パーフルオロポリエーテル組成物の(C)成分が、銅である請求項8記載の車載用電気電子部品。
【請求項10】
パーフルオロポリエーテル組成物の(C)成分が、細孔構造を有する粉体活性炭である請求項6又は7記載の車載用電気電子部品。
【請求項11】
パーフルオロポリエーテル組成物の(C)成分が、ハイドロタルサイト構造を有する粉体化合物である請求項6又は7記載の車載用電気電子部品。
【請求項12】
パーフルオロポリエーテル組成物の(A)成分が、下記一般式(1)
【化1】

[式中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−(但し、Yは−CH2−又は下記構造式(Z)で示される基であり、R1は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基である。)である。X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR2−Y−(但し、Yは−CH2−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、R2は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基である。)である。pは独立に0又は1、rは2〜6の整数、m、nはそれぞれ0〜600の整数であり、更にmとnの和が50〜600である。
【化2】

(o,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基)
【化3】

(o,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基)]
で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物である請求項6乃至11のいずれか1項に記載の車載用電気電子部品。
【請求項13】
パーフルオロポリエーテル組成物の(E)成分が、下記一般式(2)
Rf1−(X’)p−CH=CH2 (2)
[式中、X’及びpは上記と同じであり、Rf1は、下記一般式
F−[CF(CF3)CF2O]w−CF(CF3)−
(式中、wは1〜500の整数で表される。)]
で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物である請求項7乃至12のいずれか1項に記載の車載用電気電子部品。
【請求項14】
前記パーフルオロポリエーテル組成物が、更に(F)成分として、下記一般式(3)
A−O−(CF2CF2CF2O)d−A (3)
[式中、Aは式:Ce2e+1−(eは1〜3)で表される基であり、dは1〜500の整数。]、及び、下記一般式(4)
A−O−(CF2O)f(CF2CF2O)h−A (4)
(式中、Aは上記と同じであり、f及びhはそれぞれ1〜300の整数。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の直鎖状ポリフルオロ化合物を含有することを特徴とする請求項7乃至13のいずれか1項に記載の車載用電気電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−88115(P2009−88115A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253828(P2007−253828)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】