説明

車速制御装置

【課題】車両が停止した後のパーキングブレーキを確実に動作させて車両の誤走行を防止する。
【解決手段】車両の速度を検出する車速センサ4,5と、ブレーキを動作させるブレーキペダル2と、車両駆動源の出力を調整するアクセルペダル1と、ブレーキモータ20と、パーキングブレーキ10とを有する。アクセルペダル1とブレーキペダル2がオフであり、かつ車両速度が所定速度より遅い場合に前記ブレーキモータ20を駆動して車両を停止させた後、前記パーキングブレーキ10を自動で動作させる制御回路(CPU3)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフカート等の車両の速度を制限する車速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車速制御は運転者がアクセルとブレーキを操作することによって行われているが、ゴルフカート等の車両では自動走行を可能とするためにブレーキペダルと別にブレーキを自動にかけるブレーキモータが備わる。車両には車両駆動源(例えばエンジン)を駆動制御する制御回路(CPU)が備わる。CPUは通常の走行時に最大速度を制限した指示車速に基づいてブレーキモータを駆動する。これにより車速を制限して最高速度をある一定速度(指示車速)にして安全性を確保している。
【0003】
一方、車両にはこのような車速制御のためのブレーキとは別に電磁ブレーキ(パーキングブレーキ)が備わり、車両が停止して運転者が降車した後の車両の誤走行を防止している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の誤走行を防ぐパーキングブレーキは、例えばゴルフカートの場合、プレーを急ぐあまりに確実にパーキングブレーキをかけなかったりすることがあり、車両を止めた場所が坂道だった場合はそのまま車両が走行するおそれがあった。このようなパーキングブレーキのかけ忘れ等を防止するために自動パーキングブレーキが従来用いられていた。しかしながら、従来の自動パーキングブレーキは、車両が停止したこと(車速ゼロ)を検知して作動するため、車両が極低速状態の時に運転者が車両の停止前に降車した場合、運転者の停止意思にかかわらず自動パーキングブレーキは作動せず、車両を止めた場所が坂道だった場合はそのまま車両が走行するおそれがあった。
【0005】
本発明は上記従来技術を考慮したものであって、車両が停止した後のパーキングブレーキを確実に動作させて車両の誤走行を防止する車速制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、車両の速度を検出する車速センサと、ブレーキを動作させるブレーキ操作手段と、車両駆動源の出力を調整するアクセルと、前記ブレーキ操作手段とは別にブレーキを動作させるブレーキモータと、停止した車両の誤走行を防止するパーキングブレーキとを有する車速制御装置において、前記アクセルとブレーキ操作手段がオフであり、かつ車両速度が所定速度より遅い場合に前記ブレーキモータを駆動して車両を停止させた後、前記パーキングブレーキを自動で動作させる制御回路を有することを特徴とする車速制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所定の低速以下でしかもアクセル及びブレーキペダルがオフであれば搭乗者が既に降車した状態と判別し、ブレーキモータを作動させて車両を停止させ、その後、自動でパーキングブレーキを動作させることができ、パーキングブレーキのかけ忘れや不十分なパーキングブレーキ操作を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明に係る車速制御装置の概略ブロック図である。
ゴルフカート等の車両にはアクセルペダル1及びブレーキペダル2が備わり、運転者によるこれらの操作量が車両に搭載されたCPU(制御回路)3に入力される。エンジン9に気化器11が備わり、そのスロットル弁(不図示)の開度を検出するスロットル開度センサ8が備わる。エンジン9にはエンジン回転数センサ12が備わる。スロットル開度センサ8及びエンジン回転数センサ12の検出出力はCPU3に入力される。エンジン9の出力はベルト式の自動変速機13を介してトランスミッション6に伝達され、後輪14を駆動する。トランスミッション6には車速センサ4,5が設けられ車速検出データがCPUに入力される。トランスミッション6には電磁ブレーキからなるパーキングブレーキ10が設けられる。
【0009】
ブレーキペダル2はブレーキ駆動機構15に連結され、ワイヤ16を介して前輪17のドラムブレーキ18及び後輪14のドラムブレーキ19をそれぞれ動作させる。ブレーキ駆動機構15にはさらにブレーキモータ20が連結される。ブレーキモータ20はブレーキモータドライバ21により駆動される。ブレーキモータドライバ21はCPU3により駆動される。CPU3はエンジン回転数センサ12、スロットル開度センサ8、車速センサ4,5及びアクセルペダル1の踏込み量を検出するアクセル開度センサ21やブレーキペダル2の踏込み量検出センサ(不図示)に連結され、これらの検出信号に基づいて、気化器11のスロットル弁やブレーキモータ20を駆動制御し、車速を制御する。
【0010】
図2は車速制御を示すフローチャートである。
車両は所定の速度(第1指示車速)に最高速度が制限されて走行する(ステップS1)。この第1指示車速は平坦な道を安全に走行できる速度に設定する。走行中、CPU3(図1)は平均制動力が設定値A以上であるか、スロットル開度が設定値B未満であるか、または必要に応じて平均エンジン回転数が設定値C未満であるかの降坂自動減速判定をする(ステップS2)。このエンジン回転数の判定は、上述した平均制動力とスロットル開度の判定のみでは車両が発進加速後に第1指示車速を超えた場合も誤認識してしまうために設けた条件式である。エンジン回転数の条件に代えて、例えば発進後の時間をタイマーで測定する等の別手段を用いて判定することも可能である。平均制動力とは、実際の車速を車速センサ4,5(図1)で検出してこの実際の車速と指示車速の差に対応する力の値である。スロットル開度はスロットル開度センサ8(図1)で検出する。平均エンジン回転数は回転数センサ12(図1)が計測する。設定値A,B,Cは車両が坂道を下る時の斜度に応じた値を予め測定して入力しておく。
【0011】
以上の条件を全て満たす場合、車両が坂道を下っていると判断して最高速度を第1指示車速より遅い速度の第2指示車速に設定する(ステップS3)。これによりブレーキモータドライバ7(図1)がブレーキモータ20(図1)を駆動させてさらに車両に制動力をかけるのでエンジンブレーキがかかりにくいベルト式無段変速機を有するゴルフカート等も坂道を適切なゆっくりとした速度で安全に走行することができる。もし、降坂自動減速判定のパラメータのうち一つでも当てはまらない場合は第1指示車速のままである(ステップS4)。
【0012】
第2指示車速のとき、CPU3(図1)は平均制動力が設定値D未満でありかつ平均エンジン回転数が設定値E以上であるかの降坂自動減速解除判定をする(ステップS5)。この条件に当てはまらない場合、CPUはさらにスロットル開度が設定値Fより上であり、そのスロットル開度以上のまま所定時間を経過しているかを判定する(ステップS6)。これに当てはまらない場合、車両はまだ坂道を下っていると判断して第2指示車速を維持する(ステップS7)。ステップS5及びS6の条件に一つでも当てはまる場合、車両は坂道を下り降りたと判断して第1指示車速に戻す(ステップS8)。設定値D,E,Fは車両が斜度の小さい坂を下るときの斜度に応じた値を予め計測して入力しておく。
【0013】
このように、急な坂道と緩い坂道又は下り終えた時の指示車速を変えることにより、車両の走行状態に応じた適切な指示車速を与え、適切なゆっくりとした速度で安全に走行することができ、斜度の判別に際して傾斜センサ等を用いることなく、従来より車両に備わるCPUを使用して斜度を検出して車速制御することができる。なお、このフローチャートはエンジンを駆動源とする車両の例であるが、電動モータを駆動源とする電気自動車にも適用可能であり、その際は、図中におけるE/G回転数はモータ回転数に代えて判断し、駆動源の出力を制御するスロットル開度はモータ電流に置き換えて判断する。
【0014】
図3は別の車速制御を示すフローチャートである。
車両は第1指示車速で走行する(ステップT1)。走行中、CPU3(図1)は平均制動力が設定値A以上であるか、スロットル開度が設定値B未満であるか、平均エンジン回転数が設定値C未満であるかの降坂自動減速判定をして(ステップT2)、全ての条件を満たした場合に第2指示車速にする(ステップT3)。この条件を1つでも満たさなかった場合、CPUはアクセルワーク(アクセルペダルの踏込み量)を判別する(ステップT4)。運転者がアクセルを踏んでない、すなわちアクセルオフの場合、例えステップT2において降坂運転中でないと判断しても運転者がスピードを出したくない意思があると判断して第2指示車速とし、ブレーキモータドライバ7(図1)が作動して車両の走行を制動する(ステップT5)。これにより、アクセルオフの場合は常に第2指示車速となって最高速度が制限されるため、実質上エンジンブレーキの作用が得られ、運転者の意思に適切に対応した車速制御ができる。
【0015】
運転者が微妙にアクセルを踏み込んでいる時、すなわちアクセルパーシャルの場合、指示車速は変更せず第1指示車速の範囲内でアクセル操作量に応じた速度で車両を走行させる(ステップT6)。運転者がアクセルを全開に踏んでいる場合は第1指示車速を維持する(ステップT7)。これにより、車両が降坂走行中であるなしにかかわらず、運転者の意思も考慮して車両を制動することができるので、より安全に車速を制御することができる。
【0016】
図4は本発明に係るパーキングブレーキの自動動作制御のフローチャートである。
車両が走行中(ステップU1)、CPU3(図1)は車両の現車速(実際の車速)が所定速度G未満であり、アクセルがオフであり、ブレーキペダルの操作がオフであるかを判断する。この条件を1つでも満たさない場合は走行は続行される(ステップU3)。この条件を全て満たすとき、運転者は止まる意思があるか、若しくは確実に車両が停止しないまま降車した状態と判断してブレーキモータ20(図1)を作動させて車両の制動し(ステップU4)、停止させる(ステップU5)。所定速度Gとしては車両が止まりかけ程度の低速の値を設定しておく。この後、CPUは電磁ブレーキ(パーキングブレーキ)を自動的にONにして、確実に車両を停止させる。これにより、確実に車両を停止することができるので、坂道等で車両が誤走行することはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車速制御装置の概略ブロック図。
【図2】車速制御を示すフローチャート。
【図3】別の車速制御を示すフローチャート。
【図4】本発明に係るパーキングブレーキの自動動作制御のフローチャート。
【符号の説明】
【0018】
1:アクセルペダル、2:ブレーキペダル、3:CPU、4:車速センサ、
5:車速センサ、6:トランスミッション、7:ブレーキモータドライバ、
8:スロットル開度検出器、9:エンジン、10:電磁ブレーキ、
11:気化器、12:回転数センサ、13:自動変速機、14:後輪、
15:ブレーキ駆動機構、16:ワイヤ、17:前輪、
18:ドラムブレーキ、19:ドラムブレーキ、20:ブレーキモータ、
21:アクセル開度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度を検出する車速センサと、
ブレーキを動作させるブレーキ操作手段と、
車両駆動源の出力を調整するアクセルと、
前記ブレーキ操作手段とは別にブレーキを動作させるブレーキモータと、
停止した車両の誤走行を防止するパーキングブレーキとを有する車速制御装置において、
前記アクセルとブレーキ操作手段がオフであり、かつ車両速度が所定速度より遅い場合に前記ブレーキモータを駆動して車両を停止させた後、前記パーキングブレーキを自動で動作させる制御回路を有することを特徴とする車速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−114849(P2008−114849A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316829(P2007−316829)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【分割の表示】特願2002−161517(P2002−161517)の分割
【原出願日】平成14年6月3日(2002.6.3)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】