説明

車間距離制御システムおよび車両

【課題】この発明は、車間距離制御システムおよび車両に関し、車間距離の変動を有効に抑制し、小さな車間距離を保って安全に走行することを目的とする。
【解決手段】先頭車両10のアクセルペダル開度信号を後続車両(第1後続車両12、第2後続車両14)へ送信し、後続車両においてその情報を受信する。後続車両においては、受信した情報に基づいて自車両の出力を制御する。これにより、先頭車両10の出力が変化して車速が変化し始めるタイミングと、後続車両の出力が変化して車速が変化し始めるタイミングとを同期させることができる。よって、それらの車間距離を可及的に一定に保つことができ、極めて小さい車間距離であっても、各車両を安全に走行させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車間距離制御システムおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車間距離を制御するシステムが提案されている。例えば特開2004−69693号公報には、自車両と前走車両との車間距離をレーダにより検出し、車間距離が所定値より小さい場合にはブレーキを作動させて自車両を減速し、車間距離が所定値より大きい場合にはエンジンのスロットル開度を大きくして自車両を加速することにより、自車両を前走車両に追従走行させるようにした車間距離制御装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−36700号公報
【特許文献2】特開2004−69693号公報
【特許文献3】特開2003−231422号公報
【特許文献4】特開平11−36930号公報
【特許文献5】特開平11−6448号公報
【特許文献6】特開2005−76769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前走車両に追従して走行する場合、車間距離を小さくするほど、自車両の空気抵抗は小さくなり、よって、必要なエンジン出力は小さくなる。このため、燃費を向上する観点からは、車間距離は小さいほど好ましい。
【0005】
上記従来の車間距離制御装置は、換言すれば、車間距離が目標値に一致するように、車間距離をフィードバック制御するものである。このようなフィードバック制御では、車間距離が変化することを未然に防ぐことはできず、車間距離が変化した場合に、それを修正することができるだけである。つまり、制御に遅れが生じ、車間距離が変動することが避けられない。このため、追突を確実に防止することを考慮すると、車間距離を小さくすることには限界がある。その結果、燃費を十分に改善することができないという問題がある。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、車間距離の変動を有効に抑制し、小さな車間距離を保って安全に走行することのできる車間距離制御システムおよび車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、先頭車両と後続車両との車間距離を一定に保つように制御する車間距離制御システムであって、
前記先頭車両は、自車両のアクセル開度情報または要求加速度情報を前記後続車両へ送信する送信手段を備え、
前記後続車両は、
前記情報を受信する受信手段と、
前記受信された情報に基づいて、自車両の出力を制御する出力制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記先頭車両は、自車両のアクセル開度が変化した場合に、自車両の出力を制御するための操作量を遅れて変化させる出力変化遅延手段を更に備えることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記先頭車両は、
アクセル開度に基づいて要求加速度を算出する要求加速度算出手段と、
前記要求加速度と、自車両の車両モデルとに基づいて、当該要求加速度を自車両に実現するために必要な出力を算出する手段と、
を備え、
前記後続車両は、前記受信手段により受信された要求加速度情報と、自車両の車両モデルとに基づいて、当該要求加速度を自車両に実現するために必要な出力を算出する手段を備え、
前記後続車両の車両モデルは、空気抵抗が単独走行時より小さいことが反映されているものであることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、車両であって、
自車両が先頭車両である場合に、自車両のアクセル開度情報または要求加速度情報を後続車両へ送信する送信手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、車両であって、
自車両が後続車両である場合に、先頭車両から送信された当該先頭車両のアクセル開度情報または要求加速度情報を受信する受信手段と、
前記受信された情報に基づいて、自車両の出力を制御する出力制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、先頭車両のアクセル開度情報または要求加速度情報を後続車両へ送信し、後続車両においてその情報を受信することができる。そして、後続車両において、受信した情報に基づいて自車両の出力を制御することができる。これにより、先頭車両の出力が変化して車速が変化し始めるタイミングと、後続車両の出力が変化して車速が変化し始めるタイミングとを同期させることができる。よって、先頭車両が加速あるいは減速した場合であっても、先頭車両と後続車両との車間距離や、後続車両同士の車間距離が拡がったり狭まったりすることを可能な限り抑えることができ、それらの車間距離を可及的に一定に保つことができる。その結果、極めて小さい車間距離であっても、各車両を安全に走行させることができる。このため、後続車両の空気抵抗を極めて小さくすることができ、後続車両の燃費を大幅に改善することができる。
【0013】
第2の発明によれば、先頭車両のアクセル開度が変化した場合に、当該先頭車両の出力を制御するための操作量を遅れて変化させることができる。これにより、先頭車両の出力変化タイミングと、後続車両の出力変化タイミングとを同期させる上で、車両間通信に要する時間や、原動機の作動遅れなどの影響を吸収することができる。よって、先頭車両の車速変化タイミングと、後続車両の車速変化タイミングとをより正確かつ確実に一致させることができる。
【0014】
第3の発明によれば、先頭車両において、アクセル開度に基づいて要求加速度を算出し、その要求加速度と自車両の車両モデルとに基づいて、その要求加速度を自車両に実現するために必要な出力を算出することができる。更に、後続車両においては、先頭車両から送信された要求加速度情報と、自車両の車両モデルとに基づいて、当該要求加速度を自車両に実現するために必要な出力を算出することができる。そして、第3の発明によれば、その場合に、後続車両の車両モデルは、空気抵抗が単独走行時より小さいことが反映されているものとすることができる。これにより、先頭車両と後続車両との各々において、要求加速度を自車両に実現するために必要な出力を適切に算出することができる。その結果、先頭車両に実際に生ずる加速度と、後続車両に実際に生ずる加速度とを精度良く一致させることができる。このため、車間距離の変動をより確実に防止することができ、車間距離を更に高い精度で一定に保つことができる。
【0015】
第4の発明によれば、自車両が先頭車両である場合に、自車両のアクセル開度情報または要求加速度情報を後続車両へ送信することができる。このため、後続車両においては、受信した情報に基づいて自車両の出力を制御することができる。これにより、先頭車両の出力が変化して車速が変化し始めるタイミングと、後続車両の出力が変化して車速が変化し始めるタイミングとを同期させることができる。よって、先頭車両が加速あるいは減速した場合であっても、先頭車両と後続車両との車間距離や、後続車両同士の車間距離が拡がったり狭まったりすることを可能な限り抑えることができ、それらの車間距離を可及的に一定に保つことができる。
【0016】
第5の発明によれば、自車両が後続車両である場合に、先頭車両から送信された当該先頭車両のアクセル開度情報または要求加速度情報を受信し、その受信した情報に基づいて、自車両の出力を制御することができる。これにより、先頭車両の出力が変化して車速が変化し始めるタイミングと、後続車両の出力が変化して車速が変化し始めるタイミングとを同期させることができる。よって、先頭車両が加速あるいは減速した場合であっても、先頭車両と後続車両との車間距離や、後続車両同士の車間距離が拡がったり狭まったりすることを可能な限り抑えることができ、それらの車間距離を可及的に一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の車間距離制御システムの概要を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態では、先頭車両10に、第1後続車両12および第2後続車両14が追従して走行している場合を例に説明する。これらの各車両(自動車)には、原動機として内燃機関(図示せず)が搭載されているものとする。そして、その内燃機関の出力は、吸気通路に設けられたスロットル弁16によって制御されるものとする。
【0018】
図1に示すように、先頭車両10では、運転者によって操作されるアクセルペダルの開度に応じて、スロットル弁16の開度(以下「スロットル開度」という)が制御される。ただし、その際、アクセルペダル開度の変化に対し、所定のディレイ時間だけ遅れて、スロットル開度が変化するように、スロットル弁16が制御される。また、先頭車両10は、自車両のアクセルペダル開度信号を後続車両へ送信する。
【0019】
なお、上記ディレイ時間の長さは、特に限定されないが、例えば30ミリ秒程度とすることができる。この程度のディレイ時間であれば、運転者が違和感を抱くことを確実に防止することができる。
【0020】
第1後続車両12および第2後続車両14では、何れも同じ制御が行われる。これらの後続車両では、先頭車両10から送信されたアクセルペダル開度信号を受信する。そして、その受信した先頭車両10のアクセルペダル開度信号に基づいて、自車両のスロットル開度が先頭車両10のスロットル開度と同期して変化するように、自車両のスロットル弁16を制御する。
【0021】
上記のような制御によれば、図1に示すように、第1後続車両12および第2後続車両14のスロットル開度を、先頭車両10のスロットル開度と同時に変化させることができる。よって、先頭車両10の運転者が車速を上げようとしてアクセルペダルを踏み込んだ場合、先頭車両10が加速し始めるのに伴って、第1後続車両12や第2後続車両14を遅れなく同時に加速開始させることができる。逆に、先頭車両10の運転者がアクセルペダルを緩めた場合には、先頭車両10が減速し始めるのに伴って、第1後続車両12や第2後続車両14を遅れなく同時に減速開始させることができる。
【0022】
従って、先頭車両10が加速あるいは減速した場合であっても、先頭車両10と第1後続車両12との車間距離や、第1後続車両12と第2後続車両14との車間距離が拡がったり狭まったりすることを可能な限り抑制することができ、車間距離を可及的に一定に維持することができる。よって、小さい車間距離を保って、各車両を安全に走行させることができる。
【0023】
図2は、本実施形態の車両のシステム構成を示す図である。本実施形態では、各車両は、何れも同じシステム構成となっている。つまり、各車両は、それぞれ、図2に示すシステム構成を備えている。具体的には、各車両は、内燃機関の吸入空気量を制御するスロットル弁16と、アクセルペダルの開度を検出するアクセルポジションセンサ18と、スロットル開度を検出するスロットルポジションセンサ20と、他車両との情報通信を行う送受信装置22と、レーダ装置24と、それらが電気的に接続されたECU(Electronic Control Unit)50とを有している。レーダ装置24は、自車両の前方および後方へ電波を発射し、その反射を利用して、前走車両の有無、前走車両との車間距離、後続車両の有無、後続車両との車間距離などを検出することができる。
【0024】
ECU50には、更に、内燃機関を制御するための各種のアクチュエータおよびセンサなどが電気的に接続されているが、それらは公知であり、本発明の主要部ではないため、その説明は省略する。
【0025】
[先頭車両における具体的処理]
図3は、本実施形態において、先頭車両10のECU50が実行するルーチンのフローチャートである。ECU50は、レーダ装置24により、前走車両が存在せず、かつ、後続車両が存在することが検出された場合には、自車両が先頭車両10であると判定する。そして、ECU50は、自車両が先頭車両10であると判定した場合、図3のルーチンを実行する。この場合、本ルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行されるものとする。
【0026】
図3に示すルーチンによれば、まず、アクセルポジションセンサ18によって検出されるアクセルペダル開度が取得される(ステップ100)。次いで、そのアクセルペダル開度信号が、送受信装置22により、後続車両へ送信される(ステップ102)。更に、上記ステップ100で取得されたアクセルペダル開度に基づいて、そのアクセルペダル開度に見合うエンジン出力を発揮させるための要求スロットル開度が、所定の規則(通常運転時の規則)に従って算出される(ステップ104)。
【0027】
続いて、実際のスロットル開度が、所定のディレイ時間分だけ過去の要求スロットル開度(ディレイ時間だけ過去の時点で上記ステップ106において算出された要求スロットル開度)に一致するように、スロットル弁16が制御される(ステップ106)。
【0028】
以上説明した図3のルーチンの処理によれば、先頭車両10のスロットル開度は、アクセルペダル開度の変化に対し、上記ディレイ時間の分だけ遅れて変化する。つまり、先頭車両10の車速は、アクセルペダル開度の変化に対し、やや遅れて変化する。
【0029】
[後続車両における具体的処理]
図4は、本実施形態において、後続車両のECU50が実行するルーチンのフローチャートである。ECU50は、レーダ装置24により、前走車両が存在することが検出された場合には、自車両が後続車両であると判定する。そして、ECU50は、自車両が後続車両であると判定した場合、図4のルーチンを実行する。なお、本実施形態では、後続車両が複数台ある場合には、それらの後続車両に共通して、図4に示すルーチンが実行されるものとする。また、この場合、本ルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行されるものとする。
【0030】
図4に示すルーチンによれば、まず、先頭車両10から送信されたアクセルペダル開度信号が送受信装置22により受信される(ステップ110)。次いで、その受信された先頭車両10のアクセルペダル開度信号に応じて、自車両の要求スロットル開度が算出される(ステップ112)。このステップ112では、自車両(後続車両)の空気抵抗が単独走行時の空気抵抗と比べて大幅に小さいことを前提とした上で、要求スロットル開度が算出される。すなわち、後続車両は、前走車両のスリップストリームの影響により、単独走行時に比べて、大幅に低いエンジン出力で同じ車速を出すことができる。このため、後続車両で必要となるスロットル開度の大きさは、単独走行時に比べて、全般的に小さな開度となる。上記ステップ112では、このことを考慮した上で、自車両の車速が先頭車両10と同じになるような要求スロットル開度が算出される。
【0031】
続いて、自車両のスロットル開度の変化が、先頭車両10のスロットル開度の変化と同期するように、スロットル弁16が制御される(ステップ114)。具体的には、実際のスロットル開度が、所定時間だけ過去の要求スロットル開度に一致するように、スロットル弁16が制御される。なお、上記所定時間は、先頭車両10との通信に要する時間や、スロットル弁16の作動遅れなどを考慮して、予め設定される。
【0032】
以上説明した図3および図4のルーチンの処理によれば、先頭車両10においてアクセルペダル開度が変化した場合に、先頭車両10のスロットル開度が変化し始めるタイミングと、後続車両(第1後続車両12および第2後続車両14)のスロットル開度が変化し始めるタイミングとを同期させることができる。よって、先頭車両10のエンジン出力が変化して車速が変化し始めるタイミングと、後続車両のエンジン出力が変化して車速が変化し始めるタイミングとを同期させることができる。このため、先頭車両10が加速あるいは減速した場合であっても、先頭車両10と第1後続車両12との車間距離や、第1後続車両12と第2後続車両14との車間距離が拡がったり狭まったりすることを可能な限り抑えることができ、それらの車間距離を可及的に一定に保つことができる。その結果、極めて小さい車間距離であっても、各車両を安全に走行させることができる。よって、後続車両の空気抵抗を極めて小さくすることができ、後続車両の燃費を大幅に改善することができる。
【0033】
また、本実施の形態1では、上述したように、先頭車両10のスロットル開度を、アクセルペダル開度の変化に対して、所定のディレイ時間分だけ遅れて変化させることとしている。これにより、先頭車両10のスロットル弁16の動作タイミングと、後続車両のスロットル弁16の動作タイミングとを同期させる上で、車両間通信に要する時間や、スロットル弁16の作動遅れなどの影響を吸収することができる。よって、先頭車両10のスロットル弁16の動作タイミングと、後続車両のスロットル弁16の動作タイミングとをより正確かつ確実に一致させることができる。
【0034】
なお、本実施の形態1においては、スロットル開度が前記第2の発明における「操作量」に相当している。また、ECU50が、上記ステップ100および102の処理を実行することにより前記第1および第4の発明における「送信手段」が、上記ステップ110の処理を実行することにより前記第1および第5の発明における「受信手段」が、上記ステップ112および114の処理を実行することにより前記第1および第5の発明における「出力制御手段」が、上記ステップ106の処理を実行することにより前記第2の発明における「出力変化遅延手段」が、それぞれ実現されている。
【0035】
実施の形態2.
次に、図5および図6を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を簡略化または省略する。
【0036】
本実施の形態2では、アクセルペダル開度信号に代えて、要求加速度情報が、先頭車両10と後続車両との間で通信される。そして、各車両では、その要求加速度に基いて、要求スロットル開度が算出される。以下、本実施形態における先頭車両および後続車両での具体的処理について説明する。
【0037】
[先頭車両における具体的処理]
図5は、本実施形態において、先頭車両10のECU50が実行するルーチンのフローチャートである。以下、図5において、図3に示すステップと同様のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0038】
図5に示すルーチンによれば、まず、アクセルポジションセンサ18によって検出されるアクセルペダル開度が取得される(ステップ100)。次いで、その取得されたアクセルペダル開度に基いて、要求加速度が算出される(ステップ116)。アクセルペダル開度が大きいほど、運転者が急な加速を要求していると判断できる。そこで、このステップ116では、アクセルペダル開度が大きいほど、要求加速度が大きく算出される。続いて、その算出された要求加速度の情報(要求加速度の値)が、送受信装置22により、後続車両へ送信される(ステップ118)。
【0039】
上記ステップ118の処理に続いて、車両モデルを用いて、上記要求加速度を達成するために必要な車両の要求駆動トルクが算出される(ステップ120)。本実施形態では、要求駆動トルクをT、車両走行抵抗トルクをTD、車両イナーシャウエイトをI、要求加速度をaとすると、上記車両モデルは、次式で表される。
T−TD=Ia ・・・(1)
【0040】
各車両のECU50には、自車両の走行抵抗トルクTDと車速などとの関係を表すマップと、自車両のイナーシャウエイトIの値とが記憶されている。上記ステップ120では、それらの値と、上記ステップ116で算出された要求加速度aの値とを上記(1)式に代入することにより、要求駆動トルクTが算出される。
【0041】
上記要求駆動トルクTが算出されたら、次に、その要求駆動トルクTを得るために必要な要求スロットル開度が算出される(ステップ122)。本実施形態においては、スロットル開度とエンジン回転数とエンジントルクとの関係を表すエンジントルクマップがECU50に予め記憶されているものとし、また、車両には、変速機の変速段を検出するシフトポジションセンサが設けられているものとする。上記ステップ122では、要求駆動トルクTと、現在の変速段とに基いて、上記エンジントルクマップを用いて、要求スロットル開度が算出される。
【0042】
上記ステップ122の処理に続いて、実際のスロットル開度が、所定のディレイ時間分だけ過去の要求スロットル開度に一致するように、スロットル弁16が制御される(ステップ106)。
【0043】
以上説明した図5のルーチンの処理によれば、先頭車両10が、アクセルペダル開度に応じて定まる要求加速度で加速するように、スロットル開度を制御することができる。ただし、実施の形態1と同様に、スロットル開度は、アクセルペダル開度の変化に対し、上記ディレイ時間の分だけ遅れて変化する。つまり、先頭車両10の実際の加速が、アクセルペダル開度の変化に対しやや遅れて発生するように制御される。
【0044】
[後続車両における具体的処理]
図6は、本実施形態において、後続車両のECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図6に示すルーチンによれば、まず、先頭車両10から送信された要求加速度情報が送受信装置22により受信される(ステップ124)。次いで、その受信された要求加速度情報と、車両モデルを用いて、その要求加速度を達成するために必要な車両の要求駆動トルクが算出される(ステップ126)。この場合、車両モデルは、次式で表される。
T−TD’=Ia ・・・(2)
【0045】
上記(2)式中の車両走行抵抗トルクTD’は、前走車両のスリップストリームの影響によって空気抵抗が軽減されていることを考慮した場合の車両走行抵抗トルクである。ECU50には、通常時の車両走行抵抗トルクTDのマップに加えて、この車両走行抵抗トルクTD’のマップが更に記憶されている。上記ステップ126では、そのマップから求められる車両走行抵抗トルクTD’を用いて、上記(2)式に従い、要求駆動トルクTが算出される。
【0046】
上記要求駆動トルクTが算出されたら、次に、その要求駆動トルクTを得るために必要な要求スロットル開度が算出される(ステップ128)。このステップ128では、上記ステップ122と同様にして、要求駆動トルクTと、現在の変速段とに基いて、エンジントルクマップを用いて、要求スロットル開度が算出される。
【0047】
上記ステップ128の処理に続いて、自車両のスロットル開度の変化が、先頭車両10のスロットル開度の変化と同期するように、スロットル弁16が制御される(ステップ114)。
【0048】
以上説明した図5および図6のルーチンの処理によれば、前述した実施の形態1と同様の効果が得られる。すなわち、先頭車両10においてアクセルペダル開度が変化した場合に、先頭車両10のスロットル開度が変化し始めるタイミングと、後続車両のスロットル開度が変化し始めるタイミングとを同期させることができる。
【0049】
更に、図5および図6のルーチンの処理によれば、先頭車両10において算出された要求加速度情報を後続車両に送信し、先頭車両10と後続車両との各々において、その要求加速度を自車両に実現するために必要なスロットル開度を算出するようにしている。これにより、車速が変化する場合に、先頭車両10に実際に生ずる加速度と、後続車両に実際に生ずる加速度とを精度良く一致させることができる。このため、車間距離の変動をより確実に防止することができ、車間距離を更に高い精度で一定に保つことができる。
【0050】
なお、上述した実施の形態2においては、ECU50が、上記ステップ100,116および118の処理を実行することにより前記第1および第4の発明における「送信手段」が、上記ステップ124の処理を実行することにより前記第1および第5の発明における「受信手段」が、上記ステップ126,128および114の処理を実行することにより前記第1および第5の発明における「出力制御手段」が、上記ステップ116の処理を実行することにより前記第3の発明における「要求加速度算出手段」が、上記ステップ120および126の処理を実行することにより前記第3の発明における「必要な出力を算出する手段」が、それぞれ実現されている。
【0051】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、車両出力を制御する操作量として内燃機関のスロットル開度を用いる車両、つまり火花点火式の通常の内燃機関を搭載する車両を対象とする場合を例に説明したが、本発明で対象とする車両はこれらに限定されるものではない。すなわち、本発明で対象とする車両は、吸気弁の作用角あるいはリフト量を連続可変することによって内燃機関の出力を制御する車両や、燃料噴射量によって内燃機関の出力を制御する車両(ディーゼルエンジン車)、内燃機関と電気モータとの双方を搭載し、その両者によって車両を駆動するハイブリッド車両、電気モータを原動機とする電気自動車あるいは燃料電池車など、いかなる車両であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1の車間距離制御システムの概要を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1の車両のシステム構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
10 先頭車両
12 第1後続車両
14 第2後続車両
16 スロットル弁
18 アクセルポジションセンサ
20 スロットルポジションセンサ
22 送受信装置
24 レーダ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先頭車両と後続車両との車間距離を一定に保つように制御する車間距離制御システムであって、
前記先頭車両は、自車両のアクセル開度情報または要求加速度情報を前記後続車両へ送信する送信手段を備え、
前記後続車両は、
前記情報を受信する受信手段と、
前記受信された情報に基づいて、自車両の出力を制御する出力制御手段と、
を備えることを特徴とする車間距離制御システム。
【請求項2】
前記先頭車両は、自車両のアクセル開度が変化した場合に、自車両の出力を制御するための操作量を遅れて変化させる出力変化遅延手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の車間距離制御システム。
【請求項3】
前記先頭車両は、
アクセル開度に基づいて要求加速度を算出する要求加速度算出手段と、
前記要求加速度と、自車両の車両モデルとに基づいて、当該要求加速度を自車両に実現するために必要な出力を算出する手段と、
を備え、
前記後続車両は、前記受信手段により受信された要求加速度情報と、自車両の車両モデルとに基づいて、当該要求加速度を自車両に実現するために必要な出力を算出する手段を備え、
前記後続車両の車両モデルは、空気抵抗が単独走行時より小さいことが反映されているものであることを特徴とする請求項1または2記載の車間距離制御システム。
【請求項4】
自車両が先頭車両である場合に、自車両のアクセル開度情報または要求加速度情報を後続車両へ送信する送信手段を備えることを特徴とする車両。
【請求項5】
自車両が後続車両である場合に、先頭車両から送信された当該先頭車両のアクセル開度情報または要求加速度情報を受信する受信手段と、
前記受信された情報に基づいて、自車両の出力を制御する出力制御手段と、
を備えることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−155740(P2008−155740A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345808(P2006−345808)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】