軌道検測装置および軌道検測方法
【課題】検測装置の設置角度による計測誤差を解消した軌道検測装置および軌道検測方法を提供する。
【解決手段】画像処理部3は、カメラ24からの画像データを取り込む画像データ取込部33と、カメラ24から取り込んだ画像データに基づいて、カメラ24の撮影範囲を基準とした座標系における前記基準点16a,16bの座標を求める基準点座標演算部34と、この基準点の座標に基づいて、カメラ24の撮影範囲内における通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置の座標を求める計測誤差最小位置座標演算部35を有する。計測誤差最小位置座標演算部35によって得られた基準レールにおける計測誤差最小位置の座標(校正時の座標)、検測対象レールにおける計測誤差最小位置の座標(検測時の座標)、及び前記データ入力部31に入力した軌道データとに基づいて、「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を計算する通り・高低差演算部36を設ける。
【解決手段】画像処理部3は、カメラ24からの画像データを取り込む画像データ取込部33と、カメラ24から取り込んだ画像データに基づいて、カメラ24の撮影範囲を基準とした座標系における前記基準点16a,16bの座標を求める基準点座標演算部34と、この基準点の座標に基づいて、カメラ24の撮影範囲内における通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置の座標を求める計測誤差最小位置座標演算部35を有する。計測誤差最小位置座標演算部35によって得られた基準レールにおける計測誤差最小位置の座標(校正時の座標)、検測対象レールにおける計測誤差最小位置の座標(検測時の座標)、及び前記データ入力部31に入力した軌道データとに基づいて、「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を計算する通り・高低差演算部36を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置で撮影した画像に基づき軌道の高低差や通りを計測する軌道検測装置および軌道検測方法に関するものであって、特に、ハンディタイプの検測装置を軌道のレール上に設置した場合に発生する計測誤差を低減することのできる技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道用軌道の高低差や通りの狂いを検測する装置としては従来各種のものが提案されているが、その中でもハンディタイプの軌道検測装置は、作業員が検測場所に手作業で簡単に持ち運ぶことができることから、車両の乗務員からの異常動揺の連絡が保線管理部門に入った場合に、運行障害を最小にするため直ちに現場確認を行えるように、迅速かつ簡便に軌道の検測を行う場合に適している。この種のハンディタイプの検測装置としては、従来から特許文献1から特許文献4に示すものが提案されている。
【0003】
このうち、特許文献1に示す技術は、コマと糸を用い、折り尺や定規を使って計測するものであるが、次のような問題点があった。
(1) 従来技術ではコマと糸の端面を保持する人2名、中央で計測する人1名、保安要員1名による共同作業のために最低4名必要であり、大掛かりな作業となる。
(2) 高低差と通りの2種類の測定を別々に行う必要があるため、作業に時間が掛かる。
(3) 目測するので誤差が大きく、精度が悪い。
(4) 糸を使用しているので、風や自重などの影響で糸にたるみが生じ、精度誤差を生じることがある。
(5) レール上部が曲面であるためコマを軌道に対して平行に設置できないため、精度が悪い。
【0004】
特許文献2の技術は、レール上に設置した移動ターゲットに設けた反射板に対して、レール外部に設けた3次元計測器から赤外線を発射し、その反射光の位置からレールの変位を計測するものであり、前記(1) から(4) の問題点を解決するものである。しかし、この技術は、レール上を移動ターゲットをレール上で移動させるための駆動手段が必要であり、ハンディタイプの検測装置として使用するには大型のものであった。
【0005】
特許文献3の技術は、3個のレール渡しバーとその間に張られた水糸、および計測用の曲尺を有するものであり、計測時に必要とする作業員の削減を目的としたものである。しかし、この技術は、左右のレール間に掛け渡すレール渡しバーが3本も必要であり、小型化という点では好ましいものではなかった。また、前記(2) から(4) の問題点を解決することもできなかった。
【0006】
特許文献4の技術は、軌道の3ヵ所にレーザの発光部、検測部および受光部を設置して、中央の検測部に設けた光遮断片の位置をレーザによって検出することで、軌道の通り狂いを計測するものである。この技術も、作業員の削減、検出精度の向上という利点はあるものの、前記(2) および(5) の問題点を解決するものではなかった。
【0007】
以上のように、いずれの特許文献に記載の技術も、ハンディタイプに適した小型で、しかも、前記(1) から(5) の問題点のすべてを解決した検測装置を得ることはできなかった。特に、いずれの従来技術も、レール上部にコマなどの器具を置いて検測するものであるため、レール上部の曲面に従って器具の設置位置(レール断面に対する設置角度)を一定にすることが難しく、高精度で検測を行うことが困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−117205号公報
【特許文献2】特開平6−94416号公報
【特許文献3】特開平10−62152号公報
【特許文献4】特開2006−308304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、曲面になっているレール上部に器具を設置する場合に多少の位置ズレがあったとしても、軌道の高低と通りの少なくとも一方を高精度で検測可能な軌道検測装置および軌道検測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の軌道検測装置は、レール上に設置する基準被写体と、レール上の前記基準被写体から離れた位置に設置する撮影装置とを備え、前記基準被写体には、通り方向及び高低差の少なくとも一方について、計測誤差最小位置を算出するための基準点が設けられ、前記撮影装置には、前記基準被写体を撮影するカメラと、カメラの画像データと前記計測誤差最小位置とに基づいて通り方向及び高低差の少なくとも一方を演算する画像処理部が設けられ、この画像処理部は、カメラからの画像データを取り込む画像データ取込部と、カメラから取り込んだ画像データに基づいて前記基準点の座標を求める基準点座標演算部と、この基準点の座標に基づいて通り方向及び高低差方向の少なくとも一方の計測誤差最小位置の座標を求める計測誤差最小位置座標演算部と、基準レールにおける計測誤差最小位置の座標、検測対象レールにおける計測誤差最小位置の座標に基づいて、「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を計算する通り・高低差演算部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、前記基準点が基準被写体に設けられた複数のLEDであること、前記通り・高低差演算部が検測対象の軌道の曲率に基づいて前記「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を補正するものであること、前記画像処理部が複数種類の基準レールに関する計測誤差最小位置を記憶したデータ記憶部を有するものであること、更にこれらの処理を行う方法も本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下記のような効果を得ることができる。
(a) 作業に必要な人数を削減できる。
(b) 高低差、通りを同時に計測可能とした場合には、作業時間を短縮できる。
(c) 目測による誤差を無くすことができる。
(d) 風による糸のたわみがなどの影響が無くなる。
(e) 検測装置をレールに載せたときの傾きなどの設置精度による計測誤差を最小にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[誤差最小位置]
本発明は、レールの上部が曲面構造になっており、その部分に検測装置を乗せた場合、検測装置の傾きによって検測誤差が生じることを解消するために提案されたものであって、特に、レールの上部の任意の角度に検測装置を傾けた場合であっても、検測装置のある特定の位置については誤差が最小となることに着目したものである。以下、そのような誤差最小位置について説明する。
【0014】
まず、図13は、60Kgレールの断面であって、高低の基準はレールの幅方向中心で、レール上面よりも20mmのK点である。また、通りの基準はレールの内側面で、レール上面よりも16mm下がったA点よりも更に軌道内に向かって20mm離れたT点である。
【0015】
このような高低測定用のK点と、通り測定用のT点を有する従来の検測装置(コマ)を、レール上部の曲面構造に沿って±10°の範囲で移動させると、K点及びT点の軌跡は図14に示すものとなり、傾きによる高低差方向の検測誤差は2.2mm、通り方向の計測誤差は1.7mmであった。同様に、50Kgレールの場合、高低差方向の検測誤差は2.1mm、通り方向の計測誤差は1.7mmであった。
【0016】
通常、この種の検測装置の誤差は1.0mm程度まで許容されているが、前記のような誤差は許容範囲を超えるものであった。なお、この場合、傾きの範囲を±10°としたのは、レールにセットした検測装置の傾きが±10°を越えると、作業員が装置が傾いていることを目視で容易に発見できるからである。
【0017】
ところで、図14のようにコマをレール上面の曲面構造に沿って±10°傾けた場合に、K点は高低差方向の計測誤差が2.2mmとなるようなV字形の軌跡を描くが、このコマと一体にレール曲面に沿って回動する座標系を想定した場合、図15に示すように、座標系の回動角度にかかわらず、座標系の回動に伴う通り方向の差は大きいものの、高低差の変化が最小となる位置K0が存在する。
【0018】
すなわち、コマを傾斜させた結果コマの底面がレール表面から上昇する寸法と、コマの底面から離れた位置にあるK点が左右に回動した結果K点が下降する寸法との差が、K点の軌跡として現れるが、この場合、K点の位置をレール上面から離す程K点が下降する寸法が大きくなり、結果として、両者が打ち消しあって、コマの傾斜角度にかかわらず高低差が最小となる位置K0が存在する。
【0019】
同様に、前記の座標系をレール曲面に沿って回動させた場合、高低差は大きいものの通り方向の変化が最小となる位置T0も求めることができる。
【0020】
なお、本発明において、最小位置とは、必ずしも高低差または通り方向の変化量が0または最小値となる位置に限定されるものではなく、高低差または通り方向の変化量が許容される計測誤差(例えば、1.0mm)以内に収まる位置であっても良い。すなわち、レールの曲面構造やコマとレールとの接触部分の形状によっては、必ずしも変化量を0とすることができない場合があり、また、変化量を最小とする位置がレールからあまりにも離れていると、カメラの撮影範囲外となるので、少なくとも、高低差または通り方向の変化量が許容される計測誤差以内に収まる位置とすればよい。
【0021】
ところで、軌道に使用されるレールとしては、60Kgレールと50Kgレールが一般的であり、また、検測用のコマとしても、前記図13に示すように、レール上面と内側面とに接触する断面L字形の部材が使用されることが一般的である。そこで、このような前提の基に、60Kgと50Kgの基準レールについてその誤差最小位置を計測すると、次の通りであることが判明した。なお、各レールの誤差最小位置は、図13のA点を基準にX方向(軌道の内側方向が−)とY方向(レールの上方向が+)にどれだけズレた位置にあるかで表現している。
【0022】
60Kgレールの場合
「通り」方向の計測誤差最小位置
X座標=32.2mm
Y座標=−3.5mm
この点での「通り」計測誤差は、0.3mm
「高低差」方向の計測誤差最小位置
X座標=32.0mm
Y座標=198.3mm
この点での「高低差」計測誤差は、0.4mm
【0023】
50Kgレールの場合
「通り」方向の計測誤差最小位置
X座標=25.2mm
Y座標=−4.0mm
この点での「通り」計測誤差は、0.3mm
「高低差」方向の計測誤差最小位置
X座標=32.0mm
Y座標=181.0mm
この点での「高低差」計測誤差は、0.3mm
【0024】
この計測結果によれば、コマ、すなわち検測装置を基準レール上にセットした場合に、±10°以内の傾斜角度であれば、計測誤差が許容範囲内に収まる誤差最小位置が存在することが確認された。従って、検測対象のレールにおいて、この誤差最小位置が基準レールの誤差最小位置に対してどの程度ズレているかを測定すれば、検測対象のレールに対する検測装置の傾きを考慮することなく、「高低」あるいは「通り」の狂いを検出することができる。
【0025】
[第1実施形態]
(1)構成
以下、前記のような誤差最小位置を利用した本発明の軌道検測装置の第1実施形態を、図面に従って具体的に説明する。
【0026】
本発明の軌道検測装置は、基準被写体1、撮影装置2および画像処理部3から構成されており、この第1実施形態は、1台の基準被写体1と、1台のカメラを備えた撮影装置2とからなる。
【0027】
基準被写体1は、レール上に設置された状態で前記撮影装置2の撮影対象となるものであって、図1及び図2に示すように、レールの上面と平行に配置された高低基準板11と、レールの内側面と平行に配置された通り基準板12とを備えている。この高低基準板11と通り基準板12のレール対向面には、基準被写体1をレールに固定させるための磁石13がそれぞれ固定されている。
【0028】
基準被写体1の高低基準板11の上面には、レールの幅方向に伸びる前後一対のブラケット14a,14bが設けられている。すなわち、これらのブラケット14a,14bはいずれも断面L字形の部材であって、その水平部分がねじ止めその他の手段で高低基準板11に固定されている。
【0029】
前後一対のブラケットのうち、検測時に撮影装置2に対向する側のブラケット14aの垂直部分には、レールの幅よりも大きく、またブラケットの垂直部分よりも背の高い支持板15が固定されている。この支持板15は、黒色のつや消しパネルによって形成され、そこには、レールの幅よりも外側の位置で、レールの上部よりも高い位置に、左右一対の基準点16a,16bが設けられている。
【0030】
この基準点16a,16bは、本実施形態においては、撮影装置2に向かって発光するLEDが使用され、そのため、基準被写体1における前後のブラケット14a,14bの間には、LEDの電源となる電池17が搭載されている。また、図示しないが、LEDの点滅、発光間隔などを制御するスイッチや電子回路、配線なども設けられている。
【0031】
図3及び図4に示すように、前記撮影装置2は、前記基準被写体1と同様に、レールの上面と平行に配置された高低基準板21と、レールの内側面と平行に配置された通り基準板22と、撮影装置2をレールに固定させるための磁石23を備えている。高低基準板21の上面には、撮影レンズの中心線(光軸)がレールの長さ方向と平行になるようにして、カメラ24が固定されている。この場合、カメラ24は、そのレンズが、基準被写体1に対向するように高低基準板21に固定されている。
【0032】
撮影装置2の高低基準板21上には、前記カメラ24と共に画像処理部3が設けられている。この画像処理部3は、カメラ24が撮影した画像を処理して、高低及び(または)通りに関する検測値を外部に設けられたパソコン4などの表示・記録手段に送出するものである。
【0033】
撮影装置2は、前記カメラ24及び画像処理部3を被うためのカバー25を備えており、このカバー25には撮影装置2を持ち運ぶ際に使用する取手26が設けられている。
【0034】
図5のブロック図に示すように、前記画像処理部3としては、検測対象の軌道のデータ、具体的には、検測装置を設置する規定距離D0、基準レールの曲率R0、通りT0、高低差K0を入力する軌道データ入力部31と、これらのデータを記憶するデータ記憶部32が設けられている。また、このデータ記憶部32には、50Kgレールや60Kgなどの各種類のレールについて、予め計測しておいた通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置、各種のレールに前記基準被写体1をセットした場合における左右の基準点16a,16bの位置を記憶させておく。
【0035】
前記画像処理部3には、カメラ24からの画像データを取り込む画像データ取込部33と、カメラ24から取り込んだ画像データに基づいて、カメラ24の撮影範囲を基準とした座標系における前記基準点16a,16bの座標を求める基準点座標演算部34と、この基準点の座標に基づいて、カメラ24の撮影範囲内における通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置の座標を求める計測誤差最小位置座標演算部35が設けられている。
【0036】
また、この計測誤差最小位置座標演算部35によって得られた基準レールにおける計測誤差最小位置の座標(校正時の座標)、検測対象レールにおける計測誤差最小位置の座標(検測時の座標)、及び前記データ入力部31に入力した軌道データとに基づいて、「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を計算する通り・高低差演算部36が設けられている。
【0037】
更に、校正開始を指示する校正開始スイッチ37と、検測開始を指示する軌道検測開始スイッチ38と、前記通り・高低差演算部36によって得られた検測結果を外部のパソコンなどのデータ表示・記録手段に送出する出力部39と、これら各スイッチ36,37の指令に基づき、前記各部を制御して、検測結果を演算する画像処理制御部30を備えている。
【0038】
なお、この画像処理部3としては、必ずしも、外部の表示・記録手段に検測データを出力するものに限定されず、画像処理部3自体に液晶ディスプレイなどの表示部やデータ保存用のメモリなどの記憶手段を設け、使用者が撮影装置に単独で検測値を得ることのできるものや、逆に、画像処理部3自体は特に演算処理を行わずに、単にカメラ24で撮影した画像データを外部のパソコンなどの演算・表示・記録手段に送出するものを使用することも可能である。
【0039】
(2)作用
次に、第1実施形態の軌道検測装置の作用効果を説明する。
【0040】
(2−1)校正作業
まず、本実施形態の装置を使用するには、予め、基準レールを使用した校正作業を行う。この校正作業に当たっては、図6に示すように、軌道の検測対象となるレール上に基準被写体1をその基準点16a,16bであるLEDが撮影装置2に対向する向きで設置する。この場合、レール上部の平坦な部分(頭頂面)に基準被写体1の高低基準板11を磁石13を介して固定し、レール内側の垂直部分に通り基準板12を同じく磁石13を介して固定する。同様にして、レール上のこの基準被写体1から規定距離(例えば、10m正矢法の場合には5m)離れた位置に、撮影装置2をそのカメラ24が基準被写体1の方を向くように設置する(図7のフローチャートのステップ1)。
【0041】
特に、校正作業においては、基準レールに対して、基準被写体1と撮影装置2とを正確に設置することが必要である。すなわち、この校正時に算出した計測誤差最小位置を基準として、検測対象のレールについて算出した計測誤差最小位置のズレを検出することで、通り方向及び(または)高低差の狂いを検測するからである。
【0042】
次に、データ入力部31から、検測装置を設置する規定距離D0、基準レールの曲率R0、通りT0、高低差K0を入力し、これらのデータを記憶部32に記憶する(ステップ2)。これらのデータとしては、一例として次のようなものである。
規定距離D0=5m
基準レールの曲率R0=999(直線)
通りT0=0mm
高低差K0=0mm
【0043】
なお、校正対象となる基準レールの種類、その基準レールについて予め計測しておいた通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置、各種のレールに前記基準被写体1をセットした場合における左右の基準点16a,16bの位置は、予め記憶部32に記憶させておく。
【0044】
軌道データ入力の完了後、校正開始スイッチ37を押すと(ステップ3)、その指令に従い制御部30がカメラ24で撮影した基準被写体1の画像を画像データ取込部33に取り込む(ステップ4)。この場合、取り込まれた画像データは、基準被写体1とその背景を含むものであって、そのほぼ中央部には支持板15とそれに設けられた左右の基準点16a,16bが撮影されている。
【0045】
基準点座標演算部34においては、図8の(A)に示すように、カメラ24の撮影した画像全域を、その左上を0点として、右方向をX軸、下方向をY軸とする1つの座標系として認識し、校正時の座標系における左右の基準点16a,16bの座標L10(x,y)、L20(x,y)を求める(ステップ5)。
【0046】
次に、計測誤差最小位置座標演算部35により、前記データ記憶部32に記憶されている通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置と左右の基準点16a,16bの位置のデータを使用して、撮影された基準点の座標L10(x,y)、L20(x,y)から、この座標系における通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置の座標V0(x,y)、H0(x,y)を求め(ステップ6,7及び図8の(B))、これらの演算結果を前記軌道データと共に記憶部32に記憶して、校正作業を終了する(ステップ8)。
【0047】
(2−2)検測作業
次に、本実施形態の装置により、実際に軌道の検測を行うには、前記のようにして、基準レールについての校正作業が完了した状態において、基準レールと同種類の検測対象レール上に、基準被写体1と撮影装置2とを規定距離を保って配置する(図9のステップ1)。この場合、基準被写体1が傾いて設置されることがないように極力配慮することが望ましいが、校正時とは異なり、本実施形態においては±10°以内の傾きは許容できる。
【0048】
次に、データ入力部31から、検測対象レールの曲率R1を入力する(ステップ2)。一例として、曲率R1=300mである。続いて、検測開始スイッチ38を押すことにより(ステップ3)、制御部30からの指令により画像データ取込部33にカメラ24からの画像が取り込まれる(ステップ4)。この場合、基準被写体1と撮影装置2の少なくとも一方が傾斜していると、その画像は図10(A)のようにカメラ24の撮影範囲内で、基準被写体1の支持板15及び左右の基準点16a,16bが傾いたものとなる。
【0049】
基準点座標演算部34は、検測時の撮影画像の左上を0点とした座標系における左右の基準点16a,16bの座標L11(x,y)、L21(x,y)を求め(ステップ5)、次いで、これら基準点の座標L11(x,y)、L21(x,y)と、予め記憶部32に記憶しておいた基準レールについての基準点位置と誤差最小位置とに基づいて、検測時の座標系における通り及び高低差の計測誤差最小位置の座標V1(x,y)、H1(x,y)を計算する(ステップ6,7及び図10の(B))。
【0050】
その後、この検測時の誤差最小位置の座標V1(x,y)、H1(x,y)と、前記記憶部32に記憶しておいた前記校正時の計測誤差最小位置の座標V0(x,y)、H0(x,y)、及び、規定距離D0、基準レールの曲率R0、通りT、高低差K0に基づいて、下記の式により、通り方向のズレと高低差を計算する(ステップ8,9)。
通り:T1=V1(x)−V0(x)+(2×D0)2/(8×R0)
高低差:K1=H1(y)−H0(y)+K0
【0051】
更に、本実施形態のように検測対象レールに曲率がある場合には、それを考慮して、下記の式のように、通り方向の検測値について補正を行い、補正値T1’を計算する(ステップ10)。
補正値:T1’=T1−(2×D0)2/(8×R1)
【0052】
前記のようにして得られた高低差、通り、曲率補正後の通りについては、検測結果出力部39よりパソコンその他の表示手段に出力する(ステップ11)。
【0053】
(3)効果
以上の通り、本実施形態によれば、基準被写体1や撮影装置2がレール頭部の曲面に沿って傾いたとしても、計測誤差最小位置においては、その傾きに起因する高低差方向または通り方向の誤差は許容範囲内の小さなものである。従って、校正時において正確に測定した計測誤差最小位置座標と、検測時に得られた計測誤差最小位置の座標との間でズレが生じた場合には、そのズレは検測時の傾きに起因するものではなく、検測レールに発生した通り方向または高低差方向の狂いによるものである。
【0054】
すなわち、本実施形態においては、「通り」と「高低差」のそれぞれについて、計測誤差最小位置を基準とすることにより、検測時において10°以内の傾斜ならば「通り」と「高低差」のいずれについても、基準被写体1や撮影装置2の設置精度を気にする必要がなくなり、作業時間を短縮できると共に作業習熟度による検測精度の差を解消することができる。
【0055】
[第2実施形態]
図11は、本発明の第2実施形態を示すものである。この第2実施形態は、撮影装置2に2台のカメラ24a,24bを背中合わせに配置したものであって、図12に示すように、撮影装置2の両側に規定距離(一例として5m)を離して、それぞれ基準被写体1a,1bを配置したものである。
【0056】
すなわち、前記第1実施形態は、前後に磁石を配置した比較的長尺の撮影装置を使用することで、レールの長さ方向(カメラの光軸方向)に対する撮影装置のズレが生じないようにしたものであるが、カメラの小型化や画像処理部を外部のパソコンなどに搭載した場合には、撮影装置の前後の長さが短くなり、カメラ光軸方向にズレが生じる可能性もある。
【0057】
そこで、この第2実施形態においては、2台のカメラを搭載すると共に、これらのカメラで捉えた画像データに基づき、それぞれ「通り」と「高低差」を演算し、前後の値の平均値を求めることで、撮影装置をレールに設置した場合のカメラ光軸方向のズレを相殺することができる。その結果、撮影装置の前後方向の長さを短くすることができる。
【0058】
[他の実施形態]
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含するものである。
【0059】
(1) 通りまたは高低差のいずれか一方のみを、その計測誤差最小位置に基づいて検測するもの。
(2) レールの種類ごとに予め基準レールを用いて、校正作業を行っておき、計測誤差最小位置の座標を計算しておくもの。この場合、レールの種類と、そのレールについての「通り」及び「高低差」の計測誤差最小位置座標を対応付けて記憶部32に記憶しておき、検測時にこの座標値を呼び出して、検測時の座標値と比較することで、校正作業の簡略化を図れる。
【0060】
(3) 基準点として、LEDや電球による発光体の代わりに、光の反射マーク、明暗の付いた点または色差の付いた点などの図形、支持板の外形などを使用するもの。また、LEDの発光を可視光、赤外線などとしたり、特定の発光間隔として、基準被写体周囲のノイズとなる画像との判別を容易にしたもの。
(4) 基準点の数と位置は、撮影画像中の基準点の座標に基づいて通り及び高低差の計測誤差最小位置座標を求めることができるものであれば、図示のように、レールを挟んで左右対称に設ける必要はない。また、通り及び高低差の計測誤差最小位置座標も、カメラの撮影した画像内に存在する必要はない。
【0061】
(5) レール上部に対する検測装置の傾きの範囲は、検測装置とレール上部との接触構造(前記実施形態における高低基準板、通り基準板、磁石などの寸法や位置など)にも左右されるものであり、その部分の構造によっては、±3〜5°以上傾くことがない検測装置も存在する。そのような場合には、前記の「通り」及び「高低差」の計測誤差最小位置は±10°の範囲で傾く検測装置とは異なる位置になる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態における基準被写体の側面図。
【図2】前記第1実施形態における基準被写体の正面図。
【図3】前記第1実施形態における撮影装置の側面図。
【図4】前記第1実施形態における撮影装置の正面図。
【図5】前記第1実施形態における画像処理部3の構成を示すブロック図。
【図6】前記第1実施形態の軌道検測装置の使用状態を示す平面図。
【図7】前記第1実施形態の校正時の動作を示すフローチャート。
【図8】前記第1実施形態の校正時の撮影画像の一例を示す正面図。
【図9】前記第1実施形態の検測時の動作を示すフローチャート。
【図10】前記第1実施形態の検測時の撮影画像の一例を示す正面図。
【図11】本発明の第2実施形態における撮影装置の側面図。
【図12】前記第2実施形態の軌道検測装置の使用状態を示す平面図。
【図13】60Kgレールにおける高低差及び通りの検測基準位置を示す断面図。
【図14】検測装置の傾斜により、検測基準位置に生じる誤差を示す断面図。
【図15】検測装置が傾斜した場合における検測誤差最小位置が存在することを説明する断面図。
【符号の説明】
【0063】
1…基準被写体
2…撮影装置
3…画像処理部
4…パソコン
11,21…高低基準板
12,22…通り基準板
13,23…磁石
14…ブラケット
15…支持板
16a,16b…基準点
17…電池
24…カメラ
25…カバー
26…取手
30…画像処理制御部
31…軌道データ入力部
32…データ記憶部
33…画像データ取込部
34…基準点座標位置演算部
35…計測誤差最小位置座標演算部
36…通り・高低差演算部
37…校正開始スイッチ
38…軌道検測開始スイッチ
39…検測結果出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置で撮影した画像に基づき軌道の高低差や通りを計測する軌道検測装置および軌道検測方法に関するものであって、特に、ハンディタイプの検測装置を軌道のレール上に設置した場合に発生する計測誤差を低減することのできる技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道用軌道の高低差や通りの狂いを検測する装置としては従来各種のものが提案されているが、その中でもハンディタイプの軌道検測装置は、作業員が検測場所に手作業で簡単に持ち運ぶことができることから、車両の乗務員からの異常動揺の連絡が保線管理部門に入った場合に、運行障害を最小にするため直ちに現場確認を行えるように、迅速かつ簡便に軌道の検測を行う場合に適している。この種のハンディタイプの検測装置としては、従来から特許文献1から特許文献4に示すものが提案されている。
【0003】
このうち、特許文献1に示す技術は、コマと糸を用い、折り尺や定規を使って計測するものであるが、次のような問題点があった。
(1) 従来技術ではコマと糸の端面を保持する人2名、中央で計測する人1名、保安要員1名による共同作業のために最低4名必要であり、大掛かりな作業となる。
(2) 高低差と通りの2種類の測定を別々に行う必要があるため、作業に時間が掛かる。
(3) 目測するので誤差が大きく、精度が悪い。
(4) 糸を使用しているので、風や自重などの影響で糸にたるみが生じ、精度誤差を生じることがある。
(5) レール上部が曲面であるためコマを軌道に対して平行に設置できないため、精度が悪い。
【0004】
特許文献2の技術は、レール上に設置した移動ターゲットに設けた反射板に対して、レール外部に設けた3次元計測器から赤外線を発射し、その反射光の位置からレールの変位を計測するものであり、前記(1) から(4) の問題点を解決するものである。しかし、この技術は、レール上を移動ターゲットをレール上で移動させるための駆動手段が必要であり、ハンディタイプの検測装置として使用するには大型のものであった。
【0005】
特許文献3の技術は、3個のレール渡しバーとその間に張られた水糸、および計測用の曲尺を有するものであり、計測時に必要とする作業員の削減を目的としたものである。しかし、この技術は、左右のレール間に掛け渡すレール渡しバーが3本も必要であり、小型化という点では好ましいものではなかった。また、前記(2) から(4) の問題点を解決することもできなかった。
【0006】
特許文献4の技術は、軌道の3ヵ所にレーザの発光部、検測部および受光部を設置して、中央の検測部に設けた光遮断片の位置をレーザによって検出することで、軌道の通り狂いを計測するものである。この技術も、作業員の削減、検出精度の向上という利点はあるものの、前記(2) および(5) の問題点を解決するものではなかった。
【0007】
以上のように、いずれの特許文献に記載の技術も、ハンディタイプに適した小型で、しかも、前記(1) から(5) の問題点のすべてを解決した検測装置を得ることはできなかった。特に、いずれの従来技術も、レール上部にコマなどの器具を置いて検測するものであるため、レール上部の曲面に従って器具の設置位置(レール断面に対する設置角度)を一定にすることが難しく、高精度で検測を行うことが困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−117205号公報
【特許文献2】特開平6−94416号公報
【特許文献3】特開平10−62152号公報
【特許文献4】特開2006−308304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、曲面になっているレール上部に器具を設置する場合に多少の位置ズレがあったとしても、軌道の高低と通りの少なくとも一方を高精度で検測可能な軌道検測装置および軌道検測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の軌道検測装置は、レール上に設置する基準被写体と、レール上の前記基準被写体から離れた位置に設置する撮影装置とを備え、前記基準被写体には、通り方向及び高低差の少なくとも一方について、計測誤差最小位置を算出するための基準点が設けられ、前記撮影装置には、前記基準被写体を撮影するカメラと、カメラの画像データと前記計測誤差最小位置とに基づいて通り方向及び高低差の少なくとも一方を演算する画像処理部が設けられ、この画像処理部は、カメラからの画像データを取り込む画像データ取込部と、カメラから取り込んだ画像データに基づいて前記基準点の座標を求める基準点座標演算部と、この基準点の座標に基づいて通り方向及び高低差方向の少なくとも一方の計測誤差最小位置の座標を求める計測誤差最小位置座標演算部と、基準レールにおける計測誤差最小位置の座標、検測対象レールにおける計測誤差最小位置の座標に基づいて、「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を計算する通り・高低差演算部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、前記基準点が基準被写体に設けられた複数のLEDであること、前記通り・高低差演算部が検測対象の軌道の曲率に基づいて前記「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を補正するものであること、前記画像処理部が複数種類の基準レールに関する計測誤差最小位置を記憶したデータ記憶部を有するものであること、更にこれらの処理を行う方法も本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下記のような効果を得ることができる。
(a) 作業に必要な人数を削減できる。
(b) 高低差、通りを同時に計測可能とした場合には、作業時間を短縮できる。
(c) 目測による誤差を無くすことができる。
(d) 風による糸のたわみがなどの影響が無くなる。
(e) 検測装置をレールに載せたときの傾きなどの設置精度による計測誤差を最小にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[誤差最小位置]
本発明は、レールの上部が曲面構造になっており、その部分に検測装置を乗せた場合、検測装置の傾きによって検測誤差が生じることを解消するために提案されたものであって、特に、レールの上部の任意の角度に検測装置を傾けた場合であっても、検測装置のある特定の位置については誤差が最小となることに着目したものである。以下、そのような誤差最小位置について説明する。
【0014】
まず、図13は、60Kgレールの断面であって、高低の基準はレールの幅方向中心で、レール上面よりも20mmのK点である。また、通りの基準はレールの内側面で、レール上面よりも16mm下がったA点よりも更に軌道内に向かって20mm離れたT点である。
【0015】
このような高低測定用のK点と、通り測定用のT点を有する従来の検測装置(コマ)を、レール上部の曲面構造に沿って±10°の範囲で移動させると、K点及びT点の軌跡は図14に示すものとなり、傾きによる高低差方向の検測誤差は2.2mm、通り方向の計測誤差は1.7mmであった。同様に、50Kgレールの場合、高低差方向の検測誤差は2.1mm、通り方向の計測誤差は1.7mmであった。
【0016】
通常、この種の検測装置の誤差は1.0mm程度まで許容されているが、前記のような誤差は許容範囲を超えるものであった。なお、この場合、傾きの範囲を±10°としたのは、レールにセットした検測装置の傾きが±10°を越えると、作業員が装置が傾いていることを目視で容易に発見できるからである。
【0017】
ところで、図14のようにコマをレール上面の曲面構造に沿って±10°傾けた場合に、K点は高低差方向の計測誤差が2.2mmとなるようなV字形の軌跡を描くが、このコマと一体にレール曲面に沿って回動する座標系を想定した場合、図15に示すように、座標系の回動角度にかかわらず、座標系の回動に伴う通り方向の差は大きいものの、高低差の変化が最小となる位置K0が存在する。
【0018】
すなわち、コマを傾斜させた結果コマの底面がレール表面から上昇する寸法と、コマの底面から離れた位置にあるK点が左右に回動した結果K点が下降する寸法との差が、K点の軌跡として現れるが、この場合、K点の位置をレール上面から離す程K点が下降する寸法が大きくなり、結果として、両者が打ち消しあって、コマの傾斜角度にかかわらず高低差が最小となる位置K0が存在する。
【0019】
同様に、前記の座標系をレール曲面に沿って回動させた場合、高低差は大きいものの通り方向の変化が最小となる位置T0も求めることができる。
【0020】
なお、本発明において、最小位置とは、必ずしも高低差または通り方向の変化量が0または最小値となる位置に限定されるものではなく、高低差または通り方向の変化量が許容される計測誤差(例えば、1.0mm)以内に収まる位置であっても良い。すなわち、レールの曲面構造やコマとレールとの接触部分の形状によっては、必ずしも変化量を0とすることができない場合があり、また、変化量を最小とする位置がレールからあまりにも離れていると、カメラの撮影範囲外となるので、少なくとも、高低差または通り方向の変化量が許容される計測誤差以内に収まる位置とすればよい。
【0021】
ところで、軌道に使用されるレールとしては、60Kgレールと50Kgレールが一般的であり、また、検測用のコマとしても、前記図13に示すように、レール上面と内側面とに接触する断面L字形の部材が使用されることが一般的である。そこで、このような前提の基に、60Kgと50Kgの基準レールについてその誤差最小位置を計測すると、次の通りであることが判明した。なお、各レールの誤差最小位置は、図13のA点を基準にX方向(軌道の内側方向が−)とY方向(レールの上方向が+)にどれだけズレた位置にあるかで表現している。
【0022】
60Kgレールの場合
「通り」方向の計測誤差最小位置
X座標=32.2mm
Y座標=−3.5mm
この点での「通り」計測誤差は、0.3mm
「高低差」方向の計測誤差最小位置
X座標=32.0mm
Y座標=198.3mm
この点での「高低差」計測誤差は、0.4mm
【0023】
50Kgレールの場合
「通り」方向の計測誤差最小位置
X座標=25.2mm
Y座標=−4.0mm
この点での「通り」計測誤差は、0.3mm
「高低差」方向の計測誤差最小位置
X座標=32.0mm
Y座標=181.0mm
この点での「高低差」計測誤差は、0.3mm
【0024】
この計測結果によれば、コマ、すなわち検測装置を基準レール上にセットした場合に、±10°以内の傾斜角度であれば、計測誤差が許容範囲内に収まる誤差最小位置が存在することが確認された。従って、検測対象のレールにおいて、この誤差最小位置が基準レールの誤差最小位置に対してどの程度ズレているかを測定すれば、検測対象のレールに対する検測装置の傾きを考慮することなく、「高低」あるいは「通り」の狂いを検出することができる。
【0025】
[第1実施形態]
(1)構成
以下、前記のような誤差最小位置を利用した本発明の軌道検測装置の第1実施形態を、図面に従って具体的に説明する。
【0026】
本発明の軌道検測装置は、基準被写体1、撮影装置2および画像処理部3から構成されており、この第1実施形態は、1台の基準被写体1と、1台のカメラを備えた撮影装置2とからなる。
【0027】
基準被写体1は、レール上に設置された状態で前記撮影装置2の撮影対象となるものであって、図1及び図2に示すように、レールの上面と平行に配置された高低基準板11と、レールの内側面と平行に配置された通り基準板12とを備えている。この高低基準板11と通り基準板12のレール対向面には、基準被写体1をレールに固定させるための磁石13がそれぞれ固定されている。
【0028】
基準被写体1の高低基準板11の上面には、レールの幅方向に伸びる前後一対のブラケット14a,14bが設けられている。すなわち、これらのブラケット14a,14bはいずれも断面L字形の部材であって、その水平部分がねじ止めその他の手段で高低基準板11に固定されている。
【0029】
前後一対のブラケットのうち、検測時に撮影装置2に対向する側のブラケット14aの垂直部分には、レールの幅よりも大きく、またブラケットの垂直部分よりも背の高い支持板15が固定されている。この支持板15は、黒色のつや消しパネルによって形成され、そこには、レールの幅よりも外側の位置で、レールの上部よりも高い位置に、左右一対の基準点16a,16bが設けられている。
【0030】
この基準点16a,16bは、本実施形態においては、撮影装置2に向かって発光するLEDが使用され、そのため、基準被写体1における前後のブラケット14a,14bの間には、LEDの電源となる電池17が搭載されている。また、図示しないが、LEDの点滅、発光間隔などを制御するスイッチや電子回路、配線なども設けられている。
【0031】
図3及び図4に示すように、前記撮影装置2は、前記基準被写体1と同様に、レールの上面と平行に配置された高低基準板21と、レールの内側面と平行に配置された通り基準板22と、撮影装置2をレールに固定させるための磁石23を備えている。高低基準板21の上面には、撮影レンズの中心線(光軸)がレールの長さ方向と平行になるようにして、カメラ24が固定されている。この場合、カメラ24は、そのレンズが、基準被写体1に対向するように高低基準板21に固定されている。
【0032】
撮影装置2の高低基準板21上には、前記カメラ24と共に画像処理部3が設けられている。この画像処理部3は、カメラ24が撮影した画像を処理して、高低及び(または)通りに関する検測値を外部に設けられたパソコン4などの表示・記録手段に送出するものである。
【0033】
撮影装置2は、前記カメラ24及び画像処理部3を被うためのカバー25を備えており、このカバー25には撮影装置2を持ち運ぶ際に使用する取手26が設けられている。
【0034】
図5のブロック図に示すように、前記画像処理部3としては、検測対象の軌道のデータ、具体的には、検測装置を設置する規定距離D0、基準レールの曲率R0、通りT0、高低差K0を入力する軌道データ入力部31と、これらのデータを記憶するデータ記憶部32が設けられている。また、このデータ記憶部32には、50Kgレールや60Kgなどの各種類のレールについて、予め計測しておいた通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置、各種のレールに前記基準被写体1をセットした場合における左右の基準点16a,16bの位置を記憶させておく。
【0035】
前記画像処理部3には、カメラ24からの画像データを取り込む画像データ取込部33と、カメラ24から取り込んだ画像データに基づいて、カメラ24の撮影範囲を基準とした座標系における前記基準点16a,16bの座標を求める基準点座標演算部34と、この基準点の座標に基づいて、カメラ24の撮影範囲内における通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置の座標を求める計測誤差最小位置座標演算部35が設けられている。
【0036】
また、この計測誤差最小位置座標演算部35によって得られた基準レールにおける計測誤差最小位置の座標(校正時の座標)、検測対象レールにおける計測誤差最小位置の座標(検測時の座標)、及び前記データ入力部31に入力した軌道データとに基づいて、「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を計算する通り・高低差演算部36が設けられている。
【0037】
更に、校正開始を指示する校正開始スイッチ37と、検測開始を指示する軌道検測開始スイッチ38と、前記通り・高低差演算部36によって得られた検測結果を外部のパソコンなどのデータ表示・記録手段に送出する出力部39と、これら各スイッチ36,37の指令に基づき、前記各部を制御して、検測結果を演算する画像処理制御部30を備えている。
【0038】
なお、この画像処理部3としては、必ずしも、外部の表示・記録手段に検測データを出力するものに限定されず、画像処理部3自体に液晶ディスプレイなどの表示部やデータ保存用のメモリなどの記憶手段を設け、使用者が撮影装置に単独で検測値を得ることのできるものや、逆に、画像処理部3自体は特に演算処理を行わずに、単にカメラ24で撮影した画像データを外部のパソコンなどの演算・表示・記録手段に送出するものを使用することも可能である。
【0039】
(2)作用
次に、第1実施形態の軌道検測装置の作用効果を説明する。
【0040】
(2−1)校正作業
まず、本実施形態の装置を使用するには、予め、基準レールを使用した校正作業を行う。この校正作業に当たっては、図6に示すように、軌道の検測対象となるレール上に基準被写体1をその基準点16a,16bであるLEDが撮影装置2に対向する向きで設置する。この場合、レール上部の平坦な部分(頭頂面)に基準被写体1の高低基準板11を磁石13を介して固定し、レール内側の垂直部分に通り基準板12を同じく磁石13を介して固定する。同様にして、レール上のこの基準被写体1から規定距離(例えば、10m正矢法の場合には5m)離れた位置に、撮影装置2をそのカメラ24が基準被写体1の方を向くように設置する(図7のフローチャートのステップ1)。
【0041】
特に、校正作業においては、基準レールに対して、基準被写体1と撮影装置2とを正確に設置することが必要である。すなわち、この校正時に算出した計測誤差最小位置を基準として、検測対象のレールについて算出した計測誤差最小位置のズレを検出することで、通り方向及び(または)高低差の狂いを検測するからである。
【0042】
次に、データ入力部31から、検測装置を設置する規定距離D0、基準レールの曲率R0、通りT0、高低差K0を入力し、これらのデータを記憶部32に記憶する(ステップ2)。これらのデータとしては、一例として次のようなものである。
規定距離D0=5m
基準レールの曲率R0=999(直線)
通りT0=0mm
高低差K0=0mm
【0043】
なお、校正対象となる基準レールの種類、その基準レールについて予め計測しておいた通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置、各種のレールに前記基準被写体1をセットした場合における左右の基準点16a,16bの位置は、予め記憶部32に記憶させておく。
【0044】
軌道データ入力の完了後、校正開始スイッチ37を押すと(ステップ3)、その指令に従い制御部30がカメラ24で撮影した基準被写体1の画像を画像データ取込部33に取り込む(ステップ4)。この場合、取り込まれた画像データは、基準被写体1とその背景を含むものであって、そのほぼ中央部には支持板15とそれに設けられた左右の基準点16a,16bが撮影されている。
【0045】
基準点座標演算部34においては、図8の(A)に示すように、カメラ24の撮影した画像全域を、その左上を0点として、右方向をX軸、下方向をY軸とする1つの座標系として認識し、校正時の座標系における左右の基準点16a,16bの座標L10(x,y)、L20(x,y)を求める(ステップ5)。
【0046】
次に、計測誤差最小位置座標演算部35により、前記データ記憶部32に記憶されている通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置と左右の基準点16a,16bの位置のデータを使用して、撮影された基準点の座標L10(x,y)、L20(x,y)から、この座標系における通り方向及び高低差方向の計測誤差最小位置の座標V0(x,y)、H0(x,y)を求め(ステップ6,7及び図8の(B))、これらの演算結果を前記軌道データと共に記憶部32に記憶して、校正作業を終了する(ステップ8)。
【0047】
(2−2)検測作業
次に、本実施形態の装置により、実際に軌道の検測を行うには、前記のようにして、基準レールについての校正作業が完了した状態において、基準レールと同種類の検測対象レール上に、基準被写体1と撮影装置2とを規定距離を保って配置する(図9のステップ1)。この場合、基準被写体1が傾いて設置されることがないように極力配慮することが望ましいが、校正時とは異なり、本実施形態においては±10°以内の傾きは許容できる。
【0048】
次に、データ入力部31から、検測対象レールの曲率R1を入力する(ステップ2)。一例として、曲率R1=300mである。続いて、検測開始スイッチ38を押すことにより(ステップ3)、制御部30からの指令により画像データ取込部33にカメラ24からの画像が取り込まれる(ステップ4)。この場合、基準被写体1と撮影装置2の少なくとも一方が傾斜していると、その画像は図10(A)のようにカメラ24の撮影範囲内で、基準被写体1の支持板15及び左右の基準点16a,16bが傾いたものとなる。
【0049】
基準点座標演算部34は、検測時の撮影画像の左上を0点とした座標系における左右の基準点16a,16bの座標L11(x,y)、L21(x,y)を求め(ステップ5)、次いで、これら基準点の座標L11(x,y)、L21(x,y)と、予め記憶部32に記憶しておいた基準レールについての基準点位置と誤差最小位置とに基づいて、検測時の座標系における通り及び高低差の計測誤差最小位置の座標V1(x,y)、H1(x,y)を計算する(ステップ6,7及び図10の(B))。
【0050】
その後、この検測時の誤差最小位置の座標V1(x,y)、H1(x,y)と、前記記憶部32に記憶しておいた前記校正時の計測誤差最小位置の座標V0(x,y)、H0(x,y)、及び、規定距離D0、基準レールの曲率R0、通りT、高低差K0に基づいて、下記の式により、通り方向のズレと高低差を計算する(ステップ8,9)。
通り:T1=V1(x)−V0(x)+(2×D0)2/(8×R0)
高低差:K1=H1(y)−H0(y)+K0
【0051】
更に、本実施形態のように検測対象レールに曲率がある場合には、それを考慮して、下記の式のように、通り方向の検測値について補正を行い、補正値T1’を計算する(ステップ10)。
補正値:T1’=T1−(2×D0)2/(8×R1)
【0052】
前記のようにして得られた高低差、通り、曲率補正後の通りについては、検測結果出力部39よりパソコンその他の表示手段に出力する(ステップ11)。
【0053】
(3)効果
以上の通り、本実施形態によれば、基準被写体1や撮影装置2がレール頭部の曲面に沿って傾いたとしても、計測誤差最小位置においては、その傾きに起因する高低差方向または通り方向の誤差は許容範囲内の小さなものである。従って、校正時において正確に測定した計測誤差最小位置座標と、検測時に得られた計測誤差最小位置の座標との間でズレが生じた場合には、そのズレは検測時の傾きに起因するものではなく、検測レールに発生した通り方向または高低差方向の狂いによるものである。
【0054】
すなわち、本実施形態においては、「通り」と「高低差」のそれぞれについて、計測誤差最小位置を基準とすることにより、検測時において10°以内の傾斜ならば「通り」と「高低差」のいずれについても、基準被写体1や撮影装置2の設置精度を気にする必要がなくなり、作業時間を短縮できると共に作業習熟度による検測精度の差を解消することができる。
【0055】
[第2実施形態]
図11は、本発明の第2実施形態を示すものである。この第2実施形態は、撮影装置2に2台のカメラ24a,24bを背中合わせに配置したものであって、図12に示すように、撮影装置2の両側に規定距離(一例として5m)を離して、それぞれ基準被写体1a,1bを配置したものである。
【0056】
すなわち、前記第1実施形態は、前後に磁石を配置した比較的長尺の撮影装置を使用することで、レールの長さ方向(カメラの光軸方向)に対する撮影装置のズレが生じないようにしたものであるが、カメラの小型化や画像処理部を外部のパソコンなどに搭載した場合には、撮影装置の前後の長さが短くなり、カメラ光軸方向にズレが生じる可能性もある。
【0057】
そこで、この第2実施形態においては、2台のカメラを搭載すると共に、これらのカメラで捉えた画像データに基づき、それぞれ「通り」と「高低差」を演算し、前後の値の平均値を求めることで、撮影装置をレールに設置した場合のカメラ光軸方向のズレを相殺することができる。その結果、撮影装置の前後方向の長さを短くすることができる。
【0058】
[他の実施形態]
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含するものである。
【0059】
(1) 通りまたは高低差のいずれか一方のみを、その計測誤差最小位置に基づいて検測するもの。
(2) レールの種類ごとに予め基準レールを用いて、校正作業を行っておき、計測誤差最小位置の座標を計算しておくもの。この場合、レールの種類と、そのレールについての「通り」及び「高低差」の計測誤差最小位置座標を対応付けて記憶部32に記憶しておき、検測時にこの座標値を呼び出して、検測時の座標値と比較することで、校正作業の簡略化を図れる。
【0060】
(3) 基準点として、LEDや電球による発光体の代わりに、光の反射マーク、明暗の付いた点または色差の付いた点などの図形、支持板の外形などを使用するもの。また、LEDの発光を可視光、赤外線などとしたり、特定の発光間隔として、基準被写体周囲のノイズとなる画像との判別を容易にしたもの。
(4) 基準点の数と位置は、撮影画像中の基準点の座標に基づいて通り及び高低差の計測誤差最小位置座標を求めることができるものであれば、図示のように、レールを挟んで左右対称に設ける必要はない。また、通り及び高低差の計測誤差最小位置座標も、カメラの撮影した画像内に存在する必要はない。
【0061】
(5) レール上部に対する検測装置の傾きの範囲は、検測装置とレール上部との接触構造(前記実施形態における高低基準板、通り基準板、磁石などの寸法や位置など)にも左右されるものであり、その部分の構造によっては、±3〜5°以上傾くことがない検測装置も存在する。そのような場合には、前記の「通り」及び「高低差」の計測誤差最小位置は±10°の範囲で傾く検測装置とは異なる位置になる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態における基準被写体の側面図。
【図2】前記第1実施形態における基準被写体の正面図。
【図3】前記第1実施形態における撮影装置の側面図。
【図4】前記第1実施形態における撮影装置の正面図。
【図5】前記第1実施形態における画像処理部3の構成を示すブロック図。
【図6】前記第1実施形態の軌道検測装置の使用状態を示す平面図。
【図7】前記第1実施形態の校正時の動作を示すフローチャート。
【図8】前記第1実施形態の校正時の撮影画像の一例を示す正面図。
【図9】前記第1実施形態の検測時の動作を示すフローチャート。
【図10】前記第1実施形態の検測時の撮影画像の一例を示す正面図。
【図11】本発明の第2実施形態における撮影装置の側面図。
【図12】前記第2実施形態の軌道検測装置の使用状態を示す平面図。
【図13】60Kgレールにおける高低差及び通りの検測基準位置を示す断面図。
【図14】検測装置の傾斜により、検測基準位置に生じる誤差を示す断面図。
【図15】検測装置が傾斜した場合における検測誤差最小位置が存在することを説明する断面図。
【符号の説明】
【0063】
1…基準被写体
2…撮影装置
3…画像処理部
4…パソコン
11,21…高低基準板
12,22…通り基準板
13,23…磁石
14…ブラケット
15…支持板
16a,16b…基準点
17…電池
24…カメラ
25…カバー
26…取手
30…画像処理制御部
31…軌道データ入力部
32…データ記憶部
33…画像データ取込部
34…基準点座標位置演算部
35…計測誤差最小位置座標演算部
36…通り・高低差演算部
37…校正開始スイッチ
38…軌道検測開始スイッチ
39…検測結果出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上に設置する基準被写体と、レール上の前記基準被写体から離れた位置に設置する撮影装置とを備え、
前記基準被写体には、通り方向及び高低差の少なくとも一方について、計測誤差最小位置を算出するための基準点が設けられ、
前記撮影装置には、前記基準被写体を撮影するカメラと、カメラの画像データと前記計測誤差最小位置とに基づいて通り方向及び高低差の少なくとも一方を演算する画像処理部が設けられ、
この画像処理部は、
カメラからの画像データを取り込む画像データ取込部と、カメラから取り込んだ画像データに基づいて前記基準点の座標を求める基準点座標演算部と、この基準点の座標に基づいて通り方向及び高低差方向の少なくとも一方の計測誤差最小位置の座標を求める計測誤差最小位置座標演算部と、
基準レールにおける計測誤差最小位置の座標、検測対象レールにおける計測誤差最小位置の座標に基づいて、「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を計算する通り・高低差演算部とを有することを特徴とする軌道検測装置。
【請求項2】
前記基準点が、基準被写体に設けられた複数の電球、LED、明暗の付いた点または色差の付いた点であることを特徴とする請求項1に記載の軌道検測装置。
【請求項3】
前記通り・高低差演算部が、検測対象の軌道の曲率に基づいて、前記「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を補正するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軌道検測装置。
【請求項4】
前記画像処理部が、複数種類の基準レールに関する計測誤差最小位置を記憶したデータ記憶部を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の軌道検測装置。
【請求項5】
前記撮影装置が背中合わせに配置された2台のカメラを備え、
前記通り・高低差演算部が、前記撮影装置を挟んで配置された2台の基準被写体をそれぞれのカメラで撮影し、各カメラの画像データに基づいて検測対象レールの「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量をそれぞれ計算し、その計算結果を平均することにより、撮影装置の光軸方向におけるズレを補正するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の軌道検測装置。
【請求項6】
通り方向及び高低差の少なくとも一方について、計測誤差最小位置を算出するための基準点が設けられた基準被写体と、この基準被写体を撮影するカメラを備えた撮影装置を、検測対象のレール上の離れた位置に設置し、
前記カメラが撮影した基準被写体の画像データに基づいて前記基準点の座標を求め、この基準点の座標に基づいて通り方向及び高低差方向の少なくとも一方の計測誤差最小位置の座標を求め、
基準レールにおける計測誤差最小位置の座標、検測対象レールにおける計測誤差最小位置の座標に基づいて、検測対象レールの「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を計算することを特徴とする軌道検測方法。
【請求項7】
前記撮影装置に2台のカメラを設け、撮影装置を挟んで配置された2台の基準被写体をそれぞれのカメラで撮影し、各カメラの画像データに基づいて検測対象レールの「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量をそれぞれ計算し、その計算結果を平均することにより、撮影装置の光軸方向におけるズレを補正することを特徴とする請求項6に記載の軌道検測方法。
【請求項1】
レール上に設置する基準被写体と、レール上の前記基準被写体から離れた位置に設置する撮影装置とを備え、
前記基準被写体には、通り方向及び高低差の少なくとも一方について、計測誤差最小位置を算出するための基準点が設けられ、
前記撮影装置には、前記基準被写体を撮影するカメラと、カメラの画像データと前記計測誤差最小位置とに基づいて通り方向及び高低差の少なくとも一方を演算する画像処理部が設けられ、
この画像処理部は、
カメラからの画像データを取り込む画像データ取込部と、カメラから取り込んだ画像データに基づいて前記基準点の座標を求める基準点座標演算部と、この基準点の座標に基づいて通り方向及び高低差方向の少なくとも一方の計測誤差最小位置の座標を求める計測誤差最小位置座標演算部と、
基準レールにおける計測誤差最小位置の座標、検測対象レールにおける計測誤差最小位置の座標に基づいて、「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を計算する通り・高低差演算部とを有することを特徴とする軌道検測装置。
【請求項2】
前記基準点が、基準被写体に設けられた複数の電球、LED、明暗の付いた点または色差の付いた点であることを特徴とする請求項1に記載の軌道検測装置。
【請求項3】
前記通り・高低差演算部が、検測対象の軌道の曲率に基づいて、前記「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を補正するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軌道検測装置。
【請求項4】
前記画像処理部が、複数種類の基準レールに関する計測誤差最小位置を記憶したデータ記憶部を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の軌道検測装置。
【請求項5】
前記撮影装置が背中合わせに配置された2台のカメラを備え、
前記通り・高低差演算部が、前記撮影装置を挟んで配置された2台の基準被写体をそれぞれのカメラで撮影し、各カメラの画像データに基づいて検測対象レールの「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量をそれぞれ計算し、その計算結果を平均することにより、撮影装置の光軸方向におけるズレを補正するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の軌道検測装置。
【請求項6】
通り方向及び高低差の少なくとも一方について、計測誤差最小位置を算出するための基準点が設けられた基準被写体と、この基準被写体を撮影するカメラを備えた撮影装置を、検測対象のレール上の離れた位置に設置し、
前記カメラが撮影した基準被写体の画像データに基づいて前記基準点の座標を求め、この基準点の座標に基づいて通り方向及び高低差方向の少なくとも一方の計測誤差最小位置の座標を求め、
基準レールにおける計測誤差最小位置の座標、検測対象レールにおける計測誤差最小位置の座標に基づいて、検測対象レールの「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量を計算することを特徴とする軌道検測方法。
【請求項7】
前記撮影装置に2台のカメラを設け、撮影装置を挟んで配置された2台の基準被写体をそれぞれのカメラで撮影し、各カメラの画像データに基づいて検測対象レールの「通り」方向及び「高低差」方向のズレ量をそれぞれ計算し、その計算結果を平均することにより、撮影装置の光軸方向におけるズレを補正することを特徴とする請求項6に記載の軌道検測方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図12】
【図13】
【図3】
【図8】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図12】
【図13】
【図3】
【図8】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−192292(P2009−192292A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31578(P2008−31578)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]