説明

転写ロール及び転写装置

【課題】転写ロールの円筒状外周面に凹凸状の微細パターンを形成する際に、この微細パターンの始端部と後端部との繋ぎ目を目立たなくさせる。
【解決手段】ロール本体12aと、ロール本体12aを回転させる軸12bと、ロール本体12aの外周に沿って設けられ且つ転写フィルムF上に転写するための微細パターンPを始端部Psから終端部Peにかけて形成した円筒状外周面12cとを有し、且つ、微細パターンPの始端部Psと終端部Peとを円筒状外周面12c上で軸12bの方向に沿って互に向かい合わせるように転写ロール12を構成した際に、転写ロール12の円筒状外周面12c上で微細パターンPの始端部Psと終端部Peとの間の僅かな区間Kに微細パターンPを形成せずに、この僅かな区間Kを平滑な曲面又は凹曲面としている転写ロール12を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ロールの円筒状外周面に凹凸状の微細パターンを形成する際に、この微細パターンの始端部と後端部との繋ぎ目が目立たなくなるように構成した転写ロール及び転写装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライト用としていられる光拡散板や、投射型表示装置に用いられるワイヤ・グリッド偏光フィルム,プリズムシート,フレネルシートなどは、樹脂フィルムを用いてこのフィルムの表面に凹凸状の微細パターンが形成されており、これらは一般的に転写装置によって製造されている。
【0003】
この際、回転中に添接される樹脂フィルム上に転写するための微細パターンを円筒状外周面に形成した転写ロール及びこの転写ロールを用いて樹脂フィルム上に微細パターンをミクロンオーダー又はサブミクロンオーダーもしくはナノオーダーの精度で簡単に転写できる転写装置がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
図7は従来の転写装置を説明するために転写ロールの近傍を模式的に示した構成図、
図8(a),(b)は従来の転写ロールの作製工程を模式的に示した斜視図、
図9(a),(b)は従来の転写ロールの円筒状外周面に形成した凹凸状の微細パターンを樹脂フィルム上に転写した状態を示した平面図,A部拡大図である。
【0005】
図7に示した従来の転写装置100及び図8(a),(b)に示した従来の転写ロール101は、上記した特許文献1(特開2008−126543号公報)に開示されているものであり、ここでは特許文献1を参照して簡略に説明する。
【0006】
図7に示した如く、従来の転写装置100では、転写ロール101が金属材を用いてこの中心部位にロール本体101aを円筒状に形成して設けられており、且つ、ロール本体101aの左右の端部中心に一体的に突出形成した回転軸101b(片側のみ図示)を中心にして転写ロール101が不図示のモータによって矢印方向に回転自在になっている。
【0007】
上記した転写ロール101は、ロール本体101aの外周に沿った円筒状外周面101cに凹凸状の微細パターンPが一周に亘ってミクロンオーダー又はサブミクロンオーダーもしくはナノオーダーの精度で形成されている。
【0008】
また、回転中の転写ロール101の円筒状外周面101cに、例えば紫外線硬化樹脂(図示せず)を樹脂フィルムベース(図示せず)上に予め塗布した可撓性を有する樹脂フィルムFが所定の角度に亘って巻き付けられており、この樹脂フィルムFが複数のガイドロール102,102によって上流から下流に向かって移送されている。
【0009】
この際、図8(a)に示した如く、転写ロール101は、円筒状外周面101cの円筒状外周面101cの円周長Lがπ×直径Dで得られ、且つ、転写ロール101が1回転したときに円筒状外周面101cの円周長Lと幅Wとにより微細パターンPの矩形枠が略設定されるので、この微細パターンPの矩形枠が樹脂フィルムFに始めに接する側の端部を始端部Psと呼称し、且つ、この始端部Psと間隔を離して対向した反対側の端部を終端部Peと呼称して以下説明する。
【0010】
そして、転写ロール101は、周知のフォトリソグラフィー技術と電鋳技術とにより凹凸状の微細パターンPが矩形枠状に形成された金属製転写板の始端部Psと終端部Peとを円筒状に突き合わせて溶接して転写筒101c’として形成した後に、この転写筒101c’を転写ロール101のロール本体101aに着脱自在に嵌め込んで、図8(b)に示した如く、転写筒101c’による円筒状外周面101cに凹凸状の微細パターンPを形成した転写ロール101を得ている。
【0011】
尚、円筒状外周面に凹凸状の微細パターンを形成した転写ロールの製造方法としては、図8(a),(b)に示した従来例の他に、ここでの図示を省略するものの、切削加工によって円筒状外周面に微細な凹凸形状を直接形成したもの(例えば、特許文献2)とか、表面に凹凸形状が形成された母型をロール表面が非晶質の合金に圧接させて凹凸形状を転写させたもの(例えば、特許文献3)などがある。
【0012】
図7に戻り、上記のように構成した従来の転写装置100において、回転中の転写ロール101の円筒状外周面101cに樹脂フィルムFの紫外線硬化樹脂側を添接させることにより、この円筒状外周面101cに形成した凹凸状の微細パターンPが図9(a)に示したように樹脂フィルムF上に転写ロール101の円筒状外周面101cの円周長Lのピッチで繰り返されて連続的に転写された後に、転写ロール101の近傍に設けた硬化部104によって紫外線が照射されることで、樹脂フィルムF上に転写された凹凸状の微細パターンPが硬化されている。
【特許文献1】特開2008−126543号公報
【特許文献2】特開2007−320022号公報
【特許文献3】特開2006−2238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、従来の転写装置100において、前述したように、回転中の転写ロール101の円筒状外周面101cに樹脂フィルムFの紫外線硬化樹脂側を添接させることにより、この円筒状外周面101cに形成した凹凸状の微細パターンPが図9(a)に示したように樹脂フィルムF上に連続的に転写されるが、この際、転写ロール101の円筒状外周面101cは、図8(a),(b)に示した従来例のように溶接した繋ぎ目がある場合、又は、引用文献2,3に記載された技術によりシームレスに形成されている場合のいずれにおいても、凹凸状の微細パターンP上での始端部Psと終端部Peとの繋ぎ目が円筒状外周面101c上で重なり合うことになる。
【0014】
これに伴なって、樹脂フィルムF上でも、転写された一の微細パターンPの後端Peと、これに続いて転写された隣の微細パターンPの始端部Psとの繋ぎ目が図9(b)に拡大して示したように重なり合ってしまう。
【0015】
この際、樹脂フィルムF上に転写された微細パターンPの始端部Psと後端Peとの繋ぎ目がミリ(mm)オーダであれば目立たないかもしれないが、微細パターンPの始端部Psと後端Peとをミクロン(μm)オーダ又はサブミクロン(μm)オーダで突き合わせて繋ぐのは極めて困難なことであるので、樹脂フィルムF上に転写された微細パターンPの始端部Psと後端Peとの繋ぎ目が転写品質を低下させてしまうことになるので問題である。
【0016】
そこで、転写ロールの円筒状外周面に凹凸状の微細パターンを形成する際に、この微細パターンの始端部と後端部との繋ぎ目が目立たなくなるように構成した転写ロール及び転写装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の発明は、ロール本体と、前記ロール本体を回転させる軸と、前記ロール本体の外周に沿って設けられ且つ樹脂フィルム上に転写するための微細パターンを始端部から終端部にかけて形成した円筒状外周面とを有し、且つ、前記微細パターンの前記始端部と前記終端部とを前記円筒状外周面上で前記軸の方向に沿って互に向かい合わせるように成した転写ロールにおいて、
前記円筒状外周面上で前記微細パターンの前記始端部と前記終端部との間の僅かな区間に前記微細パターンを形成せずに、この僅かな区間を平滑な曲面又は凹曲面とすることを特徴とする転写ロールである。
【0018】
また、第2の発明は、ロール本体と、前記ロール本体を回転させる軸と、前記ロール本体の外周に沿って設けられ且つ樹脂フィルム上に転写するための微細パターンを始端部から終端部にかけて所定の厚さで形成した円筒状外周面とを有し、且つ、前記微細パターンの前記始端部と前記終端部とを前記円筒状外周面上で前記軸の方向に沿って互に向かい合わせるように成した転写ロールにおいて、
前記円筒状外周面上で前記微細パターンの高さを、前記始端部から前記円筒状外周面の回転方向に向かって徐々に前記所定の高さに到達するように増加させることを特徴とする転写ロールである。
【0019】
また、第3の発明は、ロール本体と、前記ロール本体を回転させる軸と、前記ロール本体の外周に沿って設けられ且つ樹脂フィルム上に転写するための微細パターンを始端部から終端部にかけて所定の厚さで形成した円筒状外周面とを有し、且つ、前記微細パターンの前記始端部と前記終端部とを前記円筒状外周面上で前記軸の方向に沿って互に向かい合わせるように成した転写ロールにおいて、
前記円筒状外周面上で前記微細パターンの高さを、前記始端部から前記円筒状外周面の回転方向に向かって前記所定の高さに徐々に到達するように増加させると共に、前記終端部に向かって前記所定の高さから徐々に高さを低減させることを特徴とする転写ロールである。
【0020】
更に、第4の発明は、上記した第1〜第3のいずれかの発明の転写ロールを用いて、回転中の前記転写ロールの円筒状外周面に添接した前記樹脂フィルム上に前記微細パターンを前記円筒状外周面の円周長のピッチで連続して転写させることを特徴とする転写装置である。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明の転写ロールによると、ロール本体と、ロール本体を回転させる軸と、ロール本体の外周に沿って設けられ且つ転写フィルム上に転写するための微細パターンを始端部から終端部にかけて形成した円筒状外周面とを有し、且つ、微細パターンの始端部と終端部とを円筒状外周面上で軸の方向に沿って互に向かい合わせるように転写ロールを構成した際に、転写ロールの円筒状外周面上で微細パターンの始端部と終端部との間の僅かな区間に微細パターンを形成せずに、この僅かな区間を平滑な曲面又は凹曲面としているために、この結果、転写ロールの円筒状外周面に形成した微細パターンの始端部と終端部とが円筒状外周面上で重なり合うことがないので、樹脂フィルムに対して転写性能の良い転写ロールを提供できる。
【0022】
また、第2の発明の転写ロールによると、ロール本体と、ロール本体を回転させる軸と、ロール本体の外周に沿って設けられ且つ転写フィルム上に転写するための微細パターンを始端部から終端部にかけて所定の高さ厚さで形成した円筒状外周面とを有し、且つ、微細パターンの始端部と終端部とを円筒状外周面上で軸の方向に沿って互に向かい合わせるように転写ロールを構成した際に、円筒状外周面上で微細パターンの高さを、始端部から円筒状外周面の回転方向に向かって所定の高さに徐々に到達するように増加させているために、この結果、転写ロールの円筒状外周面に形成した微細パターンの始端部では微細パターンの高さが殆ど無くなり、この始端部と終端部との繋ぎ目が目立たなくなるので、樹脂フィルムに対して転写性能の良い転写ロールを提供できる。
【0023】
また、第3の発明の転写ロールによると、ロール本体と、ロール本体を回転させる軸と、ロール本体の外周に沿って設けられ且つ転写フィルム上に転写するための微細パターンを始端部から終端部にかけて所定の厚さで形成した円筒状外周面とを有し、且つ、微細パターンの始端部と終端部とを円筒状外周面上で軸の方向に沿って互に向かい合わせるように転写ロールを構成した際に、円筒状外周面上で微細パターンの高さを、始端部から円筒状外周面の回転方向に向かって所定の高さに徐々に到達するように増加させると共に、終端部に向かって所定の高さから徐々に高さを低減させているために、この結果、転写ロールの円筒状外周面に形成した微細パターンの始端部及び終端部では微細パターンの高さが殆ど無くなり、この始端部と終端部との繋ぎ目がより一層目立たなくなるので、樹脂フィルムに対して転写性能の良い転写ロールを提供できる。
【0024】
更に、第4の発明の転写装置によると、上記した第1〜第3のいずれかの発明の転写ロールを用いて、回転中の転写ロールの円筒状外周面に添接した樹脂フィルム上に微細パターンを円筒状外周面の円周長のピッチで連続して転写させているために、転写ロールによって樹脂フィルム上に転写された微細パターンの始端部と終端部との繋ぎ目が全く目立たなくなるので、樹脂フィルム上に転写された微細パターンの転写品質を従来例よりも向上させるがことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明に係る転写ロール及び転写装置について図1〜図6を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
図1(a),(b)は本発明に係る実施例の転写装置を説明するために押圧ロール及び転写ロールの近傍を模式的に示した構成図,A部拡大図であり、図2は本発明に係る実施例の転写ロールを模式的に示した斜視図であり、図3(a),(b)は本発明に係る実施例の転写ロールを作製する状態を示した斜視図,縦断面図であり、図4(a),(b)は本発明に係る実施例の転写ロールの円筒状外周面に形成した凹凸状の微細パターンを、樹脂フィルム上に転写した状態を模式的に示した平面図,A部拡大図である。
【0027】
図1(a)に示した如く、本発明に係る実施例の転写装置10では、押圧ロール11と、転写ロール12とが、金属材を用いて各中心部位にロール本体11a,12aを略同じ直径で円筒状に形成して、後述する樹脂フィルムFの移送方向に対して上流と下流とに順に設けられており、且つ、各ロール本体11a,12aの左右の端部中心に一体的に突出形成した各回転軸11b,12b(各片側のみ図示)を中心にして両ロール11,12がそれぞれ矢印方向に回転自在になっている。
【0028】
この際、押圧ロール11は、不図示のバネの付勢力によって転写ロール12側に押圧されており、一方、転写ロール12は不図示のモータによって回転駆動されている。
【0029】
また、上記した押圧ロール11は、ロール本体11aの外周に沿った円筒状外周面11cにゴム材Gが巻き付けられている。
【0030】
一方、上記した転写ロール12は、ロール本体12aの外周に沿った円筒状部位の外周面12cに凹凸状の微細パターンPが図1(b)に拡大して示したようにミクロンオーダーの精度でロール本体12aとは異なる樹脂材、又は、ロール本体12aと一体の金属材、もしくは、ロール本体12aとは異なる金属材を用いて所定の高さ(深さ)Tが例えば2μm〜20μmの範囲で形成されている。
【0031】
尚、転写ロール12の円筒状外周面12cに形成した凹凸状の微細パターンPは、転写される製品によって寸法精度が異なるものであるから、ミクロンオーダーの精度に限ることなく、サブミクロンオーダーもしくはナノオーダーの精度で所定の高さTに形成すれば良いものである。
【0032】
更に、回転中の押圧ロール11の円筒状外周面11c及び転写ロール12の円筒状外周面12cに、例えば紫外線硬化樹脂を(図示せず)を樹脂フィルムベース(図示せず)上に予め塗布した可撓性を有する樹脂フィルムFがそれぞれ所定の角度に亘って巻き付けられており、この樹脂フィルムFが複数のガイドロール13,13によって上流から下流に向かって移送されている。
【0033】
ここで、実施例の要部となる転写ロール12は、図2に示した如く、円筒状外周面12cの円周長Lがπ×直径Dで得られ、且つ、転写ロール12が1回転したときに円筒状外周面12cの円周長Lと幅Wとにより微細パターンPの矩形枠が略設定されるので、この微細パターンPの矩形枠が樹脂フィルムFに始めに接する側の端部を始端部Psと呼称し、且つ、この始端部Psと間隔を離して対向した反対側の端部を終端部Peと呼称して以下説明する。
【0034】
そして、この転写ロール12では、円筒状外周面12cに形成した凹凸状の微細パターンPの形状が先に図7及び図8(a),(b)を用いて説明した従来の転写ロール101に対して僅かに異なっている。
【0035】
具体的に説明すると、図1(a),(b)及び図2に示した如く、ロール本体12aと、ロール本体12aを回転させる軸12bと、ロール本体12aの外周に沿って設けられ且つ転写フィルムF上に転写するための微細パターンPを始端部Psから終端部Peにかけて所定の高さ(深さ)Tで形成した円筒状外周面(円柱側面状の外周面)12cとを有し、且つ、微細パターンPの始端部Psと終端部Peとを円筒状外周面12c上で回転軸12bの方向に沿って互に向かい合わせるように転写ロール12を構成した際に、転写ロール12の円筒状外周面12c上で微細パターンPの始端部Psと終端部Peとの間の僅かな区間Kに微細パターンPを形成せずに、この僅かな区間Kを平滑な曲面又は凹曲面としている。
【0036】
これにより、転写ロール12の円筒状外周面12cに形成した微細パターンPの始端部Psと終端部Peとが円筒状外周面12c上で重なり合うことがないので、樹脂フィルムFに対して転写性能の良い転写ロール12を提供できる。
【0037】
そして、上記形状の転写ロール12を作製する場合に、この実施例では、図3(a),(b)に示した如く、転写ロール12は金属製のロール本体12aの外周に沿って例えばフッ素系樹脂材FJが微細パターンPの所定の高さ(深さ)T{図1(b)}よりも十分に厚く、例えば0.1mm〜2mm程度の厚さで円筒状に予め塗布されている。
【0038】
一方、金属製のスタンパ用平板状原板(母型)20の上面20aには、周知のフォトリソグラフィー技術と電鋳技術とにより凹凸状の微細パターンPが転写ロール12の円筒状外周面12cの円周長L又はこの円周長Lより少し余裕を持った長さで予め形成されている。
【0039】
この後、転写ロール12のロール本体12aの外周に塗布したフッ素系樹脂材FJを過熱した状態で、転写ロール12を矢印方向に回転させながらフッ素系樹脂材FJをスタンパ用平板状原板20上に形成した凹凸状の微細パターンPの始端部Psから押し付けて、転写ロール12をスタンパ用平板状原板20上で矢印方向に向かって転動させて、フッ素系樹脂材FJに凹凸状の微細パターンPを所定の高さ(深さ)T{図1(b)}で転写させる。
【0040】
そして、図3(b)に示したように、転写ロール12がスタンパ用平板状原板20上の微細パターンPの始端部Psを起点として1回転する少し手前で転写ロール12をスタンパ用平板状原板20上から上方に向かって離間させると、転写ロール12の円筒状外周面12c上で微細パターンPの始端部Psと終端部Peとの間の僅かな区間Kに亘って微細パターンPが形成されていない状態が得られる。
【0041】
尚、先に従来技術で説明した引用文献2の技術的思想を適用して、切削加工によって転写ロール12の円筒状外周面12cに微細パターンPを形成した場合でも、この微細パターンPの始端部Psと終端部Peとの間の僅かな区間Kに亘って微細パターンPを形成せずに、この僅かな区間Kを平滑な曲面又は凹曲面として形成することも可能であり、更に、微細パターンPの始端部Psと終端部Peとの間の僅かな区間Kに亘って微細パターンPが形成されていない金属製転写板を転写ロール12のロール本体12aの外周に沿って巻回させて両面接着材などを用いて固着させてもよい。
【0042】
図1(a)に戻り、上記のように構成した実施例の転写装置10において、押圧ロール11を転写ロール12側に押し当てながら回転中の転写ロール12の円筒状外周面12cに樹脂フィルムFの紫外線硬化樹脂側を添接させることにより、この円筒状外周面12cに形成した凹凸状の微細パターンPが図4(a)に示したように樹脂フィルムF上に転写ロール12の円筒状外周面12cの円周長Lのピッチで繰り返されて連続的に転写された後に、転写ロール12の近傍に設けた硬化部14によって紫外線が照射されることで、樹脂フィルムF上に転写された凹凸状の微細パターンPが硬化されるが、この実施例では、図4(b)に拡大して示したように転写ロール12によって樹脂フィルムF上に転写された凹凸状の微細パターンPの始端部Psと終端部Peとの間の僅かな区間Kに亘って微細パターンPが形成されていないので、微細パターンPの始端部Psと終端部Peとが重なり合わないために、樹脂フィルムF上に転写された凹凸状の微細パターンPの転写品質を従来例よりも向上させるがことができる。
【0043】
尚、実施例では、紫外線硬化樹脂を予め塗布した樹脂フィルムFを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、転写可能な樹脂フィルムFならばいかなる材質でもよく、樹脂フィルムFの材質に合わせて硬化部14を設けない場合もあり得る。
【0044】
次に、本発明に係る実施例の転写ロール12を一部変形させた第1,第2変形例について図5及び図6を用いて実施例と異なる点についてのみ説明する。
【0045】
図5(a),(b)は本発明に係る実施例の転写ロールを一部変形させた第1変形例の転写ロールを模式的に示した側面図,B部拡大図、
図6(a),(b)は本発明に係る実施例の転写ロールを一部変形させた第2変形例の転写ロールを模式的に示した側面図,C部拡大図である。
【0046】
まず、図5(a),(b)に示した如く、本発明に係る実施例の転写ロールを一部変形させた第1変形例の転写ロール12’は、ロール本体12aと、ロール本体12aを回転させる軸12bと、ロール本体12aの外周に沿って設けられ且つ転写フィルムF上に転写するための微細パターンPを始端部Psから終端部Peにかけて所定の厚さ(深さ)Tで形成した円筒状外周面12c’とを有し、且つ、微細パターンPの始端部Psと終端部Peとを円筒状外周面12c’上で回転軸12bの方向に沿って互に突き合わせるか又は僅かに間隔を隔て互に対向させるなどを含めて互に向かい合わせるように転写ロール12’を構成した際に、転写ロール12’の円筒状外周面12c’上で微細パターンPの始端部Ps側は、微細パターンPの高さを始端部Psから円筒状外周面12c’の回転方向に向かって所定の高さ(深さ)Tに徐々に到達するように増加させており、一方、微細パターンPの終端部Pe側は、所定の高さ(深さ)Tのままである。
【0047】
この際、第1変形例の転写ロール12’を作製する場合に、先に図3(a)を用いて説明したスタンパ用平板状原板20を用いたとき、転写ロール12’の円筒状外周面12c’をスタンパ用平板状原板20上で押し付け力を徐々に増加させれば上記した微細パターンPの始端部Ps側の形状が得られる。
【0048】
これにより、第1変形例の転写ロール12’の円筒状外周面12c’に形成した微細パターンPの始端部Psでは微細パターンPの高さが殆ど無くなり、この始端部Pと終端部Peとの繋ぎ目が目立たなくなるので、樹脂フィルムFに対して転写性能の良い転写ロール12’を提供できる。
【0049】
そして、この第1変形例の転写ロール12’を先に説明した実施例の転写ロール12に置換して転写装置10{図1(a)}内に設けた場合に、第1変形例の転写ロール12’によって樹脂フィルムF上に微細パターンPを転写ロール12’の円筒状外周面12c’の円周長Lのピッチで連続して転写させたときに、樹脂フィルムF上に転写された微細パターンPもこの始端部Ps側がフィルム移送方向に向かって所定の高さ(深さ)Tに徐々に到達するように増加されるので、微細パターンPの始端部Psと終端部Peとの繋ぎ目が目立たなくなり、第1変形例の転写ロール12’によって樹脂フィルムF上に転写された凹凸状の微細パターンPの転写品質を従来例よりも向上させるがことができる。
【0050】
次に、図6(a),(b)に示した如く、本発明に係る実施例の転写ロールを一部変形させた第2変形例の転写ロール12’’は、ロール本体12aと、ロール本体12aを回転させる軸12bと、ロール本体12aの外周に沿って設けられ且つ転写フィルムF上に転写するための微細パターンPを始端部Psから終端部Peにかけて所定の高さ(深さ)Tで形成した円筒状外周面12c’’とを有し、且つ、微細パターンPの始端部Psと終端部Peとを円筒状外周面12c’’上で回転軸12bの方向に沿って互に突き合わせる又は僅かに間隔を隔て互に対向させるなどを含めて互に向かい合わせるように転写ロール12’’を構成した際に、円筒状外周面12c’’上で微細パターンPの始端部Ps側は、微細パターンPの高さを始端部Psから円筒状外周面12c’’の回転方向に向かって所定の高さ(深さ)Tに徐々に到達するように増加させると共に、微細パターンPの終端部Pe側は、終端部Peに向かって所定の高さ(深さ)Tから徐々に高さを低減させている。
【0051】
この際、第2変形例の転写ロール12’’を作製する場合に、先に図3(a)を用いて説明したスタンパ用平板状原板20を用いたとき、転写ロール12’’の円筒状外周面12c’’をスタンパ用平板状原板20上で押し付け力を徐々に増加させれば上記した微細パターンPの始端部Ps側の形状が得られると共に、転写ロール12’’が1回転する直前に転写ロール12’’の円筒状外周面12c’’をスタンパ用平板状原板20上で押し付け力を徐々に低減させれば上記した微細パターンPの終端部Pe側の形状が得られる。
【0052】
これにより、第2変形例の転写ロール12’’の円筒状外周面12c’’に形成した微細パターンPの始端部Ps及び終端部Peでは微細パターンPの高さが殆ど無くなり、この始端部Psと終端部Peとの繋ぎ目がより一層目立たなくなるので、樹脂フィルムFに対して転写性能の良い転写ロール12’’を提供できる。
【0053】
そして、この第2変形例の転写ロール12’’を先に説明した実施例の転写ロール12に置換して転写装置10{図1(a)}内に設けた場合に、第2変形例の転写ロール12’によって樹脂フィルムF上に微細パターンPを転写ロール12’’の円筒状外周面12c’’の円周長Lのピッチで連続して転写させたときに、転写された微細パターンPもこの始端部Ps側がフィルム移送方向に向かって所定の高さ(深さ)Tに徐々に到達するように増加されると共に、終端部Peに向かって所定の高さ(深さ)Tから徐々に高さを低減させているので、微細パターンPの始端部Psと終端部Peとの繋ぎ目がより一層目立たなくなり、第2変形例の転写ロール12’’によって樹脂フィルムF上に転写された凹凸状の微細パターンPの転写品質を従来例よりも向上させるがことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a),(b)は本発明に係る実施例の転写装置を説明するために押圧ロール及び転写ロールの近傍を模式的に示した構成図,A部拡大図である。
【図2】本発明に係る実施例の転写ロールを模式的に示した斜視図である。
【図3】(a),(b)は本発明に係る実施例の転写ロールを作製する状態を示した斜視図,縦断面図である。
【図4】(a),(b)は本発明に係る実施例の転写ロールの円筒状外周面に形成した凹凸状の微細パターンを、樹脂フィルム上に転写した状態を模式的に示した平面図,A部拡大図である。
【図5】(a),(b)は本発明に係る実施例の転写ロールを一部変形させた第1変形例の転写ロールを模式的に示した側面図,B部拡大図である。
【図6】(a),(b)は本発明に係る実施例の転写ロールを一部変形させた第2変形例の転写ロールを模式的に示した側面図,C部拡大図である。
【図7】従来の転写装置を説明するために転写ロールの近傍を模式的に示した構成図である。
【図8】(a),(b)は従来の転写ロールの作製工程を模式的に示した斜視図である。
【図9】(a),(b)は従来の転写ロールの円筒状外周面に形成した凹凸状の微細パターンを樹脂フィルム上に転写した状態を示した平面図,A部拡大図である。
【符号の説明】
【0055】
10…実施例の転写装置、
11…押圧ロール、11a…ロール本体、11b…回転軸、11c…円筒状外周面、
12…実施例の押圧ロール、
12’…実施例を一部変形させた第1変形例の押圧ロール、
12’’…実施例を一部変形させた第2変形例の押圧ロール、
12a…ロール本体、12b…回転軸、
12c,12c’,12c’’…円筒状外周面、
13…ガイドロール、14…硬化部、
FJ…フッ素系樹脂材、G…ゴム材、
K…細パターンの始端部と終端部との間の僅かな区間、L…転写ロールの円周長、
P…凹凸状の微細パターン、
Ps…微細パターンの始端部、Pe…微細パターンの終端部、
T…凹凸状の微細パターンの所定の高さ(深さ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール本体と、前記ロール本体を回転させる軸と、前記ロール本体の外周に沿って設けられ且つ樹脂フィルム上に転写するための微細パターンを始端部から終端部にかけて形成した円筒状外周面とを有し、且つ、前記微細パターンの前記始端部と前記終端部とを前記円筒状外周面上で前記軸の方向に沿って互に向かい合わせるように成した転写ロールにおいて、
前記円筒状外周面上で前記微細パターンの前記始端部と前記終端部との間の僅かな区間に前記微細パターンを形成せずに、この僅かな区間を平滑な曲面又は凹曲面とすることを特徴とする転写ロール。
【請求項2】
ロール本体と、前記ロール本体を回転させる軸と、前記ロール本体の外周に沿って設けられ且つ樹脂フィルム上に転写するための微細パターンを始端部から終端部にかけて所定の厚さで形成した円筒状外周面とを有し、且つ、前記微細パターンの前記始端部と前記終端部とを前記円筒状外周面上で前記軸の方向に沿って互に向かい合わせるように成した転写ロールにおいて、
前記円筒状外周面上で前記微細パターンの高さを、前記始端部から前記円筒状外周面の回転方向に向かって徐々に前記所定の高さに到達するように増加させることを特徴とする転写ロール。
【請求項3】
ロール本体と、前記ロール本体を回転させる軸と、前記ロール本体の外周に沿って設けられ且つ樹脂フィルム上に転写するための微細パターンを始端部から終端部にかけて所定の厚さで形成した円筒状外周面とを有し、且つ、前記微細パターンの前記始端部と前記終端部とを前記円筒状外周面上で前記軸の方向に沿って互に向かい合わせるように成した転写ロールにおいて、
前記円筒状外周面上で前記微細パターンの高さを、前記始端部から前記円筒状外周面の回転方向に向かって前記所定の高さに徐々に到達するように増加させると共に、前記終端部に向かって前記所定の高さから徐々に高さを低減させることを特徴とする転写ロール。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の転写ロールを用いて、回転中の前記転写ロールの円筒状外周面に添接した前記樹脂フィルム上に前記微細パターンを前記円筒状外周面の円周長のピッチで連続して転写させることを特徴とする転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−5866(P2010−5866A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166388(P2008−166388)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】