説明

軸受装置監視システム

【課題】 装置を大型化せず、信号線の本数を低減することによりコストを低減するのに好適な軸受装置監視システムを提供する。
【解決手段】 運転状態監視装置20および中継装置30は、セレクト信号を伝達する信号線LC0,LC1と、軸受用センサ12からの検出信号を伝達する信号線LS0,LS1とで接続されている。中継装置30は、軸受用センサ12の検出用信号線を一端に接続しかつ信号線LS0,LS1を他端に接続した各軸受用センサ12に対応する複数のスイッチSW0〜SW7と、セレクト信号に基づいてスイッチSW0〜SW7を切り換えるセレクタ32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置の状態を監視するシステムに係り、特に、装置を大型化せず、信号線の本数を低減することによりコストを低減するのに好適な軸受装置監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転状態を監視する技術としては、車両の軸受装置の近傍に温度センサや振動センサ等の軸受用センサを取り付け、軸受用センサからの検出信号を運転状態監視装置に取り込み、運転状態監視装置において車両の運転状態を監視している。
図6は、従来の運転状態監視システムの構成を示す回路図である。
運転状態監視システムは、図6に示すように、軸受装置に設置された8つの振動センサA0〜A3および温度センサT0〜T3と、振動センサA0〜A3および温度センサT0〜T3からの検出信号に基づいて車両の運転状態を監視する運転状態監視装置20とを有して構成されている。
【0003】
運転状態監視装置20は、振動センサA0〜A3からの検出信号をそれぞれ検出する4つの抵抗素子RA0〜RA3と、温度センサT0〜T3からの検出信号をそれぞれ検出する4つの抵抗素子RT0〜RT3と、振動センサA0〜A3および温度センサT0〜T3を駆動するための電力を供給する電源VCとを有して構成されている。
各振動センサA0〜A3は、対応する抵抗素子RA0〜RA3および電源VCと信号線で接続され、各温度センサT0〜T3は、対応する抵抗素子RT0〜RT3および電源VCと信号線で接続されている。図6の例では、軸受用センサが8つあるので、信号線の数は16本となる。
【0004】
また、特許文献1には、信号線を使用せず、軸受用センサからの検出信号を無線で運転状態監視装置20に送信する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−217964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6の運転状態監視システムにあっては、軸受用センサの数に応じて、運転状態監視装置20とを結ぶ信号線の本数が増大し、コストの上昇を招くという問題があった。特に、運転状態監視装置20は、各軸受用センサから離れた場所に設置されるので、信号線の本数はできるだけ少ない方が望ましい。
また、特許文献1記載の発明にあっては、軸受用センサが無線で通信を行うため、軸受用センサ内に電源を設けなければならず、軸受用センサが大型化するという問題があった。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、装置を大型化せず、信号線の本数を低減することによりコストを低減するのに好適な軸受装置監視システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1記載の軸受装置監視システムは、軸受装置に設置された複数の軸受用センサからの検出信号に基づいて前記軸受装置の状態を監視する軸受装置監視システムであって、前記検出信号に基づいて前記軸受装置の状態を監視する監視装置と、前記複数の軸受用センサと前記監視装置との間に設置される中継装置とを備え、前記監視装置および前記中継装置を、セレクト信号を伝達する第1配線と、前記複数の軸受用センサのうちいずれか1つから得られる前記検出信号を伝達する第2配線とで接続し、前記中継装置は、前記セレクト信号に基づいて前記複数の軸受用センサのうちいずれか1つの検出用信号線を前記第2配線に接続するセンサ選択手段を有する。
【0007】
このような構成であれば、監視装置では、第1配線を介してセレクト信号が中継装置に出力される。
中継装置では、セレクト信号が入力されると、センサ選択手段により、入力されたセレクト信号に基づいて、複数の軸受用センサのうちいずれか1つの検出用信号線が第2配線に接続される。そして、選択された軸受用センサからの検出信号が第2配線を介して監視装置に出力される。
監視装置では、検出信号が入力されると、入力された検出信号に基づいて軸受装置の状態が監視される。
【0008】
さらに、本発明に係る請求項2記載の軸受装置監視システムは、請求項1記載の軸受装置監視システムにおいて、前記センサ選択手段は、前記軸受用センサの検出用信号線を一端に接続しかつ前記第2配線を他端に接続した前記各軸受用センサに対応する複数のスイッチと、前記セレクト信号に基づいて前記複数のスイッチのうちいずれか1つが導通状態となるように前記スイッチを切り換えるセレクタとからなる。
【0009】
このような構成であれば、中継装置では、セレクト信号が入力されると、セレクタにより、入力されたセレクト信号に基づいて複数のスイッチのうちいずれか1つが導通状態となるようにスイッチが切り換えられる。スイッチが導通状態となると、そのスイッチに接続される軸受用センサからの検出信号が第2配線を介して監視装置に出力される。
ここで、セレクタは、複数のスイッチのうちいずれか1つが導通状態となる切換結果が得られればよい。
【0010】
さらに、本発明に係る請求項3記載の軸受装置監視システムは、請求項1および2のいずれか1項に記載の軸受装置監視システムにおいて、前記監視装置は、前記軸受用センサを駆動するための電力を供給する電源を有し、前記監視装置および前記中継装置を、前記電源からの電力を伝達する第3配線で接続し、前記中継装置は、前記セレクト信号に基づいて前記複数の軸受用センサのうちいずれか1つの電力供給線を前記第3配線に接続する第2センサ選択手段を有する。
【0011】
このような構成であれば、監視装置では、セレクト信号が第1配線を介して、電源からの電力が第3配線を介して中継装置にそれぞれ出力される。
中継装置では、セレクト信号が入力されると、第2センサ選択手段により、入力されたセレクト信号に基づいて、複数の軸受用センサのうちいずれか1つの電力供給線が第3配線に接続される。そして、選択された軸受用センサに電源からの電力が第3配線を介して供給される。
【0012】
さらに、本発明に係る請求項4記載の軸受装置監視システムは、請求項3記載の軸受装置監視システムにおいて、前記第2センサ選択手段は、前記軸受用センサの電力供給線を一端に接続しかつ前記第2配線を他端に接続した前記各軸受用センサに対応する複数のスイッチと、前記セレクト信号に基づいて前記複数のスイッチのうちいずれか1つが導通状態となるように前記スイッチを切り換えるセレクタとからなる。
このような構成であれば、中継装置では、セレクト信号が入力されると、セレクタにより、入力されたセレクト信号に基づいて複数のスイッチのうちいずれか1つが導通状態となるようにスイッチが切り換えられる。スイッチが導通状態となると、そのスイッチに接続される軸受用センサに電源からの電力が第3配線を介して供給される。
【0013】
さらに、本発明に係る請求項5記載の軸受装置監視システムは、請求項2および4のいずれか1項に記載の軸受装置監視システムにおいて、前記セレクト信号は、デジタル信号からなり、前記セレクタは、前記複数のスイッチのうち前記セレクト信号のデジタル値により特定されるものが導通状態となるように前記スイッチを切り換える。
このような構成であれば、中継装置では、セレクト信号が入力されると、セレクタにより、複数のスイッチのうちセレクト信号のデジタル値により特定されるものが導通状態となるようにスイッチが切り換えられる。
【0014】
さらに、本発明に係る請求項6記載の軸受装置監視システムは、請求項2および4のいずれか1項に記載の軸受装置監視システムにおいて、前記セレクト信号は、アナログ信号からなり、前記セレクタは、前記セレクト信号の電圧値に応じて、前記複数のスイッチのうちいずれか1つが導通状態となるように前記スイッチを切り換える。
このような構成であれば、中継装置では、セレクト信号が入力されると、セレクタにより、入力されたセレクト信号の電圧値に応じて、複数のスイッチのうちいずれか1つが導通状態となるようにスイッチが切り換えられる。
【0015】
さらに、本発明に係る請求項7記載の軸受装置監視システムは、請求項2および4のいずれか1項に記載の軸受装置監視システムにおいて、前記セレクト信号は、シリアルデータ信号であり、前記セレクタは、前記複数のスイッチのうち前記シリアルデータにより特定されるものが導通状態となるように前記スイッチを切り換える。
このような構成であれば、中継装置では、セレクト信号が入力されると、セレクタにより、複数のスイッチのうちシリアルデータにより特定されるものが導通状態となるようにスイッチが切り換えられる。
【0016】
さらに、本発明に係る請求項8記載の軸受装置監視システムは、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の軸受装置監視システムにおいて、前記軸受用センサは、車両の前記軸受装置の近傍に取り付けられ、前記監視装置は、前記検出信号に基づいて前記車両の運転状態を監視する。
このような構成であれば、監視装置では、検出信号が入力されると、入力された検出信号に基づいて車両の運転状態が監視される。
さらに、本発明に係る請求項9記載の軸受装置監視システムは、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の軸受装置監視システムにおいて、前記軸受用センサは、複数のセンサを内蔵している。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る請求項1記載の軸受装置監視システムによれば、監視装置および中継装置を結ぶ信号線の本数を低減することができるので、コストを低減することができるという効果が得られる。また、軸受用センサ内に電源を設けなくてもよいので、軸受用センサが大型化することもないという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1および図3は、本発明に係る軸受装置監視システムの第1の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、本発明に係る軸受装置監視システムを、図1に示すように、鉄道車両100の運転状態を監視する場合について適用したものである。
まず、本発明を適用する運転状態監視システムの構成を説明する。
図1は、本発明に係る運転状態監視システムの構成を示すブロック図である。
鉄道車両100内には、図1に示すように、運転状態監視装置20および中継装置30が設置されている。また、車両100は、2つの台車(1台車は、2つの車軸と4個の車輪から構成される。)で支持されている。
【0019】
図2は、車両の1台車の構成を示している。
1台車は、図2に示すように、2つの車軸と4つの車輪10および4つの軸受装置14から構成されている。また、各軸受装置14には、軸受の運転状態を監視するための振動センサまたは温度センサである軸受用センサ12が1個ずつ取り付けられている。
なお、図2においては、各軸受装置14に取り付けられている振動センサと温度センサは別体となっているが、振動センサと温度センサを1つの筐体に内蔵させて一体としてもよい。
各軸受用センサ12(振動センサまたは温度センサ)は、中継装置30を介して運転状態監視装置20に接続されている。ここで、中継装置30は、各軸受センサ(振動センサA0〜A3および温度センサT0〜T3)の近傍に設置されるのに対し、運転状態監視装置20は、中継装置30から距離を置いて設置される。
【0020】
次に、運転状態監視装置20および中継装置30の構成を説明する。
図3は、本発明に係る運転状態監視システムの構成を示す回路図である。
運転状態監視システムは、図3に示すように、軸受用センサ12である8つの振動センサA0〜A3および温度センサT0〜T3と、運転状態監視装置20と、中継装置30とを有して構成されている。
【0021】
運転状態監視装置20は、振動センサA0〜A3からの検出信号を検出する抵抗素子RAと、温度センサT0〜T3からの検出信号を検出する抵抗素子RTと、セレクト信号を出力する切換制御装置22と、振動センサA0〜A3を駆動するための電力を供給する電源VC1(12[v])と、温度センサT0〜T3を駆動するための電力を供給する電源VC2(5[v])とを有して構成されている。
【0022】
中継装置30は、振動センサA0〜A3の検出用信号線を一端に接続した4つのスイッチSW0〜SW3と、温度センサT0〜T3の検出用信号線を一端に接続した4つのスイッチSW4〜SW7と、セレクト信号に基づいてスイッチSW0〜SW3およびSW4〜SW7を切り換えるセレクタ32とを有して構成されている。スイッチSW0〜SW7としては、例えば、メカニカルリレー、水銀リレー、フォトリレー、アナログスイッチおよびソリッドステートリレー等の半導体素子を使用することができる。また、振動センサA0〜A3は電流出力であるため、スイッチSW0〜SW3が導通状態のときの抵抗値が大きいと、電流ドライブ能力が不足し、振動に応じた電流値が出力できない場合が起こりうるため、スイッチSW0〜SW3としては、導通状態のときの抵抗値ができるだけ小さいものが好ましい。これには、機械接点式リレー、水銀リレーおよびフォトリレーが適しているが、寿命を考慮するとフォトリレーが好ましい。また、温度センサT0〜T3としてサーミスタを使用した場合は、サーミスタが温度により異なった抵抗値を示すため、抵抗素子RTでは、温度に応じた電圧値が得られる。この場合、スイッチSW4〜SW7が導通状態のときの抵抗値が大きいと、温度センサT0〜T3の信号電圧に誤差が生じるため、スイッチSW4〜SW7としては、導通状態のときの抵抗値ができるだけ小さいものが好ましい。これも振動センサA0〜A3と同様にフォトリレーが好ましい。
【0023】
切換制御装置22およびセレクタ32は、セレクト信号を伝達する2本の信号線LC0,LC1とグランド線LC2で接続されている。また、抵抗素子RAの一端およびスイッチSW0〜SW3の他端は、振動センサA0〜A3からの検出信号を伝達する信号線LS0で接続され、抵抗素子RTの一端およびスイッチSW4〜SW7の他端は、温度センサT0〜T3からの検出信号を伝達する信号線LS1で接続されている。また、電源VC1および各振動センサA0〜A3は、電力を伝達する電力供給線LP0で接続され、電源VC2および各温度センサT0〜T3は、電力を伝達する電力供給線LP1で接続されている。電力供給線LP0,LP1は、中継装置30を通じて配線される。
【0024】
切換制御装置22は、2値のデジタル信号からなるセレクト信号を出力する。
セレクタ32は、スイッチSW0,SW4、スイッチSW1,SW5、スイッチSW2,SW6およびスイッチSW3,SW7のうちセレクト信号のデジタル値により特定されるいずれか1つの組を導通状態に切り換え、他のスイッチを非導通状態に切り換える。デジタル値が「00」の場合は、スイッチSW0,SW4を導通状態に切り換えることにより振動センサA0および温度センサT0が運転状態監視装置20に接続される。同様に、「01」の場合は振動センサA1および温度センサT1が、「10」の場合は振動センサA2および温度センサT2が、「11」の場合は振動センサA3および温度センサT3が運転状態監視装置20にそれぞれ接続される。図3の例では、振動センサと温度センサを(A0,T0)、(A1,T1)、(A2,T2)、(A3,T3)の組み合わせで4通りとして切り換えているため、セレクト信号を伝達する電線は、信号線2本とグランド線1本の合計3本ですむ。これに対し、検出信号を伝達する信号線は、軸受用センサ12の数にかかわらず2本ですむ。
【0025】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
運転状態監視装置20では、電源VC1,VC2の電力が電力供給線LP0,LP1を介して中継装置30に出力される。そして、各振動センサA0〜A3および各温度センサT0〜T3には、中継装置30を介して電力が供給される。これにより、各振動センサA0〜A3および各温度センサT0〜T3が駆動し、軸受装置14の振動および温度が検出可能となる。
【0026】
運転状態監視装置20では、切換制御装置22により、信号線LC0,LC1を介してセレクト信号が中継装置30に出力される。
中継装置30では、セレクト信号が入力されると、セレクタ32により、入力されたセレクト信号に基づいてスイッチSW0〜SW7が切り換えられる。例えば、スイッチSW0,SW4が導通状態となると、振動センサA0および温度センサT0からの検出信号が信号線LS0,LS1を介して運転状態監視装置20に出力される。(このとき、スイッチSW0,SW4以外のスイッチはOFFとなっている。)
運転状態監視装置20では、検出信号が入力されると、入力された検出信号が抵抗素子RA,RTにより電圧値に変換され、得られた電圧値に基づいて鉄道車両100の運転状態が監視される。
【0027】
このようにして、本実施の形態では、運転状態監視装置20および中継装置30を、セレクト信号を伝達する信号線LC0,LC1と、軸受用センサ12からの検出信号を伝達する信号線LS0,LS1とで接続し、中継装置30は、軸受用センサ12の検出用信号線を一端に接続しかつ信号線LS0,LS1を他端に接続した各軸受用センサ12に対応する複数のスイッチSW0〜SW7と、セレクト信号に基づいてスイッチSW0〜SW7を切り換えるセレクタ32とを備える。
【0028】
これにより、運転状態監視装置20および中継装置30を結ぶ信号線の本数を低減することができるので、コストを低減することができる。また、軸受用センサ12内に電源を設けなくてもよいので、軸受用センサ12が大型化することもない。
上記第1の実施の形態において、運転状態監視装置20は、請求項1または8記載の監視装置に対応し、信号線LC0,LC1は、請求項1記載の第1配線に対応し、信号線LS0,LS1は、請求項1または2記載の第2配線に対応し、スイッチSW0〜SW7およびセレクタ32は、請求項1または2記載のセンサ選択手段に対応している。
【0029】
次に、本発明の第2の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図4は、本発明に係る軸受装置監視システムの第2の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、本発明に係る軸受装置監視システムを、鉄道車両100の運転状態を監視する場合について適用したものであり、上記第1の実施の形態と異なるのは、セレクト信号としてアナログ信号を使用し、電力供給線LP0,LP1上にもスイッチを設けた点にある。なお、以下、上記第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
次に、運転状態監視装置20および中継装置30の構成を説明する。
図4は、本発明に係る運転状態監視システムの構成を示す回路図である。
運転状態監視装置20は、図4に示すように、切換制御装置22に代えて切換制御装置24を有して構成されている。
中継装置30は、振動センサA0〜A3の電力供給線を一端に接続した4つのスイッチSW8〜SW11と、温度センサT0〜T3の電力供給線を一端に接続した4つのスイッチSW12〜SW15とを有して構成されている。また、セレクタ32に代えて、アナログのセレクト信号に基づいてスイッチSW0〜SW15を切り換えるセレクタ34を有して構成されている。
【0031】
切換制御装置24およびセレクタ34は、セレクト信号を伝達する信号線LC3とグランド線LC4で接続されている。また、電源VC1およびスイッチSW8〜SW11の他端は電力供給線LP0で接続され、電源VC2およびスイッチSW12〜SW15の他端は電力供給線LP1で接続されている。
切換制御装置24は、アナログ信号からなるセレクト信号を出力する。
【0032】
セレクタ34は、セレクト信号の電圧値に応じて、スイッチSW0,SW4,SW8,SW12、スイッチSW1,SW5,SW9,SW13、スイッチSW2,SW6,SW10,SW14およびスイッチSW3,SW7,SW11,SW15のうちいずれか1つの組を導通状態に切り換え、他のスイッチを非導通状態に切り換える。切換制御装置24が1[v]、2[v]、3[v]、4[v]のいずれかの電圧値をとるセレクト信号を出力する場合において、セレクト信号の電圧値が1[v]のときは、SW0,SW4,SW8,SW12を導通状態に切り換えることにより振動センサA0および温度センサT0が運転状態監視装置20に接続される。同様に、2[v]の場合は振動センサA1および温度センサT1が、3[v]の場合は振動センサA2および温度センサT2が、4[v]の場合は振動センサA3および温度センサT3が運転状態監視装置20にそれぞれ接続される。図4の例では、軸受用センサ12が8つあるが、セレクト信号および検出信号を伝達する信号線は、軸受用センサ12の数にかかわらず4本(信号線LC3,LS0,LS1とグランド線LC4)ですむ。
【0033】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
運転状態監視装置20では、切換制御装置34により、信号線LC3を介してセレクト信号が、電力供給線LP0,LP1を介して電源VC1,VC2の電力が中継装置30にそれぞれ出力される。
中継装置30では、セレクト信号が入力されると、セレクタ34により、入力されたセレクト信号に基づいてスイッチSW0〜SW15が切り換えられる。例えば、スイッチSW0,SW4,SW8,SW12が導通状態となると、振動センサA0および温度センサT0には、電源VC1,VC2の電力が供給される。これにより、振動センサA0および温度センサT0が駆動し、軸受装置14の振動および温度が検出可能となる。また、振動センサA0および温度センサT0からの検出信号が信号線LS0,LS1を介して運転状態監視装置20に出力される。
【0034】
運転状態監視装置20では、検出信号が入力されると、入力された検出信号が抵抗素子RA,RTにより電圧値に変換され、得られた電圧値に基づいて鉄道車両100の運転状態が監視される。
このようにして、本実施の形態では、運転状態監視装置20および中継装置30を、セレクト信号を伝達する信号線LC3,LC4と、電源VC1,VC2の電力を伝達する電力供給線LP0,LP1とで接続し、中継装置30は、軸受用センサ12の電力供給線を一端に接続しかつ振動センサや温度センサへの信号線を他端に接続した各軸受用センサ12に対応する複数のスイッチSW8〜SW15と、セレクト信号に基づいてスイッチSW0〜SW15を切り換えるセレクタ34とを備える。
【0035】
これにより、軸受用センサ12と中継装置30の間が数m程度の長さとなっても、この線間において、測定対象以外の軸受用センサ12からのノイズによる影響を低減することができる。
さらに、本実施の形態では、セレクト信号の電圧値に応じてスイッチSW0〜SW15を切り換えるようになっている。
これにより、上記第1の実施の形態に比して、セレクト信号を伝達する信号線の本数を低減することができる。
【0036】
上記第2の実施の形態において、運転状態監視装置20は、請求項1、3または8記載の監視装置に対応し、信号線LC3およびグランド線LC4は、請求項1記載の第1配線に対応し、信号線LS0,LS1は、請求項1、2または4記載の第2配線に対応し、電力供給線LP0,LP1は、請求項3記載の第3配線に対応している。また、スイッチSW0〜SW7およびセレクタ34は、請求項1または2記載のセンサ選択手段に対応し、スイッチSW8〜SW15およびセレクタ34は、請求項3または4記載の第2センサ選択手段に対応している。
【0037】
次に、本発明の第3の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図5は、本発明に係る軸受装置監視システムの第3の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、本発明に係る軸受装置監視システムを、鉄道車両100の運転状態を監視する場合について適用したものであり、上記第1の実施の形態と異なるのは、セレクト信号としてシリアルデータ信号を使用した点にある。なお、以下、上記第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
次に、運転状態監視装置20および中継装置30の構成を説明する。
図5は、本発明に係る運転状態監視システムの構成を示す回路図である。
運転状態監視装置20は、図5に示すように、切換制御装置22に代えて切換制御装置26を有し、中継装置30は、セレクタ32に代えてセレクタ36を有して構成されている。
切換制御装置26およびセレクタ36は、セレクト信号を伝達する信号線LC5で接続されている。また、必要に応じて信号線LC6で接続される。信号線LC6は、セレクタ36にCPU等を搭載したり、中継装置30にデータ送信機能を付加したりする場合に必要となる。
振動センサA0〜A3および温度センサT0〜T3は、電流ではなく電圧となっていて、電源VC1が共通となっている。
切換制御装置26は、RS-232C形式等のシリアルデータ信号からなるセレクト信号を出力する。
【0039】
セレクタ36は、スイッチSW0,SW4、スイッチSW1,SW5、スイッチSW2,SW6およびスイッチSW3,SW7のうちシリアルデータにより特定されるいずれか1つの組を導通状態に切り換え、他のスイッチを非導通状態に切り換える。例えば、シリアルデータが「00」の場合は、スイッチSW0,SW4を導通状態に切り換えることにより振動センサA0および温度センサT0が運転状態監視装置20に接続される。同様に、「01」の場合は振動センサA1および温度センサT1が、「10」の場合は振動センサA2および温度センサT2が、「11」の場合は振動センサA3および温度センサT3が運転状態監視装置20にそれぞれ接続される。図5の例では、軸受用センサ12が8つあるが、セレクト信号および検出信号を伝達する信号線は、軸受用センサ12の数よりも少なく、LC5,LS0,LS1の3本ですむ。
【0040】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
運転状態監視装置20では、電源VC1の電力が電力供給線LP0,LP1を介して中継装置30に出力される。そして、各振動センサA0〜A3および各温度センサT0〜T3には、中継装置30を介して電力が供給される。これにより、各振動センサA0〜A3および各温度センサT0〜T3が駆動し、軸受装置14の振動および温度が検出可能となる。
【0041】
運転状態監視装置20では、切換制御装置26により、信号線LC5を介してシリアルデータが中継装置30に出力される。
中継装置30では、シリアルデータが入力されると、セレクタ36により、入力されたシリアルデータに基づいてスイッチSW0〜SW7が切り換えられる。例えば、スイッチSW0,SW4が導通状態となると、振動センサA0および温度センサT0からの検出信号が信号線LS0,LS1を介して運転状態監視装置20に出力される。
【0042】
運転状態監視装置20では、検出信号が入力されると、入力された検出信号が抵抗素子RA,RTにより電圧値に変換され、得られた電圧値に基づいて鉄道車両100の運転状態が監視される。
このようにして、本実施の形態では、シリアルデータに基づいてスイッチSW0〜SW7を切り換えるようになっている。
これにより、上記第1の実施の形態に比して、セレクト信号を伝達する信号線の本数を低減することができる。
【0043】
上記第3の実施の形態において、運転状態監視装置20は、請求項1または8記載の監視装置に対応し、信号線LC5は、請求項1記載の第1配線に対応し、信号線LS0,LS1は、請求項1または2記載の第2配線に対応し、スイッチSW0〜SW7およびセレクタ36は、請求項1または2記載のセンサ選択手段に対応している。
なお、上記第1の実施の形態においては、セレクト信号としてデジタル信号を使用したが、これに限らず、セレクト信号としてアナログ信号またはシリアルデータ信号を使用することもできる。この場合、切換制御装置22およびセレクタ32に代えて、切換制御装置24およびセレクタ34、または切換制御装置26およびセレクタ36を設ければよい。このことは、上記第2および第3の実施の形態の説明に示す通りである。
【0044】
また、上記第1および第3の実施の形態において、電源VC1,VC2の接続についてはスイッチングを行わなかったが、これに限らず、上記第2の実施の形態のように、電力供給線LP0,LP1上にスイッチを設け、電源VC1,VC2の接続についてスイッチングを行うように構成することもできる。
また、上記第1および第3の実施の形態においては、軸受用センサ12として電流出力のセンサを使用したが、これに限らず、上記第2の実施の形態のように、軸受用センサ12として電圧出力のセンサを使用することもできる。
【0045】
また、上記第2の実施の形態においては、軸受用センサ12として電圧出力のセンサを使用したが、これに限らず、上記第1または第3の実施の形態のように、軸受用センサ12として電流出力のセンサを使用することもできる。また、速度センサ等を含んでもよい。
また、上記第1ないし第3の実施の形態においては、本発明に係る軸受装置監視システムを、鉄道車両100の運転状態を監視する場合について適用したが、これに限らず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で他の場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る運転状態監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】車両の1台車の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る運転状態監視システムの構成を示す回路図である。
【図4】本発明に係る運転状態監視システムの構成を示す回路図である。
【図5】本発明に係る運転状態監視システムの構成を示す回路図である。
【図6】従来の運転状態監視システムの構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0047】
10 車輪
12 軸受用センサ
A0〜A3 振動センサ
T1〜T3 温度センサ
SW0〜SW15 スイッチ
LC0〜LC6,LS0,LS1 信号線
LP0,LP1 電力供給線
14 軸受装置
20 運転状態監視装置
22,24,26 切換制御装置
30 中継装置
32,34,36 セレクタ
100 鉄道車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受装置に設置された複数の軸受用センサからの検出信号に基づいて前記軸受装置の状態を監視する軸受装置監視システムであって、
前記検出信号に基づいて前記軸受装置の状態を監視する監視装置と、前記複数の軸受用センサと前記監視装置との間に設置される中継装置とを備え、
前記監視装置および前記中継装置を、セレクト信号を伝達する第1配線と、前記複数の軸受用センサのうちいずれか1つから得られる前記検出信号を伝達する第2配線とで接続し、
前記中継装置は、前記セレクト信号に基づいて前記複数の軸受用センサのうちいずれか1つの検出用信号線を前記第2配線に接続するセンサ選択手段を有することを特徴とする軸受装置監視システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記センサ選択手段は、前記軸受用センサの検出用信号線を一端に接続しかつ前記第2配線を他端に接続した前記各軸受用センサに対応する複数のスイッチと、前記セレクト信号に基づいて前記複数のスイッチのうちいずれか1つが導通状態となるように前記スイッチを切り換えるセレクタとからなることを特徴とする軸受装置監視システム。
【請求項3】
請求項1および2のいずれか1項において、
前記監視装置は、前記軸受用センサを駆動するための電力を供給する電源を有し、
前記監視装置および前記中継装置を、前記電源からの電力を伝達する第3配線で接続し、
前記中継装置は、前記セレクト信号に基づいて前記複数の軸受用センサのうちいずれか1つの電力供給線を前記第3配線に接続する第2センサ選択手段を有することを特徴とする軸受装置監視システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記第2センサ選択手段は、前記軸受用センサの電力供給線を一端に接続しかつ前記第2配線を他端に接続した前記各軸受用センサに対応する複数のスイッチと、前記セレクト信号に基づいて前記複数のスイッチのうちいずれか1つが導通状態となるように前記スイッチを切り換えるセレクタとからなることを特徴とする軸受装置監視システム。
【請求項5】
請求項2および4のいずれか1項において、
前記セレクト信号は、デジタル信号からなり、
前記セレクタは、前記複数のスイッチのうち前記セレクト信号のデジタル値により特定されるものが導通状態となるように前記スイッチを切り換えることを特徴とする軸受装置監視システム。
【請求項6】
請求項2および4のいずれか1項において、
前記セレクト信号は、アナログ信号からなり、
前記セレクタは、前記セレクト信号の電圧値に応じて、前記複数のスイッチのうちいずれか1つが導通状態となるように前記スイッチを切り換えることを特徴とする軸受装置監視システム。
【請求項7】
請求項2および4のいずれか1項において、
前記セレクト信号は、シリアルデータ信号であり、
前記セレクタは、前記複数のスイッチのうち前記シリアルデータにより特定されるものが導通状態となるように前記スイッチを切り換えることを特徴とする軸受装置監視システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項において、
前記軸受用センサは、車両の前記軸受装置の近傍に取り付けられ、
前記監視装置は、前記検出信号に基づいて前記車両の運転状態を監視することを特徴とする軸受装置監視システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項において、
前記軸受用センサは、複数のセンサを内蔵していることを特徴とする軸受装置監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−338519(P2006−338519A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164293(P2005−164293)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】