説明

農作業機の制御装置

【課題】LAN又はCAN通信環境を複数のコントローラに適用した農作業機の制御装置において、従来よりも更に好適な制御構造を構築する。
【解決手段】本願発明の制御手段150は、各入力系機器からの入力制御に特化した入力専用コントローラ151aと、各出力系機器への出力制御に特化した出力専用コントローラ151bと、プログラム処理に特化した制御専用コントローラ151cと、各コントローラ間を接続するCAN通信バス152とを有する。各入力系機器からの入力情報は、入力専用コントローラ151aを介して制御専用コントローラ151cに伝送され、前記入力情報に基づき制御専用コントローラ151cにて得られた出力情報が、制御専用コントローラ151cから出力専用コントローラ151bを介して各出力系機器に伝送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンバインや田植機、トラクタといった農作業機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、農作業機においては、制御目標となる制御量の信号を制御手段に伝えたり制御対象の作動量を検出したりするための入力系機器(例えばセンサや設定器等)と、入力系機器からの信号に応じて制御対象を駆動させるための出力系機器(例えば各種アクチュエータ等)とを備えている。これら入出力系機器は通常、マイクロコンピュータ等のコントローラにて制御されている。
【0003】
入出力系機器の種類や数が多い場合において1つのコントローラにて制御すれば、一時に処理可能な能力に限界がある。この点、制御処理に優先順位を設定すると、並列的な処理が行えないという不都合があった。かといって、複数のコントローラにて独立的且つ並列的に制御すると、関連すべき入出力系機器間において制御の連係が図れないという不都合があった。
【0004】
近年、前述の不都合を解消するためにLAN通信プロトコルを採用して、かかるLAN通信環境を農作業機のコントローラ群に適用することが行われている。また、LAN通信環境の新しい発展として、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)通信プロトコルによるデータ通信も提案されている。これは、差動型2線式のCAN通信バスにて分散型リアルタイム制御及び多重化を実現したシリアル通信のプロトコルである。
【0005】
LAN又はCAN通信環境を複数のコントローラに適用した農作業機では、各コントローラ間をつなぐLAN又はCAN通信バスを介して、各コントローラ間で制御情報を互いに転送し合って各出力系機器を制御するように構成されている(例えば特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2002−101109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1のコンバインでは、入出力系機器の種類や数が多くて、これらと各コントローラとをつなぐハーネスの数も必然的に多くなっているが、各入出力系機器をどのコントローラに接続するかは、ハーネスの長さがなるべく短くなるように、コントローラまでの距離だけで決められている。
【0007】
例えばあるコントローラが主として排出オーガの作動を制御する役割を担っているとしても、当該コントローラには、これと比較的近い箇所にはあるものの、排出オーガとの関連性の薄い入出力系機器(刈取昇降レバーや扱深さ自動制御スイッチランプ等)が多く接続されている。すなわち、各コントローラには、制御上の関連性の薄い入出力系機器を接続していることが多いのである。このため、どのコントローラにどの入出力系機器を接続すればよいのか把握し難く、コンバイン製造の際に作業性があまりよくないという問題があった。
【0008】
また、前述のコントローラは全て標準化・共用化されており、当該全てのコントローラは、高度の演算処理機能を有するCPUを搭載すると共に、各出力系機器を作動制御するためのアプリケーション制御プログラム、入出力系機器間で制御情報をやり取りするための入出力用制御プログラム、及び、LAN又はCAN通信に必要な通信制御プログラムをそれぞれ備えている。かかるコントローラの標準化・共用化は、場合によっては不要な機能を各コントローラに持たせることになるため、重複する機能を全てのコントローラに備えることによるコストアップの問題も少なからずあった。
【0009】
そこで、本願発明は、以上の問題点を解消して、より好適な制御構造を構築した農作業機の制御装置を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この技術的課題を達成するため、請求項1の発明は、走行機体に搭載された複数の入力系機器及び出力系機器と、前記各入力系機器からの入力情報に基づいて前記各出力系機器を制御する制御手段とを備えている農作業機の制御装置であって、前記制御手段は、前記各入力系機器からの入力制御に特化した入力専用コントローラと、前記各出力系機器への出力制御に特化した出力専用コントローラと、プログラム処理に特化した制御専用コントローラと、前記各コントローラ間を接続する通信バスとを有しており、前記各入力系機器からの入力情報が、前記入力専用コントローラを介して前記制御専用コントローラに伝送され、前記入力情報に基づき前記制御専用コントローラにて得られた出力情報が、前記制御専用コントローラから前記出力専用コントローラを介して前記各出力系機器に伝送されるように構成されているというものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載した農作業機の制御装置において、前記各コントローラ間の通信プロトコルはCAN通信プロトコルであるというものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した農作業機としてのコンバインの制御装置において、前記走行機体には、穀粒を貯留するためのグレンタンクと、前記グレンタンク内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガとが搭載されており、前記排出オーガは、前記走行機体に縦軸線回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に起伏回動可能に設けられた横筒とを備えており、前記縦筒の旋回角度を検出する旋回角検出手段と、前記横筒の上下傾斜角度を検出する上下傾斜角検出手段と、前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段とが、前記入力系機器として前記入力専用コントローラに接続されており、前記縦筒を旋回させる旋回用アクチュエータに対する旋回駆動制御部と、前記横筒を起伏揺動させる起伏用アクチュエータに対する起伏駆動制御部とが、前記出力系機器として前記出力専用コントローラに接続されているというものである。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によると、制御手段は、各入力系機器からの入力制御に特化した入力専用コントローラと、各出力系機器への出力制御に特化した出力専用コントローラと、プログラム処理に特化した制御専用コントローラと、前記各コントローラ間を接続する通信バスとを有しているから、前記各コントローラに種々の入出力系機器を接続する必要がない。すなわち、前記各入力系機器はまとめて前記入力専用コントローラに接続すればよいし、前記各出力系機器はまとめて前記出力専用コントローラに接続すればよい。従って、どのコントローラにどの入出力系機器を接続すればよいのか簡単に把握できることになり、農作業機の製造に際して、接続作業の効率化が図れるという効果を奏する。
【0014】
また、前記各入力系機器からの入力情報が、前記入力専用コントローラを介して前記制御専用コントローラに伝送され、前記入力情報に基づき前記制御専用コントローラにて得られた出力情報が、前記制御専用コントローラから前記出力専用コントローラを介して前記各出力系機器に伝送されるように構成されているから、前記入力専用及び出力専用コントローラは、高度な演算機能が必要な制御プログラムを実行する必要がない。このため、前記制御専用コントローラに比べて安価に製造できる。また、前記制御専用コントローラも、入出力系機器を接続するための構成(入出力インターフェイス)が要らないので、従来のCANコントローラに比べて安価に製造できる。従って、製造コストの抑制に寄与できるという効果も奏する。
【0015】
更に、前記各入力系機器からの入力情報及び前記各出力系機器出力情報は必ず前記通信バスを介して伝送されるので、入出力系機器の故障診断(トラブルシューティング)や状況確認(モニタリング)が簡単に行えるという利点もある。
【0016】
特に請求項2の発明によると、前記各コントローラ間の通信プロトコルはCAN通信プロトコルであるから、1つのコントローラで全ての制御を実行する場合や、LAN通信プロトコルによるデータ通信の場合よりも、前記各コントローラ間での制御データのやりとりが円滑で、且つ、その間の通信エラー検出及びエラー処理に優れているという効果を奏するのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図9)に基づいて説明する。図1はコンバインの側面図、図2はコンバインの平面図、図3は動力伝達系統のスケルトン図、図4は排出オーガの要部側面図、図5は遠隔操作送信器の概略説明図、図6は排出オーガの旋回説明図、図7は制御装置全体の機能ブロック図、図8は入力専用コントローラの機能ブロック図、図9は出力専用コントローラの機能ブロック図である。
【0018】
(1).コンバインの概略構造
まず、図1及び図2を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。
【0019】
実施形態における6条刈り用のコンバインは、走行装置としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。前記走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。
【0020】
また、前記走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留するグレンタンク7とが横並び状に搭載されている。実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、グレンタンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。前記走行機体1の後部には、排出オーガ8が水平方向に旋回可能に設けられ、グレンタンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台又はコンテナ等に排出されるように構成されている。
【0021】
前記刈取装置3の右側方で、グレンタンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられており、運転キャビン10内に操縦ハンドル11及び運転座席12を配置している。また、図2に示すように、運転キャビン10内における操縦ハンドル11の右側方には、排出オーガ8を作動操作するオーガ操作手段の一例として、有線式の遠隔操作送信器13が配置されている(詳細は後述する)。前記運転座席12の下方には、動力源としてのエンジン14が配置されている。なお、詳細な説明は省略するが、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップと、操縦ハンドルを支持するハンドルコラムとが配置されている。運転座席12の左側方のレバーコラムには、主変速レバー、副変速レバー、脱穀クラッチレバー及び刈取クラッチレバーが配置されている。
【0022】
図1に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、前記走行クローラ2にエンジン14の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持することになる。
【0023】
前記刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。エンジン14にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取ることになる。
【0024】
図1及び図2に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とを備えている。なお、扱胴226の回転軸芯線はフィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀されることになる。
【0025】
揺動選別盤227の下方側には、当該揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0026】
また、前記揺動選別盤227は、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、フィードパン238及びチャフシーブ239によって搖動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤227から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下することになる。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5におけるグレンタンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介してグレンタンク7に搬入され、グレンタンク7に収集されることになる。なお、グレンタンク7の後面の傾斜に沿わせて、揚穀コンベヤ233の上端側が後方に傾斜する後傾姿勢で、グレンタンク7の後方に揚穀コンベヤ233が立設されている。
【0027】
また、揺動選別盤227は、搖動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する選別ファン241を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下することになる。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5におけるグレンタンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀コンベヤ233と交差して前後方向に延びる還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の上面側に連通接続され、二番物をフィードパン238の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0028】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出されることになる。
【0029】
(2).コンバインの動力伝達系統
次に、図3を参照しながら、コンバインの動力伝達系統(刈取装置3、脱穀装置5及びフィードチェン6等の駆動構造)について説明する。
【0030】
前記エンジン14の前側の出力軸70に自在継手を介してミッションケース71の入力軸を連結し、エンジン14の回転駆動力が、前側の出力軸70からミッションケース71に伝達されて変速された後、左右の車軸72を介して左右の走行クローラ2に伝達され、左右の走行クローラ2がエンジン14からの回転駆動力によって駆動されるように構成している。
【0031】
図3に示されるように、エンジン14を冷却するためのラジエータ用の冷却ファン73を備える。また、エンジン14の後側の出力軸70に排出オーガ駆動軸76を連結し、エンジン14からの回転駆動力によって排出オーガ駆動軸76を介して排出オーガ8が駆動され、グレンタンク7内の穀粒がコンテナ等に排出されるように構成している。前記排出オーガ駆動軸76と前記出力軸70とを連結するベルト76bには、前記出力軸70から排出オーガ駆動軸76への動力伝達をON・OFF操作するための排出クラッチ76cが設けられている。
【0032】
より詳細に述べると、エンジン14から排出オーガ8に向かう動力は、排出クラッチ76c及び排出オーガ駆動軸76を介して、グレンタンク7内の底コンベヤ130及び排出オーガ8における縦筒31内の縦コンベヤ131に動力伝達され、次いで、受継スクリュー132を介して、排出オーガ8における横筒33内の排出コンベヤ133に動力伝達される。
【0033】
また、扱胴226及び処理胴230にエンジン14からの回転駆動力を伝える脱穀駆動軸77が、後述するカウンタギヤケース89に配置されている。エンジン14の後側の出力軸70には、テンションローラ型脱穀クラッチ78及び脱穀駆動ベルト79を介して、脱穀駆動軸77が連結される。また、脱穀駆動軸77には、扱胴226を軸支した扱胴軸80と、処理胴230を軸支した処理胴軸81とが連結される。エンジン14からの回転駆動力(一定回転力)によって、扱胴226及び処理胴230が略一定速度で駆動されるように構成している。また、脱穀駆動軸77に選別入力軸82が連結されている。エンジン14からの回転駆動力(一定回転力)によって、選別入力軸82を介して、揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232、選別ファン241及び排塵ファン230が、略一定速度で駆動されるように構成している。
【0034】
一方、ミッションケース71の左側面から外側方に向けて、左右の走行クローラ2を駆動するための無段変速出力軸87の一端側を突出する。その無段変速出力軸87の突出端側に、刈取装置3に回転力を伝達する刈取駆動プーリ88を配置する。
【0035】
また、エンジン14の左側方で脱穀装置5の前側の走行機体1の上面側にカウンタギヤケース89を設置する。カウンタギヤケース89には、脱穀駆動軸77と、選別入力軸84と、定速回転軸98とを配置する。カウンタギヤケース89の前後方向に脱穀駆動軸77を貫通させ、カウンタギヤケース89の後面側に突出した脱穀駆動軸77の後端側に入力プーリ92を設け、カウンタギヤケース89の前面側に突出した脱穀駆動軸77の前端側に脱穀プーリ94を設けている。扱胴226を軸支した扱胴軸80と、処理胴230を軸支した処理胴軸81とに、Vベルト93を介して脱穀プーリ94が連結され、エンジン14からの回転駆動力(一定回転力)によって、扱胴226及び処理胴230が略一定速度で駆動されることになる。
【0036】
上述した脱穀駆動軸77にベベルギヤ機構83を介して選別入力軸84を連結し、選別入力軸84に平ギヤ機構85を介して定速回転軸98を連結する。カウンタギヤケース89の外側面に突出した選別入力軸84の他端側に選別プーリ96を設ける。揺動選別盤227及び唐箕ファン228等の脱穀選別機構90の選別駆動軸91に、Vベルト95を介して選別入力軸82が連結されている。エンジン14からの回転駆動力(一定回転力)によって、選別駆動軸91を介して、揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232、選別ファン241、排塵ファン230が、略一定速度で駆動されることになる。
【0037】
図3に示すように、カウンタギヤケース89には、同調入力軸97と、定速回転軸98と、刈取駆動軸99と、搬送駆動軸118とが配置されている。カウンタギヤケース89の右側外面に突出した同調入力軸97に車速同調プーリ100が配置されている。上述した刈取駆動プーリ88にVベルト101を介して車速同調プーリ100が連結されている。ミッションケース22の無段変速出力軸87から車速同調駆動力がカウンタギヤケース89の同調入力軸97に入力されることになる。
【0038】
また、同調入力軸97に、一方向クラッチ102及び刈取変速機構103を介して変速回転軸98を連結している。前記刈取変速機構103は、低速又は中立又は高速に刈取変速を切換えることによって、ミッションケース22の無段変速出力軸87からの車速同調駆動力によって、刈取装置3が駆動されることになる。すなわち、コンバインの移動速度(車速)と、刈取装置3の駆動速度とが同調し、例えばコンバインの移動速度を増速することによって、刈取装置3の駆動速度も増速される一方、コンバインの移動速度を減速することによって、刈取装置3の駆動速度も減速されることになる。なお、同調入力軸97からの回転力が一方向クラッチ102及び刈取変速機構103を介して変速回転軸98に伝達される。変速回転軸98からの回転力は同調入力軸97に伝達されない。
【0039】
一方、前記定速回転軸98に、無段変速機構124を介して搬送駆動軸118が連結され、搬送駆動軸118にて、前記フィードチェン6を駆動するように構成している。図3に示すように、上述した定速回転軸98には、設定トルク以下の回転力を伝えるためのトルクリミッタ109を介して、刈取駆動軸99を連結している。カウンタギヤケース89の左側外面に突出した刈取駆動軸99に刈取プーリ110が配置されている。刈取駆動軸99の刈取駆動力が、刈取プーリ110からVベルト111を介して刈取装置3の各部に伝達されることになる。
【0040】
(3).排出オーガの詳細構造
次に、図4を参照しながら、排出オーガ8の詳細構造について説明する。
【0041】
グレンタンク7内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガ8は、走行機体1の後部に縦軸線Y回りに旋回可能に立設された縦筒31と、縦筒31の上端に連設された受継ケース32と、受継ケース32の継手部箇所に起伏揺動可能に連結された横筒33とにより構成されている。縦筒31には縦コンベヤ131が内蔵され、横筒33には排出コンベヤ133が内蔵されている。受継ケース32内には、縦コンベヤ131から排出コンベヤ133への穀粒の受け渡しをする受継スクリュー132が設けられている(図3参照)。
【0042】
縦筒31は、その長手中途部の外周側に配置された縦筒用ギヤ機構34と、旋回用アクチュエータとしてのオーガ旋回電動モータ35とにより、縦軸線Y回りに旋回(水平旋回)するように構成されている。この場合、縦筒31の上端に位置する受継ケース32及び横筒33も縦筒31と共に水平旋回することになる。実施形態の縦筒用ギヤ機構34は、オーガ旋回電動モータ35の回転軸に取り付けられた駆動ギヤ36と、縦筒31の外周に固着された従動ギヤ37とからなっており、駆動ギヤ36を従動ギヤ37に噛み合わせて、オーガ旋回電動モータ35の動力を縦筒31に伝達する構成になっている。
【0043】
オーガ旋回電動モータ35には、減速用ギヤボックス38と、旋回角検出手段としての旋回角センサ39(図4及び図9参照)とを備えている。旋回角センサ39は、縦筒31の旋回角度ひいては横筒33の旋回位置を検出するためのものであり、オーガ旋回電動モータ35の回転軸に関連させて設けられている。なお、減速用ギヤボックス38内には、縦筒31の旋回を停止させるための電磁ブレーキ(図示省略)を有している。
【0044】
横筒33は、縦筒31との間に装架された起伏用アクチュエータとしてのオーガ昇降油圧シリンダ40により、受継ケース32回りに起伏揺動して上下傾斜角度を変更するように構成されている。オーガ昇降油圧シリンダ40には、上下傾斜角検出手段としての上下傾斜角センサ41(図9参照)が関連付けて設けられている。上下傾斜角センサ41により、横筒33の上下傾斜角度ひいては横筒33の先端にある籾投げ口9の高さ位置が検出される。
【0045】
なお、図1及び図2に示すように、脱穀装置5の上面前部には上向き開放状のオーガレスト42が設けられており、排出オーガ8を使用しない状態では、横筒33の長手中途部がオーガレスト42に載置(収納)される。オーガレスト42には、横筒62の有無を検出するためのレスト検出器43(図9参照)が取り付けられている。以下、オーガレスト42に載置されたときの横筒33(排出オーガ8)の位置を収納位置と称する(図1、図2及び図6参照)。
【0046】
(4).遠隔操作送信器の構成
次に、図5及び図6を参照しながら、オーガ操作手段としての遠隔操作送信器13の構成について説明する。
【0047】
運転キャビン10内に配置された遠隔操作送信器13は、排出オーガ8における所定の旋回位置や収納位置への移動や、グレンタンク7及び排出オーガ8に関連するコンベヤ類130〜133の駆動を操作するためのものであり、その前面には、入力系機器としての排出オーガ8関連操作用のスイッチ類45〜52が配置されている。
【0048】
実施形態のスイッチ類としては、排出オーガ8を予め設定された収納位置(図6の実線状態参照)に強制的に移動させるリターンスイッチ45、排出オーガ8を予め設定された右セット位置(図6の二点鎖線状態参照)に強制的に移動させる右セットスイッチ46、排出オーガ8を予め設定された後セット位置(図6の一点鎖線状態参照)に強制的に移動させる後セットスイッチ47、排出クラッチ76cを入り切り操作するための排出クラッチスイッチ48、横筒33をその操作量(操作時間)に応じて起伏揺動操作するための上昇及び下降スイッチ49,50、並びに、縦筒31をその操作量(操作時間)に応じて水平旋回操作するための左旋回及び右旋回スイッチ51,52がある。
【0049】
遠隔操作送信器13の下部から延びているケーブル53には一対のハーネス160a(図7及び図8参照)が内装されている。これら両ハーネス160aの一端側は遠隔操作送信器13内の入力専用コントローラ151a(詳細は後述する)に接続されており、他端側は後述するCAN通信バス152にそれぞれ接続されている。
【0050】
(5).本願発明に係る制御手段の構成
次に、図7〜図9を参照しながら、本願発明に係る制御手段150の構成について説明する。
【0051】
図7に示す本願発明の制御手段150は、走行機体1の車速、姿勢及び車高、排出オーガ8の排出位置といったコンバインの作動全般を制御するものであり、各入力系機器からの入力制御に特化した入力専用コントローラ151aと、後述する各出力系機器への出力制御に特化した出力専用コントローラ151bと、プログラム処理に特化した制御専用コントローラ151cと、各コントローラ151a〜151c間を相互に接続する一対のCAN通信バス152とを備えている。なお以下の説明では、コントローラ151a〜151c群をまとめて表現する際や、任意のコントローラを表現する際の符号として、アルファベットを外した「151」を使う場合がある。
【0052】
本願発明の制御手段150にはCAN通信環境が適用されている。CAN通信プロトコルによるデータ通信はLAN通信環境を発展させたものであり、CAN通信プロトコルは、共通のリターン(サブルーチンや割込ルーチンに移ったプログラムをメインルーチンに戻す命令)を有する差動の2ワイヤバスラインを用いる分散リアルタイム制御及び多重化を保つシリアル通信プロトコルである。CAN通信バス152の両端には、制御情報(データ)の反射を抑制する終端抵抗としての抵抗器(図示省略)が配置されている。
【0053】
実施形態の入力専用コントローラ151a、出力専用コントローラ151b、及び制御専用コントローラ151cは、コンバインの制御対象部(例えば刈取装置3や脱穀装置5、排出オーガ8等)に対応して複数個ずつ存在するものであるが、ここでは、主に排出オーガ8の作動を制御する役割を担うコントローラ151群の組合せを代表例として、以下に説明する。
【0054】
入力専用コントローラ151aは前述した通り、遠隔操作送信器13内に配置されている。詳細は図示していないが、出力専用コントローラ151bは、排出オーガ8の縦筒31に関連付けて設けられたオーガ旋回電動モータ35の近傍箇所に設置され、制御専用コントローラ151cは、運転座席12の左側方のレバーコラム内に設置されている。
【0055】
各コントローラ151a〜151cは、各種演算処理や制御を実行するCPU153、後述する各制御プログラムを記憶させるROM154、各種データ等を一時的に記憶させるRAM155、タイマ機能としてのクロック156、CANコントローラ部157、CANドライバ158等を備えている。入力専用及び出力専用コントローラ151a,151bには、各入出力系機器に接続してデータを伝送する入出力インターフェイス(図示省略)も備えている。但し、制御専用コントローラ151cに入出力インターフェイスは設けていない。
【0056】
ここで、CANコントローラ部157とは、CAN通信プロトコルに基づいて通信制御するための部分である。送信完了フラグ、受信完了フラグ、送信フラグ及び受信フラグがCANコントローラ部157内のステータスレジスタに設けられている。また、CANドライバ158は、後述するIDコード付き制御情報(データ)を、CAN通信バス152を介して他のコントローラ151と送受信するものである。各コントローラ151のCANドライバ158に、一対のハーネス160の一端が接続される。そして、これらハーネス160の他端がCAN通信バス152にそれぞれ接続される。
【0057】
なお、図5及び図7では、入力専用コントローラ151aにつながるハーネス160に符号aを、出力専用コントローラ151bにつながるハーネス160に符号bを、制御専用コントローラ151cにつながるハーネス160に符号cを付している。
【0058】
RAM155には受信スロット159a及び送信スロット159bを備えている。送信スロット159bは、自己のコントローラ151についてのIDコード(識別子番号、識別子コードともいう)を有しており、他のコントローラ151に送信する制御情報に予めIDコードを書き込んでおき、IDコード付き制御情報として格納するものである。他方、受信スロット159aは、CAN通信バス152を介して返送されたIDコード付き制御情報を格納するものである。
【0059】
従って、あるコントローラ151からIDコード付き制御情報がCAN通信バス152を介して送信されると、IDコード付き制御情報は、他のコントローラ151の受信スロット159aに格納される。そして、送信したコントローラ151自身も、先ほど自らが送信したIDコード付き制御情報を受信して、受信スロット159aに格納することになる。なお、CAN通信時において、送信される制御情報(データパケット)には、送信するコントローラ151の種類、個体を識別する符号が付される。特に、出力専用コントローラ151bへの出力要求を伝える制御情報には、受信するコントローラ151の種類、個体を識別する符号も付される。
【0060】
制御専用コントローラ151cのROM154には、排出オーガ8におけるオーガ旋回電動モータ35及びオーガ昇降油圧シリンダ40の作動を制御するためのアプリケーション制御プログラムPが予め記憶(格納)されている。また、制御専用コントローラ151cのROM154には、CAN通信に必要な通信制御プログラム(図示省略)も予め記憶されている。入力専用及び出力専用コントローラ151a,151bのROM154には、アプリケーション制御プログラムPが格納されておらず、CAN通信に必要な通信制御プログラムと、入出力系機器間において制御情報(データ)を伝送するための入出力用制御プログラムとが予め格納されている。
【0061】
図8に示すように、入力専用コントローラ151aには、入力系機器として、リターンスイッチ45、右セットスイッチ46、後セットスイッチ47、排出クラッチスイッチ48、上昇及び下降スイッチ49,50、左旋回及び右旋回スイッチ51,52、旋回角センサ39、上下傾斜角センサ41、並びにレスト検出器43等がそれぞれ電気的に接続されている。なお、入力専用コントローラ151aは、接続された入力系機器、アナログ値及びパルス値等の入力状態をCAN通信にて出力するが、どの入力系機器からの入力情報であるかは関知しない設定になっている。
【0062】
図9に示すように、出力専用コントローラ151bには、出力系機器として、オーガ旋回電動モータ35に対するリレーユニット等の旋回駆動制御部161、オーガ昇降油圧シリンダ40に対する弁切換ユニット等の起伏駆動制御部162、及び、排出クラッチ76cを入り切り作動させる排出クラッチモータ163に対するリレーユニット等の制御回路部164等がそれぞれ接続されている。なお、出力専用コントローラ151bは、接続された出力系機器、アナログ値及びパルス値等の出力状態をCAN通信にて出力するが、どの出力系機器への出力情報であるかは関知しない設定になっている。
【0063】
制御専用コントローラ151cには入出力系機器が接続されていないが、各入力系機器からの入力情報(データ)が、入力専用コントローラ151aを介して制御専用コントローラ151cに伝送される設定になっている。制御専用コントローラ151cは、前述の入力情報に基づいてアプリケーション制御プログラムPを実行して演算処理を行う。そして、求められた出力情報が、制御専用コントローラ151cから出力専用コントローラ151bを介して各出力系機器に伝送される設定になっている。なお、制御専用コントローラ151cは、受信した制御情報上にある入力専用コントローラ151aの個体識別符号と、制御情報上のビット位置とから、どの入力系機器からの入力情報であるかを判断する設定になっている。
【0064】
実施形態の制御専用コントローラ151cに伝送される入力情報としては、各スイッチ類45〜52の押下を示す制御データ(パルス信号)、旋回角センサ39からの縦筒31の旋回角度(横筒33の旋回位置)に関する制御データ、上下傾斜角センサ41からの横筒33の上下傾斜角度に関する制御データ、レスト検出器43からの横筒33の有無に関する制御データ等がある。
【0065】
制御専用コントローラ151cから伝送される出力情報としては、オーガ旋回電動モータ35を作動させるための制御データ、オーガ昇降油圧シリンダ40を作動させるための制御データ、排出クラッチ76cを作動させるための制御データ等がある。
【0066】
以上の構成において、例えば排出オーガ8が収納位置にあるときに右セットスイッチ46を1回押下すると、この事実を示す入力情報が入力専用コントローラ151cに伝送され、入力専用コントローラ151cからCAN通信バス152を介して制御専用コントローラ151cに伝送される。
【0067】
前述の入力情報を受け取った制御専用コントローラ151cのCPU153は、ROM154に格納されたアプリケーション制御プログラムPを実行する。そして、排出オーガ8を右セット位置に移動させるための出力情報が、CAN通信バス152を介して出力専用コントローラ151bに伝送され、出力専用コントローラ151bから、オーガ旋回電動モータ35の旋回駆動制御部161とオーガ昇降油圧シリンダ40の起伏駆動制御部162とに出力される。
【0068】
その結果、排出オーガ8は、旋回時にオーガレスト42及び運転キャビン10に当たらない位置まで横筒33を一旦上向きに回動させてから、図6の平面視において時計回りに旋回し、右セット位置に到達したのち停止するのである。
【0069】
また、例えば収納位置以外の旋回位置に排出オーガ8があるときにリターンスイッチ45を1回押下した場合は、この事実を示す入力情報が入力専用コントローラ151aに伝送され、入力専用コントローラ151aからCAN通信バス152を介して制御専用コントローラ151cに伝送される。
【0070】
制御専用コントローラ151cのCPU153は、ROM154に格納されたアプリケーション制御プログラムPを実行し、排出オーガ8を収納位置に移動させるための出力情報が、CAN通信バス152を介して出力専用コントローラ151bに伝送される。そして、出力専用コントローラ151bから、オーガ旋回電動モータ35の旋回駆動制御部161とオーガ昇降油圧シリンダ40の起伏駆動制御部162とに出力される。
【0071】
その結果、排出オーガ8は、旋回時にオーガレスト42及び運転キャビン10に当たらない位置まで横筒33を一旦上向きに回動させてから、図6の平面視で反時計回りに旋回し、オーガレスト42上に到達したのち、横筒33を下向きに回動させ、オーガレスト42に載せた収納位置にて停止するのである。
【0072】
更に、例えば収納位置以外の旋回位置に排出オーガ8があるときに左旋回スイッチ51を押下した場合は、この事実及び押下時間を示す入力情報が入力専用コントローラ151aに伝送され、入力専用コントローラ151aからCAN通信バス152を介して制御専用コントローラ151cに伝送される。
【0073】
制御専用コントローラ151cのCPU153は、ROM154に格納されたアプリケーション制御プログラムPを実行して、排出オーガ8を押下時間に対応した旋回位置を演算する。そして、当該旋回位置に排出オーガ8に移動させるための出力情報が、CAN通信バス152を介して出力専用コントローラ151bに伝送され、出力専用コントローラ151bから、オーガ旋回電動モータ35の旋回駆動制御部161とオーガ昇降油圧シリンダ40の起伏駆動制御部162とに出力される。
【0074】
その結果、排出オーガ8は、左旋回スイッチ51の押下時間に対応した分だけ、図6の平面視で時計回りに旋回して停止するのである。
【0075】
以上のことから明らかなように、実施形態の制御手段150は、各入力系機器からの入力制御に特化した入力専用コントローラ151aと、各出力系機器への出力制御に特化した出力専用コントローラ151bと、プログラム処理に特化した制御専用コントローラ151cと、各コントローラ151間を相互に接続するCAN通信バス152とにより構成されているから、各コントローラ151に種々の入出力系機器を接続する必要がない。すなわち、入力系機器39,41,43,45〜52はまとめて入力専用コントローラ151aに接続すればよいし、出力系機器161,162,164はまとめて出力専用コントローラ151bに接続すればよい。従って、どのコントローラ151にどの入出力系機器を接続すればよいのか簡単に把握できることになり、接続作業の効率化が図れる。
【0076】
また、各入力系機器39,41,43,45〜52からの入力情報が、入力専用コントローラ151aを介して制御専用コントローラ151cに伝送され、前述の入力情報に基づき前記制御専用コントローラ151cにて得られた出力情報が、制御専用コントローラ151cから出力専用コントローラ151bを介して各出力系機器161,162,164に伝送される構成になっているので、入力専用及び出力専用コントローラ151a,151bは、高度な演算機能が必要なアプリケーション制御プログラムPを実行する必要がない。このため、制御専用コントローラ151cに比べて安価に製造できる。また、制御専用コントローラ151cも、入出力系機器を接続するための入出力インターフェイスが要らないので、従来のCANコントローラに比べて安価に製造できる。従って、製造コストの抑制に寄与できるのである。
【0077】
更に、各入力系機器39,41,43,45〜52からの入力情報及び各出力系機器161,162,164への出力情報は必ずCAN通信バス152を介して伝送されるので、入出力系機器の故障診断(トラブルシューティング)や状況確認(モニタリング)が簡単に行えるのである。
【0078】
その上、実施形態では、各コントローラ151間の通信プロトコルはCAN通信プロトコルであるから、1つのコントローラで全ての制御を実行する場合や、LAN通信プロトコルによるデータ通信の場合よりも、各コントローラ151間での制御データのやりとりが円滑で、且つ、その間の通信エラー検出及びエラー処理をスムーズに行えるという利点もある。
【0079】
実施形態の構成を採用した場合は、上述のもの以外にも次のような利点がある。すなわち、制御専用コントローラ151cは、通信のみにて制御情報の入出力を行うため、例えば通信シミュレータを制御専用コントローラ151cに接続するだけで、新たな制御専用コントローラ151cの開発・試験が可能になる。このため、開発時間と開発コストとを削減できる。
【0080】
また、仕様追加やマイナーチェンジ等で機能アップを図る場合、試験的に機能を追加する場合、或いは、客先に応じた特別仕様機を製作する場合等に、制御専用コントローラ151cを取り替えるだけで機能アップを図れるため、上述のような場合に、低コストでの対処が可能になる。
【0081】
更に、入力専用(出力専用)コントローラ151a(151b)は、どの入力系機器(出力系機器)に対する情報であるかは関知せず、制御専用コントローラ151cは、受信した制御情報上にある入力専用コントローラ151aの個体識別符号と、制御情報上のビット位置とから、どの入力系機器からの入力情報であるかを判断するという設定であるから、型式や取り付け位置等に拘らず、統一されたソフトウェア・ハードウェアを利用できる。このため、部品の共用化が図れて製造コストを抑制でき、且つ、制御の信頼性も向上できるのである。
【0082】
(6).その他
上記した実施形態の各構成は図示のものに限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。例えば、各コントローラ151間の通信プロトコルはCAN通信プロトコルに限らず、LAN通信プロトコルであってもよい。また、各コントローラ151は、それぞれ接続規模や演算能力に合わせて複数種類あってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】動力伝達系統のスケルトン図である。
【図4】排出オーガの要部側面図である。
【図5】遠隔操作送信器の概略説明図である。
【図6】排出オーガの旋回説明図である。
【図7】制御装置全体の機能ブロック図である。
【図8】入力専用コントローラの機能ブロック図である。
【図9】出力専用コントローラの機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0084】
1 走行機体
8 排出オーガ
13 オーガ操作手段としての遠隔操作送信器
31 縦筒
33 横筒
35 旋回用アクチュエータとしてのオーガ旋回電動モータ
39 旋回角検出手段としての旋回角センサ
40 起伏用アクチュエータとしてのオーガ昇降油圧シリンダ
41 上下傾斜角検出手段としての上下傾斜角センサ
45 リターンスイッチ
46 右セットスイッチ
47 後セットスイッチ
48 排出クラッチスイッチ
49 上昇スイッチ
50 下降スイッチ
51 左旋回スイッチ
52 右旋回スイッチ
76c 排出クラッチ
150 制御手段
151a 入力専用コントローラ
151b 出力専用コントローラ
151c 制御専用コントローラ
152 CAN通信バス
153 CPU
161 旋回駆動制御部
162 起伏駆動制御部
163 排出クラッチモータ
164 制御回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に搭載された複数の入力系機器及び出力系機器と、前記各入力系機器からの入力情報に基づいて前記各出力系機器を制御する制御手段とを備えている農作業機の制御装置であって、
前記制御手段は、前記各入力系機器からの入力制御に特化した入力専用コントローラと、前記各出力系機器への出力制御に特化した出力専用コントローラと、プログラム処理に特化した制御専用コントローラと、前記各コントローラ間を接続する通信バスとを有しており、
前記各入力系機器からの入力情報が、前記入力専用コントローラを介して前記制御専用コントローラに伝送され、前記入力情報に基づき前記制御専用コントローラにて得られた出力情報が、前記制御専用コントローラから前記出力専用コントローラを介して前記各出力系機器に伝送されるように構成されている、
農作業機の制御装置。
【請求項2】
前記各コントローラ間の通信プロトコルはCAN通信プロトコルである、
請求項1に記載した農作業機の制御装置。
【請求項3】
前記走行機体には、穀粒を貯留するためのグレンタンクと、前記グレンタンク内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガとが搭載されており、前記排出オーガは、前記走行機体に縦軸線回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に起伏回動可能に設けられた横筒とを備えており、
前記縦筒の旋回角度を検出する旋回角検出手段と、前記横筒の上下傾斜角度を検出する上下傾斜角検出手段と、前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段とが、前記入力系機器として前記入力専用コントローラに接続されており、
前記縦筒を旋回させる旋回用アクチュエータに対する旋回駆動制御部と、前記横筒を起伏揺動させる起伏用アクチュエータに対する起伏駆動制御部とが、前記出力系機器として前記出力専用コントローラに接続されている、
請求項1又は2に記載した農作業機としてのコンバインの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−90828(P2009−90828A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263740(P2007−263740)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】