説明

農作業機

【課題】トラクタからの回転動力を伝達する伝動部の途中に有する動力伝達部で回転差が生じているか否かを検出するトラクタに装着する農作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】トラクタからの回転動力を入力し入力した回転動力を伝動部で伝動させて作業部で出力して農作業を行うトラクタに装着する農作業機において、伝動部に一定条件下での動力を伝達する動力伝達部10を介在し、動力伝達部10より入力側の伝動部の回転を検知する第1の検知部4と、動力伝達部10より出力側の伝動部の回転を検知する第2の検知部5と、2つの検知部4、5からの情報を取得し動力伝達部10で回転差が生じているか否かを検出する制御部2とを有することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関し、特に、トラクタからの回転動力を伝達する伝動部の途中に有する動力伝達部で回転差が生じているか否かを検出するトラクタに装着する農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタに装着する農作業機は、トラクタからの回転動力を得て農作業するものがある。そして、この回転動力を伝達する伝動部の途中に過負荷防止や反対方向の伝達防止等の機能を備えた動力伝達部を有している農作業機が存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ユニバーサルジョイントと入力軸の接合部にシャーピンを貫通させた農作業機における過負荷防止装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、作業部側から動力入力側への動力伝達を禁止するワンウェイクラッチを設けた農作業機が記載されている。
【特許文献1】特開昭63−33709号公報
【特許文献2】特開2002−301952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した動力伝達部は、その機能を果していることに作業者が気づかず、安全上の問題が生じたり、製品の破損につながる場合がある。
【0006】
例えば、特許文献1に記載のシャーピンは、シャーピンが破断している場合でも、慣性力や周辺部の摩擦で耕耘爪等が回転している場合があり、作業者がシャーピンの破断に気づかず作業を続けてしまうことがある。しかし、この場合シャーピンが破断しており、作業に必要な動力は伝達されていないためそのままトラクタを前進させると作業機を破損させるおそれがある。
【0007】
また、特許文献2に記載のワンウェイクラッチの場合、作業者がトラクタのPTOを切っても慣性力で回転軸がカバー内で回転しており、作業者がこのことに気付かず回転軸に近づいた場合危険である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて、トラクタからの回転動力を伝達する伝動部の途中に有する動力伝達部で回転差が生じているか否かを検出するトラクタに装着する農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の農作業機は、トラクタからの回転動力を入力し入力した回転動力を伝動部で伝動させて作業部で出力して農作業を行うトラクタに装着する農作業機において、前記伝動部に一定条件下での動力を伝達する動力伝達部を介在し、前記動力伝達部より入力側の伝動部の回転を検知する第1の検知部と、前記動力伝達部より出力側の伝動部の回転を検知する第2の検知部と、前記2つの検知部からの情報を取得し前記動力伝達部で回転差が生じているか否かを検出する制御部とを有することを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の農作業機は、通報部を有し、前記制御部が前記動力伝達部で回転差が生じていることを検出した場合に前記通報部で通報することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記動力伝達部は、一定以下のトルクの回転動力を伝達することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記動力伝達部は、一方向の回転動力のみを伝達することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、農作業機において、トラクタからの回転動力を伝達する伝動部の途中に有する動力伝達部で回転差が生じているか否かを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の農作業機が有する回転差検出システムのシステム構成図である。本発明の農作業機はトラクタに装着されて農作業するものである。回転差検出システム1は、制御部2と、通報部3と、第1の検知部4と、第2の検知部5と、動力伝達部10と、回転部(入力側)11と、回転部(出力側)12とを有する。トラクタからの回転動力は、回転部(入力側)11へ伝達され、さらに動力伝達部10を介して回転部(出力側)12へ伝達される。そして、この伝達された動力は作業部に伝達され農作業機の作業に必要な動力に使用される。
【0014】
回転部11、12は、回転動力を伝達する伝動部に有する回転体であり、回転部(入力側)11は動力伝達部10より入力側(トラクタ側)に、回転部(出力側)12は動力伝達部10より出力側(作業部側)に存在し、これらは、例えば、軸やギア等で構成される。
【0015】
動力伝達部10は、過負荷防止や反対方向の伝達防止等の一定条件下での動力を伝達する機構を備えたものであり、伝動部の途中に設けられ、例えば、シャーピン、クラッチジョイント、ワンウェイクラッチ等で構成される機構である。
【0016】
第1の検知部4は回転部(入力側)11の回転を、第2の検知部5は回転部(出力側)12の回転をそれぞれ検知することのできる装置であり、例えば、近接スイッチ、マグネットスイッチ、光電スイッチ、遠心力スイッチ等である。これらは、単に回転しているか否か、一定以上の回転か否か、もしくは、回転数等を検知する。
【0017】
制御部2は、CPU等で構成され、2つの検知部4、5からの回転の情報を取得し、この情報をもとに、動力伝達部10で回転差が生じているか否かを検出する。そして、通報部3に必要な通報をさせるための信号を送信する。例えば、検知部4、5からの情報が回転数の情報である場合は、その回転数の差が(許容値以上)生じている場合に通報部3で通報させる等の制御ができる。また、検出部4、5からの情報が回転しているか否かである場合、一方が回転し他方が回転していない情報の場合は、回転差があるものとして、通報部3で通報させる等の制御ができる。また、検出部4、5からの情報が一定以上の回転か否かの場合、一方が一定以上の回転で、他方が一定以上の回転でない場合は、回転差があるものとして、通報部3で通報させる等の制御ができる。
【0018】
なお、回転部11、12が、動力伝達部10に対してギア等を介して変速している場合、検出部4、5や制御部2でそれを考慮し換算されて動力伝達部10で回転差が生じているかが判断される。
【0019】
通報部3は、制御部2からの信号をもとに、回転差が生じているか否かの通知や、回転部11、12の回転数の通知、2つの回転差の通知等を、LED等による光、ブザー等による音、液晶等による表示などにより行う。制御部2と通報部3は一体の制御ボックスとしてもよい。
【0020】
以下に、具体的な実施例について述べる。
【実施例1】
【0021】
図2は、実施例1の農作業機を示す平面図である。実施例1の作業機は畦塗り機であって、装着部20をトラクタの後部に装着し、トラクタからのPTO動力を入力し作業部で畦成形する。作業部29は、耕耘部26と、整畦部27と、上面削り部28とを有し、耕耘部26の耕耘軸26aを回転させ耕耘爪26bにより旧畦の土をかきだし、かきだした土を整畦部27のディスク27aの回転により畦形状に成形するものである。また、前方には、上面削り部28を有し、爪28aの回転により旧畦の上面を削り、丈夫な畦形成に貢献する。
【0022】
一方、装着部20と作業部29は、アーム21により連結されている。アーム21の両端が水平方向に装着部20と作業部29をそれぞれ回動自在に支持され連結されている。このことで、装着部20に対して作業部29の位置を変更できるオフセット作業機となる。これにより、非作業時は中央に移動させ重心バランスをよくし、また逆側に移動させて、バック作業が可能となる。
【0023】
伝動部について説明する。トラクタからの動力は入力軸31から、ジョイント30を介して、作業側入力軸22へ伝達される。作業側入力軸22に伝達された動力は、作業側フレーム25内でギアや軸等を介して適切な回転数で耕耘軸26aやディスク27aに出力される。このジョイント30により装着部20に対して作業部29の位置を変更しても伝動機構をつなげたままとすることができる。
【0024】
図3は、図2のジョイント部30の第1の実施形態を示す側面図である。なお、説明のため一部断面図となっている。伝動ジョイント30は、入力軸31の動力をCVヨーク等で構成される広角部32へ伝動し、シャフト部33を介してヨーク部材34へ伝えられる。ヨーク部材34は、フランジ部34aを有し、連結部材35が有するフランジ部35aと面で当接している。そして、それぞれのフランジ部34a、35aに有する孔34b、35bを貫く形でシャーピン36が挿入されている。これにより、ヨーク部材34と連結部材35の回転動力はシャーピン36で連結され伝えられる。そして、連結部材35と作業側入力軸22とは、スプライン等で接合され、作業部側へ動力が伝達される。
【0025】
入力軸31の回転は、検出部(入力側)4で検出される。そして、作業側入力軸22の回転は、検出部(作業側)5で検出される。シャーピン36が破断しないうちは制御部2で検出する回転差はない。一方、シャーピン36が規定以上のトルクがかかり破断した場合、入力軸31からの動力は、作業側入力軸22へは伝達せず、作業側入力軸22の回転は減少または停止する。この場合の回転差を制御部2で検出し、このことを通報部3で通報すれば、作業者はシャーピン36が破断したことを即座に知ることができ、作業を中止し、農作業機を破損せず、シャーピン36を取り換える等の対応ができる。
【0026】
図4は、図2のジョイント部の第2の実施形態を示す側面図である。なお、説明のため一部断面図となっている。図4の伝動ジョイント30’は、ヨーク部材41と作業側入力軸22の間はシャーピンによる機構ではなく、ピンクラッチ部42である点図3と異なる。図3と同一の箇所には同一の符号を付してある。
【0027】
ヨーク部材41からの動力はピンクラッチ部42を介して作業側入力軸22へ伝えられる。このとき、一定以上のトルクが働く場合、ピンクラッチ部42は作業側入力軸22への動力の伝達を行わない。一方、一定以下のトルクとなった場合は、ピンクラッチ部42は作業側入力軸22への動力の伝達を再開する。
【0028】
入力軸31の回転は、第1の検知部4で検知される。そして、作業側入力軸22の回転は、第2の検知部5で検知される。ピンクラッチ部42が動力を適切に伝達しているうちは制御部2で検出する回転差はない。一方、ピンクラッチ部42が規定以上のトルクがかかることにより作用した場合、入力軸31からの動力は、作業側入力軸22へは伝達せず、作業側入力軸22の回転は減少または停止する。この場合の回転差を制御部2で検出し、このことを通報部3で通報すれば、作業者は、作業を中止し作業部29等を破損させることがない。
【実施例2】
【0029】
図5は、実施例2の農作業機を示す平面図である。実施例2の作業機は畦塗り機であって、装着部20をトラクタの後部に装着し、トラクタからのPTO動力を入力し作業部で畦成形する。作業部29は、耕耘部26と、整畦部27と、上面削り部28とを有し、耕耘部26の耕耘軸26aを回転させ耕耘爪26bにより旧畦の土をかきだし、かきだした土を整畦部27のディスク27aの回転により畦形状に成形するものである。また、前方には、上面削り部28を有し、爪28aの回転により旧畦の上面を削り、丈夫な畦形成に貢献する。
【0030】
一方、装着部20と作業部29は、アーム21により連結されている。アーム21の両端が水平方向に装着部20と作業部29それぞれ回動自在に支持され連結されていることで、装着部20に対して作業部29の位置を変更できるオフセット作業機となる。これにより、非作業時は中央に移動させ重心バランスをよくし、また逆側に移動させて、バック作業が可能となる。
【0031】
図6は、実施例2の農作業機の伝動図である。伝動部について説明する。トラクタからの動力は入力軸51へ伝えられる。入力軸51は、出力側にフランジ部52を装着し、中間軸55の入力側に装着されるフランジ部53と面で当接している。そして、それぞれのフランジ部52、53には貫通孔を有しており、これらの孔を貫く形でシャーピン54が挿入されている。これにより、入力軸51と中間軸55の回転動力はシャーピン54を介して伝えられる。
【0032】
中間軸55は、出力側に第1べベルギア56が装着され、第1べベルギア56は駆動軸58に装着される第2べベルギア57とかみ合い動力が伝達される。駆動軸58以降は、第3ベベルギア62と第4ベベルギア63がかみ合い、作業側伝動部61側に動力が伝達され、作業側伝動部61から、耕耘爪26b、ディスク27a、爪28aへ回転動力が伝えられる。入力軸51までの構成は、装着部20に対して作業部29の位置を変更した場合に対応できる構成のものであり、例えば、ジョイントや両端で回動可能なチェーンケースの構造のものがあげられる。また、作業側伝動部61は、軸、ギア、チェーン等の必要な要素で構成される。
【0033】
入力軸51の回転は、第1の検知部4で検知される。そして、駆動軸58の回転は、第2の検知部5で検知される。シャーピン54が破断しないうちは制御部2で検出する回転差はない。なお、べベルギア56、57による変速は、検知部4、5や制御部2で換算され回転差がないものとして検出する。一方、シャーピン54が規定以上のトルクがかかることにより破断した場合、入力軸51からの動力は、駆動軸58へは伝達せず、駆動軸58の回転は減少または停止する。この場合の回転差を制御部2で検出し、このことを通報部3で通報すれば、作業者はシャーピン54が破断したことを即座に知ることができ、作業を中止し、農作業機を破損せず、シャーピン54を取り換える等の対応ができる。
【0034】
実施例2の構成は、シャーピンの構造をジョイントに付設できない農作業機に対応できるものである。
【実施例3】
【0035】
図7は、実施例3の農作業機を示す平面図である。図8は、実施例3の農作業機を示す側面図である。実施例3の農作業機は、草刈り機である。
【0036】
実施例3の草刈り機は、トラクタの後部に装着部81を装着する。次に伝動部について説明する。トラクタからの動力は、入力軸71から、ミッションケース82内へ伝達され、ミッションケース82内のギア等を介して、第1駆動軸72へ伝達される。第1駆動軸72の回転動力はワンウェイクラッチ73を介して第2駆動軸74へ伝達される。第2駆動軸74の動力は、草刈り機の側面に設けられたベルトケース83内のベルト76に伝達され、さらに、ミッションケース82下部のカバー84内に有する爪軸77へと伝達される。
【0037】
爪軸77は、草刈り用の爪を有しており、爪軸77を回転すると草刈り作業ができる。一方、作業者がトラクタのPTO駆動を停止した場合、爪軸77は慣性力により回転したままとなる。しかし、ワンウェイクラッチ73により、第2駆動軸74から第1駆動軸72へ動力は伝達されないため、トラクタ側には爪軸77の慣性力による動力は伝達されない。このため、トラクタが爪軸77の慣性力によりPTOを通じ意図しない前進をしてしまうこと等を防止する。
【0038】
第1駆動軸72の回転は、第1の検知部4で検知される。そして、第2駆動軸74の回転は、第2の検知部5で検知される。トラクタからのPTO動力はワンウェイクラッチ73が第1駆動軸72から第2駆動軸74へ伝達する。この場合、制御部2で回転差は検出されない。一方、トラクタのPTO駆動を停止した場合は、第1駆動軸72は早く回転を停止するが、第2駆動軸74は、爪軸77の慣性力によりしばらくの間回転し続ける。この際、制御部2では回転差を検出し、このことを通報部3で通報すれば、作業者はまだカバー84内で爪軸77が回転していることを知ることができ、危険を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の農作業機が有する回転差検出システムのシステム構成図である。
【図2】実施例1の農作業機を示す平面図である。
【図3】図2のジョイント部の第1の実施形態を示す側面図である。
【図4】図2のジョイント部の第2の実施形態を示す側面図である。
【図5】実施例2の農作業機を示す平面図である。
【図6】実施例2の農作業機の伝動図である。
【図7】実施例3の農作業機を示す平面図である。
【図8】実施例3の農作業機を示す側面図である。
【符号の説明】
【0040】
2 制御部
3 通報部
4 第1の検知部
5 第2の検知部
10 動力伝達部
11、12 回転部
29 作業部
30、30’ 伝動ジョイント
34 ヨーク部材
35 連結部材
36 シャーピン
41 ヨーク部材
42 ピンクラッチ部
51 入力軸
54 シャーピン
55 中間軸
72 第1駆動軸
73 ワンウェイクラッチ
74 第2駆動軸
77 爪軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタからの回転動力を入力し入力した回転動力を伝動部で伝動させて作業部で出力して農作業を行うトラクタに装着する農作業機において、
前記伝動部に一定条件下での動力を伝達する動力伝達部を介在し、前記動力伝達部より入力側の伝動部の回転を検知する第1の検知部と、前記動力伝達部より出力側の伝動部の回転を検知する第2の検知部と、前記2つの検知部からの情報を取得し前記動力伝達部で回転差が生じているか否かを検出する制御部とを有することを特徴とする農作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機において、
通報部を有し、前記制御部が前記動力伝達部で回転差が生じていることを検出した場合に前記通報部で通報することを特徴とする農作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機において、
前記動力伝達部は、一定以下のトルクの回転動力を伝達することを特徴とする農作業機。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機において、
前記動力伝達部は、一方向の回転動力のみを伝達することを特徴とする農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−142136(P2010−142136A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320627(P2008−320627)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】