説明

近接型撮像装置、及び撮像フィルタ

【課題】精細な画像を得られる近接型撮像装置及びこれに用いる撮像フィルタを提供する。
【解決手段】近接型撮像装置11は、イメージセンサ13と角度制限フィルタ18を備える。イメージセンサ13は、近接した被写体12からの光を、所定の配列で複数設けられた画素で光電変換し、被写体12を撮像する。角度制限フィルタ18は、透明なガラス基板と、各画素に一対一に対応した開口を有し、ガラス基板の被写体12側に設けられた遮光膜とからなり、イメージセンサ13の前面に配置され、イメージセンサ13に入射する光の入射角度を、互いに対応する開口から画素に入射する角度範囲に制限するとともに、ガラス基板の屈折率をn,ガラス基板の厚さをT,開口の輪郭とこの開口に隣接した開口に対応する画素の輪郭とのガラス基板面内方向における最短距離をLとするときに、L≧T/(n−1)1/2の条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体からイメージセンサへの光の入射角度を制限する角度制限フィルタをイメージセンサの前面に配置して、イメージセンサに近接した被写体を撮像できるようにした近接型撮像装置に関するものであり、さらに詳しくは、被写体をイメージセンサに略密着させて撮像する近接型撮像装置及びこれに用いる角度制限フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
画像や文書等の被写体を撮像してデジタル画像を得るイメージスキャナが普及している。イメージスキャナとしては、縮小光学系で縮小してイメージセンサに結像させるタイプのものや、イメージセンサを被写体に略密着するほど近接させて撮像するものが知られている。
【0003】
近年では、こうしたイメージスキャナが、携帯電話機やノート型パソコン等、小型薄型の機器に組み込まれることがある。このため、イメージスキャナの小型化,薄型化が求められている。しかし、縮小光学系を用いるタイプのイメージスキャナは、イメージセンサのサイズを小さくすることができるが、複数のレンズを光軸方向に配置した縮小光学系を用いなければならないので、小型化,薄型化には限度がある。一方、近接型のイメージスキャナは、被写体と略同じ大きさのイメージセンサが必要になるが、縮小光学系を用いるタイプよりも容易に薄くすることができる。このため、小型薄型の機器には、主として近接型のものが組み込まれる。
【0004】
近接型のイメージスキャナは、被写体とイメージセンサを略密着させ、被写体の各部分と、受光面を区画した複数画素からなる受光エリアとをそれぞれ一対一に対応させるようにして撮像するが、イメージセンサと被写体を完全に密着させることはできず、これらの間には僅かながら間隔がある。近接型のイメージセンサでは、この僅かな間隔のために、被写体の各部分からの光が対応するエリアだけでなくその周囲のエリアにも入射し、精細な画像を得ることが難しい。このため、近接型のイメージスキャナには、イメージセンサへの光の入射角度を制限することが求められる。
【0005】
このように、イメージセンサへの光の入射角度を制限した例としては、例えば、受光エリアに対応させて面状にレンズを配列した複眼撮像装置で、受光エリアの境界を遮光する格子状の遮光フィルタを用いる例が知られている(特許文献1)。また、中心から周辺にかけて屈折率が減少した円柱状のロッドレンズを配列する例や、多数の貫通孔が設けられた多孔板を配置したフィルムカメラも知られている。
【0006】
上述のように、イメージセンサへの入射角度を制限するために用いられる撮像フィルタは、概ね受光エリアに合わせた格子状に形成される。しかし、例えば個々の画素を被写体の各部分に対応させる場合のように、受光エリアが小さくなるほど、基板に機械的な貫通孔を設けたり、画素の大きさと同程度のロッドレンズを作製することが難しくなる。このため、イメージスキャナを薄く構成し、かつ、受光エリアを小さくして精細な撮像が求められる今日では、受光エリアに対応した開口を有する遮光膜をガラス基板の表面に設けた撮像フィルタが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−31460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ガラス基板の上に、開口を有する遮光膜を設けた撮像フィルタでは、開口からガラス基板の内部を斜めに透過し、隣接する受光エリアに入射してしまう光がある。こうして基板を斜めに透過する光は、ノイズとなるため、精細な画像を得る妨げとなる。
【0009】
また、外部からの光を遮光せずに使用する場合等、イメージスキャナの使用環境によっては、被写体の周囲環境からの光が入射する。こうして被写体の周囲環境から入射する光は、波長や入射角度が様々であるから、上述と同様に精細な画像を妨げとなることがある。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、撮像フィルタを斜めに透過して画素に到達する光を低減し、確実に被写体の一部分と一つの画素とを一対一に対応させ、精細な画像を得られる近接型撮像装置及び撮像フィルタを提供することを目的とする。また、周囲環境の影響を受けずに精細な画像を得られるようにする近接型撮像装置及び撮像フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の近接型撮像装置は、近接した被写体からの光を、所定の配列で複数設けられた画素で光電変換し、前記被写体を撮像するイメージセンサと、透明な基板と、前記画素に一対一に対応した開口を有し、前記基板の前記被写体側に設けられた遮光膜とからなり、前記イメージセンサの前面に配置され、前記イメージセンサに入射する光の入射角度を、互いに対応する前記開口から前記画素に入射する角度範囲に制限する撮像フィルタと、を備え、前記基板の屈折率をn,前記基板の厚さをT,前記開口の輪郭とこの開口に隣接した前記開口に対応する前記画素の輪郭との前記基板面内方向における最短距離をLとするときに、



を満たすことを特徴とする。
【0012】
また、前記イメージセンサ側に透過する光の波長を所定波長帯に制限するとともに、入射角度が大きいほど前記所定波長帯の光の透過率が小さくなる波長制限フィルタを、前記角度制限フィルタよりも前記被写体側に備えることを特徴とする。
【0013】
また、前記角度制限フィルタと前記イメージセンサの間に、厚さT,屈折率nの中間層を備え、前記最短距離Lが



を満たすことを特徴とする。
【0014】
また、前記開口及び前記画素は正方格子状に配列されるとともに、前記開口及び前記画素は正方形に形成され、前記開口の中央から輪郭までの最短距離をR,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をr,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする。
【0015】
また、前記開口及び前記画素は正方格子状に配列され、前記開口は円形に形成されるとともに、前記画素は正方形に形成され、前記開口の中央から輪郭までの最短距離をR,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をr,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする。
【0016】
また、前記開口及び前記画素は正方格子状に配列され、前記開口及び前記画素が円形に形成され、前記開口の中央から輪郭までの最短距離をR,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をr,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする。
【0017】
また、前記開口及び前記画素は、前記開口及び前記画素が正三角形の頂点に位置するように、行または列毎に交互に位置をずらしたハニカム状に配列されるとともに、前記開口及び前記画素は正方形に形成され、前記開口の中央から輪郭までの最短距離をr,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をR,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする。
【0018】
また、前記開口及び前記画素は、前記開口及び前記画素が正三角形の頂点に位置するように、行または列毎に交互に位置をずらしたハニカム状に配列されるとともに、前記開口は円形に形成され、かつ、前記画素は正方形に形成され、前記開口の中央から輪郭までの最短距離をR,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をr,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする。
【0019】
また、前記開口及び前記画素は、前記開口及び前記画素が正三角形の頂点に位置するように、行または列毎に交互に位置をずらしたハニカム状に配列されるとともに、前記開口及び前記画素が円形に形成され、前記開口の中央から輪郭までの最短距離をr,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をR,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする。
【0020】
本発明の撮像フィルタは、近接した被写体からの光を、所定の配列で複数設けられた画素で光電変換し、前記被写体を撮像するイメージセンサの前面に配置され、透明な基板と、前記画素に一対一に対応した開口を有し、前記基板の前記被写体側に設けられた遮光膜と、を備え、前記基板の屈折率をn,前記基板の厚さをT,前記開口の輪郭とこの開口に隣接した前記開口に対応する前記画素の輪郭との前記基板面内方向における最短距離をLとするときに、



を満たし、前記イメージセンサに入射する光の入射角度を、互いに対応する前記開口から前記画素に入射する角度範囲に制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、撮像フィルタを斜めに透過して画素に到達する光を低減し、確実に被写体の一部分と一つの画素とを一対一に対応させ、精細な画像が得られる近接型撮像装置及び撮像フィルタを提供することができる。また、近接型撮像装置及び撮像フィルタを、周囲環境の影響を受けずに、精細な画像を得ることができるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】近接型撮像装置の構成を示す説明図である。
【図2】ローパスフィルタの透過特性を示すグラフである。
【図3】角度制限フィルタの構成を示す説明図である。
【図4】角度制限フィルタの構成を示す断面図である。
【図5】近接型撮像装置の作用を示す説明図である。
【図6】開口及び画素の形状の変形例を示す説明図である。
【図7】開口及び画素の配列,形状の変形例を示す説明図である。
【図8】中間層の厚さが無視できない場合の角度制限フィルタの構成を示す説明図である。
【図9】ローパスフィルタを角度制限フィルタとイメージセンサの間に配置する例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、近接型撮像装置11は、被写体12をイメージセンサ13に略密着させて撮像することにより、被写体12の表面(または表層の内部構造)を撮像する近接型のイメージスキャナであり、イメージセンサ13、カバーガラス14、LED16、ハイパスフィルタ(図示しない)、ローパスフィルタ17、角度制限フィルタ18等から構成される。
【0024】
イメージセンサ13は、赤外光の波長帯に感度を持つ画素を正方形の撮像領域内に2次元に配列したCMOS型のエリアイメージセンサであり、カバーガラス14の近傍に略密着して配置される。また、イメージセンサ13の前面(被写体12側)には、ローパスフィルタ17、角度制限フィルタ18、ハイパスフィルタ等、薄い各種光学フィルタが配置される。また、イメージセンサ13の画素は、それぞれ正方形状に形成され、所定のピッチで正方格子状に配列されている。なお、図1では、説明のためにイメージセンサ13と各種光学フィルタを分離してあるが、イメージセンサ13と各種光学フィルタは、接着剤や空気等を介して密着するように略一体に形成されている。
【0025】
カバーガラス14は、透明なガラス板であり、下方に配置されるイメージセンサ13やローパスフィルタ17、角度制限フィルタ18等を傷や埃から保護する。また、被写体12は、カバーガラス14の上に密着して配置される。
【0026】
LED16は、波長λ(=850nm)を中心とした所定波長帯の赤外光を発する光源であり、近接型撮像装置11で被写体12を撮像するときに被写体12を照明する。また、LED16は、イメージセンサ13の周囲に被写体12の方向に向けて複数配置され、被写体12を一様に照明する。このため、イメージセンサ13は、LED16の発する波長λを中心とした所定波長帯の赤外光によって被写体12を撮像する。
【0027】
ハイパスフィルタは、可視光や紫外線等、撮像に利用される波長λ近傍の赤外光よりも短波長の光を反射し、波長λ近傍の赤外光とこれよりも長波長の光を透過する。また、ハイパスフィルタは、ローパスフィルタ17の被写体12側に配置される。このため、近接型撮像装置11には被写体12側から種々の波長帯の光が入射するが、ローパスフィルタ17に入射する光の波長帯は、ハイパスフィルタによって波長λ近傍の赤外光とこれよりも長波長の光に制限される。
【0028】
ローパスフィルタ17及び角度制限フィルタ18は、イメージセンサ13の前面に配置され、被写体12からイメージセンサ13に入射する光の波長帯と入射角度を制限する。具体的には、ローパスフィルタ17及び角度制限フィルタ18は、被写体12からイメージセンサ13へ入射する光の波長帯は、波長λ近傍の赤外光の波長帯に制限するとともに、イメージセンサ13への入射角度をイメージセンサ13に対して略垂直な入射角度に制限する。これにより、近接型撮像装置11は、被写体12の各部12a〜12cを、イメージセンサ13の各画素に一対一に対応させて被写体12を撮影する。また、ローパスフィルタ17は、ハイパスフィルタと角度制限フィルタ18の間に配置され、角度制限フィルタ18は、ローパスフィルタ18とイメージセンサ13の間に配置される。
【0029】
図2(A)に示すように、ローパスフィルタ17は、波長λ近傍の波長帯を境界に、短波長側の光を透過し、長波長側の光を反射して、被写体12からイメージセンサ13側に透過する光の波長帯を制限するローパスフィルタであり、透明なガラス基板上に複数の誘電体薄膜を積層して形成される。また、ローパスフィルタ17の透過特性は、グラフ21a(実線)で示すように、入射角度が略垂直の場合に、波長λ近傍の狭い波長帯で急峻に透過率が変化するように構成されている。また、ローパスフィルタ17の透過率特性は、ローパスフィルタ17への入射角度に応じて異なる。波長に対する透過率のグラフでいえば、グラフ21b(二点鎖線)で示すように、光が傾斜して入射する場合には、その入射角度に応じてローパスフィルタ17の透過率の特性は、全体的に短波長側にシフトする。
【0030】
ローパスフィルタ17には波長λ近傍の赤外光が様々な入射角度で入射するが、垂直に入射した赤外光の透過光量は、図2(B)に示すように、グラフ21aとLED16のスペクトル22とで囲まれた斜線部分23aの面積に比例する。また、斜めに入射した赤外光の透過光量は、図2(C)に示すように、グラフ21bとスペクトル22とで囲まれた斜線部分23bの面積に比例し、斜線部分23aよりも小さくなる。したがって、略垂直に入射すればローパスフィルタ17を透過する波長λ近傍の赤外光であっても、ローパスフィルタ17に斜めに入射すると、その入射角度に応じて透過率が減少する。こうして、入射角度に応じて透過率が変化するようになっていることで、ローパスフィルタ17はイメージセンサ13への光の入射角度を略垂直な範囲に制限する。
【0031】
また、ローパスフィルタ17は有限数の誘電体薄膜から構成されているために、波長λ近傍から十分に離れた長波長帯では、透過率が0%となっていない部分24がある。波長に対する透過率のグラフ21aは、前述のように入射角度に応じて短波長側にシフトするが、入射角度が大きい場合には、LED16のスペクトル22と部分24とが重なることがある。こうして部分24とスペクトル22とが重なる入射角度では、前述と同様に、部分24とスペクトル22とで囲まれる面積に比例した光量の赤外光がローパスフィルタ17を透過する。このため、ローパスフィルタ17は、一定の角度範囲内では入射角度が大きくなるにつれて透過光量が徐々に減少し、入射角度が大きなところでは透過光量が略0になるが、さらに入射角度が大きくなると、部分24とスペクトル22との重なりに応じた光量の赤外光がローパスフィルタ17を透過する。
【0032】
図3に示すように、角度制限フィルタ18は、厚さ0.15mm程度の薄く透明なガラス基板26と、このガラス基板26の表面に設けられた遮光膜27とから構成される。遮光膜27は、ガラス基板26の被写体12側に設けられ、複数の誘電体薄膜を積層して形成される。遮光膜27は、入射した光を吸収する吸収膜となっており、波長λ近傍の波長帯を含め、イメージセンサ13の画素に感度のある全ての波長帯の光を吸収する。また、遮光膜27には、複数の開口28が設けられている。開口28は、イメージセンサ13の画素29の正方格子状の配列合わせて、各画素29と一対一に対応するように正方格子状に設けられている。このため、開口28のピッチは、画素29のピッチに等しい。また、各開口28は、正方形状に設けられている。
【0033】
図4(A)に示すように、開口28の列(図3の線A)に沿った近接型撮像装置11の断面を見ると、角度制限フィルタ18は、各開口28と各画素29とを一対一に対応させ、かつ、各画素29の直上に開口28が位置するように、画素29と開口28の中心位置を一致させて配置される。このため、例えば、ある画素29aには直上の開口28aが対応し、この画素29aに隣接する画素29bには、開口28aに隣接する開口28bが対応して配置される。
【0034】
また、開口28の大きさは、画素29よりも大きい。ここでは、開口28の辺の長さを2R、画素29の辺の長さを2rとし、開口28の中心から辺の中央までの距離(中心から輪郭までの最短距離)Rは、画素29の中心から辺の中央までの距離(中心から輪郭までの最短距離)rよりも大きいものとする(R>r)。
【0035】
さらに、角度制限フィルタ18は、イメージセンサ13の前面に、中間層31を介して略密着して配置される。中間層31は、例えば、角度制限フィルタ18をイメージセンサ13に接着する接着層であり、ここでは、中間層31の厚さTは、ガラス基板26の厚さTと比較して十分に小さいものとする(T/T≪1)。また、角度制限フィルタ18の上面側(被写体12側)にはローパスフィルタ17が配置されるが、ローパスフィルタ17と角度制限フィルタ18は接着されておらず、角度制限フィルタ18の上面は薄い空気の層(屈折率n≒1)に隣接している。
【0036】
角度制限フィルタ18は、上述のように配置されるだけでなく、以下に説明する条件を満たすように構成されている。まず、ある画素29aの輪郭と、隣接する画素29bに対応する開口28b(以下、隣の開口という)の輪郭との面内方向の最短距離をL、画素29aの輪郭から隣の開口28bの輪郭を望む法線方向を基準とした最小の角度をθとすると、最短距離L1はL=Ttanθで表される。また、ガラス基板26側から角度制限フィルタ18の上面(被写体12側)に光を入射させるときの臨界角をθとする。このとき、角度制限フィルタ18は、角度θが臨界角θ以上の大きさ(θ≧θ)となるように、下記数1の条件式を構成されている。臨界角θは、sinθ=1/nを満たすので、これを用いて数1の条件式の右辺を整理すれば、最短距離Lが満たす条件式は下記数2の条件式となる。
【0037】
【数1】

【0038】
【数2】

【0039】
数2(数1)の条件式は、ある画素29aから角度制限フィルタ18の被写体12側表面に向けて様々な角度で光を出射したときに、この光が、隣の開口28bで全反射されるようにするための条件である。また、数2(数1)の式の等号は、図4(B)に示すように、ある画素29aの輪郭から隣の開口28bの輪郭の最も近い位置を望む角度θが臨界角θに丁度等しくなる場合を示している。こうして、数2の条件式を満たすように、開口28(及び画素29)が設けられていることで、角度制限フィルタ18は、遮光膜27によって各画素29に隣の開口28から光が入射することを防ぐとともに、各画素29には直上の開口28を略垂直に通過した光だけが入射するように、被写体12からイメージセンサ13への光の入射角度を制限する。
【0040】
なお、最短距離Lの具体的な値は、数2の条件式を満たし、かつ、上述の角度制限フィルタ18の構成が維持される範囲内で任意に定めることができる。したがって、数1の下限をLmin、開口28及び画素29のピッチをPとするときに、P>L≧Lminを満たす範囲内で定めることができる。最短距離Lが、開口28及び画素29のピッチP以上の値になると、開口28や画素29の大きさがなくなり、近接型撮像装置11を上述のように構成することができなくなる。この最短距離の上限の値については後述する変形例についても同様である。
【0041】
また、近接型撮像装置11では、開口28及び画素29が正方格子状に配列され、かつ、いずれも正方形状に形成されているので、イメージセンサ13及び角度制限フィルタ18は、開口28及び画素29の配列のピッチPが下記数3の条件式を満たすように形成されている。
【0042】
【数3】

【0043】
数3の条件式は、開口28及び画素29が正方格子状に配列され、かつ、いずれも正方形に形成されているという条件下で、数2(数1)の条件式から導かれる。まず、開口28及び画素29が正方格子状に配列され、かつ、いずれも正方形状に形成されているときには、最短距離Lは、L=P−(R+r)となる。そして、これを用いて数2の条件式を、ピッチPについて整理すれば数3の条件式が得られる。
【0044】
また、開口28及び画素29のピッチPは、数3の条件式を満たし、かつ、イメージセンサ13が解像力を失わない範囲内で任意に定めることができる。しがたって、数3の下限をPmin、画素29が配列されたイメージセンサ13の撮像領域の幅(又は長さ)をWとするときに、W/2>P≧Pminを満たす範囲内で定めることができる。開口28及び画素29のピッチPが撮像領域の幅Wの1/2を超えると、撮像領域内に2以上の画素29を配列することができなくなるため、イメージセンサ13は実質的に解像力を失う。なお、こうしたピッチPの上限は、後述する変形例の場合にも同じである。
【0045】
上述のように構成される近接型撮像装置11では、以下に説明するように、各画素28に入射する光の波長を波長λ近傍の赤外光に制限し、かつ、被写体12の各部分と画素29とを一対一に対応させて、被写体12を撮像する。
【0046】
図5に示すように、近接型撮像装置11ではLED16から波長λ近傍の赤外光を被写体12に照射して撮像するので、近接型撮像装置11には、被写体12の表面又は表層構造で散乱された波長λ近傍の赤外光41a,41b,42a,42bが入射する。このように、被写体12から入射する赤外光41a,41b,42a,42bは、ハイパスフィルタを透過して、ローパスフィルタ17に入射する。また、こうしてローパスフィルタ17に到達する赤外光41a,41b,42a,42bは、それぞれに様々な入射角度でローパスフィルタ17に入射する。
【0047】
ローパスフィルタ17に入射した赤外光41a,41b,42a,42bのなかでも、傾斜して入射した傾斜光41a,41bは、各々の入射角度に応じてローパスフィルタ17で減光され、殆ど角度制限フィルタ18には到達しない。一方、ローパスフィルタ17に入射した赤外光41a,41b,42a,42bのなかでも、垂直に入射した垂直光42a,42bは、ローパスフィルタ17を100%に近い高い透過率で透過して、角度制限フィルタ18に到達する。
【0048】
そして、ローパスフィルタ17を透過した垂直光42a,42bのうち、遮光膜27に入射する垂直光42bは吸収されてイメージセンサ13には到達せず、開口28に入射する垂直光42aだけが、開口28を通って、通過した開口28に対応する直下の画素29に入射する。
【0049】
また、赤外光44のように、赤外光41a,41bよりもさらに入射角度が大きくなると、波長λから十分に離れた長波長帯におけるローパスフィルタ17の透過率特性を反映して、減光されながらもローパスフィルタ17を透過し、角度制限フィルタ18に到達することがある。こうして角度制限フィルタ18に斜めに入射する赤外光は、遮光膜27に入射すれば吸収されるので角度制限フィルタ18の内部には進入しないが、開口28に入射すると、角度制限フィルタ18の内部に進入する。
【0050】
しかし、近接型撮像装置11は、前述のように数2(数1)の条件を満たすように構成されているので、どのような角度で開口28に赤外光が入射したとしても、角度制限フィルタ18に入射した赤外光が、通過した開口28に対応した画素29以外の画素29(隣の画素29や、さらに遠方の画素29)には到達することがない。例えば、赤外光44のように、開口28に斜めに入射した赤外光は、角度制限フィルタ18の内部に進入すると、通過した開口28の直下の画素29とその隣の画素29の間に到達し、隣の画素29には入射しない。また、こうして画素29と画素29との間に到達した赤外光は、角度制限フィルタ18の下面やイメージセンサ13の表面等で反射され、赤外光44のように遮光膜27に入射して吸収される。
【0051】
したがって、各画素29には、垂直光42aのように、開口28と画素29とが一対一に対応する角度範囲43の入射角度で開口28を通過した赤外光だけが入射し、角度範囲43よりも傾斜した赤外光は入射しない。このため、近接型撮像装置11は、被写体12をイメージセンサ13に略密着するほどに近接して配置しても、被写体12を精細に撮影することができる。
【0052】
また、ここではLED16に由来する波長λ近傍の赤外光だけが近接型撮像装置11に入射することを前提に説明したが、被写体12の周囲が十分に遮光されていない状態で撮影する場合には、被写体12の周囲環境に由来する波長λ近傍よりも長波長の赤外光が近接型撮像装置11に入射することがある。こうした場合にも、上述と同様に、斜めに入射する長波長の赤外光は、概ねローパスフィルタ17で減光されて角度制限フィルタ18には到達しない。また、波長λよりも長波長の透過率特性を反映してローパスフィルタ17を斜めに透過し、開口28に入射する長波長の赤外光があっても、上述のように角度制限フィルタ18で遮光され、画素29には到達しない。したがって、近接型撮像装置11は、前述の数2(数1)の条件を満たすように構成されていることで、被写体12の周囲が十分に遮光されていないときにも、被写体12を精細に撮影することができる。
【0053】
なお、上述の実施形態では、開口28及び画素29は正方格子状に配列され、かつ、開口28及び画素29がともに正方形に構成される例について説明したが、開口28や画素29の形状は正方形でなくても良い。
【0054】
例えば、図6(A)に示すように、角度制限フィルタ18の開口を円形の開口61とし、イメージセンサ13の画素を正方形の画素29とする。この場合には、開口61の輪郭と隣の開口61に対応した画素29の輪郭との面内方向における最短距離は、上述の実施形態と同様のLとなる。したがって、画素29を正方形とし、角度制限フィルタ18の開口を円形の開口61とする場合に、前述の数2(数1)の条件を満たすようにするためには、数3の条件を満たすように角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成すれば良い。
【0055】
また、例えば、図6(B)に示すように、角度制限フィルタ18の開口を円形の開口61とし、イメージセンサ13の画素を円形の画素62とする。この場合、開口61の輪郭と、隣の開口61に対応した画素29の輪郭との最短距離は、上述の実施形態と同様のLとなる。したがって、角度制限フィルタ18の開口とイメージセンサ13の画素をともに円形に形成する場合にも、前述の数2(数1)の条件を満たすようにするためには、数3の条件を満たすように角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成すれば良い。
【0056】
さらに、上述の実施形態では、開口28及び画素29は正方格子状に配列され、かつ、開口28及び画素29がともに正方形に構成される例について説明したが、開口28及び画素29の配列は正方格子状でなくても良い。
【0057】
例えば、図7(A)に示すように、画素29(及び開口28)の配列を、行(又は列)毎に交互に画素29の位置をずらし、画素29が正三角形の頂点に位置するように、いわゆるハニカム状の配列とする。この場合、画素29の周囲には6個の画素29が隣接する。
【0058】
このため、開口28の頂点と、隣接する行の画素29の頂点を結ぶ距離Lが、開口28の輪郭と、隣の開口28に対応した画素29の輪郭との面内方向における最短距離となる。この最短距離Lは、上述の実施形態のように、行に沿って隣り合う開口28と画素29との間で測った距離Lとは異なる。したがって、画素29及び開口28をハニカム状に配列する場合には、この最短距離Lが前述の数2(数1)の条件式を満たすように、角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成すれば良い。このとき、画素29及び開口28のピッチPは、下記の数4の条件式を満たすように構成すれば良い。
【0059】
【数4】

【0060】
また、こうして画素や開口をハニカム状に配列する場合にも、画素や開口の形状を任意の形状に形成しても良い。例えば、図7(B)に示すように、画素及び開口をハニカム状に配列し、画素29を正方形に形成し、開口を円形の開口61とする。この場合、画素29の頂点と、隣接する行の開口61の輪郭を結ぶ距離Lが、開口61の輪郭と隣の開口61に対応した画素29の輪郭との面内方向における最短距離となる。この最短距離Lは、上述の実施形態のLとは異なる。このため、画素29及び開口61をハニカム状に配列する場合には、この最短距離Lが前述の数1(数2)の条件式を満たすように、角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成すれば良い。このとき、画素29及び開口61のピッチPは、下記の数5の条件式を満たすように構成すれば良い。
【0061】
【数5】

【0062】
さらに、例えば、図7(C)に示すように、画素及び開口をハニカム状に配列し、開口を円形の開口61に、画素を円形の画素62にする。この場合、開口61の輪郭と、隣の開口61に対応する画素62の輪郭との面内方向における最短距離は、上述の実施形態と同じ最短距離Lとなる。このため、画素及び開口をハニカム状に配列するとともに、画素及び開口をいずれも円形に形成する場合には、前述の数1の条件式を満たすように、角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成すれば良い。このとき、開口61及び画素62のピッチPも、前述の数3の条件式を満たすように構成すれば良い。
【0063】
なお、上述の実施形態では、角度制限フィルタ18とイメージセンサ13の間の中間層31の厚さTが、角度制限フィルタ18のガラス基板26の厚さTよりも十分に小さい場合について説明したが、ガラス基板26が極めて薄い場合や、中間層31の厚さが比較的大きい場合には、以下のようにすれば良い。
【0064】
まず、上述の実施形態と同様に、開口28及び画素29は正方格子状に配列され、開口28及び画素29のどちらも正方形に形成される場合について説明する。この場合、図8に示すように、ある画素29aの輪郭から隣の開口28bの輪郭の最も近い位置に光を入射させると、中間層31と角度制限フィルタ18の境界で無視できない大きさで屈折が生じる。このため、中間層31と角度制限フィルタ18の境界面における屈折を考慮して、最短距離及びピッチPを定める必要がある。
【0065】
ある画素29aの輪郭から出射して、隣の開口28bの輪郭の最も近い位置に入射する光66が、中間層31と角度制限フィルタ18の境界上で屈折する点を屈折点67とし、この屈折点67から開口28bの輪郭までの面内方向における距離をX1、屈折点67から画素29aの輪郭までの面内方向における距離をX、開口28bの輪郭から画素29aの輪郭までの面内方向における最短距離をLとする。このとき、光66が、開口28bの輪郭で全反射されるようにするためには、最短距離Lを下記数6の条件式を満たすようにすれば良い。
【0066】
【数6】

【0067】
距離Xは、光66の屈折角をψとすると、X=Ttanψで表される。一方、画素29aから隣の開口28bに向けて出射された光が、開口28bで全反射されるようにするためには、屈折角ψが臨界角θ以上の大きさになっている必要がある(ψ≧θ)。したがって、距離Xは下記数7の条件式を満たす必要がある。また、臨界角θは、sinθ=1/nを満たすので、これを用いて数7の条件式を整理すると、距離Xが満たすべき条件式は、下記数8の条件式となる。
【0068】
【数7】

【0069】
【数8】

【0070】
一方、中間層31から角度制限フィルタ18への光66の入射角をψとすれば、距離Xは、X=Ttanψで求められる。また、屈折角ψと入射角ψとの間には、nsinψ=nsinψの関係がある。これらの式を、光66が角度制限フィルタ18の上面で全反射される条件(sinψ=sinθ=1/n)を用いて整理すれば、距離Xは下記数9の式で表されることが分かる。
【0071】
【数9】

【0072】
これらのことから、最短距離Lが満たすべき数6の条件式は、下記数10の式で表される。したがって、中間層31の厚さTがガラス基板26の厚さTと比較して無視できない厚さである場合に、近接型撮像装置11で被写体12を精細に撮像するためには、開口28の輪郭と隣接する開口28に対応した画素29の輪郭との面内方向における最短距離Lが数10の条件を満たすようにすれば良い。
【0073】
【数10】

【0074】
また、このように、中間層31の厚さTがガラス基板26の厚さTに比べて無視できない厚さであり、開口28及び画素29が正方格子状に配列され、かつ、開口28及び画素29のいずれも正方形に形成されているときには、開口28及び画素29のピッチPが、下記数11の条件式を満たすように、角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成することが好ましい。
【0075】
【数11】

【0076】
さらに、中間層31の厚さTがガラス基板26の厚さTに比べて無視できない厚さであり、図6(A)と同様に開口及び画素が正方格子状に配列され、開口を円形の開口61とし、画素を正方形の画素29とする場合にも、上述の数11の条件式を満たすように、角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成することが好ましい。
【0077】
また、中間層31の厚さTがガラス基板26の厚さTに比べて無視できない厚さであり、図6(B)と同様に開口及び画素が正方格子状に配列され、開口を円形の開口61とし、画素を円形の画素62とする場合にも、開口61及び画素62のピッチPが、前述の数11の条件式を満たすように、角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成することが好ましい。
【0078】
さらに、中間層31の厚さTがガラス基板26の厚さTに比べて無視できない厚さであり、図7(A)と同様にして、開口及び画素をハニカム状に配列するとともに、開口28及び画素29をいずれも正方形に形成するときには、開口28及び画素29のピッチPが、下記数12の条件式を満たすように、角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成することが好ましい。
【0079】
【数12】

【0080】
同様に、中間層31の厚さTがガラス基板26の厚さTに比べて無視できない厚さであり、図7(B)のように、開口及び画素をハニカム状に配列するとともに、開口を円形の開口61とし、画素を正方形の画素29とするときには、開口28及び画素29のピッチPが、下記数13の条件式を満たすように、角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成することが好ましい。
【0081】
【数13】

【0082】
また、中間層31の厚さTがガラス基板26の厚さTに比べて無視できない厚さであり、図7(C)のように、開口及び画素をハニカム状に配列するとともに、開口を円形の開口61とし、画素を円形の画素62とするときには、開口28及び画素29のピッチPが、前述の数11の条件式を満たすように、角度制限フィルタ18及びイメージセンサ13を構成することが好ましい。
【0083】
なお、数10の導出方法から分かるとおり、角度制限フィルタ18とイメージセンサ13の間に、ガラス基板26の厚さTと比較して無視できない大きさの材料が複数介在している場合には、ガラス基板26を含め、角度制限フィルタ18からイメージセンサ13の前面にある各材料の厚さをT、各材料の屈折率をnとして、開口28の輪郭と隣接する開口28に対応した画素29の輪郭との面内方向における最短距離Lが、下記数14の条件式を満たすように構成すれば良い。
【0084】
【数14】

【0085】
なお、上述の実施形態や変形例では、角度制限フィルタ18の上面(被写体12側)が空気に接している例を説明したが、角度制限フィルタ18の上面には接着剤等が接触していても良い。例えば、角度制限フィルタ18の上面が屈折率nに接触している場合には、ある開口の輪郭と隣接する開口に対応した画素の輪郭との面内方向での最短距離が満たすべき条件式や、開口及び画素のピッチPが満たすべき条件式は、前述の数1〜数14の条件式で、屈折率n(,n,n)を、屈折率nを基準とした相対的な屈折率n/n(,n/n,n/n)に置き換えれば良い。
【0086】
なお、上述の実施形態及び変形例では、説明のために、被写体12側から、ローパスフィルタ17,角度制限フィルタ18,イメージセンサ13の順に配置される例を挙げたが、ローパスフィルタ17と角度制限フィルタ18の配置順序は、上述の実施形態及び変形例とは逆順に、被写体12側から、角度制限フィルタ18,ローパスフィルタ17,イメージセンサ13の順に配置されていることが好ましい。特に、ローパスフィルタ17及び角度制限フィルタ18よりも被写体12に、各画素に対応して配列されるマイクロレンズ等の光学部品をさらに配置する場合には、被写体12側から、角度制限フィルタ18,ローパスフィルタ17,イメージセンサ13の順に配置されていると、ノイズ光がより低減され、精細な撮影が容易になる。
【0087】
こうして、被写体12側から角度制限フィルタ18,ローパスフィルタ17の順に配置するときには、ローパスフィルタ17のガラス基板の厚さや屈折率等を考慮する必要があるため、見かけ上は最短距離Lが満たすべき条件式が異なるが、実質的には上述の実施形態や実施例と同様の条件式となる。例えば、図9に示すように、ローパスフィルタ17を角度制限フィルタ18とイメージセンサ13の間に配置し、ローパスフィルタ17のガラス基板の厚さをTとする。また、ローパスフィルタ17のガラス基板の屈折率が角度制限フィルタ18のガラス基板26と同じ屈折率nであるとする。さらに、ローパスフィルタ17の機能を発現する誘電体薄膜の積層体の部分や、角度制限フィルタ18とローパスフィルタ17の間に介在する接着剤や空気等の層の厚さは、これらの層での屈折を無視できる程度に、角度制限フィルタ18のガラス基板26とローパスフィルタ17のガラス基板の厚さの和に比べて十分に薄いものとする。この場合、角度制限フィルタ18のガラス基板26とローパスフィルタ17のガラス基板の厚さの和(T+T)を、角度制限フィルタ18の厚さとみなすことができるので、最短距離Lが満たすべき条件式は、数1及び数2の式でTをT+Tに置き換えたものになる。したがって、開口及び画素のピッチPが満たすべき条件式は、開口や画素の配列,形状の組み合わせに応じて、前述の数3〜数5の式でTをT+Tに置き換えたものになる。
【0088】
また、誘電体薄膜の積層体の部分や、角度制限フィルタ18とローパスフィルタ17の間に介在する接着剤や空気等の層の厚さが十分に薄いものの、ローパスフィルタ17のガラス基板の屈折率が、角度制限フィルタ18のガラス基板の屈折率nとは異なる屈折率nであるとする。この場合、前述の変形例(図8参照)と同様に、ローパスフィルタ17のガラス基板を、無視できない厚さの中間層31と同様に扱うことができる。このため、最短距離Lが満たすべき条件式は、前述の数10の式で、TをTに、nをnに置き換えたものとなる。したがって、開口及び画素のピッチPが満たすべき条件式は、開口や画素の配列,形状の組み合わせに応じて、前述の数11〜数13の式でTをTに、nをnに置き換えたものとなる。
【0089】
さらに、ローパスフィルタ17を角度制限フィルタ18とイメージセンサ13の間に配置し、ローパスフィルタ17のガラス基板の屈折率が角度制限フィルタ18のガラス基板の屈折率nとは異なる屈折率nであり、かつ、誘電体薄膜の積層体の部分や角度制限フィルタ18とローパスフィルタ17の間に介在する接着剤や空気等の層の厚さが無視できないとする。こうした場合には、無視することができない全ての層の厚さ及び屈折率を考慮し、前述の数14の式に基づいて最短距離Lの条件式を定めれば良い。また、開口及び画素のピッチPが満たすべき条件式は、開口や画素の配列,形状の組み合わせに応じて、上述の実施形態や変形例に準じて定めれば良い。
【0090】
また、上述の実施形態及び変形例から分かるように、最短距離Lの下限は、角度制限フィルタ18とイメージセンサ13が密着している場合に最小となる。このため、ローパスフィルタ17と角度制限フィルタ18の相対的な配置順序や、ローパスフィルタ17や角度制限フィルタ18以外の光学部品(マイクロレンズ等)の有無等によらず、少なくとも数2(数1)の条件を満たすように近接型撮像装置11を構成することで、斜め入射光によるノイズを低減することができる。そして、上述の実施形態及び変形例のように、開口及び画素の配列や形状、ローパスフィルタ17と角度制限フィルタ18の相対的な配置順序や、マイクロレンズ等の光学部品の有無、中間層31の厚さや屈折率等、実際的な様々条件に応じて、数3〜14の条件を満たすように近接型撮像装置11を構成すれば、ノイズを特に良好に低減することができる。
【0091】
なお、上述の実施形態及び変形例では、開口及び画素を正方格子状又はハニカム状に配列した例を説明したが、開口及び画素の配列はこれに限らず、任意の配列にして良い。また、上述の実施形態及び変形例では、開口や画素が、正方形又は円形に形成される例を説明したが、開口や画素の形状はこれらの形状に限らず、長方形や正六角形等、任意の形状にして良い。さらに、上述の実施形態及び変形例では、開口及び画素の形状の組み合わせとして、開口及び画素が共に正方形の例、開口が円形で画素が正方形の例、開口及び画素がともに円形の例の3種の例を説明したが、開口及び画素の形状の組み合わせはこれに限らない。例えば、開口を正方形に形成し、画素を円形に構成しても良く、前述のように長方形や六角形等の任意の形状を組み合わせても良い。このように、開口及び画素の配列や、開口や画素の形状を上述の実施形態及び変形例と異なるものにする場合にも、ある開口の輪郭と隣接する開口に対応した画素の輪郭の最短距離Lが満たすべき条件式や、開口及び画素のピッチPが満たす条件式は、上述の実施形態及び変形例で説明したものと同様にして求めることができる。
【0092】
また、上述の実施形態及び変形例では、ローパスフィルタ17とハイパスフィルタ(図示しない)を分けて設ける例を説明したが、これらの替わりに、これらの性質を併せ持つバンドパスフィルタを用いても良い。さらに、上述の実施形態及び変形例では、ローパスフィルタ17と角度制限フィルタ18を別個に設ける例を説明したが、角度制限フィルタ18の表裏いずれかに(または両面に)、ローパスフィルタ17として機能する誘電体薄膜の積層体を設け、ローパスフィルタ17と角度制限フィルタ18を一体化しても良い。同様に、ハイパスフィルタを角度制限フィルタ18に一体化して設けても良い。また、イメージセンサ13にカバーガラスが設けられているときには、ここに各種フィルタを一体化して設けても良い。このように、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ17、角度制限フィルタ18等を一体化すると、部品点数が削減され、低コストに近接型撮像装置を製造することができるとともに、近接型撮像装置をより薄型化することができる。
【0093】
なお、上述の実施形態及び変形例では、波長λの赤外光によって被写体12を撮影する例を説明したが、これに限らず、これ以外の波長帯の赤外光や、可視光,紫外線等、任意の波長帯の光で被写体12を撮影するようにしても良い。
【符号の説明】
【0094】
11 近接型撮像装置
12 被写体
12a〜12c 被写体の各部分
13 イメージセンサ
14 カバーガラス
16 LED
17 ローパスフィルタ(波長制限フィルタ)
18 角度制限フィルタ
26 ガラス基板
27 遮光膜
28,61 開口
29,62 画素
31 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接した被写体からの光を、所定の配列で複数設けられた画素で光電変換し、前記被写体を撮像するイメージセンサと、
透明な基板と、前記画素に一対一に対応した開口を有し、前記基板の前記被写体側に設けられた遮光膜とからなり、前記イメージセンサの前面に配置され、前記イメージセンサに入射する光の入射角度を、互いに対応する前記開口から前記画素に入射する角度範囲に制限する撮像フィルタと、
を備え、
前記基板の屈折率をn,前記基板の厚さをT,前記開口の輪郭とこの開口に隣接した前記開口に対応する前記画素の輪郭との前記基板面内方向における最短距離をLとするときに、



を満たすことを特徴とする近接型撮像装置。
【請求項2】
前記イメージセンサ側に透過する光の波長を所定波長帯に制限するとともに、入射角度が大きいほど前記所定波長帯の光の透過率が小さくなる波長制限フィルタを備えることを特徴とする請求項1に記載の近接型撮像装置。
【請求項3】
前記撮像フィルタと前記イメージセンサの間に、厚さT,屈折率nの中間層を備え、前記最短距離Lが



を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の近接型撮像装置。
【請求項4】
前記開口及び前記画素は正方格子状に配列されるとともに、前記開口及び前記画素は正方形に形成され、
前記開口の中央から輪郭までの最短距離をR,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をr,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の近接型撮像装置。
【請求項5】
前記開口及び前記画素は正方格子状に配列され、前記開口は円形に形成されるとともに、前記画素は正方形に形成され、
前記開口の中央から輪郭までの最短距離をR,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をr,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の近接型撮像装置。
【請求項6】
前記開口及び前記画素は正方格子状に配列され、前記開口及び前記画素が円形に形成され、
前記開口の中央から輪郭までの最短距離をR,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をr,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の近接型撮像装置。
【請求項7】
前記開口及び前記画素は、前記開口及び前記画素が正三角形の頂点に位置するように、行または列毎に交互に位置をずらしたハニカム状に配列されるとともに、前記開口及び前記画素は正方形に形成され、
前記開口の中央から輪郭までの最短距離をR,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をr,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の近接型撮像装置。
【請求項8】
前記開口及び前記画素は、前記開口及び前記画素が正三角形の頂点に位置するように、行または列毎に交互に位置をずらしたハニカム状に配列されるとともに、前記開口は円形に形成され、かつ、前記画素は正方形に形成され、
前記開口の中央から輪郭までの最短距離をR,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をr,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の近接型撮像装置。
【請求項9】
前記開口及び前記画素は、前記開口及び前記画素が正三角形の頂点に位置するように、行または列毎に交互に位置をずらしたハニカム状に配列されるとともに、前記開口及び前記画素が円形に形成され、
前記開口の中央から輪郭までの最短距離をR,前記画素の中央から輪郭までの最短距離をr,前記配列のピッチをPとするときに、



を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の近接型撮像装置。
【請求項10】
近接した被写体からの光を、所定の配列で複数設けられた画素で光電変換し、前記被写体を撮像するイメージセンサの前面に配置され、
透明な基板と、
前記画素に一対一に対応した開口を有し、前記基板の前記被写体側に設けられた遮光膜と、
を備え、
前記基板の屈折率をn,前記基板の厚さをT,前記開口の輪郭とこの開口に隣接した前記開口に対応する前記画素の輪郭との前記基板面内方向における最短距離をLとするときに、



を満たし、前記イメージセンサに入射する光の入射角度を、互いに対応する前記開口から前記画素に入射する角度範囲に制限することを特徴とする撮像フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−225904(P2010−225904A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72312(P2009−72312)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】