送信アンテナ装置及び送信アンテナ装置が収容されるドアハンドル
【課題】浮遊容量が生じにくい送信アンテナ装置を提供すること。
【解決手段】磁性体コア9及び磁性体コア9に巻回されたコイル10を備える送信アンテナ部3と、一対以上の導電体によって形成され、人体が近接すると静電容量を変える静電容量検出電極に、前記静電容量の変化を検出する静電容量検出回路が電気的に接続される静電容量センサ部2と、電気的に隔離された状態で静電容量検出電極と離して配置される補助電極4と、を備える。そして、静電容量センサ部2は、送信アンテナ部3に対して、磁性体コア9の長手軸方向に連結される。
【解決手段】磁性体コア9及び磁性体コア9に巻回されたコイル10を備える送信アンテナ部3と、一対以上の導電体によって形成され、人体が近接すると静電容量を変える静電容量検出電極に、前記静電容量の変化を検出する静電容量検出回路が電気的に接続される静電容量センサ部2と、電気的に隔離された状態で静電容量検出電極と離して配置される補助電極4と、を備える。そして、静電容量センサ部2は、送信アンテナ部3に対して、磁性体コア9の長手軸方向に連結される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車に搭載されるキーレスエントリシステムに適用して好適な送信アンテナ装置及び送信アンテナ装置が収容されるドアハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダーにキーを差し込まずに、自動車等のドアを施錠又は解錠することが可能なキーレスエントリシステムがある。キーレスエントリシステムに用いられるキー付きのリモートコントロール装置(以下、単にキーリモコンと称する。)には、一例として、施錠又は解錠を指示するボタンと、このボタンが押下されたことによって所定の周波数の信号電波を発生するアンテナ装置等が設けられたものがある。そして、ユーザがキーリモコンのボタンを押下すると、数m程度離れていてもドアを施錠又は解錠できる。近年は、キーリモコンを持ったユーザが自動車に近づくと、人体が接近したことを検出して自動車のドアを解錠するキーレスエントリシステムも実現されている。
【0003】
特許文献1には、自動車のドアハンドル101に設置され、人体の接近を判別する車両用人体検出装置100について開示されている。ここで、車両用人体検出装置100の構成例について、図10を参照して説明する。
図10(a)は、ドアハンドル101の長手方向に対して、垂直に切断した場合における車両用人体検出装置100の断面図である。
図10(b)は、車両用人体検出装置100の分解斜視図である。
【0004】
ドアハンドル101は、ハンドル本体102と、ハンドル本体102を覆うハンドルカバー103を備える。ハンドル本体102の内部には、静電容量の変化を検出するセンサ電極105と、センサ電極105の近傍に位置し、センサ電極105と容量結合した補助電極106が設けられる。補助電極106は、ドアハンドル101の芯材102aに装着される。
【0005】
長尺状に形成されるセンサ電極105は、ドアの外板に対向配置され、ドアの外板とセンサ電極105の間で平行平板型の静電容量を形成する。センサ電極105は、1本のハーネス105aが車体の前後方向に沿って平行状態で往復するように屈曲して構成される。
【0006】
ハンドル本体102とハンドルカバー103の隙間には、所定の周波数の電波を送信する送信アンテナ107と、ドア施錠用スイッチが収容される。送信アンテナ107は、直方体状のフェライト107aにハーネス107bが巻かれたループアンテナである。ユーザがドアハンドル101に手をかけると、センサ電極105が人体の接近を検知すると共に車両とキーリモコンとの間でID認証が行われる。そして、IDの照合が完了するとドアが解錠される。また、施錠の際には、ドアハンドル101に配設された不図示の押しボタンを押下することによって、ドアロックがなされるシステムが構築されている。
【特許文献1】特開2005−134178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された車両用人体検出装置100において、対向状態となる送信アンテナ107とセンサ電極105の間に浮遊容量が生じてしまう。浮遊容量が生じると、送信アンテナ107の共振周波数が意図した周波数からずれてしまうという問題が生じる。そして、送信アンテナ107には、金属部材が多く配置されると共に、比較的体積の大きな金属部材からなる補助電極106も配設されていることから、送信アンテナ107から励起された磁束の多くが補助電極106を通過する。このため、車外側に対する磁界が遠くまで伝播せず、所望の範囲に亘って好適な信号電波を送信することができない。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、浮遊容量が生じにくい送信アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の送信アンテナ装置は、磁性体コア及び磁性体コアに巻回されたコイルを備える送信アンテナ部と、一対以上の導電体によって形成され、人体が近接すると静電容量を変える静電容量検出電極に、静電容量の変化を検出する静電容量検出回路が電気的に接続される静電容量センサ部と、静電容量検出電極に対して電気的に隔離された状態で静電容量センサ部に配置される補助電極と、を備える。そして、静電容量センサ部は、送信アンテナ部に対して、磁性体コアの長手軸方向に連結される。
また、本発明のドアハンドルには、上記の送信アンテナ装置が収容される。
【0010】
このようにしたことで、送信アンテナ装置、特に、送信アンテナ部と静電容量検出電極との間に浮遊容量が生じ難くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、送信アンテナ装置に浮遊容量が生じにくくなるため、送信アンテナ部が送信する信号電波の共振周波数が意図した周波数からずれない。そして、静電容量センサ部は、送信アンテナ部に対して、磁性体コアの長手軸方向に連結されるため、安定して人体の近接を検出できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態例について、図1〜図4を参照して説明する。本実施の形態例では、人体が近接したことを静電容量の変化で検出する静電容量センサが一体成型された送信アンテナ装置1に適用した例について説明する。
【0013】
図1は、本例の送信アンテナ装置1が設置されるドアハンドル5bの構成例を示す。
内部に空洞を有するドアハンドル5bは、自動車のドア5aに取り付けられる。ドアハンドル5bの内部には、送信アンテナ装置1が収容される。送信アンテナ装置1は、静電容量の変化量で人体の接近を検出する静電容量センサ部2と、電流が加えられると磁界6a,6bを励起する送信アンテナ部3を備える。静電容量センサ部2と送信アンテナ部3は、送信アンテナ装置の長手方向に沿って、互いに隣り合うように設置されている。また、送信アンテナ装置1は、静電容量センサ部2が検出する静電容量の変化量を大きくする補助電極4を備える。補助電極4は、銅、アルミニウム等の金属箔,薄板で形成されており、静電容量センサ部2に絶縁された状態で配設されている。
【0014】
送信アンテナ部3は、所望の共振周波数において信号電流が印加されると、それぞれ車外側に向って励起される磁界6a,車内側へ向って励起される磁界6bを発生させる。このとき、補助電極4が静電容量センサ部2に重なり合うように構成されると、送信アンテナ部3から車内側に生じた磁束は、補助電極4に渦電流を生じさせると共に、磁束が補助電極4の内部を通過しやすくなる。このため、車内側に励起された磁界6bは減少する。
【0015】
しかしながら、本例の送信アンテナ部3は、補助電極4が金属箔や薄板によって形成されているために、補助電極4の内部を通過する磁束量を少なくすることができると共に、渦電流の発生もまた低く抑えることが可能である。さらに、仮に補助電極4の内部を磁束が通過したり、渦電流が発生したりすることで、車内側への磁界伝播に影響が生じても、少なくとも車外側への磁界伝播範囲は、送信アンテナ部3に巻回されるコイルの巻き数によって適宜調整が可能である。このため、十分に人体の接近を検出することができる。言い換えれば、車外側に励起される磁界6aの磁界伝播が良好であれば、送信アンテナ部3の機能として問題ないと言える。
【0016】
ドアハンドル5bに人体が触れること(ドアハンドル5bを手で握りしめた状態)をきっかけとして、静電容量センサ部2は静電容量の変化から人体の接触を検出する。そして、送信アンテナ部3は、磁界6aを発生させ、所定の周波数の信号電波をユーザが所持する不図示のキーリモコンに送信する。このキーリモコンは、送信アンテナ装置1から信号電波を受信すると、キーリモコン毎に一意に割り当てられる認証コードを、自動車に取り付けられた不図示の受信アンテナ装置を介して、車内に設置される不図示のユーザ認証装置に送る。ユーザ認証装置は、受信した認証コードに基づいてID認証を行い、IDの照合が完了した後、ドア5aを解錠する。
【0017】
図2は、送信アンテナ装置1の構成例を示す。
図2(a)は、上面視した場合における送信アンテナ装置1の斜視図である。
図2(b)は、下面視した場合における送信アンテナ装置1の斜視図である。
【0018】
送信アンテナ装置1は、静電容量センサ部2と送信アンテナ部3を備える。静電容量センサ部2は、2枚の基板7a,7bを貼り合わせて形成される部材であり、基板7a,7bの貼り合わせ面には、人体が近接すると静電容量を変える静電容量検出電極11a,11b(後述の図3参照)が形成される。静電容量センサ部2の上面には、電子部品12(後述の図4参照)を表面に実装する電子部品実装部8が形成される。静電容量センサ部2の下面には、補助電極4が形成される。
【0019】
送信アンテナ部3は、直方体形状の磁性体コア9と、磁性体コア9に巻回されるコイル10を備える。磁性体コア9の主材には、例えば、Ni−Zn系フェライトコアやMn−Zn系フェライトコア,金属系磁性体コア、アモルファス磁性体コアが用いられる。ただし、Mn−Zn系フェライト等、比抵抗が小さい磁性材料を磁性コアに採用する場合は、絶縁性樹脂等で形成されたボビンや絶縁テープ等を磁性体コア9とコイル10の間に介在させて、磁性体コア9とコイル10の間に高い絶縁性を確保する。また、コイル10の表面に絶縁樹脂をコーティングすることで、コイル10と磁性体コア9の絶縁性を確保してもよい。
【0020】
静電容量センサ部2と送信アンテナ部3は、磁性体コア9の長手軸方向に連結される。このため、静電容量センサ部2と送信アンテナ部3が駆動する際、互いに電気的・磁気的な干渉が起こりにくくなる。このため、送信アンテナ装置1が信号電波を送信したり、人体の接近を検出したりする特性に干渉による影響が及ばない。
【0021】
図3は、送信アンテナ装置1の分解例を示す。
図3(a)は、上面視した場合における送信アンテナ装置1の分解斜視図である。
図3(b)は、下面視した場合における送信アンテナ装置1の分解斜視図である。
【0022】
静電容量センサ部2を構成する基板7a,7bを分離すると、基板7bの貼り合わせ面に静電容量検出電極11a,11bが形成されることが示される。本例では、静電容量検出電極11aを枠状に形成し、静電容量検出電極11aの枠内に矩形状の静電容量検出電極11bを形成する。これらの静電容量検出電極11a,11bは、不図示の接続手段によって後述する静電容量検出回路と電気的に接続されている。なお、静電容量検出電極11a,11bは、少なくとも1対以上の導電体によって形成されていればよい。これは、本発明にかかるキーレスエントリシステムが、上記一対の静電容量検出電極11a,11b間で生じる静電容量の初期値を絶対値とし、人体が近づいた際の静電容量の変化量を検出するといった作動方式を採用しているためである。
【0023】
基板7a,7bは、合成樹脂で形成される絶縁体である。本例では、基板7bをプリント基板(PCB:Printed Circuit Board)とする。そして、静電容量検出電極11a,11bと補助電極4を、ランドパターンで形成する。このプリント基板には、柔軟性がないリジッド基板や柔軟性があるフレシキブル基板を採用することができる。
【0024】
図4は、図2で説明した送信アンテナ装置1を、A−A′線において断面視した例を示す。
ここでは、電子部品実装部8に複数の電子部品12が実装されることを示している。電子部品12には、静電容量検出電極11a,11bに電気的に接続され、静電容量の変化を検出する静電容量検出回路が含まれる。なお、電子部品12の形状は破線で示しており、どのように電子部品実装部8に配置されるかは任意である。さらに、電子部品実装部8には、上述の静電容量検出回路の他、送信アンテナとして機能する直列共振回路の構成部材であるコンデンサ等を搭載することも可能である。このように構成することによって、静電容量センサ部2のモジュール化を促進することができ、結果、送信アンテナ装置1の構成の簡略化を図ることが可能である。
【0025】
以上説明した第1の実施の形態例に係る送信アンテナ装置1によれば、静電容量センサ部2と送信アンテナ部3は、磁性体コア9の長手軸方向において互いに隣り合うように連結される。このため、静電容量センサ部2と送信アンテナ部3が駆動する際に、電気的・磁気的な干渉が生じにくくなる。特に、送信アンテナ部3と静電容量検出電極11a,11bが、互いに重なり合わないよう配置されていることから、浮遊容量の発生を低減することができる。この結果、送信アンテナ装置1が信号電波の送信を行うという動作を確実に達成できる。また、モジュール化された送信アンテナ装置1は、ドアハンドル5bの内部に容易に設置することができる。
【0026】
従来、送信アンテナ装置に静電容量検出電極は1つしか備えられておらず、基準となる静電容量値に対して、検出した静電容量値を比較することで静電容量の変化量を求めていた。しかし、本例の送信アンテナ装置1は、1対以上の静電容量検出電極を備えており、従来に比べて静電容量の変化量が大きい。このため、人体の接触によって変化する静電容量を確実に検出できる。この結果、静電容量センサ部2と送信アンテナ部3の機能を互いに阻害することなく、所望の特性を発揮できるという効果がある。
【0027】
また、静電容量センサ部2に補助電極4を電気的に絶縁した状態で配置することによって、人体が近接した際の静電容量の変化量を大きくすることができる。このため、電子部品12に含まれる静電容量検出回路は、静電容量の変化を確実に検出できる。この結果、ドアの施錠・開錠にかかる動作処理を確実にできるという効果がある。
【0028】
また、送信アンテナ部3の直列共振回路を構成するコンデンサ等を含む電子部品12を電子部品実装部8に実装できる。そして、電子部品12には、静電容量検出回路が含まれる。この結果、静電容量センサを一体とした送信アンテナ装置1としてモジュール化を実現できるという効果がある。
【0029】
ここで、図5〜図7を参照して、第1の実施の形態例に係る静電容量センサ部2の変形例について説明する。
【0030】
図5は、上面視した場合における送信アンテナ装置21の分解斜視図である。
静電容量センサ部12を構成する基板7a,7bを分離すると、基板7bの貼り合わせ面には、一対の静電容量検出電極23a,23bが平行に形成されることが示される。本例では、静電容量検出電極23a,23bが同一の帯状とされていると共に、不図示の接続手段によって後述する静電容量検出回路と電気的に接続されている。静電容量検出電極23a,23bは、銅板の厚みが大きく、互いの距離が狭いほど静電容量が大きい。このように静電容量検出電極23a,23bを形成しても、補助電極との相互作用により、人体が近接した際における静電容量の変化量を大きくすることができる。
【0031】
図6は、上面視した場合における送信アンテナ装置25の分解斜視図である。
静電容量センサ部26を構成する基板7a,7bを分離すると、基板7bの貼り合わせ面には、2つの静電容量検出電極27a,27bが形成されることが示される。静電容量検出電極27a,27bは、ワイヤを巻回して構成され、互いに電気的に接触していない部材である。静電容量検出電極27a,27bは、それぞれ一端子を構成しており、外部の電子部品に接続される引き出し部28a,28bを備えており、静電容量検出回路と電気的に接続されている。このように静電容量検出電極23a,23bを形成しても、補助電極との相互作用により、人体が近接した際における静電容量の変化量を大きくすることができる。なお、静電容量検出電極27a,27bを構成するワイヤは、互いに絶縁された2本のワイヤをより線にしたものであってもよい。また、一対以上の静電容量検出電極27a,27bを形成してもよい。
【0032】
図7は、上面視した場合における送信アンテナ装置31の斜視図である。
基板7aの上面には、電子部品を実装するための電子部品実装部33が形成される。そして、貼り合わされた基板7a,7bの短軸方向には、補助電極34が形成される。補助電極34は、導電性を有する金属箔体(例えば、銅箔テープ)が絶縁体である基板7a,7bに巻回される部材である。金属箔帯が重ねて巻回されると、補助電極34の静電容量が増えるため、補助電極34が静電容量検出電極の静電容量に対して与える変化量の影響度を大きくすることができる。静電容量の変化量や増加量は、補助電極34の巻き回数によって制御できる。なお、補助電極34は、基板7a,7bに厚みのある金属箔体を貼付けて構成してもよい。
【0033】
従来、静電容量検出電極の2端子間で容量変化を得るために、対峙するワイヤや導電板などを延長させ、基本となる静電容量を形成していた。そして、静電容量センサ部には、ワイヤや導電板に人体などが近接あるいは接触することで生じる微小な静電容量の変化を検出する方式を採用していた。ところで、静電容量の変化を検出するための感度設定は、変化する容量によって決まるため、微小な静電容量の変化で人体の近接を検出するように感度を設定すると人体以外の物体による近接であっても過剰に検出してしまう。そして、静電容量の変化量を大きくして人体のみの近接を感知させるためには感知させる面積を広くしなければならなかった。しかし、本例では、基板7a,7bに挟み込まれた静電容量検出電極を補助電極34で覆う事で、人体の近接(接触)する部分が小さくても静電容量の変化量を増加させる。これによって省スペースでかつ過剰反応を抑える構造を実現している。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態例に係る送信アンテナ装置41について、図8と図9を参照して説明する。図5において、既に第1の実施の形態で説明した図2に対応する部分には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0035】
図8は、送信アンテナ装置1の構成例を示す。
図8(a)は、上面視した場合における送信アンテナ装置41の斜視図である。
図8(b)は、下面視した場合における送信アンテナ装置41の斜視図である。
図8(c)は、上面視した場合における送信アンテナ装置41の分解斜視図である。
【0036】
送信アンテナ装置41は、送信アンテナ部3と静電容量の変化を検出する静電容量センサ部42を備える。静電容量センサ部42の下面には、送信アンテナ部3の下面まで覆われる基板43を備える。また、基板43の下面には、ほぼ全面に導電性の金属箔体からなる補助電極44が形成される。
【0037】
図9は、図8で説明した送信アンテナ装置41を、B−B′線において断面視した例を示す。
補助電極44は、静電容量センサ部42の下面から送信アンテナ部3の下面にかけて延ばされることが示される。そして、補助電極44の面積が広くなるため、人体が近接したことに伴う静電容量の変化を、送信アンテナ部3の付近に至るまで広範囲で検出できる。この結果、例えば、人体が近接した位置が静電容量センサ部42の付近でなくても、静電容量検出電極11a,11b間で形成される静電容量に対しての影響度を大きくするといった作用を奏する。この結果、ドアハンドルの広い範囲で、人体が近接したときの検出感度を高めることができるという効果を有する。
【0038】
以上説明した第2の実施の形態例に係る送信アンテナ装置41によれば、電気的に接続されていない補助電極44が送信アンテナ部3の下面まで延ばされることによって、静電容量検出電極11a,11bに対して静電容量の変化を増幅させるといった作用を奏する。このとき、補助電極44は、電気的に絶縁状態にあることから、補助電極44が送信アンテナ部3に対して不要な影響を及ぼさない。つまり、送信アンテナ部3に対して不要な浮遊容量を発生させずに、人体が近接した際の静電容量の変化量を高めるという効果がある。
【0039】
なお、補助電極44は、磁性体コア9の短手軸方向に幅を狭めた形状としてもよい。また、静電容量検出電極11a,11bとの絶縁を保った状態で、補助電極44を支持することができれば、補助電極44の基台となる基板43は必須の部材とはならない。例えば、補助電極44は、基板43を外してワイヤや銅箔を延ばしたものであってもよい。この場合、送信アンテナ部3と静電容量センサ部42を離して配置できるため、ドアハンドル内における送信アンテナ装置41の位置決めが容易となる。
【0040】
以上説明した第1及び第2の実施の形態例に係る送信アンテナ装置によれば、静電容量検出電極を1対とした場合について説明したが、静電容量検出電極を2対以上としてもよい。例えば、異なる場所に触れると施錠または解錠を行える仕様とする場合、検出チャンネルを2チャンネル用意しておく。このとき、静電容量検出電極を2対とし、人体の近接を各対で検出すればよい。このように、人体の近接を検出するチャンネルを増やすと、静電容量検出電極は2対以上必要となる。
【0041】
また、静電容量検出電極の形状は、上述した形態例に限らない。また、静電容量センサ部が検出するものは、人体の近接に限られず、その他の物体の近接を検出するようにしてもよい。また、腕時計や携帯電話装置の内部に記憶された認証キーを信号電波で送信する送信アンテナ装置として用いたり、住宅のドアまたはドアハンドルに送信アンテナ装置を設置したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態例における送信アンテナ装置が配置されるドアハンドルの構成例を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態例における送信アンテナ装置のA−A′線における構成例を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の他の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の他の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す分解斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す斜視図及び分解斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態例における送信アンテナ装置のB−B′線における構成例を示す分解斜視図である。
【図10】従来の送信アンテナ装置の例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1…送信アンテナ装置、2…静電容量センサ部、3…送信アンテナ部、4…補助電極、5a…ドア、5b…ドアハンドル、6a,6b…磁界、7a,7b…基板、8…電子部品実装部、9…磁性体コア、10…コイル、11a,11b…静電容量検出電極、12…電子部品、21,25,31,41…送信アンテナ装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車に搭載されるキーレスエントリシステムに適用して好適な送信アンテナ装置及び送信アンテナ装置が収容されるドアハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダーにキーを差し込まずに、自動車等のドアを施錠又は解錠することが可能なキーレスエントリシステムがある。キーレスエントリシステムに用いられるキー付きのリモートコントロール装置(以下、単にキーリモコンと称する。)には、一例として、施錠又は解錠を指示するボタンと、このボタンが押下されたことによって所定の周波数の信号電波を発生するアンテナ装置等が設けられたものがある。そして、ユーザがキーリモコンのボタンを押下すると、数m程度離れていてもドアを施錠又は解錠できる。近年は、キーリモコンを持ったユーザが自動車に近づくと、人体が接近したことを検出して自動車のドアを解錠するキーレスエントリシステムも実現されている。
【0003】
特許文献1には、自動車のドアハンドル101に設置され、人体の接近を判別する車両用人体検出装置100について開示されている。ここで、車両用人体検出装置100の構成例について、図10を参照して説明する。
図10(a)は、ドアハンドル101の長手方向に対して、垂直に切断した場合における車両用人体検出装置100の断面図である。
図10(b)は、車両用人体検出装置100の分解斜視図である。
【0004】
ドアハンドル101は、ハンドル本体102と、ハンドル本体102を覆うハンドルカバー103を備える。ハンドル本体102の内部には、静電容量の変化を検出するセンサ電極105と、センサ電極105の近傍に位置し、センサ電極105と容量結合した補助電極106が設けられる。補助電極106は、ドアハンドル101の芯材102aに装着される。
【0005】
長尺状に形成されるセンサ電極105は、ドアの外板に対向配置され、ドアの外板とセンサ電極105の間で平行平板型の静電容量を形成する。センサ電極105は、1本のハーネス105aが車体の前後方向に沿って平行状態で往復するように屈曲して構成される。
【0006】
ハンドル本体102とハンドルカバー103の隙間には、所定の周波数の電波を送信する送信アンテナ107と、ドア施錠用スイッチが収容される。送信アンテナ107は、直方体状のフェライト107aにハーネス107bが巻かれたループアンテナである。ユーザがドアハンドル101に手をかけると、センサ電極105が人体の接近を検知すると共に車両とキーリモコンとの間でID認証が行われる。そして、IDの照合が完了するとドアが解錠される。また、施錠の際には、ドアハンドル101に配設された不図示の押しボタンを押下することによって、ドアロックがなされるシステムが構築されている。
【特許文献1】特開2005−134178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された車両用人体検出装置100において、対向状態となる送信アンテナ107とセンサ電極105の間に浮遊容量が生じてしまう。浮遊容量が生じると、送信アンテナ107の共振周波数が意図した周波数からずれてしまうという問題が生じる。そして、送信アンテナ107には、金属部材が多く配置されると共に、比較的体積の大きな金属部材からなる補助電極106も配設されていることから、送信アンテナ107から励起された磁束の多くが補助電極106を通過する。このため、車外側に対する磁界が遠くまで伝播せず、所望の範囲に亘って好適な信号電波を送信することができない。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、浮遊容量が生じにくい送信アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の送信アンテナ装置は、磁性体コア及び磁性体コアに巻回されたコイルを備える送信アンテナ部と、一対以上の導電体によって形成され、人体が近接すると静電容量を変える静電容量検出電極に、静電容量の変化を検出する静電容量検出回路が電気的に接続される静電容量センサ部と、静電容量検出電極に対して電気的に隔離された状態で静電容量センサ部に配置される補助電極と、を備える。そして、静電容量センサ部は、送信アンテナ部に対して、磁性体コアの長手軸方向に連結される。
また、本発明のドアハンドルには、上記の送信アンテナ装置が収容される。
【0010】
このようにしたことで、送信アンテナ装置、特に、送信アンテナ部と静電容量検出電極との間に浮遊容量が生じ難くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、送信アンテナ装置に浮遊容量が生じにくくなるため、送信アンテナ部が送信する信号電波の共振周波数が意図した周波数からずれない。そして、静電容量センサ部は、送信アンテナ部に対して、磁性体コアの長手軸方向に連結されるため、安定して人体の近接を検出できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態例について、図1〜図4を参照して説明する。本実施の形態例では、人体が近接したことを静電容量の変化で検出する静電容量センサが一体成型された送信アンテナ装置1に適用した例について説明する。
【0013】
図1は、本例の送信アンテナ装置1が設置されるドアハンドル5bの構成例を示す。
内部に空洞を有するドアハンドル5bは、自動車のドア5aに取り付けられる。ドアハンドル5bの内部には、送信アンテナ装置1が収容される。送信アンテナ装置1は、静電容量の変化量で人体の接近を検出する静電容量センサ部2と、電流が加えられると磁界6a,6bを励起する送信アンテナ部3を備える。静電容量センサ部2と送信アンテナ部3は、送信アンテナ装置の長手方向に沿って、互いに隣り合うように設置されている。また、送信アンテナ装置1は、静電容量センサ部2が検出する静電容量の変化量を大きくする補助電極4を備える。補助電極4は、銅、アルミニウム等の金属箔,薄板で形成されており、静電容量センサ部2に絶縁された状態で配設されている。
【0014】
送信アンテナ部3は、所望の共振周波数において信号電流が印加されると、それぞれ車外側に向って励起される磁界6a,車内側へ向って励起される磁界6bを発生させる。このとき、補助電極4が静電容量センサ部2に重なり合うように構成されると、送信アンテナ部3から車内側に生じた磁束は、補助電極4に渦電流を生じさせると共に、磁束が補助電極4の内部を通過しやすくなる。このため、車内側に励起された磁界6bは減少する。
【0015】
しかしながら、本例の送信アンテナ部3は、補助電極4が金属箔や薄板によって形成されているために、補助電極4の内部を通過する磁束量を少なくすることができると共に、渦電流の発生もまた低く抑えることが可能である。さらに、仮に補助電極4の内部を磁束が通過したり、渦電流が発生したりすることで、車内側への磁界伝播に影響が生じても、少なくとも車外側への磁界伝播範囲は、送信アンテナ部3に巻回されるコイルの巻き数によって適宜調整が可能である。このため、十分に人体の接近を検出することができる。言い換えれば、車外側に励起される磁界6aの磁界伝播が良好であれば、送信アンテナ部3の機能として問題ないと言える。
【0016】
ドアハンドル5bに人体が触れること(ドアハンドル5bを手で握りしめた状態)をきっかけとして、静電容量センサ部2は静電容量の変化から人体の接触を検出する。そして、送信アンテナ部3は、磁界6aを発生させ、所定の周波数の信号電波をユーザが所持する不図示のキーリモコンに送信する。このキーリモコンは、送信アンテナ装置1から信号電波を受信すると、キーリモコン毎に一意に割り当てられる認証コードを、自動車に取り付けられた不図示の受信アンテナ装置を介して、車内に設置される不図示のユーザ認証装置に送る。ユーザ認証装置は、受信した認証コードに基づいてID認証を行い、IDの照合が完了した後、ドア5aを解錠する。
【0017】
図2は、送信アンテナ装置1の構成例を示す。
図2(a)は、上面視した場合における送信アンテナ装置1の斜視図である。
図2(b)は、下面視した場合における送信アンテナ装置1の斜視図である。
【0018】
送信アンテナ装置1は、静電容量センサ部2と送信アンテナ部3を備える。静電容量センサ部2は、2枚の基板7a,7bを貼り合わせて形成される部材であり、基板7a,7bの貼り合わせ面には、人体が近接すると静電容量を変える静電容量検出電極11a,11b(後述の図3参照)が形成される。静電容量センサ部2の上面には、電子部品12(後述の図4参照)を表面に実装する電子部品実装部8が形成される。静電容量センサ部2の下面には、補助電極4が形成される。
【0019】
送信アンテナ部3は、直方体形状の磁性体コア9と、磁性体コア9に巻回されるコイル10を備える。磁性体コア9の主材には、例えば、Ni−Zn系フェライトコアやMn−Zn系フェライトコア,金属系磁性体コア、アモルファス磁性体コアが用いられる。ただし、Mn−Zn系フェライト等、比抵抗が小さい磁性材料を磁性コアに採用する場合は、絶縁性樹脂等で形成されたボビンや絶縁テープ等を磁性体コア9とコイル10の間に介在させて、磁性体コア9とコイル10の間に高い絶縁性を確保する。また、コイル10の表面に絶縁樹脂をコーティングすることで、コイル10と磁性体コア9の絶縁性を確保してもよい。
【0020】
静電容量センサ部2と送信アンテナ部3は、磁性体コア9の長手軸方向に連結される。このため、静電容量センサ部2と送信アンテナ部3が駆動する際、互いに電気的・磁気的な干渉が起こりにくくなる。このため、送信アンテナ装置1が信号電波を送信したり、人体の接近を検出したりする特性に干渉による影響が及ばない。
【0021】
図3は、送信アンテナ装置1の分解例を示す。
図3(a)は、上面視した場合における送信アンテナ装置1の分解斜視図である。
図3(b)は、下面視した場合における送信アンテナ装置1の分解斜視図である。
【0022】
静電容量センサ部2を構成する基板7a,7bを分離すると、基板7bの貼り合わせ面に静電容量検出電極11a,11bが形成されることが示される。本例では、静電容量検出電極11aを枠状に形成し、静電容量検出電極11aの枠内に矩形状の静電容量検出電極11bを形成する。これらの静電容量検出電極11a,11bは、不図示の接続手段によって後述する静電容量検出回路と電気的に接続されている。なお、静電容量検出電極11a,11bは、少なくとも1対以上の導電体によって形成されていればよい。これは、本発明にかかるキーレスエントリシステムが、上記一対の静電容量検出電極11a,11b間で生じる静電容量の初期値を絶対値とし、人体が近づいた際の静電容量の変化量を検出するといった作動方式を採用しているためである。
【0023】
基板7a,7bは、合成樹脂で形成される絶縁体である。本例では、基板7bをプリント基板(PCB:Printed Circuit Board)とする。そして、静電容量検出電極11a,11bと補助電極4を、ランドパターンで形成する。このプリント基板には、柔軟性がないリジッド基板や柔軟性があるフレシキブル基板を採用することができる。
【0024】
図4は、図2で説明した送信アンテナ装置1を、A−A′線において断面視した例を示す。
ここでは、電子部品実装部8に複数の電子部品12が実装されることを示している。電子部品12には、静電容量検出電極11a,11bに電気的に接続され、静電容量の変化を検出する静電容量検出回路が含まれる。なお、電子部品12の形状は破線で示しており、どのように電子部品実装部8に配置されるかは任意である。さらに、電子部品実装部8には、上述の静電容量検出回路の他、送信アンテナとして機能する直列共振回路の構成部材であるコンデンサ等を搭載することも可能である。このように構成することによって、静電容量センサ部2のモジュール化を促進することができ、結果、送信アンテナ装置1の構成の簡略化を図ることが可能である。
【0025】
以上説明した第1の実施の形態例に係る送信アンテナ装置1によれば、静電容量センサ部2と送信アンテナ部3は、磁性体コア9の長手軸方向において互いに隣り合うように連結される。このため、静電容量センサ部2と送信アンテナ部3が駆動する際に、電気的・磁気的な干渉が生じにくくなる。特に、送信アンテナ部3と静電容量検出電極11a,11bが、互いに重なり合わないよう配置されていることから、浮遊容量の発生を低減することができる。この結果、送信アンテナ装置1が信号電波の送信を行うという動作を確実に達成できる。また、モジュール化された送信アンテナ装置1は、ドアハンドル5bの内部に容易に設置することができる。
【0026】
従来、送信アンテナ装置に静電容量検出電極は1つしか備えられておらず、基準となる静電容量値に対して、検出した静電容量値を比較することで静電容量の変化量を求めていた。しかし、本例の送信アンテナ装置1は、1対以上の静電容量検出電極を備えており、従来に比べて静電容量の変化量が大きい。このため、人体の接触によって変化する静電容量を確実に検出できる。この結果、静電容量センサ部2と送信アンテナ部3の機能を互いに阻害することなく、所望の特性を発揮できるという効果がある。
【0027】
また、静電容量センサ部2に補助電極4を電気的に絶縁した状態で配置することによって、人体が近接した際の静電容量の変化量を大きくすることができる。このため、電子部品12に含まれる静電容量検出回路は、静電容量の変化を確実に検出できる。この結果、ドアの施錠・開錠にかかる動作処理を確実にできるという効果がある。
【0028】
また、送信アンテナ部3の直列共振回路を構成するコンデンサ等を含む電子部品12を電子部品実装部8に実装できる。そして、電子部品12には、静電容量検出回路が含まれる。この結果、静電容量センサを一体とした送信アンテナ装置1としてモジュール化を実現できるという効果がある。
【0029】
ここで、図5〜図7を参照して、第1の実施の形態例に係る静電容量センサ部2の変形例について説明する。
【0030】
図5は、上面視した場合における送信アンテナ装置21の分解斜視図である。
静電容量センサ部12を構成する基板7a,7bを分離すると、基板7bの貼り合わせ面には、一対の静電容量検出電極23a,23bが平行に形成されることが示される。本例では、静電容量検出電極23a,23bが同一の帯状とされていると共に、不図示の接続手段によって後述する静電容量検出回路と電気的に接続されている。静電容量検出電極23a,23bは、銅板の厚みが大きく、互いの距離が狭いほど静電容量が大きい。このように静電容量検出電極23a,23bを形成しても、補助電極との相互作用により、人体が近接した際における静電容量の変化量を大きくすることができる。
【0031】
図6は、上面視した場合における送信アンテナ装置25の分解斜視図である。
静電容量センサ部26を構成する基板7a,7bを分離すると、基板7bの貼り合わせ面には、2つの静電容量検出電極27a,27bが形成されることが示される。静電容量検出電極27a,27bは、ワイヤを巻回して構成され、互いに電気的に接触していない部材である。静電容量検出電極27a,27bは、それぞれ一端子を構成しており、外部の電子部品に接続される引き出し部28a,28bを備えており、静電容量検出回路と電気的に接続されている。このように静電容量検出電極23a,23bを形成しても、補助電極との相互作用により、人体が近接した際における静電容量の変化量を大きくすることができる。なお、静電容量検出電極27a,27bを構成するワイヤは、互いに絶縁された2本のワイヤをより線にしたものであってもよい。また、一対以上の静電容量検出電極27a,27bを形成してもよい。
【0032】
図7は、上面視した場合における送信アンテナ装置31の斜視図である。
基板7aの上面には、電子部品を実装するための電子部品実装部33が形成される。そして、貼り合わされた基板7a,7bの短軸方向には、補助電極34が形成される。補助電極34は、導電性を有する金属箔体(例えば、銅箔テープ)が絶縁体である基板7a,7bに巻回される部材である。金属箔帯が重ねて巻回されると、補助電極34の静電容量が増えるため、補助電極34が静電容量検出電極の静電容量に対して与える変化量の影響度を大きくすることができる。静電容量の変化量や増加量は、補助電極34の巻き回数によって制御できる。なお、補助電極34は、基板7a,7bに厚みのある金属箔体を貼付けて構成してもよい。
【0033】
従来、静電容量検出電極の2端子間で容量変化を得るために、対峙するワイヤや導電板などを延長させ、基本となる静電容量を形成していた。そして、静電容量センサ部には、ワイヤや導電板に人体などが近接あるいは接触することで生じる微小な静電容量の変化を検出する方式を採用していた。ところで、静電容量の変化を検出するための感度設定は、変化する容量によって決まるため、微小な静電容量の変化で人体の近接を検出するように感度を設定すると人体以外の物体による近接であっても過剰に検出してしまう。そして、静電容量の変化量を大きくして人体のみの近接を感知させるためには感知させる面積を広くしなければならなかった。しかし、本例では、基板7a,7bに挟み込まれた静電容量検出電極を補助電極34で覆う事で、人体の近接(接触)する部分が小さくても静電容量の変化量を増加させる。これによって省スペースでかつ過剰反応を抑える構造を実現している。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態例に係る送信アンテナ装置41について、図8と図9を参照して説明する。図5において、既に第1の実施の形態で説明した図2に対応する部分には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0035】
図8は、送信アンテナ装置1の構成例を示す。
図8(a)は、上面視した場合における送信アンテナ装置41の斜視図である。
図8(b)は、下面視した場合における送信アンテナ装置41の斜視図である。
図8(c)は、上面視した場合における送信アンテナ装置41の分解斜視図である。
【0036】
送信アンテナ装置41は、送信アンテナ部3と静電容量の変化を検出する静電容量センサ部42を備える。静電容量センサ部42の下面には、送信アンテナ部3の下面まで覆われる基板43を備える。また、基板43の下面には、ほぼ全面に導電性の金属箔体からなる補助電極44が形成される。
【0037】
図9は、図8で説明した送信アンテナ装置41を、B−B′線において断面視した例を示す。
補助電極44は、静電容量センサ部42の下面から送信アンテナ部3の下面にかけて延ばされることが示される。そして、補助電極44の面積が広くなるため、人体が近接したことに伴う静電容量の変化を、送信アンテナ部3の付近に至るまで広範囲で検出できる。この結果、例えば、人体が近接した位置が静電容量センサ部42の付近でなくても、静電容量検出電極11a,11b間で形成される静電容量に対しての影響度を大きくするといった作用を奏する。この結果、ドアハンドルの広い範囲で、人体が近接したときの検出感度を高めることができるという効果を有する。
【0038】
以上説明した第2の実施の形態例に係る送信アンテナ装置41によれば、電気的に接続されていない補助電極44が送信アンテナ部3の下面まで延ばされることによって、静電容量検出電極11a,11bに対して静電容量の変化を増幅させるといった作用を奏する。このとき、補助電極44は、電気的に絶縁状態にあることから、補助電極44が送信アンテナ部3に対して不要な影響を及ぼさない。つまり、送信アンテナ部3に対して不要な浮遊容量を発生させずに、人体が近接した際の静電容量の変化量を高めるという効果がある。
【0039】
なお、補助電極44は、磁性体コア9の短手軸方向に幅を狭めた形状としてもよい。また、静電容量検出電極11a,11bとの絶縁を保った状態で、補助電極44を支持することができれば、補助電極44の基台となる基板43は必須の部材とはならない。例えば、補助電極44は、基板43を外してワイヤや銅箔を延ばしたものであってもよい。この場合、送信アンテナ部3と静電容量センサ部42を離して配置できるため、ドアハンドル内における送信アンテナ装置41の位置決めが容易となる。
【0040】
以上説明した第1及び第2の実施の形態例に係る送信アンテナ装置によれば、静電容量検出電極を1対とした場合について説明したが、静電容量検出電極を2対以上としてもよい。例えば、異なる場所に触れると施錠または解錠を行える仕様とする場合、検出チャンネルを2チャンネル用意しておく。このとき、静電容量検出電極を2対とし、人体の近接を各対で検出すればよい。このように、人体の近接を検出するチャンネルを増やすと、静電容量検出電極は2対以上必要となる。
【0041】
また、静電容量検出電極の形状は、上述した形態例に限らない。また、静電容量センサ部が検出するものは、人体の近接に限られず、その他の物体の近接を検出するようにしてもよい。また、腕時計や携帯電話装置の内部に記憶された認証キーを信号電波で送信する送信アンテナ装置として用いたり、住宅のドアまたはドアハンドルに送信アンテナ装置を設置したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態例における送信アンテナ装置が配置されるドアハンドルの構成例を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態例における送信アンテナ装置のA−A′線における構成例を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の他の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の他の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す分解斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態例における送信アンテナ装置の構成例を示す斜視図及び分解斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態例における送信アンテナ装置のB−B′線における構成例を示す分解斜視図である。
【図10】従来の送信アンテナ装置の例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1…送信アンテナ装置、2…静電容量センサ部、3…送信アンテナ部、4…補助電極、5a…ドア、5b…ドアハンドル、6a,6b…磁界、7a,7b…基板、8…電子部品実装部、9…磁性体コア、10…コイル、11a,11b…静電容量検出電極、12…電子部品、21,25,31,41…送信アンテナ装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体コア及び前記磁性体コアに巻回されたコイルを備える送信アンテナ部と、
一対以上の導電体によって形成され、人体が近接すると静電容量を変える静電容量検出電極に、前記静電容量の変化を検出する静電容量検出回路が電気的に接続される静電容量センサ部と、
前記静電容量検出電極に対して電気的に隔離された状態で前記静電容量センサ部に配置される補助電極と、を備え、
前記静電容量センサ部は、前記送信アンテナ部に対して、前記磁性体コアの長手軸方向に連結される
送信アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載の送信アンテナ装置において、
前記補助電極は、前記静電容量センサ部及び前記送信アンテナ部に配置される
送信アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の送信アンテナ装置において、
前記静電容量センサ部は、絶縁体からなる基板に、前記静電容量検出電極としてランドパターンが形成されたプリント基板である
送信アンテナ装置。
【請求項4】
請求項3記載の送信アンテナ装置において、
前記静電容量検出回路は、前記プリント基板に実装される
送信アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の送信アンテナ装置が収容されるドアハンドル。
【請求項1】
磁性体コア及び前記磁性体コアに巻回されたコイルを備える送信アンテナ部と、
一対以上の導電体によって形成され、人体が近接すると静電容量を変える静電容量検出電極に、前記静電容量の変化を検出する静電容量検出回路が電気的に接続される静電容量センサ部と、
前記静電容量検出電極に対して電気的に隔離された状態で前記静電容量センサ部に配置される補助電極と、を備え、
前記静電容量センサ部は、前記送信アンテナ部に対して、前記磁性体コアの長手軸方向に連結される
送信アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載の送信アンテナ装置において、
前記補助電極は、前記静電容量センサ部及び前記送信アンテナ部に配置される
送信アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の送信アンテナ装置において、
前記静電容量センサ部は、絶縁体からなる基板に、前記静電容量検出電極としてランドパターンが形成されたプリント基板である
送信アンテナ装置。
【請求項4】
請求項3記載の送信アンテナ装置において、
前記静電容量検出回路は、前記プリント基板に実装される
送信アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の送信アンテナ装置が収容されるドアハンドル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−290454(P2009−290454A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139630(P2008−139630)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】
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