送信装置、受信装置および通信システム
【課題】EMI環境における通信品質を向上させる送信装置を得ること。
【解決手段】本発明は、通信システムの送信側の通信装置を構成し、2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を受信側の通信装置に対して送信する送信装置であって、トレーニング信号系列を構成しているトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる送信位相回転部126と、位相回転後のトレーニング信号系列に対して所定の信号処理を実施して送信する信号送信手段(IFFT部123,CP付加部122,D/A変換部121,BB/RF変換部110)と、を備える。
【解決手段】本発明は、通信システムの送信側の通信装置を構成し、2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を受信側の通信装置に対して送信する送信装置であって、トレーニング信号系列を構成しているトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる送信位相回転部126と、位相回転後のトレーニング信号系列に対して所定の信号処理を実施して送信する信号送信手段(IFFT部123,CP付加部122,D/A変換部121,BB/RF変換部110)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知系列を含んだ信号を送受信する送信装置、受信装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信機器の小型化・高機能化に伴い、機器内部の回路などで発生した微弱な電磁雑音が受信回路に回り込み受信性能を劣化させる問題(自家中毒現象)が深刻化している。これは、特にディジタル回路で使用されるクロック信号およびその逓倍波・分周波に起因するものが多い。
【0003】
一般に、無線受信機や光受信機では、実際に送受する高周波数帯(Radio Frequency:RF)信号をベースバンド帯(Baseband:BB)に変換して受信信号処理を行う。受信機によっては、RF信号を一度中間周波数帯(Intermediate Frequency:IF)信号に変換してからBB信号に再変換する。BB,IF,RFのいずれかの周波数帯で、ディジタル回路のクロック信号、その高調波または分周波が受信回路に漏れ込む場合には、それらは受信信号にとって干渉信号となる。このような問題は、無線通信に限らず、有線通信でも生じる可能性がある。なお、これ以降の説明においては、受信信号をディジタル処理するディジタル回路ブロックのクロック信号(周波数は信号帯域幅とする)またはこのクロック信号周波数の2n倍(nは整数)の逓倍波・分周波に起因する干渉波を、電磁雑音(Electro-Magnetic Interference:EMI)として扱う。EMIは、受信信号をディジタル処理する時点において、信号帯域幅と同程度(信号帯域幅周波数以下、かつ、その1000分の1以上)の周期性を持つ定常波とする。
【0004】
EMIが存在する受信環境(以降、これをEMI環境と呼ぶ)では、受信信号のデータ部分が干渉を受けるため受信性能が劣化する。このようなEMI環境における受信性能の一例が下記非特許文献1において開示されている。ここで、非特許文献1に掲載されている受信性能の一例は、伝送路推定が理想的に実施された場合の特性である。しかしながら、EMI環境では、データ復調の以前に実施する、データを復調するために必要な伝送路の推定動作において正しい推定値が得られないという問題がある。
【0005】
この問題に対して、下記非特許文献2には、EMIの影響を軽減して受信性能を改善する技術が開示されている。この非特許文献2に記載の技術では、EMIサブキャリア(EMIの影響を受けているサブキャリア)の復調レベルを低減することにより受信性能の改善を図っている。
【0006】
また、下記非特許文献3には、従来のEMI対策技術が記載されている。具体的には、EMIが漏れ込む経路を予測し、予測結果に金属シールドや電波吸収シートを配置するなどの物理的対策や、回路基板設計での対策などが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】西本 浩,平井博昭,渋谷昭宏,"電磁雑音環境におけるOFDM伝送特性評価,"電子情報通信学会ソサイエティ大会,B-5-67,Sept. 2009.
【非特許文献2】西本 浩,平井博昭,平 明徳,久保博嗣,西村寿彦,大鐘武雄,小川恭孝,"電磁雑音環境下のマルチキャリア伝送におけるスペクトル低減法,"電子情報通信学会総合大会,B-5-69,March 2010.
【非特許文献3】日経エレクトロニクス,2009年8月24日号,No.1011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術には、次のような問題が存在する。すなわち、非特許文献2に記載された技術を適用してEMIの影響を低減し、受信性能を改善するためには、EMIの影響を受けるサブキャリアを検知する必要がある。非特許文献2においては無通信時間等を利用してEMIの影響を受けるサブキャリアを検知することが示されているが、この場合、無通信区間を設けることにより伝送効率が低下するという問題があった。また、非特許文献3に記載のEMI対策技術は、物理的に面積や体積を要するものであり、通信装置の小型化や高集積化が難しくなる、という問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、EMI環境においても、上記の物理的対策や回路基板設計での対策を施すことなく受信性能を向上させることが可能な送信装置、受信装置および通信システムを得ることを目的とする。また、EMI環境において、無通信区間などを設けることなく、受信側で受信信号処理による受信信号からのEMI成分検出を可能とする送信装置、受信装置および通信システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、通信システムの送信側の通信装置を構成し、2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を受信側の通信装置に対して送信する送信装置であって、前記トレーニング信号系列を構成しているトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる送信位相回転手段と、位相回転後のトレーニング信号系列に対して所定の信号処理を実施して送信する信号送信手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、信号の受信側において、トレーニング信号に含まれるEMI成分を除去することが可能となり、EMIの影響が除去されたトレーニング信号に基づく伝送路推定値を算出できる。その結果、受信性能を向上させて通信品質を改善できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる送信装置の構成例を示す図である。
【図2−1】図2−1は、EMI位相回転量と送信位相回転量の一例を示す図である。
【図2−2】図2−2は、EMI位相回転量と送信位相回転量の一例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかる受信装置の構成例を示す図である。
【図4】図4は、送信位相回転、受信位相回転及び合成結果の一例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態1の受信装置による伝送路推定結果の一例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態2にかかる受信装置の構成例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態2の受信装置によるEMI推定結果の一例を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態3の送信装置が備えている送信処理部の構成例を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態3の受信装置が備えている受信処理部の構成例を示す図である。
【図10】図10は、OFDM方式を適用した送信装置の構成例を示す図である。
【図11】図11は、OFDM方式を適用した受信装置の構成例を示す図である。
【図12】図12は、OFDMアナログBB信号と分周クロック信号に起因するEMIの時間波形の一例を示す図である。
【図13】図13は、EMIを周波数領域で観測した結果を示す図である。
【図14】図14は、時間領域におけるサブキャリア信号とEMIの関係を示す図である。
【図15】図15は、サブキャリア信号とEMIの関係の一例を示す図である。
【図16】図16は、観測信号と所望信号点の一例を示す図である。
【図17】図17は、従来の受信装置によるEMI環境下の伝送路推定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる送信装置、受信装置および通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
ここでまず、前提技術として、本発明を適用しない場合のEMI環境における受信性能について説明する。具体的には、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)伝送システムを用いて、EMI環境下で受信機(受信装置)において観測されるEMI成分と、その場合の伝送路推定誤差を、図を用いて説明する。説明においては、IEEE802.11aの無線LANの仕様に基づくOFDM伝送システムを想定し、使用する周波数帯域幅を20MHz,高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)及び高速逆フーリエ変換(Inverse FFT:IFFT)ポイント数を64,サブキャリア数を64,サイクリックプレフィックス(Cyclic Prefix:CP)長を16ポイント(FFT長の1/4)とする。
【0015】
図10は、OFDM方式を適用した通信システムを構成する送信装置(送信側の通信装置において信号送信を行う送信機)の構成例を示す図である。図10に示した送信装置は、送信ポート(送信アンテナ)101と、BB/RF変換部110と、送信処理部120と、から構成されている。送信処理部120は、一次変調部125と、系列切替/多重化部124と、IFFT部123と、CP付加部122と、ディジタル/アナログ(Digital/Analog:D/A)変換部121と、から構成されている。
【0016】
信号送信動作について説明する。上記構成の送信装置においては、情報データ系列である送信ビット系列s130が一次変調部125に入力され、一次変調部125は、送信ビット系列s130に対して、位相シフトキーイング(Phase Shift Keying:PSK)や直交振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation:QAM)などの一次変調マッピングを実施する。その結果得られた信号は、一次変調信号s125として系列切替/多重化部124に出力される。一方、トレーニング系列s131も系列切替/多重化部124に入力される。なお、トレーニング系列は、既知信号,ユニークワード,学習信号などと呼ばれる場合もある。トレーニング系列s131は、受信装置(受信側の通信装置)においても既知の信号系列であり、BPSK(Binary PSK)などの一次変調が実施された後の固定信号系列である。
【0017】
系列切替/多重化部124は、例えば、OFDMフレームの先頭などに付される伝送路推定用プリアンブルシンボルを生成する場合にはトレーニング系列s131を選択し、それ以外のデータシンボルを生成する場合には一次変調信号s125を選択し、選択した信号をサブキャリア信号s124としてIFFT部123に出力する。または、系列切替/多重化部124は、データシンボル中のパイロットサブキャリアにはトレーニング系列s131を選択し、それ以外のデータサブキャリアには一次変調信号s125を選択し、サブキャリア信号s124としてIFFT部123に出力する。ただし、トレーニング系列s131をサブキャリア信号s124として出力する場合には、少なくとも2回以上に渡って同一信号を出力するものとする。
【0018】
IFFT部123は、周波数領域の信号である、入力されたサブキャリア信号s124に対してIFFTを実行して時間領域の信号に変換し、時間領域信号s123としてCP付加部122に出力する。CP付加部122は、時間領域信号s123にCPを付加し、ディジタルBB信号s122としてD/A変換部121に出力する。D/A変換部121は、ディジタルBB信号s122をアナログBB信号s121に変換し、BB/RF変換部110に出力する。BB/RF変換部110は、入力されたアナログBB信号s121をRF信号s110に変換する。このようにして得たRF信号s110は、送信ポート101(たとえば送信アンテナ)から送信される。
【0019】
図11は、OFDM方式を適用した通信システムを構成する受信装置(受信側の通信装置において信号受信を行う受信機)の構成例を示す図である。受信装置は、受信ポート(たとえば受信アンテナ)201と、RF/BB変換部210と、受信処理部220と、クロック生成部241と、クロック分周器242と、から構成される。受信処理部220は、アナログ/ディジタル(Analog/Digital:A/D)変換部221と、CP除去部222と、FFT部223と、伝送路等化部224と、一次復調部225と、伝送路推定部230と、から構成される。伝送路推定部230は、合成部231を含んで構成されている。また、受信処理部220は、外部より入力されるクロック信号s241及びその分周クロック信号s242のタイミングで駆動している。クロック信号s241はクロック生成部241で生成される。分周クロック信号s242は、クロック分周器242がクロック信号s241を分周することにより、生成される。ここでは受信サンプリングレートが20MHzの場合を想定しており、クロック信号s241の周波数は20MHzである。分周クロック信号s242は、クロック信号s241の32分周信号、すなわち、0.625MHzのクロック周波数を想定する。分周クロック信号s242のDuty比(パルスのON時間対クロック周期時間の比)は0.25であるものとする。なお、クロック生成部241及びクロック分周器242は、受信処理部220の内部にあっても良い。
【0020】
信号受信動作について説明する。上記構成の受信装置においては、受信ポート201で受信されたRF信号s201はRF/BB変換部210に入力され、RF/BB変換部210は、入力されたRF信号をアナログBB信号s210に変換する。RF/BB変換部210は、変換後の受信信号(アナログBB信号s210)を受信処理部220に向けて出力する。ここで、クロック分周器242から漏洩する0.625MHzの周波数を持つEMIs250が、加算器(EMI付加部)211においてアナログBB信号s210に付加され、EMIを含むアナログBB信号s211として受信処理部220に入力されるものとする。ただし、EMI付加部211は、EMI付加をモデル化するために便宜上示しているものであり、実際の受信回路には存在しない。
【0021】
受信処理部220では、入力されたアナログBB信号s211をA/D変換部221に入力させる。A/D変換部221は、入力されたアナログBB信号s211をディジタルBB信号s221に変換し、CP除去部222に出力する。CP除去部222は、ディジタルBB信号s221からCPを除去し、時間領域信号s222としてFFT部223に出力する。FFT部223では、時間領域信号s222に対してFFTを実行し、サブキャリア信号s223に変換する。このサブキャリア信号s223は、伝送路等化部224および伝送路推定部230に入力される。伝送路推定部230の合成部231は、入力されたサブキャリア信号s223がプリアンブルシンボルまたはパイロットサブキャリアである場合、送受信間の伝送路(送信機から受信機への伝送路)を推定し、伝送路推定値s230を得る。プリアンブルシンボルまたはパイロットサブキャリアが1つの場合は、この信号から伝送路推定を行い、伝送路推定値s230を得る。プリアンブルシンボルまたはパイロットサブキャリアが複数の場合は、まずそれらを合成し、その結果得られた信号(合成後のサブキャリア信号)から伝送路推定を行い、伝送路推定値s230を得る。伝送路等化部224は、伝送路推定値s230を用いてサブキャリア信号s223を等化し、等化後信号s224を得る。一次復調部225は、等化後信号s224をデマッピングし、その結果得られた受信ビット系列s225を出力する。
【0022】
図12は、OFDMアナログBB信号(上記のs210に対応)と分周クロック信号に起因するEMI(上記のs250に対応)の時間波形の一例を示す図である。このEMI環境の例では、受信処理部220に入力される信号s211は、これら2つの信号が合成されたものとなる。図12に示すように、破線で示したクロック信号は一般に方形波であり、サンプリングレートの2n分の1(nは正の整数)の場合、FFT区間内で巡回性を持ち、複数のサブキャリア成分の和、つまり、複数の正弦波の和で表現される。このEMIを周波数領域で観測した結果は図13に示したようになる。図13において、横軸に示すサブキャリア番号は、論理的なサブキャリア番号ではなく、物理的な周波数番号を表している。すなわち、サブキャリア番号0の成分は直流成分であり、サブキャリア番号の絶対値が大きいほど高周波成分となっている。図13から分かるように、時間領域で方形波となる波形は、周波数領域において複数のサブキャリア成分として観測される。クロック信号は時間連続の信号であり、FFT区間内で巡回性が満足される場合には、どの時刻においても同一のスペクトル成分が観測される。なお、図13に記載されているEemi/N0は、FFT区間内のEMIエネルギー(Eemi)対熱雑音電力スペクトル密度(N0)であり、上記の非特許文献1及び2において定義されたEMIレベルである。また、図13に記載されているSNRは、信号対雑音電力比(Signal-to-Noise power Ratio)を示している。
【0023】
ここで、あるサブキャリア成分に着目して、OFDM信号波形とEMI波形を考える。一例として、サブキャリア番号f=1の成分、すなわち、FFT区間内で1周期となる成分を考える。当該サブキャリアにはEMIが存在するものとする。このとき、時間領域におけるサブキャリア信号とEMIの関係は、たとえば図14に示したものとなる。簡単化のため、ここではサブキャリア信号をBPSK変調されたトレーニング信号としており、OFDMシンボル#1〜#4で全て同一の信号であるものとしている。サブキャリア信号とEMIは同一サブキャリア成分であるため、周波数が同じである。しかしながら、各OFDMシンボルのFFT区間に着目すると、サブキャリア信号はどのOFDMシンボルでも同一波形であるのに対し、EMIは、各OFDMシンボルでCPが挿入されているため、OFDMシンボル毎に位相がシフトしている。この例では、CP長をFFT区間の1/4の長さとしているため、OFDMシンボル毎にEMIの位相はπ/2シフトしている。これを、In−phase channel(Ich)/Quadrature−phase channel(Qch)平面上、すなわち、コンステレーション上で示すと、図15のようになる。なお、図15において、サブキャリア信号とは、EMI成分が重畳されていない状態のサブキャリア信号であり、観測信号とは、EMI成分が重畳されたサブキャリア信号(図示しているサブキャリア信号とEMIが合成されたもの)である。サブキャリア信号はどのOFDMシンボルでも同一点であるのに対し、EMIはOFDMシンボル毎に原点を中心にπ/2ずつ回転している。実際には、図示している観測信号のように、サブキャリア信号とEMIが合成された信号が観測される。このとき、観測信号は、所望のサブキャリア信号点の周りを、EMI振幅に対応する半径の円周上で、OFDMシンボル毎に回転することになる。
【0024】
このような状況で、例えば2つの連続するOFDMシンボルを用いて伝送路推定を行う場合、図16に示すように、第1シンボルに対し、第2シンボルの観測信号は所望信号点の周りをπ/2回転したものとなるため、合成部231において2シンボルを合成した結果は、所望信号から大きくずれることとなる。
【0025】
図17は、従来の受信装置によるEMI環境下の伝送路推定結果の一例を示す図であり、図13に示したようなEMIスペクトルが存在する場合の伝送路推定結果を示している。図示したように、EMIスペクトルが存在する場合、従来法による伝送路推定結果はEMIの影響により歪んでしまうため、正しい推定値が得られない。
【0026】
EMIの位相回転量を定式化すると、サブキャリアfにEMIスペクトル成分がある場合、基準OFDMシンボルからmシンボル後のサブキャリアfにおけるEMI位相回転量θm,fは次式(1)で表される。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、ρcpはCP比であり、FFT区間長に対するCP長の比を表している。上記の例では、ρcp=1/4である。この式(1)から分かるように、EMI位相回転量θm,fはOFDMシンボル番号mとサブキャリアfによって異なる(mとfによって決まる)。
【0029】
本発明は、上記の性質を利用して受信品質の向上を図るように構成したものである。以下、本発明の実施の形態1〜3について説明する。
【0030】
実施の形態1.
本実施の形態では、上述した前提技術と同様に、IEEE802.11aの仕様に基づくOFDM伝送システムを想定する。また、使用する周波数帯域幅(原クロック周波数)を20MHz,FFT/IFFTポイント数を64,サブキャリア数を64,CP長を16ポイント,ρcp=1/4とした場合を想定する。さらに、受信装置はEMI環境にあり、上述した前提技術と同様のEMI(32分周波、Duty比0.25のクロック信号)が受信アナログBB信号に重畳されているものとする。ここでは説明の簡単化のために、受信装置ではOFDMフレームのプリアンブル区間で伝送路推定を行うものとする。ただし、この場合に限定するものではない。同様の手順に従ってパイロットサブキャリアで伝送路推定を行うことも可能である。連続するMシンボル(2シンボル以上とする)をOFDMフレームのプリアンブルとし、受信側でMシンボルを線形合成して伝送路推定を行う。トレーニング系列は、各OFDMプリアンブルシンボルで同一の系列を用いるものとする。
【0031】
まず、本実施の形態にかかる通信システムの送信装置について説明する。図1は、実施の形態1にかかる送信装置の構成例を示す図である。なお、既に説明した図10の送信装置と同様の構成要素には同一の符号を付している。図示したように、本実施の形態の送信装置は、図10に示した送信装置の送信処理部120を送信処理部12に置き換えたものである。送信処理部12は、図10に示した送信装置の送信処理部120に対して送信位相回転部126を追加したものである。この送信位相回転部126は、トレーニング系列s131を受け取り、トレーニング系列s131に適切な位相回転を与え、その結果得られる位相回転後のトレーニング系列s126を系列切替/多重化部124に出力する。送信位相回転部126では、第mOFDMシンボル(m=0,…,M-1)におけるサブキャリアfのトレーニング信号に対し、次式(2)で示した位相回転量φm,fに従って位相回転を与える。
【0032】
【数2】
【0033】
dfをサブキャリアfで送信する原トレーニング信号(s131)とすると、サブキャリアfで送信される位相回転後の信号sm,f(s126)は次式(3)で表される。
【0034】
【数3】
【0035】
EMI位相回転量θm,f及び送信位相回転量φm,fの例を、図2−1及び図2−2に示す。図2−1はM=2の場合,図2−2はM=3の場合の例を示している。
【0036】
送信装置が上記のように位相回転を与えたトレーニング信号を複数シンボル時間にわたって送信することにより、後述するように、対向装置(受信装置)においては、受信したトレーニング信号からEMIの影響を除去することが可能となり、通信品質を向上させることができる。
【0037】
つづいて、本実施の形態にかかる通信システムの受信装置について説明する。図3は、実施の形態1にかかる受信装置の構成例を示す図である。なお、既に説明した図11の受信装置と同様の構成要素には同一の符号を付している。図示したように、本実施の形態の受信装置は、図11に示した受信装置の受信処理部220を受信処理部22に置き換えたものである。受信処理部22は、図11に示した受信装置の受信処理部220が備えている伝送路推定部230を伝送路推定部23に置き換えたものである。この伝送路推定部23は、伝送路推定部230に対して受信位相回転部232を追加して構成されている。
【0038】
伝送路推定部23においては、受信位相回転部232が、入力されたサブキャリア信号s223に適切な位相回転を与え、位相回転後のサブキャリア信号s232を合成部231に出力する。受信位相回転部232では、第mOFDMシンボルにおけるサブキャリアfの信号に対して、送信位相回転(信号の送信側で与えられた位相回転)と逆相の回転、すなわち、−φm,fの位相回転を与える。
【0039】
サブキャリアfにおける受信信号rm,f(s223)は、伝送路応答hfと、EMI成分nm,fを用いて、次式(4)で表される。
【0040】
【数4】
【0041】
ただし、ρfはEMI成分の振幅値、ηfはEMIの位相オフセット量である。説明の簡単化のため、ここでは受信点で付加される熱雑音成分を省略している。受信したMシンボルに−φm,fの位相回転を与えてから合成すると、次式(5)に示すように、EMI成分が除去される。
【0042】
【数5】
【0043】
式(5)で示した合成後の信号を原トレーニング信号dfで除算すると、次式(6)で示される、EMI成分を含まない伝送路推定値(^を付したhf)s23が得られる。
【0044】
【数6】
【0045】
なお、上述したように、この例では説明の簡易化のために熱雑音がないものと仮定している。
【0046】
上述した伝送路推定法(伝送路推定部23における伝送路推定動作)を、図を用いて具体的に説明する。図4は、M=2の場合のサブキャリアf=1での送信位相回転、受信位相回転及び合成結果の一例を示す図である。簡単化のため、hf=1,ηf=0とした場合について示している。図4において、(a),(b)は受信位相回転部232への入力信号rm,f(s223)、(c),(d)は合成部231への入力信号s232、(e)は合成部231において合成された受信信号(上式(5)で示した信号)を示している。図4から分かるように、上記の式(1)で示したEMIの位相回転量θm,fは、ρcp,サブキャリアf,OFDMシンボル番号mにより決定されるので、EMIが合成部231で打ち消されるように送信位相回転及び受信位相回転を与えれば、合成後の受信信号はEMIの影響を受けない。
【0047】
本実施の形態の受信装置による伝送路推定結果の一例を図5に示す。ここで、評価条件は、前提技術の説明で使用した図17の推定結果を得た場合と同一である。図5から明らかなように、図17の推定結果(位相を回転させない従来の受信装置による推定結果)と異なり、本実施の形態1による伝送路推定結果はEMIの影響を受けておらず、理想値とほぼ同様の推定結果となっていることが分かる。
【0048】
なお、実施の形態における上記説明では、EMI環境において連続するMシンボルを用いて伝送路推定を行う場合について示したが、これに限らず、Mシンボルが時間的に分散された場合でも伝送路推定は可能である。この場合のEMI位相回転量θ'm,fは、以下のように定式化できる。
【0049】
【数7】
【0050】
ここで、τmは基準シンボル(m=0)に対する第mシンボルのシンボル時刻を示しており、τ0=0である。また、同様に、この場合の送信位相回転量φ'm,fは、次式(8)のように定式化できる。
【0051】
【数8】
【0052】
なお、送信位相回転量は次式(9)で与えてもよい。
【0053】
【数9】
【0054】
なお、本実施の形態では、EMI環境においてOFDMフレームのプリアンブルを用いて伝送路推定を行う場合について、その手順を説明した。しかしながら、これに限らず、データシンボルにおけるパイロットサブキャリアについて上述した伝送路推定手順を適用することも可能である。
【0055】
また、本実施の形態ではEMI環境において伝送路推定を行う場合について例示した。しかしながら、これに限らず、本実施の形態の送信位相回転及び受信位相回転を実施することで、受信装置の合成部231において合成した信号(上記の式(5)で示した信号)にはEMI成分が含まれないことを利用して、この合成した信号からキャリア周波数偏差などの他のパラメータを推定するように、受信装置を構成しても良い。
【0056】
また、本実施の形態では図1の送信ポート101及び図3の受信ポート201を無線通信用のアンテナとした場合について示したが、これに限らず、送受信装置間で有線通信を行うように構成されたシステムに対しても、本発明は適用可能である。なお、有線通信の場合は、BB/RF変換部110及びRF/BB変換部210は無くても良い。
【0057】
また、本実施の形態ではOFDM伝送システムにおける伝送路推定について説明したが、これに限らず、マルチキャリア通信を行うシステムであれば、本発明を適用可能である。
【0058】
また、本実施の形態では、各OFDMシンボルにCPが付加されるものとして説明を行った。しかしながら、これに限らず、CPを付加しないOFDMシステムであっても良い。この場合、上記の各式において、ρcp=0となる。
【0059】
また、本実施の形態で説明した送信装置及び受信装置の構成は一例であり、上述したトレーニング信号の位相回転処理が実施可能な構成であればどの様な構成でも良い。
【0060】
このように、本実施の形態の通信システムにおいて、送信装置は、同一内容の複数のトレーニング信号に対して、その周波数(サブキャリア)および送信時刻(シンボルの送信タイミングに対応したシンボル番号)に応じた位相回転を与えて送信することとし、受信装置は、送信装置で与えられた回転と逆相の回転を各トレーニング信号に与え、その結果得られた位相回転後のトレーニング信号を合成することとした。これにより、受信側ではEMIの影響が除去されたトレーニング信号を得ることができ、EMIの影響が除去されたトレーニング信号に基づく伝送路推定値を得ることがでる。すなわち、EMI環境においても高精度に伝送路推定を行って受信信号を復調する受信装置を実現できる。
【0061】
実施の形態2.
つづいて、実施の形態2について説明する。なお、送信装置として実施の形態1で説明した送信装置を用いるものとし、また、伝送環境や条件などは実施の形態1と同様であるものとして説明を行う。
【0062】
図6は、実施の形態2にかかる受信装置の構成例を示す図である。なお、実施の形態1で説明した受信装置(図3参照)と同様の構成要素には同じ符号を付している。図示したように、本実施の形態の受信装置は、実施の形態1で説明した受信装置(図3に示した受信装置)の受信処理部22を受信処理部22aに置き換えたものである。また、受信処理部22aは、受信処理部22の伝送路推定部23を伝送路推定部23aに置き換えたものであり、この伝送路推定部23aは、伝送路推定部23に対して合成部231aおよび受信位相回転部232aを追加したものである。
【0063】
伝送路推定部23aにおいて、受信位相回転部232aは、入力されるサブキャリア信号s223に対し、受信位相回転部232とは異なる位相回転を与え、位相回転後のサブキャリア信号s232aを合成部231aに出力する。合成部231aは、入力された各サブキャリア信号s232a(Mシンボルのサブキャリア信号)を合成し、合成後の信号をEMI推定値s23aとして出力する。
【0064】
以下に、EMI推定の手順を説明する。送信されるトレーニング信号には実施の形態1で示した式(2)で与えられる位相回転量φm,fにより送信位相回転処理が施されているものとする。受信位相回転部232aでは、第mOFDMシンボルにおけるサブキャリアfの信号に対して、EMI位相回転と逆相の回転、すなわち、−θm,fの位相回転を与える。この位相回転を与えた後の信号(OFDMシンボル)を合成部231aにおいて合成すると、次式(10)に示すように、EMI推定値s23aが得られる。
【0065】
【数10】
【0066】
なお、受信信号rm,fは、先に示した式(4)で与えられるものとする。
【0067】
本実施の形態の受信装置によるEMI推定結果の一例を図7に示す。ここで、評価条件は図17及び図5の例と同一である。図7に示したように、本実施の形態の受信装置によるEMI推定を実施することにより、実際のEMIに近い推定結果を得ることができる。
【0068】
本実施の形態の受信装置におけるEMIの推定動作を適用した場合、上記の非特許文献2に記載した技術(EMIサブキャリアの復調レベルを低減することにより受信性能を改善する技術)を適用できるようになる。その結果、受信性能をさらに向上させることができる。また、無通信区間を設けるなどの特殊な制御が必要ないので、EMIの推定動作により伝送効率が低下することもない。
【0069】
なお、本実施の形態では、EMI環境において連続するMシンボルを用いてEMI推定を行う場合について説明した。しかしながら、これに限らず、Mシンボルが時間的に分散された場合でも、実施の形態1において式(7)〜(9)で示したように位相回転量は定式化可能であり、EMI推定も同様に可能である。
【0070】
また、本実施の形態では、EMI環境においてOFDMフレームのプリアンブルを用いてEMI推定を行う場合について、その手順を説明した。しかしながら、これに限らず、データシンボルにおけるパイロットサブキャリアについて上述のEMI推定手順を適用することも可能である。
【0071】
また、本実施の形態では、図6の受信ポート201を無線通信用のアンテナとした場合について示したが、これに限らず、送受信装置間で有線通信を行うように構成されたシステムに対しても、本発明は適用可能である。有線通信の場合は、RF/BB変換部210は無くても良い。
【0072】
また、本実施の形態ではOFDM伝送システムにおける伝送路推定について説明したが、これに限らず、マルチキャリア通信を行うシステムであれば、本発明を適用可能である。
【0073】
また、本実施の形態で説明した送信装置及び受信装置の構成は一例であり、上述したトレーニング信号の位相回転処理が実施可能な構成であればどの様な構成でも良い。
【0074】
このように、本実施の形態の受信装置は、EMI位相回転と逆相の回転を各トレーニング信号に与え、その結果得られた位相回転後のトレーニング信号を合成してEMI推定値を算出することとした。これにより、無通信区間などを設けることなく、受信信号処理によって受信信号からEMI成分を検出することが可能となり、伝送効率を低下させることなく上記の非特許文献2に記載された技術を実現できる。
【0075】
実施の形態3.
実施の形態1及び2で説明したように、送信側で複数のトレーニング信号に位相回転を施し、受信側でそれらに適切な位相回転を適用した後に合成することで、EMIの影響を含まない受信トレーニング信号、または、EMI推定値が得られる。また、実施の形態1及び2では、送信信号及び受信信号に与える位相回転を、周波数領域において実施する場合について説明した。これに対して、本実施の形態では、先に示した式(2)、式(8)または式(9)で与えられる位相回転が、時間領域でも実現可能であることを利用して実施の形態1,2と同様の効果を得る通信システム(送信装置,受信装置)について説明する。
【0076】
実施の形態1及び2の説明から明らかなように、伝送路推定を実施するかEMI推定を実施するかは受信側での位相回転量だけで切替可能であるため、以下では受信装置での推定対象を伝送路かEMIかには限定せずに説明する。また、以下の説明では、実施の形態1及び2と同様の通信システムであるものと仮定し、送信装置の送信処理部及び受信装置の受信処理部に焦点を当てて説明する。ただし、実施の形態1及び2とは異なり、本実施の形態はCP挿入を伴うシングルキャリア伝送にも適用可能である。以下の説明では、送信側の通信装置が備えている送信装置の送信処理部において式(8)で示した位相回転量φ'm,fの位相回転を実施するものとし、かつ受信側の通信装置が備えている受信装置の受信処理部において−φ'm,fの位相回転を実施するものとする。ただし、上述したように、受信処理部において−θ'm,fの位相回転を実施することでEMI推定が実現可能であることは明らかであり、その場合も本実施の形態に含まれる。
【0077】
図8は、実施の形態3の送信装置が備えている送信処理部の構成例を示す図である。なお、先の実施の形態で説明した送信装置(図1など参照)と同様の構成要素には同じ符号を付している。図示した送信処理部13は、D/A変換部121と、CP付加部122と、系列切替部133と、全体位相回転部134と、時間シフト部135と、により構成されている。また、図示は省略するが、データ信号時間系列s137及びトレーニング信号時間系列s136は、必要であれば然るべき符号化や一次変調が既に実施されているものとし、これらはマルチキャリア信号でも良く、シングルキャリア信号でも良い。
【0078】
図8に示した送信処理部13の動作について説明する。送信処理部13において、データ信号時間系列s137は、系列切替部133に入力される。一方、トレーニング区間用のトレーニング信号時間系列s136は、時間シフト部135に入力され、時間シフト部135は、トレーニング信号時間系列s136に対して1CPが挿入されるブロック毎に時間巡回シフトを実施する。ブロック長(CPが挿入された後のブロックの長さ)をNb、ブロック番号mにおける基準ブロックに対するブロック時刻をτmとするとき、ブロック番号mに対する時間巡回シフト量Δmは次式(11)で表される。
【0079】
【数11】
【0080】
時間シフト部135がΔmによる時間巡回シフトを実行して得られた信号s135を周波数領域で観測すると、周波数ポイントfでは次式(12)で示した位相回転が施されることになる。
【0081】
【数12】
【0082】
次に、全体位相回転部134において、時間巡回シフト後の信号s135に対し、ブロック全体に次式(13)で示した位相回転を一様に施す。
【0083】
【数13】
【0084】
式(13)で示した位相回転はブロック全体に一様に施されるため、時間領域においても周波数領域においても位相回転は同一である。結果として、全体位相回転部134の出力信号s134は、周波数領域において次式(14)で示した位相回転が施された信号となる。
【0085】
【数14】
【0086】
系列切替部133は、トレーニングブロック送信時には、入力信号s134を時間領域信号s133として出力し、データ送信時には、入力信号s137を時間領域信号s133として出力する。以降の信号処理は実施の形態1の送信装置(図1参照)と同様である。よって説明を省略する。また、図1に示した送信装置と同一の符号を付した回路及び信号線についても、説明を省略する。
【0087】
図9は、実施の形態3の受信装置が備えている受信処理部の構成例を示す図である。なお、先の実施の形態で説明した受信装置(図3など参照)と同様の構成要素には同じ符号を付している。図示した受信処理部26は、A/D変換部221と、CP除去部222と、全体位相逆回転部261と、時間逆シフト部262と、合成部263と、から構成されている。また、図示は省略するが、受信データ信号時間系列s222及び推定信号s263は、必要であれば然るべき一次復調や復号が後段において実施されるものとする。これらはマルチキャリア信号でも良く、シングルキャリア信号でも良い。
【0088】
図9に示した受信処理部26の動作について説明する。受信処理部26において、CP除去後の時間信号s222は、トレーニング区間のブロック信号に対しては全体位相逆回転部261に入力される。全体位相逆回転部261は、入力された信号に対して、−βmの位相回転をブロック全体に施す。すなわち、送信側(送信装置)の全体位相回転部134で与えられた位相回転と逆の位相回転を与える。この処理を実施して得られた信号は、全体位相逆回転後のブロック信号s261として時間逆シフト部262に出力される。なお、EMI推定時には、全体位相逆回転部261は位相回転を実施しない。時間逆シフト部262では、入力された全体位相逆回転後のブロック信号s261に対し、−Δmの時間巡回シフトを実行し、得られた信号を時間逆シフト後のブロック信号s262として合成部263に出力する。上述した送信装置での時間巡回シフト及び全体位相回転処理の意味するところから分かるように、受信装置の全体位相逆回転部261及び時間逆シフト部262での処理は、周波数領域で観測すると、伝送路推定時には−φ'm,fの位相回転を実行することと等価であり、EMI推定時には−θ'm,fの位相回転を実行することと等価である。合成部263では、−Δmの時間巡回シフトが施された全Mブロックを合成し、然るべき推定信号s263を得る。なお、図3に示した受信装置と同一の符号を付した回路及び信号線については、説明を省略する。
【0089】
なお、本実施の形態では、全ての位相回転処理を時間領域において実行する場合について説明した。しかしながら、これに限らず、送信装置での全体位相回転処理または受信装置での全体位相逆回転処理は周波数領域において実施しても良い。
【0090】
また、本実施の形態で説明した送信装置の構成及び受信装置の構成は一例であり、上述した全体位相回転処理及び時間シフト処理が実施可能な構成であればどの様な構成でも良い。
【0091】
また、本実施の形態では、送信装置において時間シフト処理を実施した後に全体位相回転処理を実施するものとした。しかしながら、これに限らず、全体位相回転処理を実施した後に時間シフト処理を実施するような構成としても良い。
【0092】
また、本実施の形態では、受信装置において全体位相逆回転処理を実施した後に時間逆シフト処理を実施するものとした。しかしながら、これに限らず、時間逆シフト処理を実施した後に全体位相逆回転処理を実施するような構成としても良い。
【0093】
このように、本実施の形態では、実施の形態1及び2において説明した周波数領域での位相回転処理を、時間領域においても実施可能であることを示した。本実施の形態の構成を適用した場合には、位相回転の際に信号を周波数領域に変換する必要がなく、EMIの影響が除去された伝送路推定値の算出や高精度なEMI推定を簡易に実現できる。
【0094】
以上、本発明について実施の形態1〜3を例に挙げて説明を行った。ただし、これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形を加えることが可能なこと、および、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者において容易に理解されうる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明にかかる送信装置、受信装置および通信システムは、EMIの影響により受信性能劣化が発生する場合の受信性能改善に有用である。
【符号の説明】
【0096】
12、13、120 送信処理部
22、22a、26、220 受信処理部
23、23a、230 伝送路推定部
101 送信ポート
110 BB/RF変換部
121 D/A変換部
122 CP付加部
123 IFFT部
124 系列切替/多重化部
125 一次変調部
126 送信位相回転部
133 系列切替部
134 全体位相回転部
135 時間シフト部
201 受信ポート
210 RF/BB変換部
211 加算器
221 A/D変換部
222 CP除去部
223 FFT部
224 伝送路等化部
225 一次復調部
231、231a、263 合成部
232、232a 受信位相回転部
241 クロック生成部
242 クロック分周器
261 全体位相逆回転部
262 時間逆シフト部
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知系列を含んだ信号を送受信する送信装置、受信装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信機器の小型化・高機能化に伴い、機器内部の回路などで発生した微弱な電磁雑音が受信回路に回り込み受信性能を劣化させる問題(自家中毒現象)が深刻化している。これは、特にディジタル回路で使用されるクロック信号およびその逓倍波・分周波に起因するものが多い。
【0003】
一般に、無線受信機や光受信機では、実際に送受する高周波数帯(Radio Frequency:RF)信号をベースバンド帯(Baseband:BB)に変換して受信信号処理を行う。受信機によっては、RF信号を一度中間周波数帯(Intermediate Frequency:IF)信号に変換してからBB信号に再変換する。BB,IF,RFのいずれかの周波数帯で、ディジタル回路のクロック信号、その高調波または分周波が受信回路に漏れ込む場合には、それらは受信信号にとって干渉信号となる。このような問題は、無線通信に限らず、有線通信でも生じる可能性がある。なお、これ以降の説明においては、受信信号をディジタル処理するディジタル回路ブロックのクロック信号(周波数は信号帯域幅とする)またはこのクロック信号周波数の2n倍(nは整数)の逓倍波・分周波に起因する干渉波を、電磁雑音(Electro-Magnetic Interference:EMI)として扱う。EMIは、受信信号をディジタル処理する時点において、信号帯域幅と同程度(信号帯域幅周波数以下、かつ、その1000分の1以上)の周期性を持つ定常波とする。
【0004】
EMIが存在する受信環境(以降、これをEMI環境と呼ぶ)では、受信信号のデータ部分が干渉を受けるため受信性能が劣化する。このようなEMI環境における受信性能の一例が下記非特許文献1において開示されている。ここで、非特許文献1に掲載されている受信性能の一例は、伝送路推定が理想的に実施された場合の特性である。しかしながら、EMI環境では、データ復調の以前に実施する、データを復調するために必要な伝送路の推定動作において正しい推定値が得られないという問題がある。
【0005】
この問題に対して、下記非特許文献2には、EMIの影響を軽減して受信性能を改善する技術が開示されている。この非特許文献2に記載の技術では、EMIサブキャリア(EMIの影響を受けているサブキャリア)の復調レベルを低減することにより受信性能の改善を図っている。
【0006】
また、下記非特許文献3には、従来のEMI対策技術が記載されている。具体的には、EMIが漏れ込む経路を予測し、予測結果に金属シールドや電波吸収シートを配置するなどの物理的対策や、回路基板設計での対策などが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】西本 浩,平井博昭,渋谷昭宏,"電磁雑音環境におけるOFDM伝送特性評価,"電子情報通信学会ソサイエティ大会,B-5-67,Sept. 2009.
【非特許文献2】西本 浩,平井博昭,平 明徳,久保博嗣,西村寿彦,大鐘武雄,小川恭孝,"電磁雑音環境下のマルチキャリア伝送におけるスペクトル低減法,"電子情報通信学会総合大会,B-5-69,March 2010.
【非特許文献3】日経エレクトロニクス,2009年8月24日号,No.1011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術には、次のような問題が存在する。すなわち、非特許文献2に記載された技術を適用してEMIの影響を低減し、受信性能を改善するためには、EMIの影響を受けるサブキャリアを検知する必要がある。非特許文献2においては無通信時間等を利用してEMIの影響を受けるサブキャリアを検知することが示されているが、この場合、無通信区間を設けることにより伝送効率が低下するという問題があった。また、非特許文献3に記載のEMI対策技術は、物理的に面積や体積を要するものであり、通信装置の小型化や高集積化が難しくなる、という問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、EMI環境においても、上記の物理的対策や回路基板設計での対策を施すことなく受信性能を向上させることが可能な送信装置、受信装置および通信システムを得ることを目的とする。また、EMI環境において、無通信区間などを設けることなく、受信側で受信信号処理による受信信号からのEMI成分検出を可能とする送信装置、受信装置および通信システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、通信システムの送信側の通信装置を構成し、2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を受信側の通信装置に対して送信する送信装置であって、前記トレーニング信号系列を構成しているトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる送信位相回転手段と、位相回転後のトレーニング信号系列に対して所定の信号処理を実施して送信する信号送信手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、信号の受信側において、トレーニング信号に含まれるEMI成分を除去することが可能となり、EMIの影響が除去されたトレーニング信号に基づく伝送路推定値を算出できる。その結果、受信性能を向上させて通信品質を改善できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる送信装置の構成例を示す図である。
【図2−1】図2−1は、EMI位相回転量と送信位相回転量の一例を示す図である。
【図2−2】図2−2は、EMI位相回転量と送信位相回転量の一例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかる受信装置の構成例を示す図である。
【図4】図4は、送信位相回転、受信位相回転及び合成結果の一例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態1の受信装置による伝送路推定結果の一例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態2にかかる受信装置の構成例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態2の受信装置によるEMI推定結果の一例を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態3の送信装置が備えている送信処理部の構成例を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態3の受信装置が備えている受信処理部の構成例を示す図である。
【図10】図10は、OFDM方式を適用した送信装置の構成例を示す図である。
【図11】図11は、OFDM方式を適用した受信装置の構成例を示す図である。
【図12】図12は、OFDMアナログBB信号と分周クロック信号に起因するEMIの時間波形の一例を示す図である。
【図13】図13は、EMIを周波数領域で観測した結果を示す図である。
【図14】図14は、時間領域におけるサブキャリア信号とEMIの関係を示す図である。
【図15】図15は、サブキャリア信号とEMIの関係の一例を示す図である。
【図16】図16は、観測信号と所望信号点の一例を示す図である。
【図17】図17は、従来の受信装置によるEMI環境下の伝送路推定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる送信装置、受信装置および通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
ここでまず、前提技術として、本発明を適用しない場合のEMI環境における受信性能について説明する。具体的には、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)伝送システムを用いて、EMI環境下で受信機(受信装置)において観測されるEMI成分と、その場合の伝送路推定誤差を、図を用いて説明する。説明においては、IEEE802.11aの無線LANの仕様に基づくOFDM伝送システムを想定し、使用する周波数帯域幅を20MHz,高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)及び高速逆フーリエ変換(Inverse FFT:IFFT)ポイント数を64,サブキャリア数を64,サイクリックプレフィックス(Cyclic Prefix:CP)長を16ポイント(FFT長の1/4)とする。
【0015】
図10は、OFDM方式を適用した通信システムを構成する送信装置(送信側の通信装置において信号送信を行う送信機)の構成例を示す図である。図10に示した送信装置は、送信ポート(送信アンテナ)101と、BB/RF変換部110と、送信処理部120と、から構成されている。送信処理部120は、一次変調部125と、系列切替/多重化部124と、IFFT部123と、CP付加部122と、ディジタル/アナログ(Digital/Analog:D/A)変換部121と、から構成されている。
【0016】
信号送信動作について説明する。上記構成の送信装置においては、情報データ系列である送信ビット系列s130が一次変調部125に入力され、一次変調部125は、送信ビット系列s130に対して、位相シフトキーイング(Phase Shift Keying:PSK)や直交振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation:QAM)などの一次変調マッピングを実施する。その結果得られた信号は、一次変調信号s125として系列切替/多重化部124に出力される。一方、トレーニング系列s131も系列切替/多重化部124に入力される。なお、トレーニング系列は、既知信号,ユニークワード,学習信号などと呼ばれる場合もある。トレーニング系列s131は、受信装置(受信側の通信装置)においても既知の信号系列であり、BPSK(Binary PSK)などの一次変調が実施された後の固定信号系列である。
【0017】
系列切替/多重化部124は、例えば、OFDMフレームの先頭などに付される伝送路推定用プリアンブルシンボルを生成する場合にはトレーニング系列s131を選択し、それ以外のデータシンボルを生成する場合には一次変調信号s125を選択し、選択した信号をサブキャリア信号s124としてIFFT部123に出力する。または、系列切替/多重化部124は、データシンボル中のパイロットサブキャリアにはトレーニング系列s131を選択し、それ以外のデータサブキャリアには一次変調信号s125を選択し、サブキャリア信号s124としてIFFT部123に出力する。ただし、トレーニング系列s131をサブキャリア信号s124として出力する場合には、少なくとも2回以上に渡って同一信号を出力するものとする。
【0018】
IFFT部123は、周波数領域の信号である、入力されたサブキャリア信号s124に対してIFFTを実行して時間領域の信号に変換し、時間領域信号s123としてCP付加部122に出力する。CP付加部122は、時間領域信号s123にCPを付加し、ディジタルBB信号s122としてD/A変換部121に出力する。D/A変換部121は、ディジタルBB信号s122をアナログBB信号s121に変換し、BB/RF変換部110に出力する。BB/RF変換部110は、入力されたアナログBB信号s121をRF信号s110に変換する。このようにして得たRF信号s110は、送信ポート101(たとえば送信アンテナ)から送信される。
【0019】
図11は、OFDM方式を適用した通信システムを構成する受信装置(受信側の通信装置において信号受信を行う受信機)の構成例を示す図である。受信装置は、受信ポート(たとえば受信アンテナ)201と、RF/BB変換部210と、受信処理部220と、クロック生成部241と、クロック分周器242と、から構成される。受信処理部220は、アナログ/ディジタル(Analog/Digital:A/D)変換部221と、CP除去部222と、FFT部223と、伝送路等化部224と、一次復調部225と、伝送路推定部230と、から構成される。伝送路推定部230は、合成部231を含んで構成されている。また、受信処理部220は、外部より入力されるクロック信号s241及びその分周クロック信号s242のタイミングで駆動している。クロック信号s241はクロック生成部241で生成される。分周クロック信号s242は、クロック分周器242がクロック信号s241を分周することにより、生成される。ここでは受信サンプリングレートが20MHzの場合を想定しており、クロック信号s241の周波数は20MHzである。分周クロック信号s242は、クロック信号s241の32分周信号、すなわち、0.625MHzのクロック周波数を想定する。分周クロック信号s242のDuty比(パルスのON時間対クロック周期時間の比)は0.25であるものとする。なお、クロック生成部241及びクロック分周器242は、受信処理部220の内部にあっても良い。
【0020】
信号受信動作について説明する。上記構成の受信装置においては、受信ポート201で受信されたRF信号s201はRF/BB変換部210に入力され、RF/BB変換部210は、入力されたRF信号をアナログBB信号s210に変換する。RF/BB変換部210は、変換後の受信信号(アナログBB信号s210)を受信処理部220に向けて出力する。ここで、クロック分周器242から漏洩する0.625MHzの周波数を持つEMIs250が、加算器(EMI付加部)211においてアナログBB信号s210に付加され、EMIを含むアナログBB信号s211として受信処理部220に入力されるものとする。ただし、EMI付加部211は、EMI付加をモデル化するために便宜上示しているものであり、実際の受信回路には存在しない。
【0021】
受信処理部220では、入力されたアナログBB信号s211をA/D変換部221に入力させる。A/D変換部221は、入力されたアナログBB信号s211をディジタルBB信号s221に変換し、CP除去部222に出力する。CP除去部222は、ディジタルBB信号s221からCPを除去し、時間領域信号s222としてFFT部223に出力する。FFT部223では、時間領域信号s222に対してFFTを実行し、サブキャリア信号s223に変換する。このサブキャリア信号s223は、伝送路等化部224および伝送路推定部230に入力される。伝送路推定部230の合成部231は、入力されたサブキャリア信号s223がプリアンブルシンボルまたはパイロットサブキャリアである場合、送受信間の伝送路(送信機から受信機への伝送路)を推定し、伝送路推定値s230を得る。プリアンブルシンボルまたはパイロットサブキャリアが1つの場合は、この信号から伝送路推定を行い、伝送路推定値s230を得る。プリアンブルシンボルまたはパイロットサブキャリアが複数の場合は、まずそれらを合成し、その結果得られた信号(合成後のサブキャリア信号)から伝送路推定を行い、伝送路推定値s230を得る。伝送路等化部224は、伝送路推定値s230を用いてサブキャリア信号s223を等化し、等化後信号s224を得る。一次復調部225は、等化後信号s224をデマッピングし、その結果得られた受信ビット系列s225を出力する。
【0022】
図12は、OFDMアナログBB信号(上記のs210に対応)と分周クロック信号に起因するEMI(上記のs250に対応)の時間波形の一例を示す図である。このEMI環境の例では、受信処理部220に入力される信号s211は、これら2つの信号が合成されたものとなる。図12に示すように、破線で示したクロック信号は一般に方形波であり、サンプリングレートの2n分の1(nは正の整数)の場合、FFT区間内で巡回性を持ち、複数のサブキャリア成分の和、つまり、複数の正弦波の和で表現される。このEMIを周波数領域で観測した結果は図13に示したようになる。図13において、横軸に示すサブキャリア番号は、論理的なサブキャリア番号ではなく、物理的な周波数番号を表している。すなわち、サブキャリア番号0の成分は直流成分であり、サブキャリア番号の絶対値が大きいほど高周波成分となっている。図13から分かるように、時間領域で方形波となる波形は、周波数領域において複数のサブキャリア成分として観測される。クロック信号は時間連続の信号であり、FFT区間内で巡回性が満足される場合には、どの時刻においても同一のスペクトル成分が観測される。なお、図13に記載されているEemi/N0は、FFT区間内のEMIエネルギー(Eemi)対熱雑音電力スペクトル密度(N0)であり、上記の非特許文献1及び2において定義されたEMIレベルである。また、図13に記載されているSNRは、信号対雑音電力比(Signal-to-Noise power Ratio)を示している。
【0023】
ここで、あるサブキャリア成分に着目して、OFDM信号波形とEMI波形を考える。一例として、サブキャリア番号f=1の成分、すなわち、FFT区間内で1周期となる成分を考える。当該サブキャリアにはEMIが存在するものとする。このとき、時間領域におけるサブキャリア信号とEMIの関係は、たとえば図14に示したものとなる。簡単化のため、ここではサブキャリア信号をBPSK変調されたトレーニング信号としており、OFDMシンボル#1〜#4で全て同一の信号であるものとしている。サブキャリア信号とEMIは同一サブキャリア成分であるため、周波数が同じである。しかしながら、各OFDMシンボルのFFT区間に着目すると、サブキャリア信号はどのOFDMシンボルでも同一波形であるのに対し、EMIは、各OFDMシンボルでCPが挿入されているため、OFDMシンボル毎に位相がシフトしている。この例では、CP長をFFT区間の1/4の長さとしているため、OFDMシンボル毎にEMIの位相はπ/2シフトしている。これを、In−phase channel(Ich)/Quadrature−phase channel(Qch)平面上、すなわち、コンステレーション上で示すと、図15のようになる。なお、図15において、サブキャリア信号とは、EMI成分が重畳されていない状態のサブキャリア信号であり、観測信号とは、EMI成分が重畳されたサブキャリア信号(図示しているサブキャリア信号とEMIが合成されたもの)である。サブキャリア信号はどのOFDMシンボルでも同一点であるのに対し、EMIはOFDMシンボル毎に原点を中心にπ/2ずつ回転している。実際には、図示している観測信号のように、サブキャリア信号とEMIが合成された信号が観測される。このとき、観測信号は、所望のサブキャリア信号点の周りを、EMI振幅に対応する半径の円周上で、OFDMシンボル毎に回転することになる。
【0024】
このような状況で、例えば2つの連続するOFDMシンボルを用いて伝送路推定を行う場合、図16に示すように、第1シンボルに対し、第2シンボルの観測信号は所望信号点の周りをπ/2回転したものとなるため、合成部231において2シンボルを合成した結果は、所望信号から大きくずれることとなる。
【0025】
図17は、従来の受信装置によるEMI環境下の伝送路推定結果の一例を示す図であり、図13に示したようなEMIスペクトルが存在する場合の伝送路推定結果を示している。図示したように、EMIスペクトルが存在する場合、従来法による伝送路推定結果はEMIの影響により歪んでしまうため、正しい推定値が得られない。
【0026】
EMIの位相回転量を定式化すると、サブキャリアfにEMIスペクトル成分がある場合、基準OFDMシンボルからmシンボル後のサブキャリアfにおけるEMI位相回転量θm,fは次式(1)で表される。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、ρcpはCP比であり、FFT区間長に対するCP長の比を表している。上記の例では、ρcp=1/4である。この式(1)から分かるように、EMI位相回転量θm,fはOFDMシンボル番号mとサブキャリアfによって異なる(mとfによって決まる)。
【0029】
本発明は、上記の性質を利用して受信品質の向上を図るように構成したものである。以下、本発明の実施の形態1〜3について説明する。
【0030】
実施の形態1.
本実施の形態では、上述した前提技術と同様に、IEEE802.11aの仕様に基づくOFDM伝送システムを想定する。また、使用する周波数帯域幅(原クロック周波数)を20MHz,FFT/IFFTポイント数を64,サブキャリア数を64,CP長を16ポイント,ρcp=1/4とした場合を想定する。さらに、受信装置はEMI環境にあり、上述した前提技術と同様のEMI(32分周波、Duty比0.25のクロック信号)が受信アナログBB信号に重畳されているものとする。ここでは説明の簡単化のために、受信装置ではOFDMフレームのプリアンブル区間で伝送路推定を行うものとする。ただし、この場合に限定するものではない。同様の手順に従ってパイロットサブキャリアで伝送路推定を行うことも可能である。連続するMシンボル(2シンボル以上とする)をOFDMフレームのプリアンブルとし、受信側でMシンボルを線形合成して伝送路推定を行う。トレーニング系列は、各OFDMプリアンブルシンボルで同一の系列を用いるものとする。
【0031】
まず、本実施の形態にかかる通信システムの送信装置について説明する。図1は、実施の形態1にかかる送信装置の構成例を示す図である。なお、既に説明した図10の送信装置と同様の構成要素には同一の符号を付している。図示したように、本実施の形態の送信装置は、図10に示した送信装置の送信処理部120を送信処理部12に置き換えたものである。送信処理部12は、図10に示した送信装置の送信処理部120に対して送信位相回転部126を追加したものである。この送信位相回転部126は、トレーニング系列s131を受け取り、トレーニング系列s131に適切な位相回転を与え、その結果得られる位相回転後のトレーニング系列s126を系列切替/多重化部124に出力する。送信位相回転部126では、第mOFDMシンボル(m=0,…,M-1)におけるサブキャリアfのトレーニング信号に対し、次式(2)で示した位相回転量φm,fに従って位相回転を与える。
【0032】
【数2】
【0033】
dfをサブキャリアfで送信する原トレーニング信号(s131)とすると、サブキャリアfで送信される位相回転後の信号sm,f(s126)は次式(3)で表される。
【0034】
【数3】
【0035】
EMI位相回転量θm,f及び送信位相回転量φm,fの例を、図2−1及び図2−2に示す。図2−1はM=2の場合,図2−2はM=3の場合の例を示している。
【0036】
送信装置が上記のように位相回転を与えたトレーニング信号を複数シンボル時間にわたって送信することにより、後述するように、対向装置(受信装置)においては、受信したトレーニング信号からEMIの影響を除去することが可能となり、通信品質を向上させることができる。
【0037】
つづいて、本実施の形態にかかる通信システムの受信装置について説明する。図3は、実施の形態1にかかる受信装置の構成例を示す図である。なお、既に説明した図11の受信装置と同様の構成要素には同一の符号を付している。図示したように、本実施の形態の受信装置は、図11に示した受信装置の受信処理部220を受信処理部22に置き換えたものである。受信処理部22は、図11に示した受信装置の受信処理部220が備えている伝送路推定部230を伝送路推定部23に置き換えたものである。この伝送路推定部23は、伝送路推定部230に対して受信位相回転部232を追加して構成されている。
【0038】
伝送路推定部23においては、受信位相回転部232が、入力されたサブキャリア信号s223に適切な位相回転を与え、位相回転後のサブキャリア信号s232を合成部231に出力する。受信位相回転部232では、第mOFDMシンボルにおけるサブキャリアfの信号に対して、送信位相回転(信号の送信側で与えられた位相回転)と逆相の回転、すなわち、−φm,fの位相回転を与える。
【0039】
サブキャリアfにおける受信信号rm,f(s223)は、伝送路応答hfと、EMI成分nm,fを用いて、次式(4)で表される。
【0040】
【数4】
【0041】
ただし、ρfはEMI成分の振幅値、ηfはEMIの位相オフセット量である。説明の簡単化のため、ここでは受信点で付加される熱雑音成分を省略している。受信したMシンボルに−φm,fの位相回転を与えてから合成すると、次式(5)に示すように、EMI成分が除去される。
【0042】
【数5】
【0043】
式(5)で示した合成後の信号を原トレーニング信号dfで除算すると、次式(6)で示される、EMI成分を含まない伝送路推定値(^を付したhf)s23が得られる。
【0044】
【数6】
【0045】
なお、上述したように、この例では説明の簡易化のために熱雑音がないものと仮定している。
【0046】
上述した伝送路推定法(伝送路推定部23における伝送路推定動作)を、図を用いて具体的に説明する。図4は、M=2の場合のサブキャリアf=1での送信位相回転、受信位相回転及び合成結果の一例を示す図である。簡単化のため、hf=1,ηf=0とした場合について示している。図4において、(a),(b)は受信位相回転部232への入力信号rm,f(s223)、(c),(d)は合成部231への入力信号s232、(e)は合成部231において合成された受信信号(上式(5)で示した信号)を示している。図4から分かるように、上記の式(1)で示したEMIの位相回転量θm,fは、ρcp,サブキャリアf,OFDMシンボル番号mにより決定されるので、EMIが合成部231で打ち消されるように送信位相回転及び受信位相回転を与えれば、合成後の受信信号はEMIの影響を受けない。
【0047】
本実施の形態の受信装置による伝送路推定結果の一例を図5に示す。ここで、評価条件は、前提技術の説明で使用した図17の推定結果を得た場合と同一である。図5から明らかなように、図17の推定結果(位相を回転させない従来の受信装置による推定結果)と異なり、本実施の形態1による伝送路推定結果はEMIの影響を受けておらず、理想値とほぼ同様の推定結果となっていることが分かる。
【0048】
なお、実施の形態における上記説明では、EMI環境において連続するMシンボルを用いて伝送路推定を行う場合について示したが、これに限らず、Mシンボルが時間的に分散された場合でも伝送路推定は可能である。この場合のEMI位相回転量θ'm,fは、以下のように定式化できる。
【0049】
【数7】
【0050】
ここで、τmは基準シンボル(m=0)に対する第mシンボルのシンボル時刻を示しており、τ0=0である。また、同様に、この場合の送信位相回転量φ'm,fは、次式(8)のように定式化できる。
【0051】
【数8】
【0052】
なお、送信位相回転量は次式(9)で与えてもよい。
【0053】
【数9】
【0054】
なお、本実施の形態では、EMI環境においてOFDMフレームのプリアンブルを用いて伝送路推定を行う場合について、その手順を説明した。しかしながら、これに限らず、データシンボルにおけるパイロットサブキャリアについて上述した伝送路推定手順を適用することも可能である。
【0055】
また、本実施の形態ではEMI環境において伝送路推定を行う場合について例示した。しかしながら、これに限らず、本実施の形態の送信位相回転及び受信位相回転を実施することで、受信装置の合成部231において合成した信号(上記の式(5)で示した信号)にはEMI成分が含まれないことを利用して、この合成した信号からキャリア周波数偏差などの他のパラメータを推定するように、受信装置を構成しても良い。
【0056】
また、本実施の形態では図1の送信ポート101及び図3の受信ポート201を無線通信用のアンテナとした場合について示したが、これに限らず、送受信装置間で有線通信を行うように構成されたシステムに対しても、本発明は適用可能である。なお、有線通信の場合は、BB/RF変換部110及びRF/BB変換部210は無くても良い。
【0057】
また、本実施の形態ではOFDM伝送システムにおける伝送路推定について説明したが、これに限らず、マルチキャリア通信を行うシステムであれば、本発明を適用可能である。
【0058】
また、本実施の形態では、各OFDMシンボルにCPが付加されるものとして説明を行った。しかしながら、これに限らず、CPを付加しないOFDMシステムであっても良い。この場合、上記の各式において、ρcp=0となる。
【0059】
また、本実施の形態で説明した送信装置及び受信装置の構成は一例であり、上述したトレーニング信号の位相回転処理が実施可能な構成であればどの様な構成でも良い。
【0060】
このように、本実施の形態の通信システムにおいて、送信装置は、同一内容の複数のトレーニング信号に対して、その周波数(サブキャリア)および送信時刻(シンボルの送信タイミングに対応したシンボル番号)に応じた位相回転を与えて送信することとし、受信装置は、送信装置で与えられた回転と逆相の回転を各トレーニング信号に与え、その結果得られた位相回転後のトレーニング信号を合成することとした。これにより、受信側ではEMIの影響が除去されたトレーニング信号を得ることができ、EMIの影響が除去されたトレーニング信号に基づく伝送路推定値を得ることがでる。すなわち、EMI環境においても高精度に伝送路推定を行って受信信号を復調する受信装置を実現できる。
【0061】
実施の形態2.
つづいて、実施の形態2について説明する。なお、送信装置として実施の形態1で説明した送信装置を用いるものとし、また、伝送環境や条件などは実施の形態1と同様であるものとして説明を行う。
【0062】
図6は、実施の形態2にかかる受信装置の構成例を示す図である。なお、実施の形態1で説明した受信装置(図3参照)と同様の構成要素には同じ符号を付している。図示したように、本実施の形態の受信装置は、実施の形態1で説明した受信装置(図3に示した受信装置)の受信処理部22を受信処理部22aに置き換えたものである。また、受信処理部22aは、受信処理部22の伝送路推定部23を伝送路推定部23aに置き換えたものであり、この伝送路推定部23aは、伝送路推定部23に対して合成部231aおよび受信位相回転部232aを追加したものである。
【0063】
伝送路推定部23aにおいて、受信位相回転部232aは、入力されるサブキャリア信号s223に対し、受信位相回転部232とは異なる位相回転を与え、位相回転後のサブキャリア信号s232aを合成部231aに出力する。合成部231aは、入力された各サブキャリア信号s232a(Mシンボルのサブキャリア信号)を合成し、合成後の信号をEMI推定値s23aとして出力する。
【0064】
以下に、EMI推定の手順を説明する。送信されるトレーニング信号には実施の形態1で示した式(2)で与えられる位相回転量φm,fにより送信位相回転処理が施されているものとする。受信位相回転部232aでは、第mOFDMシンボルにおけるサブキャリアfの信号に対して、EMI位相回転と逆相の回転、すなわち、−θm,fの位相回転を与える。この位相回転を与えた後の信号(OFDMシンボル)を合成部231aにおいて合成すると、次式(10)に示すように、EMI推定値s23aが得られる。
【0065】
【数10】
【0066】
なお、受信信号rm,fは、先に示した式(4)で与えられるものとする。
【0067】
本実施の形態の受信装置によるEMI推定結果の一例を図7に示す。ここで、評価条件は図17及び図5の例と同一である。図7に示したように、本実施の形態の受信装置によるEMI推定を実施することにより、実際のEMIに近い推定結果を得ることができる。
【0068】
本実施の形態の受信装置におけるEMIの推定動作を適用した場合、上記の非特許文献2に記載した技術(EMIサブキャリアの復調レベルを低減することにより受信性能を改善する技術)を適用できるようになる。その結果、受信性能をさらに向上させることができる。また、無通信区間を設けるなどの特殊な制御が必要ないので、EMIの推定動作により伝送効率が低下することもない。
【0069】
なお、本実施の形態では、EMI環境において連続するMシンボルを用いてEMI推定を行う場合について説明した。しかしながら、これに限らず、Mシンボルが時間的に分散された場合でも、実施の形態1において式(7)〜(9)で示したように位相回転量は定式化可能であり、EMI推定も同様に可能である。
【0070】
また、本実施の形態では、EMI環境においてOFDMフレームのプリアンブルを用いてEMI推定を行う場合について、その手順を説明した。しかしながら、これに限らず、データシンボルにおけるパイロットサブキャリアについて上述のEMI推定手順を適用することも可能である。
【0071】
また、本実施の形態では、図6の受信ポート201を無線通信用のアンテナとした場合について示したが、これに限らず、送受信装置間で有線通信を行うように構成されたシステムに対しても、本発明は適用可能である。有線通信の場合は、RF/BB変換部210は無くても良い。
【0072】
また、本実施の形態ではOFDM伝送システムにおける伝送路推定について説明したが、これに限らず、マルチキャリア通信を行うシステムであれば、本発明を適用可能である。
【0073】
また、本実施の形態で説明した送信装置及び受信装置の構成は一例であり、上述したトレーニング信号の位相回転処理が実施可能な構成であればどの様な構成でも良い。
【0074】
このように、本実施の形態の受信装置は、EMI位相回転と逆相の回転を各トレーニング信号に与え、その結果得られた位相回転後のトレーニング信号を合成してEMI推定値を算出することとした。これにより、無通信区間などを設けることなく、受信信号処理によって受信信号からEMI成分を検出することが可能となり、伝送効率を低下させることなく上記の非特許文献2に記載された技術を実現できる。
【0075】
実施の形態3.
実施の形態1及び2で説明したように、送信側で複数のトレーニング信号に位相回転を施し、受信側でそれらに適切な位相回転を適用した後に合成することで、EMIの影響を含まない受信トレーニング信号、または、EMI推定値が得られる。また、実施の形態1及び2では、送信信号及び受信信号に与える位相回転を、周波数領域において実施する場合について説明した。これに対して、本実施の形態では、先に示した式(2)、式(8)または式(9)で与えられる位相回転が、時間領域でも実現可能であることを利用して実施の形態1,2と同様の効果を得る通信システム(送信装置,受信装置)について説明する。
【0076】
実施の形態1及び2の説明から明らかなように、伝送路推定を実施するかEMI推定を実施するかは受信側での位相回転量だけで切替可能であるため、以下では受信装置での推定対象を伝送路かEMIかには限定せずに説明する。また、以下の説明では、実施の形態1及び2と同様の通信システムであるものと仮定し、送信装置の送信処理部及び受信装置の受信処理部に焦点を当てて説明する。ただし、実施の形態1及び2とは異なり、本実施の形態はCP挿入を伴うシングルキャリア伝送にも適用可能である。以下の説明では、送信側の通信装置が備えている送信装置の送信処理部において式(8)で示した位相回転量φ'm,fの位相回転を実施するものとし、かつ受信側の通信装置が備えている受信装置の受信処理部において−φ'm,fの位相回転を実施するものとする。ただし、上述したように、受信処理部において−θ'm,fの位相回転を実施することでEMI推定が実現可能であることは明らかであり、その場合も本実施の形態に含まれる。
【0077】
図8は、実施の形態3の送信装置が備えている送信処理部の構成例を示す図である。なお、先の実施の形態で説明した送信装置(図1など参照)と同様の構成要素には同じ符号を付している。図示した送信処理部13は、D/A変換部121と、CP付加部122と、系列切替部133と、全体位相回転部134と、時間シフト部135と、により構成されている。また、図示は省略するが、データ信号時間系列s137及びトレーニング信号時間系列s136は、必要であれば然るべき符号化や一次変調が既に実施されているものとし、これらはマルチキャリア信号でも良く、シングルキャリア信号でも良い。
【0078】
図8に示した送信処理部13の動作について説明する。送信処理部13において、データ信号時間系列s137は、系列切替部133に入力される。一方、トレーニング区間用のトレーニング信号時間系列s136は、時間シフト部135に入力され、時間シフト部135は、トレーニング信号時間系列s136に対して1CPが挿入されるブロック毎に時間巡回シフトを実施する。ブロック長(CPが挿入された後のブロックの長さ)をNb、ブロック番号mにおける基準ブロックに対するブロック時刻をτmとするとき、ブロック番号mに対する時間巡回シフト量Δmは次式(11)で表される。
【0079】
【数11】
【0080】
時間シフト部135がΔmによる時間巡回シフトを実行して得られた信号s135を周波数領域で観測すると、周波数ポイントfでは次式(12)で示した位相回転が施されることになる。
【0081】
【数12】
【0082】
次に、全体位相回転部134において、時間巡回シフト後の信号s135に対し、ブロック全体に次式(13)で示した位相回転を一様に施す。
【0083】
【数13】
【0084】
式(13)で示した位相回転はブロック全体に一様に施されるため、時間領域においても周波数領域においても位相回転は同一である。結果として、全体位相回転部134の出力信号s134は、周波数領域において次式(14)で示した位相回転が施された信号となる。
【0085】
【数14】
【0086】
系列切替部133は、トレーニングブロック送信時には、入力信号s134を時間領域信号s133として出力し、データ送信時には、入力信号s137を時間領域信号s133として出力する。以降の信号処理は実施の形態1の送信装置(図1参照)と同様である。よって説明を省略する。また、図1に示した送信装置と同一の符号を付した回路及び信号線についても、説明を省略する。
【0087】
図9は、実施の形態3の受信装置が備えている受信処理部の構成例を示す図である。なお、先の実施の形態で説明した受信装置(図3など参照)と同様の構成要素には同じ符号を付している。図示した受信処理部26は、A/D変換部221と、CP除去部222と、全体位相逆回転部261と、時間逆シフト部262と、合成部263と、から構成されている。また、図示は省略するが、受信データ信号時間系列s222及び推定信号s263は、必要であれば然るべき一次復調や復号が後段において実施されるものとする。これらはマルチキャリア信号でも良く、シングルキャリア信号でも良い。
【0088】
図9に示した受信処理部26の動作について説明する。受信処理部26において、CP除去後の時間信号s222は、トレーニング区間のブロック信号に対しては全体位相逆回転部261に入力される。全体位相逆回転部261は、入力された信号に対して、−βmの位相回転をブロック全体に施す。すなわち、送信側(送信装置)の全体位相回転部134で与えられた位相回転と逆の位相回転を与える。この処理を実施して得られた信号は、全体位相逆回転後のブロック信号s261として時間逆シフト部262に出力される。なお、EMI推定時には、全体位相逆回転部261は位相回転を実施しない。時間逆シフト部262では、入力された全体位相逆回転後のブロック信号s261に対し、−Δmの時間巡回シフトを実行し、得られた信号を時間逆シフト後のブロック信号s262として合成部263に出力する。上述した送信装置での時間巡回シフト及び全体位相回転処理の意味するところから分かるように、受信装置の全体位相逆回転部261及び時間逆シフト部262での処理は、周波数領域で観測すると、伝送路推定時には−φ'm,fの位相回転を実行することと等価であり、EMI推定時には−θ'm,fの位相回転を実行することと等価である。合成部263では、−Δmの時間巡回シフトが施された全Mブロックを合成し、然るべき推定信号s263を得る。なお、図3に示した受信装置と同一の符号を付した回路及び信号線については、説明を省略する。
【0089】
なお、本実施の形態では、全ての位相回転処理を時間領域において実行する場合について説明した。しかしながら、これに限らず、送信装置での全体位相回転処理または受信装置での全体位相逆回転処理は周波数領域において実施しても良い。
【0090】
また、本実施の形態で説明した送信装置の構成及び受信装置の構成は一例であり、上述した全体位相回転処理及び時間シフト処理が実施可能な構成であればどの様な構成でも良い。
【0091】
また、本実施の形態では、送信装置において時間シフト処理を実施した後に全体位相回転処理を実施するものとした。しかしながら、これに限らず、全体位相回転処理を実施した後に時間シフト処理を実施するような構成としても良い。
【0092】
また、本実施の形態では、受信装置において全体位相逆回転処理を実施した後に時間逆シフト処理を実施するものとした。しかしながら、これに限らず、時間逆シフト処理を実施した後に全体位相逆回転処理を実施するような構成としても良い。
【0093】
このように、本実施の形態では、実施の形態1及び2において説明した周波数領域での位相回転処理を、時間領域においても実施可能であることを示した。本実施の形態の構成を適用した場合には、位相回転の際に信号を周波数領域に変換する必要がなく、EMIの影響が除去された伝送路推定値の算出や高精度なEMI推定を簡易に実現できる。
【0094】
以上、本発明について実施の形態1〜3を例に挙げて説明を行った。ただし、これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形を加えることが可能なこと、および、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者において容易に理解されうる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明にかかる送信装置、受信装置および通信システムは、EMIの影響により受信性能劣化が発生する場合の受信性能改善に有用である。
【符号の説明】
【0096】
12、13、120 送信処理部
22、22a、26、220 受信処理部
23、23a、230 伝送路推定部
101 送信ポート
110 BB/RF変換部
121 D/A変換部
122 CP付加部
123 IFFT部
124 系列切替/多重化部
125 一次変調部
126 送信位相回転部
133 系列切替部
134 全体位相回転部
135 時間シフト部
201 受信ポート
210 RF/BB変換部
211 加算器
221 A/D変換部
222 CP除去部
223 FFT部
224 伝送路等化部
225 一次復調部
231、231a、263 合成部
232、232a 受信位相回転部
241 クロック生成部
242 クロック分周器
261 全体位相逆回転部
262 時間逆シフト部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムの送信側の通信装置を構成し、2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を受信側の通信装置に対して送信する送信装置であって、
前記トレーニング信号系列を構成しているトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる送信位相回転手段と、
位相回転後のトレーニング信号系列に対して所定の信号処理を実施して送信する信号送信手段と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記送信位相回転手段は、
各トレーニング信号の送信時刻および周波数に基づいた回転量で、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記所定の信号処理にサイクリックプレフィックスを付加する処理が含まれる場合、
前記送信位相回転手段は、各トレーニング信号の送信時刻および周波数と前記サイクリックプレフィックスの長さとに基づいた回転量で、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記通信システムがマルチキャリア通信システムであり、
かつ、Mを1フレーム内のトレーニング信号送信区間に含まれるシンボル数、mをトレーニング信号送信区間におけるシンボル番号(m=0,1,2,…,M-1)、τmをm=0の第0シンボルを基準シンボルとした場合の基準シンボルに対する第mシンボルのシンボル時刻、fをサブキャリア番号、ρcpを前記所定の信号処理の処理単位長とサイクリックプレフィックスの長さの比、とした場合、
前記送信位相回転手段は、次式(1)で示した回転量φ'm,fまたは次式(2)で示した回転量φ''m,fで、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項3に記載の送信装置。
【数1】
【数2】
【請求項5】
通信システムの送信側の通信装置を構成し、2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を受信側の通信装置に対して送信する送信装置であって、
前記トレーニング信号系列を構成しているトレーニング信号の各々を、それぞれ異なるシフト量で時間巡回シフトさせる時間シフト手段と、
時間巡回シフト後のトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる位相回転手段と、
位相回転後のトレーニング信号系列に対して所定の信号処理を実施して送信する信号送信手段と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項6】
通信システムの送信側の通信装置を構成し、2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を受信側の通信装置に対して送信する送信装置であって、
前記トレーニング信号系列を構成しているトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる位相回転手段と、
位相回転後のトレーニング信号の各々を、それぞれ異なるシフト量で時間巡回シフトさせる時間シフト手段と、
時間巡回シフト後のトレーニング信号系列に対して所定の信号処理を実施して送信する信号送信手段と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項7】
前記時間シフト手段は、
各トレーニング信号の送信時刻に基づいたシフト量で、各トレーニング信号を時間巡回シフトさせる
ことを特徴とする請求項5または6に記載の送信装置。
【請求項8】
前記位相回転手段は、
各トレーニング信号の送信時刻に基づいた回転量で、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項5、6または7に記載の送信装置。
【請求項9】
Mを1フレーム内のトレーニング信号送信区間に含まれるシンボル数、mをトレーニング信号送信区間におけるシンボル番号(m=0,1,2,…,M-1)、τmをm=0の第0シンボルを基準シンボルとした場合の基準シンボルに対する第mシンボルのシンボル時刻、Nbを前記所定の信号処理の処理単位長とサイクリックプレフィックスの長さの和、ρcpを前記所定の信号処理の処理単位長とサイクリックプレフィックスの長さの比、とした場合、
前記時間シフト手段は、次式(3)で示したシフト量Δmで、各トレーニング信号を時間巡回シフトさせる
ことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一つに記載の送信装置。
【数3】
【請求項10】
Mを1フレーム内のトレーニング信号送信区間に含まれるシンボル数、mをトレーニング信号送信区間におけるシンボル番号(m=0,1,2,…,M-1)、とした場合、
前記位相回転手段は、次式(4)で示した回転量βm、または当該回転量の逆位相である−βmで、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項5〜9のいずれか一つに記載の送信装置。
【数4】
【請求項11】
通信システムの受信側の通信装置を構成し、送信側の通信装置により送信された2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を使用して伝送路推定を行う受信装置であって、
受信信号に含まれるトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる受信位相回転手段と、
位相回転後の各トレーニング信号を合成し、合成後のトレーニング信号に基づいて伝送路推定値を算出する合成手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項12】
前記受信位相回転手段は、
各トレーニング信号の受信時刻および周波数に基づいた回転量で、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項11に記載の受信装置。
【請求項13】
前記送信側の通信装置が、前記2つ以上のトレーニング信号の各々の送信時刻および周波数に基づいた回転量の位相回転を当該トレーニング信号の各々に対して個別に行うこととし、
前記受信位相回転手段は、
前記送信側の通信装置が各トレーニング信号に対して行った位相回転と逆の位相回転を受信信号に含まれる各トレーニング信号に対して行う
ことを特徴とする請求項11または12に記載の受信装置。
【請求項14】
前記通信システムがマルチキャリア通信システムであり、
かつ、Mを1フレーム内のトレーニング信号送信区間に含まれるシンボル数、mをトレーニング信号送信区間におけるシンボル番号(m=0,1,2,…,M-1)、τmをm=0の第0シンボルを基準シンボルとした場合の基準シンボルに対する第mシンボルのシンボル時刻、fをサブキャリア番号、ρcpを前記送信側の通信装置が位相回転後のトレーニング信号に対して実施する所定の信号処理の処理単位長とサイクリックプレフィックスの長さの比、とした場合、
前記受信位相回転手段は、次式(5)で示した回転量θ'm,fで、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項13に記載の受信装置。
【数5】
【請求項15】
通信システムの受信側の通信装置を構成し、送信側の通信装置により送信された2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を使用して伝送路推定を行う受信装置であって、
受信信号に含まれるトレーニング信号の各々を、それぞれ異なるシフト量で時間巡回シフトさせる時間逆シフト手段と、
時間巡回シフト後のトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる位相逆回転手段と、
位相回転後の各トレーニング信号を合成し、合成後のトレーニング信号に基づいて伝送路推定値を算出する合成手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項16】
通信システムの受信側の通信装置を構成し、送信側の通信装置により送信された2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を使用して伝送路推定を行う受信装置であって、
受信信号に含まれるトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる位相逆回転手段と、
位相回転後のトレーニング信号の各々を、それぞれ異なるシフト量で時間巡回シフトさせる時間逆シフト手段と、
自間巡回シフト後の各トレーニング信号を合成し、合成後のトレーニング信号に基づいて伝送路推定値を算出する合成手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項17】
前記送信側の通信装置が、前記2つ以上のトレーニング信号の各々の送信時刻に基づいたシフト量の時間巡回シフト、および当該トレーニング信号の各々の送信時刻に基づいた回転量の位相回転を当該トレーニング信号の各々に対して個別に行うこととし、
前記時間逆シフト手段は、
前記送信側の通信装置が行った時間巡回シフトと逆の時間巡回シフトを各トレーニング信号に対して行い、
前記受信位相回転手段は、
前記送信側の通信装置が行った位相回転と逆の位相回転を各トレーニング信号に対して行う
ことを特徴とする請求項15または16に記載の受信装置。
【請求項18】
通信システムの受信側の通信装置を構成し、送信側の通信装置により送信された2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を使用して伝送路推定を行う受信装置であって、
受信信号に含まれるトレーニング信号の各々を、それぞれ異なるシフト量で時間巡回シフトさせる時間逆シフト手段と、
時間巡回シフト後の各トレーニング信号を合成し、合成後のトレーニング信号に基づいて伝送路推定値を算出する合成手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項19】
前記送信側の通信装置が、前記2つ以上のトレーニング信号の各々の送信時刻に基づいたシフト量の時間巡回シフトを当該トレーニング信号の各々に対して個別に行うこととし、
前記時間逆シフト手段は、
前記送信側の通信装置が行った時間巡回シフトと逆の時間巡回シフトを各トレーニング信号に対して行う
ことを特徴とする請求項18に記載の受信装置。
【請求項20】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の送信装置と、
請求項11〜14のいずれか一つに記載の受信装置と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項21】
請求項5〜10のいずれか一つに記載の送信装置と、
請求項15〜19のいずれか一つに記載の受信装置と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項1】
通信システムの送信側の通信装置を構成し、2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を受信側の通信装置に対して送信する送信装置であって、
前記トレーニング信号系列を構成しているトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる送信位相回転手段と、
位相回転後のトレーニング信号系列に対して所定の信号処理を実施して送信する信号送信手段と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記送信位相回転手段は、
各トレーニング信号の送信時刻および周波数に基づいた回転量で、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記所定の信号処理にサイクリックプレフィックスを付加する処理が含まれる場合、
前記送信位相回転手段は、各トレーニング信号の送信時刻および周波数と前記サイクリックプレフィックスの長さとに基づいた回転量で、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記通信システムがマルチキャリア通信システムであり、
かつ、Mを1フレーム内のトレーニング信号送信区間に含まれるシンボル数、mをトレーニング信号送信区間におけるシンボル番号(m=0,1,2,…,M-1)、τmをm=0の第0シンボルを基準シンボルとした場合の基準シンボルに対する第mシンボルのシンボル時刻、fをサブキャリア番号、ρcpを前記所定の信号処理の処理単位長とサイクリックプレフィックスの長さの比、とした場合、
前記送信位相回転手段は、次式(1)で示した回転量φ'm,fまたは次式(2)で示した回転量φ''m,fで、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項3に記載の送信装置。
【数1】
【数2】
【請求項5】
通信システムの送信側の通信装置を構成し、2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を受信側の通信装置に対して送信する送信装置であって、
前記トレーニング信号系列を構成しているトレーニング信号の各々を、それぞれ異なるシフト量で時間巡回シフトさせる時間シフト手段と、
時間巡回シフト後のトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる位相回転手段と、
位相回転後のトレーニング信号系列に対して所定の信号処理を実施して送信する信号送信手段と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項6】
通信システムの送信側の通信装置を構成し、2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を受信側の通信装置に対して送信する送信装置であって、
前記トレーニング信号系列を構成しているトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる位相回転手段と、
位相回転後のトレーニング信号の各々を、それぞれ異なるシフト量で時間巡回シフトさせる時間シフト手段と、
時間巡回シフト後のトレーニング信号系列に対して所定の信号処理を実施して送信する信号送信手段と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項7】
前記時間シフト手段は、
各トレーニング信号の送信時刻に基づいたシフト量で、各トレーニング信号を時間巡回シフトさせる
ことを特徴とする請求項5または6に記載の送信装置。
【請求項8】
前記位相回転手段は、
各トレーニング信号の送信時刻に基づいた回転量で、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項5、6または7に記載の送信装置。
【請求項9】
Mを1フレーム内のトレーニング信号送信区間に含まれるシンボル数、mをトレーニング信号送信区間におけるシンボル番号(m=0,1,2,…,M-1)、τmをm=0の第0シンボルを基準シンボルとした場合の基準シンボルに対する第mシンボルのシンボル時刻、Nbを前記所定の信号処理の処理単位長とサイクリックプレフィックスの長さの和、ρcpを前記所定の信号処理の処理単位長とサイクリックプレフィックスの長さの比、とした場合、
前記時間シフト手段は、次式(3)で示したシフト量Δmで、各トレーニング信号を時間巡回シフトさせる
ことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一つに記載の送信装置。
【数3】
【請求項10】
Mを1フレーム内のトレーニング信号送信区間に含まれるシンボル数、mをトレーニング信号送信区間におけるシンボル番号(m=0,1,2,…,M-1)、とした場合、
前記位相回転手段は、次式(4)で示した回転量βm、または当該回転量の逆位相である−βmで、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項5〜9のいずれか一つに記載の送信装置。
【数4】
【請求項11】
通信システムの受信側の通信装置を構成し、送信側の通信装置により送信された2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を使用して伝送路推定を行う受信装置であって、
受信信号に含まれるトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる受信位相回転手段と、
位相回転後の各トレーニング信号を合成し、合成後のトレーニング信号に基づいて伝送路推定値を算出する合成手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項12】
前記受信位相回転手段は、
各トレーニング信号の受信時刻および周波数に基づいた回転量で、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項11に記載の受信装置。
【請求項13】
前記送信側の通信装置が、前記2つ以上のトレーニング信号の各々の送信時刻および周波数に基づいた回転量の位相回転を当該トレーニング信号の各々に対して個別に行うこととし、
前記受信位相回転手段は、
前記送信側の通信装置が各トレーニング信号に対して行った位相回転と逆の位相回転を受信信号に含まれる各トレーニング信号に対して行う
ことを特徴とする請求項11または12に記載の受信装置。
【請求項14】
前記通信システムがマルチキャリア通信システムであり、
かつ、Mを1フレーム内のトレーニング信号送信区間に含まれるシンボル数、mをトレーニング信号送信区間におけるシンボル番号(m=0,1,2,…,M-1)、τmをm=0の第0シンボルを基準シンボルとした場合の基準シンボルに対する第mシンボルのシンボル時刻、fをサブキャリア番号、ρcpを前記送信側の通信装置が位相回転後のトレーニング信号に対して実施する所定の信号処理の処理単位長とサイクリックプレフィックスの長さの比、とした場合、
前記受信位相回転手段は、次式(5)で示した回転量θ'm,fで、各トレーニング信号を位相回転させる
ことを特徴とする請求項13に記載の受信装置。
【数5】
【請求項15】
通信システムの受信側の通信装置を構成し、送信側の通信装置により送信された2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を使用して伝送路推定を行う受信装置であって、
受信信号に含まれるトレーニング信号の各々を、それぞれ異なるシフト量で時間巡回シフトさせる時間逆シフト手段と、
時間巡回シフト後のトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる位相逆回転手段と、
位相回転後の各トレーニング信号を合成し、合成後のトレーニング信号に基づいて伝送路推定値を算出する合成手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項16】
通信システムの受信側の通信装置を構成し、送信側の通信装置により送信された2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を使用して伝送路推定を行う受信装置であって、
受信信号に含まれるトレーニング信号の各々を、それぞれ異なる回転量で位相回転させる位相逆回転手段と、
位相回転後のトレーニング信号の各々を、それぞれ異なるシフト量で時間巡回シフトさせる時間逆シフト手段と、
自間巡回シフト後の各トレーニング信号を合成し、合成後のトレーニング信号に基づいて伝送路推定値を算出する合成手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項17】
前記送信側の通信装置が、前記2つ以上のトレーニング信号の各々の送信時刻に基づいたシフト量の時間巡回シフト、および当該トレーニング信号の各々の送信時刻に基づいた回転量の位相回転を当該トレーニング信号の各々に対して個別に行うこととし、
前記時間逆シフト手段は、
前記送信側の通信装置が行った時間巡回シフトと逆の時間巡回シフトを各トレーニング信号に対して行い、
前記受信位相回転手段は、
前記送信側の通信装置が行った位相回転と逆の位相回転を各トレーニング信号に対して行う
ことを特徴とする請求項15または16に記載の受信装置。
【請求項18】
通信システムの受信側の通信装置を構成し、送信側の通信装置により送信された2つ以上の同一のトレーニング信号からなる伝送路推定用のトレーニング信号系列を使用して伝送路推定を行う受信装置であって、
受信信号に含まれるトレーニング信号の各々を、それぞれ異なるシフト量で時間巡回シフトさせる時間逆シフト手段と、
時間巡回シフト後の各トレーニング信号を合成し、合成後のトレーニング信号に基づいて伝送路推定値を算出する合成手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項19】
前記送信側の通信装置が、前記2つ以上のトレーニング信号の各々の送信時刻に基づいたシフト量の時間巡回シフトを当該トレーニング信号の各々に対して個別に行うこととし、
前記時間逆シフト手段は、
前記送信側の通信装置が行った時間巡回シフトと逆の時間巡回シフトを各トレーニング信号に対して行う
ことを特徴とする請求項18に記載の受信装置。
【請求項20】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の送信装置と、
請求項11〜14のいずれか一つに記載の受信装置と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項21】
請求項5〜10のいずれか一つに記載の送信装置と、
請求項15〜19のいずれか一つに記載の受信装置と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2−1】
【図2−2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−44550(P2012−44550A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185445(P2010−185445)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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