説明

送信装置

【課題】地紋画像を含む画像を処理する場合、不適切な送信処理を抑制することができる送信装置を提供する。
【解決手段】送信しようとする画像データの変倍倍率として指定された倍率、及び画像データに含まれる地紋画像の限界倍率を取得する(S901、S902)。変倍の倍率が上限倍率以上又は下限倍率以下である場合(S903、S904でYES)、地紋データを分離し(S905)、地紋以外の画像データを変倍処理する(S906)。送信先MFPが地紋合成機能を備えているか否かを判別する(S907)。送信先MFPが地紋合成機能を備えている場合には(S907でYES)、MFPに、同じ地紋画像が格納されているかを判別する(S908)。同じ地紋画像が格納されている場合には、地紋合成のためのパラメータを生成し、画像データに付加し(S909)、画像データをMFPに送信する(S911)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置に関し、特に画像読み取りの後に顕在化する隠し文字が配された地紋画像を含む画像データを変倍処理する際の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複写した際、複写されたシート上に「COPY」などの文字が浮かび上がるように画像の出力態様が変化する地紋画像をプリントする技術が特許文献1等に開示されている。上記「COPY」等は隠し文字と呼ばれ、複写されたシート上には顕在化して表示されるが、通常時には、一見しては認識できないような態様でプリントされる。このような隠し文字は、例えば、プリントの際の解像度と複写の際に画像を読み取るスキャナの読み取り解像度との相違に起因する複写時の画像の再現可能性を利用して実現される。例えば、上記隠し文字以外の背景部分が複写後には再現されず、隠し文字部分のみが複写後に再現される場合、複写後には上記隠し文字が顕在化する。
【特許文献1】特開2005−136953号公報
【特許文献2】特開2004―228897号公報
【特許文献3】特開2002―77571号公報
【特許文献4】特開2005―91730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような地紋画像を含む画像をプリントする場合においても、拡大・縮小(以下、両者を併せて「変倍」という。)してプリントしたいという要求が存在する。しかしながら、地紋画像を要求された倍率で変倍してプリントした場合、地紋画像の態様が変化しており、プリントしたものを複写等した場合に、隠し文字が適切に顕在化しない場合が生じ得る、という問題点を有していた。複写後の態様によっては、隠し文字を含む地紋画像の影響(例えば、消去されるべき部分が消去されない等)により、プリントされた本来の文字や図表が読みにくくなる場合も有り得、極めて不都合である。
【0004】
また、地紋画像を変倍してプリントした場合に、本来は一見して認識できないような態様でプリントされるべき隠し文字が認識可能な程度に顕在化してしまい、地紋画像の秘匿性が確保できない場合が生じ得るという問題もある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、地紋画像を含む画像を処理する場合、不適切な送信処理を抑制することができる送信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点を解決するために、本発明に係る送信装置は、画像データを画像処理装置に送信する送信装置において、送信先の画像処理装置の、地紋合成機能の有無に関する情報を取得する情報取得手段と、画像データを前記画像処理装置に送信する画像送信制御手段とを備え、前記画像送信制御手段は、前記情報取得手段が取得した情報に基づいて、前記画像処理装置に送信する画像データの内容を切り替えることを特徴としている。
【0007】
送信装置は、さらに、地紋画像のデータを送信する画像データから分離する分離手段を備え、前記画像送信制御手段は、送信すべき画像データに含まれる地紋画像が送信先の画像処理装置で合成可能である場合には、前記分離手段によって地紋画像のデータを送信する画像データから分離した画像データを送信することを特徴としている。
【0008】
送信装置は、さらに、画像データを変倍処理する変倍手段を備え、前記画像送信制御手段は、送信すべき画像データに含まれる地紋画像が送信先の画像処理装置で合成可能である場合には、前記分離手段によって地紋画像を画像データから分離し、前記変倍手段によって地紋画像以外の部分について変倍処理を実行した後のデータを送信することを特徴としている。
【0009】
前記地紋合成機能の有無に関する情報は、前記送信先の画像処理装置が地紋合成機能を有するか否かに関する情報、及び地紋合成機能を有する場合には、前記送信先の画像処理装置が合成可能な地紋画像の種類に関する情報が含まれることを特徴としている。
【0010】
前記画像送信制御手段は、送信すべき画像データに含まれる地紋画像が送信先の画像処理装置で合成可能である場合には、地紋合成に関するパラメータを送信することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る画像処理装置は、記録シート上に画像を形成する画像形成手段と、画像データに対して変倍処理を行い、前記画像形成手段による画像形成処理に供する画像変倍制御手段と、前記変倍処理の倍率を取得する倍率取得手段と、画像読取の後に隠し文字が顕在化するように出力態様が変化するべき地紋画像が含まれる画像データに対して、前記倍率取得手段が取得した倍率で変倍処理を行った場合に、地紋画像の態様が適切とならない可能性があるか否かを判定する変倍可否判定手段とを備え、前記画像変倍制御手段は、前記変倍可否判定手段により適切とならない可能性があると判定された場合に、それ以外の場合と制御処理の内容を切り替えることを特徴としている。
【0012】
本発明の構成では、地紋画像の態様が適切とならない可能性があると判定された場合に、それ以外の場合と制御処理の内容を切り替える構成としているので、地紋画像の態様が適切でないことによる問題の発生を抑制することが可能となる。
【0013】
なお、「地紋画像の態様が適切とならない場合」とは、変倍処理後にプリントされた画像をスキャナ等で読み取った際に、例えば背景部分が適切に消去されないなど、地紋画像の出力態様が適切に変化しない可能性がある場合(第1の場合)の他、変倍処理後にプリントした際に、本来は一見して認識されないような態様となるべき隠し文字部分が認識されてしまうような態様となる場合(第2の場合)を含む。第2の場合が生じる条件と、第1の場合が生じる条件とは異なることもあるため、両方の場合について判定を行うことが好ましいことは勿論であるが、いずれか一方の条件のみ判定する構成でも構わない。なお、第2の場合の判定は、多分に観る者の主観に依存する性質を有するものではあるが、例えば地紋の背景部分及び隠し文字部分の濃度や、両者の境界部分の態様などに基づいて、隠し文字の顕在化の可能性を判定することは可能である。
【0014】
前記変倍可否判定手段は、変倍処理後、プリントされた画像を読み取った際に、地紋画像の出力態様が適切に変化しない可能性があるか否かを判定する構成が可能であり、この場合、複写後に限らず、地紋画像を含む画像を読み取って画像データを得た場合において適切に変化しない可能性があるか否かを判定することが、より好適である。
【0015】
前記変倍可否判定手段は、地紋画像に含まれる隠し文字部分の解像度の値(dpi)と、それ以外の背景部分の解像度の値(dpi)との、大きい側の値をX1(dpi)、想定されるスキャナの読み取り解像度の値をY(dpi)とし、前記倍率取得手段が取得した倍率をR1とすると、R1≧X1/Yの関係を有する場合に、地紋画像の出力態様が適切に変化しない可能性があると判定する構成とすることができる。
【0016】
また、前記変倍可否判定手段は、地紋画像に含まれる隠し文字部分の解像度の値(dpi)と、それ以外の背景部分の解像度の値(dpi)との、小さい側の値をX2(dpi)、想定されるスキャナの読み取り解像度の値をY(dpi)とし、前記倍率取得手段が取得した倍率をR2とすると、R2≦X2/Yの関係を有する場合に、地紋画像の出力態様が適切に変化しない可能性があると判定する構成とすることができる。
【0017】
なお、変倍可否判定手段の判定方法は、地紋画像の形成方法により、他の方法を用いることも可能であるし、上記のような数式を用いなくとも、実験的に求めた値を予め格納しておくような手法も可能である。
【0018】
前記画像変倍制御手段は、前記変倍可否判定手段により地紋画像の態様が適切とならない可能性があると判定された場合に、前記画像形成手段による画像形成処理を実行しないように制御することができる。
【0019】
また、前記変倍可否判定手段は、変倍の倍率の上限を取得する上限倍率取得手段を備え、前記画像変倍制御手段は、変倍の倍率が取得した上限を超える場合には、変倍の倍率を上限の値に修正して変倍処理を実行する構成とすることもできる。
【0020】
また、前記変倍可否判定手段は、変倍の倍率の下限を取得する下限倍率取得手段を備え、前記画像変倍制御手段は、変倍の倍率が取得した下限を下回る場合には、変倍の倍率を下限の値に修正して変倍処理を実行する構成とすることもできる。
【0021】
前記変倍処理制御手段は、前記変倍可否判定手段により、地紋画像の態様が適切とならない可能性があると判定された場合に地紋画像を画像データから分離する地紋分離手段を有し、地紋画像以外の部分について変倍処理を実行する構成とすることができる。
【0022】
前記地紋分離手段は、地紋画像と、それ以外の画像とが別レイヤとなっている形式のファイルの場合には、地紋画像のレイヤを分離することにより、地紋画像を画像データから分離する構成とすることができる。
【0023】
前記変倍処理制御手段は、さらに、変倍処理された地紋画像以外の部分の画像と、地紋画像とを合成する地紋合成手段を含む構成とすることができる。
この場合、例えば前記地紋合成手段は、予め地紋画像のデータを記憶する地紋画像記憶手段を備え、変倍処理された前記地紋画像以外の部分の画像と、前記地紋画像記憶手段に格納されている地紋画像とを合成する構成とすることができる。
【0024】
また、前記地紋合成手段は、分離された地紋画像の形態を判別する地紋判別手段を有し、判別された形態の地紋画像が前記地紋画像記憶手段に格納されている場合に、当該格納されている地紋画像と、前記地紋画像以外の部分の画像とを合成する構成とすることができる。
【0025】
前記地紋合成手段は、分離された地紋画像をリピート処理する地紋リピート処理手段を有し、当該リピート処理された地紋画像と、前記地紋画像以外の部分の画像とを合成する構成とすれば、いわゆる地紋合成機能を有しない画像処理装置でも適用が可能である。なお、前記変倍可否判定手段により適切とならない可能性があると判定された場合に、その旨を報知する報知手段とを備えることが好ましい。
【0026】
本発明に係る画像処理方法は、画像データ変倍処理の倍率を取得する倍率取得ステップと、画像読取の後に隠し文字が顕在化するように出力態様が変化するべき地紋画像が含まれる画像データに対して、前記倍率取得手段が取得した倍率で変倍処理を行った場合に、地紋画像の態様が適切とならない可能性があるか否かを判定する変倍可否判定ステップとを含むことを特徴としている。
【0027】
前記画像処理方法は、さらに、前記変倍可否判定ステップにおいて地紋画像の態様が適切とならない可能性があると判定された場合に、以後の画像処理を停止する停止ステップとを含む構成とすることができる。
【0028】
前記画像処理方法は、さらに、前記変倍可否判定ステップにおいて地紋画像の態様が適切とならない可能性があると判定された場合に、前記倍率を修正する倍率修正ステップとを含む構成とすることができる。
【0029】
前記画像処理方法は、さらに、前記変倍可否判定ステップにおいて地紋画像の態様が適切とならない可能性があると判定された場合に、画像データから前記地紋画像を分離する分離ステップとを含む構成とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る送信装置によると、地紋画像を含む画像を処理する場合、不適切な送信処理を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0032】
(実施の形態1)
【0033】
(1−1)画像形成システムの構成
【0034】
図1は、本実施の形態の画像形成システムの全体的な構成の一例を示す図である。画像形成システム1は、画像処理装置の一例としてのMFP100と、指示装置の一例としてのパーソナルコンピュータ(PC)31Aとが、LAN等のネットワーク500を介して接続されて構成される。MFP100は、コピー、ネットワークプリンティング、スキャナ、FAX、またはドキュメントサーバなどの機能を集約した画像形成装置である。複合機などと呼ばれることもある。
【0035】
MFP及びPCの接続台数は任意である。ネットワーク500の通信規約または通信規格として、例えばTCP/IP、FTP、有線LANの規格であるIEEE802.3、無線LANの規格であるIEEE802.11などが適用される。
【0036】
PC31Aには、例えばPC31Aにインストールされたワードプロセッサアプリケーション等のソフトウェアにより作成した文書等について、MFP100にプリントを指示するプリント指示プログラムがインストールされている。また、本実施の形態のMFP100は、例えば地紋合成機能等と称される機能を備えている。地紋合成機能とは、地紋画像を含んでいない文字、図表などの情報と地紋画像とを合成してプリントする機能である。本実施の形態では、MFP100内に予め格納された地紋画像と、PC31Aから送信された地紋画像を含んでいない画像とを合成してプリントすることができる。
【0037】
(1−2)MFP100の構成
【0038】
図2は、画像処理装置の一例としての本実施の形態のMFP100の外観の一例を示す図である。また、図3は、本実施の形態のMFP100におけるハードウェア構成の一例を示す図である。MFP100は、操作部11、ディスプレイ部12、スキャナ部13、プリンタ部14、通信インタフェース16、ドキュメントフィーダ17、給紙装置18、トレイ19(図1参照)、CPU20、ROM21、RAM22、およびハードディスク23などによって構成される。
【0039】
操作部11は、数字、文字、および記号などを入力するための複数のキー、押下されたキーを認識するセンサ、および認識したキーを示す信号をCPU20に送信する送信用回路などによって構成される。
【0040】
ディスプレイ部12は、ユーザに対してメッセージを表示する画面、ユーザが設定内容や処理内容を入力するための画面、およびMFP100で実行された処理の結果を示す画面などを表示する。本実施の形態では、ディスプレイ部12にタッチパネルが用いられている。タッチパネルは、ユーザが指で触れたタッチパネル上の位置を検知し、検知結果を示す信号をCPU20に送信する機能を備えており、これは操作部11に含まれる。
【0041】
スキャナ部13は、原稿に描かれている画像を所定の読み取り解像度で光電的に読み取って、デジタルの画像データ(ここでは、RGBまたはブラックの濃度を表す濃度データ)を生成する。このようにして得られた画像データは、プリンタ部14において印刷のために用いられるほか、TIFF、PDF、JPEGなどのフォーマットのファイルに変換されてハードディスク23に記憶される。FAXデータに変換されてFAX送信に供されることもある。読み取り解像度は、ユーザからの指示により設定することもできる。ドキュメントフィーダ17は、MFP100の本体の上部に設けられており、1枚または複数枚の原稿をスキャナ部13に順次送るために用いられる。
【0042】
プリンタ部14は、スキャナ部13にて読み取られた画像、LAN等のネットワークを介して接続されたPC(パーソナル・コンピュータ)等の外部装置から送信されてきたデータの画像、またはFAX受信したFAXデータの画像を、用紙またはフイルムなどの記録シートに印刷する。給紙装置18は、MFP100本体の下部に設けられており、印刷対象の画像に適した記録シートをプリンタ部14に供給するために用いられる。プリンタ部14によって画像が印刷された記録シートはトレイ19に排出される。
【0043】
通信インタフェース16は、PC等の外部装置とネットワークを介して通信を行ったり、電話回線を通じてFAX送受信等を行うための装置である。通信インタフェース16として、NIC(ネットワーク・インタフェース・カード)、モデム、TA(ターミナル・アダプタ)などが用いられる。
【0044】
ハードディスク23には、図4に示すように、データをファイルとして保存しておくための記憶領域であるパーソナルボックス231がユーザごとに割り当てられている。パーソナルボックス231は、PCまたはワークステーションなどにおける「ディレクトリ」または「フォルダ」に相当する。以下、このパーソナルボックス231を単に「ボックス231」と記載する。ボックス231には、他のボックス231と識別するためのボックス名が対応付けられている。本実施の形態では、ボックス名として、そのボックスの利用者であるユーザのユーザ名が用いられている。ユーザは、ファイルを、例えばPC31A等の外部装置からファイル転送することによって、ボックス231に保存させることができる。
【0045】
図3に戻って、ROM21には、画像の読取(スキャン)、原稿の複写(コピー)、FAXデータの送受信、ネットワークプリンティング、およびドキュメントサーバ(ボックス機能)などのMFP100の基本機能を実現するためのプログラム、データが記憶されている。そのほか、本発明の実施の形態で説明する機能を実現するプログラムおよびデータが記憶されている。これらのプログラムまたはデータの一部または全部を、ハードディスク23にインストールしておいてもよい。この場合は、ハードディスク23にインストールされているプログラムまたはデータは、必要に応じてRAM22にロードされる。本実施の形態で説明する機能は、必ずしもCPU20だけでなく専用ハードウェアを利用したり、一部はオペレーティングシステム(OS)等の汎用プログラムの機能を利用して実現することもできる。また、ROM21やRAM22として、不揮発性の半導体メモリを用いることもできる。
【0046】
図5は、本実施の形態のMFP100の機能的構成の一例について説明するためのブロック図である。MFP100には、ジョブ解析部120、倍率取得部121、画像合成部130、地紋画像取得部131が設けられている。ジョブ解析部120は、PC31A等の外部装置から投入されたジョブの内容を解析し、画像データを展開して画像合成部130に送るとともに、外部装置から変倍倍率が指定されていれば、当該倍率を倍率取得部121へと送る。
【0047】
倍率取得部121は、上記のように外部装置から指定された倍率の他、MFP100内部においてプリントジョブ等のジョブが生成される場合に操作部11において指定された変倍倍率を取得する。変倍倍率は、画像合成部130へと送られる。画像合成部では、外部装置から、あるいは操作部11を介して地紋画像との合成が指示された場合に、地紋画像格納部232に格納された地紋画像と画像データとを合成して、プリンタ部14でのプリント処理に供する。画像合成部130では、変倍倍率に応じて、上記合成処理の処理内容を切り替える。
【0048】
なお、画像合成部130では、操作部11の指示によりスキャナ部13で原稿を読み取って得た画像データの他、スキャナ部13で読み取って、あるいは外部装置から送信されて、一旦PDF形式等のファイルとしてボックス231に格納された画像データについて地紋画像との合成処理を行うこともできる。なお、地紋画像は、PC31A等の外部装置から送信される情報に含まれることもあり、その場合にはジョブ解析部120が地紋画像に関するデータを画像合成部130に送る。
【0049】
地紋画像格納部232は、例えばハードディスク23内に設けることができる。地紋画像格納部232には、複数のパターンの地紋画像が格納されており、ユーザからの指定に応じて、地紋画像取得部131が地紋画像を取り出して合成処理に供することができる。図6は、地紋画像格納部232の内容について説明するための模式図であり、地紋画像の識別子と対応付けて、地紋画像のパターンを格納している。なお、地紋画像パターンは、図に示したものと異なる形式も種々可能であり、要するにプリント処理時に記録紙等の記録シート上に形成することが可能な形式であればよい。
【0050】
地紋画像をプリントする場合、当該地紋画像を変倍処理すると、複写の際に隠し文字(例えば「COPY」など)が適切に顕在化しない場合が生じ得る。本明細書では、この隠し文字が適切に顕在化する性能を「地紋性能」という。適切に顕在化しないような場合に「地紋性能が劣化する」という。そして、適切な地紋性能が保持できる倍率の上限(拡大倍率の上限)を「上限倍率」、倍率の下限(縮小倍率の下限)を「下限倍率」といい、両者を併せて「限界倍率」という。
【0051】
限界倍率は、地紋画像(背景部分及び隠し文字部分)の解像度、地紋画像(背景及び隠し文字)の濃度、スキャナの読み取り解像度、プリンタの解像度等によって変化し得るものであるが、各パラメータの内容に応じて例えば実験的に求めることができ、限界倍率格納部233に格納しておくことができる。限界倍率格納部233は、例えばハードディスク23に設けることができる。
【0052】
なお、限界倍率は、場合によっては動的に算出することも可能である。以下、限界倍率算出の手法の一例について説明する。地紋画像の背景部分と隠し文字部分の印字解像度のうち、解像度が大きい側の印字解像度をX1(dpi)、小さい側の印字解像度をX2(dpi)、スキャナの読み取り解像度をY(dpi)とすると、下記(式1)の関係を満足する場合に隠し文字が顕在化する。
【0053】
X2<Y<X1 ・・・(式1)
【0054】
なお、背景部分の印字解像度が大きい場合には、背景画像が消えることにより隠し文字が顕在化し、背景部分の印字解像度が小さい場合には、隠し文字部分が消えることによって、やはり隠し文字が顕在化する。
【0055】
(式1)に従う場合には、地紋画像を拡大した場合に、隠し文字が適切に顕在化しなくなってしまう場合が生じる倍率(上限倍率)R1は、下記(式2)で算出できる。一例として、背景部分の印字解像度が600dpi、隠し文字部分の印字解像度が200dpiであった場合、変倍倍率Rが2.0倍とすると、背景部分が300dpi(=600/2.0)となり、このX1/Rの値が上記Yを下回る場合の倍率R1を上限倍率と考えることができるためである。
【0056】
R1=X1/Y ・・・(式2)
【0057】
一方、地紋画像を縮小する場合に、隠し文字が適切に顕在化しなくなってしまう場合が生じる倍率(下限倍率)R2は、下記(式3)で算出できる。一例として、背景部分の印字解像度が600dpi、隠し文字部分の印字解像度が200dpiであった場合、変倍倍率Rが0.5倍とすると、隠し文字部分が400dpi(=200/0.5)となり、このX2/Rの値が上記Yを上回る場合の倍率R2を下限倍率と考えることができるためである。
【0058】
R2=X2/Y ・・・(式3)
【0059】
もっとも、上記はスキャナの読み取り解像度に依存するため、想定される読み取り解像度に応じて限界倍率を補正することもできる。また、限界倍率は、他の従来公知の技術に併せて求めることも可能である。
【0060】
(1−3)画像合成処理の内容(その1)
【0061】
以下、画像合成部130の処理内容の一例について説明する。図7は、例えばPC31Aからプリントを指示された場合において、当該外部装置から投入されたジョブに地紋画像及び倍率指定の情報が含まれていた場合の画像変倍処理の内容の一例について説明するためのフローチャートである。
【0062】
図8は、この場合にPC31Aから投入されるジョブに含まれる情報の内容の一例を示す図である。本実施の形態では、本来のプリント対象である文書の画像データ201(既に画像地紋画像のデータ202が合成済み)、地紋画像の識別子203、及び変倍処理の倍率情報204がMFP100に送信される。
【0063】
MFP100の側では、ジョブの投入を受け付け(S101)、倍率情報204を取得する(S102)。そして、地紋画像データ202(若しくは識別子203)から限界倍率を取得し(S103)、変倍倍率が上限倍率以上である場合(S104:YES)、又は変倍倍率が下限倍率以下である場合(S104:NO、S105:YES)に、プリンタ部14による画像のプリント処理を禁止する(S106)。
【0064】
なお、上記のような変倍倍率と限界倍率との比較は、ジョブを投入する指示装置としてのPC31A等の外部装置の側で行うことも可能である。例えばPC31Aにインストールされるプリント指示プログラムにおいて上記ステップS104及びS105の処理を実行し、変倍倍率が上限倍率以上である場合、又は変倍倍率が下限倍率以下である場合に、PC31A側で、その旨を報知し、変倍倍率や地紋データの変更を促したり、ジョブ投入を拒絶するといった処理を行うようにすることもできる。報知の方法の一例としてメッセージの表示が挙げられる。
【0065】
また、上記の処理は、MFP100において、既にボックス231に格納されている地紋画像合成済みの画像データのプリント処理を指示された場合に適用することもできる。即ち、合成された地紋画像から限界倍率を取得し、ステップS104、S105の比較処理を行い、地紋性能が維持できないと判断された場合にプリント処理を禁止するようにすればよい。
【0066】
(1−4)画像合成処理の内容(その2)
【0067】
次に、画像合成部130の処理内容の他の一例について説明する。図9は、画像変倍処理の内容の他の一例について説明するためのフローチャートである。同図の例では、地紋性能が維持できるようにMFP100の側で変倍倍率を修正する。即ち、ジョブの投入を受け付け(S201)、倍率情報204を取得する(S202)。そして、地紋画像データ202(若しくは識別子203)から限界倍率を取得し(S203)、変倍倍率が上限倍率以上である場合(S204:YES)、変倍倍率を上限倍率に修正して(S205)、プリント処理に供する(S206)。
【0068】
変倍倍率が下限倍率以下である場合(S204:NO、S207:YES)には、変倍倍率を下限倍率に修正して(S208)、プリンタ部14による画像のプリント処理に供する(S206)。
【0069】
上記のような処理を、ジョブを投入するPC31A等の外部装置の側で行い、自動的に変倍倍率を修正することも可能であるし、変倍倍率を修正する旨の確認画面を表示することもできる。また、MFP100において、既にボックス231に格納されている地紋画像合成済みの画像データのプリント処理を指示された場合に適用することもできる。
【0070】
(1−5)画像合成処理の内容(その3)
【0071】
次に、画像合成部130の処理内容の他の一例について説明する。図10は、画像変倍処理の内容の他の一例について説明するためのフローチャートである。同図の例では、地紋合成済みの画像データを含むジョブの投入を受け付ける(S301)。図11は、この場合にジョブに含まれる情報の内容の一例を示す図である。同図のように、画像データのレイヤ(レイヤ1)とは別レイヤ(レイヤ2)で、地紋画像データが既に合成済みとなっており、このようなジョブのプリント処理を行う場合、通常はMFP100内部の地紋画像格納部232の内容は参照されないため、このまま倍率情報204を参照して変倍処理を実行すると、画像及び地紋の両方が2倍に拡大されるものである。
【0072】
本実施の形態では、変倍倍率及び限界倍率を取得し(S302、S303)、変倍倍率が上限倍率以上である場合(S304:YES)、又は変倍倍率が下限倍率以下である場合(S304:NO、S305:YES)には、同じ地紋データがMFP100内部の地紋画像格納部232に存在するか否かを判定する(S306)。
【0073】
同じ地紋データが地紋画像格納部232に存在しない場合には(S306:NO)、プリント処理を禁止する(S307)。一方、同じ地紋データが地紋画像格納部232に存在する場合には(S306:YES)、一旦上記レイヤ2の地紋データを削除する(S308)。そして、文書等の画像データに対してのみ変倍処理を行い(S309)、改めて地紋画像格納部232に格納された地紋画像との合成処理を行う(S310)。具体的には、ジョブに含まれる地紋識別子303(図11参照)をキーとして地紋画像格納部232から地紋パターンを取得し、変倍処理後の画像データとの合成処理を行う。
【0074】
以上の合成処理の後にプリント処理(S311)を実行することにより、変倍処理によって地紋性能が害されることを防止できる。なお、上記図11の例のようにジョブ投入の段階で既に別レイヤとなっている場合以外に、MFP100の側で画像データと地紋画像とを分離することも場合によっては可能である。このように分離処理を実行するようにすると、投入されたジョブの画像データが、PDF形式等の複数レイヤを含む形式でなく、JPEG形式等の場合でも、上記処理内容を適用することができる。
【0075】
(1−6)画像合成処理の内容(その4)
【0076】
さらに、画像合成部130の処理内容の他の一例について説明する。図12は、画像変倍処理の内容の他の一例について説明するためのフローチャートである。同図の例でも、図11に例示したような地紋合成済みの画像データを含むジョブの投入を受け付ける(S401)。本実施の形態では、変倍倍率及び限界倍率を取得し(S402、S403)、変倍倍率が上限倍率以上である場合(S404:YES)、又は変倍倍率が下限倍率以下である場合(S404:NO、S405:YES)には、まず、地紋データと画像データとを分離し(S406)、文書等の画像データに対してのみ変倍処理を実行する(S407)。
【0077】
次に、同じ地紋データがMFP100内部の地紋画像格納部232に存在するか否かを判定する(S408)。同じ地紋データが地紋画像格納部232に存在する場合には(S408:YES)、図10のステップS310と同様に、地紋画像格納部232に格納された地紋画像との合成処理を行う(S409)。一方、同じ地紋データが地紋画像格納部232に存在しない場合には(S408:NO)、ステップS406で分離された地紋データをリピート処理して、画像データと合成する(S410)。
【0078】
以上の合成処理の後にプリント処理(S411)を実行することにより、変倍処理によって地紋性能が害されることを防止できる。図13は、ステップS410の処理後の画像の様子の一例を示す図であり、2倍に拡大された文書と、変倍処理はされていないがリピート処理された地紋画像とが合成されている。
【0079】
なお、ステップS406の分離処理は、上記図11の例(例えばPDF形式)のように別レイヤとなっている場合以外に、JPEG形式等の場合に画像データと地紋画像とを分離することも場合によっては可能である。また、上記の処理は、外部からジョブが投入された場合以外に、一旦MFP側でボックス231に格納された画像をプリントしようとする場合に実行することも可能である。この場合、地紋画像格納部232等の地紋合成機能を有しないMFPでも画像をプリントすることが可能となる。
【0080】
(実施の形態2)
【0081】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、複数のMFP間で仮想サブネットワークを構成した場合における本発明の実施の形態について説明する。
【0082】
(2−1)仮想サブネットワークシステムの構成
【0083】
図14は、本発明の実施の形態における仮想サブネットワーク501の構成について説明するための図である。同図の例ではネットワーク500にMFP100、100A、100B、100Cを接続している。
【0084】
本実施の形態では、MFP100、MFP100A、及びMFP100Bに設定されたワークグループが同一であり、これら3台のMFPによって仮想サブネットワーク501を構成している。MFP100Cはワークグループが異なっており、仮想サブネットワーク501を構成するMFPとはなっていない。仮想サブネットワーク501を構成するに際しては、例えばブロードキャストパケットによりワークグループ情報の交換を行い、同一ワークグループの画像処理装置にて仮想サブネットワークを構成することができる。
【0085】
なお、仮想サブネットワーク501を構成するMFPの台数は任意である。仮想サブネットワークの構成方法等については、本願出願人による他の特許出願(例えば特願2005−160999、特願2005−161000、特願2005−161001、特願2005−236931等)の内容も参照されたい。
【0086】
本実施の形態における仮想サブネットワーク501においては、MFP100、100A、100Bのそれぞれにおいて、それを主に使用するユーザが予め設定されている。このため、MFP100、100A、100Bのそれぞれは、主に使用するユーザを登録するために登録ユーザ情報を記憶している。登録ユーザ情報については後述するが、少なくともユーザを識別するためのユーザ識別子を含む。
【0087】
本実施の形態では、そのユーザの登録ユーザ情報が記憶されたMFPを「ホーム端末」という。たとえば、ユーザ「デービッド」の登録ユーザ情報がMFP100に記憶されていれば、ユーザ「デービッド」のホーム端末はMFP100である。なお、MFP100、100A、100Bのそれぞれに登録ユーザ情報を記憶させるのは、主に使用するユーザを予め規定することにより操作性を向上させるものであって、登録ユーザ情報が記憶されていないユーザの使用を禁止するものではない。
【0088】
ここで、MFP100A、100Bがネットワーク500に既に接続され、仮想サブネットワーク501が構成されている状態において、MFP100をネットワーク500に新たに接続する場合を想定する。MFP100には、MFP100を識別するための装置識別情報と、上述した登録ユーザ情報とが設定される必要がある。そして、MFP100に、装置識別情報と登録ユーザ情報とが設定されると、MFP100により装置識別情報と登録ユーザ情報とが他のMFP100A、100Bに送信される。これにより、MFP100、100A、100Bにおいて仮想サブネットワーク501が構築される。
【0089】
以下、仮想サブネットワーク501が構築される際の具体的な処理内容について、MFP100を例として説明する。図15は、新たに接続されるMFP100及び他のMFPの処理内容について説明するためのフローチャートである。
【0090】
仮想サブネットワーク501の構築に先立ち、MFP100でまず端末情報が登録される(S501)。端末情報は、MFP100を識別するための装置識別情報及びワークグループ名を含む。装置識別情報は、MFP100に割り当てられたネットワーク500における位置情報が好ましく、例えばIPアドレスを用いることができる。次に、MFP100に、MFP100をホーム端末として使用するユーザの登録ユーザ情報が入力される(S502)。複数のユーザがMFP100をホーム端末とする場合には、複数のユーザそれぞれの登録ユーザ情報が入力される。
【0091】
登録ユーザ情報は、ユーザを識別するためのユーザ識別子を含む。ユーザ識別子は、文字または記号からなるユーザID、ユーザ名など、ユーザごとにユニークな情報であればよく、本実施の形態ではユーザ識別子としてユーザ名を用いている。登録ユーザ情報は、ユーザ識別子の他にユーザごとの個人情報を含んでいる。ユーザ個人情報は、そのユーザに関連する情報であり、例えば付随情報、アドレス帳、パネル設定情報、認証情報および履歴情報を含む。これらのユーザ個人情報は、仮想サブネットワーク501が構成された際に、仮想サブネットワーク501にアクセスする形態でログインし、他のMFPをホーム端末と同様に操作することを可能とし、操作性を向上させるために利用される。
【0092】
上記端末情報と登録ユーザ情報とは、ユーザによる操作部11の操作により入力される。具体的には、ディスプレイ部12に、端末情報の入力画面と登録ユーザ情報の入力画面とを表示し、ユーザがそれらの画面に従って操作部11を操作して端末情報及び登録ユーザ情報を入力する。なお、端末情報の登録は通常は端末の管理者が行うのに対して、登録ユーザ情報の入力は通常はユーザが行う。
【0093】
その後、MFP100での初期設定が完了したか否かが判定され(S503)、初期設定が完了していない場合にはステップS101へと戻る。初期設定が完了している場合には(S503:YES)、MFP100以外の他の端末に、ブロードキャストによりワークグループ名を送信する(S504)。
【0094】
MFP100A等、ネットワーク500に接続された他の端末の側では、MFP100から送信されたワークグループ名を受信すると(S601:YES)、自機に設定されたワークグループ名と同一ワークグループであるか否かが判定され(S602)、同一ワークグループである場合に(S602:YES)、自機に設定された端末情報と登録ユーザ情報とをMFP100に送信する(S603)。なお、MFP100Cは、ワークグループ名が異なるため、MFP100に対して自機の端末情報等を送信しない。このようにして、ワークグループ名が同一の端末同士の間で仮想サブネットワーク501が構築される。
【0095】
MFP100の側では、同一ワークグループの端末(MFP100A、MFP100B)から送信された情報を受信し(S505)、ユーザデータを生成する(S506)。そして、初期設定においてMFP100に登録された端末情報と、登録ユーザ情報を送信する(S507)。他の端末(MFP100A、MFP100B)の側では、MFP100から送信された端末情報と、登録ユーザ情報を受信すると(S604:YES)、ユーザデータを生成し、追加する(S605)。MFP100及び他の端末でそれぞれ生成されるユーザデータは、本実施の形態では、MFP100、100A、100Bの端末情報およびユーザ識別情報をまとめたものであり、各端末の端末情報とユーザ識別子とを含む。各々のMFPにおいて生成されたユーザデータはハードディスクに格納される。以上の処理により、MFP100、100A、100Bにおいて同一のユーザデータが記憶されることになる。
【0096】
なお、本実施の形態ではMFP100で実行される初期設定処理で、端末情報の登録と、登録ユーザ情報の入力とをするようにしたが、MFP100が既にネットワーク500に接続されており、ユーザを追加する場合にもこの初期設定処理と同様の処理が実行される。その場合には、ステップS501の端末情報の登録処理は不要である。
【0097】
また、初期設定処理は、MFP100、100A、100Bをネットワーク500に接続する場合に限らず、MFP100、100A、100Bに電源が投入された後に実行するようにしてもよいし、所定の時間間隔で実行するようにしてもよい。このようにすることで、例えばMFP100が、他のMFP100A、100Bに新たに登録されたユーザの登録ユーザ情報を取得して最新のユーザデータを記憶することができる。この場合、図15に示したMFP100のステップS501〜S503の初期設定処理に替えて、他のMFP100A、100B等、同一のワークグループ名を有する端末に対して登録ユーザ情報の送信を要求する。
【0098】
この送信要求に応じて、他のMFP100A、100Bでは、図15に示した処理が実行され、MFP100から受信した送信要求に応じて、自身のハードディスクに記憶されている登録ユーザ情報を送信する。これにより、他のMFP100A、100Bに記憶された登録ユーザ情報が変更されたとしても、変更後の登録ユーザ情報からユーザデータが生成されてMFP100のハードディスク23に記憶される。
【0099】
図16は、登録ユーザ情報について説明するための図である。図16(a)はMFP100に登録される登録ユーザ情報の一例を示す図であり、図16(b)はMFP100Aに登録される登録ユーザ情報の一例を示す図である。図16(c)はMFP100Bに登録される登録ユーザ情報の一例を示す図である。また、図17は、ユーザデータの一例を示す図である。
【0100】
本実施の形態の登録ユーザ情報は、番号とユーザ識別子とユーザ個人情報とを含む。ユーザ個人情報は、付随情報と、アドレス帳と、パネル設定情報と、認証情報と、履歴情報とを含む。付随情報は各々のユーザに固有の情報であり、例えば、ユーザが所属する部署名、そのユーザに割り当てられた電子メールアドレス、そのユーザの顔を撮影して得られる顔画像データなどである。
【0101】
アドレス帳は、そのユーザにより登録され、送信可能な相手先情報をまとめた情報であり、たとえば、送信先のユーザのユーザ識別子、電子メールアドレス、ファクシミリ番号等を含む。登録された各々のユーザに対しての送信方法の初期設定(例えば、初期設定としての送信方法を電子メールとするかFAX送信とするか等の指定)を含めてもよい。
【0102】
パネル設定情報は、そのユーザが独自にカスタマイズ設定した画面情報である。認証情報は、仮想サブネットワーク501へのログイン時のユーザの認証に用いられる情報であり、ここでは、パスワードを用いている。本実施の形態のMFP100等では、仮想サブネットワーク501を利用する場合のログインとMFP単体へのログインとを個別に行うことが可能であり、仮想サブネットワーク501へのログインに利用される認証情報は、MFP単体へのログインの際に用いるポスワードとは個別に管理される。
【0103】
仮想サブネットワーク501へのログインの場合には、顔画像データを認証情報に用いることも可能である。認証情報は、生体認証が用いられる場合には、指紋、声紋、虹彩、静脈パターンなどが用いられる。履歴情報は、ユーザがMFP100、100A、100Bに処理の実行を指示した場合に、MFP100、100A、100Bに生成されるデータであって、その指示の内容を含む。指示の内容は、たとえば、電子メール送信処理の指示であれば、電子メール送信である旨と、送信先、送信内容を含む。なお、図17に示されるユーザデータは、番号とユーザ識別子とホーム端末の装置識別情報とを含む。
【0104】
以上に説明したように、同一ワークグループ名を有するMFP100、100A、100Bにおいては、同一のユーザデータが生成されて記憶される。これにより、MFP100、100A、100Bで構成される仮想サブネットワーク501が形成される。仮想サブネットワーク501が形成されると、ユーザデータに基づいてMFP100、100A、100Bのいずれかをホーム端末とするユーザを特定することができるため、ユーザデータを用いて、ホーム端末以外の端末をユーザが操作する場合に、その端末にホーム端末に記録したユーザ個人情報を取り込むことができる。
【0105】
(2−2)仮想サブネットワーク501での画像データ送信処理
【0106】
以下、上記に説明したような仮想サブネットワーク501が構築された場合に、本願発明を適用する実施の形態について説明する。具体的には、仮想サブネットワーク501に登録されたユーザは、自分のホーム端末以外の他のMFPから、自分のホーム端末のボックスに画像データを送信することができる。この場合に画像データの変倍処理を指定する場合には、送信先のMFPの機能によっては地紋画像の地紋性能に影響が生じる場合がある。本実施の形態は、係る場合に対処しようとするものである。
【0107】
図18は本実施の形態の操作端末及びホーム端末において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。同図左側のフローチャートは、画像データの送信装置としての操作端末側での処理の流れを示し、右側のフローチャートは、画像データの送信宛先であるホーム端末側での処理の流れを示す。本実施の形態における仮想サブネットワーク501への操作においては、まず、操作端末であるMFP100で、画像データの宛先ユーザのユーザ識別子を入力する(ステップS701)。ここでは、識別子「ジュリー」のユーザのホーム端末に画像データを送信しようとする場合について説明する。ユーザ識別子が入力された場合(S701:YES)、ステップS702へ進み、そうでなければ待機状態となる。
【0108】
ステップS702では、入力されたユーザ識別子から、操作端末がそのユーザのホーム端末であるか否かを判断する。すなわち、ユーザ識別子を用いて操作端末のハードディスク23に記憶されているユーザデータを検索し、ユーザ識別子に関連して記憶された装置の識別情報が、自機に割り当てられた装置識別情報であるか否かを判断する。本実施の形態では、ユーザのホーム端末である場合には処理を終了する。操作端末がホーム端末である場合には、第1の実施の形態と同様に考えることができるためである。ここでは、MFP100は、ユーザ識別子「ジュリー」のユーザのホーム端末でないので、ステップS703に進むことになる。
【0109】
ステップS703では、仮想サブネットワーク501を構成するMFPに対して、ブロードキャストでユーザ個人情報の送信を要求する。この送信要求には、ユーザ識別子が少なくとも含まれる。一方、ユーザ識別子「ジュリー」のホーム端末であるMFP100Aでは、ユーザ個人情報の送信要求が受信されたか否かが判断され(ステップS801)、送信要求が受信されるとステップS802に進む。
【0110】
ステップS802では、受信された送信要求に含まれるユーザ識別子を用いて、MFP100Aのハードディスクに記憶されている登録ユーザ情報を検索し、そのユーザ識別子に関連付けられて記憶されているユーザ個人情報を抽出する。そして、抽出したユーザ個人情報を、送信要求を送信してきた操作端末に送信する(ステップS803)。
【0111】
操作端末では、ステップS703で送信したユーザ個人情報の送信要求に応じて、ホーム端末からユーザ個人情報が受信されるまで待機状態となっており(S704:NO)、ホーム端末であるMFP100Aからユーザ識別子「ジュリー」のユーザ個人情報を受信するとステップS705に進む(S704:YES)。ステップS705では、ステップS704で受信したユーザ個人情報をRAM22に記憶する。
【0112】
ステップS706では、宛先ユーザである「ジュリー」のホーム端末であるMFP100Aの端末情報を識別し、当該「ジュリー」のホーム端末に機能情報送信要求を送信する(S707)。MFP100A側では、機能情報送信要求を受信すると(S804:YES)、機能情報を送信する(S805)。本実施の形態で送信される機能情報には、MFP100Aが地紋合成機能を備えているか否か、及び地紋合成機能を備えている場合には、MFP100Aの地紋画像格納部に格納されている地紋画像の種類に関する情報が含まれる。
【0113】
操作端末であるMFP100側では、MFP100Aから送信される機能情報を受信すると(S708:YES)、画像データ送信処理を行う(S709)。図19は、画像データ送信処理の内容の一例について説明するためのフローチャートである。
【0114】
画像データ送信処理で実行される処理は、第1の実施の形態で説明した内容と一部共通しており、送信しようとする画像データの変倍倍率として指定された倍率、及び画像データに含まれる地紋画像の限界倍率を取得する(S901、S902)。変倍の倍率が上限及び下限の範囲内にある場合には(S903:NO、S904:NO)、そのままホーム端末であるMFP100Aに画像データを送信する(S911)。
【0115】
変倍倍率が上限倍率以上である場合(S903:YES)、又は下限倍率以下である場合(S904:YES)、地紋データを分離し(S905)、地紋以外の画像データを変倍処理する(S906)。
【0116】
次に、MFP100Aから送信されてきた機能情報を参照し、MFP100Aが地紋合成機能を備えているか否かを判別する(S907)。宛先の端末が地紋合成機能を備えていない場合には(S907:NO)、地紋画像のリピート処理を行い、地紋以外の画像データと合成処理を行う(S910)。
【0117】
MFP100Aが地紋合成機能を備えている場合には(S907:YES)、MFP100Aに、同じ地紋画像が格納されているかを判別し(S908)、同じ地紋画像が格納されていない場合には、ステップS910へと進む(S908:NO)。同じ地紋画像が格納されている場合には、MFP100Aの側で地紋合成処理を実行できるように地紋合成のためのパラメータを生成、画像データに付加し(S909)、画像データをMFP100Aに送信する(S911)。
【0118】
図18のフローチャートへと戻って、ステップS806でMFP100から送信される画像データを受信し、受信が終了すると(S806:YES)、受信した画像データをMFP100Aのボックスに格納する。一方、MFP100の側では、ログアウトの指示があったか否かを判断し(S710)、ログアウトの指示があった場合には、ステップS705でRAMに格納されたユーザ個人情報を消去して(S711)、処理を終了する。
【0119】
(変形例)
【0120】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の内容が上記各実施の形態において説明された具体例によって限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を考えることもできる。
【0121】
即ち、上記実施の形態では、変倍処理してプリントした画像をスキャナにて読み取った場合に、例えば地紋の背景部(印字解像度の値が大きい側)が適切に消去されないといった問題を避ける観点から限界倍率を求めるようにしたが、変倍処理した画像をプリントした場合に、本来は一見して認識できないような態様でプリントされるべき隠し文字部分が認識され得るような態様になってしまうという問題が生じる可能性もある(例えば、本願出願人による他の出願である出願番号特願2005−113748を参照)。このような問題を避けるために、上記限界倍率を求めるに際して、そのような意図しない隠し文字の顕在化の問題が生じないような範囲の倍率とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、例えば、MFP等の画像処理装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第1の実施の形態の画像形成システムの全体的な構成の一例を示す図である。
【図2】MFP100の外観の一例を示す図である。
【図3】MFP100におけるハードウェア構成の一例を示す図である。
【図4】ハードディスク23に設けられるパーソナルボックス231について説明するための図である。
【図5】MFP100の機能的構成の一例について説明するためのブロック図である。
【図6】地紋画像格納部232の内容について説明するための模式図である。
【図7】画像変倍処理の内容の一例について説明するためのフローチャートである。
【図8】投入されるジョブに含まれる情報の内容の一例を示す図である。
【図9】画像変倍処理の内容の他の一例について説明するためのフローチャートである。
【図10】画像変倍処理の内容の他の一例について説明するためのフローチャートである。
【図11】画像データ(レイヤ1)と地紋画像(レイヤ2)とで別レイヤとして地紋画像データが合成済みとなっている場合に、ジョブに含まれる情報の内容の一例を示す図である。
【図12】画像変倍処理の内容の他の一例について説明するためのフローチャートである。
【図13】地紋をリピート処理して合成した画像の様子の一例を示す図である。
【図14】第2の実施の形態における仮想サブネットワーク501の構成について説明するための図である。
【図15】新たに接続されるMFP100及び他のMFPの処理内容について説明するためのフローチャートである。
【図16】登録ユーザ情報について説明するための図である。
【図17】ユーザデータの一例を示す図である。
【図18】操作端末及びホーム端末において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図19】画像データ送信処理の内容の一例について説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0124】
11 操作部
12 ディスプレイ部
13 スキャナ部
14 プリンタ部
16 通信インタフェース
17 ドキュメントフィーダ
18 給紙装置
19 トレイ
20 CPU
21 ROM
22 RAM
23 ハードディスクドライブ(HDD)
100〜100C MFP
120 ジョブ解析部
121 倍率取得部
130 画像合成部
131 地紋画像取得部
231 パーソナルボックス
232 地紋画像格納部
233 限界倍率格納部
500 ネットワーク(LAN)
501 仮想サブネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを画像処理装置に送信する送信装置において、
送信先の画像処理装置の、地紋合成機能の有無に関する情報を取得する情報取得手段と、
画像データを前記画像処理装置に送信する画像送信制御手段とを備え、
前記画像送信制御手段は、
前記情報取得手段が取得した情報に基づいて、前記画像処理装置に送信する画像データの内容を切り替える
ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
さらに、地紋画像のデータを送信する画像データから分離する分離手段を備え、
前記画像送信制御手段は、
送信すべき画像データに含まれる地紋画像が送信先の画像処理装置で合成可能である場合には、前記分離手段によって地紋画像のデータを送信する画像データから分離した画像データを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
さらに、画像データを変倍処理する変倍手段を備え、
前記画像送信制御手段は、
送信すべき画像データに含まれる地紋画像が送信先の画像処理装置で合成可能である場合には、前記分離手段によって地紋画像を画像データから分離し、前記変倍手段によって地紋画像以外の部分について変倍処理を実行した後のデータを送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記地紋合成機能の有無に関する情報は、前記送信先の画像処理装置が地紋合成機能を有するか否かに関する情報、及び地紋合成機能を有する場合には、前記送信先の画像処理装置が合成可能な地紋画像の種類に関する情報が含まれる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の送信装置。
【請求項5】
前記画像送信制御手段は、
送信すべき画像データに含まれる地紋画像が送信先の画像処理装置で合成可能である場合には、地紋合成に関するパラメータを送信する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−167457(P2008−167457A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5543(P2008−5543)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【分割の表示】特願2005−317765(P2005−317765)の分割
【原出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】