説明

送風機の回転異常検知方法及び回転異常警報装置、並びに回転異常警報装置を備えた送風機

【課題】 既存の送風機に容易に取り付け可能で、小型で、精度が良く、かつ安価な送風機の回転異常検知方法及び回転異常警報装置、並びに回転異常警報装置を備えた送風機を提供する。
【解決手段】 送風機10の羽根10bの回転によって発生する風の脈動周波数をセンサ16で検出し、該脈動周波数または該脈動の周期を予め定めた値と比較することによって、前記送風機10の回転異常を検知する方法および装置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等を冷却するために用いる送風機の回転異常検知方法及び回転異常警報装置、並びに回転異常警報装置を備えた送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送風機の回転異常検知方法及び回転異常警報装置としては、たとえば送風機の回転速度を回転計で監視し、回転速度が所定値以下になったときにアラームを発する方法(特許文献1)、または圧力センサで風圧を測定し、風圧が所定値以下になったときにアラームを発する方法(特許文献2)、あるいは温度センサを用い、周囲温度が所定値を超えた場合にアラームを発する方法(特許文献3)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−189699号公報
【特許文献2】特開昭61−250398号公報
【特許文献3】特開平8−42488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした従来の方法には次のような問題があった。
速度検出器を用いて送風機の回転速度を検出する方法においては、送風機を設計・製造する際に速度検出器を設けなければならず、後から取り付けることができない。
圧力センサで風圧を測定する方法においては、送風機と冷却対象物との間に圧力測定用の風洞を設けなければならず、装置が大型化する。
温度センサを用いて周囲温度を検出する方法においては、応答性が悪くファン自体の異常を迅速に検知することができない。
【0005】
送風機は羽根によって空気を送り出し、空気を循環させたり、対象物を冷却したりする。
万一、送風機に異常があって停止すると、機器や環境に重大な影響を及ぼす恐れがあるため、重要な箇所には、予め回転異常検知器付きの送風機が使用されることが多い。
しかしながら、通常の送風機を設置した後に、回転異常検知機能が必要になることもある。
【0006】
本発明は、こうした従来の問題を解決し、既存の送風機に容易に取り付け可能で、小型で、精度が良く、かつ安価な送風機の回転異常検知方法及び回転異常警報装置、並びに回転異常警報装置を備えた送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の送風機の回転異常検知方法は、送風機の羽根の回転によって発生する風の脈動周波数をセンサで検出し、該脈動周波数または該脈動の周期を予め定めた値と比較することによって、前記送風機の回転異常を検知することにある。
また、本発明の送風機の回転異常検知方法は、前記送風機の空気吸い込み口または吐き出し口付近に一片を固定し、該一片に連結された金属板などの小片を、空気の脈動によって可逆的に変化する位置に配置し、該小片に位置変化を電気信号に変換する、例えば、加速度センサ、角度センサなどの素子を取り付けて前記風の脈動を検出することにある。
さらに、本発明の送風機の回転異常検知方法は、前記送風機の羽根の周囲に配設される風胴側面に圧力を受けて形状が可逆的に変化する、例えば、ゴム、プラスチックフィルム、薄い金属などの素材部分を設け、該素材部分に位置変化を電気信号に変換する、例えば、圧電素子、加速度センサなどの素子を取り付けて、前記風の脈動を検出することにある。
またさらに、本発明の送風機の回転異常検知方法は、送風機の羽根の回転によって生じるケーシング部分の脈動周波数をセンサで検出し、該脈動周波数または該脈動の周期を予め定めた値と比較することによって、前記送風機の回転異常を検知することにある。
また、本発明の送風機の回転異常警報装置は、送風機の羽根の回転によって発生する風の脈動周波数を検出する検出部と、検出した脈動周波数または該脈動の周期を予め定めた値と比較する比較回路部と、該脈動周波数が予め定めた値を下回ったときにアラームを出力するアラーム回路部とからなることにある。
さらに、本発明の送風機の回転異常警報装置は、前記検出部は、前記送風機の空気吸い込み口または吐き出し口付近に一片を固定し、該一片に連結された金属板などの小片を、空気の脈動によって可逆的に変化する位置に配置し、該小片の位置変化を電気信号に変換する、例えば加速度センサ、角度センサなどの素子を取り付けて前記風の脈動を検出するようにしたことにある。
またさらに、本発明の送風機の回転異常警報装置は、前記検出部は、前記送風機の羽根の周囲に配設される風胴側面に圧力を受けて形状が可逆的に変化する例えば、ゴム、プラスチックフィルム、薄い金属などの素材部分を設け、該素材部分に位置変化を電気信号に変換する、例えば、圧電素子、加速度センサなどの素子を取り付けて前記風の脈動を検出するようにしたことにある。
また、本発明の送風機の回転異常警報装置は、送風機の羽根の回転によって生じるケーシング部分の脈動周波数を検出する検出部と、検出した脈動周波数または脈動の周期を予め定めた値と比較する比較回路部と、該脈動周波数が予め定めた値を下回ったときにアラームを出力するアラーム回路部とからなることにある。
さらに、本発明の送風機は、上記記載の回転異常警報装置を送風機のケーシングに設置したことにある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、送風機の羽根の回転によって発生する風の脈動周波数をセンサによって直接検出するので、容易に送風機の回転異常を検知することができる。
請求項2及び3の発明によれば、送風機の羽根の回転によって発生する風の脈動周波数を、媒体を介して直接的に検出するので、容易に送風機の回転異常を検知することができる。
請求項4の発明によれば、送風機の羽根の回転によって生じるケーシングの脈動周波数をセンサによって検出するようにしたので、周波数の検出が極めて容易にできる。
請求項5乃至8の発明によれば、センサと電子回路を備えた簡単な装置で送風機の回転速度異常を検知することができる。
請求項9の発明によれば、送風機と一体の装置で回転速度の異常を検知することができ、設置が簡単で容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による送風機の回転異常検出方法の一実施の形態による送風機の風洞に薄いフィルムを貼着した開口部を設け、センサを取り付けた状態を例示した斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態による送風機の回転異常検出方法を示し、送風機の空気吐き出し口付近にヒンジを用いてセンサを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態による送風機の回転異常警報装置を示し、送風機にセンサおよび演算回路装置を固定するためのケーシングを例示した斜視図である。
【図6】7枚羽根の送風機に、図1のようなコンデンサマイクを取り付けたときの検出波形である。
【図7】5枚羽根の送風機に、図4のように加速度センサを取付けたときの出力波形である。
【図8】本発明の一実施の形態による回転異常検出方法で、カウンタによって判定する方法の概略を示すブロック図である。
【図9】本発明の他の実施の形態による回転異常検出方法で、タイマーによって判定する方法の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1ないし図3は、電子機器等を冷却するために用いられる送風機10である。
この送風機10は、図示しないモータを内蔵し、このモータのモータ軸に支持された後述する羽根を回転するファン本体11と、このファン本体11をフレーム12aで軸線上に支持するケーシング12とで構成されている。前記ファン本体11は、モータ軸に支持された回転部分11aの周面に円周方向に一定間隔で、放射状に複数枚(図示例では7枚)の羽根11bを備えたものである。前記ケーシング12は、内側に略円形の開口部を有する一対の枠体13a,13bと円筒状の風洞部14で構成されている。この風洞部14の中心軸線上にファン本体11を支持している。
前記送風機10には、ケーシング12の円筒状風洞部14の外周面に小さな開口部14aを設け、この開口部14aを塞いで覆うようにして、プラスチックフィルムなどの帯状の薄いフィルム15を貼着してある。このフィルム15にセンサ16を貼り付けて、送風機10作動時の空気の圧力によるフィルム15の位置変化をセンサ16で検出するようにしたもので、羽根11bの通過に起因する空気の粗密波を検出することができる。
薄いフィルム15に代えて、ゴムや薄い金属板等を用いても良い。風洞部14の素材が十分薄い場合は、風洞部14の外面に直接、センサ16を取付けても良い。
【0011】
次に、上記送風機10の動作について説明する。
送風機10の風洞あるいは空気の流路では、羽根11bが通過することによって、空気の粗密波が発生するが、その周波数は羽根11bの通過回数fと同じであり、その周期は1/fである。
一般に、送風機10のある定点を通過する羽根11bの単位時間当たりの回数と、送風機10の回転数(回転速度)の関係は、次の式で表される。
【0012】
n=60・f/a ・・・式(1)
n:回転数[rpm]、f:羽根の通過回数[回/秒]、a:羽根の枚数[枚]
【0013】
その粗密波をセンサ16、たとえばコンデンサマイク、振動ピックアップ、加速度センサ、角度センサ、圧電センサなど、位置変化を電気信号に変換する素子で羽根11bの通過回数fまたは周期Tを検出し、予め定めた値と比較すれば、送風機10の回転速度が異常かどうか判断することができる。
【0014】
送風機10には風洞部14を備えた物が多いが、送風機自体を支持する目的の箇所のほかは強度も必要ではなく、重量軽減や材料節約のために薄く作られていることが多いため、風洞部14に小さな開口部14aなどの穴を開けるのは容易である。
【0015】
風洞部14の空気の吸い込み口17aおよび吐き出し口17b付近の空気中においても、空気の粗密波が発生しているので、それをその近傍に設置した振動センサで検出する方法もある。
【0016】
図4は、本発明の他の実施の形態による送風機の回転異常検出方法を示し、送風機10の空気吐き出し口付近にヒンジ18を用いてセンサ16を取り付けた状態を示す斜視図である。
上記ヒンジ18は、ピン部19を中心に、一方の小片19aを風洞部14等に固定し、他方の小片19bにセンサ16を取り付けたものである。小片19bは風の脈動によってピン部19を軸として位置が可逆的に変化する。小片19bの位置をセンサ16によって電気信号に変換するものである。
【0017】
図5は、本発明の変形例で、センサ部と演算回路部とを一つの筐体に収納した回転速度検出器20を、送風機ケーシング風洞部14に固定した状態を示す図である。
これによって、演算回路部を別の場所に設ける必要がなくなる。
【0018】
一方、検出した脈動周波数あるいは周期をもとに、予め定めた値と比較する方法としては、カウンタによって基準時間当りの周波の数を数える方法、タイマーによって一周期の時間が基準時間を超えるか超えないかを判定する方法、マイコンによって演算する方法などがある。
予め定めた値、すなわち閾値を定めるために必要なのは、送風機10の羽根11bの枚数aと、許容される最低回転速度、の二つの値である。この二つの値さえ設定しておけば、回転異常を検知することができる。
【0019】
図6は、7枚羽根の送風機に図1のようにコンデンサマイクを取付けたときの検出波形である。
この例では、周波数は約322Hz、周期は約3.1msなので、羽根11bの通過回数fは322回/秒である。式(1)によって計算すると、回転速度は約2760rpmである。
【0020】
図7は、5枚羽根の送風機に図4のように加速度センサを取付けたときの検出波形である。この例では、周波数は約100Hz、周期は約10msecなので、羽根の通過回数fは100回/秒である。式(1)によって計算すると、回転速度は約1200rpmである。
【0021】
図8は、カウンタによって判定する方法の一例を示すブロック図である。
1はセンサで、位置変化を電気信号に変換する素子である。このセンサ1は、例えば、送風機10の羽根11bの回転による風洞部14の歪みを検出する。2はセンサ1で検出された検出波形を増幅して成形する増幅・波形成型回路、3は増幅・波形成型回路2で、増幅および波形成型された波形をパルスに変換するパルス生成回路である。4はカウンタ回路で、このカウンタ回路4は、パルス生成回路3からのパルスでリセットしながら、基準クロックパルス生成回路7から送られるクロックパルスのパルス数をカウントする。
5は判定回路で、この判定回路5は、カウンタ回路4でカウントされたクロックパルスのパルス数が、予め定められたパルスカウント数をオーバーしたときは異常と判定する。判定回路5からの信号は出力回路6に送られ、出力回路6では、異常と判定された信号が入力されると、送風機10の減速あるいは停止などの信号を出力することができる。
【0022】
図9は、タイマーによって判定する方法の一例で、図8と同一部分は同符号を付して示すブロック図である。
1はセンサ、2は増幅・波形成型回路、3はパルス生成回路である。8はタイマー回路で、パルス生成回路3からのパルスが入力され、このパルスでリセットしながら内蔵されたコンデンサに充電されるものである。タイマー回路8では、一定のパルスごとにコンデンサに充電された電荷が放電され、判定回路5´に送られる。
判定回路5´では、基準電圧発生回路9の基準電圧と比較され、基準電圧発生回路9で定めた電圧値を超えたときは異常と判定する。
こうして、判定回路9で異常と判定された信号は、出力回路6に送られ、出力回路6では、異常と判定された信号が入力されると、送風機10の減速あるいは停止などの信号を出力することができる。
【0023】
それらの回路装置を送風機に取り付ければ、取扱いの容易な回転異常アラーム付き送風機を提供できる。
【0024】
なお、上述のように、本発明は、送風機10の羽根11bの枚数と許容最低回転速度の二つの値を入力するだけで回転異常警報装置として十分機能するが、たとえば送風機10の起動時に低速から高速へ移行する間の不感帯を遅延時間として設定したり、回転速度が閾値を超えたことを検知してからアラームと判断するまでの遅延時間を設定して回転速度の僅かな脈動やノイズをキャンセルしたりすることによって、より精度の高い回転異常警報装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 センサ
2 増幅・波形成型回路
3 パルス生成回路
4 カウンタ回路
5,5´ 判定回路
6 出力回路
7 基準クロックパルス生成回路
8 タイマ回路
9 基準電圧発生回路
10 送風機
11 ファン本体
11a 回転部分
11b 羽根
12 ケーシング
14 風洞部
15 フィルム
16 センサ
18 ヒンジ
19 ピン部
19a,19b 小片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機の羽根の回転によって発生する風の脈動周波数をセンサで検出し、該脈動周波数または該脈動の周期を予め定めた値と比較することによって、前記送風機の回転異常を検知することを特徴とする送風機の回転異常検出方法。
【請求項2】
前記送風機の空気吸い込み口または吐き出し口付近に一片を固定し、該一片に連結された小片を、空気の脈動によって可逆的に変化する位置に配置し、該小片に位置変化を電気信号に変換する素子を取り付けて前記風の脈動を検出することを特徴とする請求項1に記載の送風機の回転異常検出方法。
【請求項3】
前記送風機の羽根の周囲に配設される風胴側面に圧力を受けて形状が可逆的に変化する素材部分を設け、該素材部分に位置変化を電気信号に変換する素子を取り付けて、前記風の脈動を検出することを特徴とする請求項1に記載の送風機の回転異常検知方法。
【請求項4】
送風機の羽根の回転によって生じるケーシング部分の脈動周波数をセンサで検出し、該脈動周波数または該脈動の周期を予め定めた値と比較することによって、前記送風機の回転異常を検知することを特徴とする送風機の回転異常検出方法。
【請求項5】
送風機の羽根の回転によって発生する風の脈動周波数を検出する検出部と、検出した脈動周波数または該脈動の周期を予め定めた値と比較する比較回路部と、該脈動周波数が予め定めた値を下回ったときにアラームを出力するアラーム回路部とからなることを特徴とする送風機の回転異常警報装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記送風機の空気吸い込み口または吐き出し口付近に一片を固定し、該一片に連結された小片を、空気の脈動によって可逆的に変化する位置に配置し、該小片の位置変化を電気信号に変換する素子を取り付けて前記風の脈動を検出するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の送風機の回転異常警報装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記送風機の羽根の周囲に配設される風胴側面に圧力を受けて形状が可逆的に変化する素材部分を設け、該素材部分に位置変化を電気信号に変換する素子を取り付けて前記風の脈動を検出するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の送風機の回転異常警報装置。
【請求項8】
送風機の羽根の回転によって生じるケーシング部分の脈動周波数を検出する検出部と、検出した脈動周波数または脈動の周期を予め定めた値と比較する比較回路部と、該脈動周波数が予め定めた値を下回ったときにアラームを出力するアラーム回路部とからなることを特徴とする送風機の回転異常警報装置。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれか1項に記載の回転異常警報装置を送風機のケーシングに設置したことを特徴とする送風機。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−202556(P2011−202556A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69449(P2010−69449)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】