説明

送風装置及び送風装置の制御方法

【課題】必要風量が変動しても、コストを多大にせずに効率良く送風することができる送風装置を提供する。
【解決手段】送風装置1は、蒸気タービン2と発電機3と送風機4と制御部5とを備えている。蒸気タービン2と発電機3と送風機4とは、回転軸6を介して同軸に連結されている。発電機3は、同期発電機であり、回転子に三相の界磁巻線31を有し、固定子に電機子巻線を有している。界磁巻線31は、交流励磁装置32からの三相交流の電流によって励磁されて磁束を生成し、磁束は三相交流の周波数に応じて回転子の軸を中心にして回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンと発電機と送風機とを備えた送風装置と該送風装置の制御方法に関する。特に、必要風量が変動しても効率良く送風することができる送風装置と該送風装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高炉でのコークスの燃焼等に必要な空気を送風する送風装置においては、高炉ガスによりボイラーを稼働して得た蒸気で蒸気タービン(タービン)を運転し、蒸気タービンと同軸に連結された送風機を駆動して高炉に送風すると共に、蒸気タービンと同軸に連結された発電機を駆動させて発電することによりプラント全体のランニングコストを下げるようにした送風装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
このような、従来の送風装置の例を図1に示す。送風装置101は、蒸気タービン102と発電機103と送風機104とを備えている。蒸気タービン102と発電機103と送風機104とは、同軸に連結されており、蒸気タービン102の回転によって発電機103は発電し、送風機104は送風する。蒸気タービン102は、ボイラー121からの蒸気によって回転し、蒸気タービン102の回転数は、蒸気調整弁122の開度がガバナ123によって調整されることによって制御される。
【0003】
発電機103は、同期発電機であり、回転子(図示せず)に界磁巻線131を有し、固定子(図示せず)に電機子巻線(図示せず)を有している。発電機103は、界磁巻線131に直流励磁装置132から直流電流を通電されて励磁される。界磁巻線131に磁束が生成し、回転子が蒸気タービン102により回転することによって磁束が回転し、回転する磁束が電機子巻線と交錯することによって電機子巻線に交流電圧が誘起される。
磁束の回転数は、蒸気タービン102の回転数と同じであり、発電する電力の周波数を例えば60Hzにしたい場合は、タービンの回転数(つまり磁束の回転数)を3600min−1にしなければならない。そして、発電機103は、商用電源の電源系統Lと遮断器133を介して接続されているので、発電する電力の周波数を商用電源の周波数と同じ60Hz、又は50Hzにしなければならず、蒸気タービン102の回転数は3600min−1、又は3000min−1にしなければならない。
【0004】
送風機104は、軸流圧縮機であり、回転しない可変静翼(図示せず)と、蒸気タービン102と同軸に連結されて回転する動翼(図示せず)とを有する。風量は、動翼の回転数と可変静翼の角度とによって調整することができる。
このように、風量は、蒸気タービン102の回転数、又は送風機104の可変静翼の角度によって調整することができるが、蒸気タービン102の回転数と送風機104の可変静翼の角度との両方を調整することによって、必要な風量に応じた送風機の効率の良い運転を行うことができる。
この送風機の効率とは、次の式で表わされる。
η=(Q×h)/(6120×P)×100
[η:効率(%)、Q:風量(Nm/min)、h:圧力(mmAq)、P:動力(kW)]
【0005】
送風装置101が上記のような構成なので、高炉ガスによりボイラー121を稼働して得た蒸気によって送風機104を駆動すると共に発電機103に発電させてプラント全体のランニングコストを下げることができる。また、例えば、発電機103と送風機104の負荷の割合が、発電負荷が20%で送風負荷が80%で運転しているときに、高炉への必要な風量が減少しても、送風機104の可変静翼の角度を調整して風量を減少させ、送風負荷が減少した分を発電に用いることが可能なので、タービンの負荷が一定の状態で送風装置101を運転を継続することができ、ボイラーから得られるエネルギーを効率良く使用することができる。
【0006】
送風機104の風量は、上述したように蒸気タービン102の回転数によって調整することができるが、従来、高炉における生産量が高いままで推移し、高炉への必要な風量が大きく変動しないので、風量の調整は送風機104の可変静翼の角度を調整するだけで行うことができ、蒸気タービン102の回転数は、商用電源の周波数に応じた回転数に保持することができた。このように、蒸気タービン102の回転数は、変動させる必要が無かった。
【0007】
しかしながら、近年、高炉における生産量が大きく変動するようになり、高炉への必要な風量が大きく減少した場合には、送風機104の可変静翼の角度だけで風量を調整すると送風機104の効率が大きく低下する。送風機104の効率良い運転を行うためには、蒸気タービン102の回転数も下げなければならない。
しかし、蒸気タービン102の回転数を下げると発電機103が発電する交流電圧の周波数も小さくなるので、商用電源の電源系統と接続するためには、発電した交流電圧の周波数を変換する周波数変換装置を設けなければならずコストが多大になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−36002号公報
【特許文献2】特開平11−264006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、斯かる従来技術の問題を解決するためになされたものであり、必要風量が変動しても、効率良く送風することができる送風装置及び該送風装置の制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者は、必要風量に応じて蒸気タービンの回転数を変化させることができ、効率良く送風することができる送風装置を検討した。その結果、発電機が三相の界磁巻線を有し、界磁巻線に三相交流を通電させることにより、必要風量に応じて蒸気タービンの回転数を変化させることができ、効率良く送風することができるという知見を得た。
【0011】
本発明は、上記の本発明者の知見に基づき完成されたものである。すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、タービンと、前記タービンと同軸に連結され該タービンの回転によって発電する発電機と、該タービンと同軸に連結され該タービンの回転によって送風する送風機とを備えた送風装置であって、前記発電機は、三相の界磁巻線を有し、前記界磁巻線に三相交流を通電されることによって励磁され、前記送風機は、動翼と可変静翼とを有することを特徴とする送風装置を提供する。
【0012】
本発明によれば、発電機が三相の界磁巻線を有し、界磁巻線に三相交流を通電されることによって励磁されるので、タービンの回転数を変化させても発電機が発電する交流電圧の周波数を電源系統の周波数に合わせることができる。従って、タービンの回転数を必要風量に応じた回転数にすることができるので、送風機の効率が良い。また、発電した交流電圧の周波数を変換する周波数変換装置が不要なので、コストが多大にならない。さらに従来は、タービンが故障すると駆動源がなくなり送風も発電もできなくなった場合に、送風だけでも可能にするため同期発電機を同期電動機として駆動し送風することができたが、回転数を変えて送風量を制御することはできなかった。本発明では同期電動機の回転数を可変できるので、このような場合でも風量の制御を回転数と可変静翼によって効率的に行うことができる。
尚、風量は、所定の圧力、及び所定の温度の場合の風量に換算するものとする。
【0013】
また、本発明は、上記の送風装置の制御方法であって、前記タービンの回転数を前記送風機が送風する予め定められた所定の風量に対応した回転数に設定した後、前記所定の風量が得られるように前記可変静翼の角度を調整することを特徴とする送風装置の制御方法を提供する。
【0014】
本発明の制御方法において、例えば、送風機が送風する風量毎に対応した効率が良いタービンの回転数を定めれば、タービンの回転数を前記所定の風量に対応した回転数に設定し、前記所定の風量になるように前記可変静翼の角度を調整することによって送風機の効率が良くなる。
また、タービンの回転数の調整と、可変静翼の角度の調整とを比較すると、可変静翼の角度調整の方が、応答性が高く、細かい調整に適しているので、タービンの回転数を設定した後に所定の風量になるように可変静翼の角度を調整することによって、風量を設定値に速く制御することができる。
【0015】
また、本発明は、上記の送風装置の制御方法であって、前記可変静翼の角度を予め定められた角度に設定した後、前記送風機が送風する予め定められた所定の風量が得られるように前記タービンの回転数を調整することを特徴とする送風装置の制御方法を提供する。
【0016】
この制御方法を用いることにより、例えば、故障によって可変静翼の角度を調整できないときにも、所定の風量を送風することができる。
【0017】
また、本発明は、上記の送風装置の制御方法であって前記送風機が送風する予め定められた所定の風量が得られるように前記タービンの回転数と前記可変静翼の角度とを並行して調整することを特徴とする送風装置の制御方法を提供する。
【0018】
本発明の制御方法において、例えば、あらかじめ送風機の効率が良いタービンの回転数と可変静翼の角度を、風量毎に対応して定めておく。風量が設定されると、現在の風量から設定された風量までの途中の風量に対応するタービンの回転数と可変静翼の角度とに、タービンの回転数と可変静翼の角度とを並行して順に変えていき、設定された風量に到達するようにする。このように制御することにより、風量が設定値に到達するまでの途中においても、送風機の効率が良くなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発電機が三相の界磁巻線を有し、界磁巻線に三相交流を通電されることによって励磁されるので、タービンの回転を変化させても発電機が発電する交流電圧の周波数を電源系統の周波数に合わせることができる。従って、必要風量が変動してもタービンの回転数を必要風量に応じた回転数にすることができるので、送風機の効率が良い状態で送風することができる。また、発電した交流電圧の周波数を変換する周波数変換装置が不要なので、コストが多大にならない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、従来の送風装置の構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る送風装置の構成図である。
【図3】図3は、風量と、その風量において送風機の効率がよい蒸気タービンの回転数と可変静翼の角度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の実施形態に係る送風装置について説明する。
図2に送風装置の構成を示す。送風装置1は、蒸気タービン2と発電機3と送風機4と制御部5とを備えている。蒸気タービン2と発電機3と送風機4とは、回転軸6を介して同軸に連結されている。蒸気タービン2の回転によって、発電機3は発電し、送風機4は送風する。制御部5は、発電機3や送風機4等の動作を制御する。回転軸6の回転数は、回転数検出器7によって検出され、検出された回転数は制御部5に送信される。送風機4の風量は風量検出器8によって検出され、検出された風量は制御部5に送信される。
蒸気タービン2は、ボイラー21からの蒸気によって回転し、蒸気量が蒸気調整弁22の開度によって調整されて蒸気タービン2の回転数が制御される。蒸気調整弁22の開度は、ガバナ23が制御部5からの信号に基づいて調整する。
【0022】
発電機3は、同期発電機であり、回転子(図示せず)に三相の界磁巻線31を有し、固定子(図示せず)に電機子巻線(図示せず)を有している。発電機3は、三相の界磁巻線31に交流励磁装置32から三相交流の電流を通電されて励磁される。界磁巻線31に磁束が生成し、磁束は三相交流の周波数に応じて回転子の軸を中心にして回転する。
回転子自体が蒸気タービン2によって回転するので、蒸気タービン2の回転数と三相交流の周波数とによって磁束の回転数を制御することができる。回転する磁束が電機子巻線と交錯することによって電機子巻線に交流電圧が誘起されるが、この交流電圧の周波数を蒸気タービン2の回転数と三相交流の周波数とによって制御することができる。
【0023】
送風機4は、軸流圧縮機であり、回転しない可変静翼(図示せず)と、蒸気タービン2と同軸に連結されて回転する動翼(図示せず)とを有する。風量は、動翼の回転数と可変静翼の角度とによって調整することができる。可変静翼の角度は、制御部5からの信号に基づき、油圧によって自動で調整される。
このように、風量は、蒸気タービン2の回転数、又は送風機4の可変静翼の角度によって調整することができるが、蒸気タービン2の回転数と送風機4の可変静翼の角度との両方を調整することによって、送風機の効率の良い運転を必要な風量に応じて行うことができる。
【0024】
送風装置1が上記のような構成なので、高炉ガスによりボイラー21を稼働して得た蒸気によって送風機4を駆動すると共に発電機3に発電させてプラント全体のランニングコストを下げることができる。また、例えば、発電機3と送風機4の負荷の割合が、発電負荷が20%で送風負荷が80%で運転しているときに、高炉への必要な風量が減少しても、送風機4の可変静翼の角度を調整して風量を減少させ、送風負荷が減少した分を発電に用いることが可能なので、タービンの負荷を一定で運転を継続することができ、ボイラーから得られるエネルギーを効率良く使用することができる。
【0025】
また、発電機3が三相の界磁巻線を有し、界磁巻線に三相交流を通電されることによって励磁されるので、蒸気タービン2の回転を変化させても発電機3が発電する交流電圧の周波数を商用電源の電源系統Lの周波数と合わせることができる。従って、蒸気タービン2の回転数を必要風量に応じた回転数にすることができるので、送風機4の効率が良い。また、発電した交流電圧の周波数を変換する周波数変換装置が不要なので、コストが多大にならない。
【0026】
また、ボイラー21や蒸気タービン2が故障しても、発電機3を商用電源によってモータとして運転し、送風機4を駆動することができる。このとき、三相の界磁巻線31に三相交流が通電しているので、三相交流の周波数を調整することにより、界磁巻線31が生成した磁束の回転数を変えることができる。そして、磁束の回転数を変えることにより、商用電源の周波数に固定されずに任意の回転数で送風機4を運転することができる。したがって、風量の調整を送風機4の可変静翼の角度と発電機3の回転数の両方で調整することができるので、送風機4の効率の良い運転を行うことができる。
【0027】
次に、送風装置1の運転方法について説明する。
蒸気タービン2の回転数を、送風機4が送風する予め定められた所定の風量(以下、風量の設定値ともいう)に対応した回転数に設定し、所定の風量になるように可変静翼の角度を調整する。具体例を次に示す。
<ステップ1>
送風機4の効率の観点から、風量毎に、蒸気タービン2の回転数と送風機4の可変静翼の角度との調整範囲を事前の調査から定めた調整条件表を作成し、制御部5が有する記憶部に記憶させる。このとき、可変静翼の角度毎の送風機4の効率も定めて記憶部に記憶させる。尚、サージング現象が発生する条件は、調整範囲から除外する(以下において同じ)。
<ステップ2>
風量の設定値を制御部5に入力する。制御部5は、調整条件表から風量の設定値に対応する蒸気タービン2の回転数の調整範囲を取得し、蒸気タービン2の回転数を調整範囲の中で最も少ない回転数に設定する。このとき、可変静翼の角度は、風量の設定値に対応した調整範囲の中で最も送風機4の効率が良い角度に設定する。
<ステップ3>
制御部5は、回転数検出器7によって検出した蒸気タービン2の回転数が、設定した回転数になるように、ガバナ23を介して蒸気調整弁22を開ける。
蒸気タービン2の回転数が、設定された回転数になる途中において、風量検出器8によって検出された風量が設定値になったときは、制御部5は、蒸気タービン2の回転数を風量が設定値になった時点での回転数に保持し、風量が設定値に維持されるように可変静翼の角度を調整する。このとき、風量検出器8によって検出された風量が、設定値の所定範囲内に入った場合には、風量が設定値になったとする(以下において同じ)。
<ステップ4>
蒸気タービン2の回転数が設定値になっても風量が設定値にならない場合は、制御部5は、風量が設定値になるように可変静翼の角度を調整する。
<ステップ5>
可変静翼の角度を調整しても、風量が設定値にならない場合は、制御部5は、蒸気タービン2の回転数を調整範囲内で予め定められた調整量だけ増加させる。
<ステップ6>
蒸気タービン2の回転数を増加させても、風量が設定値にならない場合は、制御部5は、風量が設定値になるように可変静翼の角度を調整する。
<ステップ7>
制御部5は、ステップ5、6を風量が設定値になるまで繰り返す。
<ステップ8>
蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度とを調整範囲内で調整しても風量が設定値にならない場合、制御部5は、それまでの蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度との調整の中で、最も、風量が設定値に近いときの蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度によって運転する。
<ステップ9>
蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度が決まると、制御部5は、発電機3が発電する交流電圧の周波数が商用電源の周波数と一致するように、界磁巻線31への界磁電流の周波数を調整する。このとき、発電された交流電圧の周波数が、商用電源の周波数の所定範囲内に入った場合には、発電された交流電圧の周波数が商用電源の周波数に一致したとする(以下において同じ)。
<ステップ10>
界磁電流の周波数を調整しても発電機3が発電する交流電圧の周波数が商用電源の周波数と一致しない場合には、制御部5は、蒸気タービン2の回転数を調整して発電する交流電圧の周波数を商用電源の周波数に一致させる。このとき、風量が設定値になるように可変静翼の角度を調整する。
<ステップ11>
発電された交流電圧の周波数が商用電源の周波数に一致すると、制御部5は、遮断器33を閉じて発電機3を系統に接続する。
【0028】
上述したステップ1〜ステップ11からなる方法によって制御することにより、送風機4の効率を良くすることができる。また、蒸気タービン2の回転数の調整と、可変静翼の角度の調整とを比較すると、可変静翼の角度調整の方が、応答性が高く、細かい調整に適しているので、蒸気タービン2の回転数を設定した後に所定の風量になるように可変静翼の角度を調整することによって、風量を設定値に速く制御することができる。
【0029】
また、可変静翼の角度を予め定められた角度に設定した後、送風機が送風する予め定められた所定の風量になるように蒸気タービン2の回転数を調整してもよい。
具体例を次に示す。
<ステップ21>
送風機4の効率の観点から、風量毎に、蒸気タービン2の回転数と送風機4の可変静翼の角度との調整範囲を事前の調査から定めた調整条件表を作成し、制御部5が有する記憶部に記憶させる。
<ステップ22>
風量の設定値を制御部5に入力する。制御部5は、調整条件表から風量の設定値に対応する可変静翼の角度の調整範囲を取得し、可変静翼の角度を調整範囲の中で最も閉じた角度に設定する。可変静翼の角度が、閉じられるほど風量は少なくなり、開かれるほど風量は多くなる。蒸気タービン2の回転数は、風量の設定値に対応する調整範囲の中で最も少ない回転数に設定する。
<ステップ23>
制御部5は、回転数検出器7によって検出した蒸気タービン2の回転数が、設定した回転数になるように、ガバナ23を介して蒸気調整弁22を開ける。
蒸気タービン2の回転数が、設定された回転数になる途中において、風量検出器8によって検出された風量が設定値になったときは、制御部5は、蒸気タービン2の回転数を風量が設定値になった時点での回転数に保持し、風量が設定値に維持されるように可変静翼の角度を調整する。
<ステップ24>
蒸気タービン2の回転数が設定値になっても風量が設定値にならない場合は、制御部5は、風量が設定値になるように、蒸気タービン2の回転数を調整範囲の中で調整する。
<ステップ25>
蒸気タービン2の回転数を調整範囲の中で調整しても、風量が設定値にならない場合は、制御部5は、可変静翼の角度を調整範囲内で予め定められた角度だけ開く。
<ステップ26>
可変静翼の角度を開いても、風量が設定値にならない場合は、制御部5は、風量が設定値になるように蒸気タービン2の回転数を調整範囲内で調整する。
<ステップ27>
制御部5は、ステップ25、26を風量が設定値になるまで繰り返す。
<ステップ28>
蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度とを調整範囲内で調整しても風量が設定値にならない場合、制御部5は、それまでの蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度との調整の中で、最も、風量が設定値に近いときの蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度によって運転する。
<ステップ29>
蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度が決まると、制御部5は、発電機3が発電する交流電圧の周波数が商用電源の周波数と一致するように、界磁巻線31への界磁電流の周波数を調整する。
<ステップ30>
界磁電流の周波数を調整しても発電機3が発電する交流電圧の周波数が商用電源の周波数と一致しない場合には、制御部5は、蒸気タービン2の回転数を調整し、発電する交流電圧の周波数を商用電源の周波数に一致させる。このとき、風量が設定値になるように可変静翼の角度を調整する。
<ステップ31>
発電された交流電圧の周波数が商用電源の周波数に一致すると、制御部5は、遮断器33を閉じて発電機3を系統に接続する。
【0030】
上述したステップ21〜ステップ31からなる方法のようにして、可変静翼の角度を先に決めてから蒸気タービン2の回転数を調整することにより風量を設定値にすることができる。特に、この制御方法を用いることにより、例えば、故障によって可変静翼の角度を調整できないときには、上記のステップ21〜31における可変静翼の角度の調整を行うことはできないが、蒸気タービン2の回転数を調整することにより、所定の風量を送風することができる。従来の発電機では、故障によって可変静翼の角度が調整できなくなると、送風装置の運転を停止して送風機の交換や修理を行わなければならず、多大な損害が発生する。
しかしながら、本実施形態の発電機4を用いることにより、故障によって可変静翼の角度を調整できないときにも所定の風量を送風しながら発電することができるので、可変静翼の故障のリスクが小さくなる。
【0031】
また、送風機4が送風する予め定められた所定の風量が得られるように蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度とを並行して調整してもよい。具体例を次に示す。
<ステップ41>
送風機4の効率の観点から、風量毎に、蒸気タービン2の回転数と送風機4の可変静翼の角度との調整範囲を事前の調査から定めた調整条件表を作成し、制御部5が有する記憶部に記憶させる。
<ステップ42>
風量の設定値を制御部5に入力する。制御部5は、調整条件表から風量の設定値に対応する蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度との調整範囲を取得し、蒸気タービン2の回転数を調整範囲の中で最も少ない回転数に設定し、可変静翼の角度を調整範囲の中で最も閉じた角度に設定する。
<ステップ43>
制御部5は、回転数検出器7によって検出した蒸気タービン2の回転数が、設定した回転数になるように、ガバナ23を介して蒸気調整弁22を開けると共に、並行して可変静翼の角度を設定した角度に調整させる。
蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度とが、設定値になる途中において、風量検出器8によって検出された風量が設定値になったときは、制御部5は、蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度とを、風量が設定値になった時点での状態に保持し、風量が設定値に維持されるように可変静翼の角度を調整する。
<ステップ44>
蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度とが設定値になっても風量が設定値にならない場合は、制御部5は、風量が設定値になるように調整範囲内で可変静翼の角度を調整する。
<ステップ45>
可変静翼の角度を調整しても、風量が設定値にならない場合は、制御部5は、蒸気タービン2の回転数を調整範囲内で予め定められた調整量だけ増加させる。
<ステップ46>
蒸気タービン2の回転数を増加させても、風量が設定値にならない場合は、制御部5は、風量が設定値になるように可変静翼の角度を調整する。
<ステップ47>
制御部5は、ステップ45、46を風量が設定値になるまで繰り返す。
<ステップ48>
蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度とを調整範囲内で調整しても風量が設定値にならない場合、制御部5は、それまでの蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度との調整の中で、最も、風量が設定値に近いときの蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度によって運転する。
<ステップ49>
蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度が決まると、制御部5は、発電機3が発電する交流電圧の周波数が商用電源の周波数と一致するように、界磁巻線31への界磁電流の周波数を調整する。
<ステップ50>
界磁電流の周波数を調整しても発電機3が発電する交流電圧の周波数が商用電源の周波数と一致しない場合には、制御部5は、蒸気タービン2の回転数を調整して発電する交流電圧の周波数を商用電源の周波数に一致させる。このとき、風量が設定値になるように可変静翼の角度を調整する。
<ステップ51>
発電された交流電圧の周波数が商用電源の周波数に一致すると、制御部5は、遮断器33を閉じて発電機3を系統に接続する。
【0032】
上述したステップ41〜ステップ51からなる方法によっても、送風機4の効率良く送風することができる。
【0033】
上記のステップ43において、蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度とを並行して調整する場合、次のように行ってもよい。
<ステップ431>
風量毎に対応して送風機4の効率が良い蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度をあらかじめ設定する。この設定は、上述したステップ41で定めた調整条件表とは異なり、蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度との設定値を、範囲でなく、送風機の効率がよい1点に定める。この値を並行設定値という。
<ステップ432>
目標とする風量が設定されると、現在の風量から目標風量までの間の風量において、蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度の調整を行う風量の箇所を決める。
この蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度との調整を行う風量の箇所の数は、現在の風量と目標風量との差と、制御部5が風量の制御を行う周期の時間とから定めればよく、何箇所でもよい。そして、それぞれの風量に対応した並行設定値に、蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度を調整していく。図3に、風量と、その風量に対応した蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度との並行設定値の例を示す。
この例では、現在の風量がL1であって、目標風量がL10であり、現在の風量と目標風量との間に、蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度との調整を行う風量の箇所がL2〜L9まで8箇所設けられている。そして、それぞれの風量に対応した並行設定値である蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度が定められている。
<ステップ433>
制御部5は、風量がL2になるように、蒸気タービン2の回転数をX2に、可変静翼の角度をY2に、並行して調整する。このとき、蒸気タービン2の回転数が調整される動作と、可変静翼の角度が調整される動作とはどちらが先でもよいし、同時でもよい。
<ステップ434>
蒸気タービン2の回転数がX2になり、可変静翼の角度がY2になっても、送風機4の状態等によって風量がL2にならない虞がある。風量がL2にならないときは、制御部5は、風量がL2になるように蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度のいずれかを調整する。蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度との両方を調整するとハンチングが発生する虞があるので、いずれか一方によって調整するのがよい。このとき、可変静翼の角度調整の方が、応答性が高く、細かい調整に適しているので、可変静翼の角度によって調整するのが好ましい。
<ステップ435>
風量L2の箇所での風量の調整が終了すると、制御部5は、次の風量L3に対応して蒸気タービン2の回転数をX3にし、可変静翼の角度をY3にし、風量を調整する。
<ステップ436>
このようにして、風量を順に調整していき、目標風量のL10に調整する。
【0034】
上記のステップ431〜436の制御方法で、例えば、制御部5の制御周期が100msecであり、現在の風量の5%を5分かけて変更する場合、現在の風量から目標風量までの間で蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度の調整を行う風量の箇所は、5(分)/100(msec)で約3000箇所となり、1回の制御周期の間に変更する風量は、5(%)/3000(回)で、現在の風量の1/600%になる。なお、制御周期は、制御部の性能によるが、通常は、数msecから数百msecである。
【0035】
風量をステップ431〜436のようにして制御することにより、風量が設定値に到達するまでの途中においても、送風機4の効率が良くなる。
尚、現在の風量から目標風量までの間で蒸気タービン2の回転数と可変静翼の角度の調整を行う風量の箇所において、それぞれの箇所での風量にならなくても、次の箇所の風量の調整に制御を移行するようにしてもよい。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、送風機の制御を風量に基づいて行ったが、風量に代えて風圧に基づいて制御するようにしてもよい。また、蒸気調整弁22の調整や、送風機4の可変静翼の角度の調整を自動で行ったが、人手によって行ってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1・・・送風装置
2・・・蒸気タービン(タービン)
3・・・発電機
4・・・送風機
31・・・界磁巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンと、前記タービンと同軸に連結され該タービンの回転によって発電する発電機と、該タービンと同軸に連結され該タービンの回転によって送風する送風機とを備えた送風装置であって、
前記発電機は、三相の界磁巻線を有し、前記界磁巻線に三相交流を通電されることによって励磁され、
前記送風機は、動翼と可変静翼とを有することを特徴とする送風装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送風装置の制御方法であって、
前記タービンの回転数を前記送風機が送風する予め定められた所定の風量に対応した回転数に設定した後、
前記所定の風量が得られるように前記可変静翼の角度を調整することを特徴とする送風装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の送風装置の制御方法であって、
前記可変静翼の角度を予め定められた角度に設定した後、
前記送風機が送風する予め定められた所定の風量が得られるように前記タービンの回転数を調整することを特徴とする送風装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の送風装置の制御方法であって、
前記送風機が送風する予め定められた所定の風量が得られるように前記タービンの回転数と前記可変静翼の角度とを並行して調整することを特徴とする送風装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−112313(P2012−112313A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262104(P2010−262104)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】