逃がし弁機構および容器
【課題】極めて簡素な仕組みにて洗浄瓶の液漏れ防止を可能とする機構を提供する。
【解決手段】弁室6を有し、弁室内には、自由に略上下可動な可動子7が封入されており、弁室略下部には、気体入口8が内部空間から連絡しており、弁室略上部には、気体出口9が外界へと連絡しており、静置時には、可動子8は弁室下部に位置して、気体入口8を覆い、内部空間の気体を徐放することができ、内部空間が与圧される際には、与圧により、可動子7が弁室上部に位置して、気体出口9を塞いで、気体出口9からの気体流出を実質的に阻止出来る、内部空間内の気体を自動的に外界に徐放することが可能である逃がし弁機構。
【解決手段】弁室6を有し、弁室内には、自由に略上下可動な可動子7が封入されており、弁室略下部には、気体入口8が内部空間から連絡しており、弁室略上部には、気体出口9が外界へと連絡しており、静置時には、可動子8は弁室下部に位置して、気体入口8を覆い、内部空間の気体を徐放することができ、内部空間が与圧される際には、与圧により、可動子7が弁室上部に位置して、気体出口9を塞いで、気体出口9からの気体流出を実質的に阻止出来る、内部空間内の気体を自動的に外界に徐放することが可能である逃がし弁機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を簡便に噴出することができる、所謂、洗浄瓶の液漏れ防止のための気体逃がし弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化学、無機化学、合成化学、生化学、生物化学等の広範な化学分野の基本的な処理操作において、処理操作対象物に溶媒を注いで洗浄する操作は、極めて頻繁に行われるものである。あるいは、化学処理過程において、反応状態に応じて、煩雑に何度も溶媒を加えるという操作も極めてしばしば行われるものである。このような操作においては、溶媒容器の閉鎖栓を開け、ピペット等を用いて、溶媒を添加乃至は注ぐことは、手間と時間を要し、極端な場合には、反応を終始する機会を逸する等の失敗につながる事もあり得る。又、滴下ロート等で滴下する事が困難乃至は不都合な場合も往々にしてあり得る。
【0003】
そのような問題を解決するために、柔軟なポリマー製容器に鶴首状の細管を付けた、所謂、洗浄瓶乃至は洗瓶と呼ばれる容器が簡便に多用されることがある。この種の容器は、本体が柔軟なポリマーにて構成されているために、容器を把持して力を入れるだけで内部の液体が細管から効率よく吐出され、力を抜くと本体の弾力にて元に戻って、再度、液体の吐出が可能となる。また、細い細管が、鶴の首と頭部のように曲がっていて、先端が細く加工されているので、望む箇所に液体を自由に射出し易く、力の入れ加減により吐出速度も有る程度調節可能である。さらに、細い細管以外は目立った開口部がないので、容器内に空気中の異物や水分などの夾雑物の混入や、逆に、人体に余り好ましくない溶媒蒸気の大気への放出も、殆ど問題とはならないものである。
【0004】
しかしながら、このように便利な洗浄瓶は、容器内の液体或いは空気が室温の上昇によって膨張することにより、内部の液体が漏れるという問題点を抱えている。特に、加熱操作を行っている傍らに当該洗瓶が放置されていると、その熱に曝されて、内部の液体の漏洩乃至は噴出が起きやすく、引火性や有害性が高い液体の場合にはその問題は重大である。
そのような問題を解決するために、容器内部の気体を逃すコックを有する洗浄瓶が実用化されているが、使用する度にいちいち、コックを閉じる必要があるという煩雑さがあり、しばしば、使用後にそのコックを開け忘れて、液漏れが発生するという問題点を有しており、満足の行く解決手段であるとはまだまだ言い難いものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記如き煩雑な操作を必要とせず、極めて簡素な仕組みにて洗浄瓶の液漏れ防止を可能とする機構およびそれを備えた容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体を収納できる内部空間を有し、
外界から該内部空間を与圧できる構造を有し、
該内部空間内に収納された液体を外界に噴出できる、該内部空間略底部から容器外界へ連絡する細管を有する
容器において利用できる、
該内部空間内の気体を自動的に外界に徐放することが可能である逃がし弁機構であり、該逃がし弁機構は、
弁室を有し、
該弁室内には、自由に略上下可動な可動子が封入されており、
該弁室略下部には、気体入口が該内部空間から連絡しており、
該弁室略上部には、気体出口が外界へと連絡しており、
静置時には、該可動子は弁室下部に位置して、該気体入口を覆い、該内部空間の気体を徐放することができ、
該内部空間が与圧される際には、該与圧により、該可動子が該弁室上部に位置して、該気体出口を塞いで、該気体出口からの気体流出を実質的に阻止出来る
ことを特徴とする逃がし弁機構
よりなるものである。
上記可動子は略上部に向かって細くなっている略錐体であることが好ましい。
【0007】
また、本発明は、
液体を収納できる内部空間を有し、
外界から該内部空間を与圧できる構造を有し、
該内部空間内に収納された液体を外界に噴出できる、該内部空間略底部から容器外界へ連絡する細管を有する
容器であり、かつ、
前記逃がし弁機構を備えた容器
よりなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の逃がし弁機構を用いることにより、容器内部の気体は自動的に適宜徐放されるので、使用の度に煩雑な操作の必要が無く、洗浄瓶を使用することが出来、コックの閉め忘れ等による液漏れの心配も解消されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳述する。
【0010】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の逃がし弁機構が適用できる洗浄瓶について説明する。当該洗浄瓶自体は、逃がし弁機構以外の大まかな構成は、従来用いられている通常のものと同等である。即ち、洗浄瓶は、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等の柔軟なポリマーより構成された容器本体1を有している。図1に示されているように、その内部空間は溶媒などの液体1bを収納することが出来るような構造を有しており、使用状況により上部は気体部分1aにて占められていく。更に、細い細管2を有しており、鶴の首と頭部のように曲がっていて、その先端2aが細く加工されており、適量の液体を所望の場所に噴出し易いように形成されている。一方、細管2の容器内側の端部2bは容器の略底部までに至っていることは、液体を最後まで出し切るために好ましい。なお、図面では、細管2の容器内側の端部2bは、容器の底部中央付近に位置しているが、これを底部周辺部に位置するように配置すると、容器をその位置に傾けることにより、出し切れずに残留してしまう液体量がより少なくなるので好ましい。また、細管の構成素材は、ある程度自由に曲がるように柔軟性を有するポリマーにて構成されていることが多い。
【0011】
また、細管2は、細管係留部材3の嵌挿部分3aを貫いて設けられるが、細管係留部材は、細管係留部材嵌め込み部3bと容器嵌め込み部1cが螺旋構造などにて脱着自在の密着構造にて、脱着自在にして、液体の補充に用いることが好適ではあるが、別に液体補充孔を設けていても良い。
かかる洗浄容器は、容器1を把持して力を入れるだけで、内部の液体1bが細管2を通じて外界に噴出せしめ、使用することが可能である。
【0012】
さて、このような構造では、容器上部の気体部分が温度上昇にて膨張すると、液体1bは与圧され、細管2を通じて、勝手に液体が外界に漏れ出すという問題を有するものである。また、図2のように、細管係留部材3にレバー4aを具備するレバー操作弁4によりて容器内の気体を手動にて逃がす態様も知られているが、いちいち操作することが煩雑でありかつ開け忘れによる液漏れの恐れも解消されていないものである。
この問題は、本発明の自動逃がし弁機構にて解消されるものであり、図面などを用いて以下に説明するが、何らこれらに限定されるものではない。
即ち、本発明の逃がし弁機構は、容器内の気体を専ら外界に放出出来るように洗浄瓶の略最上部、例えば、細管係留部材3の上下を貫通するようにもうけられるものであり、この点は従来技術のレバー操作弁と同様である。
【0013】
本発明の自動逃がし弁機構の構造は、洗浄瓶容器の内部空間内の気体を自動的に外界に徐放する為の逃がし弁機能を有するものであり、該機構は、図3に図示した通り、弁構造体5よりなり、これは弁室6を有するものである。この弁構造体は、略円筒形状であることが加工し易く、動作安定性の上で好ましい。但し、弁構造体の上下の端部は平面的な円形に限定される必要はなく、凹乃至は凸形状の球面や円錐等の曲面であっても良いし、円筒を斜めに切った断面形状であっても良い。この弁構造体は、長軸に垂直な面での外長径は好ましくは2〜10mm、より好ましくは5〜8mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると十分な太さの弁室、気体入口、気体出口等やそれらを取り巻く十分な厚さの外壁を形成することが困難となり、上限値を上回ると洗浄瓶などに取り付けた際に邪魔になる等取り扱いが不便となり、何れも好ましくない。なお、前記長軸とは、後述する気体入口、弁室、可動子、気体出口を貫く方向軸であり、以下、同様のものとする。本発明の弁構造体は、容器が平地に静置された際には、なるべく長軸が鉛直となることが好ましいが、15°以下のズレならば、殆ど問題ない。そのことから、前記長軸は上下方向と同義と見なしても良い。また、長軸方向の長さは好ましくは4〜40mm、より好ましくは10〜25mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると十分な長さの弁室、気体入口、気体出口等やそれらを仕切る十分な厚さの構造壁を形成することが困難となり、上限値を上回ると洗浄瓶などに取り付けた際に邪魔になる等取り扱いが不便となり、何れも好ましくない。また、弁構造体の外壁の厚さは、好ましくは0.2〜4.5mm、より好ましくは0.5〜3.5mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると強度が不十分となり、上限値を上回ると十分な太さの弁室、気体入口、気体出口等を形成することが困難となり、何れも好ましくない。なお、弁構造体の組み立てや洗浄瓶の細管係留部材等への組み付け手法としては、嵌め込み式、ねじ込み式、返し構造を利用した方式、溶融ポリマによる接着方式等、特に限定されるものではない。
【0014】
この弁構造体は、弁室6を有するものである。この弁室は後述の可動子を略上下可動に封入せしめるものである。弁室の上縁、下縁にはそれぞれ、後述の気体出口、気体入口があり、可動子がこの部分に当接することにより可動限界が決定され、閉塞機能が発揮される。弁室の長軸方向の長さは、好ましくは0.5〜35mm、より好ましくは1〜5mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると弁室内での可動子の弁動作が不全となり、上限値を上回ると洗浄瓶などに取り付けた際に邪魔になる等取り扱いが不便となり、何れも好ましくない。弁室の長軸方向に垂直な断面での内長径は、好ましくは0.5〜9mm、より好ましくは2〜6mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると弁室内での可動子の弁動作が不全となり、上限値を上回ると洗浄瓶などに取り付けた際に邪魔になる等取り扱いが不便となり、何れも好ましくない。 弁室内には、制約範囲内で自由に略上下可動な可動子7が封入されている。この可動子は、大きさ乃至は形状の制約にて、弁室から抜け出ないように形成されておれば良い。つまり、可動子は、弁構造体の他の部分と構造的に結合している必要はない。この可動子は略上部に向かって細くなっている略錐体であることが好ましい。或いは前記略錐体は先端は丸みを帯びていても良いし、錐体台形状であっても良い。また錐体下部に円柱、楕円柱、角柱等の棒状体が接続された形状であっても良いし、錐体先端に前記棒状体が接続された形状であっても良い。なお、錐体部分の平均角度は15〜75度であることが好ましい。なお、前記角度とは、図4に図示した通り、長軸を含む断面での錐体乃至は錐体台部分の錐面と長軸とがなす鋭角側角度であり、平均角度とは、図5に図示した通り、錐体乃至は錐体台部分の長軸方向の両端について、両端での径差の半分と両端間の長さを直角を挟んでそれぞれ一辺とする直角三角形において、斜辺と両端間の長さの辺の成す角を持って平均角度とする。あるいは、錐体部分は長軸を通る断面にて外部に凹乃至は凸に湾曲した曲線であっても良い。なお、可動子底部は可動子長軸に対して垂直な平面であることが好ましいが、凹乃至は凸形状の錐体面乃至は球面のような曲面であっても良い。又、可動子の大きさについて、その幅が最も大きくなる部分の幅については、好ましくは0.3〜8mm、より好ましくは1〜5mmである。あるいは弁室内部の幅に対して可動子の周囲の間隙は、好ましくは0.01〜4mm、より好ましくは0.1〜1mmである。
【0015】
可動子の長軸方向の長さは好ましくは1〜35mm、より好ましくは2〜10mmである。また、可動子の長軸方向の可動範囲は、好ましくは0.1〜30mm、より好ましくは0.2〜5mmである。又、弁室は長軸方向の長さが垂直方向の幅よりも大きい場合には、可動子が横転したり上下逆転したりしないように、弁室内幅よりも可動子の長さが大きいことが好ましく、0.1〜30mm、より好ましくは0.5〜10mm程度大きい方が良い。更に、細管から液漏れがしない程度に容器内部の気体を除放する必要があるので、重さは1〜40mg、より好ましくは5〜20mgで有ることが好ましい。
【0016】
図6に示した例では、可動子は円錐台上部に円柱の棒状体が戴置された形状であり、この可動子は、弁室下部に静置している状態においても上部の棒状体部分の一部が気体出口に一部挿入された状態になっている。これにより、流体力学的乱れが抑えられて確実かつ速やかに可動子は気体出口を閉塞することが出来るものである。
弁室略下部には、気体入口8が容器の内部空間から連絡している。なお、この場合の内部空間とは、実質的には、容器本体中の気体部分1aと同義である。気体入口は、容器本体内の気体を弁室に通すことが出来、しかも、可動子が弁室略下部に静置状態には閉塞され、かつ、可動子が内部空間へ落下しないという条件さえ満たせば、何ら制約されることはない。通常、気体入口8は、気体入口内部空間側開口部8a、気体入口通路8b、気体入口弁室側開口部8cを有するものである。ここでは、弁室内での可動子の最下部可動限界を規定する構造が気体入口弁室側開口部であり、それよりも内部空間側の部分が気体入口通路であり、内部空間での開口部分が気体入口内部空間側開口部となる。なお、特殊な場合として、気体入口内部空間側開口部と気体入口弁室側開口部が最内径部の辺縁部にて合わさっている場合、つまり、中心孔に向かって肉薄になっている扁平なドーナツ型である半隔壁の場合は、肉眼的には気体入口通路が存在し得ないということになるが、これは最内径辺縁部の強度が低く、余り実用的とはいえない。この気体入口の通路は略円筒形状が好ましいが、長軸を含む面にて錐体台或いは逆錐体台の形状であっても良いし、長軸に垂直な面にて多角形や楕円などの非円形であっても良い。又は、気体入口が複数に分割されていても良いし、不織布、多孔膜、網状構造、格子等よりなる濾過層或いは可動子落下防止網を介していても良い。容器内部の液滴飛沫が侵入し難いように、静置状態での可動子底部から気体入口容器内開口部までの距離を0.5〜35mm、より好ましくは5〜20mm程度にすることが好ましいが、障壁を設ける等にて経路をジグザグ状にしても良い。当該気体入口が可動子と接する気体入口弁室側開口部での開口面積は直径0.5〜8mm、より好ましくは1〜4mmの円の面積程度の大きさであることが好ましい。気体入口の弁室側開口部は、可動子底部とぴったりと摺合するように形状を合わせていることが好ましく、それにより、洗浄瓶容器内部の気体部分が熱膨張などにより圧力が上昇した際、細管内の液体を押し出して液漏れする前に、可動子を押し上げて気体が逃がされ、それ以外の静置状態では、内部の気体が外界にも入れたり、外界から水分や塵埃が侵入するのを防ぐという、相矛盾する作用を両立させることが出来る。場合によっては気体入口の弁室側開口部および/または可動子底部を粗面にするなどして、可動子が弁室側開口部に着底している状態でも気体を逃すように細工を施しておいても良い。また、気体入口部分の外径は他の部分の外径よりも小さくしておき、更には先細りに形状にしておくことにより、洗浄瓶の細管係留部材等への取り付けし易くなる。
【0017】
一方、弁室略上部には、気体出口9が外界へと連絡している。気体出口は、弁室の気体を容器外界に通すことが出来、しかも、可動子が弁室略上部に上昇した際には閉塞され、かつ、可動子が外界空間に脱出しないという条件さえ満たせば、何ら制約されることはない。通常、気体出口は、気体出口弁室側開口部9a、気体出口通路9b、気体出口外界側開口部9cを有するものである。ここでは、弁室内での可動子の最上部可動限界を規定する構造が気体出口弁室側開口部であり、それよりも外界側の部分が気体出口通路であり、外界空間での開口部分が気体出口外界側開口部となる。特に、可動子上部先端部が容器外界に突出することがないように気体出口通路の長さ等を調整されていることが好ましい。可動子が気体出口を閉塞した際の、可動子上部先端から外界までの距離は0.5〜35mm、より好ましくは1〜10mmであることが好ましい。この気体出口の通路は略円筒形状が好ましいが、錐体台或いは逆錐体台であっても良いし、断面が非円形であっても良い。又は、気体出口は、可動子による閉塞の妨げにさえならなければ、気体出口外界側開口部付近にて、複数に分割されていても良いし、不織布、多孔膜、網状構造、格子等よりなる濾過層或いは可動子落下防止網を介していても良い。容器外界の塵埃などが落下侵入し難いように、例えば気体出口の通路が途中で逆L字又は逆J字に屈曲して、気体出口外界側開口部が略側方に外界開口していても良い。当該気体出口が可動子と接する所での開口面積は直径0.5〜8mm、より好ましくは1〜4mmの円の面積程度の大きさであることが好ましい。気体出口の弁室側開口部は、可動子上部とぴったりと摺合するように形状を形成されていることが好ましく、それにより、可動子が上部に上昇した際、気密性を維持することが出来る。但し、前記の通り、摺合させるために、例えば気体出口通路を円筒形状、可動子を円錐乃至は円錐台形状の組み合わせで十分であるが、気体出口通路全体乃至は気体出口通路の弁室内側開口部を可動子錐体部分の傾斜に合わせた傾斜を設けることも好ましい。或いは、弁室長軸を通る断面にて、気体出口通路は内部に凸湾曲、可動子錐体部分は外に向かって凸湾曲とする組み合わせも良い。
弁構造体が前記の通り構成されることにより、以下の通り機能する。
【0018】
即ち、本発明の弁機構を備えた洗浄瓶は非使用時の静置状態において洗浄瓶容器内部の気体部分が熱膨張などにより圧力が上昇した際、細管内の液体を押し出して液漏れする前に、図6(A)に図示した通り、可動子を押し上げて気体が逃がされる。それ以外の静置状態では、可動子により気体入口がふさがれるので、内部の気体が外界に漏れたり、外界から水分や塵埃が侵入するのを防ぐ。かくして、自動逃がし弁としての機能を果たすことが可能となる。
一方、本発明の洗浄瓶は人の手により把持されて力が加えられると、容器外壁は柔軟な素材にて構成されていることにより、内部空間が容易に与圧されることができる。すると、図6(B)に図示した通り、その与圧により、可動子が弁室上部に上昇して、気体出口を塞いで、該気体出口からの気体流出を実質的に阻止することが出来る。よって、実質上気体漏れが無いので、その与圧は容器内部の液体を細管を通じて外界に噴出する動作に効率よく利用されることが可能となる。
【0019】
特に好適な組み合わせは、図6(A)のように静置状態においても、気体出口を閉塞しない程度に可動子上部先端が気体出口通路内に、好ましくは0.5〜35mm、より好ましくは1〜5mm程度、挿入されているような態様である。即ち、この場合では、弁室よりも可動子の方が長い。更に可動子上部は略円筒形でありその下部に円錐体台が結合した形態である。この際、気体出口通路内径:可動子上部円筒部外径の、比は好ましくは4:1〜20:19、より好ましくは3:1〜10:9であり、差は好ましくは0.05〜8mm、より好ましくは0.2〜4mmである。かかる場合においては、可動子は与圧時に確実にずれ無く気体出口を閉塞出来る。また、可動子下部円錐台部は長軸を含む断面において、外部に対して凹曲線を描く形態である方が、閉塞効率がよい。更には、上部棒状部分と下部円錐台部分の長軸方向長さの比は好ましくは1:10〜20:1、より好ましくは1:5〜10:1である。また、可動子落下防止網等によってではなく、このように可動子最大外径部分の外径と気体出口(又は入口)弁室側開口部内径との比(又は差)にて、可動子が係留乃至は封入されている場合では、可動子最大外径部分の外径と気体出口(又は入口)弁室側開口部内径との、比は好ましくは20:1〜20:19、より好ましくは10:1〜10:9であり、差は好ましくは0.1〜8mm、より好ましくは0.3〜4mmである。
【0020】
なお、図7(A)、(B)に図示したように、弁室上縁近辺と可動子の当接部分が長軸方向において異なる位置に認められる場合(10a1と10a2、10b1と10b2)は、流路的に最も気体出口に近い部分(10a2、10b1)を弁室の最上縁、気体出口弁室側開口部と考えるのが妥当である。なお、弁室下縁と気体入口弁室側開口部についても同様のものとする。
【実施例】
【0021】
図8に示すような形状・寸法(数字の単位は何れも「ミリメートル」[mm])の弁をテフロン(登録商標)にて作成した。なお、可動子の上部円柱部と下部回転凹球面は微分連続的に接続された形状となっている。この弁を、500mlの洗浄瓶(安元化成(株)製YK式洗浄瓶)のコックを抜き取った孔に差し込んだ。
【0022】
前記洗浄容器内にアセトン480ml入れ、開放状態にて25℃に調整した後、細管係留部材であるキャップを閉めて、密閉した。35℃の条件にて4時間放置したところ、細管からの液漏れは認められなかった。さらに、前記放置前後に、この洗浄瓶を人の手にて把持して圧力を加える試験をそれぞれ行ったところ、いずれの場合も、圧力を加えている間、細管より途絶えることなくアセトン液を噴出することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】洗浄瓶の基本的概略構成図である。
【図2】従来のコック操作式逃がし弁の説明図である。
【図3】本発明の逃がし弁の説明図である。
【図4】角度の定義を示した図である。
【図5】平均角度の定義を示した図である。
【図6】本発明の逃がし弁の働きを説明する拡大図である。
【図7】本発明の逃がし弁の特殊な例を示した図である。
【図8】本発明の逃がし弁の実施例の図である。
【符号の説明】
【0024】
1:容器本体
1a:容器本体中の気体部分
1b:容器本体中の液体部分
1c:容器本体側の嵌め込み部
2:細管
2a:細管の先端
2b:細管の容器内側端部
3:細管係留部材
3a:細管嵌挿部分
3b:細管係留部材側嵌め込み部
4:レバー操作弁
4a:レバー
5:弁構造体
6:弁室
7:可動子
8:気体入口
8a:気体入口容器側開口部
8b:気体入口通路
8c:気体入口弁室側開口部
9:気体出口
9a:気体出口弁室側開口部
9b:気体出口通路
9c:気体出口外界側開口部
10a1:弁室上縁近辺と可動子の当接部分
10a2:弁室上縁近辺と可動子の当接部分
10b1:弁室上縁近辺と可動子の当接部分
10b2:弁室上縁近辺と可動子の当接部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を簡便に噴出することができる、所謂、洗浄瓶の液漏れ防止のための気体逃がし弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化学、無機化学、合成化学、生化学、生物化学等の広範な化学分野の基本的な処理操作において、処理操作対象物に溶媒を注いで洗浄する操作は、極めて頻繁に行われるものである。あるいは、化学処理過程において、反応状態に応じて、煩雑に何度も溶媒を加えるという操作も極めてしばしば行われるものである。このような操作においては、溶媒容器の閉鎖栓を開け、ピペット等を用いて、溶媒を添加乃至は注ぐことは、手間と時間を要し、極端な場合には、反応を終始する機会を逸する等の失敗につながる事もあり得る。又、滴下ロート等で滴下する事が困難乃至は不都合な場合も往々にしてあり得る。
【0003】
そのような問題を解決するために、柔軟なポリマー製容器に鶴首状の細管を付けた、所謂、洗浄瓶乃至は洗瓶と呼ばれる容器が簡便に多用されることがある。この種の容器は、本体が柔軟なポリマーにて構成されているために、容器を把持して力を入れるだけで内部の液体が細管から効率よく吐出され、力を抜くと本体の弾力にて元に戻って、再度、液体の吐出が可能となる。また、細い細管が、鶴の首と頭部のように曲がっていて、先端が細く加工されているので、望む箇所に液体を自由に射出し易く、力の入れ加減により吐出速度も有る程度調節可能である。さらに、細い細管以外は目立った開口部がないので、容器内に空気中の異物や水分などの夾雑物の混入や、逆に、人体に余り好ましくない溶媒蒸気の大気への放出も、殆ど問題とはならないものである。
【0004】
しかしながら、このように便利な洗浄瓶は、容器内の液体或いは空気が室温の上昇によって膨張することにより、内部の液体が漏れるという問題点を抱えている。特に、加熱操作を行っている傍らに当該洗瓶が放置されていると、その熱に曝されて、内部の液体の漏洩乃至は噴出が起きやすく、引火性や有害性が高い液体の場合にはその問題は重大である。
そのような問題を解決するために、容器内部の気体を逃すコックを有する洗浄瓶が実用化されているが、使用する度にいちいち、コックを閉じる必要があるという煩雑さがあり、しばしば、使用後にそのコックを開け忘れて、液漏れが発生するという問題点を有しており、満足の行く解決手段であるとはまだまだ言い難いものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記如き煩雑な操作を必要とせず、極めて簡素な仕組みにて洗浄瓶の液漏れ防止を可能とする機構およびそれを備えた容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体を収納できる内部空間を有し、
外界から該内部空間を与圧できる構造を有し、
該内部空間内に収納された液体を外界に噴出できる、該内部空間略底部から容器外界へ連絡する細管を有する
容器において利用できる、
該内部空間内の気体を自動的に外界に徐放することが可能である逃がし弁機構であり、該逃がし弁機構は、
弁室を有し、
該弁室内には、自由に略上下可動な可動子が封入されており、
該弁室略下部には、気体入口が該内部空間から連絡しており、
該弁室略上部には、気体出口が外界へと連絡しており、
静置時には、該可動子は弁室下部に位置して、該気体入口を覆い、該内部空間の気体を徐放することができ、
該内部空間が与圧される際には、該与圧により、該可動子が該弁室上部に位置して、該気体出口を塞いで、該気体出口からの気体流出を実質的に阻止出来る
ことを特徴とする逃がし弁機構
よりなるものである。
上記可動子は略上部に向かって細くなっている略錐体であることが好ましい。
【0007】
また、本発明は、
液体を収納できる内部空間を有し、
外界から該内部空間を与圧できる構造を有し、
該内部空間内に収納された液体を外界に噴出できる、該内部空間略底部から容器外界へ連絡する細管を有する
容器であり、かつ、
前記逃がし弁機構を備えた容器
よりなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の逃がし弁機構を用いることにより、容器内部の気体は自動的に適宜徐放されるので、使用の度に煩雑な操作の必要が無く、洗浄瓶を使用することが出来、コックの閉め忘れ等による液漏れの心配も解消されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳述する。
【0010】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の逃がし弁機構が適用できる洗浄瓶について説明する。当該洗浄瓶自体は、逃がし弁機構以外の大まかな構成は、従来用いられている通常のものと同等である。即ち、洗浄瓶は、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等の柔軟なポリマーより構成された容器本体1を有している。図1に示されているように、その内部空間は溶媒などの液体1bを収納することが出来るような構造を有しており、使用状況により上部は気体部分1aにて占められていく。更に、細い細管2を有しており、鶴の首と頭部のように曲がっていて、その先端2aが細く加工されており、適量の液体を所望の場所に噴出し易いように形成されている。一方、細管2の容器内側の端部2bは容器の略底部までに至っていることは、液体を最後まで出し切るために好ましい。なお、図面では、細管2の容器内側の端部2bは、容器の底部中央付近に位置しているが、これを底部周辺部に位置するように配置すると、容器をその位置に傾けることにより、出し切れずに残留してしまう液体量がより少なくなるので好ましい。また、細管の構成素材は、ある程度自由に曲がるように柔軟性を有するポリマーにて構成されていることが多い。
【0011】
また、細管2は、細管係留部材3の嵌挿部分3aを貫いて設けられるが、細管係留部材は、細管係留部材嵌め込み部3bと容器嵌め込み部1cが螺旋構造などにて脱着自在の密着構造にて、脱着自在にして、液体の補充に用いることが好適ではあるが、別に液体補充孔を設けていても良い。
かかる洗浄容器は、容器1を把持して力を入れるだけで、内部の液体1bが細管2を通じて外界に噴出せしめ、使用することが可能である。
【0012】
さて、このような構造では、容器上部の気体部分が温度上昇にて膨張すると、液体1bは与圧され、細管2を通じて、勝手に液体が外界に漏れ出すという問題を有するものである。また、図2のように、細管係留部材3にレバー4aを具備するレバー操作弁4によりて容器内の気体を手動にて逃がす態様も知られているが、いちいち操作することが煩雑でありかつ開け忘れによる液漏れの恐れも解消されていないものである。
この問題は、本発明の自動逃がし弁機構にて解消されるものであり、図面などを用いて以下に説明するが、何らこれらに限定されるものではない。
即ち、本発明の逃がし弁機構は、容器内の気体を専ら外界に放出出来るように洗浄瓶の略最上部、例えば、細管係留部材3の上下を貫通するようにもうけられるものであり、この点は従来技術のレバー操作弁と同様である。
【0013】
本発明の自動逃がし弁機構の構造は、洗浄瓶容器の内部空間内の気体を自動的に外界に徐放する為の逃がし弁機能を有するものであり、該機構は、図3に図示した通り、弁構造体5よりなり、これは弁室6を有するものである。この弁構造体は、略円筒形状であることが加工し易く、動作安定性の上で好ましい。但し、弁構造体の上下の端部は平面的な円形に限定される必要はなく、凹乃至は凸形状の球面や円錐等の曲面であっても良いし、円筒を斜めに切った断面形状であっても良い。この弁構造体は、長軸に垂直な面での外長径は好ましくは2〜10mm、より好ましくは5〜8mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると十分な太さの弁室、気体入口、気体出口等やそれらを取り巻く十分な厚さの外壁を形成することが困難となり、上限値を上回ると洗浄瓶などに取り付けた際に邪魔になる等取り扱いが不便となり、何れも好ましくない。なお、前記長軸とは、後述する気体入口、弁室、可動子、気体出口を貫く方向軸であり、以下、同様のものとする。本発明の弁構造体は、容器が平地に静置された際には、なるべく長軸が鉛直となることが好ましいが、15°以下のズレならば、殆ど問題ない。そのことから、前記長軸は上下方向と同義と見なしても良い。また、長軸方向の長さは好ましくは4〜40mm、より好ましくは10〜25mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると十分な長さの弁室、気体入口、気体出口等やそれらを仕切る十分な厚さの構造壁を形成することが困難となり、上限値を上回ると洗浄瓶などに取り付けた際に邪魔になる等取り扱いが不便となり、何れも好ましくない。また、弁構造体の外壁の厚さは、好ましくは0.2〜4.5mm、より好ましくは0.5〜3.5mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると強度が不十分となり、上限値を上回ると十分な太さの弁室、気体入口、気体出口等を形成することが困難となり、何れも好ましくない。なお、弁構造体の組み立てや洗浄瓶の細管係留部材等への組み付け手法としては、嵌め込み式、ねじ込み式、返し構造を利用した方式、溶融ポリマによる接着方式等、特に限定されるものではない。
【0014】
この弁構造体は、弁室6を有するものである。この弁室は後述の可動子を略上下可動に封入せしめるものである。弁室の上縁、下縁にはそれぞれ、後述の気体出口、気体入口があり、可動子がこの部分に当接することにより可動限界が決定され、閉塞機能が発揮される。弁室の長軸方向の長さは、好ましくは0.5〜35mm、より好ましくは1〜5mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると弁室内での可動子の弁動作が不全となり、上限値を上回ると洗浄瓶などに取り付けた際に邪魔になる等取り扱いが不便となり、何れも好ましくない。弁室の長軸方向に垂直な断面での内長径は、好ましくは0.5〜9mm、より好ましくは2〜6mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると弁室内での可動子の弁動作が不全となり、上限値を上回ると洗浄瓶などに取り付けた際に邪魔になる等取り扱いが不便となり、何れも好ましくない。 弁室内には、制約範囲内で自由に略上下可動な可動子7が封入されている。この可動子は、大きさ乃至は形状の制約にて、弁室から抜け出ないように形成されておれば良い。つまり、可動子は、弁構造体の他の部分と構造的に結合している必要はない。この可動子は略上部に向かって細くなっている略錐体であることが好ましい。或いは前記略錐体は先端は丸みを帯びていても良いし、錐体台形状であっても良い。また錐体下部に円柱、楕円柱、角柱等の棒状体が接続された形状であっても良いし、錐体先端に前記棒状体が接続された形状であっても良い。なお、錐体部分の平均角度は15〜75度であることが好ましい。なお、前記角度とは、図4に図示した通り、長軸を含む断面での錐体乃至は錐体台部分の錐面と長軸とがなす鋭角側角度であり、平均角度とは、図5に図示した通り、錐体乃至は錐体台部分の長軸方向の両端について、両端での径差の半分と両端間の長さを直角を挟んでそれぞれ一辺とする直角三角形において、斜辺と両端間の長さの辺の成す角を持って平均角度とする。あるいは、錐体部分は長軸を通る断面にて外部に凹乃至は凸に湾曲した曲線であっても良い。なお、可動子底部は可動子長軸に対して垂直な平面であることが好ましいが、凹乃至は凸形状の錐体面乃至は球面のような曲面であっても良い。又、可動子の大きさについて、その幅が最も大きくなる部分の幅については、好ましくは0.3〜8mm、より好ましくは1〜5mmである。あるいは弁室内部の幅に対して可動子の周囲の間隙は、好ましくは0.01〜4mm、より好ましくは0.1〜1mmである。
【0015】
可動子の長軸方向の長さは好ましくは1〜35mm、より好ましくは2〜10mmである。また、可動子の長軸方向の可動範囲は、好ましくは0.1〜30mm、より好ましくは0.2〜5mmである。又、弁室は長軸方向の長さが垂直方向の幅よりも大きい場合には、可動子が横転したり上下逆転したりしないように、弁室内幅よりも可動子の長さが大きいことが好ましく、0.1〜30mm、より好ましくは0.5〜10mm程度大きい方が良い。更に、細管から液漏れがしない程度に容器内部の気体を除放する必要があるので、重さは1〜40mg、より好ましくは5〜20mgで有ることが好ましい。
【0016】
図6に示した例では、可動子は円錐台上部に円柱の棒状体が戴置された形状であり、この可動子は、弁室下部に静置している状態においても上部の棒状体部分の一部が気体出口に一部挿入された状態になっている。これにより、流体力学的乱れが抑えられて確実かつ速やかに可動子は気体出口を閉塞することが出来るものである。
弁室略下部には、気体入口8が容器の内部空間から連絡している。なお、この場合の内部空間とは、実質的には、容器本体中の気体部分1aと同義である。気体入口は、容器本体内の気体を弁室に通すことが出来、しかも、可動子が弁室略下部に静置状態には閉塞され、かつ、可動子が内部空間へ落下しないという条件さえ満たせば、何ら制約されることはない。通常、気体入口8は、気体入口内部空間側開口部8a、気体入口通路8b、気体入口弁室側開口部8cを有するものである。ここでは、弁室内での可動子の最下部可動限界を規定する構造が気体入口弁室側開口部であり、それよりも内部空間側の部分が気体入口通路であり、内部空間での開口部分が気体入口内部空間側開口部となる。なお、特殊な場合として、気体入口内部空間側開口部と気体入口弁室側開口部が最内径部の辺縁部にて合わさっている場合、つまり、中心孔に向かって肉薄になっている扁平なドーナツ型である半隔壁の場合は、肉眼的には気体入口通路が存在し得ないということになるが、これは最内径辺縁部の強度が低く、余り実用的とはいえない。この気体入口の通路は略円筒形状が好ましいが、長軸を含む面にて錐体台或いは逆錐体台の形状であっても良いし、長軸に垂直な面にて多角形や楕円などの非円形であっても良い。又は、気体入口が複数に分割されていても良いし、不織布、多孔膜、網状構造、格子等よりなる濾過層或いは可動子落下防止網を介していても良い。容器内部の液滴飛沫が侵入し難いように、静置状態での可動子底部から気体入口容器内開口部までの距離を0.5〜35mm、より好ましくは5〜20mm程度にすることが好ましいが、障壁を設ける等にて経路をジグザグ状にしても良い。当該気体入口が可動子と接する気体入口弁室側開口部での開口面積は直径0.5〜8mm、より好ましくは1〜4mmの円の面積程度の大きさであることが好ましい。気体入口の弁室側開口部は、可動子底部とぴったりと摺合するように形状を合わせていることが好ましく、それにより、洗浄瓶容器内部の気体部分が熱膨張などにより圧力が上昇した際、細管内の液体を押し出して液漏れする前に、可動子を押し上げて気体が逃がされ、それ以外の静置状態では、内部の気体が外界にも入れたり、外界から水分や塵埃が侵入するのを防ぐという、相矛盾する作用を両立させることが出来る。場合によっては気体入口の弁室側開口部および/または可動子底部を粗面にするなどして、可動子が弁室側開口部に着底している状態でも気体を逃すように細工を施しておいても良い。また、気体入口部分の外径は他の部分の外径よりも小さくしておき、更には先細りに形状にしておくことにより、洗浄瓶の細管係留部材等への取り付けし易くなる。
【0017】
一方、弁室略上部には、気体出口9が外界へと連絡している。気体出口は、弁室の気体を容器外界に通すことが出来、しかも、可動子が弁室略上部に上昇した際には閉塞され、かつ、可動子が外界空間に脱出しないという条件さえ満たせば、何ら制約されることはない。通常、気体出口は、気体出口弁室側開口部9a、気体出口通路9b、気体出口外界側開口部9cを有するものである。ここでは、弁室内での可動子の最上部可動限界を規定する構造が気体出口弁室側開口部であり、それよりも外界側の部分が気体出口通路であり、外界空間での開口部分が気体出口外界側開口部となる。特に、可動子上部先端部が容器外界に突出することがないように気体出口通路の長さ等を調整されていることが好ましい。可動子が気体出口を閉塞した際の、可動子上部先端から外界までの距離は0.5〜35mm、より好ましくは1〜10mmであることが好ましい。この気体出口の通路は略円筒形状が好ましいが、錐体台或いは逆錐体台であっても良いし、断面が非円形であっても良い。又は、気体出口は、可動子による閉塞の妨げにさえならなければ、気体出口外界側開口部付近にて、複数に分割されていても良いし、不織布、多孔膜、網状構造、格子等よりなる濾過層或いは可動子落下防止網を介していても良い。容器外界の塵埃などが落下侵入し難いように、例えば気体出口の通路が途中で逆L字又は逆J字に屈曲して、気体出口外界側開口部が略側方に外界開口していても良い。当該気体出口が可動子と接する所での開口面積は直径0.5〜8mm、より好ましくは1〜4mmの円の面積程度の大きさであることが好ましい。気体出口の弁室側開口部は、可動子上部とぴったりと摺合するように形状を形成されていることが好ましく、それにより、可動子が上部に上昇した際、気密性を維持することが出来る。但し、前記の通り、摺合させるために、例えば気体出口通路を円筒形状、可動子を円錐乃至は円錐台形状の組み合わせで十分であるが、気体出口通路全体乃至は気体出口通路の弁室内側開口部を可動子錐体部分の傾斜に合わせた傾斜を設けることも好ましい。或いは、弁室長軸を通る断面にて、気体出口通路は内部に凸湾曲、可動子錐体部分は外に向かって凸湾曲とする組み合わせも良い。
弁構造体が前記の通り構成されることにより、以下の通り機能する。
【0018】
即ち、本発明の弁機構を備えた洗浄瓶は非使用時の静置状態において洗浄瓶容器内部の気体部分が熱膨張などにより圧力が上昇した際、細管内の液体を押し出して液漏れする前に、図6(A)に図示した通り、可動子を押し上げて気体が逃がされる。それ以外の静置状態では、可動子により気体入口がふさがれるので、内部の気体が外界に漏れたり、外界から水分や塵埃が侵入するのを防ぐ。かくして、自動逃がし弁としての機能を果たすことが可能となる。
一方、本発明の洗浄瓶は人の手により把持されて力が加えられると、容器外壁は柔軟な素材にて構成されていることにより、内部空間が容易に与圧されることができる。すると、図6(B)に図示した通り、その与圧により、可動子が弁室上部に上昇して、気体出口を塞いで、該気体出口からの気体流出を実質的に阻止することが出来る。よって、実質上気体漏れが無いので、その与圧は容器内部の液体を細管を通じて外界に噴出する動作に効率よく利用されることが可能となる。
【0019】
特に好適な組み合わせは、図6(A)のように静置状態においても、気体出口を閉塞しない程度に可動子上部先端が気体出口通路内に、好ましくは0.5〜35mm、より好ましくは1〜5mm程度、挿入されているような態様である。即ち、この場合では、弁室よりも可動子の方が長い。更に可動子上部は略円筒形でありその下部に円錐体台が結合した形態である。この際、気体出口通路内径:可動子上部円筒部外径の、比は好ましくは4:1〜20:19、より好ましくは3:1〜10:9であり、差は好ましくは0.05〜8mm、より好ましくは0.2〜4mmである。かかる場合においては、可動子は与圧時に確実にずれ無く気体出口を閉塞出来る。また、可動子下部円錐台部は長軸を含む断面において、外部に対して凹曲線を描く形態である方が、閉塞効率がよい。更には、上部棒状部分と下部円錐台部分の長軸方向長さの比は好ましくは1:10〜20:1、より好ましくは1:5〜10:1である。また、可動子落下防止網等によってではなく、このように可動子最大外径部分の外径と気体出口(又は入口)弁室側開口部内径との比(又は差)にて、可動子が係留乃至は封入されている場合では、可動子最大外径部分の外径と気体出口(又は入口)弁室側開口部内径との、比は好ましくは20:1〜20:19、より好ましくは10:1〜10:9であり、差は好ましくは0.1〜8mm、より好ましくは0.3〜4mmである。
【0020】
なお、図7(A)、(B)に図示したように、弁室上縁近辺と可動子の当接部分が長軸方向において異なる位置に認められる場合(10a1と10a2、10b1と10b2)は、流路的に最も気体出口に近い部分(10a2、10b1)を弁室の最上縁、気体出口弁室側開口部と考えるのが妥当である。なお、弁室下縁と気体入口弁室側開口部についても同様のものとする。
【実施例】
【0021】
図8に示すような形状・寸法(数字の単位は何れも「ミリメートル」[mm])の弁をテフロン(登録商標)にて作成した。なお、可動子の上部円柱部と下部回転凹球面は微分連続的に接続された形状となっている。この弁を、500mlの洗浄瓶(安元化成(株)製YK式洗浄瓶)のコックを抜き取った孔に差し込んだ。
【0022】
前記洗浄容器内にアセトン480ml入れ、開放状態にて25℃に調整した後、細管係留部材であるキャップを閉めて、密閉した。35℃の条件にて4時間放置したところ、細管からの液漏れは認められなかった。さらに、前記放置前後に、この洗浄瓶を人の手にて把持して圧力を加える試験をそれぞれ行ったところ、いずれの場合も、圧力を加えている間、細管より途絶えることなくアセトン液を噴出することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】洗浄瓶の基本的概略構成図である。
【図2】従来のコック操作式逃がし弁の説明図である。
【図3】本発明の逃がし弁の説明図である。
【図4】角度の定義を示した図である。
【図5】平均角度の定義を示した図である。
【図6】本発明の逃がし弁の働きを説明する拡大図である。
【図7】本発明の逃がし弁の特殊な例を示した図である。
【図8】本発明の逃がし弁の実施例の図である。
【符号の説明】
【0024】
1:容器本体
1a:容器本体中の気体部分
1b:容器本体中の液体部分
1c:容器本体側の嵌め込み部
2:細管
2a:細管の先端
2b:細管の容器内側端部
3:細管係留部材
3a:細管嵌挿部分
3b:細管係留部材側嵌め込み部
4:レバー操作弁
4a:レバー
5:弁構造体
6:弁室
7:可動子
8:気体入口
8a:気体入口容器側開口部
8b:気体入口通路
8c:気体入口弁室側開口部
9:気体出口
9a:気体出口弁室側開口部
9b:気体出口通路
9c:気体出口外界側開口部
10a1:弁室上縁近辺と可動子の当接部分
10a2:弁室上縁近辺と可動子の当接部分
10b1:弁室上縁近辺と可動子の当接部分
10b2:弁室上縁近辺と可動子の当接部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収納できる内部空間を有し、
外界から該内部空間を与圧できる構造を有し、
該内部空間内に収納された液体を外界に噴出できる、該内部空間略底部から容器外界へ連絡する細管を有する
容器において利用できる、
該内部空間内の気体を自動的に外界に徐放することが可能である逃がし弁機構であり、該逃がし弁機構は、
弁室を有し、
該弁室内には、自由に略上下可動な可動子が封入されており、
該弁室略下部には、気体入口が該内部空間から連絡しており、
該弁室略上部には、気体出口が外界へと連絡しており、
静置時には、該可動子は弁室下部に位置して、該気体入口を覆い、該内部空間の気体を徐放することができ、
該内部空間が与圧される際には、該与圧により、該可動子が該弁室上部に位置して、該気体出口を塞いで、該気体出口からの気体流出を実質的に阻止出来る
ことを特徴とする逃がし弁機構。
【請求項2】
該可動子は略上部に向かって細くなっている略錐体であることを特徴とする請求項1に記載の逃がし弁機構。
【請求項3】
液体を収納できる内部空間を有し、
外界から該内部空間を与圧できる構造を有し、
該内部空間内に収納された液体を外界に噴出できる、該内部空間略底部から容器外界へ連絡する細管を有する
容器であり、かつ、
請求項1に記載の逃がし弁機構を備えた容器。
【請求項1】
液体を収納できる内部空間を有し、
外界から該内部空間を与圧できる構造を有し、
該内部空間内に収納された液体を外界に噴出できる、該内部空間略底部から容器外界へ連絡する細管を有する
容器において利用できる、
該内部空間内の気体を自動的に外界に徐放することが可能である逃がし弁機構であり、該逃がし弁機構は、
弁室を有し、
該弁室内には、自由に略上下可動な可動子が封入されており、
該弁室略下部には、気体入口が該内部空間から連絡しており、
該弁室略上部には、気体出口が外界へと連絡しており、
静置時には、該可動子は弁室下部に位置して、該気体入口を覆い、該内部空間の気体を徐放することができ、
該内部空間が与圧される際には、該与圧により、該可動子が該弁室上部に位置して、該気体出口を塞いで、該気体出口からの気体流出を実質的に阻止出来る
ことを特徴とする逃がし弁機構。
【請求項2】
該可動子は略上部に向かって細くなっている略錐体であることを特徴とする請求項1に記載の逃がし弁機構。
【請求項3】
液体を収納できる内部空間を有し、
外界から該内部空間を与圧できる構造を有し、
該内部空間内に収納された液体を外界に噴出できる、該内部空間略底部から容器外界へ連絡する細管を有する
容器であり、かつ、
請求項1に記載の逃がし弁機構を備えた容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−138852(P2008−138852A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328622(P2006−328622)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(592093578)サンメディカル株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(592093578)サンメディカル株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
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