説明

透光性樹脂成型体の製造方法及び透光性樹脂成型体

【課題】 内部に動物のキャラクター等を模した物品が入った透光性樹脂成型体において、物品に透光性を持たせ、さらに従来にはない美観を有する透光性樹脂成型体を得るための透光性樹脂成型体の製造方法及び透光性樹脂成型体を提供する。
【解決手段】 物品と該物品を内蔵する外部樹脂成型体からなる透光性樹脂成型体の製造方法であって、前記物品を透光性を有する合成樹脂で成型し、前記物品の表面の一部に透光性を有する塗料を塗布し、次いで金型のキャビティ内に前記物品を配置し、しかる後、前記キャビティ内に透光性を有する合成樹脂を射出してキャビティ内に該合成樹脂を充填固化して前記物品の周囲に前記外部樹脂成型体を成型するとともに、外部樹脂成型体を成型する際の熱で前記塗料を前記物品から剥離させることを特徴とする透光性樹脂成型体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物のキャラクター等を模した物品を内蔵した透光性樹脂成型体の製造方法及び透光性樹脂成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から図10に示すような、透光性を有する合成樹脂成型体(A)の内部に動物のキャラクター等を模した物品(B)を入れた透光性樹脂成型体が存在している(例えば下記特許文献1参照)。このような透光性樹脂成型体は、動物等のキャラクターが透光性を有する合成樹脂の中に浮かんでいるように外部から見えるために人気があり、例えば携帯電話のストラップにつける小物等として用いられている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の透光性樹脂成型体において、内部の物品(B)自体は透光性を有さない。そのため、他のキャラクター等の小物と比べても美観的な差が小さく、面白みに欠けていた。
また、たとえ物品(B)に透光性を持たせたとしても、それだけでは透光性を持たせないものと比べて、あまり美観が変わらない。
携帯電話のストラップ等の小物は多種多様なものがあるので、物品に透光性を持たせる等の工夫をし、さらに従来にない美観を有する透光性樹脂成型体を製造することが、他の商品との差別化の観点からも重要である。
【0004】
【特許文献1】特許第3673262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであって、内部に動物のキャラクター等を模した物品が入った透光性樹脂成型体において、物品に透光性を持たせ、さらに従来にはない美観を有する透光性樹脂成型体を得るための透光性樹脂成型体の製造方法及び透光性樹脂成型体を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、物品と該物品を内蔵する外部樹脂成型体からなる透光性樹脂成型体の製造方法であって、前記物品を透光性を有する合成樹脂で成型し、前記物品の表面の一部に透光性を有する塗料を塗布し、次いで金型のキャビティ内に前記物品を配置し、しかる後、前記キャビティ内に透光性を有する合成樹脂を射出してキャビティ内に該合成樹脂を充填固化して前記物品の周囲に前記外部樹脂成型体を成型するとともに、外部樹脂成型体を成型する際の熱で前記塗料を前記物品から剥離させることを特徴とする透光性樹脂成型体の製造方法に関する。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記物品を有色の合成樹脂で成型することを特徴とする請求項1記載の透光性樹脂成型体の製造方法に関する。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記外部樹脂成型体における前記物品と同じ高さの範囲を円柱状に成型することを特徴とする請求項1又は2記載の透光性樹脂成型体の製造方法に関する。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記外部樹脂成型体に傾斜面を設けることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の透光性樹脂成型体の製造方法に関する。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記物品の表面における前記塗料が塗布された部分が凹凸を有することを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の透光性樹脂成型体の製造方法に関する。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記物品が、透光性を有する合成樹脂により成型された複数の分岐した棒の先端に一個ずつ一体成型されており、前記物品の数に対応する複数のキャビティを有する金型の前記キャビティ内に前記塗料を塗布した後の物品を夫々配置し、しかる後、キャビティ内に前記棒の材料と同種類の透光性を有する合成樹脂を射出して各キャビティ内に該合成樹脂を充填固化することで前記物品の周囲に前記外部樹脂成型体を成型し、次いで金型から前記棒の先端に成型された前記外部樹脂成型体を取り出して前記棒を切断することにより前記外部樹脂成型体を分離することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の透光性樹脂成型体の製造方法に関する。
【0012】
請求項7に係る発明は、物品と該物品を内蔵する外部樹脂成型体からなる透光性樹脂成型体であって、前記物品及び前記外部樹脂成型体が透光性を有する合成樹脂からなり、前記物品の表面の一部に空気の薄層を介して透光性を有する塗料が存在することを特徴とする透光性樹脂成型体に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、物品と該物品を内蔵する外部樹脂成型体からなる透光性樹脂成型体の製造方法であって、前記物品を透光性を有する合成樹脂で成型し、前記物品の表面の一部に透光性を有する塗料を塗布し、次いで金型のキャビティ内に前記物品を配置し、しかる後、前記キャビティ内に透光性を有する合成樹脂を射出してキャビティ内に該合成樹脂を充填固化して前記物品の周囲に前記外部樹脂成型体を成型するとともに、外部樹脂成型体を成型する際の熱で前記塗料を前記物品から剥離させることにより、物品と塗料の間に空気の薄層が形成される。当該薄層に入射した光は反射・屈折しきらきら光るため、透光性樹脂成型体は従来にないきらきらと光る美しい美観を生じるものとなる。
また、物品が透光性を有することにより、当該薄層がどの角度からも視認できるようになる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、前記物品を有色の合成樹脂で成型することにより、物品が外部樹脂成型体中に浮かび上がるように見え、透光性樹脂成型体の美観を向上させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、前記外部樹脂成型体における前記物品と同じ高さの範囲を円柱状に成型することにより、前方から透光性樹脂成型体を見た場合、物品の背面が実際より大きくみえるようになる。そのため、物品全体が大きくみえ、迫力のある美観となる。また、例えば塗料を背面に塗布した場合は、塗料が剥離してできたきらきら光る空気の薄層が前方からみたときに大きく見えるので、美観的に好ましいものとなる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、前記外部樹脂成型体に傾斜面を設けることにより、傾斜面から見る美観とその他の角度から見る美観とが異なったものとなる。そのため、見る角度によって、観者に異なった美観を与えることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、前記物品の表面における前記塗料が塗布された部分が凹凸を有することにより、塗料が剥離されてできる空気の薄層にも凹凸が生じる。そのため、当該薄層に入射した光が乱反射し、美観をより向上させることができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、前記物品が、透光性を有する合成樹脂により成型された複数の分岐した棒の先端に一個ずつ一体成型されており、前記物品の数に対応する複数のキャビティを有する金型の前記キャビティ内に前記塗料を塗布した後の物品を夫々配置し、しかる後、キャビティ内に前記棒の材料と同種類の透光性を有する合成樹脂を射出して各キャビティ内に該合成樹脂を充填固化することで前記物品の周囲に前記外部樹脂成型体を成型し、次いで金型から前記棒の先端に成型された前記外部樹脂成型体を取り出して前記棒を切断することにより前記外部樹脂成型体を分離することで、一度に大量の製品を短時間で効率良く、しかも均一な品質で製造することができる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、物品と該物品を内蔵する外部樹脂成型体からなる透光性樹脂成型体であって、前記物品及び前記外部樹脂成型体が透光性を有する合成樹脂からなり、前記物品の表面の一部に空気の薄層を介して透光性を有する塗料が存在することにより、空気の薄層に入射した光が反射・屈折するので、今までにないきらきら光る美しい美観を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る物品を内蔵した透光性樹脂成型体の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、明細書において、「透光性を有する」とは、透明又は半透明を意味するものとする。また、前方とは、透光性樹脂成型体の前方を指し、後方とは透光性樹脂成型体の後方を指す。さらに、高さ(上下方向)とは、透光性樹脂成型体の高さ(上下方向)を指す。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る透光性樹脂成型体を製造するために用いる基礎成型体(10)の正面図である。
基礎成型体(10)は、直線状に形成された基幹部(11)と、基幹部(11)から左右対称に分岐延出された複数の棒(12)(以下、分岐棒(12)と称す)と、分岐棒(12)の先端に形成された安定台(13)と、安定台(13)上に形成された物品(14)からなり、これらが一体成型されている。
【0022】
基幹部(11)、分岐棒(12)、安定台(13)、物品(14)は全て透光性を有する同種類の合成樹脂(本実施形態ではアクリル樹脂)で成型されている。但し、物品(14)を成型する合成樹脂にのみ、顔料や染料等の着色剤が含まれている。つまり、基礎成型体(10)は物品(14)のみ有色透光性の合成樹脂を用いており、他の部分は無色透光性の合成樹脂を用いている。
物品(14)のみが有色透光性であることにより、キャラクター等の物品(14)が完成した透光性樹脂成型体の中に浮かんでいるように外部から見え、美観を向上させることができる。
さらに、物品(14)の成型に用いる合成樹脂に含まれる着色料としては、蛍光性を有するものが好ましい。これにより、物品(14)が光って見えるので、美観をさらに向上させることができる。
また、基礎成型体(10)において、物品(10)に用いられる合成樹脂の融点は、基幹部(11)、分岐棒(12)、安定台(13)に用いられる合成樹脂の融点よりも高い。融点については後に詳述する。
【0023】
本実施形態では、物品(14)のみ有色で他の部分が無色であり、且つ物品(14)に用いられる合成樹脂の融点が他の部分より高いため、基礎成型体(10)の成型には二色成型法を用いればよい。二色成型法とは、二つの成型装置を備える成型機により、色や種類等が異なる二種類の合成樹脂を、同時に又は順次成型する方法である。
なお、本実施形態では基礎成型体(10)は全て同種類の合成樹脂で成型されているが、物品(14)は他の部分(基幹部(11)、分岐棒(12)、安定台(13))と異なる種類の合成樹脂を用いてもよい。
【0024】
図2は基礎成型体(10)の一部を抽出した図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
物品(14)には、図2(b)に示すように、背面(図2(b)中の斜線部(141))に透光性を有する塗料が塗布される。
物品(14)は後述するように、金型のキャビティ内に配置され、キャビティ内に合成樹脂が射出される。そして当該射出された合成樹脂の熱により、塗料が物品(14)から剥離し、塗料と物品(14)の間に空気の薄層が形成される。完成した透光性樹脂成型体を外部から視認した場合、当該薄層に入射した光が反射・屈折することにより、当該薄膜がきらきら光って、従来にない美しい美観となる。
塗料が塗布された背面(141)は凹凸を有するほうが好ましい。それより、空気の薄層も凹凸を有し、外部からの光が空気の薄層で乱反射するので、薄膜をよりきらきらと光らせることができ、美観をより向上させることができる。
また、物品(14)に塗布される塗料が透光性を有することにより、後方からの光が通過するので、完成した透光性樹脂成型体を前方から見た際、空気の薄膜(背面(141))が確実にきらきら光って見える。
【0025】
本実施形態では、塗料として紫外線硬化型インキ(UVインキ)を用いているが、これに限定されず、アクリル塗料・ウレタン塗料・メラニン塗料等でもよい。但し、後の工程においてキャビティ内に合成樹脂を射出した際に、塗料が物品(14)から剥離するものである必要がある。
【0026】
また、物品(14)は、図2で示すように、前方の面に、透光性を有さない塗料で、キャラクターの目(142)(以下、非透光部(142)と称すこともある)が描かれる。目(142)を透光性を有さない塗料で物品(14)に描くことにより、目(非透光部)(142)のみ透光性を有さないことになるので、目(142)を強調させることができる。
なお、本実施形態では目を非透光部(142)としたが、これに限定されるわけでなく、特徴的な部分や目立たせたい部分を非透光部(142)とすればよい。
【0027】
次いで、基礎成型体(10)に用いられる合成樹脂の融点について説明する。
基礎成型体(10)において、基幹部(11)、分岐棒(12)、安定台(13)に用いられる合成樹脂の融点は、後述するキャビティ内に射出される透光性を有する合成樹脂の融点よりも高く、物品(14)に用いられる合成樹脂の融点はさらに高い。この融点は、後述するように、キャビティ内に合成樹脂を射出した時に、物品(14)は溶解せず、他の部分の表面(特に、安定台(13)の角部)のみが溶解する温度に設定されている。
基礎成型体(10)を構成する合成樹脂と、キャビティ内に射出される合成樹脂が共にアクリル樹脂である本実施形態の場合には、基礎成型体(10)における物品(14)に用いられるアクリル樹脂とその他の部分に用いられるアクリル樹脂の温度差は20℃以上であり、基礎成型体(10)の物品(14)以外の部分に用いられるアクリル樹脂とキャビティ内に射出されるアクリル樹脂との温度差も20℃以上であることが好ましい。具体的にはキャビティ内に射出されるアクリル樹脂の融点が240℃の場合、基幹部(11)、分岐棒(12)、安定台(13)には融点が260℃のアクリル樹脂を、物品(14)には融点が280℃のアクリル樹脂を使用することが好ましい。
【0028】
なお、分岐棒(12)の数は、図1では12個であるが、特に限定はされない。また、分岐棒(12)は、基幹部(11)の両側から分岐延出しているが、いずれか一方のみから分岐延出していてもよい。また、分岐棒(12)の数に応じて、基幹部(4)の形状も適宜変更することが可能である。
分岐棒(12)の断面形状としては四角形等の角形が好ましい。完成後の透光性樹脂成型体において、透光性樹脂成型体に入射する光の反射を抑え、分岐棒(12)を外部から視認できなくすることができるからである。
【0029】
安定台(13)は直方体形状であり、物品(14)の底面と相対する面の面積は、物品の底面と略同じ面積又は該底面よりも大きい面積を有することが好ましい。
安定台(13)を上記したような直方体形状とすることにより、完成後の透光性樹脂成型体に入射する光の反射を抑え、安定台(13)及び分岐棒(12)を外部から全く視認し得なくすることができるからである。
【0030】
次いで、基礎成型体(10)を用いた透光性樹脂成型体(30)の製造方法について説明する。
図3〜5は透光性樹脂成型体(30)の製造方法の製造工程の一部を説明するための図である。
図6は透光性樹脂成型体(30)を示す図であり、(a)が正面図、(b)が側面図である。
図7は物品(14)の背面(141)における一部(図6中(X))の拡大図である。
【0031】
まず、図1に示す基礎成型体(10)を二色成型法により成型する。
次いで、基礎成型体(10)の物品(14)の背面(141)に透光性を有する塗料を塗布する(図2(b)参照)。
そして、物品(14)の前面に、キャラクターの目(142)を、透光性を有さない塗料で描く(図2参照)。
【0032】
その後、物品(14)の数に対応する複数のキャビティ(21)を有する金型(20)を用いて、透光性樹脂成型体(30)を成型する。
具体的には、まず図3に示すように、金型(20)のキャビティ(21)内に物品(14)をそれぞれ配置する。このとき、分岐棒(12)の一部と安定台(13)をキャビティ(21)内に配置する。
キャビティ(21)の形状は本実施形態では円柱であるが、円柱に限定されるわけでなく、最終的に得ようとする透光性樹脂成型体(30)の形状に合わせて適宜設定することができる。
【0033】
その後、公知の射出成型機を用いて、金型(20)内に溶融合成樹脂を射出して、金型(20)に設けられたランナー(22)を介して各キャビティ(21)内に合成樹脂を充填する。このときの熱により、物品(14)の背面(141)に塗布された塗料が物品(14)から剥離し、塗料と物品(14)の間に空気の薄層が形成される。
【0034】
金型(20)内に射出される合成樹脂は、アクリル樹脂等の透光性を有する合成樹脂であって、基礎成型体(10)の材料と同種類の材料が使用される。これによって、金型(20)内に射出された合成樹脂と、基礎成型体(10)の物品(14)を除く部分(安定台(13)や分岐棒(12)の一部)を形成する合成樹脂とは、その境界が外観から判別できないように一体化される。
このとき、金型(20)内に射出される合成樹脂に、基幹部(11)、分岐棒(12)、安定台(13)を構成する合成樹脂よりも融点が20℃以上低い合成樹脂(具体的には、基礎成型体(10)が融点260℃のアクリル樹脂の場合は、融点差が20℃以上となる融点240℃以下のアクリル樹脂)を使用することによって、基礎成型体(10)はキャビティ内に射出された合成樹脂の熱により、基礎成型部(10)の物品(14)を除く部分の表面(安定台(13)の角部等)のみが溶解される。それにより、基礎成型体(10)の物品(14)を除く部分と、キャビティ内に射出された合成樹脂との境界をより確実に見えなくすることが可能となる。
また、物品(14)は金型(20)内に射出される合成樹脂より融点が40℃以上高いので、殆ど溶解されない。
但し、物品(14)に塗布する塗料が剥離しにくいもの(例えば耐熱塗料)である場合等は、金型(20)内に射出される合成樹脂の融点を、塗料を剥離する程度に高いものとする必要があり、それに応じて、基幹部(11)、分岐棒(12)、安定台(13)、物品(14)の融点も変更する必要がある。
【0035】
金型(20)内に射出された合成樹脂が冷却固化された後、金型(20)から成型体を取り出す。
図4は、金型(20)から取り出された成型体を示す正面図であり、取り出された成型体は、物品(14)の周囲に成型された合成樹脂成型体(15)(以下、外部樹脂成型体(15)と称す)を基礎成型体(10)の分岐棒(12)の先端に有するものである。
【0036】
そして、図5に示すように、成型体の分岐棒(12)を外部樹脂成型体(15)の底部にて切断する。
また、ランナー(22)とキャビティ(21)を繋ぐ通路にて固化された合成樹脂を外部樹脂成型体(15)の上部にて切断し、基礎成型体(10)から外部樹脂成(15)を取り外すことにより、図6に示すような、物品(14)を内蔵した透光性樹脂成型体(30)を得ることができる。
このとき、安定台(13)及び分岐棒(12)の一部が外部樹脂成型体(15)内に存在するが、安定台(13)及び分岐棒(12)を構成する合成樹脂と、外部樹脂成型体(15)を構成する合成樹脂が同種類の材料からなるので、これらは外部から視認されることがない。
加えて、安定台(13)及び分岐棒(12)を構成する合成樹脂と、外部樹脂成型体(15)を構成する合成樹脂を共にアクリル樹脂とすることで、両者の密着性が高まり泡の発生が防がれるとともに、両者の融点に20℃以上の差を設けることで、合成樹脂同士の境界をより確実に見えなくすることが可能となる。また、安定台(13)を設けることにより、透光性樹脂成型体(30)における物品(14)の下方に入射する光の反射が抑えられ、物品(14)の下方にある安定台(13)や分岐棒(12)が確実に見えなくなる。
【0037】
一方、物品(14)は有色であるため、物品(14)は外部樹脂成型体(15)中に浮いたように見える。
さらに、物品(14)に塗布した塗料が剥離するため、図7で示すように、物品(14)と塗料(C)の間に空気の薄層(Y)が存在することとなる。空気の薄層(Y)では外部からの光が反射・屈折し、従来にはないきらきらと光る美しい美観を生じさせることとなる。
また、物品(14)の背面(141)と外部樹脂成型体(15)の間には空気の薄層(Y)が存在するため、凹凸が他の部分よりはっきりと確認できる。つまり、背面(141)のみが凹凸を有するように見え、背面(141)の凹凸が印象的な美観となる。
また、透光性樹脂成型体(30)を正面から視認した場合、図6に示すように、有色である物品(14)が、無色の合成樹脂の中に浮かんで見え、その後ろに、きらきらと光る凹凸の背面(141)が見えるので、合成樹脂の中にきらきらと光る物品(14)が浮かんでいるように見える。
【0038】
透光性樹脂成型体(30)の形状は、円柱状である。円柱状にすることにより、前方から透光性樹脂成型体(30)を見たときに、背面(141)が光の屈折により、実際より大きく見える。そのため、物品(14)全体が大きく見え、迫力のある美観となり好ましい。また、実際より大きく見える背面(141)(空気の薄層(Y))はきらきらと光る美しい美観を有するため、物品(14)全体もより美しく見える。
【0039】
また、透光性樹脂成型体(30)の形状は、図8で示すように、下部(151)が円柱状で、上部(152)が前方を向いている傾斜面(152a)を有するような形状でもよい。このとき、少なくとも物品(14)と同じ高さの範囲は円柱状(下部(151))であることが好ましい。つまり、物品(14)の最上部が下部(151)の最上部より低い位置にあることが好ましい。
下部(151)が円柱状であることにより、前方から透光性樹脂成型体(30)を見た場合、背面(141)に存在する空気の薄層が光の屈折により実際の大きさより大きく見え、物品(14)全体も実際より大きく見える。さらに、傾斜面(152a)を有することにより、傾斜面(152a)からは、光の反射・屈折の関係で、前方からみた物品(14)とは異なった大きさ・角度で物品(14)が見えるので、見る角度によって、観者に異なった美観を与えることができる。
なお、透光性樹脂成型体(30)の形状は、金型(20)のキャビティ(21)の形状を変更することにより、変更することができる。
【0040】
また、透光性樹脂成型体(30)は、複数の物品(14)が設けられた基礎成型体(10)を用いて製造するため、一度に大量の製品を短時間で効率良く、しかも均一な品質で製造することができる。
【0041】
上記実施形態では、物品(14)を有色透光性としたが、無色透光性としてもよい。その場合、図9で示すように、透光性を有する塗料を塗布した背面(141)及び透光性を有さない塗料で描いた目(142)(非透光部(142))のみが視認できる。つまり、外部から視認したとき、凹凸を有するきらきら光る背面(141)と、透光性を有さない目(142)のみが視認できるようになり、透光性樹脂成型体(30)とは全く異なった美観を有するものとなる。
また、この場合、物品(14)に用いられる合成樹脂の融点は基礎成型体(10)の他の部分に用いられる合成樹脂と同じ(外部樹脂成型体(15)に用いられる合成樹脂の融点より20℃以上低い温度)とすることにより、物品(14)の背面(141)以外の部分を確実に見えなくすることもできる。
なお、図9では、目(142)を背面(141)に描いており、図9(b)では示していない。
【0042】
また、上記実施形態では、物品(14)の背面(141)に塗料を塗布したが、背面(141)に限定されず、物品(14)の表面の一部に塗布されていればよい。
また、上記実施形態では、物品(14)として梟の模型が示されているが、本発明における物品の種類は特に限定されるものではなく、他の動物や植物の模型、又は漫画等のキャラクター人形等、任意の物品を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る製造方法において使用される基礎成型体の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る製造方法において使用される基礎成型体の一部側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る製造方法の製造工程の一部を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る製造方法の製造工程の一部を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係る製造方法の製造工程の一部を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係る透光性樹脂成型体を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る物品の背面の一部拡大図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る透光性樹脂成型体を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る透光性樹脂成型体を示す図である。
【図10】透光性を有する合成樹脂成型体の内部に物品を入れた透光性樹脂成型体を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
11 基幹部
12 (分岐)棒
13 安定台
14 物品
20 金型
21 キャビティ
22 ランナー
15 外部樹脂成型体
30 透光性樹脂成型体
C 塗料
Y 空気の薄層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品と該物品を内蔵する外部樹脂成型体からなる透光性樹脂成型体の製造方法であって、
前記物品を透光性を有する合成樹脂で成型し、
前記物品の表面の一部に透光性を有する塗料を塗布し、
次いで金型のキャビティ内に前記物品を配置し、
しかる後、前記キャビティ内に透光性を有する合成樹脂を射出してキャビティ内に該合成樹脂を充填固化して前記物品の周囲に前記外部樹脂成型体を成型するとともに、
外部樹脂成型体を成型する際の熱で前記塗料を前記物品から剥離させることを特徴とする透光性樹脂成型体の製造方法。
【請求項2】
前記物品を有色の合成樹脂で成型することを特徴とする請求項1記載の透光性樹脂成型体の製造方法。
【請求項3】
前記外部樹脂成型体における前記物品と同じ高さの範囲を円柱状に成型することを特徴とする請求項1又は2記載の透光性樹脂成型体の製造方法。
【請求項4】
前記外部樹脂成型体に傾斜面を設けることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の透光性樹脂成型体の製造方法。
【請求項5】
前記物品の表面における前記塗料が塗布された部分が凹凸を有することを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の透光性樹脂成型体の製造方法。
【請求項6】
前記物品が、透光性を有する合成樹脂により成型された複数の分岐した棒の先端に一個ずつ一体成型されており、
前記物品の数に対応する複数のキャビティを有する金型の前記キャビティ内に前記塗料を塗布した後の物品を夫々配置し、
しかる後、キャビティ内に前記棒の材料と同種類の透光性を有する合成樹脂を射出して各キャビティ内に該合成樹脂を充填固化することで前記物品の周囲に前記外部樹脂成型体を成型し、
次いで金型から前記棒の先端に成型された前記外部樹脂成型体を取り出して前記棒を切断することにより前記外部樹脂成型体を分離することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の透光性樹脂成型体の製造方法。
【請求項7】
物品と該物品を内蔵する外部樹脂成型体からなる透光性樹脂成型体であって、
前記物品及び前記外部樹脂成型体が透光性を有する合成樹脂からなり、
前記物品の表面の一部に空気の薄層を介して透光性を有する塗料が存在することを特徴とする透光性樹脂成型体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−42552(P2010−42552A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207074(P2008−207074)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【特許番号】特許第4261614号(P4261614)
【特許公報発行日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(502121465)株式会社エポック協栄 (1)
【Fターム(参考)】