説明

通信システム、通信装置、および回線制御方法

【課題】 非同期データを伝送する場合でもデータの重複または抜けを生じさせることなく回線の切り替えが可能な通信システム、通信装置、および回線制御方法を提供する。
【解決手段】 上位装置1は、現用回線でデータを伝送している状態から予備回線へ切り替えるとき、切り替えタイミングを示す制御情報を切り替え元の現用回線と切り替え先の予備回線の双方のデータに挿入して送信する。下位装置2は、上位装置1により挿入された現用回線の制御情報の位置と上位装置1により挿入された予備回線の制御情報の位置を元にデータの順序を維持するようにタイミングを調整して現用回線から予備回線へ切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冗長を構成する複数の回線で装置間を接続する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冗長を有する複数の回線で装置間を接続した通信システムが用いられている(例えば、特許文献1参照)。冗長構成には1:1冗長、N:1冗長などがある。
【0003】
N:1冗長は、N本の現用回線に対して1本の予備回線を備える構成である。障害の発生した現用回線で伝送されていたデータを予備回線に切り替えて伝送することにより、障害時にもデータ伝送を継続することができる。以下、この切り替えを「予備切り替え」という。
【0004】
N:1冗長では複数の現用回線が1つの予備回線を共有するので、他の現用回線で更に重大な障害が発生したときや、切り替えの原因となった現用回線の障害が復旧したときには、予備回線に切り替えていたデータを元の現用回線へ戻すことも考えられる。以下、この切り替えを「復旧切り替え」という。
【0005】
また、一般に回線の切り替えでは、データを欠落させることなく無瞬断で切り替えを完了させることが望ましい。
【0006】
図21は、N:1冗長回線を備えた従来の通信システムに用いられる中継装置の構成を示すブロック図である。この中継装置は前後両方の回線にN:1冗長を備える構成である。
【0007】
図21を参照すると、中継装置は、切替部905、選択回路911〜91N、遅延回路921〜92N、主信号インタフェース931〜93N、バッファメモリ部941〜94N、位相調整部91S、遅延回路部92Y、主信号インタフェース部93Y、バッファメモリ部94Yを有している。
【0008】
現用系回線#1のデータは主信号として、遅延回路部921を経由して、また直接に選択回路部911に入力される。選択回路部911は、遅延回路部921を経由して入力したデータと、直接に入力したデータのいずれかを選択して出力する。通常、直接に入力したデータが選択される。選択回路部911からの主信号は主信号インタフェース931およびバッファメモリ部941を経由して切替部905に入力される。
【0009】
バッファメモリ部941へのデータの書き込みは主信号インタフェース931からの書き込み制御信号で制御される。また、バッファメモリ部941からのデータの読み出しは主信号インタフェース931からの読み出し制御信号で制御される。主信号インタフェース931は、主信号の基準フレームから書き込み制御信号および読み出し制御信号を生成する。
【0010】
同様に、現用系回線#Nのデータは主信号として、遅延回路部92Nを経由して、あるいは直接に選択回路部91Nに入力される。その主信号は、選択回路部91Nから主信号インタフェース93Nおよびバッファメモリ部94Nを経由して切替部905に入力される。
【0011】
また、予備系回線のデータは主信号として遅延回路部92Yに入力される。その主信号は、遅延回路部92Yから主信号インタフェース93Yおよびバッファメモリ部94Yを経由して切替部905に入力される。
【0012】
遅延回路部92Yは、本中継装置の前段(上位側)のいずれかの現用系回線を予備系回線に切り替える際に、位相調整部91Sからの指示に従って主信号のデータを遅延させる。
【0013】
位相調整部91Sは、予備系回線に切り替えようとする現用系回線の主信号に合わせて予備系の主信号を遅延させることにより、予備系のバッファメモリ部94Yにおいて現用系と同一タイミングでの読み出しができるようにする。
【0014】
バッファメモリ部94Yは、予備系回線に切り替えようとする現用系回線に対応する主信号インタフェースからの読み出し制御信号を用いることにより読み出しタイミングをその現用系のバッファメモリ部と一致させる。
【0015】
切替部905は、本中継装置の上位側の各回線からの主信号のデータを所望の後段(下位側)の回線に出力する。
【0016】
次に、一例として、上位側の現用系回線#1のデータを予備系回線に切り替えるときの動作について説明する。
【0017】
通常の状態として、上位側の現用系回線#1からの主信号は選択回路部911および遅延回路921に入力される。選択回路部911は現用系主信号を遅延させるか否か選択するが、ここでは遅延させないものとする。そのため、現用系主信号は主信号インタフェース部931に直接入力される。主信号インタフェース部931に入力された現用系主信号は主信号インタフェース部931からの書き込み制御信号によってバッファメモリ部941に一時的に記憶される。
【0018】
一方、予備系回線からの主信号は遅延回路部92Yに入力される。遅延回路部92Yは、切り替え対象となる現用系#1と同一タイミングで正常にバッファメモリ部94Yのデータを読み出すことができるように、位相調整部91Sからの制御により予備系回線からの主信号を遅延させる。
【0019】
遅延回路92Yにより遅延された予備系主信号は主信号インタフェース部93Yに入力される。主信号インタフェース部93Yは、入力された予備系主信号と共に書き込み制御信号をバッファメモリ部94Yに送り、予備系主信号のデータをバッファメモリ部94Yに一時的に記録する。
【0020】
バッファメモリ部941、94Yの各々に記憶された現用系主信号と予備系主信号とは、現用系#1の主信号インタフェース部931にて基準フレームから生成された読み出し制御信号によって同一タイミングで読み出される。同一のタイミングでバッファメモリ部941、94Yから読み出された現用系主信号と予備系主信号との間に時間差は無くなる。そのため、切り替え部905は、現用系#1の主信号と予備系主信号との間の無瞬断での切り替えを行うことができる。
【0021】
このような構成により、上位側の装置により現用系回線から予備系回線に切り替えて送信されたデータを下位側の装置にて無瞬断で切り替えて受信することを可能としている。
【特許文献1】特開平4−266233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、従来の中継装置は、基準フレームから生成された読み出し制御信号で2つのバッファメモリ部の読み出しタイミングを一致させている。そのため、フレーム同期した連続信号を伝送する回線では有効であるが、遅延の変動する非同期のデータがフレーム内に伝送される回線では、データの重複または抜けのない無瞬断の切り替えを保証することができない。
【0023】
本発明の目的は、非同期データを伝送する場合でもデータの重複または抜けを生じさせることなく回線の切り替えが可能な通信システム、通信装置、および回線制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明の通信システムは、現用回線と予備回線からなる冗長構成を装置間の接続に用いた通信システムであって、
現用回線でデータを伝送している状態から予備回線へ切り替えるとき、切り替えタイミングを示す制御情報を切り替え元の現用回線と切り替え先の予備回線の双方のデータに挿入して送信する上位装置と、
上位装置から現用回線で送信されたデータと予備回線で送信されたデータのいずれも受信可能であり、上位装置により挿入された現用回線の制御情報の位置と上位装置により挿入された予備回線の制御情報の位置を元にデータの順序を維持するようにタイミングを調整して現用回線から予備回線へ切り替える下位装置とを有している。
【0025】
本発明によれば、回線切り替えを行う際、上位装置が切り替えのタイミングを示す制御情報を切り替え元と切り替え先の双方の回線のデータに挿入し、下位装置が切り替え元の回線からの制御情報と切り替え先の回線からの制御情報の挿入された位置を元に、切り替え元の回線のデータと切り替え先の回線のデータとのタイミングを調整して順序を復元するので、非同期データが伝送されていてもデータの重複または抜けを生じさせることなく回線の切り替えを行うことができる。また、本発明によれば、上位装置と下位装置は、制御情報の送受信に予備回線をも用いるので、現用回線が障害でデータを疎通できない状態となっても互いに制御のための情報を共有することができ、信頼性の高い回線切り替えを行うことができる。
【0026】
また、上位装置は、現用回線の制御情報の前までのデータと、予備回線の制御情報の後のデータとが連続するように、現用回線のデータと予備回線のデータの対応する切り替え位置に制御情報をそれぞれ挿入し、
下位装置は、
現用回線からの制御情報が予備回線からの制御情報よりも先に届いた場合には、現用回線からの制御情報の前までで現用回線からのデータの取得を停止しておき、予備回線からの制御情報が届いたら予備回線からのデータの取得を開始し、
予備回線からの制御情報が現用回線からの制御情報よりも先に届いた場合には、予備回線の制御情報の後のデータを一時的に保持しておき、現用回線からの制御情報が届いたら、その制御情報の前までの現用回線からのデータの後に、保持しておいた予備回線のデータを接続することとしてもよい。
【0027】
また、前記上位装置は、前記現用回線の前記切り替え位置以降に前記制御情報を所定数連続して挿入し、
前記下位装置は、前記予備回線から前記制御情報を受信してから所定時間が経過しても前記現用回線から前記制御情報を受信できないとき、前記保持しておいたデータから始まる前記予備回線のデータに切り替えることとしてもよい。
【0028】
これによれば、制御情報の伝送が阻害される程に現用回線の品質が低下しても、制御情報の再送およびタイムアウトによる切り替えにより確実に切り替えを完了させることができる。
【0029】
また、前記予備回線への切り替えが行われている状態から元の前記現用回線に戻すための切り替えにおいて、
前記上位装置は、切り替えタイミングを示す制御情報を切り替え元の前記予備回線と切り替え先の前記現用回線の双方のデータに挿入して送信し、
前記下位装置は、前記上位装置により挿入された前記現用回線の前記制御情報の位置と前記上位装置により挿入された前記予備回線の前記制御情報の位置を元にデータの順序を維持するようにタイミングを調整して前記予備回線から前記現用回線へ切り替えることとしてもよい。
【0030】
また、前記下位装置は、前記現用回線のエラーチェックを行っており、検出したエラーレベルに基づいて生成した、前記現用回線の切り替えを指示する制御情報を、前記予備回線を介して前記上位装置に送信し、
前記上位装置は、前記下位装置から前記制御情報を受信すると、該制御情報にて指示された現用回線の切り替えを開始することとしてもよい。
【0031】
また、前記現用回線が複数で前記予備回線が1本であり、複数の前記現用回線と1本の前記予備回線でN:1冗長を構成しており、
前記下位装置は、複数の前記現用回線の各々のエラーチェックをしており、エラーレベルの最も高い現用回線を切り替え対象に選択することとしてもよい。
【0032】
これによれば、下位装置は、複数の現用回線の障害を検出すると、最もエラーレベルの高い回線を選択し、その回線の切り替えを上位装置に指示するので、最もエラーレベルの高い現用回線を予備回線に切り替えることができ、現用回線の運用を可能な限りの維持をすることができる。
【0033】
また、前記下位装置は、いずれかの現用回線を前記予備回線に切り替えている状態で、該現用回線のエラーレベルよりレベルの高いエラーが他の現用回線に発生すると、前記予備回線に切り替えている前記現用回線を元に戻した後に、レベルの高いエラーの発生した前記現用回線を前記予備回線に切り替えることとしてもよい。
【0034】
これによれば、下位装置は、ある現用回線が予備切り替えしている状態で、エラーレベルのより高い障害が他の現用回線に発生すると、エラーレベルの高い障害が起きている現用回線を予備切り替えの対象とするので、最もエラーレベルの高い現用回線を予備切り替えすることができ、現用回線の運用を可能な限りの維持をすることができる。
【0035】
また、前記上位装置は、前記現用回線のエラーレベルを示す制御情報を疑似的に生成して該現用回線を介して前記下位装置に送信し、
前記下位装置は、前記エラーレベルを示す制御情報を前記現用回線から受信すると、該現用回線の切り替えを指示する制御情報を前記予備回線を介して前記上位装置に送信することとしてもよい。
【0036】
これによれば、下位装置は、自身の検出したエラー状態に基づく切り替えに加え、上位装置からの制御情報の入力による切り替えも起動することができるので、各装置に大掛かりな特別装備を追加することなく遠隔での切り替え制御の実行が可能である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、回線切り替えを行う際、上位装置が切り替えのタイミングを示す制御情報を切り替え元と切り替え先の双方の回線のデータに挿入し、下位装置が切り替え元の回線からの制御情報と切り替え先の回線からの制御情報の挿入された位置を元に、切り替え元の回線のデータと切り替え先の回線のデータとのタイミングを調整して順序を復元するので、非同期データが伝送されていてもデータの重複または抜けを生じさせることなく回線の切り替えを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
図1は、本実施形態による通信システムの概略構成を示すブロック図である。図1を参照すると、本通信システムは上位中継装置1と下位中継装置2を有している。上位中継装置1と下位中継装置2の間はN本の現用系の回線#1〜#Nと1本の予備回線で接続されている。これらの回線はN:1冗長を構成しており、現用系のいずれかの回線に障害が発生すると、その回線で伝送されていたデータは予備回線に切り替わる。現用回線と予備回線のデータはフレームに非同期に伝送されており、本実施形態ではパケットにより伝送されるものとする。
【0040】
図2は、図1に示した上位中継装置および下位中継装置の構成を示すブロック図である。ここでは、上位中継装置1から下位中継装置2へ向かう方向のデータに関する構成が示されている。また、ここでは一例として現用系の回線は3本としてある。
【0041】
図2を参照すると、上位中継装置1は、出力切替部10〜12、選択機能部13、送信機能部14〜16、受信機能部17、および送信機能部18を有している。また、下位中継装置2は、受信機能部20〜23および送信機能部24を有している。
【0042】
上位中継装置1の出力切替部10は、通常時には、上位側(図中の左側)の回線#0のデータを受信し、送信機能部14へ受信データを送る。通常時とは予備回線への切り替えが行われていない状態を指す。
【0043】
また、出力切替部10は、受信機能部17から回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケットを受けると、受信データの出力先を選択機能部13に切り替え、その制御パケットを先頭として受信データを選択切替部13に送る。また、それと同時に出力切替部10は送信機能部14へ受信データではなく、回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケットを連続して送る。
【0044】
送信機能部14は、出力切替部10からのデータあるいは制御パケットを回線#0を介して下位中継装置2に送信する。
【0045】
出力切替部11、12は、それぞれ回線#1、#2に対応し、上述した出力切替部10と同様に動作する。送信機能部15、16はそれぞれ回線#1、#2に対応し、上述した送信機能部14と同様に動作する。
【0046】
受信機能部17は、下位中継装置2から予備回線を介してデータを受信する。受信データに制御パケットがあれば、受信機能部17は、その制御パケットを出力切替部10〜12へ送信する。
【0047】
選択機能部13は、出力切替部10〜12のいずれかからのデータを選択して送信機能部18に送る。出力切替部10〜12からのデータの先頭には「予備切り替え」を示す制御パケットがあるので、選択機能部13は、その制御パケットを検出したときその回線を選択し、それ以降その回線のデータを送信機能部18に送ればよい。なお、他の制御パケットを検出しても、選択機能部13は切り替えを行わない。
【0048】
送信機能部18は、選択機能部13からのデータを予備回線を介して下位中継装置2に送信する。
【0049】
下位中継装置2の受信機能部20は、上位中継装置1から上位側の回線#0を経由して受信したデータ、または予備回線を経由して受信機能部23で受信され、受信機能部23から送られてきたデータのいずれかを選択して下位側の回線#0へ出力する。通常時には、受信機能部20は、上位側の回線#0を経由して受信したデータを下位側の回線#0へ出力する。
【0050】
また、受信機能部20は、回線#0から受信したパケットに含まれているCRC符号(巡回冗長検査符号)によりデータエラーの有無を検査する。エラーを検出すると、「エラー状態」を示す制御パケットを生成し、送信機能部24に送る。
【0051】
また、受信機能部20は、予備回線の受信機能部23から回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケットまたは「復旧切り替え」を示す制御パケットを受けると、その制御パケットの指示に応じて回線選択状態を切り替える。例えば、受信機能部23から回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケットを受けると、受信機能部20は、予備回線の受信機能部23からのデータを下位側の回線#0に出力する。また、受信機能部23から回線#0の「復旧切り替え」を示す制御パケットを受けると、受信機能部20は、上位側の回線#0からのデータを下位側の回線#0に出力する。
【0052】
受信機能部21、22はそれぞれ回線#1、#2に対応し、上述した受信機能部20と同様に動作する。
【0053】
受信機能部23は、上位中継装置1から予備回線を介してデータを受信し、受信機能部20〜22に送る。なお、その際、受信機能部23は、制御パケットだけでなく、受信した全てのデータを受信機能部20〜22に送る。
【0054】
送信機能部24は、受信機能部20〜22からの、「エラー状態」を示す制御パケットに基づき回線#0〜#2の各々の回線品質を求め、それら回線品質から予備回線に切り替えるべき回線を判断する。例えば、最もエラーレベルの高い(回線品質の低い)回線を切り替えることとすればよい。いずれかの回線を予備回線に切り替えるべきであると判断すれば、送信機能部24は、その回線の「予備切り替え」を示す制御パケットを生成し、予備回線を介して上位中継装置1に送信する。
【0055】
また、送信機能部24は、予備切り替え中の回線以外の回線の回線品質が予備切り替え中の回線よりも劣化したことを検出すると、上位中継装置1に対して、予備切り替え中の回線の「復旧切り替え」を示す制御パケットを送信した後に、品質の劣化した回線の「予備切り替え」を示す制御パケットを送信する。
【0056】
図3は、図2に示した上位中継装置1の出力切替部10と下位中継装置2の受信機能部20の構成を示すブロック図である。図3を参照すると、上位中継装置1の出力切替部10は出力制御部101およびフレーム検出部102を有している。下位中継装置2の受信機能部20はERR(エラー)検出部201、選択部202、およびフレーム生成部203を有している。
【0057】
フレーム検出部102は、受信機能部17から回線#0に関する制御パケットを受信すると、その制御パケットを出力制御部101に送る。
【0058】
出力制御部101は、通常時には、上位側の回線#0からのデータを送信機能部14へ送っている。しかし、フレーム検出部102から「予備切り替え」を示す制御パケットを受けると、出力制御部101は、上位側の回線#0からのデータに含まれるパケットの間に「予備切り替え」を示す制御パケットを挿入し、その制御パケット以降のデータを選択機能部13に送る。また、それと同時に、出力制御部101は、送信機能部14には、制御パケット以降のデータを送らず、「予備切り替え」を示す制御パケットを連続して送る。
【0059】
また、回線#0の予備切り替え中に、回線#0の「復旧切り替え」を示す制御パケットを受けると、出力制御部101は、上位側の回線#0からのデータに含まれるパケットの間に「復旧切り替え」を示す制御パケットを挿入し、その制御パケット以降のデータを送信機能部14へ送る。また、それと同時に、出力制御部101は、選択機能部13には、制御パケット以降のデータを送らず、「復旧切り替え」を示す制御パケットを1つだけ送る。
【0060】
下位中継装置2のERR検出部201は、上位中継装置1から回線#0を介して受信したデータのエラーをCRCにより検査する。そして、エラーを検出すると、ERR検出部201は、その旨をフレーム生成部203に通知する。また、ERR検出部203はCRCにより訂正可能なビット誤りを修復し、データを選択部202に転送する。
【0061】
フレーム生成部203は、ERR検出部201からの通知に基づきエラーレベルを求め、そのエラーレベルに応じて「エラー状態」を示す制御パケットを生成し、送信機能部24に送る。レラーレベルは、例えば、エラー検出回数の平均値を定期的に算出することにより求めることができる。
【0062】
選択部202は、上位中継装置1から回線#0およびERR検出部201を経由して受信したデータ、または予備回線および受信機能部23を経由して受信したデータのいずれかを選択して出力する。その際、選択部202は、受信機能部23から回線#0の制御パケットを受けると、その制御パケットの内容に従って選択を行う。例えば、「予備切り替え」を示す制御パケットを受けると、選択部202は、予備回線および受信機能部23を経由したデータを選択する。また、「復旧切り替え」を示す制御パケットを受けると、選択部202は、回線#0およびERR検出部201を経由したデータを選択する。
【0063】
「予備切り替え」時の選択部202の詳細な動作について説明する。
【0064】
「予備切り替え」を示す制御パケットは、現用の回線#0と予備回線の双方から送られてくる。
【0065】
回線#0およびERR検出部201を経由した「予備切り替え」を示す制御パケットが、予備回線および受信機能部23を経由した制御パケットよりも先に選択部202に到着したとき、選択部202は、ERR検出部201からの制御パケットを全て破棄し、受信機能部23から制御パケットを受けた後、その制御パケットを除いたデータを下位側の回線#0へ出力する。
【0066】
一方、予備回線および受信機能部23を経由した「予備切り替え」を示す制御パケットが、回線#0およびERR検出部201を経由した制御パケットよりも先に選択部202に到着したとき、選択部202は、受信機能部23からの制御パケットを除くそれ以降のデータを一時的に保持しておき、ERR検出部201からの制御パケットが到着した後に、保持しておいたデータを下位側の回線#0に出力する。
【0067】
なお、選択部202は、受信機能部23から制御パケットを受信すると、そのパケットに記録されたタイムアウト時間のタイマーのカウントを開始する。ERR検出部201からの制御パケットが到着しない状態でタイマーがタイムアウトすると、選択部202は、一時的に保持しておいたデータを下位側の回線#0に出力し始める。
【0068】
「復旧切り替え」時の選択部202の詳細な動作について説明する。
【0069】
「復旧切り替え」を示す制御パケットも、現用の回線#0と予備回線の双方から送られてくる。
【0070】
回線#0およびERR検出部201を経由した「復旧切り替え」を示す制御パケットが、予備回線および受信機能部23を経由した制御パケットよりも先に選択部202に到着したとき、選択部202は、その制御パケットを除いたデータを一時的に保持することで滞留させる。そして、受信機能部23からの制御パケットを受けた後、選択部202は、保持しておいたデータを下位側の回線#0に出力し始める。
【0071】
一方、予備回線および受信機能部23を経由した「復旧切り替え」を示す制御パケットが、回線#0およびERR検出部201を経由した制御パケットよりも先に選択部202に到着したとき、選択部202は、ERR検出部201からの制御パケットを受けた後、その制御パケットを除くそれ以降のデータを下位側の回線#0に出力する。
【0072】
次に、本実施形態の通信システムにおいて、現用の回線#0で伝送するデータを予備回線へ切り替える際の動作について説明する。
【0073】
図4は、本実施形態による通信システムにおける予備切り替え時の動作を示すフローチャートである。図4を参照すると、上位中継装置1と下位中継装置2の回線#0に障害が発生し、通信データにエラーが生じると(ステップA1)、下位中継装置2の受信機能部20内にあるERR検出部201がCRCによりエラーを検出する(ステップA2)。エラーを検出したERR検出部201はその旨をフレーム生成部203へ通知する。
【0074】
通知を受けたフレーム生成部203は、「エラー状態」を示す制御パケットを生成し(ステップA3)、送信機能部24へ送る。
【0075】
図5は、本実施形態における制御パケットの実装例を示す図である。図5を参照すると、制御パケットには、宛先情報を含むヘッダ情報部301、有意情報を含むペイロード情報部302、およびエラー検出/訂正のためのCRC情報部303がある。
【0076】
ヘッダ情報部301にはパケットの種別を示す識別ビットがある。識別ビットは、“0”で転送パケットを示し、“1”で制御パケットを示す。
【0077】
また、ペイロード情報部302には、回線番号を示す回線番号ビットや制御パケットの種別を示す種別ビットの他に情報ビット304がある。回線番号ビットは、“00”で回線#0を示し、“01”で回線#1を示し、“10”で回線#2を示す。種別ビットは、“01”で予備切り替えを示し、“10”で復旧切り替えを示し、“00”でエラー状態等の通知を示す。フレーム生成部203が生成する、回線#0の「エラー状態」を示す制御パケットは、識別ビットが“1”、回線番号が“00”、種別ビットが“00”となる。また、情報ビット304には、図6のように「エラーレベル」を示す情報が格納される。エラーレベルはエラー検出数の平均値を示し、例えば、1秒間当たりのCRCエラー検出数である。
【0078】
図4の説明に戻り、送信機能部24は、他の回線#1〜#2とエラーレベルを比較し、回線#0の予備切り替えが必要か否か判定する(ステップA4)。予備切り替えが不要であれば、ステップA2の処理に戻る。
【0079】
予備切り替えが必要と判断すると、送信機能部24は、回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケットを生成し(ステップA5)、予備回線を介して上位中継装置1に送信する。回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケットは、図5において、識別ビット“1”、回線番号ビットが“00”、種別ビットが“01”となる。また、情報ビット304には、図7のように「タイムアウト時間」を示す情報が格納される。タイムアウト時間は、後述する選択部202の切り替え動作において待ち時間の最大値となる。
【0080】
上位中継装置1の受信機能部17は制御パケットを受信すると、その制御パケットを出力切替部10〜12へ転送する(ステップA6)。回線#1の出力切替部11と回線#2の出力切替部12は、回線番号ビットが自身の回線番号と一致しないため、この制御パケットを無視する。
【0081】
出力切替部10内のフレーム検出部102は、回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケットを検出すると(ステップA7)、その制御パケットを出力制御部101へ送る。回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケットを受けた出力制御部101は、所定の予備切り替え動作を行う。
【0082】
図8は、予備切り替え動作について説明するための図である。図8を参照すると、上から、出力制御部101へ入力される回線#0のデータ、出力制御部101から選択機能部13に送られるデータ、出力制御部101から送信機能部14に送られるデータが示されている。
【0083】
出力制御部101は、上位側の回線#0からのデータを送信機能部14へ出力していたが、回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケットを受けると、それ以降のデータを選択機能部13に送るようになる。図8では、データ401までは送信機能部14に送られ、データ402以降は選択機能部13に送られている。その際、出力制御部101は、選択機能部13に対しては、データ402の前に、回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケット405を挿入し、送信機能部14に対しては、データ401の後に、回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケットを連続送信する。
【0084】
図4の説明に戻り、選択機能部13は、出力制御部101から回線#0の「予備切り替え」を示す制御パケット(図8の制御パケット405)を受けると、回線#0の出力制御部101からの制御パケット405およびそれ以降のデータを選択して送信機能部18に送る(ステップA9)。送信機能部18は、選択機能部13からのデータを予備回線へ出力する。
【0085】
以上のようにして上位中継装置1の切り替えが行われる。以下、下位中継装置2の切り替え動作について説明する。
【0086】
図8の送信機能部14に送られたデータは回線#0を経由して下位中継装置2に送られ、下位中継装置2においてERR検出部201を経由して選択部202に到達する。また、図8の選択信機能部13に送られたデータは送信機能部18から予備回線を経由して下位中継装置2に送られ、下位中継装置2において受信機能部23を経由して選択部202に到達する。どちらの制御パケットが先に到達するかにより下位中継装置2の切り替え動作が異なる。
【0087】
図9は、回線#0の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の予備切り替え動作を示すフローチャートである。図10は、回線#0の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の復旧切り替え動作を説明するための図である。
【0088】
図9を参照すると、選択部202は回線#0から制御パケット406を受信すると、データ401を境に回線#0からのデータの転送を停止する(ステップB1)。それ以降も回線#0からは制御パケットが入力されるが、選択部202は、それらを下位側に転送しない。図10を参照すると、上から、選択部202が回線#0を経由して受信したデータ、選択部202が予備回線を経由して受信したデータ、選択部202が下位側に転送するデータが示されている。回線#0からのデータ401は下位側に転送されるが、制御パケット406以降は転送されない。
【0089】
図9に戻り、次に、選択部202は、予備回線から制御パケット405を受信すると、それ以降、データ402を先頭に予備回線からのデータを下位側に転送し始める(ステップB2)。図10を参照すると、予備回線を経由して受信された制御パケット405に続くデータ402、403は下位側に転送される。これにより下位中継装置2の予備切り替え動作が完了する(ステップB3)。
【0090】
図11は、予備回線の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の予備切り替え動作を示すフローチャートである。図12は、予備回線の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の予備切り替え動作を説明するための図である。
【0091】
図11を参照すると、選択部202は、予備回線から制御パケット405を受信すると、それ以降のデータ402〜404を一時的に保持しつつ、タイマーのカウントを開始する(ステップC1)。図12を参照すると、上から、選択部202が回線#0を経由して受信したデータ、選択部202が予備回線を経由して受信したデータ、選択部202が下位側に転送するデータが示されている。制御パケット405が制御パケット406よりも先に到達しているので、選択部202は、データ402〜404を一時的に保持しておく。
【0092】
次に、選択部202は、回線#0から制御パケットが受信されたか否か判定する(ステップC2)。回線#0から制御パケット406が受信されれば、選択部202は、回線#0からのデータの転送を停止し、保持しておいた予備回線からのデータ402〜404を下位側に転送し始め(ステップC3)、予備切り替えを完了する(ステップC4)。
【0093】
ステップC2において、回線#0からの制御パケット406が受信されなければ、選択部202は、次に、タイマーがタイムアウトしているか否か判定する(ステップC5)。回線#0のエラーが増大した場合、制御パケット406が正常に伝送されず欠落することが考えられる。それでも確実に切り替えを完了させるために、上位中継装置1の出力制御部101は同じ制御パケットを連続送信し、また下位中継装置2はタイマーによる判定を行っている。
【0094】
タイマーがタイムアウトしていれば、選択部202は、回線#0からのデータの転送を停止し、保持しておいた予備回線からのデータ402〜404を下位側に転送し始め(ステップC6)、予備切り替えを完了する(ステップC4)。ステップC5においてタイマーがタイムアウトしていなければ、選択部202はステップC2の処理に戻る。なお、回線#1の受信機能部21と回線#2の受信機能部22も制御パケット405を受信するが、回線番号ビットが自身の回線番号と一致しないため無視する。
【0095】
次に、本実施形態の通信システムにおいて、回線#0が予備回線に切り替えられている状態で、回線#1のエラーレベルが回線#0よりも高くなったときの動作について説明する。その場合、本実施形態の通信システムは、回線#0の復旧切り替えを行った後に、回線#1の予備切り替えを行う。
【0096】
図13は、本実施形態による通信システムにおける予備切り替え対象の回線を変更する時の動作を示すフローチャートである。初期の状態として、回線#0を予備回線へ切り替えて運用中であるとする(ステップD1)。その状態で、上位中継装置1と下位中継装置2の間の回線#1に障害が発生してデータがエラーすると、下位中継装置2の受信機能部21はCRCによりそのエラーを検出する(ステップD2)。
【0097】
受信機能部21は、回線#1の「エラー状態」を示す制御パケットを生成し、それによりエラーレベルを送信機能部24へ通知する(ステップD3)。
【0098】
制御パケットを受けた送信機能部24は、回線#0のエラーレベルと回線#1のエラーレベルを比較し、予備回線への切り替え対象を回線#1に変更するか否か判定する(ステップD4)。回線#0を予備切り替えしたままでよければステップD2の処理に戻る。
【0099】
回線#1のエラーレベルが回線#0よりも高ければ、送信機能部24は、切り替え対象を変更すると判断し、回線#0の「復旧切り替え」を示す制御パケットを送出し、その後回線#1の「予備切り替え」を示す制御パケットを送出する(ステップD5)。
【0100】
上位中継装置1の受信機能部17は、予備回線を経由して受信した制御パケットを出力切替部10のフレーム検出部102に転送する(ステップD6)。
【0101】
予備回線を経由して、回線#0の「復旧切り替え」を示す制御パケットを受けた出力切替部10は、回線#0の復旧切り替えの動作を行う(ステップD7)。また、予備回線を経由して、回線#1の「予備切り替え」を示す制御パケットを受けた出力切替部11は、回線#1の予備切り替えの動作を行う(ステップD8)。
【0102】
図14は、図13の動作において制御パケットを受信した回線#0の出力切替部と回線#1の出力切替部の動作を説明するための図である。図14を参照すると、上から、回線#0から出力切替部10に入力されるデータ、出力切替部10から選択機能部13に送られるデータ、出力切替部10から送信機能部14に送られるデータ、回線#1から出力切替部11に入力されるデータ、出力切替部11から選択機能部13に送られるデータ、出力切替部11から送信機能部15に送られるデータ、選択機能部13から送信機能部18に送られるデータが示されている。
【0103】
出力切替部10は、回線#0の「復旧切り替え」を示す制御パケットを受信機能部17から受けると、選択機能部13に対して、データ501の後に「復旧切り替え」を示す制御パケット505を送出してデータの送出を停止する。また、出力切替部10は、送信機能部14に対して、「復旧切り替え」を示す制御パケット506を送出し、その後から回線#0のデータ502〜504を転送し始める。
【0104】
出力切替部11は、回線#1の「予備切り替え」を示す制御パケットを受信機能部17から受けると、選択機能部13に対して、「予備切り替え」を示す制御パケット605を送出し、その後から回線#1のデータ603〜604を転送し始める。また、出力切替部11は、送信機能部15に対して、データ602の後に「予備切り替え」を示す制御パケット606を1つ送出する。
【0105】
これらの動作の結果、選択機能部13は、回線#0からのデータについてはデータ501で転送を停止し、回線#1のデータについてデータ603から転送を開始することとなる(ステップD9)。
【0106】
下位中継装置2の回線#1における受信機能部21の予備切り替え動作は、図9および図11に示したフローチャートと同じである。
【0107】
一方、図14の送信機能部14に送られたデータは回線#0を経由して下位中継装置2に送られ、下位中継装置2において選択部202に到達する。また、図14の選択信機能部13に送られたデータは送信機能部18から予備回線を経由して下位中継装置2に送られ、下位中継装置2において受信機能部23を経由して選択部202に到達する。どちらの制御パケットが先に到達するかにより下位中継装置2の復旧切り替え動作が異なる。
【0108】
図15は、回線#0の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の復旧切り替え動作を示すフローチャートである。図16は、回線#0の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の復旧切り替え動作を説明するための図である。
【0109】
図15を参照すると、選択部202は回線#0から制御パケット506を受信すると、データ502以降のデータを一時的に保持することで滞留させる(ステップE1)。図16を参照すると、上から、選択部202が予備回線を経由して受信したデータ、選択部202が回線#0を経由して受信したデータ、選択部202が下位側に転送するデータが示されている。制御パケット506を受信した以降のデータ502〜504はすぐには下流側に転送されていない。
【0110】
図15に戻り、次に、選択部202は、予備回線から制御パケット505を受信すると、それ以降の予備回線からのデータの転送を停止し、保持しておいたデータ502〜504から回線#0のデータを下位側に転送し始める(ステップE2)。図16を参照すると、制御パケット505の受信により予備回線のデータの転送がデータ501で停止し、その後は回線#1からのデータ502〜504が転送されている。これにより下位中継装置2の復旧切り替え動作が完了する(ステップE3)。
【0111】
図17は、予備回線の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の復旧切り替え動作を示すフローチャートである。図18は、予備回線の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の復旧切り替え動作を説明するための図である。
【0112】
図17を参照すると、選択部202は、予備回線から制御パケット505を受信すると、それ以降のデータの転送を停止し、タイマーのカウントを開始する(ステップF1)。図18を参照すると、上から、選択部202が予備回線を経由して受信したデータ、選択部202が回線#1を経由して受信したデータ、選択部202が下位側に転送するデータが示されている。制御パケット505が制御パケット506よりも先に到達しているので、選択部202は、予備回線からのデータの転送を停止している。
【0113】
次に、選択部202は、回線#0から制御パケットが受信されたか否か判定する(ステップF2)。回線#0から制御パケット506が受信されれば、選択部202は、回線か#1らのデータ502〜503を下位側に転送し始め(ステップF3)、予備切り替えを完了する(ステップF4)。
【0114】
ステップF2において、回線#0からの制御パケット506が受信されなければ、選択部202は、次に、タイマーがタイムアウトしているか否か判定する(ステップF5)。
【0115】
タイマーがタイムアウトしていれば、選択部202は、回線#0からのデータの転送を開始し(ステップF6)、復旧切り替えを完了する(ステップF4)。ステップF5においてタイマーがタイムアウトしていなければ、選択部202はステップF2の処理に戻る。なお、回線#1の受信機能部21と回線#2の受信機能部22も制御パケット405を受信するが、回線番号ビットが自身の回線番号と一致しないため無視する。
【0116】
以上説明したように、本実施形態によれば、回線切り替えを行う際、上位中継装置1が切り替えのタイミングを示す制御パケットを切り替え元と切り替え先の双方の回線のデータに挿入する。そして、下位中継装置2が切り替え元の回線からの制御パケットと切り替え先の回線からの制御パケットの挿入された位置を元に、切り替え元の回線のデータと切り替え先の回線のデータとのタイミングを調整して順序を復元する。そのため、非同期データが伝送されていてもデータの重複または抜けを生じさせることなく回線の切り替えを行うことができる。
【0117】
また、本実施形態によれば、上位中継装置1と下位中継装置2は、予備回線をも用いて制御パケットを送受信する。そのため、現用回線が障害でデータを疎通できない状態となっても互いに制御のための情報を共有することができ、信頼性の高い回線切り替えを行うことができる。
【0118】
また、本実施形態によれば、下位中継装置2は、複数の現用回線の障害を検出すると、最もエラーレベルの高い回線を選択し、その回線の予備切り替えを上位中継装置1に指示する。そのため、最もエラーレベルの高い現用回線を予備回線に切り替えることができ、現用回線の運用を可能な限りの維持をすることができる。
【0119】
また、本実施形態によれば、下位中継装置2は、ある現用回線が予備切り替えしている状態で、エラーレベルのより高い障害が他の現用回線に発生すると、エラーレベルの高い障害が起きている現用回線を予備切り替えの対象とする。そのため、最もエラーレベルの高い現用回線を予備切り替えすることができ、現用回線の運用を可能な限りの維持をすることができる。
【0120】
本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態の通信システムは図1および図2に示したものと同様の構成である。
【0121】
図19は、他の実施形態の上位中継装置1の出力切替部10と下位中継装置2の受信機能部20の構成を示すブロック図である。図19によれば、図3に示した構成と同様に、上位中継装置1の出力切替部10は出力制御部101およびフレーム検出部102を有している。また、下位中継装置2の受信機能部20はERR検出部201、選択部202、およびフレーム生成部203を有している。
【0122】
ただし、図19では、現用の回線#0からのデータをERR検出部201を経由せず直接にフレーム生成部203に入力する接続路204がある点で図3と異なる。
【0123】
図20は、他の実施形態のフレーム生成部203の構成を示すブロック図である。図20を参照すると、フレーム生成部203は、通知パケット生成部211および通知パケット検出部212を有している。
【0124】
通知パケット生成部211は、ERR検出部201からの通知に基づきエラーレベルを求め、そのエラーレベルに応じた「エラー状態」を示す制御パケットを生成し、通知パケット検出回路212に送る。
【0125】
通知パケット検出回路212は、通知パケット生成回路211で生成された制御パケットを送信機能部24に送ることに加え、接続路204からのデータより制御パケットを検出し、検出した制御パケットも送信機能部24に送る。
【0126】
これにより、下位中継装置2は、自身の検出したエラー状態に基づく切り替えに加え、上位中継装置1からの「エラー状態」を示す制御パケットの入力による切り替えも起動することができる。これを利用して遠隔からの切り替え制御の実行が可能となる。
【0127】
なお、上位中継装置1は、例えば、「エラー状態」を示す制御パケットを疑似的に生成し送出する機能を送信機能部14に備えることとしてもよい。
【0128】
また、上位中継装置1からの制御より下位中継装置2にて発生した障害による切り替えを優先させたい場合には、上位中継装置1からの「エラー状態」を示す制御パケットのエラーレベルを切り替えの発生する最低レベルとしておけばよい。そうすれば、他の現用回線の障害による予備切り替えが行われていれば、上位中継装置1からの制御で障害の起きている回線の復旧切り替えが行われることはない。また、上位中継装置1からの制御で予備切り替えが行われていても、他のいずれかの回線に障害が発生すれば、障害回線を優先的に予備切り替えすることができる。
【0129】
また、予備切り替えの起きた現用回線の障害を修復した後に、上位中継装置1から「復旧切り替え」を示す制御パケットを挿入することで、遠隔から復旧切り替えを起動することができる。
【0130】
本実施形態によれば、上位中継装置1からデータに挿入された制御パケットに反応して下位中継装置2が動作する構成なので、各装置に大掛かりな特別装備を追加することなく遠隔での切り替え制御の実行が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本実施形態による通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した上位中継装置および下位中継装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した上位中継装置の出力切替部と下位中継装置の受信機能部の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態による通信システムにおける予備切り替え時の動作を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態における制御パケットの実装例を示す図である。
【図6】「エラー状態」を示す制御パケットの情報ビットを示す図である。
【図7】「予備切り替え」を示す制御パケットの情報ビットを示す図である。
【図8】予備切り替え動作について説明するための図である。
【図9】回線#0の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の予備切り替え動作を示すフローチャートである。
【図10】回線#0の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の復旧切り替え動作を説明するための図である。
【図11】予備回線の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の予備切り替え動作を示すフローチャートである。
【図12】予備回線の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の予備切り替え動作を説明するための図である。
【図13】本実施形態による通信システムにおける予備切り替え対象の回線を変更する時の動作を示すフローチャートである。
【図14】図13の動作において制御パケットを受信した回線#0の出力切替部と回線#1の出力切替部の動作を説明するための図である。
【図15】回線#0の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の復旧切り替え動作を示すフローチャートである。
【図16】回線#0の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の復旧切り替え動作を説明するための図である。
【図17】予備回線の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の復旧切り替え動作を示すフローチャートである。
【図18】予備回線の制御パケットが先に到達した場合の下位中継装置の復旧切り替え動作を説明するための図である。
【図19】他の実施形態の上位中継装置の出力切替部と下位中継装置の受信機能部の構成を示すブロック図である。
【図20】他の実施形態のフレーム生成部203の構成を示すブロック図である。
【図21】N:1冗長回線を備えた従来の通信システムに用いられる中継装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0132】
1 上位中継装置
2 下位中継装置
10〜12 出力切替部
13 選択機能部
14〜16 送信機能部
17 受信機能部
18 送信機能部
20〜23 受信機能部
24 送信機能部
101 出力制御部
102 フレーム検出部
201 ERR(エラー)検出部
202 選択部
203 フレーム生成部
204 接続路
211 通知パケット生成部
212 通知パケット検出部
301 ヘッダ情報部
302 ペイロード情報部
303 CRC情報部
304 情報ビット
401〜404、501〜504、601〜604 データ
405、406、505、506、605、606 制御パケット
A1〜A9、B1〜B3、C1〜C6、D1〜D9、E1〜E3、F1〜F4 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現用回線と予備回線からなる冗長構成を装置間の接続に用いた通信システムであって、
前記現用回線でデータを伝送している状態から前記予備回線へ切り替えるとき、切り替えタイミングを示す制御情報を切り替え元の前記現用回線と切り替え先の前記予備回線の双方のデータに挿入して送信する上位装置と、
前記上位装置から前記現用回線で送信されたデータと前記予備回線で送信されたデータのいずれも受信可能であり、前記上位装置により挿入された前記現用回線の前記制御情報の位置と前記上位装置により挿入された前記予備回線の前記制御情報の位置を元にデータの順序を維持するようにタイミングを調整して前記現用回線から前記予備回線へ切り替える下位装置とを有する通信システム。
【請求項2】
前記上位装置は、前記現用回線の前記制御情報の前までのデータと、前記予備回線の前記制御情報の後のデータとが連続するように、前記現用回線のデータと前記予備回線のデータの対応する切り替え位置に前記制御情報をそれぞれ挿入し、
前記下位装置は、
前記現用回線からの前記制御情報が前記予備回線からの前記制御情報よりも先に届いた場合には、前記現用回線からの前記制御情報の前までで前記現用回線からのデータの取得を停止しておき、前記予備回線からの前記制御情報が届いたら該予備回線からのデータの取得を開始し、
前記予備回線からの前記制御情報が前記現用回線からの前記制御情報よりも先に届いた場合には、前記予備回線の前記制御情報の後のデータを一時的に保持しておき、前記現用回線からの前記制御情報が届いたら該制御情報の前までの前記現用回線からのデータの後に、保持しておいた前記予備回線のデータを接続する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記上位装置は、前記現用回線の前記切り替え位置以降に前記制御情報を所定数連続して挿入し、
前記下位装置は、前記予備回線から前記制御情報を受信してから所定時間が経過しても前記現用回線から前記制御情報を受信できないとき、前記保持しておいたデータから始まる前記予備回線のデータに切り替える、
請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記予備回線への切り替えが行われている状態から元の前記現用回線に戻すための切り替えにおいて、
前記上位装置は、切り替えタイミングを示す制御情報を切り替え元の前記予備回線と切り替え先の前記現用回線の双方のデータに挿入して送信し、
前記下位装置は、前記上位装置により挿入された前記現用回線の前記制御情報の位置と前記上位装置により挿入された前記予備回線の前記制御情報の位置を元にデータの順序を維持するようにタイミングを調整して前記予備回線から前記現用回線へ切り替える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記下位装置は、前記現用回線のエラーチェックを行っており、検出したエラーレベルに基づいて生成した、前記現用回線の切り替えを指示する制御情報を、前記予備回線を介して前記上位装置に送信し、
前記上位装置は、前記下位装置から前記制御情報を受信すると、該制御情報にて指示された現用回線の切り替えを開始する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記現用回線が複数で前記予備回線が1本であり、複数の前記現用回線と1本の前記予備回線でN:1冗長を構成しており、
前記下位装置は、複数の前記現用回線の各々のエラーチェックをしており、エラーレベルの最も高い現用回線を切り替え対象に選択する、
請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記下位装置は、いずれかの現用回線を前記予備回線に切り替えている状態で、該現用回線のエラーレベルよりレベルの高いエラーが他の現用回線に発生すると、前記予備回線に切り替えている前記現用回線を元に戻した後に、レベルの高いエラーの発生した前記現用回線を前記予備回線に切り替える、請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記上位装置は、前記現用回線のエラーレベルを示す制御情報を疑似的に生成して該現用回線を介して前記下位装置に送信し、
前記下位装置は、前記エラーレベルを示す制御情報を前記現用回線から受信すると、該現用回線の切り替えを指示する制御情報を前記予備回線を介して前記上位装置に送信する、
請求項5〜7のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項9】
現用回線と予備回線からなる冗長構成を上位装置と下位装置の間の接続に用いた通信システムにおいて上位装置として用いられる通信装置であって、
前記現用回線でデータを伝送している状態から前記予備回線へ切り替えるとき、切り替えタイミング前には前記現用回線向けに、前記切り替えタイミング後には前記予備回線向けにデータを切り替え、前記切り替えタイミングを示す制御情報を切り替え元の前記現用回線と切り替え先の前記予備回線の双方のデータに挿入する出力切替部と、
前記出力切替部からの前記現用回線向けのデータを前記現用回線を介して前記下位装置に送信する第1の送信機能部と、
前記出力切替部からの前記予備回線向けのデータを前記予備回線を介して前記下位装置に送信する第2の送信機能部と、
を有する通信装置。
【請求項10】
現用回線と予備回線からなる冗長構成を上位装置と下位装置の間の接続に用いた通信システムにおいて下位装置として用いられる通信装置であって、
前記上位装置から前記予備回線で送信されたデータを受信する第1の受信機能部と、
前記上位装置から前記現用回線で送信されたデータを受信し、前記第1の受信機能部で受信されたデータを受け、前記上位装置により切り替え元の前記現用回線と切り替え先の前記予備回線の双方のデータに挿入された切り替えタイミングを示す制御情報の双方の位置を元にデータの順序を維持するようにタイミングを調整して前記現用回線から前記予備回線へ切り替える第2の受信機能部と、
を有する通信装置。
【請求項11】
現用回線と予備回線からなる冗長を上位装置と下位装置の間の接続に用いた通信システムにおける回線制御方法であって、
前記現用回線でデータを伝送している状態から前記予備回線へ切り替えるとき、前記上位装置が、切り替えタイミングを示す制御情報を切り替え元の前記現用回線と切り替え先の前記予備回線の双方のデータに挿入して前記下位装置に送信するステップと、
前記下位装置が、前記上位装置により挿入された前記現用回線の前記制御情報の位置と前記上位装置により挿入された前記予備回線の前記制御情報の位置を元にデータの順序を維持するようにタイミングを調整して前記現用回線から前記予備回線へ切り替えるステップとを有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−67887(P2007−67887A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252016(P2005−252016)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】