説明

通信システム、通信装置、サーバ装置および通信方法

【課題】外付け部品が取付けられた場合でも、アレイアンテナの各アンテナ素子から同じタイミングで信号を送信させることができ、また各アンテナ素子で受信した信号に同じタイミングで処理を施すことができる通信システム、通信方法、通信装置およびサーバ装置を提供する。
【解決手段】第1〜第4フィルタf1〜f4が取付けられることで通信装置31の各アンテナ素子34a〜34dとアレイ処理部49との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報を、サーバ装置32のサーバ装置側記憶部83に記憶させておき、第1〜第4フィルタf1〜f4が取付けられたときに通信装置本体33に与えさせる。通信装置本体33では、遅延処理部48で、与えられた部品遅延情報に基づいて、各アンテナ素子34a〜34dに送信信号が与えられるタイミング、および各アンテナ素子34a〜34dを介して受信された受信信号に処理を施すタイミングを調整させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信相手装置と無線通信可能な通信装置、前記通信装置における通信方法、前記通信装置と予め定める通信回線網を介して通信可能なサーバ装置、ならびに前記通信装置および前記サーバ装置を備える通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
PHS(Personal Handyphone System)などの移動通信システムの無線基地局装置では、複数本のアンテナ素子を備えるアレイアンテナを用いて通信端末装置と信号の送受信を行い、信号処理部でアレイ合成などを行うアレイ処理が採用されている。
【0003】
アレイアンテナ技術を用いた無線通信システムとして、たとえば特許文献1に、アレイアンテナを備えた基地局を含むセルラー通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−502986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アレイ処理による効果を有効に発揮させるためには、信号処理部から出力される信号を、各アンテナ素子から同じタイミングで送信させることが望ましく、また各アンテナ素子で受信した信号を、同じタイミングで信号処理部に入力させることが望ましい。
【0006】
しかし、特許文献1に開示されるセルラー通信システムの基地局では、内部のフィルタの性能のばらつきなどによって、各アンテナ素子と信号処理部との間における信号の遅延時間にばらつきが生じることがある。この遅延時間のばらつきによって、アレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子間において、信号の送信タイミングおよび受信した信号の処理タイミングにばらつきが生じ、アレイ処理に不具合が生じるという問題がある。
【0007】
特に各アンテナ素子と信号処理部との間に外付けフィルタなどの外付け部品が取付けられた場合には、外付け部品の性能のばらつきに起因して、遅延時間のばらつきが大きくなり、アレイ処理において、より大きな不具合が生じてしまう。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、外付け部品が取付けられた場合でも、アレイアンテナの各アンテナ素子から同じタイミングで信号を送信させることができる通信システムおよび通信方法、ならびに前記通信システムを実現可能な通信装置およびサーバ装置を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、外付け部品が取付けられた場合でも、アレイアンテナの各アンテナ素子で受信した信号に同じタイミングで処理を施すことができる通信システムおよび通信方法、ならびに前記通信システムを実現可能な通信装置およびサーバ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る通信システムは、通信相手装置と無線通信可能な通信装置と、前記通信装置と予め定める通信回線網を介して通信可能なサーバ装置とを備える通信システムであって、前記通信装置は、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、通信装置本体とを有し、前記通信装置本体は、前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置から送信された信号を受信するとともに、前記通信相手装置に対して信号を送信する送受信部と、前記送受信部で受信された受信信号に所定の処理を施すとともに、送信するべき送信信号を前記送受信部に与える信号処理部とを有し、前記サーバ装置は、予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報を記憶するサーバ側記憶部と、前記外付け部品が取付けられたことを表す取付け情報が与えられると、前記サーバ側記憶部に記憶された前記部品遅延情報を、前記通信回線網を介して前記通信装置本体に与える遅延情報付与部とを有し、前記信号処理部は、前記サーバ装置の前記遅延情報付与部から前記部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子に前記送信信号が与えられるタイミングを調整する送信側遅延処理部を含むことを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る通信システムは、通信相手装置と無線通信可能な通信装置と、前記通信装置と予め定める通信回線網を介して通信可能なサーバ装置とを備える通信システムであって、前記通信装置は、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、通信装置本体とを有し、前記通信装置本体は、前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置から送信された信号を受信するとともに、前記通信相手装置に対して信号を送信する送受信部と、前記送受信部で受信された受信信号に所定の処理を施すとともに、送信するべき送信信号を前記送受信部に与える信号処理部とを有し、前記サーバ装置は、予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報を記憶するサーバ側記憶部と、前記外付け部品が取付けられたことを表す取付け情報が与えられると、前記サーバ側記憶部に記憶された前記部品遅延情報を、前記通信回線網を介して前記通信装置本体に与える遅延情報付与部とを有し、前記信号処理部は、前記サーバ装置の前記遅延情報付与部から前記部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子を介して受信された前記受信信号に前記所定の処理を施すタイミングを調整する受信側遅延処理部を含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る通信装置は、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、通信装置本体とを有し、前記アレイアンテナを介して通信相手装置と無線通信可能な通信装置であって、前記通信装置本体は、前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置から送信された信号を受信するとともに、前記通信相手装置に対して信号を送信する送受信部と、前記送受信部で受信された受信信号に所定の処理を施すとともに、送信するべき送信信号を前記送受信部に与える信号処理部とを有し、前記信号処理部は、予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子に前記送信信号が与えられるタイミングを調整する送信側遅延処理部を含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明に係る通信装置は、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、通信装置本体とを有し、前記アレイアンテナを介して通信相手装置と無線通信可能な通信装置であって、前記通信装置本体は、前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置から送信された信号を受信するとともに、前記通信相手装置に対して信号を送信する送受信部と、前記送受信部で受信された受信信号に所定の処理を施すとともに、送信するべき送信信号を前記送受信部に与える信号処理部とを有し、前記信号処理部は、予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子を介して受信された前記受信信号に前記所定の処理を施すタイミングを調整する受信側遅延処理部を含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明に係るサーバ装置は、前記通信装置と予め定める通信回線網を介して通信可能なサーバ装置であって、予め定める外付け部品が前記通信装置の前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報を記憶するサーバ側記憶部と、前記外付け部品が取付けられたことを表す取付け情報が与えられると、前記サーバ側記憶部に記憶された前記部品遅延情報を、前記通信回線網を介して前記通信装置本体に与える遅延情報付与部とを有することを特徴とする。
【0015】
また本発明に係る通信方法は、通信相手装置と無線通信可能に構成され、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと通信装置本体とを有する通信装置における通信方法であって、送信するべき送信信号を前記通信装置本体の信号処理部から送受信部に与える信号処理工程と、前記信号処理工程で前記送受信部に与えられた前記送信信号を、前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置に対して送信する送信工程とを備え、前記信号処理工程は、予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子に前記送信信号が与えられるタイミングを調整する送信側遅延処理工程を含むことを特徴とする。
【0016】
また本発明に係る通信方法は、通信相手装置と無線通信可能に構成され、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと通信装置本体とを有する通信装置における通信方法であって、前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置から送信された信号を前記通信装置本体の送受信部で受信する受信工程と、前記受信工程で受信された受信信号に前記通信装置本体の信号処理部で所定の処理を施す信号処理工程とを備え、前記信号処理工程は、予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子を介して受信された前記受信信号に前記所定の処理を施すタイミングを調整する受信側遅延処理工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通信装置とサーバ装置とを備えて通信システムが構成される。サーバ装置は、通信装置のアレイアンテナの各アンテナ素子と通信装置本体との間に外付け部品が取付けられることで各アンテナ素子と通信装置本体の信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報をサーバ側記憶部に記憶しており、外付け部品が取付けられたことを表す取付け情報が与えられると、サーバ側記憶部に記憶された部品遅延情報を遅延情報付与部によって通信回線網を介して通信装置本体に与える。通信装置本体の信号処理部は、サーバ装置から部品遅延情報が与えられると、与えられた部品遅延情報に基づいて、各アンテナ素子に送信信号が与えられるタイミングを送信側遅延処理部によって調整して、送受信部に送信信号を与える。
【0018】
このようにして与えられた送信信号が送受信部によってアレイアンテナを介して送信される。これによって、外付け部品が取付けられた状態で送信信号を送信するときに、各アンテナ素子と信号処理部との間で生じる信号の遅延時間のばらつきを吸収することができる。したがって、外付け部品が取付けられた場合でも、各アンテナ素子から同じタイミングで送信信号を送信させることが可能であるので、アレイアンテナの性能を安定させることができる。
【0019】
また本発明によれば、通信装置とサーバ装置とを備えて通信システムが構成される。サーバ装置は、通信装置のアレイアンテナの各アンテナ素子と通信装置本体との間に外付け部品が取付けられることで各アンテナ素子と通信装置本体の信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報をサーバ側記憶部に記憶しており、外付け部品が取付けられたことを表す取付け情報が与えられると、サーバ側記憶部に記憶された部品遅延情報を遅延情報付与部によって通信回線網を介して通信装置本体に与える。
【0020】
通信装置本体の信号処理部は、サーバ装置から部品遅延情報が与えられると、与えられた部品遅延情報に基づいて受信側遅延処理部によってタイミングを調整して、各アンテナ素子を介して送受信部で受信された受信信号に所定の処理を施す。これによって、外付け部品が取付けられた状態で信号を受信するときに、各アンテナ素子と信号処理部との間で生じる信号の遅延時間のばらつきを吸収することができる。したがって、外付け部品が取付けられた場合でも、各アンテナ素子で受信した受信信号に同じタイミングで処理を施すことが可能であるので、アレイアンテナの性能を安定させることができる。
【0021】
また本発明によれば、通信装置では、通信装置本体の送受信部によって、複数のアンテナ素子を備えるアレイアンテナを介して、通信相手装置から送信された信号が受信され、信号処理部で所定の処理が施される。また送信するべき送信信号が信号処理部から送受信部に与えられ、アレイアンテナを介して、送信相手装置に対して送信される。信号処理部では、アレイアンテナの各アンテナ素子と通信装置本体との間に外付け部品が取付けられることで各アンテナ素子と通信装置本体の信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、与えられた部品遅延情報に基づいて、各アンテナ素子に送信信号が与えられるタイミングを送信側遅延処理部によって調整して、送受信部に送信信号を与える。
【0022】
このようにして与えられた送信信号が送受信部によってアレイアンテナを介して送信されるので、外付け部品が取付けられた状態で送信信号を送信するときに、各アンテナ素子と信号処理部との間で生じる信号の遅延時間のばらつきを吸収することができる。したがって、外付け部品が取付けられた場合でも、各アンテナ素子から同じタイミングで送信信号を送信させることが可能であるので、アレイアンテナの性能を安定させることができる。
【0023】
また本発明によれば、通信装置では、通信装置本体の送受信部によって、複数のアンテナ素子を備えるアレイアンテナを介して、通信相手装置から送信された信号が受信され、信号処理部で所定の処理が施される。また送信するべき送信信号が信号処理部から送受信部に与えられ、アレイアンテナを介して、送信相手装置に対して送信される。信号処理部では、アレイアンテナの各アンテナ素子と通信装置本体との間に外付け部品が取付けられることで各アンテナ素子と通信装置本体の信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、与えられた部品遅延情報に基づいて受信側遅延処理部によってタイミングを調整して受信信号に所定の処理を施す。
【0024】
これによって、外付け部品が取付けられた状態で信号を受信するときに、各アンテナ素子と信号処理部との間で生じる信号の遅延時間のばらつきを吸収することができる。したがって、外付け部品が取付けられた場合でも、各アンテナ素子で受信した受信信号に同じタイミングで処理を施すことが可能であるので、アレイアンテナの性能を安定させることができる。
【0025】
また本発明によれば、サーバ装置は、通信装置のアレイアンテナの各アンテナ素子と通信装置本体との間に外付け部品が取付けられることで各アンテナ素子と通信装置本体の信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報をサーバ側記憶部に記憶しており、外付け部品が取付けられたことを表す取付け情報が与えられると、サーバ側記憶部に記憶された部品遅延情報を遅延情報付与部によって通信回線網を介して通信装置本体に与える。これによって通信装置本体の信号処理部では、与えられた部品遅延情報に基づいて、各アンテナ素子に送信信号が与えられるタイミングを調整して送受信部に送信信号を与え、アレイアンテナを介して送信することが可能である。また、与えられた部品遅延情報に基づいてタイミングを調整して、各アンテナ素子を介して送受信部で受信された受信信号に所定の処理を施すことが可能である。
【0026】
したがって通信装置では、外付け部品が取付けられた状態で送信信号を送受信するときに、各アンテナ素子と信号処理部との間で生じる信号の遅延時間のばらつきを吸収することができる。これによって、外付け部品が取付けられた場合でも、各アンテナ素子から同じタイミングで送信信号を送信させることが可能であり、また各アンテナ素子で受信した受信信号に同じタイミングで処理を施すことが可能であるので、アレイアンテナの性能を安定させることができる。
【0027】
また本発明によれば、信号処理工程では、通信装置のアレイアンテナの各アンテナ素子と通信装置本体との間に外付け部品が取付けられることで各アンテナ素子と通信装置本体の信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、送信側遅延処理工程において、与えられた部品遅延情報に基づいて、各アンテナ素子に送信信号が与えられるタイミングを調整して、通信装置本体の信号処理部から送受信部に送信信号を与える。このようにして与えられた送信信号が、送信工程において、アレイアンテナを介して通信相手装置に対して送信される。
【0028】
これによって、外付け部品が取付けられた状態で送信信号を送信するときに、各アンテナ素子と信号処理部との間で生じる信号の遅延時間のばらつきを吸収することができる。したがって、外付け部品が取付けられた場合でも、各アンテナ素子から同じタイミングで送信信号を送信させることが可能であるので、アレイアンテナの性能を安定させることができる。
【0029】
また本発明によれば、信号処理工程では、通信装置のアレイアンテナの各アンテナ素子と通信装置本体との間に外付け部品が取付けられることで各アンテナ素子と通信装置本体の信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、受信側遅延処理工程において、与えられた部品遅延情報に基づいてタイミングを調整して、各アンテナ素子を介して受信された受信信号に所定の処理を施す。
【0030】
これによって、外付け部品が取付けられた状態で信号を受信するときに、各アンテナ素子と信号処理部との間で生じる信号の遅延時間のばらつきを吸収することができる。したがって、外付け部品が取付けられた場合でも、各アンテナ素子で受信した受信信号に同じタイミングで処理を施すことが可能であるので、アレイアンテナの性能を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の前提となる通信装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】通信装置1におけるアレイ処理部19の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の一形態である通信システム30の構成を示すブロック図である。
【図4】通信装置31の第1RF部35の構成を示すブロック図である。
【図5】通信装置31の遅延処理部48およびアレイ処理部49の構成を示すブロック図である。
【図6】サーバ装置32における遅延情報付与処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】通信装置31における設定遅延時間補正処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<前提技術>
本発明の通信装置を説明する前に、本発明の前提となる通信装置について説明する。図1は、本発明の前提となる通信装置1の構成を示すブロック図である。
【0033】
通信装置1は、第1〜第4アンテナ素子2a〜2dを有するアレイアンテナ2と、各アンテナ素子2a〜2dにそれぞれ接続され、送受信切換スイッチ7、送信回路8および受信回路9を有する第1〜第4無線(略称:RF)部3〜6とを含む無線部10、第1〜第4RF部3〜6の送信回路8に接続される第1〜第4デジタル/アナログ(略称:D/A)変換部11,13,15,17、第1〜第4RF部3〜6の受信回路9に接続される第1〜第4アナログ/デジタル(略称:A/D)変換部12,14,16,18、第1〜第4D/A変換部11,13,15,17および第1〜第4A/D変換部12,14,16,18に接続されるアレイ処理部19、ならびにアレイ処理部19に接続される通信処理部20を備えて構成される。第1〜第4RF部3〜6の構成は同一であるので、図1では、第1RF部3の構成のみ図示し、第2〜第4RF部4〜6の構成については図示を省略している。
【0034】
図2は、通信装置1におけるアレイ処理部19の構成を示すブロック図である。アレイ処理部19は、第1〜第4A/D変換部12,14,16,18とそれぞれ接続される第1〜第4受信ミキサ部21a〜21d、受信ウェイトベクトル計算機23および送信ウェイトベクトル計算機24を有するウェイト演算部22、信号合成部25、ならびに第1〜第4D/A変換部11,13,15,17とそれぞれ接続される第1〜第4送信ミキサ部26a〜26dを備える。
【0035】
アレイアンテナ2の各アンテナ素子2a〜2dを介して受信された受信信号は、第1〜第4RF部3〜6の送受信切換スイッチ7を介して受信回路9に与えられ、第1〜第4A/D変換部12,14,16,18を経由してアレイ処理部19の第1〜第4受信ミキサ部21a〜21d、ウェイト演算部22の受信ウェイトベクトル計算機23および送信ウェイトベクトル計算機24にそれぞれ与えられる。
【0036】
ウェイト演算部22は、アレイアンテナ2の指向性を制御するためのウェイトと呼ばれる重み付け係数を算出する。受信ウェイトベクトル計算機23は、与えられた受信信号と参照信号とに基づいて、受信信号の重み付けに使用する受信ウェイトを算出する。送信ウェイトベクトル計算機24は、与えられた受信信号と参照信号とに基づいて、送信信号の重み付けに使用する送信ウェイトを算出する。
【0037】
第1〜第4受信ミキサ部21a〜21dは、第1〜第4A/D変換部12,14,16,18から与えられた信号に、ウェイト演算部22の受信ウェイトベクトル計算機23で算出された受信ウェイトを乗算し、乗算した結果得られた信号を信号合成部25に与える。信号合成部25は、第1〜第4受信ミキサ部21a〜21dから与えられた信号を加算し、アレイ合成信号として、通信処理部20に出力する。
【0038】
送信するべき送信信号が通信処理部20からアレイ処理部19に与えられると、その与えられた送信信号は、第1〜第4送信ミキサ部26a〜26dに与えられる。第1〜第4送信ミキサ部26a〜26dでは、通信処理部20から与えられた送信信号に、ウェイト演算部22の送信ウェイトベクトル計算機24で算出された送信ウェイトが乗算され、乗算した結果得られた信号は第1〜第4D/A変換部11,13,15,17にそれぞれ与えられる。第1〜第4D/A変換部11,13,15,17に与えられた信号は、その後、第1〜第4RF部3〜6の送信回路8に与えられ、送受信切換スイッチ7を経由して、アレイアンテナ2の各アンテナ素子2a〜2dに与えられ、各アンテナ素子2a〜2dを介して送信される。
【0039】
以上に述べたアレイ処理部19における受信ウェイトの乗算処理および送信ウェイトの乗算処理を、以下では「アレイ処理」という。アレイ処理部19におけるアレイ処理による効果を有効に発揮させるためには、アレイ処理部19から出力される信号を、アレイアンテナ2の各アンテナ素子2a〜2dで同じタイミングで送信させることが望ましく、また各アンテナ素子2a〜2dで受信した受信信号を、同じタイミングでアレイ処理部19に入力させることが望ましい。
【0040】
しかし図1に示す通信装置1では、各RF部3〜6の送信回路8および受信回路9に含まれるフィルタなどによって、第1〜第4RF部3〜6間において、信号の遅延時間にばらつきが生じる。この遅延時間のばらつきによって、各アンテナ素子2a〜2d間においても信号の受信タイミングおよび送信タイミングが異なるので、アレイ処理部19におけるアレイ合成などのアレイ処理に不具合が生じるという問題がある。
【0041】
特に通信装置1が、周波数帯域の異なる複数の送信回路および受信回路を有するRF部を備える場合には、高周波数帯域での遅延時間のばらつきが大きく、この遅延時間のばらつきによって、アレイ処理部19におけるアレイ合成などのアレイ処理に、より大きな不具合が生じることがある。さらにアレイアンテナ2の各アンテナ素子2a〜2dと各RF部3〜6との間に外付けフィルタなどの外付け部品が取付けられた場合には、外付け部品の性能のばらつきに起因して、遅延時間のばらつきがより大きくなり、アレイ処理において、より大きな不具合が生じてしまう。
【0042】
このように通信装置1では、内部遅延または外付け部品に起因する遅延によって、各アンテナ素子2a〜2dとアレイ処理部19との間で送受信のタイミングが異なっているが、遅延時間を調節する機能は実装されていない。したがって通信装置1が、より高速な変調方式を採用するに従って、第1〜第4アンテナ素子2a〜2d間における送受信のタイミングの違いが顕著となり、アレイ合成などのアレイ処理の性能を劣化させるという問題がある。
【0043】
そこで本発明の通信装置および通信装置を備える通信システムでは、以下に示す実施の形態の構成を採用している。
【0044】
<実施の形態>
図3は、本発明の実施の一形態である通信システム30の構成を示すブロック図である。通信システム30は、通信装置31とサーバ装置32とを備えて構成される。通信装置31は、次世代PHSに準拠した基地局として機能する。通信装置31は、外部の通信装置である通信相手装置と無線通信可能に構成される。
【0045】
本実施の形態において、通信装置31は、アダプティブアレイアンテナ(Adaptive Array Antenna)方式で通信を行う通信装置である。アダプティブアレイアンテナ方式では、複数のアンテナ素子34a〜34dを有するアレイアンテナ34から得られる信号に関して、所望の信号に対する利得が増加するとともに、不要な信号に対する減衰量が大きくなるように、アダプティブすなわち適応的に、各アンテナ素子34a〜34dへウェイト付け、すなわち重み付けを行う。次世代PHSでの基地局は、通信相手装置である通信端末装置から送信される既知信号を用いて、アレイアンテナ34に適用するウェイトを算出し、そのウェイトに基づいて、アレイアンテナ34から通信端末装置に信号を送信している。これによって基地局では、アレイアンテナ34による指向性が通信端末装置に向くようにビームフォーミングされる。
【0046】
このように、次世代PHSに準拠した基地局である本実施の形態の通信装置31は、通信相手装置である通信端末装置からの既知信号に基づいて、当該通信端末装置に対応したウェイトを算出し、算出したウェイトに基づいて、当該通信端末装置にアレイアンテナ34から信号を送信する。また当該通信端末装置から受信した信号に対して、算出したウェイトに基づいて重み付けを行う。
【0047】
通信装置31は、図3に示すように、第1アンテナ素子34a、第2アンテナ素子34b、第3アンテナ素子34cおよび第4アンテナ素子34dを有するアレイアンテナ34と、通信装置本体33と、各アンテナ素子34aと通信装置本体33との間に取付けられた第1〜第4フィルタf1〜f4とを有する。第1〜第4フィルタf1〜f4は、不要波を取除くために取付けられる。第1〜第4フィルタf1〜f4は、取外し可能に取付けられる。第1〜第4フィルタf1〜f4は、通信装置本体33の外部に取付けられる外付けフィルタである。
【0048】
通信装置本体33は、第1RF部35、第2RF部36、第3RF部37および第4RF部38を有する無線部39、第1D/A変換部40、第1A/D変換部41、第2D/A変換部42、第2A/D変換部43、第3D/A変換部44、第3A/D変換部45、第4D/A変換部46、第4A/D変換部47、遅延処理部48、アレイ処理部49、通信処理部50、通信装置側制御部76、通信装置側インタフェース部77、ならびに通信装置側記憶部78を備えて構成される。無線部39は、送受信部に相当し、遅延処理部48、アレイ処理部49および通信処理部50は、信号処理部に相当する。通信装置31、より詳細には通信装置31の通信装置本体33は、通信装置側インタフェース部77を介してサーバ装置32と接続される。通信装置側インタフェース部77は、たとえばGPIB(General Purpose Interface Bus;IEEE488)によって実現される。
【0049】
通信装置側制御部76は、遅延処理部48を制御する。図3では、通信装置側制御部76から遅延処理部48に向かう矢符のみを記載しているが、通信装置側制御部76は、遅延処理部48だけでなく、第1〜第4RF部35〜38、第1〜第4D/A変換部40,42,44,46、第1〜第4A/D変換部41,43,45,47、遅延処理部48、アレイ処理部49、通信処理部50、通信装置側インタフェース部77および通信装置側記憶部78を含む、通信装置本体33を構成するハードウェア資源を統括的に制御する。通信装置側制御部76は、CPU(Central Processing Unit)によって実現される。
【0050】
サーバ装置32は、予め定める通信回線網を介して通信装置31と通信可能に構成される。サーバ装置32は、サーバ装置側制御部81、サーバ装置側インタフェース部82およびサーバ装置側記憶部83を備えて構成される。サーバ装置32は、サーバ装置側インタフェース部82を介して通信装置本体33と接続される。サーバ装置側インタフェース部82は、たとえばGPIBによって実現される。サーバ装置側制御部81は、CPUによって実現される。サーバ装置側制御部81は、サーバ装置側インタフェース部82およびサーバ装置側記憶部83を含む、サーバ装置32を構成するハードウェア資源を統括的に制御する。サーバ装置側制御部81は、遅延情報付与部に相当し、サーバ装置側記憶部83は、サーバ側記憶部に相当する。
【0051】
サーバ装置側記憶部83は、アレイアンテナ34の各アンテナ素子34a〜34dと通信装置本体31との間に外付け部品である第1〜第4フィルタf1〜f4が取付けられることで各アンテナ素子34a〜34dとアレイ処理部49との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報を記憶する。「外付け部品」とは、通信装置本体33の外部に取付けられる部品をいう。外付け部品は、フィルタに限定されるものではなく、たとえばアンテナ素子34a〜34dおよび第1〜第4フィルタf1〜f4を備える外部装置と通信装置本体33とがケーブルで接続される場合には、ケーブルも外付け部品に含まれる。
【0052】
部品遅延情報は、たとえば第1〜第4フィルタf1〜f4の取付け作業を行う作業者、または通信システム30の管理者などによって、図示しない入力部を介して入力される。入力された部品遅延情報は、サーバ装置側制御部81に与えられ、サーバ装置側制御部81によってサーバ装置側記憶部83に記憶される。
【0053】
またサーバ装置側制御部81には、通信装置31の各アンテナ素子34a〜34dと通信装置本体31との間に第1〜第4フィルタf1〜f4が取付けられたことを表す取付け情報が与えられる。取付け情報は、たとえば第1〜第4フィルタf1〜f4の取付け作業を行う作業者、または通信システム30の管理者などによって、図示しない入力部を介して入力されて、サーバ装置側制御部81に与えられる。サーバ装置側制御部81は、取付け情報が与えられると、サーバ装置側記憶部83に記憶された部品遅延情報を、サーバ装置側インタフェース部82および通信回線網を介して、通信装置本体33に与える。
【0054】
部品遅延情報は、通信装置側インタフェース部77を介して、通信装置本体33の通信装置側制御部76に与えられる。通信装置側制御部76は、部品遅延情報が与えられると、与えられた部品遅延情報を通信装置側記憶部78に記憶させる。
【0055】
図4は、通信装置31の第1RF部35の構成を示すブロック図である。図4では、第1アンテナ素子34a、第1フィルタf1、第1D/A変換部40および第1A/D変換部41を合わせて示す。第1RF部35は、送受信切換スイッチ51、第1送信側スイッチ52、300kHz帯域送信回路53、900kHz帯域送信回路54、第2送信側スイッチ55、第1受信側スイッチ56、300kHz帯域受信回路57、900kHz帯域受信回路58および第2受信側スイッチ59を備える。第2〜第4RF部36〜38は、第1RF部35と同一の構成であるので、第2〜第4RF部36〜38については、図示および共通する説明を省略する。
【0056】
アレイアンテナ34の第1〜第4アンテナ素子34a〜34dは、通信相手装置から送信された信号を受信するアンテナ、および通信相手装置に対して信号を送信するアンテナとして機能する。第1アンテナ素子34aと送受信切換スイッチ51との間には、第1フィルタf1が取付けられている。送受信切換スイッチ51は、受信状態であるか、送信状態であるかに応じて、第1送信側スイッチ52および第1受信側スイッチ56のいずれかを選択して、第1フィルタf1に接続する。送受信切換スイッチ51は、受信状態では、第1受信側スイッチ56と第1フィルタf1とを接続するように接続状態が切換えられ、送信状態では、第1送信側スイッチ52と第1フィルタf1とを接続するように接続状態が切換えられる。送受信切換スイッチ51は、前述の図3に示す通信装置側制御部76によって制御され、受信状態における接続状態と送信状態における接続状態とが時分割で切換えられる。
【0057】
受信状態において、アレイアンテナ34の第1アンテナ素子34aを介して受信された受信信号は、第1フィルタf1および第1RF部35の送受信切換スイッチ51を介して、第1受信側スイッチ56に与えられる。第1受信側スイッチ56は、300kHz帯域受信回路57と900kHz帯域受信回路58とを選択的に切換えて、送受信切換スイッチ51に接続する。
【0058】
300kHz帯域受信回路57および900kHz帯域受信回路58は、第1フィルタf1および送受信切換スイッチ51を介して第1アンテナ素子34aから与えられた受信信号に対して、各周波数帯域幅に応じた増幅処理およびダウンコンバートを行うことによって、受信信号をベースバンド信号に変換して第2受信側スイッチ59に与える。第2受信側スイッチ59は、第1受信側スイッチ56と連動して、300kHz帯域受信回路57と900kHz帯域受信回路58とを選択的に切換えて、第1A/D変換部41に接続する。第2受信側スイッチ59は、300kHz帯域受信回路57または900kHz帯域受信回路58から与えられたベースバンド信号を第1A/D変換部41に与える。第1および第2受信側スイッチ56,59は、前述の図3に示す通信装置側制御部76によって制御される。
【0059】
送信状態において、送信するべき送信信号として第1D/A変換部40にベースバンド信号が与えられると、その与えられたベースバンド信号は、第2送信側スイッチ55に与えられる。第2送信側スイッチ55は、300kHz帯域送信回路53と900kHz帯域送信回路54とを選択的に切換えて、第1D/A変換部40に接続する。300kHz帯域送信回路53および900kHz帯域送信回路54は、第2送信側スイッチ55を介して第1D/A変換部40から与えられたベースバンド信号を、アップコンバートおよび増幅処理を行うことによって無線信号に変換して、第1送信側スイッチ52に与える。
【0060】
第1送信側スイッチ52は、第2送信側スイッチ55と連動して、300kHz帯域送信回路53と900kHz帯域送信回路54とを選択的に切換えて、送受信切換スイッチ51に接続する。第1送信側スイッチ52は、300kHz帯域送信回路53または900kHz帯域送信回路54から与えられた無線信号を送受信切換スイッチ51に与える。送受信切換スイッチ51は、第1送信側スイッチ52から与えられた無線信号を、第1フィルタf1を介して第1アンテナ素子34aに与える。これによって、第1アンテナ素子34aを介して通信対象の通信相手装置に向かって無線信号が送信される。第1および第2送信側スイッチ52,55は、前述の図3に示す通信装置側制御部76によって制御される。
【0061】
図5は、通信装置31の遅延処理部48およびアレイ処理部49の構成を示すブロック図である。遅延処理部48は、受信側遅延処理部60および送信側遅延処理部70を備える。アレイ処理部49は、第1受信ミキサ部65a、第2受信ミキサ部65b、第3受信ミキサ部65c、第4受信ミキサ部65d、信号合成部66、ウェイト演算部67、第1送信ミキサ部75a、第2送信ミキサ部75b、第3送信ミキサ部75cおよび第4送信ミキサ部75dを備える。ウェイト演算部67は、受信ウェイトベクトル計算機68および送信ウェイトベクトル計算機69を備える。
【0062】
遅延処理部48の受信側遅延処理部60は、第1受信タイミング調整部61、第2受信タイミング調整部62、第3受信タイミング調整部63および第4受信タイミング調整部64を備える。第1受信タイミング調整部61は、第1A/D変換部41および第1受信ミキサ部65aに接続される。第2受信タイミング調整部62は、第2A/D変換部43および第2受信ミキサ部65bに接続される。第3受信タイミング調整部63は、第3A/D変換部45および第3受信ミキサ部65cに接続される。第4受信タイミング調整部64は、第4A/D変換部47および第4受信ミキサ部65dに接続される。また第1〜第4受信タイミング調整部61〜64は、ウェイト演算部67の受信ウェイトベクトル計算機68および送信ウェイトベクトル計算機69にそれぞれ接続される。
【0063】
アレイアンテナ34の各アンテナ素子34a〜34dを介して受信された受信信号は、第1〜第4RF部35〜38および第1〜第4A/D変換部41,43,45,47を経由して遅延処理部48の第1〜第4受信タイミング調整部61〜64に与えられる。
【0064】
第1〜第4受信タイミング調整部61〜64は、アレイアンテナ34の各アンテナ素子34a〜34dと遅延処理部48との間で生じる受信信号の遅延時間である受信遅延時間に関する受信遅延情報に基づいて、各アンテナ素子34a〜34dを介して受信された受信信号に、アレイ処理部49で所定の処理を施すタイミングを調整する。本実施の形態において、「所定の処理」とは、第1〜第4受信ミキサ部65a〜65dによる受信ウェイトの乗算処理をいう。
【0065】
受信遅延情報は、たとえば通信装置31の製造工程において求められ、通信装置側記憶部83に記憶される。受信遅延情報は、受信遅延時間そのものでもよく、受信遅延時間から求められる受信タイミング情報であってもよい。受信タイミング情報は、たとえば、受信遅延時間を通信装置31内で使用されるサンプリングクロックで除算して得られるサンプリング数、すなわち受信遅延時間がサンプリングクロックの何クロック分かを表す情報である。
【0066】
各受信タイミング調整部61〜64では、受信遅延情報に基づいて、各アンテナ素子34a〜34dを介して受信された受信信号に与えるべき遅延時間が設定されている。以下では、この設定された遅延時間を「設定受信遅延時間」という場合がある。各受信タイミング調整部61〜64は、各A/D変換部41,43,45,47から与えられた受信信号を、設定受信遅延時間だけ遅延させてアレイ処理部49に出力する。設定受信遅延時間は、前述のようにサーバ装置32から部品遅延情報が与えられると、与えられた部品遅延情報に基づいて補正される。
【0067】
第1〜第4受信タイミング調整部61〜64に与えられた受信信号は、第1〜第4受信タイミング調整部61〜64でタイミングを調整された後、アレイ処理部49の第1〜第4受信ミキサ部65a〜65d、ウェイト演算部67の受信ウェイトベクトル計算機68および送信ウェイトベクトル計算機69にそれぞれ与えられる。ウェイト演算部67は、アレイアンテナ34の指向性を制御するためのウェイトと呼ばれる重み付け係数を算出する。
【0068】
受信ウェイトベクトル計算機68は、第1〜第4受信タイミング調整部61〜64から与えられた受信信号と参照信号とに基づいて、ウェイトのうち、受信信号の重み付けに使用される受信ウェイトを算出する。送信ウェイトベクトル計算機69は、第1〜第4受信タイミング調整部61〜64から与えられた受信信号と参照信号とに基づいて、ウェイトのうち、送信信号の重み付けに使用される送信ウェイトを算出する。
【0069】
受信ウェイトベクトル計算機68は、たとえば最小2乗誤差法に基づく適応アルゴリズムによって、第1〜第4受信タイミング調整部61〜64から与えられた各アンテナ素子34a〜34dによる受信信号と参照信号との2乗誤差が最小になるように制御して受信ウェイトを算出する。同様に送信ウェイト計算機69は、受信信号と参照信号とを用いて、受信信号と参照信号との2乗誤差が最小になるように制御して送信ウェイトを算出する。
【0070】
第1〜第4受信ミキサ部65a〜65dは、第1〜第4受信タイミング調整部61〜64から与えられた受信信号に、ウェイト演算部67の受信ウェイトベクトル計算機68で算出された受信ウェイトを乗算し、乗算した結果得られた信号を信号合成部66に与える。信号合成部66は、第1〜第4受信ミキサ部65a〜65dから与えられた信号を加算し、アレイ合成信号として、前述の図3に示す通信処理部50に出力する。通信処理部50は、アレイ処理部49から与えられるアレイ合成信号を復調し、誤り訂正復号などの処理を行うことによって、受信データを取得する。
【0071】
図5に戻って、送信側遅延処理部70は、第1送信タイミング調整部71、第2送信タイミング調整部72、第3送信タイミング調整部73および第4送信タイミング調整部74を備える。第1送信タイミング調整部71は、第1送信ミキサ部75aおよび第1D/A変換部40に接続される。第2送信タイミング調整部72は、第2送信ミキサ部75bおよび第2D/A変換部42に接続される。第3送信タイミング調整部73は、第3送信ミキサ部75cおよび第3D/A変換部44に接続される。第4送信タイミング調整部74は、第4送信ミキサ部75dおよび第4D/A変換部46に接続される。
【0072】
第1〜第4送信タイミング調整部71〜74は、アレイアンテナ34の各アンテナ素子34a〜34dとアレイ処理部49との間で生じる送信信号の遅延時間である送信遅延時間に関する送信遅延情報に基づいて、各アンテナ素子34a〜34dに送信信号が与えられるタイミングを調整する。第1〜第4送信タイミング調整部71〜74は、アレイ処理部49から与えられる送信信号を各D/A変換部40,42,44,46に与えるタイミングを調整することによって、各アンテナ素子34a〜34dに送信信号が与えられるタイミングを調整する。
【0073】
「各アンテナ素子34a〜34dに送信信号が与えられるタイミング」とは、アレイ処理部49から遅延処理部48および第1〜第4D/A変換部40,42,44,46を介して無線部39に与えられた送信信号が、各RF部35〜39を経由して、各アンテナ素子34a〜34dに到達するタイミングをいう。送信遅延情報は、たとえば通信装置31の製造工程において求められ、通信装置側記憶部83に記憶される。送信遅延情報は、送信遅延時間そのものでもよく、送信遅延時間から求められる送信タイミング情報であってもよい。送信タイミング情報は、たとえば、送信遅延時間を通信装置31内で使用されるサンプリングクロックで除算して得られるサンプリング数、すなわち送信遅延時間がサンプリングクロックの何クロック分かを表す情報である。
【0074】
各送信タイミング調整部71〜74では、送信遅延情報に基づいて、アレイ処理部49から与えられる送信信号に与えるべき遅延時間が設定されている。以下では、この設定された遅延時間を「設定送信遅延時間」という場合がある。各送信タイミング調整部71〜74は、各送信ミキサ部75a〜75dから与えられる送信信号を、設定送信遅延時間だけ遅延させて、各D/A変換部40,42,44,46に出力する。設定送信遅延時間は、前述のようにサーバ装置32から部品遅延情報が与えられると、与えられた部品遅延情報に基づいて補正される。以下では、設定送信遅延時間と前述の設定受信遅延時間とを合わせて、設定遅延時間という場合がある。
【0075】
前述の図3に示す通信処理部50では、通信相手装置に送信するべき送信信号としてのデジタル信号に対して、誤り訂正符号化などの処理を行い、デジタル信号を複数のキャリア周波数のいずれかで変調する。通信処理部50によって変調されたデジタル信号は、アレイ処理部49に与えられる。送信するべき送信信号が通信処理部50からアレイ処理部49に与えられると、その与えられた送信信号は、図5に示す第1〜第4送信ミキサ部75a〜75dに与えられる。第1〜第4送信ミキサ部75a〜75dは、通信処理部50から与えられた送信信号に、ウェイト演算部67の送信ウェイトベクトル計算機69で算出された送信ウェイトをそれぞれ乗算し、乗算した結果得られた送信信号を、第1〜第4送信タイミング調整部71〜74のうち、対応する送信タイミング調整部71〜74に与える。
【0076】
第1〜第4送信タイミング調整部71〜74に与えられた送信信号は、第1〜第4送信タイミング調整部71〜74でそれぞれタイミングを調整された後、第1〜第4D/A変換部40,42,44,46にそれぞれ与えられる。第1〜第4D/A変換部40,42,44,46に与えられた送信信号は、第1〜第4RF部35〜38の第2送信側スイッチ55に与えられ、300kHz帯域送信回路53または900kHz帯域送信回路54を介して第1送信側スイッチ52に与えられる。第1送信側スイッチ52に与えられた送信信号は、送受信切換スイッチ51および各フィルタf1〜f4を経由して、アレイアンテナ34の各アンテナ素子34a〜34dに与えられ、各アンテナ素子34a〜34dを介して送信される。
【0077】
図6は、サーバ装置32における遅延情報付与処理の処理手順を示すフローチャートである。「遅延情報付与処理」とは、サーバ装置32から通信装置31に対して部品遅延情報を与える処理をいう。図6に示すフローチャートにおける各処理は、サーバ装置32のサーバ装置側制御部81によって実行される。図6に示すフローチャートの処理は、サーバ装置32の電源が投入されてオン(ON)となり、サーバ装置32に電力が供給されると開始され、ステップa1に移行する。
【0078】
ステップa1において、サーバ装置側制御部81は、図示しない入力部を介して、部品遅延情報が与えられたか否かを判断し、与えられたと判断するとステップa2に移行し、与えられていないと判断すると、部品遅延情報が与えられるまで待機する。
【0079】
ステップa2において、サーバ装置側制御部81は、与えられた部品遅延情報をサーバ装置側記憶部83に記憶させ、ステップa3に移行する。
【0080】
ステップa3において、サーバ装置側制御部81は、図示しない入力部を介して、取付け情報が与えられたか否かを判断し、与えられたと判断するとステップa4に移行し、与えられていないと判断すると、取付け情報が与えられるまで待機する。
【0081】
ステップa4において、サーバ装置側制御部81は、与えられた部品遅延情報を、サーバ装置側インタフェース部82を介して、対象の通信装置31に与える。「対象の通信装置」とは、サーバ装置32に与えられた部品遅延情報に関係する外付け部品、本実施の形態では第1〜第4フィルタf1〜f4が取付けられた通信装置をいう。以上のようにして部品遅延情報を対象の通信装置31に与えると、全ての処理手順を終了する。
【0082】
図7は、通信装置31における設定遅延時間補正処理の処理手順を示すフローチャートである。「設定遅延時間補正処理」とは、前述の受信タイミングおよび送信タイミングの設定遅延時間を補正する処理をいう。図7に示すフローチャートにおける各処理は、通信装置31の通信装置側制御部76によって実行される。図7に示すフローチャートの処理は、通信装置31の電源が投入されてオン(ON)となり、通信装置31に電力が供給されると開始され、ステップb1に移行する。
【0083】
ステップb1において、通信装置側制御部76は、通信装置側インタフェース部77を介して、サーバ装置32から部品遅延情報が与えられたか否かを判断し、与えられたと判断するとステップb2に移行し、与えられていないと判断すると、部品遅延情報が与えられるまで待機する。
【0084】
ステップb2において、通信装置側制御部76は、与えられた部品遅延情報に基づいて、受信信号および送信信号の設定遅延時間、すなわち設定受信遅延時間および設定送信遅延時間を補正する。これによって受信側遅延処理部60では、与えられた部品遅延情報に基づいて、各アンテナ素子34a〜34dを介して受信された受信信号にアレイ処理部49で所定の処理を施すタイミングが調整されることになる。また送信側遅延処理部70では、与えられた部品遅延情報に基づいて、各アンテナ素子34a〜34dに送信信号が与えられるタイミングが調整されることになる。以上のようにして設定遅延時間を補正すると、全ての処理手順を終了する。
【0085】
以上のように本実施の形態によれば、サーバ装置32は、通信装置31のアレイアンテナ34の各アンテナ素子34a〜34dと通信装置本体33との間に第1〜第4フィルタf1〜f4が取付けられることで各アンテナ素子34a〜34dと通信装置本体33のアレイ処理部49との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報をサーバ装置側記憶部83に記憶している。サーバ装置32は、第1〜第4フィルタf1〜f4が各アンテナ素子34a〜34dと通信装置本体33との間に取付けられたことを表す取付け情報が与えられると、サーバ装置側記憶部83に記憶された部品遅延情報をサーバ装置側制御部81によってサーバ装置側インタフェース部82および通信回線網を介して通信装置本体33に与える。
【0086】
通信装置31は、サーバ装置32から部品遅延情報が与えられると、与えられた部品遅延情報に基づいて受信側遅延処理部60によってタイミングを調整して、各アンテナ素子34a〜34dを介して無線部39で受信された受信信号にアレイ処理部49で所定の処理を施す。これによって、第1〜第4フィルタf1〜f4が取付けられた状態で信号を受信するときに、各アンテナ素子34a〜34dとアレイ処理部49との間で生じる信号の遅延時間のばらつきを吸収することができる。したがって、第1〜第4フィルタf1〜f4が取付けられた場合でも、各アンテナ素子34a〜34dで受信した受信信号に同じタイミングで処理を施すことが可能であるので、アレイアンテナ34の性能を安定させることができる。
【0087】
また通信装置31は、与えられた部品遅延情報に基づいて送信側遅延処理部70によって、各アンテナ素子34a〜34dに送信信号が与えられるタイミングを調整して、無線部39に送信信号を与える。このようにして与えられた送信信号が無線部39によってアレイアンテナ34を介して送信される。これによって、第1〜第4フィルタf1〜f4が取付けられた状態で送信信号を送信するときに、各アンテナ素子34a〜34dとアレイ処理部49との間で生じる信号の遅延時間のばらつきを吸収することができる。したがって、第1〜第4フィルタf1〜f4が取付けられた場合でも、各アンテナ素子34a〜34dから同じタイミングで送信信号を送信させることが可能であるので、アレイアンテナ34の性能を安定させることができる。
【0088】
以上に述べた本実施の形態では、アレイアンテナ34を構成する複数のアンテナ素子の個数は、4つであるが、これに限定されず、たとえば5つ以上であってもよい。この場合、フィルタもアンテナ素子と同数が用意され、各アンテナ素子と通信装置本体33との間に取付けられる。
【符号の説明】
【0089】
30 通信システム
31 通信装置
32 サーバ装置
33 通信装置本体
34 アレイアンテナ
34a〜34d 第1〜第4アンテナ素子
39 無線部
48 遅延処理部
49 アレイ処理部
60 受信側遅延処理部
61 第1受信タイミング調整部
62 第2受信タイミング調整部
63 第3受信タイミング調整部
64 第4受信タイミング調整部
65a〜65d 第1〜第4受信ミキサ部
66 信号合成部
70 送信側遅延処理部
71 第1送信タイミング調整部
72 第2送信タイミング調整部
73 第3送信タイミング調整部
74 第4送信タイミング調整部
75a〜75d 第1〜第4送信ミキサ部
76 通信装置側制御部
77 通信装置側インタフェース部
78 通信装置側記憶部
81 サーバ装置側制御部
82 サーバ装置側インタフェース部
83 サーバ装置側記憶部
f1〜f4 第1〜第4フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信相手装置と無線通信可能な通信装置と、前記通信装置と予め定める通信回線網を介して通信可能なサーバ装置とを備える通信システムであって、
前記通信装置は、
複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、通信装置本体とを有し、
前記通信装置本体は、
前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置から送信された信号を受信するとともに、前記通信相手装置に対して信号を送信する送受信部と、
前記送受信部で受信された受信信号に所定の処理を施すとともに、送信するべき送信信号を前記送受信部に与える信号処理部とを有し、
前記サーバ装置は、
予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報を記憶するサーバ側記憶部と、
前記外付け部品が取付けられたことを表す取付け情報が与えられると、前記サーバ側記憶部に記憶された前記部品遅延情報を、前記通信回線網を介して前記通信装置本体に与える遅延情報付与部とを有し、
前記信号処理部は、
前記サーバ装置の前記遅延情報付与部から前記部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子に前記送信信号が与えられるタイミングを調整する送信側遅延処理部を含むことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
通信相手装置と無線通信可能な通信装置と、前記通信装置と予め定める通信回線網を介して通信可能なサーバ装置とを備える通信システムであって、
前記通信装置は、
複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、通信装置本体とを有し、
前記通信装置本体は、
前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置から送信された信号を受信するとともに、前記通信相手装置に対して信号を送信する送受信部と、
前記送受信部で受信された受信信号に所定の処理を施すとともに、送信するべき送信信号を前記送受信部に与える信号処理部とを有し、
前記サーバ装置は、
予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報を記憶するサーバ側記憶部と、
前記外付け部品が取付けられたことを表す取付け情報が与えられると、前記サーバ側記憶部に記憶された前記部品遅延情報を、前記通信回線網を介して前記通信装置本体に与える遅延情報付与部とを有し、
前記信号処理部は、
前記サーバ装置の前記遅延情報付与部から前記部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子を介して受信された前記受信信号に前記所定の処理を施すタイミングを調整する受信側遅延処理部を含むことを特徴とする通信システム。
【請求項3】
複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、通信装置本体とを有し、前記アレイアンテナを介して通信相手装置と無線通信可能な通信装置であって、
前記通信装置本体は、
前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置から送信された信号を受信するとともに、前記通信相手装置に対して信号を送信する送受信部と、
前記送受信部で受信された受信信号に所定の処理を施すとともに、送信するべき送信信号を前記送受信部に与える信号処理部とを有し、
前記信号処理部は、
予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子に前記送信信号が与えられるタイミングを調整する送信側遅延処理部を含むことを特徴とする通信装置。
【請求項4】
複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、通信装置本体とを有し、前記アレイアンテナを介して通信相手装置と無線通信可能な通信装置であって、
前記通信装置本体は、
前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置から送信された信号を受信するとともに、前記通信相手装置に対して信号を送信する送受信部と、
前記送受信部で受信された受信信号に所定の処理を施すとともに、送信するべき送信信号を前記送受信部に与える信号処理部とを有し、
前記信号処理部は、
予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子を介して受信された前記受信信号に前記所定の処理を施すタイミングを調整する受信側遅延処理部を含むことを特徴とする通信装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の通信装置と予め定める通信回線網を介して通信可能なサーバ装置であって、
予め定める外付け部品が前記通信装置の前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報を記憶するサーバ側記憶部と、
前記外付け部品が取付けられたことを表す取付け情報が与えられると、前記サーバ側記憶部に記憶された前記部品遅延情報を、前記通信回線網を介して前記通信装置本体に与える遅延情報付与部とを有することを特徴とするサーバ装置。
【請求項6】
通信相手装置と無線通信可能に構成され、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと通信装置本体とを有する通信装置における通信方法であって、
送信するべき送信信号を前記通信装置本体の信号処理部から送受信部に与える信号処理工程と、
前記信号処理工程で前記送受信部に与えられた前記送信信号を、前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置に対して送信する送信工程とを備え、
前記信号処理工程は、
予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子に前記送信信号が与えられるタイミングを調整する送信側遅延処理工程を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項7】
通信相手装置と無線通信可能に構成され、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと通信装置本体とを有する通信装置における通信方法であって、
前記アレイアンテナを介して、前記通信相手装置から送信された信号を前記通信装置本体の送受信部で受信する受信工程と、
前記受信工程で受信された受信信号に前記通信装置本体の信号処理部で所定の処理を施す信号処理工程とを備え、
前記信号処理工程は、
予め定める外付け部品が前記アレイアンテナの各アンテナ素子と前記通信装置本体との間に取付けられることで前記各アンテナ素子と前記信号処理部との間で生じる信号の遅延時間に関する部品遅延情報が与えられると、与えられた前記部品遅延情報に基づいて、前記各アンテナ素子を介して受信された前記受信信号に前記所定の処理を施すタイミングを調整する受信側遅延処理工程を含むことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−187212(P2010−187212A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30063(P2009−30063)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】