説明

通信方法および無線装置

【課題】目標となる位置との距離に応じて通信を適応的に制御したい。
【解決手段】第1取得部20は、自己の存在位置を取得する。第2取得部22は、目標の存在位置を取得する。導出部24は、目標の存在位置と自己の存在位置との間の距離を導出する。アンテナ切替部26は、導出した距離に応じて、アンテナの指向性を制御する。選択部30は、指向性アンテナ16あるいは無指向性アンテナ18を使用しながら、無線通信を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に無線通信を実行する通信方法および無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点の出会い頭の衝突事故を防止するために、路車間通信の検討がなされている。路車間通信では、路側機と車載器との間において交差点の状況に関する情報が通信される。路車間通信では、路側機の設置が必要になり、手間と費用が大きくなる。これに対して、車車間通信、つまり車載器間で情報を通信する形態であれば、路側機の設置が不要になる。その場合、例えば、GPS(Global Positioning System)等によって現在の位置情報をリアルタイムに検出し、その位置情報を車載器同士で交換しあうことによって、自車両および他車両がそれぞれ交差点へ進入するどの道路に位置するかを判断する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−202913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能が使用されている。そのため、当該無線LANでは、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。無線LANを車車間通信に適用する場合、車両間の距離が大きくなるにつれて、信号の品質が悪化する。このような信号の悪化を抑制するためには、指向性アンテナによって所望の方向への利得を増加したり、変調多値数を下げることによって誤り耐性を強くしたり、符号化率を上げることによって誤り耐性を強くしたりすることが望ましい。一方、交差点に接近することによって、車両間の距離が小さくなると、品質の悪化は低減される。その際、交差点付近に存在する不特定多数の端末装置へ信号を送信させたり、通信速度を向上させたりすることが望まれる。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、目標となる位置との距離に応じて通信を適応的に制御する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無線装置は、自己の存在位置を取得する第1取得部と、目標の存在位置を取得する第2取得部と、第2取得部において取得した目標の存在位置と、第1取得部において取得した自己の存在位置との間の距離を導出する導出部と、導出部において導出した距離に応じて、アンテナの指向性を制御する制御部と、制御部において制御したアンテナの指向性を使用しながら、無線通信を実行する通信部と、を備える。
【0006】
本発明の別の態様は、通信方法である。この方法は、自己の存在位置を取得するステップと、目標の存在位置を取得するステップと、取得した目標の存在位置と、取得した自己の存在位置との間の距離を導出するステップと、導出した距離に応じて、アンテナの指向性を制御するステップと、制御したアンテナの指向性を使用しながら、無線通信を実行するステップと、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目標となる位置との距離に応じて通信を適応的に制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載された無線装置間においてデータ通信を実行する通信システムに関する。無線装置は、車両の速度や位置等の情報(以下、これらを「データ」という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の無線装置は、パケット信号を受信するとともに、データをもとに車両の接近等を認識する。このような接近の認識は、特に、交差点のように事故が発生しやすい場所において有効である。このような状況下において、次のことが要求される。車両が交差点から離れている場合、通信品質は悪化しやすくなる。しかしながら、交差点への接近を予告するという点において、そのような場合でも通信品質の悪化の抑制が要求される。一方、車両が交差点に近くなると、周囲の広いエリアに存在する車両へのパケット信号の送信が要求される。また、交差点付近では、通信速度を高くすることが要求される。通信速度を高くすることによって、伝送可能な情報量を増加させたり、パケット信号の長さを短くさせたりすることが可能になる。これに対応するために、本実施例に係る無線装置は、次の処理を実行する。
【0010】
本実施例に係る無線装置は、ふたつのアンテナを備える。ひとつは、指向性アンテナであり、もうひとつは、無指向性アンテナである。指向性アンテナは、アンテナ利得のピークが進行方向を向くように車両に搭載されている。また、無指向性アンテナは、完全に無指向性である必要はなく、指向性アンテナと比較して、広い角度にわたってある程度のアンテナ利得が確保されていればよい。また、無線装置は、変調多値数が異なったふたつの変調方式に対応する。ひとつは、QPSKであり、もうひとつは16QAMである。このような無線装置は、複数の交差点の存在位置を予め記憶する。また、無線装置は、現在の存在位置を取得し、現在の存在位置および進行方向をもとに、複数の交差点の中から、これから接近しようとする交差点(以下、「目標交差点」という)を選択する。
【0011】
無線装置は、目標交差点の存在位置と現在の存在位置との差異が、しきい値よりも小さくない場合、つまり現在の存在位置が交差点からある程度離れている場合、指向性アンテナの使用を制御するとともに、QPSKの使用を決定する。一方、無線装置は、目標交差点の存在位置と現在の存在位置との差異が、しきい値よりも小さい場合、つまり現在の存在位置が交差点にある程度近づいている場合、無指向性アンテナの使用を制御するとともに、16QAMの使用を決定する。無線装置は、決定したアンテナおよび変調方式を使用しながら、パケット信号を送信する。また、無線装置は、決定したアンテナを使用しながら、他の無線装置からのパケット信号を受信する。
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、車両10と総称される第1車両10a、第2車両10b、第3車両10c、第4車両10dを含む。なお、各車両10には、後述する無線装置が搭載されている。図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両10aが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両10cが、右から左へ向かって進んでいる。また、第4車両10dが、上から下へ向かって進んでおり、第2車両10bが、下から上へ向かって進んでいる。
【0013】
各車両10に搭載された無線装置は、データを取得し、データが格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。無線装置は、公知の無線LANに対応しているので、CSMA/CAに対応した動作を実行する。その結果、各無線装置は、キャリアセンスを実行して送信可能であると判定した場合に、パケット信号をブロードキャスト送信する。ここでは、説明を明瞭にするために、図1に示された複数の車両10のうち、第1車両10aだけが移動しているとする。図1は、第1車両10aが交差点からある程度離れている場合に相当する。そのような状況下において、第1車両10aに搭載された無線装置は、指向性アンテナを使用する。
【0014】
その結果、指向性ビーム200が形成され、第1車両10aは、指向性ビーム200によってパケット信号を送信するとともにパケット信号を受信する。指向性アンテナを使用することによって、全利得を維持しながら、進行方向への利得が増加される。そのため、交差点付近においても、第1車両10aからのパケット信号の強度が増加される。さらに、この場合に、第1車両10aは、変調方式としてQPSKを使用する。変調多値数の低い変調方式を使用することによって、交差点付近においても、第1車両10aからのパケット信号の品質悪化が抑制される。また、無線装置は、他の無線装置からのパケット信号を受信した場合に、パケット信号に含まれたデータをもとに、他の無線装置が搭載された車両10の存在を認識する。
【0015】
図2は、本発明の実施例に係る通信システム100の別の構成を示す。図2は、図1と同様に示される。図2は、図1よりも後の時刻の場合に相当する。つまり、図2における第1車両10aは、図1における第1車両10aよりも交差点に接近している。そのような状況において、第1車両10aに搭載された無線装置は、無指向性アンテナを使用する。その結果、無指向性ビーム202が形成され、第1車両10aは、無指向性ビーム202によってパケット信号を送信するとともにパケット信号を受信する。無指向性アンテナを使用することによって、あらゆる方向にわたって利得を得ることができる。そのため、交差点付近のさまざまな位置においても、第1車両10aからのパケット信号が受信される。さらに、この場合に、第1車両10aは、変調方式として16QAMを使用する。変調多値数の高い変調方式を使用することによって、交差点付近でのパケット信号の通信速度が向上される。また、パケット信号の通信速度が向上すると、データ量が一定であれば、パケット信号の長さが短くなる。
【0016】
図3は、車両10に搭載された無線装置50の構成を示す。無線装置50は、測位部12、記憶部14、指向性アンテナ16、無指向性アンテナ18、第1取得部20、第2取得部22、導出部24、切替実行部46、選択部30、RF部32、変復調部34、処理部36、制御部38を含む。また、切替実行部46は、アンテナ切替部26、変調方式切替部28を含み、処理部36は、生成部40、取得部42、通知部44を含む。ここで、測位部12、記憶部14は、無線装置50に含まれなくてもよい。
【0017】
測位部12は、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、無線装置50が搭載された車両10の存在位置を取得する。また、進行方向、移動速度も検出される。なお、車両10の存在位置、進行方向の取得には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。測位部12は、車両10の存在位置、進行方向の情報を第1取得部20へ出力する。第1取得部20は、測位部12から、車両10の存在位置、進行方向の情報を受けつけることによって、車両10の存在位置、進行方向を取得する。第1取得部20は、第2取得部22へ車両10の存在位置を出力し、導出部24へ車両10の存在位置および進行方向を出力する。
【0018】
記憶部14は、地図データを記憶する。なお、地図データは、無線装置50専用である必要はなく、図示しないナビゲーションシステムにて使用するためのデータであってもよい。地図データは、例えば、ベクトル形式のデータにて形成されており、ベクトル形式のデータでは、道路網表現上の結節点が「ノード」として規定され、道路網表現上のノードとノードとを連結する線分、つまり道路が「リンク」として規定されている。その際、例えば、ノードが緯度、経度と対応づけられており、当該ノードが例えば交差点に対応する。また、リンク内の特定の区間や位置の属性が「リンク内属性」として規定されている。属性として、例えば、踏切のデータ等が含まれる。
【0019】
さらに、リンク内属性は、ノードを特定するための識別番号(以下、「ノードID」という)や、車線に関する情報、例えば、車線を特定するための識別番号(以下、「車線ID」という)を含む。ここでは、道路が向かう方向ごとに車線番号が含まれる。そのため、一方通行の道路には、ひとつの車線番号が付与されているが、双方向に通行が許可されている道路には、ふたつの車線番号が付与されている。
【0020】
第2取得部22は、第1取得部20から、無線装置50の存在位置、進行方向を入力する。第2取得部22は、無線装置50の存在位置を中心に、予め定められた半径、例えば、「500m」の円を導出する。また、第2取得部22は、記憶部14にアクセスし、地図データから、円に含まれた緯度、経度に対応したノードを抽出する。当該ノードが、前述のごとく、交差点に相当する。なお、円に含まれた緯度、経度に対応した交差点が複数存在する場合、第2取得部22は、それらを抽出する。さらに、第2取得部22は、無線装置50の存在位置および進行方向をもとに、将来的に進行する位置を推定する。例えば、無線装置50の存在位置から進行方向へ直線を引くとともに、当該直線に予め定めた幅を持たせるように、エリアを生成する。
【0021】
なお、予め定めた幅は、無線装置50の存在位置からの距離が大きくなるにつれて大きくなるように規定されていてもよい。第2取得部22は、抽出した少なくともひとつの交差点の座標をもとに、エリアに含まれる交差点を選択する。ここで、エリアに含まれる交差点が複数存在する場合、第2取得部22は、無線装置50の存在位置に最も近い交差点を選択する。あるいは、第2取得部22は、前述の直線に最も近い交差点を選択する。このように、第2取得部22は、ひとつの交差点を「目標」として選択する。つまり、第2取得部22は、目標の存在位置を取得する。第2取得部22は、目標の存在位置を導出部24へ出力する。
【0022】
導出部24は、第2取得部22から、目標の存在位置を受けつけるとともに、第1取得部20から、無線装置50の存在位置を受けつける。導出部24は、第2取得部22との間の距離を導出する。なお、第2取得部22からの目標の存在位置を受けつけていない場合、つまり第2取得部22が目標を検出できていない場合、第2取得部22は、距離として、予め定めた値を設定する。なお、当該値は、後述のアンテナ切替部26および変調方式切替部28にて使用されるアンテナ用しきい値や変調用しきい値よりも大きな値である。導出部24は、距離をアンテナ切替部26および変調方式切替部28へ出力する。
【0023】
アンテナ切替部26は、導出部24から距離を入力する。アンテナ切替部26は、距離に応じて、アンテナの指向性を制御する。具体的に説明すると、アンテナ切替部26は、距離とアンテナ用しきい値とを比較する。ここで、アンテナ用しきい値は、「100m」のごとく、予め定められている。アンテナ切替部26は、距離がアンテナ用しきい値よりも小さければ、後述の無指向性アンテナ18の使用を決定する。一方、アンテナ切替部26は、距離がアンテナ用しきい値よりも小さくなければ、後述の指向性アンテナ16の使用を決定する。つまり、アンテナ切替部26は、距離が短くなるほど、アンテナの指向性が無指向性に近づくように制御する。アンテナ切替部26は、決定した内容を選択部30へ出力する。
【0024】
変調方式切替部28は、導出部24から距離を入力する。変調方式切替部28は、距離に応じて、通信速度、つまり変調方式を制御する。具体的に説明すると、変調方式切替部28は、距離と変調用しきい値とを比較する。ここで、変調用しきい値は、アンテナ用しきい値と同様に「100m」のごとく、予め定められている。なお、変調用しきい値とアンテナ用しきい値とは、同じ値であってもよいし、異なった値であってもよい。変調方式切替部28は、距離が変調用しきい値よりも小さければ、16QAMの使用を決定する。一方、変調方式切替部28は、距離が変調用しきい値よりも小さくなければ、QPSKの使用を決定する。つまり、変調方式切替部28は、距離が短くなるほど、通信速度が高くなるように、つまり変調多値数が大きくなるように制御する。変調方式切替部28は、決定した内容を選択部30へ出力する。
【0025】
指向性アンテナ16は、図1に示した指向性ビーム200を形成する。なお、指向性アンテナ16として公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。指向性アンテナ16は、車両10の進行方向へ指向性ビーム200が向くように、例えば、車両10の前方に搭載される。無指向性アンテナ18は、図2に示した無指向性ビーム202を形成する。なお、無指向性アンテナ18にも公知技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。選択部30は、アンテナ切替部26における決定内容を受けつける。選択部30は、決定内容に応じて、指向性アンテナ16あるいは無指向性アンテナ18を使用すべきアンテナとして選択する。
【0026】
RF部32は、受信処理として、指向性アンテナ16あるいは無指向性アンテナ18を介して、図示しない他の無線装置からのパケット信号を受信する。RF部32は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部32は、ベースバンドのパケット信号を変復調部34に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。
【0027】
また、RF部32には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。RF部32は、送信処理として、変復調部34から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部32は、指向性アンテナ16あるいは無指向性アンテナ18から、無線周波数のパケット信号を送信する。また、RF部32には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
【0028】
変復調部34は、受信処理として、RF部32からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。なお、パケット信号では、ヘッダ部分の後段にデータ部分が配置されている。ヘッダ部分の変調方式は、予め定められているが、データ部分の変調方式は可変に決定されている。また、ヘッダ部分に、データ部分の変調方式に関する情報が含まれている。変復調部34は、ヘッダ部分を復調した後、データ部分の変調方式に関する情報をもとに、データ部分を復調する。さらに、変復調部34は、復調した結果を処理部36に出力する。
【0029】
また、変復調部34は、変調方式切替部28における決定内容を受けつける。変復調部34は、決定内容に応じて、送信時の変調方式として、16QAMあるいはQPSKを設定する。変復調部34は、送信処理として、処理部36からのデータに対して、設定した変調方式を使用ながら変調を実行する。なお、変復調部34は、前述のごとく、ヘッダ部分に対して、予め定められた変調方式にて変調を実行する。つまり、変復調部34は、変調方式切替部28において制御した変調方式を使用しながら、変調を実行する。さらに、変復調部34は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部32へ出力する。ここで、通信システム100は、OFDM変調方式に対応するので、変復調部34は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
【0030】
取得部42は、第1取得部20と同様に、無線装置50が搭載された車両10の存在位置、進行方向、移動速度等を取得する。取得部42は、取得した情報を生成部40へ出力する。生成部40は、取得部42からの情報を受けつける。生成部40は、取得部42からの情報をもとにデータを生成する。生成部40は、生成したデータを変復調部34へ出力する。通知部44は、図示しない他の無線装置50からのデータを取得し、データの内容に応じて、図示しない他の車両10の接近等を運転者へ通知する。通知部44での処理は、これに限定されない。制御部38は、無線装置50全体の動作を制御する。例えば、制御部38は、RF部32、変復調部34、処理部36に対してCSMA/CAの処理を実行させるが、CSMA/CAとして公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0031】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0032】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図4は、無線装置50におけるアンテナ制御の手順を示すフローチャートである。第1取得部20は、現在の自己の無線装置50の存在位置等を取得する(S10)。第2取得部22は、ステップ10で取得した現在の存在位置から一定範囲内の交差点の存在位置を取得する(S12)。進行方向に交差点があれば(S14のY)、アンテナ切替部26は、ビーム制御を実行する(S16)。一方、進行方向に交差点がなければ(S14のN)、アンテナ切替部26は、指向性アンテナ16を使用する(S18)。
【0033】
図5は、無線装置50におけるアンテナ制御の別の手順を示すフローチャートである。これは、図4のステップ16の制御に相当する。現在の自己の無線装置50の存在位置と交差点との距離がアンテナ用しきい値よりも小さければ(S30のY)、アンテナ切替部26は、無指向性アンテナ18の使用を決定する(S32)。一方、現在の自己の無線装置50の存在位置と交差点との距離がアンテナ用しきい値よりも小さくなければ(S30のN)、アンテナ切替部26は、指向性アンテナ16の使用を決定する(S34)。第1取得部20は、新たに現在の自己の無線装置50の存在位置を取得し(S36)、第2取得部22において、現在の自己の無線装置50の存在位置が交差点を超えていなければ(S38のN)、ステップ30に戻る。第2取得部22において、現在の自己の無線装置50の存在位置が交差点を超えていれば(S38のY)、処理は終了される。
【0034】
図6は、無線装置50における適応変調制御の手順を示すフローチャートである。第1取得部20は、現在の自己の無線装置50の存在位置等を取得する(S50)。第2取得部22は、現在の自己の無線装置50の存在位置から一定範囲内の交差点の存在位置を取得する(S52)。進行方向に交差点があれば(S54のY)、変調方式切替部28は、適応変調を実行する(S56)。一方、進行方向に交差点がなければ(S54のN)、変調方式切替部28は、QPSKを使用する(S58)。
【0035】
図7は、無線装置50における適応変調制御の別の手順を示すフローチャートである。これは、図6のステップ56の制御に相当する。現在の自己の無線装置50の存在位置と交差点との距離が変調用しきい値よりも小さければ(S70のY)、変調方式切替部28は、16QAMの使用を決定する(S72)。一方、現在の自己の無線装置50の存在位置と交差点との距離が変調用しきい値よりも小さくなければ(S70のN)、変調方式切替部28は、QPSKの使用を決定する(S74)。第1取得部20は、新たに現在の自己の無線装置50の存在位置を取得し(S76)、第2取得部22において、現在の自己の無線装置50の存在位置が交差点を超えていなければ(S78のN)、ステップ70に戻る。第2取得部22において、現在の自己の無線装置50の存在位置が交差点を超えていれば(S78のY)、処理は終了される。
【0036】
本発明の実施例によれば、現在の自己の無線装置の存在位置と目標の存在位置とが離れている場合に、指向性アンテナを使用するので、目標の方向への利得を増加できる。また、目標の方向への利得が増幅されるので、目標の近傍に存在する無線装置での受信特性を向上できる。また、目標の近傍に存在する無線装置での受信特性が向上されるので、目標への接近を正確に通知できる。また、現在の自己の無線装置の存在位置と目標の存在位置とが近くなった場合に、無指向性アンテナを使用するので、さまざまな方向に存在する無線装置へ接近を通知できる。また、無指向性アンテナを使用するので、さまざまな方向に存在する無線装置の接近を認識できる。また、現在の自己の無線装置の存在位置と目標の存在位置との距離とアンテナ用しきい値とを比較することによって、アンテナを制御するので、処理を容易にできる。
【0037】
また、現在の自己の無線装置の存在位置と目標の存在位置とが離れている場合に、変調多値数の小さい変調方式を使用するので、通信品質を向上できる。また、通信品質が向上されるので、目標の近傍に存在する無線装置での受信特性を向上できる。また、現在の自己の無線装置の存在位置と目標の存在位置とが近くなった場合に、変調多値数の大きい変調方式を使用するので、通信速度を向上できる。また、通信速度が向上されるので、送信すべきデータ量が同一の場合にパケット信号の長さを短くできる。また、パケット信号の長さが短くなるので、通信可能な無線装置数を増加できる。また、現在の自己の無線装置の存在位置と目標の存在位置との距離と変調用しきい値とを比較することによって、変調方式を制御するので、処理を容易にできる。
【0038】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0039】
本発明の実施例において、目標を交差点として説明している。しかしながらこれに限らず例えば、目標は、カーブのような交差点以外の位置であってもよい。記憶部14は、そのような目標の座標を記憶する。事故の発生しやすい場所が目標として設定される。本変形例によれば、さまざまな位置を目標として設定できる。
【0040】
本発明の実施例において、アンテナ切替部26は、指向性アンテナ16と無指向性アンテナ18とを切りかえることによって、アンテナの指向性を制御している。しかしながらこれに限らず例えば、アレイアンテナが備えられてもよい。アレイアンテナの各アンテナは、無指向性アンテナ18に相当する。アンテナ切替部26は、無線装置50の存在位置と目標の存在位置との距離がしきい値よりも小さければ、アレイアンテナのうちのひとつのアンテナのみを使用する。また、アンテナ切替部26は、無線装置50の存在位置と目標の存在位置との距離がしきい値よりも小さくなければ、アレイアンテナにてアダプティブアレイ制御を実行する。本変形例によれば、アダプティブアレイ制御を実行するので、通信品質を向上できる。
【0041】
本発明の実施例において、アンテナ切替部26は、ひとつのアンテナ用しきい値を規定しており、2種類のアンテナを切りかえる。しかしながらこれに限らず例えば、アンテナ切替部26は、複数種類のアンテナ用しきい値を規定していてもよい。その場合、アンテナ用しきい値の数よりもひとつ多い種類のアンテナが備えられる。本変形例によれば、アンテナの指向性を詳細に制御できる。
【0042】
本発明の実施例において、変調方式切替部28は、ひとつの変調用しきい値を規定しており、2種類の変調方式を切りかえる。しかしながらこれに限らず例えば、変調方式切替部28は、複数種類の変調用しきい値を規定していてもよい。その場合、変調用しきい値の数よりもひとつ多い種類の変調方式が備えられる。本変形例によれば、変調方式を詳細に制御できる。
【0043】
本発明の実施例において、変調方式切替部28は、通信速度として変調方式を制御する。しかしながらこれに限らず例えば、変調方式切替部28は、通信速度として誤り訂正の符号化率を制御してもよい。あるいは、変調方式切替部28は、変調方式と符号化率との組み合わせを制御してもよい。本変形例によれば、通信速度を詳細に制御できる。
【0044】
本発明の実施例において、アンテナ切替部26は、アンテナの指向性を制御し、変調方式切替部28は、通信速度を制御する。しかしながらこれに限らず、アンテナ切替部26あるいは変調方式切替部28が備えられてもよい。本変形例によれば、無線装置50の構成を簡易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る通信システムの別の構成を示す図である。
【図3】図1および2の車両に搭載された無線装置の構成を示す図である。
【図4】図3の無線装置におけるアンテナ制御の手順を示すフローチャートである。
【図5】図3の無線装置におけるアンテナ制御の別の手順を示すフローチャートである。
【図6】図3の無線装置における適応変調制御の手順を示すフローチャートである。
【図7】図3の無線装置における適応変調制御の別の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
10 車両、 12 測位部、 14 記憶部、 16 指向性アンテナ、 18 無指向性アンテナ、 20 第1取得部、 22 第2取得部、 24 導出部、 26 アンテナ切替部、 28 変調方式切替部、 30 選択部、 32 RF部、 34 変復調部、 36 処理部、 38 制御部、 40 生成部、 42 取得部、 44 通知部、 46 切替実行部、 50 無線装置、 100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己の存在位置を取得する第1取得部と、
目標の存在位置を取得する第2取得部と、
前記第2取得部において取得した目標の存在位置と、前記第1取得部において取得した自己の存在位置との間の距離を導出する導出部と、
前記導出部において導出した距離に応じて、アンテナの指向性を制御する制御部と、
前記制御部において制御したアンテナの指向性を使用しながら、無線通信を実行する通信部と、
を備えることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記制御部は、距離が短くなるほど、アンテナの指向性が無指向性に近づくように制御することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
自己の存在位置を取得するステップと、
目標の存在位置を取得するステップと、
取得した目標の存在位置と、取得した自己の存在位置との間の距離を導出するステップと、
導出した距離に応じて、アンテナの指向性を制御するステップと、
制御したアンテナの指向性を使用しながら、無線通信を実行するステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−56948(P2010−56948A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220340(P2008−220340)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】