説明

通信端末およびその制御方法並びにプログラム

【課題】CPU過負荷に起因する処理遅延による通信切断を回避する通信端末を提供する。
【解決手段】
CPUと、バッファを有する記憶部と、変更可能な通信レートで通信を行う通信部と、CPUの使用率およびバッファの使用率に基づいて負荷状態を判定する負荷検出部と、負荷検出部の判定結果に基づいて通信レートを変更する負荷制御部とを具え、負荷検出部は、CPUの使用率が第1の閾値以上であってバッファの使用率が第2の閾値以上である場合に負荷状態を過負荷状態と判定するとともに、CPUの使用率が第3の閾値以下である場合に負荷状態を通常状態と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信端末に関し、特に、処理量を超えた高速データ通信を要求されて端末が過負荷状態になった場合に、通信の切断を回避する通信端末およびその制御方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に携帯通信端末を用いたデータ通信における通信速度は飛躍的に高速化している。高速データ通信を実現するためには、携帯通信端末内でデータ通信に必要な処理を高速かつ大量に実行する必要がある。データ通信速度が高速になるほど、端末が所定時間内に実行すべき処理が増加する。通常、携帯通信端末は規格で定められた最大通信レートに対応すべく設計されるため、データ送信のみ、あるいはデータ受信のみの単独であれば最大スループットで処理できる。しかし、データの送受信が同時に行われると端末の処理能力を超過しCPU(Central Processing Unit)が過負荷状態になる可能性がある。この過負荷状態が続き、CPUの処理能力を越えた処理を要求され続けた場合、処理が滞りデータ通信に必要な処理を一定時間内に完了できず、通信が切断されてしまう恐れがある。
【0003】
端末プロセッサの能力低下を判断して対処する技術として、以下のものがある。特許文献1では、プロセッサの使用率に基づき受信能力を検出し、受信能力が低下した場合にデータの再送要求を行うことが提案されている。特許文献2では、通信ノードへの総発信呼数、CPU使用率、およびバッファ使用率を測定して発信呼輻輳判定を行い、輻輳発生時に発信呼を選択的に規制することが提案されている。特許文献3には、バッファ使用率とプロセッサ使用率に基づいて輻輳制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−036889号公報(第5−6ページ、図5等)
【特許文献2】特開2004−180051号公報(第6−7ページ、図2等)
【特許文献3】特開平07−038609号公報(第3ページ、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、CPUの過負荷状態で高速データ処理要求が続くと、処理遅延により通信切断が発生してしまうことである。そこで本発明は、携帯通信端末内のCPU負荷状況等の情報に基づいて、CPU過負荷に起因する処理遅延による通信切断を回避する、通信端末、制御方法並びに通信端末制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる通信端末は、CPUと、バッファを有する記憶部と、変更可能な通信レートで通信を行う通信部と、CPUの使用率およびバッファの使用率に基づいて負荷状態を判定する負荷検出部と、負荷検出部の判定結果に基づいて通信レートを変更する負荷制御部とを具え、負荷検出部は、CPUの使用率が所定期間第1の閾値以上であってバッファの使用率が第2の閾値以上である場合に負荷状態を過負荷状態と判定するとともに、CPUの使用率が第1の閾値より低い第3の閾値以下である場合に負荷状態を通常状態と判定することをもっとも主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の通信端末は、CPU使用率に加えバッファ使用率が所定値以上となった場合に過負荷状態と判断して、通信レートを低減させてCPU負荷制御を行う。したがって、負荷制御が必要ない場合にも通信レートを低減してしまうのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態にかかる携帯通信端末の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明の方法における過負荷状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の方法における負荷制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】記憶部3に登録される、CPU負荷とUL/DLデータ通信レートとの相関テーブルの実施例を示す図である。
【図5】図2の過負荷状態の判定処理の別の例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態を、添付の図面を参照しながら以下に詳細に説明する。なお、以下の説明では本発明の通信端末を携帯電話機として説明するが、本発明は、携帯電話機のみならず、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Digital Assistants)、およびラップトップ型コンピュータ等の無線通信端末の他、デスクトップ型コンピュータやサーバコンピュータ等の有線でデータ通信を行う通信端末にも適用することができる。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態にかかる携帯電話端末1の構成を示す概略ブロック図である。本発明の携帯電話端末1は、端末が過負荷状態か通常状態かを判定する負荷検出部2と、記憶部3と、データ通信レートの変更を行う負荷制御部4と、無線通信部5と、CPU6とを具えている。なお、携帯電話端末1は、これらの構成要素の他に携帯電話機として必要な様々な要素(例えば、入出力部等)を具えるが、以下では説明の簡単化のために本発明の特徴部分のみを図示して説明する。携帯電話端末1は、無線通信部5を介して、外部の基地局7とデータ通信を行う。ここで、携帯電話端末1と基地局7とは、例えば3rd Generation Partnership Protocol(3GPP)によって規定された所定の通信規格をサポートしているものとする。携帯電話端末1から基地局7へのデータ通信はアップリンクデータ通信(すなわち端末1からの送信。以下、「ULデータ通信」)と呼ばれ、基地局7から携帯電話端末1へのデータ通信はダウンリンクデータ通信(すなわち端末1のデータ受信。以下、「DLデータ通信」)と呼ばれる。
【0011】
負荷検出部2は、携帯電話端末1に内蔵されたCPU6が過負荷状態に陥っていることを検出する。すなわち、負荷検出部2は、携帯電話端末1のCPU6が処理可能な能力以上の処理が発生したため過負荷状態に陥っており負荷制御が必要であるか、あるいは過負荷状態から脱却したため負荷制御を終了するかを判定する。この判定には、CPU使用率と、記憶部3のバッファ使用率が用いられる。一般に、CPU使用率が100%であっても必ずしも過負荷状態であるとは限らない。しかしながら、CPU使用率が100%である状態が継続したために処理が滞り、その結果未処理のデータがバッファ内に溜まってしまった場合は過負荷状態に陥ったと判断できる。このため本発明では、CPU使用率が第1の閾値以上かつバッファ使用率が第2の閾値以上である場合に過負荷状態と判断する。そして、CPU使用率が(第1の閾値より低い)第3の閾値以下となった場合に過負荷状態から脱却したと判断する。この具体的な判断処理については、フローチャートを参照しながら以降に詳述する。
【0012】
なお、バッファ使用率とは、全バッファの容量に対する、バッファの使用量の比である。通常、全バッファの容量は、システムとして既知である。バッファの使用量は、例えば、バッファとして使用されているメモリ・ブロックの個数と各メモリ・ブロックのサイズの積から求めることができる。バッファ使用率は、バッファの使用量を全バッファの容量で割ることによって求めることができる。あるいは、バッファ使用率は、バッファとして使用されているメモリ・ブロックの個数を、バッファとして使用可能なメモリ・ブロックの個数で割ることにより求めてもよい。
【0013】
CPU使用率は、ある時間中の、CPU6が処理を行っている時間の比率である。たとえば、CPU6が実行するプログラムが複数のタスクで構成され、CPU6が実行すべき処理がないときに遷移する先のタスク(アイドル・タスク)が設けられている場合であれば、CPU使用率は次のようにしても求めることができる。すなわち、アイドル・タスクに遷移した時刻と、アイドル・タスクを抜けた時刻との差から、CPU6がアイドル状態にあった時間(アイドル時間)を求める。そして、CPU使用率を、所定の期間に対するアイドル時間が占める割合として求める。CPU6が実行するプログラムがタスクで構成されていない場合であっても、アイドル状態へ遷移した時刻からアイドル状態を脱した時刻までの時間をタイマ等で計測することによって、同様にCPU使用率を求めることができる。なお、通信端末1におけるCPU6の処理内容は特に限定されない。ただし、CPU6の使用率は、通信レートに依存するものとする。すなわち、通信レートが高いほど、CPU6の使用率は上昇し、通信レートが低いほど、CPU6の使用率は低下する。したがって、CPU6は、携帯電話端末1全体の制御を行うものであってもよい。CPU6は、負荷検出部2、記憶部3、負荷制御部4、無線通信部5のいずれかの処理を行うものであってもよい。あるいは、CPU6は、通信以外のアプリケーション等の処理を行うものであってもよい。この場合、CPU6は、無線通信部5によって送受信されるデータの処理に、直接的または間接的に関与する。例えば、CPU6は、アプリケーション処理として、無線通信部5によって送信されるデータの生成または送信されるデータの基になるデータの生成を行う。あるいは、CPU6は、アプリケーション処理として、無線通信部5によって受信されたデータの処理または受信されたデータを基として生成されたデータの処理を行う。
【0014】
負荷制御部4は、CPU6が過負荷状態であると判断された場合に、通信レートを低減し、CPU負荷を過負荷状態から通常状態へと戻す制御を行う手段である。ここで、通信レートの低減には、ULデータ通信に対する制御と、DLデータ通信に対する制御が考えられる。負荷制御部4は、後に詳述する制御により、ULデータ通信とDLデータ通信をバランスよく低減させて最適な負荷制御を行う。なお、負荷検出部2および負荷制御部4は、端末1の電源投入時には常時動作するソフトウェアモジュールとして実現することができる。
【0015】
記憶部3は、CPU6の処理データを一次的に保存するバッファ3aと、ULデータ通信レートとDLデータ通信レートの組み合わせに対するCPU使用率の相関テーブル3bとを少なくとも具える。一般的に通信端末の処理能力は、CPU性能や他のハードウェア構成、ソフトウェア構成等の様々な要因によって異なる。このため、通信端末に最適な負荷制御を実施すべく、予めULデータ通信速度とDLデータ通信速度の組み合わせにおける端末のCPU使用率を測定あるいは予測し、図4に示すような相関テーブル3bに登録しておく。図4に示すように、相関テーブル3bでは、ULデータ通信レートとDLデータ通信レートがそれぞれレベル分けされ(a〜fとA〜F)、あるレベル以上でULデータ通信とDLデータ通信が同時に行われた場合にCPU使用率が100%となることが分かる。このように、図4におけるレベルa〜f、A〜Fは、それぞれ、ULデータ通信レート、DLデータ通信レートの範囲を表す。この相関テーブル3bは、携帯電話端末1の工場出荷時にテスト用データでUL・DLデータ通信を実施してCPU使用率を測定して登録してもよい。あるいは、出荷後の実際の高速データ通信時に端末内でスループットとCPU使用率を定期的にモニタリングして更新するように構成してもよい。
【0016】
図2は、上記のように構成した携帯電話端末1における過負荷状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。本発明では、CPU使用率が所定期間第1の閾値を超えており、同時にバッファ使用率が第2の閾値を超えている場合に過負荷状態であるとして負荷制御を行うよう判断する。ここで、CPU使用率に関する第1の閾値は100%であってもよいし、それより低い数値であってもよい。また、過負荷状態であると判定するための、CPU使用率が第1の閾値を超えている期間は、瞬間であってもよいし、所定の時間(例えば、数十秒等)であってもよい。図2の実施例では、CPU使用率が一瞬でも第1の閾値を超え、且つバッファ使用率が第2の閾値を超えた場合に過負荷状態であると判定する例を説明する。
【0017】
負荷検出部2は定期的に図2のフローを実行する。最初にCPU使用率を算出し(ステップS201)、記憶部3からバッファ使用率を取得する(ステップS202)。次に、負荷検出部2はCPU使用率が第1の閾値以上であって(ステップS203:Y)、バッファ使用率が所定の第2の閾値以上である場合(ステップS204:Y)に、CPU負荷状態を「過負荷状態」と設定する(ステップS205)。この負荷状態は負荷検出部2で管理される。また、CPU使用率が第1の閾値より低い第3の閾値以下であって(ステップS206)、CPU負荷状態が過負荷状態に設定されていた場合に(ステップS207:Y)、CPU負荷状態を「通常状態」と設定し(ステップS208)、負荷制御を停止する必要があると判断する。これらの条件にかからない場合はCPU負荷状態を変更せず処理を終了する。ここで、CPU負荷状態を「通常状態」と判断するための第3の閾値は第1の閾値より低ければよく、例えば第1の閾値が100%であれば第3の閾値は99%に設定することができる。
【0018】
図3は、負荷検出部2がCPU過負荷状態と判断した場合の負荷制御処理を説明するためのフローチャートである。負荷制御部4は、定期的に負荷検出部2が管理するCPU負荷状態を確認するか、負荷検出部2がCPU負荷状態を変更した場合に通知を受けて、図3の処理を実行する。負荷制御部4は、負荷検出部2からCPU6の負荷状態を受け取り(ステップS301)、CPU負荷状態が過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS302)。
【0019】
CPU負荷状態が過負荷状態であった場合(ステップS302:Y)、負荷状態を低減しなければ通信が切断されてしまう可能性があるため、負荷制御を実施する。この場合、負荷制御部4は、無線通信部5からその時点のUL通信レートとDL通信レートの情報を取得する(ステップS303)。そして、UL通信レートとDL通信レートのスループット比率(UL/DL)を算出し、スループット比率が所定の上限閾値以上であるか否かを判定する(ステップS304)。スループット比率が所定の上限閾値以上である場合(ステップS304:Y)、UL通信レートを低減する制御を行う(ステップS305)。この処理により、ULデータ通信の割合がDLデータ通信に比べて有意に多い場合に、ULデータ通信の単位時間当たりの送信量を制限する負荷制御が実現する。そして、負荷制御部4はステータスを負荷制御状態に設定し、その情報を保持しておく(ステップS310)。
【0020】
一方、スループット比率が上限閾値より小さい場合(ステップS304:N)、所定の下限閾値以下であるか否かを判定する(ステップS306)。下限閾値以下である場合(ステップS306:Y)、DL通信レートを低減する制御を行う(ステップS307)。そして、ステップS310の処理を実行する。
【0021】
ステップS307における、DL通信レートを低減する処理は、無線通信部5を介して基地局7に単位時間あたりのDLデータ通信量を低減するよう依頼することにより実現可能である。基地局7へのDL通信レート低減の依頼方法としては、3GPPをサポートする携帯電話機と基地局であれば、Radio Link Control(RLC)protocolに規定されているウィンドウ制御におけるウィンドウサイズの縮小要求を利用することができる。ウィンドウサイズとは、送達確認なしに連続して送受信できるデータ量である。DLデータ通信のウィンドウサイズを縮小すれば、より小さい単位データ量毎に端末1側の確認応答を待ってから次のセグメントが送信されるため、結果として単位時間あたりのデータ送信量が低減する。RLC protocolにおけるウィンドウサイズの縮小要求は公知技術であるため、本明細書でのこれ以上の詳細な説明は省略する。他の通信システムでは、DL通信レートを低減する目的で、データ送信量の削減や伝送速度の低下などを要求するようにしてもよい。この処理により、DLデータ通信の割合がULデータ通信に比べて有意に多い場合に、DLデータ通信の単位時間当たりの送信量を制限する負荷制御が実現する。
【0022】
スループット比率が上限閾値と下限閾値の間にある場合(ステップS306:N)、負荷制御部4は、UL/DL通信レートをそれぞれ同程度低減させる(ステップS308)。この場合、UL/DL通信レートをそれぞれ同じ量だけ低減させてもよいし、スループット比率を維持したままUL/DL通信レートをそれぞれ低減させてもよい。その後、負荷制御部4はステップS310の処理を実行する。なお、ここで「同程度」とは、実質的に同じとみなすことができる程度であることを意味する。UL/DLスループットの削減量は、厳密に等しい必要はない。差があっても用途によって許容される程度であれば、同程度とみなすことができる。このようにして、スループットすなわちデータ通信レートを低減させて、端末1を過負荷状態から脱却させる。
【0023】
負荷制御部4は、通信レートを削減する場合、記憶部3の相関テーブル3bを用いる。すなわち、例えばステップS305でULスループットを削減する場合、その時点のUL/DL通信レートのレベルを取得する。そして、図4の相関テーブルからDLデータ通信レートを落とさずにCPU負荷が100%以下となるULデータ通信レートのレベルを導出する。具体的には、その時点のUL通信レートがレベル(a)でDL通信レートがレベル(C)である場合、図4の相関テーブル3bから、DLデータ通信レートのレベル(C)は落とさずに、この場合のCPU負荷率が90%となるULデータ通信レートのレベル(c)を導出する。そして、ULデータ通信レートをレベル(c)まで低減する制御を実行する。同様に、UL/DL通信レートがともに100%である場合は、UL/DLデータ通信レートを同程度下げることとする(ステップS308)。そして、相関テーブル3bを参照してCPU負荷が90%となるULデータ通信レートをレベル(c)、DLデータ通信レートをレベル(C)に低減する。
【0024】
このように、予め相関テーブル3bを作成することにより、例えばデータ通信レートを漸減させながらCPU負荷を継続的に測定し、CPU負荷が100%以下となるのを見極める処理を毎回行うよりも迅速かつ効率的に負荷制御を実施することができる。また、負荷制御を行う際にUL通信レートとDL通信レートを取得し、有意に高くなっているULおよび/またはDL通信レートを低減するようにすれば、ULとDLの通信レートをバランスよく制御することができる。
【0025】
また、CPU負荷状態が過負荷状態でない場合(ステップS303:N)、その時点の負荷制御状態を判定する(ステップS311)。その時点の負荷制御状態が制御状態である場合(S311:Y)、過負荷状態を脱出しておりこれ以上の負荷制御を行う必要がないため、負荷制御を停止して(ステップS312)負荷状態を「通常状態」に設定する(ステップS313)。ここで負荷制御の停止は、UL/DLデータ通信レートの制限を撤廃することである。その時点の負荷制御状態が制御状態でない場合には(S311:N)、処理を終了する。
【0026】
以上に説明したように、本発明によれば、基地局などのデータ通信相手からCPUの処理性能以上の高速なULデータ通信を要求されたり、高速なDLデータが送られたりしてCPU過負荷状態となった場合でも、通信端末内のCPU負荷状況の情報に基づいて最適なUL/DLデータ通信速度を導出する。そして、タイムリーにCPU負荷制御を実行することにより、CPUの過負荷に起因する通信切断を有効に回避することができる。
【0027】
図5は、図2に示す過負荷状態判定処理の別の例を説明するためのフローチャートである。本例では、CPU使用率が第1の閾値を超えたまま所定期間経過し、且つバッファ使用率が第2の閾値以上である場合に負荷制御を行う。すなわち、負荷検出部2はCPU使用率とバッファ使用率を取得する(ステップS201、S202)。そして、負荷検出部2は、CPU使用率が第1の閾値以上であるか否かを判断する(ステップS203)。CPU使用率が第1の閾値以上である場合(ステップS203:Y)、その状態が一定時間(例えば10秒)継続するか否かを判定する(ステップS203−1)。CPU使用率が一定時間第1の閾値以上である場合(ステップS203−1:Y)、バッファ使用率が第2の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS204)。バッファ使用率が第2の閾値以上である場合に(ステップS204:Y)、CPU負荷状態を過負荷状態に設定する(ステップS205)。本例において、ステップS203−1を追加した以外は図2の実施例と同一であり、その後の過負荷制御処理も上記実施例と同一である。このように、過負荷状態に陥っているか否かの判定に時間の要素を追加することにより、CPU過負荷状態をより正確に検出して適切な過負荷制御を実施することができる。
【0028】
なお、上記の説明では、携帯電話端末と基地局間の通信を例としたため、通信の方向をアップリンク、ダウンリンクと表現している。しかし、本発明は端末間通信などの通信形態にも適用可能であり、通信の方向はアップリンク、ダウンリンクには限定されない。通信の方向は、対象となる通信装置がデータを受信する方向と送信する方向の2方向あればよい。そして、その2方向のそれぞれの通信レートを上記のように制御して最適化することができる。
【0029】
また、上記の説明において本発明の通信端末の実施形態を携帯電話機として記載しているが、本発明はPHSや小型ゲーム機等の通信機能を有する他の電子機器や、通信機能を有し有線でネットワーク接続されるパーソナルコンピュータやサーバコンピュータにも適用することができる。また、通信の種類の無線通信には限定されず、有線通信であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は電子機器製造業、特にデータ通信機能を有する携帯電話機やコンピュータ機器製造業において利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 携帯電話端末
2 負荷検出部
3 記憶部
4 負荷制御部
5 無線通信部
6 CPU
7 基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUと、
バッファを有する記憶部と、
変更可能な通信レートで通信を行う通信部と、
前記CPUの使用率および前記バッファの使用率に基づいて負荷状態を判定する負荷検出部と、
前記負荷検出部の判定結果に基づいて、前記通信レートを変更する負荷制御部とを具え、
前記負荷検出部は、前記CPUの使用率が所定期間第1の閾値以上であって前記バッファの使用率が第2の閾値以上である場合に前記負荷状態を過負荷状態と判定するとともに、前記CPUの使用率が前記第1の閾値より低い第3の閾値以下である場合に前記負荷状態を通常状態と判定することを特徴とする通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の通信端末において、
前記記憶部がさらに、送信レートおよび受信レートの組み合わせと前記CPUの使用率とを対応させたテーブルを具えるとともに、
前記負荷制御部は、前記過負荷状態と判定された場合に前記テーブルを参照して、前記CPUの使用率が所定値以下となるレベルまで前記送信レートおよび/または受信レートを低減することを特徴とする通信端末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の通信端末において、
前記負荷制御部は、前記過負荷状態と判定された場合に、その時点の送信レートおよび受信レートを取得し、
前記送信レートが受信レートに対して第1の割合以上である場合に前記送信レートを低減し、
前記送信レートが前記受信レートに対して前記第1の割合より小さい第2の割合以下である場合に前記受信レートを低減し、
前記送信レートが前記受信レートに対して前記第1の割合より小さく、前記第2の割合よりも大きいとき、前記送信レートおよび前記受信レートを実質的に等しい割合だけ低減することを特徴とする通信端末。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信端末において、
前記CPUの使用率は、前記通信レートに依存することを特徴とする通信端末。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信端末において、
前記負荷制御部は、データ送信元に対し単位時間当たりの送信データ量の削減を依頼することにより、前記受信レートを変更することを特徴とする通信端末。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信端末において、
前記負荷制御部は、ウィンドウ制御を用いた前記通信を行うデータ送信元にウィンドウサイズの変更を要求することにより、前記受信レートを変更することを特徴とする通信端末。
【請求項7】
相互に通信を行う少なくとも2の通信装置を具える通信システムにおいて、前記通信装置の少なくとも1以上が、
CPUと、バッファを有する記憶部と、変更可能な通信レートで通信を行う通信部と、前記CPUの使用率および前記バッファの使用率に基づいて負荷状態を判定する負荷検出部と、前記負荷検出部の判定結果に基づいて、前記通信レートを変更する負荷制御部とを具え、
前記負荷検出部は、前記CPUの使用率が所定期間第1の閾値以上であって前記バッファの使用率が第2の閾値以上である場合に前記負荷状態を過負荷状態と判定するとともに、前記CPUの使用率が前記第1の閾値より低い第3の閾値以下である場合に前記負荷状態を通常状態と判定することを特徴とする通信システム。
【請求項8】
CPUと、バッファを有する記憶部と、変更可能な通信レートで通信を行う通信部とを具える通信端末の制御方法であって、
前記CPUの使用率および前記バッファの使用率に基づいて負荷状態を判定するステップと、前記判定の結果に応じて通信レートを変更するステップとを具え、前記負荷を判定するステップは、前記CPUの使用率が第1の閾値以上であって前記バッファの使用率が第2の閾値以上である場合に前記負荷状態を過負荷状態と判定するとともに、前記CPUの使用率が前記第1の閾値より低い第3の閾値未満である場合に前記負荷状態を通常状態と判定することを特徴とする方法。
【請求項9】
CPUと、バッファを有する記憶部と、変更可能な通信レートで通信を行う通信部とを具える通信端末の制御プログラムであって、前記CPUの使用率が第1の閾値以上であって前記バッファの使用率が第2の閾値以上である場合に過負荷状態と判定するとともに、前記CPUの使用率が前記第1の閾値より低い第3の閾値未満である場合に通常状態と判定する負荷判定ステップと、前記判定の結果に応じて通信レートを変更するステップとを前記通信端末に実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−166636(P2011−166636A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29639(P2010−29639)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(507110833)アドコアテック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】