説明

通信端末

【課題】スクリプト言語で記述されたプログラムによる自動発信が禁止された通信端末でも、予め設定された発信タイミングでの正確な発信を可能にする通信端末を提供する。
【解決手段】アクセスパス要求生成部31はアクセスパス要求を生成する。アクセスパス要求送信部32はアクセスパス要求をアクセスパスサーバAPSへ送信する。アクセスパス受信部33はアクセスパスサーバAPSからアクセスパス応答を受信する。発信タイミング通知部34は、受信したアクセスパス応答に登録されているアクセスタイミングを待ってユーザに発信タイミングである旨を通知する。この発信タイミング通知は、表示部42、スピーカ43、発光ライト45および/または振動モータ46からユーザに認知可能な形式で出力される。サービス要求送信部35は、発信タイミング通知を認知したユーザによる発信操作を検知して、対応するエンドサーバESへサービス要求を発信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信端末に係り、特に、スクリプト言語で記述された簡易プログラムによる自動発信が制限された通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビやラジオ番組などのイベントを契機として、特定のサーバへユーザからのアクセスが短時間に集中する場合がある。特定のイベントを契機としたアクセス集中は、例えば音楽番組におけるCD売り上げランキングの発表直後あるいは番組中の視聴者プレゼントへの応募直後などに生じ得る。視聴者が電話回線やインターネット等の通信回線を利用して一斉に特定のサーバにアクセスすると、サーバへのアクセス量が短時間で増加し、サーバの動作が過負荷により不安定となったり、あるいはシステムダウンが起こったりする。特許文献1,2には、このような集中的なアクセスを抑制するアクセスパス方式の発信規制が開示されている。
【0003】
アクセスパス方式の発信規制では、エンドサーバの前段にアクセスパスサーバと呼ばれる中間ノードが設置される。エンドサーバに対してコンテンツ配信などのサービスを要求するユーザ端末は、エンドサーバへアクセスする前にアクセスパスサーバへアクセス要求を送信する。アクセスパスサーバはアクセス要求に応答して、自サーバ内に保持している各エンドサーバの混み具合等を模擬する機能を利用することでエンドサーバにアクセスするまでに待機すべき時間を計算し、これを各ユーザ端末に通知する。各ユーザ端末は、アクセスパスサーバから通知された待機時間だけ待機した後、エンドサーバへサービス要求を発信することでコンテンツ配信等のサービスを受ける。このようなアクセスパス方式の発信規制では、ユーザ端末は下記3つの動作を行う必要がある。
【0004】
(1)アクセスパス要求の送信
(2)指定時間の待機
(3)サービス要求の送信
【0005】
これら3つの動作を汎用スクリプトの一つであるFlash Liteで実現する場合、上記(1)および(3)は、それぞれFlash LiteにおけるloadVariables関数およびgetURL関数を用いることで実現できる。また、上記(2)はユーザに待機を促す指定時間分のアニメーションを端末ディスプレイに表示することで実現できる。
【特許文献1】特願2007−207986号
【特許文献2】特願2008−151602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くのモバイル端末では、悪意により作成されたプログラムによりユーザの認知しない通信が勝手に行われないようにするために、スクリプト言語で記述された簡易プログラム(以下、単にスクリプトと表現する場合もある)による自動発信が制限されている。そのため、上記の例であれば、ユーザは待機時間中でも常に端末のディスプレイを注視し、発信タイミングが到来したことを自ら認知して能動的に発信操作を行うことにより、getURL関数を起動して通信(コンテンツダウンロード)を開始する必要がある。
【0007】
しかしながら、待機時間が数分にわたる場合などはディスプレイを注視し続けることが難しい。その結果、発信タイミングを看過してしまい、自動発信のような高い時刻精度での発信を行えないという技術課題があった。
【0008】
特に、上記したアクセスパス方式の発信規制では、発信タイミングを看過してしまうとアクセスパスが無効となってエンドサーバへのアクセスが不能となったり、発信タイミングが設計通りに分散されなくなってネットワークの輻輳やエンドサーバの過負荷を招き、最悪の場合にはシステムダウンを招いたりすることがある。
【0009】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、プログラムによる自動発信が制限された通信端末でも、予め設定された発信タイミングでの正確な発信を可能にする通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、スクリプト言語で記述されたような簡易プログラムによる自動発信が禁止された通信端末において、発信タイミングを設定する手段と、ユーザの入力操作を受け付ける入力操作手段と、発信タイミングを待って発信タイミングであることを通知する手段と、通知に応答した発信操作を検知して発信する手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発信タイミングがユーザに通知されるので、スクリプトによる自動発信が制限された通信端末でも、予め設定された発信タイミングでの正確な発信が可能になる。したがって、プログラムによる自動発信を禁止する高度なセキュリティレベルを維持しながら自動発信に近い時刻精度での発信が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施の形態について詳細に説明する。 図1は、本発明が適用されるネットワークの主要部の構成を示したブロック図であり、ここでは、ユーザ端末MNからエンドサーバESj(サービス提供サーバ)へコンテンツ配信のサービスを要求する場合を例にして説明する。
【0013】
携帯電話、PDAあるいはコンピュータなどのユーザ端末MNは、基地局APを経由して携帯電話網あるいはインターネット等のIPネットワークNWに接続されている。また、ユーザ端末MNからのサービス要求に応答して、音楽や映像などのコンテンツを配信する複数のエンドサーバESjが、アクセスパスサーバAPSと共に前記IPネットワークNWに接続されている。
【0014】
前記アクセスパスサーバAPSは、各ユーザ端末MNに対して各エンドサーバESjへのアクセスを許可するタイミングを決定して各ユーザ端末MNへ通知する機能を備え、ユーザ端末MNからアクセス先のエンドサーバESjの識別情報およびコンテンツの識別情報を含むアクセスパス要求を受信すると、エンドサーバESjの能力や状況に基づいてアクセスタイミングを決定し、これをユーザ端末MNへ通知する。ユーザ端末MNは、通知されたアクセスタイミングを待ってエンドサーバESjへサービス要求を送信し、当該エンドサーバESjからコンテンツの配信サービスを享受する。
【0015】
図2は、前記アクセスパスサーバAPSの主要部の構成を示した機能ブロック図であり、ここでは、本発明の説明に不要な構成は図示が省略されている。なお、アクセスパスサーバAPSがアクセスパス要求を受信ごとに実行する応答処理は低負荷なので、アクセスパス要求が短時間に集中的に受信される場合でも、アクセスパスサーバAPSは全てのアクセスパス要求を受信順に滞りなく受付処理できる。
【0016】
アクセスパス要求受信部11は、各ユーザ端末MNから送信されたアクセスパス要求を受信する。サーバ能力管理部12には、各エンドサーバESjの処理能力を代表する指標として、単位時間ごとに処理可能なメッセージ数やデータ量などが制御レートとして予め登録されている。サーバ処理管理部13では、各エンドサーバESjにおいて未処理のリクエスト量がキュー値として管理されている。
【0017】
アクセスタイミング決定部14は、前記サーバ処理管理部13で管理されている各エンドサーバESjのキュー値や前記サーバ能力管理部12で管理されている各エンドサーバESjの処理能力をパラメータとして、各ユーザ端末MNに対して許可する各エンドサーバESjへのアクセスタイミングをアクセスパス要求ごとに決定する。アクセスパス応答生成部15は、エンドサーバESjへのアクセスタイミングを含むアクセスパス応答を生成する。アクセスパス応答返信部16は、前記アクセスパス応答を前記アクセスパス要求の送信元に返信する。
【0018】
図3は、前記ユーザ端末MNの主要部の構成を示した機能ブロック図であり、 ここでも本発明の説明に不要な構成は図示が省略されている。
【0019】
アクセスパス要求生成部31は、入力操作部41への要求操作に応答してアクセスパス要求を生成する。アクセスパス要求送信部32は、前記アクセスパス要求をアクセスパスサーバAPSへ送信する。アクセスパス受信部33は、アクセスパスサーバAPSから送信されるアクセスパス応答を受信する。発信タイミング通知部34は、受信したアクセスパス応答に登録されているアクセスタイミングを待ってユーザに発信タイミングである旨を通知する。この発信タイミング通知は、表示部42、スピーカ43、発光ライト45および/または振動モータ46からユーザに認知可能な形式で出力される。
【0020】
サービス要求送信部35は、前記発信タイミング通知を認知したユーザによる発信操作を検知して、対応するエンドサーバESへサービス要求を発信する。本実施形態では、発信タイミングの通知後、所定の時間内に検知された発信操作のみを前記発信タイミング通知に応答した発信操作と判断する。サービス受信部36は、エンドサーバESから配信されるコンテンツを受信する。受信されたコンテンツは記憶部44に一時記憶され、その後直ちにあるいはユーザの要求に応じて再生される。
【0021】
前記アクセスパス要求生成部31、アクセスパス要求送信部32は、アクセスパス受信部33、発信タイミング通知部34、サービス要求送信部35およびサービス受信部36の各機能は、汎用のスクリプト言語で記述された簡易プログラムをCPU(図示せず)で実行することにより実現される。
【0022】
次いで、フローチャートを参照して本発明の一実施形態の動作を詳細に説明する。図4は、コンテンツ配信を要求するユーザ端末MNの動作を示したフローチャートであり、図5は、アクセスパスサーバAPSの動作を示したフローチャートである。図6は、ユーザ端末MNの画面遷移の一例を示した図であり、図7は、本実施形態の動作を示したシーケンスフローである。
【0023】
コンテンツ配信を要求するユーザは、ユーザ端末MNにおいて、図6(a)に一例を示したコンテンツ選択画面を参照しながら入力操作部41を操作してコンテンツのリクエスト操作を実施する。例えばコンテンツAの配信が選択され、これが図4のステップS11で検知されるとステップS12へ進む。ステップS12では、要求するコンテンツAの識別子および当該コンテンツを提供するエンドサーバESjの識別子を含み、アクセスパスサーバAPSを宛先とするアクセスパス要求が前記アクセスパス要求生成部31で生成される。このアクセスパス要求は、ステップS13において、アクセスパス要求送信部32からアクセスパスサーバAPSへ送信される。
【0024】
アクセスパスサーバAPSは、図5のステップS31において前記アクセスパス要求が前記アクセスパス要求受信部11により受信されると、ステップS32では、前記アクセスタイミング決定部14において、ユーザ端末MNに前記エンドサーバESjへのアクセスを許可するタイミングが決定される。このアクセスタイミングは、エンドサーバESjの処理能力や現在の負荷等に基づいて決定される。
【0025】
ステップS33では、前記アクセスタイミングとして遅延時刻ΔTdを含むアクセスパス応答が前記アクセスパス応答生成部15で生成され、ステップS34において、前記アクセスパス応答返信部16から前記アクセスパス要求の送信元へ返信される。
【0026】
図4へ戻り、ユーザ端末MNでは、前記アクセスパス応答がステップS14で前記アクセスパス受信部33により受信されると、ステップS15では、このアクセスパス応答に登録されている遅延時間ΔTdが抽出されてカウントダウンタイマTに設定される。ステップS16では、配信を要求するコンテンツの識別子およびサービス提供サーバの識別子を含むコンテンツ要求がサービス要求として生成される。
【0027】
ステップS17では、前記タイマTがカウントダウンを開始する。ステップS18では、図6(b)に一例を示したように、発信タイミングまでの残余時間を表示する待機画面が表示される。ステップS19では、前記タイマTがタイムアウトしたか否かが判定され、タイムアウトしていなければステップS18へ戻ってカウントダウンが継続される。
【0028】
前記タイマTがタイムアウトとするとステップS20へ進み、前記発信タイミング通知部34により、図6(c)に一例を示した発信操作画面が端末ディスプレイに表示されると共にスピーカ43へ警告音が出力され、さらには発光ランプ45および振動モータ46が付勢されてユーザに発信タイミングが通知される。ステップS21では、ユーザによる発信操作の有無が判定され、前記入力操作部41への所定の発信操作が検知されるとステップS22へ進む。ステップS22では、前記ステップS16で生成されたサービス要求(ここでは、コンテンツ要求)が、前記エンドサーバESjを宛先として送信される。このサービス要求を受信したエンドサーバESjは、リクエストされているコンテンツを用意して前記ユーザ端末MNへ配信する。
【0029】
ユーザ端末MNは、前記コンテンツをステップS23で受信すると、ステップS24へ進んで当該コンテンツを記憶部44に記憶する。なお、コンテンツのダウンロード中は図6(d)に示したダウンロード画面が表示され、ダウンロードの進行状況がユーザに通知される。ステップS24では、ダウンロード完了メッセージが端末ディスプレイに表示される。
【0030】
なお、上記した実施形態では、ユーザ端末がコンテンツ配信用のアクセスパスを予め取得し、このアクセスパスによって許可されたアクセスタイミングでエンドサーバへコンテンツ要求を送信してコンテンツをダウンロードする場合を例にして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、ユーザ端末がデータやコンテンツをエンドサーバへアップロードするためのアクセスパスを予め取得し、許可されたアクセスタイミングでアップロードを実行する場合にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明が適用されるネットワークの主要部の構成を示したブロック図である。
【図2】アクセスパスサーバAPSの主要部の構成を示した機能ブロック図である。
【図3】ユーザ端末MNの主要部の構成を示した機能ブロック図である。
【図4】ユーザ端末MNの動作を示したフローチャートである。
【図5】アクセスパスサーバAPSの動作を示したフローチャートである。
【図6】ユーザ端末MNの画面遷移の一例を示した図である。
【図7】一実施形態の動作を示したシーケンスフローである。
【符号の説明】
【0032】
11…アクセスパス要求受信部,12…サーバ能力管理部,13…サーバ処理管理部,14…アクセスタイミング決定部,15…アクセスパス応答生成部,16…アクセスパス応答返信部,31…アクセスパス要求生成部,32…アクセスパス要求送信部,33…アクセスパス受信部,34…発信タイミング通知部,35…サービス要求送信部,36…サービス受信部,41…入力操作部,42…表示部,43…スピーカ,44…記憶部,45…発光ライト,46…振動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムによる自動発信が禁止された通信端末において、
発信タイミングを設定する手段と、
ユーザの入力操作を受け付ける入力操作手段と、
発信タイミングを待って発信タイミングであることをユーザに通知する手段と、
前記通知に応答した発信操作を検知して発信する手段とを具備したことを特徴とする通信端末。
【請求項2】
前記発信タイミングを設定する手段が、
アクセスパス要求をアクセスパスサーバへ送信する手段と、
前記アクセスパスサーバから、エンドサーバへのアクセスタイミングの登録されたアクセスパスを受信する手段と、
前記アクセスタイミングを発信タイミングとして設定する手段とを含み、
前記発信手段は、前記発信操作を検知して前記エンドサーバへメッセージを発信することを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記発信タイミングを通知する手段は、発信タイミングをユーザが感知できる音、振動および光の少なくとも一つを発生させることを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項4】
前記発信手段は、前記通知から所定の時間内の発信操作を検知することを特徴とする請求項1に記載の通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−135902(P2010−135902A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307509(P2008−307509)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FLASH
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】