説明

通信装置、通信システムおよび通信方法

【課題】単方向通信チャネルアグリゲーション技法を使用する場合において、自動再送制御(ARQ)を実現させる技法を提供する。
【解決手段】相手側通信装置と自装置との間で通信を行う通信装置(100)は、相手側通信装置と自装置との間で、双方向通信チャネルでの通信、および、少なくとも1つの単方向通信チャネルでの通信を確立させて通信を行う通信部(110)と、通信部によって確立された少なくとも1つの単方向通信チャネルを介して相手側通信装置から自装置へ送信され、通信部により受信された信号に対するフィードバック情報を取得するフィードバック情報取得部(130)と、フィードバック情報取得部で取得された、少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、双方向通信チャネルを介して相手側通信装置に送信するように通信部を制御する制御部(120)とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信システムおよび通信方法に関し、特に、通信方向において非対称数のチャネル(単方向のチャネル割り当て)をサポートする通信方式において、データ欠落を前提とするデータ通信路での自動再送制御(ARQ; Automatic Repeat reQuest)を実現させる通信装置、通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パケットなどのデータの欠落を前提とするデータ/パケット通信路は、有線通信方式および無線通信方式の双方で使用されている。無線通信方式では、短距離であってもエラーレートは、無線通信方式のそれよりも顕著に高いため、自動再送制御の適用は必須となる。また、無線通信方式では、基地局とユーザ端末との距離に応じてエラーレートが高くなる。さらに、有線通信方式、無線通信方式を問わず、データトラフィックが増大してデータコリジョンが発生した場合には、データが欠落することとなる。他方、有線通信方式では、通信路の品質が一般的に良好ではあるが、例えば、ADSL(Asynchronous Digital Subscriber Line)などにおいて、収容局(基地局)と加入者宅(ユーザ端末)との距離が長くなればなるほど、エラーレートが高くなり、それに応じてデータ欠落が発生する。即ち、有線通信方式でも、自動再送制御を適用することが要とされる。
【0003】
無線通信方式には様々なものがあるが、例えば、TDMA-TDD通信方式を用いている無線通信規格に準拠している通信システムにPHS(Personal Handyphone System)やiBurst(登録商標)システムがあり、それぞれ”ARIB STD-28(ARIB)”(非特許文献1)や”High Capacity-Spatial Division Multiple Access (HC-SDMA) WTSC- 2005-032(ATIS/ANSI)”(非特許文献2)で規定されている。
【0004】
無線通信方式においては、通信を行う2つの通信装置のうち片方、もしくは両方が移動可能である場合があり、通信装置間の距離が、移動によって無線伝播距離を超えたときは、その期間通信が途絶えることになる。また、仮に通信装置の移動が無い場合でも、電波伝播経路の変化により通信が途絶える期間を持つ。このように無線通信方式では、通信の途中の中断を避けることが非常に困難となる。このように、通信途中の中断がある経路で、パケットベースの通信を行うにはARQの実装を行うことにより、通信経路の信頼性を高めることができる。
【0005】
<ARQについて>
ARQ(Automatic Repeat reQuest)は、一般にパケット欠落が存在することを前提とする通信経路で受信側からの情報のフィードバックにより送信側は欠落したパケットのシーケンス番号を知り、欠落したシーケンス番号のパケットの再送を自動で行うための仕組みであり、既知の技術である。無線通信機器でのARQの例は”High Capacity-Spatial Division Multiple Access (HC-SDMA) WTSC- 2005-032(ATIS/ANSI)”等がある。このドキュメントにおけるL2 RLC(Layer 2 Radio Link Control)の一部としてARQの一構成例が示されている。基本的なメカニズムとしては、送信側が、運搬するデータの最後のバイトのシーケンス番号をパケットヘッダに格納して送信する。受信側は、成功裏に受信したデータ列のうち、欠落せずに連続しているデータのうち最近のデータ列の最後のバイトのシーケンス番号をAck(肯定応答)として送信側に返送する。送信側は、送信したはずのデータのシーケンス番号より古いシーケンス番号しか得られなかった場合、Ackとして得たシーケンス番号に続くデータ列を再送する。受信側は、再送パケットの受信によりギャップが埋まることにより、Ackに含めるシーケンス番号を受信データのうち最新のバイトのシーケンス番号にする。
【0006】
ARQにはGBN型(Go Back N-Type)とSR型(Selective Repeat-Type)が考案されている。GBN型は、受信側からのフィードバック情報に含まれる受領確認情報Ackが指し示す、欠落データのシーケンスナンバーにまで遡り、順番に送信しなおす方法である。これに対してSR型は、受信側からのフィードバック情報に含まれるAckが指し示している成功裏に受信されたシーケンス番号に基づいて「欠落したであろうシーケンス番号のデータのみ」を再送し、以降は新規データの送信を行う方法である。一般に、無線通信経路や衛星通信等の欠落頻度が高く、かつ、ラウンドトリップタイムRTTが大きい値をもつ通信経路においては、SR型ARQの方が良好なスループットを得られることが知られている。ただし、SR型ARQは先行して新規データを送信し続けるため、データ欠落が多い伝送経路の場合、Ack未受領の送信データがアウトスタンディング数(Ackを受取らずに送信可能なパケットの最大数)に達しやすい特徴を持つ。”High Capacity-Spatial Division Multiple Access (HC-SDMA) WTSC- 2005-032(ATIS/ANSI)”ではアウトスタンディング数に達するまではSR型ARQを用い、アウトスタンディング数に達した状態では、Ackによって受領確認できていないデータのシーケンスナンバーまで遡り、データを当該シーケンスナンバーから順番に再送し直す制御技術を開示している。
【非特許文献1】標準規格“ARIB STD-28(ARIB)”、電波産業会
【非特許文献2】”High Capacity-Spatial Division Multiple Access (HC-SDMA) WTSC- 2005-032(ATIS/ANSI)”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したデータ欠落を前提とする伝送路での自動再送技術は、無線通信や有線通信において、アップリンクチャネルおよびダウンリンクチャネルを有する双方向通信チャネルを使用する通信システムを対象とし、このような双方向通信チャネルを使用する通信システムにおいて様々な技術が開発されてきた。このような自動再送技術では、GBN型、SR型のどちらであっても、例えば、ダウンリンクチャネルでデータ欠落が発生した場合は、そのダウンリンクチャネルと対をなす「アップリンクチャネル」を介して何らかのフィードバック情報(典型的には、成功裏に受信したパケットのシーケンス番号を含むAck)を送信するように通信装置が構成されていた。
【0008】
一方、本出願人は、双方向通信チャネルを基本的に使用しながら、データ流量などに応じて追加の双方向通信チャネルを割り当てるチャネルアグリゲーションを行うような通信システムにおいて、アップリンク、ダウンリンク別のデータ流量の状況に応じて、双方向通信チャネルを構成する「片側(単方向)のチャネルのみ」を停止したり(或いは再開したり)、新たに「単方向通信チャネルのみ」を追加したり(或いは開放したり)する、従来とは異なる新規な単方向通信チャネルアグリゲーション技法を開発した(この通信技法については後述する)。このような、アップリンクとダウンリンクとの間でチャネル数が非対称(単方向のチャネル割り当て)となる通信システムでは、反対方向の通信チャネルを持たない「単方向通信チャネル」が存在する。このような「単方向通信チャネル」においてデータ欠落が発生した場合に、フィードバック情報(再送要求)を送信するときに使用される、単方向通信チャネルとチャネルペアを形成するべき「反対方向の通信チャネル」が存在せず、フィードバック情報(再送要求)を送信することができない。従って、アップリンクチャネルおよびダウンリンクチャネルからなる双方向通信チャネルを前提とする従来の自動再送技術は、本出願人が開発した「単方向通信チャネルアグリゲーション技法」を使用する通信システムに適用することが不可能であった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上述したような単方向通信チャネルアグリゲーション技法を使用する場合において、自動再送制御(ARQ; Automatic Repeat reQuest)を実現させる技法(通信装置、通信システムおよび通信方法)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した諸課題を解決すべく、本発明による通信装置は、
相手側通信装置と自装置との間で通信を行う通信装置であって、
前記相手側通信装置と自装置との間で、双方向通信チャネルでの通信、および、少なくとも1つの単方向通信チャネルでの通信を確立させて通信を行う通信部と、
前記通信部によって確立された前記少なくとも1つの単方向通信チャネルを介して前記相手側通信装置から自装置へ送信され、前記通信部により受信された信号に対するフィードバック情報を取得するフィードバック情報取得部と、
前記フィードバック情報取得部で取得された、前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、前記双方向通信チャネルを介して前記相手側通信装置に送信するように前記通信部を制御する制御部と、
を具える。
【0011】
また、第2の発明による通信装置は、
前記相手側通信装置と自装置との間でやりとりされる信号のタイプフィールドの識別子(例えば、ビットパターン)と、単方向通信チャネルに対するフィードバック情報の、前記やりとりされる信号内の位置とを対応付けたテーブルを格納する記憶部をさらに具える、
ことを特徴とする。
【0012】
また、第3の発明による通信装置は、
前記記制御部が、
前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、前記テーブルの対応付けに応じた位置に配置した信号を、前記双方向通信チャネルを介して前記相手側通信装置に送信するように前記通信部を制御する、
ことを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明による通信装置は、
前記単方向通信チャネルが複数あり、
前記制御部が、
前記複数の単方向通信チャネルの各々における各フィードバック情報を、前記テーブルの対応付けに応じた位置にそれぞれ配置した信号を、前記双方向通信チャネルを介して前記相手側通信装置に送信するように前記通信部を制御する、
ことを特徴とする。
【0014】
また、第5の発明による通信システムは、
第1の通信装置と第2の通信装置との間で通信を行う通信システムであって、
前記第1の通信装置が、
前記第2の通信装置と自装置との間で、双方向通信チャネルでの通信、および、少なくとも1つの単方向通信チャネルでの通信を確立させて通信を行う通信部と、
前記通信部によって確立された前記少なくとも1つの単方向通信チャネルを介して前記第2の通信装置から自装置へ送信され、前記通信部により受信された信号に対するフィードバック情報を取得するフィードバック情報取得部と、
前記フィードバック情報取得部で取得された、前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、前記双方向通信チャネルを介して前記第2の通信装置に送信するように前記通信部を制御する制御部とを具え、
前記第2の通信装置が、
前記第1の通信装置と自装置との間で、双方向通信チャネルでの通信、および、少なくとも1つの単方向通信チャネルでの通信を確立させて通信を行う通信部と、
前記双方向通信チャネルを介して前記第1の通信装置から送信され、前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を含む信号を受信し、該受信した信号に含まれる情報に応じて、該少なくとも1つの単方向通信チャネルの変調方式を適応的に調整するよう前記通信部を制御する制御部とを具える、
ことを特徴とする。
【0015】
また、第6の発明による通信システムは、
前記第1の通信装置が、
前記第2の通信装置と自装置との間でやりとりされる信号のタイプフィールドの識別子(例えば、ビットパターン)と、単方向通信チャネルに対するフィードバック情報の、前記やりとりされる信号内の位置とを対応付けたテーブルを格納する記憶部をさらに具える、
ことを特徴とする。
【0016】
また、第7の発明による通信システムは、
前記第1の通信装置における前記制御部が、
前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、前記テーブルの対応付けに応じた位置に配置した信号を、前記双方向通信チャネルを介して前記第2の通信装置に送信するように前記通信部を制御する、
ことを特徴とする。
【0017】
また、第8の発明による通信システムは、
前記第2の通信装置が、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間でやりとりされる信号のタイプフィールドの識別子(例えば、ビットパターン)と、単方向通信チャネルに対するフィードバック情報の、前記やりとりされる信号内の位置とを対応付けたテーブルを格納する記憶部をさらに具え、
前記第2の通信装置における前記制御部が、
前記テーブルを参照して、前記受信された信号から前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を取得し、該取得した情報に応じて、該少なくとも1つの単方向通信チャネルの変調方式を適応的に調整する、
ことを特徴とする。
【0018】
上述したように本発明の解決手段を装置(システム)として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
例えば、本発明を方法として実現させた第9の発明による通信方法は、
第1の通信装置と第2の通信装置との間で適応変調方式を用いて通信を行う通信方法であって、
前記第1の通信装置が、前記第2の通信装置と自装置との間で、双方向通信チャネルでの通信、および、少なくとも1つの単方向通信チャネルでの通信を確立させて通信を行う通信ステップと、
前記第1の通信装置が、前記通信ステップによって確立された前記少なくとも1つの単方向通信チャネルを介して前記第2の通信装置から自装置へ送信され、前記通信部により受信された信号のフィードバック情報を取得するフィードバック情報取得ステップと、
前記第1の通信装置が、前記受信信号品質取得ステップで取得された、前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、前記双方向通信チャネルを介して前記第2の通信装置に送信するように制御する制御ステップと、
前記第2の通信装置が、前記双方向通信チャネルを介して前記第1の通信装置から送信され、前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を含む信号を受信し、該受信した信号に応じて、該少なくとも1つの単方向通信チャネルの変調方式を適応的に調整するように制御する制御ステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、伝送方向で非対称のチャネル数を持つ伝送方式において、対となるチャネルが無い、単方向のチャネルでの送信データに対する受領確認を、他のチャネル対の逆方向のチャネルを間借りして送信することにより、ARQを機能させることができる。伝送方向で非対称のチャネル数を持つ伝送方式において、ARQを実現させることにより、信頼性の高い伝送経路の提供と、周波数有効利用効率の高い伝送経路の提供とを両立させることができる。さらには、単方向チャネルを介してAckを送信する必要が無いため、結果的に単方向チャネルのスループットを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の原理・構成の説明に先立ち、本発明が対象とする通信システム、タイムスロット構成、本出願人が開発した「単方向通信チャネルアグリゲーション技法」などを説明する。
【0021】
<適応型アンテナアレイ>
本発明が対象とする通信システムの一例として適応型アンテナアレイシステム(Adaptive Array Antenna System)を説明する。複数のアンテナ素子を持つ適応型のアンテナアレイは典型的には基地局に実装される。基地局に実装すると、アップリンク受信波に含まれる干渉波を抑圧することが可能であると共に、受信によるアンテナウエイトを導くことにより所望波の到来経路を推定することが可能となる。また、適応アンテナアレイは推定する無線端末に対してSINR(Signal to Interference and Noise Ratio)が最大に、かつそれ以外では信号が抑圧されるよう送信アンテナウエイトを設定することにより、通信品質を確保しながら、リンク容量を飛躍的に増大させることができるため、昨今、研究が盛んになってきている。実際に運用されている例としては、”High Capacity-Spatial Division Multiple Access (HC-SDMA) WTSC- 2005-032(ATIS/ANSI)”に準拠するiBurst(登録商標)システム等がある。
【0022】
<TDMA-TDDとアンテナアレイ>
TDMA-TDD(時分割多元接続−時分割複信)方式は、無線端末から基地局へのアップリンク方向のチャネルと、基地局から無線端末へのダウンリンク方向のチャネルが、同一周波数を用いて行なわれる特徴を持ち、理論上受信で得たアンテナウエイトを送信に用いることが可能であるため、アンテナアレイを用いた性能向上が得られやすいという利点を持つ。つまり、短期間においては同一周波数帯において、任意の地点と他の任意の地点間の伝播経路において、伝播経路自体と伝播特性に連続性があると仮定し、無線端末から基地局へのアップリンク方向の受信で得た、伝播経路に合致したアンテナ重畳係数をダウンリンク送信に利用可能であるとする。一般にこの仮定は、推定に用いる受信信号と送信信号の間隔が短く、かつ、無線端末の移動速度が遅い場合に十分な実用性を持つ。
【0023】
<アンテナウエイトの取得方法>
アンテナウエイトとしてはWiener解がよく知られていて、Wiener解を得る方法としてトレーニング信号(既知の参照信号)と受信アンテナアレイからの受信信号との平均二乗誤差(MSE: Mean Square Error)を最小にする適応アルゴリズムによる逐次更新がよく用いられることが知られている。この適応アルゴリズムとしてはLMS(Least Mean Square)アルゴリズムがよく用いられる。LMSアルゴリズムには既知のトレーニング信号を必要とするが、これは一般に基地局と無線端末で共有する既知のトレーニング信号パターンを、無線端末がアップリンク信号の先頭もしくは末尾、もしくはその両方に付与して、基地局では既知のパターンをトレーニング信号として用いる方法がよく用いられる。
【0024】
<無線リソースの配分方法>
TDMA-TDDを用いる通信方法では、トラフィックチャネルに用いる無線リソースはTDMA-TDDスロットと周波数チャネルにより決定される。つまり、TDMA-TDDにより時間的に3多重されていて、周波数チャネルが4個使用可能である場合は、12のトラフィックチャネルを用意できる。ただし、TDMA-TDD方式では基地局との同期用チャネルが必要で、一つ以上の無線リソースが例えば報知情報チャネルとして用いられ、トラフィックチャネルとして使用できないことが多い。これらトラフィックチャネルのうち、未使用状態であるトラフィックチャネルを用いることができる。未使用状態の判定方法としては、無線端末側でアップリンク無線チャネルリソースの干渉波測定を行い、測定RSSI (Received Signal Strength Indicator)が閾値以下であれば未使用であると判断してトラフィックチャネルの開始リクエスト信号を発射する方法がある。”ARIB STD-28(ARIB)”で規定されるようにSLOT付きALOHAアルゴリズムを用いるとより衝突時の再リソース選択がスムースに行なわれる可能性が高くなることが知られている。
【0025】
アンテナアレイを用いた空間多重を基地局側に実装する場合では、基地局側の管理によりトラフィックチャネルを空間多重数分倍加することができる。”High Capacity-Spatial Division Multiple Access (HC-SDMA) WTSC- 2005-032(ATIS/ANSI)”では、トラフィックチャネル確立のための信号と、トラフィックチャネルの空間多重数3のそれぞれのトラフィックチャネルでトレーニング信号パターンを分けることにより、空間多重を実現させている。
【0026】
<リンクアダプテーション>
無線通信方式では、互いの送信による伝達状況を受信側からのフィードバックにより知り、この情報を元に、例えば送信出力や、複数の変調方式をサポートする場合は選択する変調方式等を適応的に変更し、最適な無線通信を維持する、リンクアダプテーション技術があり、例えば”High Capacity-Spatial Division Multiple Access (HC-SDMA) WTSC- 2005-032(ATIS/ANSI)”で具体的な方法が開示されている。
【0027】
<単方向通信チャネルアグリゲーション技法>
SDMAをサポートする通信方式では、適応型アンテナアレイの作動により、同一周波数を空間的に分割することを特徴とするが、ある通信機同士の通信に用いている電波は、同一周波数を兼用する他の通信機の通信において、干渉波になる。この干渉波を少なくして電波(周波数)有効利用効率を高めるために、本出願人は単方向通信チャネルアグリゲーション技法を開発した。
【0028】
この「単方向通信チャネルアグリゲーション技法」では、SDMAを用いた通信システムにおいて、サーバークライアントモデルにおける、アップリンク・ダウンリンクのトラフィック流量の非対称性に着目し、例えば、方向毎に二つ以上のチャネルを使用している状態において、一つの方向において、二つ以上のチャネルを必要とするトラフィック流量であり、かつ、反対方向のトラフィック流量がより少ないチャネル数で事足りるような状況で、片方のチャネルのみを減らす技術に関する。或いは、単方向通信チャネルアグリゲーション技法は、片方のチャネルの帯域が不足している状況において、その帯域が不足している方向のチャネルのみを追加する技術に関する。即ち、不必要な電波の発射を無くすことにより、同一周波数を使用している他の通信装置への妨害波を少なくすることが可能となり、システム全体の電波有効利用率を向上させることが可能となる。また副次的な効果として、無線端末が電池駆動している場合に、片方向のトラフィック流量が少ない状態で、無線端末の電波の発射、もしくは電波の受信機会を減らす効果があり、バッテリーセービングに寄与する効果がある。
【0029】
従来のARQでは、チャネル対において、当該チャネル対の一方のチャネルを経由したデータ送信に対するフィードバック情報としての受領確認(Ack)を、当該チャネル対の他方のチャネルを用いて送信するが、伝送方向で非対称のチャネル数を持つ本出願人が開発した「単方向通信チャネルアグリゲーション技法」に従来のARQを適用させようとしても、チャネル対を構成しない、フィードバック情報を送信すべき経路を持たない単方向通信チャネルが存在する場合があり、ARQは機能しない。対となるチャネルが存在せず、フィードバック情報を送信すべき経路が存在しない場合であっても、本発明を適用することによって、ARQ即ち自動再送制御を機能させることが可能となる。
【0030】
以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する。本発明は、無線通信であるか、または有線通信であるかを問わず適用可能であるが、一般的にエラーレートが高く、本発明を適用するメリットが大きい無線通信方式に本発明を適用させた態様で説明する。図1は、本発明の一実施態様による無線通信装置の基本構成を示すブロック図である。図に示すように、無線通信装置100は、通信部110(受信部110R、送信部110T)、装置全体の制御を司る制御部120、フィードバック情報取得部130、記憶部140、チャネル割当管理部150、チャネル流量監視部160、チャネル送信状態制御部170、およびアダプティブアレイアンテナAAを具える。制御部120は、自装置とセッションを持った通信相手の無線端末に送信すべきデータがある場合は、アダプティブアレイアンテナAAを介して当該データを送信するように送信部110Tを制御する。アダプティブアレイアンテナAAは、複数のアンテナ素子を有し、各アンテナ素子は、通信部110の受信部110Rが受信したアンテナ素子別の受信信号に基づいて、アンテナ素子別に計算されたアンテナウエイトに応じた電波を発射する(このアンテナウエイトについては後で詳述する)。チャネル割当管理部150は、自装置と通信相手の無線端末との間のセッションにおけるチャネルの割り当てを管理し、そのチャネル割当状況を記憶部140内のチャネル割当テーブルTB2に格納する。記憶部140には、さらに基準流量テーブルTB3が設けられており、このテーブルには、方向別のチャネル数に応じた最大伝送流量および基準流量(閾値)が格納されている。例えば、アップリンクについては下記の表のようになる。
【0031】
【表1】

【0032】
チャネル流量監視部160は、例えば、割り当てられたアップリンク側のチャネルのデータトラフィック量を取得する。データトラフィック量は、無線端末から当該無線端末側で滞留しているアップリンクデータ量を受信しても良いし、基地局側の受信したアップリンク信号のデータ量から求めてもよい。チャネル割当管理部150は、例えば、取得したアップリンク側のチャネルのデータトラフィック量が、表1(TB3)における対応するチャネル数の基準流量(閾値)を超えたとき、当該無線端末に対して、アップリンク側のチャネルとダウンリンク側のチャネルからなるチャネルペア(スロットペア、または、双方向通信チャネル)ではなく、「追加のアップリンク側のチャネルのみ」を、新たに割り当てる。追加のアップリンク側のチャネル割当/開放/停止などの状況は、チャネル割当管理部150が、チャネル割当テーブルTB2に格納して管理する。例えば、アップリンクチャネルが1本割り当てられているとき、当該セッションのアップリンク流量が、チャネル1個のときの基準流量100kbpsを超えたときは、追加のアップリンク側のチャネルのみを、新たに割り当てる。そして、アップリンク流量が、基準流量100kbps未満になったときは、この新たに割り当てた追加のアップリンク側のチャネルの送信状態を制御する。例えば、送信の少なくとも一部(例えば、当該チャネルの1スロットにおける時間間隔の一部や全体の送信を停止する、或いは、1以上のフレームおきにスロットを間欠的に停止するなど)を停止することによって、当該追加のアップリンク側のチャネルの使用状態(即ち、送信状態やアンテナウエイト)を制御する。このように、送信状態を制御することによって、リソース(追加のアップリンク側チャネル)を開放せずに、消費電力を削減することができるようになる。なお、再度、アップリンク流量が増加して基準流量を超える場合には、当該リソースの割当てを完了しているため、リソース(追加のアップリンク側チャネル)を即座に再使用することが可能である。
【0033】
また、上述したように追加のアップリンクチャネルの新規割り当てによって、合計2本のアップリンクチャネルが割り当てられている場合において、当該セッションのアップリンク流量が、チャネル2個のときの基準流量200kbpsを超えたときは、追加のアップリンクチャネルをもう1個(合計3個)新たに割り当て、合計3個のチャネルでアップリンクデータの送信を行うことも可能である。このように、アップリンク流量に応じて、アップリンク側のチャネルのみを臨機応変に割り当てたり、送信状態を停止したり、再開したりすることによって、不要なダウンリンク側(基地局側)の電波の発射を抑制することができる。また、アップリンク側チャネルの送信停止によってアップリンク信号を送信する無線端末の電力消費を低減し、さらに、当該チャネルと同じタイミングのスロットであり、かつ、同じキャリアを使う空間多重化された別チャネル(スロット)への干渉も低減することが可能となる。さらに、無線端末は、追加で割り当てたチャネルを確保し続けて、後続の通信におけるアップリンク流量の変動に対応することが可能となる。即ち、本方式によれば、チャネルを開放していないため、アップリンクのデータが、そのときの送信状態チャネル数に応じて規定される基準流量/閾値(或いは最大伝送流量をそのまま使用しても良い。)以上になったときだけ、チャネルの再割り当てを要せずに、アップリンク側のチャネルの送信を即座に再開することができるという利点がある。閾値(基準流量)は、チャネル(スロット)の最大伝送流量/速度に応じて任意に定めることができ、送信停止の閾値と送信再開の閾値とにヒステリシス幅を設けて、判定動作がチャタリングするのを防止してもよい。
【0034】
また、アップリンク流量が、基準流量100kbps未満になったときは、この新たに割り当てた追加のアップリンク側のチャネル自体を開放(割り当ての解除)することもできる。チャネルを流量に応じて臨機応変に開放することによって、当該無線リソースの使用効率が高まるというメリットがある。他方、チャネルを開放した無線端末にとっては、リソースの確保を継続することができず、再び流量が増加したときに帯域(即ち開放したリソースの再取得)を確保できるか否かが不明であるというデメリットがある。このメリット、デメリット、および無線リソースの消費状況を勘案して、所定の流量未満となったとき追加のアップリンク側のチャネルを開放するか、チャネルを確保したまま一時的に送信を停止するのかを決定することができる。なお、基地局は、「追加のアップリンク側のチャネル」の新規割り当て、停止および開放、などを無線端末とネゴシエーションする必要があるが、これについては後述する。
【0035】
上述したように、アップリンク側のチャネルのみを追加したり、停止したり、開放したりする態様を説明したが、ダウンリンク側のチャネルも同様の方法で追加したり、停止したり、開放したりすることが可能である。さらに、アップリンク側、ダウンリンク側を問わずに、流量に応じて、一旦、割り当てた双方向通信チャネルのうち、片側の通信チャネルのみを停止したり、開放したりすることも可能である。即ち、本発明は、アップリンク側、ダウンリンク側を問わず、通信方向において非対称のチャネル数で動作する通信装置に対して適用することが可能である。
【0036】
上述したように、通信部110は、相手側通信装置と自装置との間で、双方向通信チャネルでの通信、および、単方向通信チャネルでの通信を確立する。フィードバック情報取得部130は、通信部110によって確立された単方向通信チャネルを介して相手側通信装置から自装置へ送信され、通信部110の受信部110Rにより受信された信号に対するフィードバック情報を取得する。制御部120は、フィードバック情報取得部130で取得された、単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、双方向通信チャネルを介して相手側通信装置に送信するように通信部110の送信部110Tを制御する。
【0037】
記憶部140は、相手側通信装置と自装置との間でやりとりされる信号のタイプフィールドのビットパターンと、単方向通信チャネルに対するフィードバック情報の、前記やりとりされる信号内の位置とを対応付けたテーブルTB1を格納する。制御部120は、単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、テーブルTB1の対応付けに応じた位置に配置した信号を、双方向通信チャネルを介して相手側通信装置に送信するように通信部110の送信部110Tを制御する。
【0038】
次に、アダプティブアレイアンテナを有する無線通信装置の典型例である基地局(装置)、および、基地局の通信相手である無線端末に本発明を具体的に適用して説明する。図2は、本発明の一実施態様による無線通信システムの構成例を示す図である。基地局BS1,BS2には6本のアンテナ素子で構成されるアダプティブアレイアンテナ(図示せず)があり、無線端末TM1,TM2との間でデジタル無線経路を確立させる。チャネルモデルとしては、基地局と無線端末との間には多数の散乱体が分布していて、周波数非選択性の多重伝播路が形成されているものと仮定する。無線端末は移動可能であることにより、無線端末と基地局との多重伝播路はそれぞれ異なるドップラー周波数を有することとなる。無線端末と基地局はTDMA-TDD方式のデジタル無線通信により通信を行う。
【0039】
図3にTDMA-TDDのフレームフォーマット例を示す。図に示す通り、TDMA-TDDのフレームは、TDMA 3多重でアップリンクとダウンリンクで対称長のスロットを持つ。1フレームは3多重されていて、アップリンク・ダウンリンクともに3つのスロットに分けられている。アップリンクスロットおよびダウンリンクスロットは、一つの時間配分は817μsecとなっていて、3つのアップリンクスロットが連続する。アップリンクスロットの後方にはアップリンク・ダウンリンク間のガードタイムが設けられ、ダウンリンクスロットのグループが続く。
【0040】
最初のアップリンクスロットと最初のダウンリンクスロットとがペアとなり、一つの双方向通信チャネルを形成する。二番目および三番目のアップリンク・ダウンリンクスロットのペアも同様となる。図4に、本実施態様で使用されるキャリア(周波数)の配置を示す。図に示すように、連続する周波数625KHzを一単位として4単位とする。
【0041】
次に無線リソースについて説明する。TDMA-TDDフレームは5msecを1フレームとし、3多重とする。周波数チャネルは625KHz幅であり、4キャリア分の周波数チャネルを用いることができ、2.5MHzを占有する。周波数の低い順にキャリア0〜3とし、タイムスロット1〜タイムスロット3の組み合わせで12個のチャネルを形成する。ここで、キャリア0とスロット1との組み合わせを1ch(チャネル)とし、下の表のようにチャネル番号を割り当てる。1chは報知情報チャネル用に予約される。また、5chはトラフィックチャネル確立要求用に予約される。
【0042】
【表2】

【0043】
基地局は、表2のように2ch〜4chおよび6ch〜12chまでの10個の論理チャネルリソースを管理し、無線端末からのトラフィックチャネル確立要求を5chで監視し、チャネルリソースをトラフィックチャネルに割り当てる基地局と無線端末との間で交換されるチャネル信号の種類は下の表の通りである。
【0044】
【表3】

【0045】
無線端末は、システムによりユニーク(固有)に割り振られた無線端末IDを有し、すべてのアップリンクチャネルのインフォーメーションシンボルに無線端末IDを載せる。基地局は無線端末IDにより無線端末を管理し、無線端末は無線基地局からのダウンリンクチャネルに無線端末IDが含まれている場合、当該無線端末宛の無線端末IDであるか否かを判定する。
【0046】
報知情報チャネル(信号)は、既知のトレーニングシーケンスパターン、基地局ID毎にユニークとなる既知のインフォーメーションシンボルを持ち、1フレーム置きに報知情報チャネルの送信を行う。無線端末は論理チャネル1をモニタリングし、急峻なエネルギーの増加点から受信信号のキャプチャをはじめ、可能性のある複数の基地局IDの既知インフォーメーションシンボルとの相関を調べ、一番相関が高い基地局IDである基地局の報知情報チャネル(信号)であると判断し、当該基地局IDとタイミングとを格納する。無線端末は、報知情報チャネル信号の受信後は、受信スロット位置の調整を行ない、基地局との同期を試みる。基地局と無線端末は、報知情報チャネルの送信しているフレームを偶数フレーム、報知情報チャネルの送信していないフレームを奇数フレームと判断する。
【0047】
トラフィックチャネルの開始は、無線端末がトラフィックチャネル開始要求チャネル信号を送信することから始める。トレーニングシーケンスのパターンは、基地局ID毎にユニークとなる。また、トレーニングシーケンスのパターンは、基地局毎に3種類あり、それぞれT0、T1、T2とする。トラフィックチャネル開始チャネル信号はT0が固定的に用いられ、トラフィックチャネルには、T1またはT2のいずれかが用いられる。T1は基地局が管理する空間多重数番号SP1に関連し、T2は空間多重数番号SP2に関連する。無線端末はトラフィックチャネル開始チャネル信号のインフォーメーションシンボルに無線端末のIDを含めて5chを用いて送信を行う。基地局は空いているチャネルリソースがある場合は、空いているチャネルリソースを当該IDの無線端末のために確保し、インフォーメーションシンボルに無線リソースのチャネル番号を含めてトラフィックチャネル許可信号を送信する。基地局がトラフィックチャネル許可信号を送信し、かつ、無線端末が当該信号を受信した場合、次のフレームにおいて、トラフィックチャネル許可信号に含まれるチャネル番号の無線リソースを用いてトラフィックチャネルを開く。
【0048】
無線端末は、トラフィックチャネルを開いている場合において、アップリンクのデータ流量を調べ、流量がトラフィックチャネルの容量より大きくなった場合はアップリンクスロット追加要求信号を送信する。基地局は、トラフィックチャネルが開いている場合において、ダウンリンクのユーザデータの流量を調べ、流量が現在開いているトラフィックチャネルより大きく、無線端末からアップリンクスロット追加要求信号を受信している場合、現在、当該無線端末との間で使用していないタイムスロットが属するトラフィックチャネル番号のトラフィックチャネルが空いているか否かを検査する。ダウンリンクのユーザデータの流量が大きく、かつ、トラフィックチャネルに空きがある場合、当該空きチャネルを無線端末との追加用の双方向トラフィックチャネルとして予約するとともに、基地局は無線端末に対してトラフィックチャネル番号を付与してトラフィックチャネル追加許可チャネル(信号)を送信する。
【0049】
ダウンリンクのユーザデータの流量が少なく、かつ、アップリンクスロット追加要求信号を受信していて、かつトラフィックチャネルに空きがある場合、当該空きチャネルを無線端末との追加用のアップリンク方向トラフィックチャネルとして予約するとともに、基地局は無線端末に対してトラフィックチャネル番号を付与してアップリンクスロット追加許可チャネル(信号)を送信する。或いは、トラフィックチャネルに空きが無い場合は、トラフィックチャネルの追加を断念する。
【0050】
無線端末は、アップリンクスロット追加許可チャネル(信号)を受信した場合、アップリンク方向のみの単方向トラフィックチャネルが確立できたと認識し、次回以降の当該トラフィックチャネル受信時のLNAのスイッチをオンにしない制御を行う。基地局は、トラフィックチャネルを開いている場合において、ダウンリンクのユーザデータの流量を調べ、流量が現在開いているトラフィックチャネルより大きいか否かを推定する。大きいと推定した場合、或いは、無線端末からトラフィックチャネル追加要求信号を受信した場合、現在当該無線端末との間で使用していないタイムスロットが属するトラフィックチャネル番号のトラフィックチャネルが空いているか否かを検査する。
【0051】
トラフィックチャネルが空いていて、かつ、無線端末からトラフィックチャネル追加要求信号を受信している場合、当該空きチャネルを当該無線端末のために予約し、基地局は無線端末に対してトラフィックチャネル番号を付与してトラフィックチャネル追加許可チャネル(信号)を送信する。空きトラフィックの調査にて、空いているトラフィックチャネル番号が、現在当該無線端末との間で開いているトラフィックチャネルと同じキャリア番号のものがある場合は、優先して当該キャリア番号のトラフィックチャネルを用いる制御を行う。
【0052】
トラフィックチャネルが空いていて、かつ、無線端末からトラフィックチャネル追加要求信号を受信していない場合、当該空きチャネルを当該無線端末のために予約し、基地局は無線端末に対してトラフィックチャネル番号を付与してダウンリンクスロット追加指示チャネル(信号)を送信する。空きトラフィックの検査にて、空いているトラフィックチャネル番号が、現在当該無線端末との間で開いているトラフィックチャネルと同じキャリア番号のものがある場合は、優先して当該キャリア番号のトラフィックチャネルを用いる制御を行う。なお、トラフィックチャネルに空きが無い場合はトラフィックチャネルの追加を断念する。
【0053】
無線端末はダウンリンクスロット追加指示チャネル(信号)を受信した場合、基地局に対してダウンリンクスロット追加確認チャネル(信号)を送信する。その後、ダウンリンク方向のみの単方向トラフィックチャネルが確立できたと認識し、次回以降の当該トラフィックチャネル送信時の送信パワーアンプのスイッチをオンにしない制御を行う。
【0054】
次に、基地局と無線端末との間で交換される、チャネル信号を詳しく説明する。図5に信号フォーマットの一例を示す。図に示すように、信号フォーマットは1種類とする。ダウンリンク、アップリンク方向とも、インフォーメーションシンボルにおけるヘッダフォーマットは共通であり、以下の表に示すフィールドから構成される。
【0055】
【表4】

【0056】
インフォーメーションシンボルにおけるヘッダフォーマットには必ずタイプフィールドが含まれる。タイプフィールドは先頭ビットから3つまでを上限に、1が現れるまで検査することにより確認する。タイプフィールドのビットパターン(識別子)と、ヘッダサイズの相関、及び、後続するフィールドおよびその位置との相関を次の表に示す。この表が、図1の記憶部140内のテーブルTB1に相当する。本発明による無線通信装置100は、このような相関テーブルを参照して、他の単方向通信チャネルのフィードバック情報となる代理Ackが格納されているか否か、および代理Ackが格納されるべき位置に基づき、代理Ackを他の双方向通信チャネルのパケットに挿入する、或いは、通信相手から受信したパケットに含まれる代理Ackを抽出してARQに利用する。
【0057】
【表5】

【0058】
図6に、タイプフィールドのビットの組み合わせ(ビットパターン)による4種類のフォーマットを示す。図中の(a)、(b)、(c)、(d)は、フォーマット1、2、3、4をそれぞれ示す。
【0059】
パケットヘッダにはペイロードが後続する。ペイロードはパディングビット列とオクテットデータ列からなる。パディングビット列は、オクテットデータの開始位置を示すためのビット列であり、最初に現れる1までを言う。パディングビット列の直後に最初のオクテットデータのMSB(Most Significant Bit)が開始し、パケット全体の最後のビットが最終オクテットのLSB(Least Significant Bit)となる。運ぶべきオクテット数に応じてパディングビット列が変わるとともに、ヘッダ長に応じて運ぶ事のできる最高オクテット数が変わる。何れのヘッダを用いてもオクテットデータ無しとすることができる。これを特別に空データパケットと呼ぶ。
【0060】
シーケンスナンバーフィールドには、最後のデータのシーケンス番号を13bit全体として格納する。運搬するべきデータが119bit目を基準に後続データのLSBから並べられ、空いたビットには、パディングビット(Padding bit)で埋められる。パディングビットはデータの先頭を示すためのビット列で、ヘッダ以降最初に現れる1の次が先頭データのMSBとなる。運搬するべきデータが存在しない場合は全てがパディングビットで埋められる。
【0061】
図7に、ヘッダフォーマットタイプ毎のインフォーメーションシンボルの情報列構造を示す。図中の(a)、(b)、(c)、(d)は、フォーマット1、2、3、4をそれぞれ示す。図に示すように、ビットパターン「1」を持つタイプフィールドTF1がフォーマット1、ビットパターン「01」を持つタイプフィールドTF2がフォーマット2、ビットパターン「001」を持つタイプフィールドTF3がフォーマット3、ビットパターン「000」を持つタイプフィールドTF4がフォーマット4をそれぞれ示す。また、シーケンスナンバーはチャネル毎に独立に管理され、チャネルが確立していない状態からの、初回通信経路確立時、送信側も受信側もシーケンスナンバーの初期値を0と認識する。最初のデータオクテットのシーケンスナンバーは1となる。
【0062】
送信側はチャネル毎に以下の変数を管理する。
LastSendNum: 送信を行った最近のパケットの最終オクテットのシーケンスナンバー
LastAckPeer: 通信相手側がAckを返してきたシーケンスナンバー
送信側はLastAckPeerの次のシーケンスナンバーからLastSendNumまでのシーケンスナンバーのパケットまでの、各送信済みペイロードの内容を送信した論理フレームナンバーに対応させて、保持しておき、再送時に備える。なお、シーケンスナンバーは13ビットであるので0から8191までを表すことができるが、8191の次は0に戻るように循環することとする。
【0063】
図8に、シーケンスナンバー空間を示す。図中の(a)が送信側のシーケンスナンバー空間であり、(b)が受信側のシーケンスナンバー空間である。そのため、シーケンスナンバー空間は図8に示すように円で表すことができる。また、Ackが12ビット長であるため、送信側がAckを受信する事無く先行して送信可能なデータのシーケンス番号(いわゆるアウトスタンディング数)は4096となる。ただし、これはオクテットデータ単位である。
【0064】
送信側は、受信側からのAck情報12ビットをLastAckPeerとLastSendNumとの間になるようにMSBを補完して、13ビット長のAck情報を再構築する。再構築したAck情報により、LastAckPeerを更新する。
【0065】
受信側は以下の変数を管理する。
LastSendAckNum: 連続かつ欠落なく受信したデータのうち最近末尾のオクテットを示すシーケンスナンバー
LastReceiveNum: 受信したデータの最近末尾のオクテットデータを示すシーケンスナンバー
受信側は、常に現在のLastSendAckNumの下位12ビットを、Ackとして、ヘッダフォーマットにおけるAckフィールドに格納して送信側に返送する。
【0066】
データ送信側において、デコード時間を含む予め定められたラウンドトリップタイム時間経過直後に該当するフレームで、送信したデータのシーケンス番号に一致したAckが返送されたか否かを確認する。もし、デコードに失敗するか、もしくは直前に受信したバースト信号のAckの値がラウンドトリップタイム時間前に送信したデータのシーケンス番号に一致する場合は、次のフレームにおいて、新しいデータを送信する。逆に、デコードに成功し、かつ、直前に受信したバーストのAckの値がラウンドトリップ時間前に送信したデータのシーケンス番号に一致しない場合は、送信パケットが欠落したものとして、当該Ackの指し示すシーケンスナンバーの次のデータを再送する。このようにしていわゆるSR型ARQ(Selective Repeat- type ARQ)を実現する。このデータ送信およびAck受信のシーケンスは、チャネル毎に行なわれる。
【0067】
すべてのチャネルが双方向チャネルのみである場合は、アップリンクおよびダウンリンクチャネルは、共に、ヘッダフォーマット1を用いて通信を行う。これは双方向通信チャネルが一つ(即ち、アップリンクチャネルとダウンリンクチャネルとからなる一対)のみ確立している場合でも複数確立している場合でも同様である。図9に、「双方向通信チャネルが1つ」のみ確立している場合のシーケンス図を示す。図に示すように、基地局BS1からダウンリンクチャネルを介して送信されたパケットを受信した無線端末TM1は、フォーマット1を使って、そのパケット自体のシーケンスナンバー(seqNum)、フィードバック情報としてのLastSendAckNum を含むAck、およびデータを含むパケットを、当該ダウンリンクチャネルと対をなすアップリンクチャネルを介して基地局BS1に送信する。このパケットを受信した基地局BS1は、同様に、フォーマット1を使って、そのパケット自体のシーケンスナンバー(seqNum)、フィードバック情報としてのLastSendAckNum を含むAck、およびデータを含むパケットを、ダウンリンクチャネルを介して無線端末TM1に送信する。
【0068】
図10に、双方向通信チャネルが3つ存在する場合のシーケンス図を示す。図に示すように、双方向通信チャネルは、ch0、ch1、ch2の3本ある。Ack情報は、フォーマット1を使って双方向通信チャネル毎に独立して送受信される。例えば、ch0のアップリンク通信チャネルを経由して受信したパケットのフィードバック情報は、同じch0のダウンリンク通信チャネルを経由して基地局BS1から無線端末TM1に送信される。ch1,ch2のアップリンク通信チャネルを経由して受信したパケットのフィードバック情報も、同様に、ch1,ch2のダウンリンク通信チャネルを経由して基地局BS1から無線端末TM1にそれぞれ送信される。
【0069】
単方向のチャネルを一つ含む場合は、単方向のチャネルにおいて、ヘッダフォーマット2を用い、双方向チャネルにおける単方向チャネルと同方向のチャネルではヘッダフォーマット1を用いる。また、双方向チャネルにおける単方向チャネルと逆方向のチャネルではヘッダフォーマット3を用いる。図11に、基地局と無線端末の間に、双方向チャネル1本と、無線端末から無線基地局への単方向チャネルが1本とが確立されている場合のシーケンス図を示す。図に示すように、ch0は双方向のチャネルであり、ch1は無線端末から基地局への単方向(アップリンク方向)チャネルである。ch1における無線端末から無線基地局へのARQシーケンスにおけるAckは、ch1を用いることができない。ch1における無線端末から無線基地局へのARQシーケンスにおけるAckはch0の基地局から無線端末への信号を用いてヘッダフォーマット3で、代理でAckの送信を行う。以降、このような自己の対をなすチャネル以外のチャネルに対する代理のAckを「代理Ack」と称するものとする。ここで代理Ackの送信を担当する双方向のチャネルを主チャネルとし、単方向チャネルを副チャネルとする。
【0070】
本実施態様では、副チャネルは二つまで存在させることができるものとする。単方向のチャネルを二つ含む場合は、単方向のチャネルにおいて、ヘッダフォーマット2を用い、双方向チャネルにおける単方向チャネルと同方向のチャネルではヘッダフォーマット1を用いる。また、双方向チャネルにおける単方向チャネルと逆方向のチャネルではヘッダフォーマット4を用いる。
【0071】
図12は、基地局と無線端末の間に、双方向チャネル1本と、無線端末から無線基地局への単方向チャネル2本とが確立されている場合のシーケンス図を示す。図に示すように、ch0は双方向のチャネルであり、ch1及びch2は無線端末から基地局への単方向チャネルである。ch1及びch2における無線端末から無線基地局へのARQシーケンスにおけるAckは、ch1もしくはch2を用いることができない。ch1及びch2における無線端末から無線基地局へのARQシーケンスにおけるAckはch0の基地局から無線端末への信号を用いて、代理でAckの送信を行う。即ち、ch1,ch2のアップリンク通信チャネルを経由して受信したパケットのフィードバック情報は、代理Ack1、代理Ack2として、ch0のダウンリンク通信チャネルを経由して基地局BS1から無線端末TM1にヘッダフォーマット4で送信される。無線端末TM1および基地局BS1の主チャネルであるch0を処理するch0用タスク(或いはハードウェアや回路)は、代理Ack1、Ack2が、自己の処理すべきAckではないため、各代理Ackの処理を担当するch1,Ch2用タスク(或いは、ハードウェアや回路)に代理Ack1、Ack2をそれぞれ内部転送する。このようにして、代理Ackという技法を用いて、主チャネル用タスクと副チャネル用タスクとの間で、フィードバック情報である代理Ackを転送することによって、ARQを正常に機能させることが可能となる。
【0072】
なお、双方向チャネルが2本、単方向チャネルが1本であってもよい。この場合、双方向チャネルのうち、若い番号のチャネルを主チャネルとし、他方の双方向チャネルを独立チャネルと位置づける。副チャネルはヘッダフォーマット2を用いて送信を行う。副チャネルで送信できないAckは主チャネルを用いてヘッダフォーマット3で代理として送信される。独立チャネルではヘッダフォーマット1を用いて通信を行う。
【0073】
図13は、基地局200(BS1)の内部構成の概略を示すブロック図である。図に示すように、タイミングプロセッサ210は、TDMA-TDDフレーム構成例で示すフレームタイミングの生成および、ダウンリンク信号フォーマットで示す送信タイミングの生成および、アップリンク受信タイミングの生成を行う。基地局は4つのキャリア各々を担当するIF(中間周波数)信号合成・分離部220,221,222,223、および、キャリア0用チャネル制御部230、キャリア1用チャネル制御部231、キャリア2用チャネル制御部232、キャリア3用チャネル制御部233を持つ。1つのIF信号合成・分離部、および、1つのチャネル制御部は、同一キャリア番号上におけるタイムスロット3つ分と、空間多重数2との積である6つのチャネルを制御する。
【0074】
以降、キャリア0用のブロックを例として説明するが、他のキャリア用のブロックも同様の機能を持つ。例えば、キャリア0用IF信号合成・分離部220からの信号はアンテナ毎にミキサMX1,MX2,MX3,MX4,MX5,MX6により重畳され、アダプティブアレイアンテナAAAを構成する6個のアンテナANT1,ANT2,ANT3,ANT4,ANT5,ANT6から発射される。アップリンク受信時において、各アンテナからの信号はミキサによりキャリア周波数毎に分割された後、キャリア0用IF信号合成・分離部220に分配される。キャリア0用IF信号合成・分離部220からの信号は、キャリア0用チャネル制御部230に渡され、空間多重数に分離した後、ベースバンド処理を行う。このようにして、各スロットタイミング、キャリア番号、空間多重番号毎に分離し、デモジュレートされた受信信号を主制御部240に渡す。
【0075】
主制御部240は、複数のユーザセッションを管理し、ユーザセッションが用いるチャネル番号および数を管理すると共に、ユーザセッションデータを各チャネルに分配する。主制御部240は、チャネル毎の、タイミングプロセッサが生成するダウンリンク送信スロットタイミングに同期して、キャリア番号毎に用意されているチャネル制御部へ送信データを渡す。例えば、キャリア0用チャネル制御部230は、ダウンリンク送信時において、主制御部240からの送信データを、タイミングプロセッサによるスロットタイミング毎に、空間多重数分のデータをモジュレートして、キャリア0用IF信号合成・分離部220に渡す。キャリア0用IF信号合成・分離部220は対応するアップリンクチャネルの受信時のアンテナウエイトを用いて、空間多重数分のチャネルデータを合成してアンテナ毎の送信信号を作成する。ミキサMX1−6は、キャリア毎のIF信号合成・分離部からの送信信号を合成してアンテナANT1−6から発射する。
【0076】
基地局200の構成をさらに詳細に説明する。図14は、キャリア0用IF信号合成・分離部220の内部構成を示すブロック図である。キャリア0のブロックを例として説明するが、他のキャリア用のブロックの構成・機能も同様である。図に示すように、キャリア0用IF信号合成・分離部220は、RFアレイ220RF、SP1_TX-FPGA220SP1、SP2_TX-FPGA220SP2を具える。RFアレイ220RFは、アンテナ毎のRF部RF1−6、および、アナログデジタルコンバータADC1−6、デジタルアナログコンバータDAC1−6を有する。
【0077】
タイミングプロセッサ210は、送信・受信両者のスロット毎のタイミングを指示する。各受信スロットタイミング時において、ミキサMX1−6からのアンテナ毎の受信信号は、RFアレイ220RFを構成するアンテナ毎に用意されたRF部RF1−6により復調された後、ADコンバートされIF(中間周波数)信号に変換される。このようにしてアンテナ毎の受信信号はキャリア番号毎に分離されて、この場合は、キャリア0用チャネル制御部230に送信される。各送信スロットタイミングにおいて、キャリア0用チャネル制御部230からのダウンリンク送信信号とアンテナウエイトを空間多重数分、受け取る。空間多重数は2となっており、キャリア0用IF信号合成・分離部220は、2つの空間多重用の演算部であるSP1用空間多重演算部(SP1_TX-FPGA)220SP1、SP2用空間多重演算部(SP2_TX-FPGA)220SP2を具える。SP1用空間多重演算部220SP1は、TX信号生成器SGとウエイトレジスタWRとを具える。TX信号生成器SGおよびウエイトレジスタWRは、DSP-TXFPGAインターフェイスバスB2を介してキャリア0用チャネル制御部(DSP)230からSP1用の送信用の信号および算出・決定されたウエイトを受け取る。SP1用空間多重演算部220SP1は、SP1用の各アンテナ用のアンテナウエイト制御部(SP1_Ant1-6)W1−6を具え、アンテナウエイト制御部W1−6の各々は、ウエイトレジスタWRに格納されたウエイトに基づき、各アンテナに対するアンテナウエイトを算出する。そして、TX信号生成器SGにより送信用の信号に基づき生成された送信データを、アンテナウエイト制御部W1−6で算出されたアンテナ毎のアンテナウエイトに乗算器を用いて乗算して、アンテナ毎の送信データを作成する。二つのTX-FPGAが作成したアンテナ毎の送信データは加算器で加算されて、アンテナ毎の送信データに合成される。このようにして作成したアンテナ毎の送信データはADコンバートした後、RF部RF1−6により変調され、ミキサMX1−6に渡される。
【0078】
次にチャネル制御部の構成を詳細に説明する。図15は、キャリア0用チャネル制御部230の内部構成を示すブロック図である。キャリア0のブロックを例として説明するが、他のキャリア用のブロックの構成・機能も同様である。図に示すように、キャリア0用チャネル制御部230は、DSP-TXFPGAインターフェイスバスB2、RXANTENNA-DSPインターフェイスバスB1を介してキャリア0用IF信号合成・分離部220と接続している。また、キャリア0用チャネル制御部230は、チャネル制御部−主制御部インターフェイスバスB3を介して主制御部240と接続している。アップリンク受信の際、キャリア0用チャネル制御部230が、RXANTENNA-DSPインターフェイスバスB1を介してキャリア0用IF信号合成・分離部220から受け取る受信IF(中間周波数)信号はトラフィックチャネルの受信時において、各アンテナ素子に含まれる希望波と干渉波が重畳されたものとなる。キャリア0用チャネル制御部230は、受信IF(中間周波数)信号を整合フィルタ(Matched Filter)MF1−6にかけ、Rzz対角項算出処理部RZに渡す。Rzz対角項算出処理部RZは、6個の受信信号毎の共分散行列を計算することにより、既知トレーニングとの相関を計算する前準備を行う。SP1、SP2トレーニングシーケンス生成部TS1,TS2は、無線端末がアップリンクのトレーニングシーケンスとして付与してくる信号と同じ信号を生成する。これは空間多重数分の無線端末毎に用意される。SP1、SP2ウエイト算出部WC1,WC2は、Rzz対角項と既知トレーニングシーケンス信号との相関を調べることにより最適なアンテナウエイト(即ち、推定信号到来方向)を導く。導かれたアンテナウエイトと6本の受信IF信号から、各無線端末のトラフィックチャネル毎の受信IF信号として分離する。各無線端末のトラフィックチャネル毎の受信IF信号はそれぞれ、SP1、SP2受信ベースバンド処理部RxB1,RxB2により処理されユーザデータとして、チャネル制御部−主制御部インターフェイスバスB3を介して主制御部240に転送する。
【0079】
ダウンリンクにおけるトラフィックチャネルの送信時においては、対応するアップリンクチャネル受信時に導かれた最適なアンテナウエイトをキャリア0用IF信号合成・分離部220に通知すると共に主制御部240からの各無線端末のトラフィックチャネル毎のユーザデータを、SP1、SP2送信ベースバンド処理部TxB1,TxB2によりIF信号に変換し、キャリア0用IF信号合成・分離部220に転送する。この図の例では受信多重数と送信多重数は共に2であり、IF信号合成・分離部がサポートする送信多重数に一致している。
【0080】
SP1、SP2送信停止情報記憶部TSM1,TSM2は、主制御部240から指示および送出されたダウンリンク方向の送信停止情報を格納する。SP1、SP2ウエイト決定部WD1,WD2は、SP1、SP2送信停止情報記憶部TSM1,TSM2から読み出した送信停止情報に応じて、当該チャネルにおけるアンテナウエイトをゼロにする。この結果、キャリア0用チャネル制御部230からキャリア0用IF信号合成・分離部220に送出されたIF信号は、全てのアンテナにおいてウエイトがゼロとなるため、電波の発射が抑制される。即ち、チャネルの使用状態(送信状態)を制御することが可能となる。TDMA-TDDシステムにてアンテナアレイを用いる事のメリットは、アップリンク受信で推定したアンテナウエイトをそのままダウンリンクのアンテナウエイトとして用いることにより、同じ電波伝播経路に対して適切なダウンリンク電波を発射することができることである。つまり基地局においてダウンリンクの発射のためにはアップリンクの受信が必要であるが、ダウンリンクを行わないことに問題は生じない。
【0081】
次に主制御部240の構成を詳細に説明する。図16は、主制御部240の内部構成を示すブロック図である。図に示すように、主制御部240は、フロー管理部241、チャネル割当管理部242、ダウンリンク流量監視部243、送信停止/開始管理部244、およびヘッダフォーマット決定部245を具える。フロー管理部241は、ユーザセッションとトラフィックチャネルとの関連付けを行う。チャネル割当管理部242は、20個((3スロット×4キャリア)−2)×2空間多重)の空間多重化されたトラフィックチャネルの使用状況を格納部(図示せず)に格納し、新たなトラフィックの追加時に空いているトラフィックチャネルの割り当てを行う制御を行う。任意のユーザセッションの上位層UL1,UL2,…UL8からの送信データは、当該ユーザセッションが用いているトラフィックチャネルに分配される。フロー管理部241は、当該トラフィックチャネルのタイムスロットタイミング毎に、キャリアと空間多重数番号で分離されたダウンリンク流量監視部DF1−8のうちのキャリアと空間多重数番号とに対応するものにデータを送信する。ダウンリンク流量監視部243(DF1−8)は、ユーザセッション毎のトラフィックチャネルの流量を調査し、送信停止/開始管理部244とフロー管理部241に通知する。フロー管理部241は、ユーザセッション毎にトラフィックチャネルのアグリゲート数に対応する容量とユーザセッションのダウンリンクの合計流量を比較し、より少ないトラフィックチャネルで済むと判断した場合、無線端末に対して、ダウンリンクスロット停止指示チャネル(信号)を送信する。無線端末はダウンリンクスロット停止指示チャネル(信号)を受信した場合、ダウンリンクスロット停止応答指示チャネル(信号)を送信するとともに、次回以降の当該トラフィックチャネル受信時のLNAのスイッチをオンにしない制御を行う。
【0082】
また、チャネル制御部インターフェースB3から渡される、トラフィックチャネル毎のユーザデータはフロー管理部241に渡される。受信したデータのシーケンスナンバーとAckとは、フロー管理部241に設けられたARQシーケンス管理部241A1,A2,…A8に渡され、管理される。フロー管理部241は、複数のトラフィックチャネルからの受信データを合成して、受信ユーザデータに変換する。
【0083】
任意のユーザセッションの上位層からの送信データは、当該ユーザセッションが用いているトラフィックチャネルに分配される。フロー管理部241は、当該トラフィックチャネルのタイムスロットタイミング毎に、キャリア番号、および空間多重数番号に対応するユーザデータをダウンリンク流量監視部243に送信する。この時、ユーザセッション毎に用意される、ARQシーケンス管理部241A1,A2,…A8は、シーケンスナンバーを管理し、信号毎にヘッダを付与する。ヘッダフォーマット決定部245が、代理Ackの有無などの状況に応じてヘッダフォーマットを決定して、各フォーマットに対応した各ヘッダ付与するが、これについてはフローチャートを用いて後述する。
【0084】
次にダウンリンク方向のチャネルのみを追加する場合を説明する。フロー管理部241は、ダウンリンク流量監視部243が追加のダウンリンクが必要と判断した場合、現在使用しているトラフィックチャネルと同じ周波数キャリア上のトラフィックチャネルが空いているか否かを検査する。存在する場合は、指定されたトラフィックチャネル番号を含む、ダウンリンクスロット追加指示チャネル(信号)を、無線端末に対して送信する。無線端末はダウンリンクスロット追加指示チャネル(信号)を受信した場合、基地局に対してダウンリンクスロット追加確認チャネル(信号)を送信する。
【0085】
基地局におけるフロー管理部241は、ダウンリンクスロット追加確認チャネル(信号)を受信した場合、送信停止/開始管理部244にダウンリンクスロット追加確認チャネル(信号)に含まれるトラフィックチャネル番号と空間多重数番号、及び前記、トラフィックチャネルと同じキャリア番号であるトラフィックチャネルのトラフィックチャネル番号と空間多重数番号を設定する。
【0086】
送信停止/開始管理部244は、ダウンリンクスロットのみのトラフィックチャネルが存在するとき、チャネル制御部に対して、ダウンリンクスロットのみのトラフィックチャネルのタイムスロット番号と空間多重数番号、及び、アンテナウエイトを流用するタイムスロット番号と空間多重数番号を通知する。
【0087】
上記処理は同一周波数チャネル上のアグリゲート可能な場合、用意するアグリゲート数変更可能フラグに記憶することで管理を行う。同一チャネルでのアグリゲートであるか否かは、基地局側でも無線端末側でも認識可能であり、各々で記憶する。本処理はアグリゲートを行う際、同一キャリアに集めることを目標とするが、同一キャリア上に開きトラフィックチャネルが存在しない場合は他のキャリアのトラフィックチャネルを割り当てる制御を行う。
【0088】
次に、上述した基地局の通信相手となる無線端末の構成を説明する。図17は、無線端末300(TM1,TM2)の構成を示すブロック図である。図に示すように、無線端末300は1本のアンテナANT10のみを持つ。また、無線端末300は、タイミングプロセッサ(スケジューラ)310、サーキュレータCIR、および上位層ULを有する。また、無線端末300は、複数のミキサ、デジタルアナログコンバータDAC、アナログデジタルコンバータADC、パワーアンプPA、ローノイズアンプLNA、温度補償電圧制御水晶発振器VCTCXO、RF位相ロックループRF−PLL,IF位相ロックループIF−PLL、受信停止/開始管理部320、ベースバンド処理部330、フロー管理部340、ヘッダフォーマット決定部350、チャネル割当管理部360、およびアップリンク流量監視部370をさらに有する。
【0089】
無線端末にはアンテナは一本のみ存在する。無線端末300におけるダウンリンク受信信号は、基地局により伝播路に適するように調整されたアンテナウエイトを使用した送信電波として受信するため、同一基地局からの干渉波は抑圧されたものとなる。よって、無線端末300にはトラフィックチャネル毎の空間多重を意識する必要は無い。従って、図17に示すように、無線端末の内部構成は、基地局の内部構成に比べてシンプルなものとなる。
【0090】
タイミングプロセッサ310はTDMA-TDDフレームに応じた送信及び受信のタイミングを生成する。任意のタイムスロット番号におけるダウンリンク受信タイミングにおいて、アンテナから受信した受信信号は、LNAにより増幅される。受信に先立ち、ベースバンド処理部はVCTCXOに対して受信するトラフィックチャネルのキャリア番号に応じた周波数設定に変更する。LNAで増幅された受信信号は二段のミキサによりIF(中間周波数)信号に変換され、アナログデジタルコンバータADCにより標本化されてデジタルデータに変換される。受信したIF信号はベースバンド処理部330によりデモジュレートされる。受信したデータのシーケンスナンバーとAckとは、フロー管理部340に設けられたARQシーケンス管理部340Aに渡され管理される。フロー管理部340は複数のトラフィックチャネルからの受信データを合成して、受信ユーザデータに変換する。
【0091】
任意のタイムスロット番号におけるアップリンク送信タイミングにおいて、フロー管理部からユーザデータが当該タイムスロットのトラフィックチャネル分として、ベースバンド処理部にユーザデータが渡される。この時、ARQシーケンス管理部340Aはシーケンスナンバーを管理し、信号毎にヘッダを付与する。
【0092】
フロー管理部340は、ユーザセッションとトラフィックチャネルとの関連付けを行う。ユーザセッション一つに対して最大3つのトラフィックチャネルを持つことができるため、関連付けは1対1〜1対3になる。チャネル割当管理部360は、20個の空間多重化されたトラフィックチャネルの使用状況を記憶し、新たなトラフィックの追加時に空いているトラフィックチャネルの割り当てを行う制御を行う。
【0093】
ユーザデータは、複数のトラフィックチャネルを用いる場合は分割されたものとなる。また、ベースバンド処理部330は送信に先立ち、VCTCXOに対して送信するトラフィックチャネルのキャリア番号に対応した周波数設定に変更する。ベースバンド処理部330は、送信ユーザデータをモジュレートして送信IF信号に変換する。送信IF信号は二段のミキサによりキャリア番号に対応した送信周波数に変調され、パワーアンプPAで増幅された後、アンテナANT10のアンテナ端から発射される。
【0094】
トラフィックチャネルは一つのユーザセッションに対して、最大3つ持つことができるものとする。タイムスロット毎に別のトラフィックチャネルを用いる。今ここで、基地局と無線端末の間で、一つのトラフィックチャネルを開いており、かつアップリンク方向のみに追加のトラフィックが必要であるものとする。アップリンクのデータトラフィック流通量は多く二つ分のトラフィックチャネルが必要であるが、ダウンリンクデータ流通量は一つのトラフィックチャネルで十分であると、基地局が判断した場合、二つのトラフィックチャネルを開いてしまうと、ダウンリンクのトラフィックチャネルは運搬するべきデータが無いため、空データパケットを送信することになる。当該トラフィックチャネルは同じ基地局の他の空間多重接続している無線端末、及び他の基地局に接続しているユーザーとの間で共有している。意味の無い電波発射は他の、当該トラフィックチャネルを共有している無線端末との間の通信における妨害波となるので、発射しないことが望ましい。これを実現させるために、アップリンク方向のみの送信を追加する制御を行う。
【0095】
以上より、無線端末はアップリンクのトラフィックは多いもののダウンリンクのトラフィックが少ない場合において、ダウンリンク方向の電波発射を停止することができる。この結果、不要な電波発射を少なくすることが可能となり、他の同一トラフィックチャネルを用いている無線端末-基地局間のダウンリンク方向の妨害波を少なくすることができ、結果としてシステム全体の周波数利用効率を上げる。
【0096】
当該トラフィックチャネルは同じ基地局の他の空間多重接続している無線端末、及び他の基地局に接続しているユーザーとの間出共有している。意味の無い電波発射は他の、当該トラフィックチャネルを共有している無線端末との間の通信における妨害波となるので、発射しないことが望ましい。これを実現するために、アップリンク方向の送信を停止する制御を行う。
【0097】
アグリゲート数変更可能フラグがオンである場合、無線端末はダウンリンクのトラフィックは多いもののアップリンクのトラフィックが少ない場合において、アップリンク方向の電波発射を停止することができる。この結果、不要な電波発射を少なくすることが可能となり、他の同一トラフィックチャネルを用いている無線端末-基地局間のアップリンク方向の妨害波を少なくすることができ、結果としてシステム全体の周波数利用効率を上げることができる。
【0098】
また、無線端末は不要な電波の発射を行わないようにすることで、バッテリーセービングの効果を得ることができる。無線端末において、パワーアンプの消費電流が、全体の消費電流に対して支配的である場合が多く、パワーアンプスイッチがオンである時間をできるだけ低減させる事はバッテリーセービングに貢献する。二つのトラフィックチャネルを使用している状態で、一つのトラフィックチャネルのアップリンク方向の電波の送信を省略した場合、パワーアンプの消費電流を半減できる。
【0099】
以上の処理により、基地局はダウンリンクのトラフィックは多いもののアップリンクのトラフィックが少ない場合において、ダウンリンク方向のトラフィックチャネルを追加し、かつアップリンク方向の電波発射を発射しないことができる。この結果、不要な電波発射を少なくすることが可能となり、他の同一トラフィックチャネルを用いている無線端末-基地局間のアップリンク方向の妨害波を少なくすることができ、結果としてシステム全体の周波数利用効率を上げることができる。
【0100】
追加の単方向のトラフィックチャネルが不要になった場合は、基地局から無線端末に対して、ダウンリンクスロット停止指示を送信する。これによって、追加のトラフィックチャネルの停止を行うことができる。無線端末はダウンリンクスロット停止指示を受信後、基地局に対してダウンリンクスロット停止確認を送信すると共に、当該単方向トラフィックチャネルが閉じたものと認識する。
【0101】
以上の処理により、アップリンク・ダウンリンクで非対称数のチャネルの形成を行うと、不要な電波の発射を無くすことができる。このような、アップリンク・ダウンリンクで非対称数のチャネルにて、SR型のARQを実現させるために、ヘッダフォーマット決定部245,350を追加する。ヘッダフォーマット決定部245,350は、送信するべき、もしくは受信するべき副チャネルの数に応じて次のフローで示す処理を行ない、ヘッダフォーマットを決定する。なお、ヘッダフォーマット決定部245,350の動作は基地局200と無線端末300とで共通となる。
【0102】
ARQシーケンス管理部241A1〜A8、340Aは、ヘッダフォーマット決定部245,350が決定したフォーマットに応じて、ヘッダを構築する。このようにして、Ackを返信できない単方向チャネルでも、主チャネルが代理としてAckを運搬することにより、Ackの伝達を実現する。
【0103】
図18に、相手側通信装置に信号を送信する場合のヘッダフォーマット選択処理を示すフローチャートを示す。このヘッダフォーマット選択処理は、基地局200、無線端末300のヘッダフォーマット決定部245,350により実行されるが、受信信号の先頭に付加してあるヘッダフォーマットタイプを調べ、ヘッダフォーマットがどのタイプであるのかを判定し、判定結果に従ってヘッダを付与する処理である。図に示すように、ステップS1にて、送信するべき副チャネル(即ち、自装置から相手側通信装置への方向の単方向通信チャネル)が存在するか否かを判定する。送信するべき副チャネルが存在する場合は、今回の送信が送信副チャネルのタイミングか否かを判定し(ステップS12)、送信するべき副チャネルのタイミングの場合は、ヘッダフォーマット2を選択し(ステップS14)、そうでない場合は、ヘッダフォーマット1を選択して(ステップS13)、処理を終える。
【0104】
ステップS1にて送信するべき副チャネルが存在しないと判定された場合は、ステップS2に進み、受信するべき副チャネルが存在するか否かを判定する。受信するべき副チャネルが存在しない場合は、ヘッダフォーマット1を選択して処理を終える(ステップS11)。ステップS2にて受信するべき副チャネルが存在しないと判定された場合は、今回の送信が主チャネルのタイミングか否かを判定する(ステップS3)。主チャネルのタイミングでない場合は、ステップS11にてヘッダフォーマット1を選択して処理を終える。主チャネルのタイミングであると判定された場合は、ステップS4にて、副チャネルの数が2か否かを判定する。副チャネルの数が2でないと判定された場合は、ヘッダフォーマット3を選択した後(即ち、副チャネルが1個の場合のフォーマット)、ステップS8に進む。副チャネルの数が2であると判定された場合は、ヘッダフォーマット4を選択する(即ち、副チャネルが2個ある場合のフォーマット)。その後、ステップS6にて、副チャネル2の論理チャネル番号を代理Ack2チャネル番号にセットする。次に、ステップS7にて、副チャネル2のAckを他チャネル代理Ack2にセットする。ステップS8では、副チャネル1の論理チャネル番号を代理Ack1チャネル番号にセットする。次に、ステップS9にて、副チャネル1のAckを他チャネル代理Ack1にセットして処理を終える。
【0105】
図19に、相手側通信装置からの信号を受信した場合の信号処理を示すフローチャートを示す。この処理では、受信データの先頭(タイプフィールド)を検査することによって、ヘッダフォーマットのタイプを判定する。図に示すように、ステップS21にて、受信データの先頭が1であるか否かを判定する。先頭が1であると判定された場合は、受信データはヘッダフォーマット1であると見なし、受信データからシーケンスナンバーとAckとを分離して(ステップS30)、処理を終える。ステップS21にて先頭が1でないと判定された場合は、ステップS22に進み、受信データの先頭が01であるか否かを判定する。先頭が01であると判定された場合は、受信データはヘッダフォーマット2であると見なし、受信データからシーケンスナンバーを分離して(ステップS29)、処理を終える。ステップS22にて先頭が01でないと判定された場合は、ステップS23に進み、受信データの先頭が001であるか否かを判定する。先頭が001であると判定された場合は、受信データはヘッダフォーマット4であると見なし、受信データから、シーケンスナンバー、Ack、代理Ack1チャネル番号、他チャンネル代理Ack1、代理Ack2チャネル番号、他チャンネル代理Ack2を分離する。ステップS27にて、代理Ack1チャネル番号に対応するトラフィックチャネルに対して、他チャンネル代理Ack1の内容をAckとして保存する。次にステップS28にて、代理Ack2チャネル番号に対応するトラフィックチャネルに対して、他チャンネル代理Ack2の内容をAckとして保存し、処理を終える。
【0106】
上述したように、ヘッダに代理Ackチャネル番号と他チャネル代理Ackが含まれる場合は、対応するトラフィックチャネルに対してのAckとして認識することで、Ackを返信できない単方向チャネルでも、主チャネルが代理としてAckを運搬することができる。こうして、方向毎のチャネル数が非対称である伝送経路においても、ARQによる自動再送制御を実現し、信頼性の高い伝送経路を実現できる。
【0107】
上記構成例では、送信する副チャネルはフォーマット2を用いるが、フォーマット2にはAckフィールドを必要としないため、その分多くのユーザデータを運搬することができる。つまりヘッダフォーマット1を用いた信号では11オクテット運搬できるのに対して、ヘッダフォーマット2は13オクテット運搬できる。よって、二本のチャネルを確立した場合において、二つのチャネルにヘッダフォーマット1を割り当てた場合に比べて、一つのチャネルをヘッダフォーマット2にすると、(((13*8)+(11*8))-((11*8)+(11*8)))*(1/0.05)=3200bpsのスループット向上となる。その代償として、反対方向のスループットはヘッダフォーマット3を用いるため、減ることになる。(ヘッダフォーマット3は9オクテットしか運搬できない。)しかしながら、受信する副チャネルが有る状態では、送信するデータが無いか、少ない状態であるため、スループットの減少は問題とならない。
【0108】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。例えば、実施態様では無線通信装置を用いた形式で本発明を説明したが、本発明は、有線通信装置にも適用し得るものであり、有線通信装置、方法およびシステムも、本発明の範囲に含まれるものと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施態様による無線通信装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施態様による無線通信システムの構成例を示す図である。
【図3】TDMA-TDDのフレームフォーマット例を示す図である。
【図4】本実施態様で使用されるキャリア(周波数)の配置を示す図である。
【図5】信号フォーマットの一例を示す図である。
【図6】タイプフィールドのビットの組み合わせ(ビットパターン)による4種類のフォーマットを示す図である。
【図7】ヘッダフォーマットタイプ毎のインフォーメーションシンボルの情報列構造を示す図である。
【図8】シーケンスナンバー空間を示す図である。
【図9】双方向通信チャネルが1つのみ確立している場合のシーケンス図である。
【図10】双方向通信チャネルが3つ存在する場合のシーケンス図である。
【図11】基地局と無線端末の間に、双方向チャネル1本と、無線端末から無線基地局への単方向チャネルが1本とが確立されている場合のシーケンス図である。
【図12】基地局と無線端末の間に、双方向チャネル1本と、無線端末から無線基地局への単方向チャネル2本とが確立されている場合のシーケンス図である。
【図13】基地局200(BS1)の内部構成の概略を示すブロック図である。
【図14】キャリア0用IF信号合成・分離部220の内部構成を示すブロック図である。
【図15】キャリア0用チャネル制御部230の内部構成を示すブロック図である。
【図16】主制御部240の内部構成を示すブロック図である。
【図17】無線端末300(TM1,TM2)の構成を示すブロック図である。
【図18】相手側通信装置に信号を送信する場合のヘッダフォーマット選択処理を示すフローチャートである。
【図19】相手側通信装置からの信号を受信した場合の信号処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0110】
AA,AAA アダプティブアレイアンテナ
ADC,ADC1 アナログデジタルコンバータ
ANT1,ANT2,ANT3,ANT4,ANT5,ANT6,ANT10 アンテナ
TB テーブル
TB1 チャネル割当テーブル
TB2 基準流量テーブル
B1 RXANTENNA-DSPインターフェイスバス
B2 DSP-TXFPGAインターフェイスバス
B3 チャネル制御部−主制御部インターフェイスバス
BS1,BS2 基地局
DAC,DAC1 デジタルアナログコンバータ
DF1−8 ダウンリンク流量監視部
IF−PLL IF位相ロックループ
LNA ローノイズアンプ
MX1,MX2,MX3,MX4,MX5,MX6 ミキサ
PA パワーアンプ
RF−PLL RF位相ロックループ
RF1−6 アンテナ毎のRF部
RxB1,RxB2 SP1,SP2受信ベースバンド処理部
TxB1,TxB2 SP1,SP2送信ベースバンド処理部
RZ Rzz対角項算出処理部
SG 信号生成器
TM1,TM2 無線端末
TS1,TS2 トレーニングシーケンス生成部
TSM1,TSM2 送信停止情報記憶部
UL,UL1,UL2,UL8 上位層
VCTCXO 温度補償電圧制御水晶発振器
W1−6 アンテナウエイト制御部
WC1,WC2 SP1,SP2ウエイト算出部
WD1,WD2 SP1,SP2ウエイト決定部
WR ウエイトレジスタ
200 基地局
210 タイミングプロセッサ
220 キャリア0用IF信号合成・分離部
221 キャリア1用IF信号合成・分離器
222 キャリア2用IF信号合成・分離部
223 キャリア3用IF信号合成・分離部
220RF RFアレイ
220SP1、SP2 SP1,SP2用空間多重演算部
230 キャリア0用チャネル制御部
231 キャリア1用チャネル制御部
232 キャリア2用チャネル制御部
233 キャリア3用チャネル制御部
240 主制御部
241 フロー管理部
241A1-A8 User1-8_ARQシーケンス管理部
242 チャネル割当管理部
243 ダウンリンク流量監視部
244 送信停止/開始管理部
245 ヘッダフォーマット決定部
300 無線端末
310 タイミングプロセッサ
320 受信停止/開始管理部
330 ベースバンド処理部
340 フロー管理部
340A シーケンス管理部
350 ヘッダフォーマット決定部
360 チャネル割当管理部
370 アップリンク流量監視部
CIR サーキュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側通信装置と自装置との間で通信を行う通信装置において、
前記相手側通信装置と自装置との間で、双方向通信チャネルでの通信、および、少なくとも1つの単方向通信チャネルでの通信を確立させて通信を行う通信部と、
前記通信部によって確立された前記少なくとも1つの単方向通信チャネルを介して前記相手側通信装置から自装置へ送信され、前記通信部により受信された信号に対するフィードバック情報を取得するフィードバック情報取得部と、
前記フィードバック情報取得部で取得された、前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、前記双方向通信チャネルを介して前記相手側通信装置に送信するように前記通信部を制御する制御部と、
を具える通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記相手側通信装置と自装置との間でやりとりされる信号のタイプフィールドの識別子と、単方向通信チャネルに対するフィードバック情報の、前記やりとりされる信号内の位置とを対応付けたテーブルを格納する記憶部をさらに具える、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の通信装置において、
前記記制御部が、
前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、前記テーブルの対応付けに応じた位置に配置した信号を、前記双方向通信チャネルを介して前記相手側通信装置に送信するように前記通信部を制御する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項2に記載の通信装置において、
前記単方向通信チャネルが複数あり、
前記制御部が、
前記複数の単方向通信チャネルの各々における各フィードバック情報を、前記テーブルの対応付けに応じた位置にそれぞれ配置した信号を、前記双方向通信チャネルを介して前記相手側通信装置に送信するように前記通信部を制御する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項5】
第1の通信装置と第2の通信装置との間で通信を行う通信システムにおいて、
前記第1の通信装置が、
前記第2の通信装置と自装置との間で、双方向通信チャネルでの通信、および、少なくとも1つの単方向通信チャネルでの通信を確立させて通信を行う通信部と、
前記通信部によって確立された前記少なくとも1つの単方向通信チャネルを介して前記第2の通信装置から自装置へ送信され、前記通信部により受信された信号に対するフィードバック情報を取得するフィードバック情報取得部と、
前記フィードバック情報取得部で取得された、前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、前記双方向通信チャネルを介して前記第2の通信装置に送信するように前記通信部を制御する制御部とを具え、
前記第2の通信装置が、
前記第1の通信装置と自装置との間で、双方向通信チャネルでの通信、および、少なくとも1つの単方向通信チャネルでの通信を確立させて通信を行う通信部と、
前記双方向通信チャネルを介して前記第1の通信装置から送信され、前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を含む信号を受信し、該受信した信号に含まれる情報に応じて、該少なくとも1つの単方向通信チャネルの変調方式を適応的に調整するよう前記通信部を制御する制御部とを具える、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項5に記載の通信システムにおいて、
前記第1の通信装置が、
前記第2の通信装置と自装置との間でやりとりされる信号のタイプフィールドの識別子と、単方向通信チャネルに対するフィードバック情報の、前記やりとりされる信号内の位置とを対応付けたテーブルを格納する記憶部をさらに具える、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項7】
請求項6に記載の通信システムにおいて、
前記第1の通信装置における前記制御部が、
前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、前記テーブルの対応付けに応じた位置に配置した信号を、前記双方向通信チャネルを介して前記第2の通信装置に送信するように前記通信部を制御する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の通信システムにおいて、
前記第2の通信装置が、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間でやりとりされる信号のタイプフィールドの識別子と、単方向通信チャネルに対するフィードバック情報の、前記やりとりされる信号内の位置とを対応付けたテーブルを格納する記憶部をさらに具え、
前記第2の通信装置における前記制御部が、
前記テーブルを参照して、前記受信された信号から前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を取得し、該取得した情報に応じて、該少なくとも1つの単方向通信チャネルの変調方式を適応的に調整する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項9】
第1の通信装置と第2の通信装置との間で適応変調方式を用いて通信を行う通信方法において、
前記第1の通信装置が、前記第2の通信装置と自装置との間で、双方向通信チャネルでの通信、および、少なくとも1つの単方向通信チャネルでの通信を確立させて通信を行う通信ステップと、
前記第1の通信装置が、前記通信ステップによって確立された前記少なくとも1つの単方向通信チャネルを介して前記第2の通信装置から自装置へ送信され、前記通信部により受信された信号のフィードバック情報を取得するフィードバック情報取得ステップと、
前記第1の通信装置が、前記受信信号品質取得ステップで取得された、前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を、前記双方向通信チャネルを介して前記第2の通信装置に送信するように制御する制御ステップと、
前記第2の通信装置が、前記双方向通信チャネルを介して前記第1の通信装置から送信され、前記少なくとも1つの単方向通信チャネルに対するフィードバック情報を含む信号を受信し、該受信した信号に応じて、該少なくとも1つの単方向通信チャネルの変調方式を適応的に調整するように制御する制御ステップと、
を有することを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−10529(P2009−10529A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168070(P2007−168070)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】