通信装置および通信方法
【課題】比較的簡易な構成で、特定の位置関係にある端末装置のみが通信可能とすること。
【解決手段】タイミング算出部104は、初期設定時または通信開始時に、アンテナ101から送信される送信信号と、当該送信信号がアンテナ102または通信相手である端末200によって反射されてアンテナ101に戻ってきた反射信号とから、アンテナ101と端末200までの経路と、アンテナ102と端末200までの経路との差に相当する時間差を算出する。さらに、タイミング算出部104は、算出した時間差から、アンテナ101から送信される送信データの送信タイミングを調整するタイミング調整信号を可変遅延器105へ出力する。可変遅延器105は、タイミング調整信号に応じて送信データの送信タイミングを遅延させて、遅延後の送信データを変復調部106へ出力する。
【解決手段】タイミング算出部104は、初期設定時または通信開始時に、アンテナ101から送信される送信信号と、当該送信信号がアンテナ102または通信相手である端末200によって反射されてアンテナ101に戻ってきた反射信号とから、アンテナ101と端末200までの経路と、アンテナ102と端末200までの経路との差に相当する時間差を算出する。さらに、タイミング算出部104は、算出した時間差から、アンテナ101から送信される送信データの送信タイミングを調整するタイミング調整信号を可変遅延器105へ出力する。可変遅延器105は、タイミング調整信号に応じて送信データの送信タイミングを遅延させて、遅延後の送信データを変復調部106へ出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置および通信方法に関し、特に、特定の領域のみを通信可能エリアとして設定できる通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線技術の発展に伴い、携帯電話に代表される広い通信エリアにおいて音声やメールといった容量が少ないコンテンツの伝送だけでなく、無線LAN(Local Area Network)のように比較的狭い通信エリア内で高速の通信を行なう利用形態が普及してきている。
【0003】
さらには、伝送レートを高めるだけでなく、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭帯域通信)のような極めて限られた場所(すなわち特定の場所)のみを通信エリアとし、特定の場所に位置するユーザのみを通信可能とする利用形態が普及してきている。
【0004】
今後は、利用者が持ち歩く、又は車載している端末に、容量が大きいコンテンツを短時間でダウンロードする利用形態が広まることが予想されるが、このような大容量コンテンツは大量の個人情報が含まれていることや、映画等の映像コンテンツであれば有料のコンテンツであることが想定される。
【0005】
このような今後の状況を考えてみると、積極的に特定の場所に位置する相手のみと高速大容量の通信を可能とする通信システムの確立が一段と切望されると考えられる。
【0006】
図27〜図29に、特定の場所に位置する相手のみと通信可能な通信システムの従来例として、ETC(Electronic Toll Correction System)における通信エリアの実現方法を説明するための概念図を示す。図27〜図29では、第1の端末11−1を搭載した車両12−1と第2の端末11−2を搭載した車両12−2が通信相手の無線部13に接続されるアンテナ14の近傍に到達する場合を考える。
【0007】
図27に示すように、指向性が弱いアンテナ14を用いて、無線部13の通信可能エリアAR1を比較的広くした場合には、第1の端末11−1と第2の端末11−2が共に無線部13と通信を開始してしまうため、混信する場合や、共に通信できない場合や、異なる端末が情報データを受信してしまう場合が発生する。
【0008】
一方、図28に示すように、指向性が強いアンテナ14を用いて、無線部13の通信可能エリアAR2を比較的狭くした場合には、車両の移動速度が速い場合に十分な通信時間を確保することができず、車両を減速または停止させて通信時間を確保する必要がある。
【0009】
これらの問題を解決するために、特許文献1には、図29に示すように、アンテナ14としてビーム切替アンテナを用いることで、第1の指向性による通信可能エリアAR3と第2の指向性による通信可能エリアAR4を形成する技術が開示されている。このようにすれば、車両の移動速度が速い場合でも、端末11−1、11−2は、通信可能エリアAR3、AR4の両方で互いに混信なく通信できるようになると考えられる。
【特許文献1】特開平11−185083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の従来構成においては、狭い通信可能エリアを実現するために高指向性のアンテナが必要となるためアンテナが大型化するという課題がある。また、指向性を切り替えて通信可能エリアを広げることも行なわれるが、機械的な方向切替又は搬送波周波数帯での位相制御による位相合成が必要となり、機器の可動を実現するための機器が大型化し、コストも上がる。更に、高精度な位相制御を実現するために制御部が高コスト化するといった課題も有している。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、比較的簡易な構成で、通信装置と特定の位置関係にある端末装置のみが通信可能となる通信装置および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため、本発明に係る通信装置は、情報データ列に基づいて第1の送信信号を生成する第1の生成手段と、前記第1の送信信号と規定のタイミングで結合することで前記情報データ列が復調可能となる第2の送信信号を生成する第2の生成手段と、前記第1の送信信号を送信する第1のアンテナと、前記第2の送信信号を送信する第2のアンテナと、前記第1の送信信号が特定の領域へ到達する時間と、前記第2の送信信号が前記特定の領域へ到達する時間との時間差を算出する時間差算出手段と、前記時間差に基づいて、前記特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する調整手段と、を具備する構成を採る。
【0013】
この構成によれば、第1のアンテナから送信される第1の送信信号が特定の領域に到達する時間と、第2のアンテナから送信される第2の送信信号が特定の領域に到達する時間との到達時間差に基づいて、2つのアンテナから送信される第1の送信信号および第2の送信信号とが、所定の領域に規定のタイミングで到達するようにしたので、情報データ列に基づいて生成された第1の送信信号と、第2の送信信号とを用いて、特定の領域に位置する通信相手のみが情報データ列を復調することができ、比較的簡易な構成で、通信可能な領域を極めて限られた領域に限定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的簡易な構成で、通信装置と特定の位置関係にある端末装置のみが通信可能となる通信装置および通信方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の発明者らは、複数のアンテナを備える通信装置のそれぞれのアンテナからの距離が、特定の距離関係にある領域は、極めて限られた領域(以下「特定の領域」という)に限定される点に着目し、規定のタイミングで結合することで情報データ列が復調可能となるような複数の送信信号、例えば、情報データと、情報データのフレームタイミングを示すフレーム同期信号とを、異なるアンテナから特定の領域へ、規定のタイミングで到達するように送信すれば、指向性が強いアンテナを用いなくても、比較的簡易な構成で、特定の領域に位置する端末装置のみが通信可能となると考え、本発明に至った。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1に係る通信装置の要部構成を示す。同図に示す通信装置100は、第1のアンテナ101と、第2のアンテナ102と、無線部103とを備え、さらに、無線部103は、タイミング算出部104と、可変遅延器105と、第1の変復調部106と、第2の変復調部107とを備えている。
【0018】
なお、図2、図3、図4は、それぞれのアンテナから送信された信号の経路の様子を通信状況ごとに示したものである。図2は初期設定時に、アンテナ101から送信された信号が、アンテナ102によって反射されてアンテナ101で受信される様子を示す。図3は、通信開始時に、通信装置100の通信相手である端末200がアンテナ101とアンテナ102の間に挿入され、アンテナ101から送信された送信信号が、端末200で反射されてアンテナ101で受信される様子を示す。図4は、通信開始後に、アンテナ101およびアンテナ102から送信された信号が、それぞれ端末200において受信され、また、端末200から送信される送信信号が、アンテナ101で受信される様子を示す。
【0019】
アンテナ101、102は、変復調部106、107から出力される送信信号を他方のアンテナ又は通信相手である端末200へ送信し、また、アンテナ101、102に到達する受信信号をそれぞれ変復調部106、107へ出力する。
【0020】
タイミング算出部104は、初期設定時または通信開始時に、アンテナ101から送信される送信信号と、当該送信信号がアンテナ102または通信相手である端末200によって反射されてアンテナ101に戻ってきた反射信号とから、アンテナ101と端末200までの経路と、アンテナ102と端末200までの経路との差に相当する時間差を算出する。時間差の算出方法については、後に詳述する。さらに、タイミング算出部104は、算出した時間差からタイミング調整信号を生成し、タイミング調整信号を可変遅延器105へ出力する。
【0021】
可変遅延器105は、タイミング調整信号に応じて送信データの送信タイミングを遅延させて、遅延後の送信データを変復調部106へ出力する。
【0022】
変復調部106、107は、タイミング調整後の送信データに対し変調処理を施し、アンテナ101、102へ出力する。また、変復調部106、107は、受信信号に対し復調処理を施し、復調後の受信データをタイミング算出部104へ出力する。なお、図4では、端末200から送信される送信信号をアンテナ101が受信し、変復調部106が復調処理を行うとこととしているが、アンテナ102が受信し、変復調部107が復調処理を施しても良く、また、アンテナ101およびアンテナ102の双方で受信し、変復調部106および変復調部107の双方で復調処理を施すようにしても良い。
【0023】
次いで、図5を用いてタイミング算出部104についてさらに説明する。図5は、タイミング算出部104の要部構成を示すブロック図である。同図に示すようにタイミング算出部104は、第1の可変遅延器301と、第2の可変遅延器302と、相関器303と、相関判定部304と、時間差算出部305と、初期時間差保存部306と、到達時間差算出部307とを備えている。
【0024】
可変遅延器301は、機器固有の遅延時間だけ送信データを遅延する。機器固有の遅延時間とは、具体的には、アンテナ101が接続された系と、アンテナ102が接続された系との経路差に相当する時間である。
【0025】
可変遅延器302は、相関判定部304から出力される制御信号の値に応じて、可変遅延器301から出力される送信データを遅延し、遅延後の送信データを相関器303へ出力する。
【0026】
相関器303は、可変遅延器302から出力される送信データと、送信データがアンテナ102または端末200によって反射されてアンテナ101に戻ってきた反射データとの相関演算を行い、演算結果を相関判定部304へ出力する。
【0027】
相関判定部304は、相関演算結果を用いて送信データと反射データとの遅延量を算出する。具体的には、相関演算結果が所定の閾値以上か否かを判定し、相関演算結果が所定の閾値以上となるまで、制御信号を可変遅延器302へ出力する。なお、相関判定部304は、演算結果に応じて可変遅延器302における遅延量を決定し、決定した遅延量だけ可変遅延器302において送信データが遅延するような制御信号を時間差算出部305へ出力する。
【0028】
時間差算出部305は、相関判定部304から出力される制御信号から、可変遅延器302において送信データが遅延された時間、すなわち、送信データと反射データとの時間差を算出する。例えば、相関判定部304から、遅延量に相当する振幅レベルを持つ制御信号が出力される場合には、時間差算出部305は、制御信号の振幅レベルを積算して、可変遅延器302における遅延時間を算出する。
【0029】
なお、時間差算出部305は、初期設定時には算出した時間差を初期時間差保存部306へ出力し、通信開始時には算出した時間差を到達時間差算出部307へ出力する。なお、初期設定時に算出された時間差は、アンテナ101から送信された送信データがアンテナ102において反射されてアンテナ101に戻ってくるまでの時間(以下「初期時間差」という)となる。また、通信開始時に算出された時間差は、アンテナ101から送信された送信データが端末200において反射されてアンテナ101に戻ってくるまでの時間となる。
【0030】
初期時間差保存部306は、初期設定時に時間差算出部305から出力される初期時間差を保存し、通信開始時に初期時間差を到達時間差算出部307へ出力する。
【0031】
到達時間差算出部307は、通信開始時に時間差算出部305から出力される時間差、つまり、アンテナ101から送信された送信データが端末200において反射されてアンテナ101に戻ってくるまでの時間と上述した初期時間差とを用いて、可変遅延器105においてアンテナ101から送信される送信データの送信タイミングを調整するためのタイミング調整信号を出力する。
【0032】
具体的には、到達時間差算出部307は、アンテナ101から送信される送信データを遅延させて、アンテナ101から送信される送信データとアンテナ102から送信される送信データとが規定のタイミングで端末200に到達するような遅延量に相当するタイミング調整信号を出力する。遅延量は、例えば、次式(1)を用いて算出することができる。式(1)において、T1は初期時間差で、T2は、端末200がある場合にアンテナ101から送信される送信信号が端末200において反射されてアンテナ101へ戻ってくるまでに要する時間である。
遅延量=T1/2−T2 …(1)
【0033】
次いで、上記のように構成された通信装置100による初期設定時から通信開始時までの動作について、図6の波形図および図7のフロー図を参照しながら説明する。
【0034】
まず、初期設定時には、初期時間差を測定するための時間差測定用データが、可変遅延器105、変復調部106、およびアンテナ101を経由して、アンテナ102へ送信される(ST101)。初期時間差とは、上述したように、アンテナ101とアンテナ102との間の距離に相当する。なお、初期設定時には、可変遅延器105において時間差測定用データは遅延されず、変復調部106へ出力される。
【0035】
そして、アンテナ102によって反射された時間差測定用データは、アンテナ101を経由して変復調部106によって復調処理が施され(ST102)、復調後の反射データが、タイミング算出部104へ出力される。
【0036】
そして、タイミング算出部104によって、時間差測定用データとアンテナ102によって反射された反射データとの相関演算結果より初期時間差(T1)が算出される。具体的には、タイミング算出部104内の相関器303における時間差測定用データと反射データとの相関演算結果が所定の閾値以上となるまで、可変遅延器302によって時間差測定用データが遅延され、可変遅延器302における遅延量に基づいて時間差算出部305によって初期時間差が算出されて、算出された初期時間差は、初期時間差保存部306において保存される(ST103)。図6(a)に、時間差測定用データの送信タイミングを示し、図6(b)にアンテナ102によって反射された反射データの受信タイミングを示す。
【0037】
通信開始時には、アンテナ101とアンテナ102との間に端末200が挿入され(ST104)、再度時間差測定用データが、可変遅延器105、変復調部106、およびアンテナ101を経由して、端末200へ送信される(ST105)。初期設定時の場合と同様に、可変遅延器105において時間差測定用データは遅延されず、変復調部106へ出力される。
【0038】
そして、端末200によって反射された時間差測定用データは、アンテナ101によって受信され変復調部106によって復調処理が施され(ST106)、復調後の反射データは、タイミング算出部104へ出力される。
【0039】
そして、初期設定時と同様にタイミング算出部104によって、時間差測定用データと端末200からの反射データの相関演算結果より時間差(T2)が算出されて、算出された時間差(T2)は、到達時間差算出部307において保存される(ST107)。つまり、相関が取れたときの遅延器302の遅延量が、電波がアンテナ101から送信されて、端末200において反射され再度アンテナ101において受信されるまでの伝搬時間となる。図6(c)に、端末200によって反射された反射データの受信タイミングを示す。なお、図6(c)は、図4の状態での測定となる。
【0040】
そして、到達時間差算出部307によって、例えば、初期時間差(T1)と時間差(T2)とが上式(1)に用いられて、到達時間差が算出される。すなわち、アンテナ101から端末200へ送信される第1の送信信号と、アンテナ102から端末200へ送信される第2の送信信号との経路の違いに起因する到達時間差が算出される。そして、到達時間差を考慮して、到達時間差算出部307によって、さらに、第1の送信信号と第2の送信信号が規定のタイミングで端末200に到達するように可変遅延器105における遅延量が決定され、遅延量に相当するタイミング調整信号が算出される。そして、タイミング調整信号が到達時間差算出部307から可変遅延器105へ出力される(ST108)。
【0041】
このようにして、アンテナ101から送信される送信データ1と、アンテナ102から送信される送信データ2との遅延量とが決定され、通信後は、可変遅延器105によって、タイミング調整信号に応じて送信データ1の送信タイミングが調整される。そして、タイミング調整された送信データ1と送信データ2は、変復調部106、107によって変調処理が施されて、アンテナ101、102を経由して端末200へ送信される。
【0042】
これにより、端末200にのみに送信データ1および送信データ2が規定のタイミングで到達する。一方、特定の位置関係にない端末へは送信データ1および送信データ2が規定のタイミングで到達しない。したがって、例えば、情報データ列を1ビットずつ交互に送信データ1と送信データ2に割り当て送信した場合には、特定の位置関係にない端末へは規定のタイミングでこれら送信データが到達しないため情報データ列を正しく復調することができないが、端末200へは規定のタイミングでこれら送信データが到達するため、端末200は情報データ列を正しく復調することができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、一方のアンテナから送信される送信信号が他方のアンテナおよび端末200によって反射されて戻ってくるまでの時間から、複数のアンテナと端末との経路差を算出し、端末200へ規定のタイミングで送信信号が到達するようそれぞれのアンテナから送信する送信データのタイミングを調整するようにしたため、それぞれのアンテナと特定の位置関係にある端末のみが情報データ列を正しく復調することができる。
【0044】
また、タイミング調整は通信装置100において行われるため、端末におけるタイミング調整が不要で、端末の処理負荷を増加させることなく、通信装置100と特定の位置関係にある端末のみが情報データ列を正しく復調することができる。
【0045】
つまり、通信装置100と特定の位置関係にある正規の受信者の端末200に対しては、端末200が意識せずとも受信信号を単純に合成すれば信号を復調することができる。これに対し、非正規受信者の端末が不正に情報を取得するような場面では、非正規受信者の端末は、上述した特定の位置関係にないため、アンテナ101とアンテナ102から別個に送信される異なる信号の合成タイミングを調整する必要が生じ、簡単に情報データ列を復調することが難しく、また、通信装置100が、適当な周期でアンテナ101とアンテナ102から送信する信号のタイミングや組合せを変えることにより、非正規受信者が所有する端末は、アンテナ101とアンテナ102から送信される信号のタイミングや組合せが変わる度ごとに合成タイミングを調整する必要が生じるため、簡単に不正取得できないようなセキュリティ効果を持ち合わせている。
【0046】
このように、アンテナ101とアンテナ102から送信される送信データ1及び送信データ2は、互いに補完し合うことにより情報データ列が復調されるような異なるデータにすることで、通信装置100と特定の位置関係にある端末のみが情報データ列を正しく復調することができる。
【0047】
なお、時間差(T2)の測定は、予め定めた時間間隔毎に行うことで、通信相手の位置が変動する場合に、時間差の修正を行うことができる。
【0048】
なお、以上の説明ではそれぞれのアンテナと端末200との経路差に相当する時間差を算出し、経路差に相当する時間差に基づいてタイミング調整を行う場合について述べたが、端末200を置く位置を予め決めておき、位置を限定することで経路差に相当する時間差の算出を行なわずに端末200の位置を確定できるように構成し、当該位置に対応してタイミング調整を行なうようにしても同様に実施可能である。また、端末200を置く位置の候補を複数設け利用者毎にその位置を変えるようにしたり、1利用者であっても位置を変更する旨の指示等により利用者に位置変更を促してその位置を変えるようにしたり、又は例えば端末保持台が自ら位置を変更する機能を備えることで位置変更を行なうようにしたりすることで、それぞれのアンテナと端末200との特定位置関係を時間的に変更して、通信可能な位置関係をより限定するようにしてもよい。
【0049】
なお、アンテナ101、102から送信される信号の周波数帯域は特に同一周波数帯である必要はなく、異なる周波数帯域としてもよい。つまり、例えば、アンテナ101から送信する信号を60GHz帯、アンテナ102から送信する信号を3〜5GHz帯の信号とし、その周波数帯域の違いによる伝搬減衰差を利用して、ミリ波帯による広帯域通信と、マイクロ波帯による低誤り通信とを組み合わせて用いるようにしてもよい。これにより、通信に先立ち端末200との間でやり取りが必要となる認証用データ等、データ量が比較的少なく確実に送りたい情報をマイクロ波帯により低誤りで送信し、一旦認証等が確立された後は、情報データを大容量伝送に適したミリ波帯で高速に送信するようにすることができる。
【0050】
また、初期設定時および通信開始時において上述した時間差測定用データを3〜5GHz帯のマイクロ波帯のみを用いて他方のアンテナに送信するようにして到達時間差を算出するようにすれば、ミリ波帯を用いて到達時間差を算出するのに比べ到達時間が長くなるため、より通信装置100に近い端末との間の到達時間差を算出することができるようになり、近距離に位置する端末との通信タイミングを調整することも可能となる。周波数変換は、例えば、局部信号源とミキサから成る周波数変換部により行うようにすればよい。
【0051】
なお、上述したように本実施の形態では、アンテナ101、102から送信される送信データ1と送信データ2の直接波が規定のタイミングで端末200へ到達する場合について説明したが、通信装置100がマルチパスの影響によって生じる遅延波の伝搬遅延時間を測定するマルチパス測定部108をさらに備え、遅延波による符号間干渉を回避するように送信データを送信するアンテナを選択するようにしてもよい。
【0052】
図8に、マルチパス測定部108を備える通信装置100の要部構成を示す。マルチパス測定部108は、例えば、既知信号と変復調部106又は変復調部107から出力される実際の受信信号との差分を取り、マルチパスの影響によって生じる遅延波の伝搬遅延時間を測定する。マルチパス測定部108は、伝搬遅延時間を変復調部106及び107に出力する。
【0053】
以下、上記のように構成された通信装置100の動作について図9〜図11を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、送信データが“1”のときに送信波を送信し、送信データが“0”のときには送信波を送信しないOOK(On Off Keying)変調方式の場合について説明する。
【0054】
図9(b)は、アンテナ101から図9(a)に示すような送信波が端末200へ送信された場合に、送信波の直接波が端末200に到達するタイミングと、アンテナ101と端末200との間のマルチパスの影響によって生じる送信波の遅延波が端末200に到達するタイミングとの関係を示している。図9(b)に示す例では、遅延波は、直接波に対し遅延時間TA後に端末200に到達している。
【0055】
同様に、図9(c)は、アンテナ102から図9(a)に示すような送信波が端末200へ送信された場合に、送信波の直接波が端末200に到達するタイミングと、アンテナ102と端末200との間のマルチパスの影響によって生じる送信波の遅延波が端末200に到達するタイミングとの関係を示している。図9(c)に示す例では、遅延波は、直接波に対し遅延時間TB後に端末200に到達している。
【0056】
マルチパス測定部108は、これら遅延時間TA,TBを測定する。さらに、マルチパス測定部108は遅延時間TAおよびTBを考慮しながら、送信データに含まれる“1”をアンテナ101から送信する送信データ1またはアンテナ102から送信する送信データ2のいずれかに振り分ける。以下では、送信データが“1”,“0”,“1”,“1”,“0”の場合を例に送信データの振り分け方法について説明する。
【0057】
まず始めに図10(a)に示すように、上記送信データに対応した送信信号列をアンテナ101のみから送信した場合を考える。端末200へは図10(b)に示すように、直接波の他、アンテナ101と端末200との間のマルチパスの影響を受けた遅延波(符号間干渉1〜3)が到達する。
【0058】
図10(b)において符号間干渉2は直接波と遅延波とが合成された結果、位相が相殺されて振幅が小さくなっている。したがって、振幅が所定の閾値以上のとき受信データが“1”と判定されるOOK変調方式の場合、符号間干渉2は振幅が所定の閾値未満であるため誤って“0”と判定される確率が高くなり、通信誤りの原因となる。
【0059】
これに対し、図11は、マルチパス測定部108が送信データに含まれる“1”の一部を他方のアンテナ102から送信するようにした場合に、それぞれのアンテナ101,102から送信される送信波と、端末200に到達する直接波と遅延波の様子を示している。具体的には、図11(a)はアンテナ101から送信される送信波を、図11(b)はアンテナ102から送信される送信波を示している。また、図11(c)は端末200に到達する直接波および遅延波の様子を示している。図11(a),(b)に示すように送信データに“1”が含まれる場合にその一部をアンテナ102から送信するようにしたので、端末200に到達する符号間干渉4,6は、図10(b)に示される符号間干渉1,3と同じである一方、符号間干渉5の振幅は減衰せず所定の閾値以上となって“1”と正しく判定されるため、図10(b)に示される符号間干渉2に比し判定誤りの確率を低く抑えることができる。
【0060】
このようにマルチパスの影響によって生じる遅延波の遅延時間を考慮し、送信データに含まれる“1”をアンテナ101から送信される送信データ1またはアンテナ102から送信される送信データ2に振り分けるようにしたので、送信波が送信されるアンテナが切り替えられるようになり、この結果、直接波と遅延波とが異なる位相で端末200に到達する割合が減り、符号間干渉による復調誤りを低減することができるようになる。
【0061】
なお、以上の説明では、アンテナ101から送信される送信波に対する直接波と遅延波とが互いに相殺し合うタイミングで端末200に到達するため、送信データに“1”が含まれる場合にその一部をアンテナ102から送信し直接波と遅延波とが端末200に重ならないようなタイミングで到達する場合について説明したが、アンテナ101から送信される送信波に対する直接波と遅延波とが端末200に同位相で到達するような場合には、送信データ“1”を送信するアンテナとしてアンテナ101を積極的に用いるようにしてもよい。これにより、端末200に直接波と遅延波とが同位相で到達し、同位相で合成される結果、振幅が増加するようになってRake合成と同様の効果が得られ、SNR(Single to Noise Ratio)を改善し復調性能を高めることができる。
【0062】
(実施の形態2)
図12に、本発明の実施の形態に係る通信装置100の要部構成を示す。通信装置100の要部構成は、上記実施の形態1で示した図1の通信装置に比して、アンテナ101およびアンテナ102を横に並べ、端末200をその上にかざす配置としている点、および、タイミング算出部104に代えタイミング算出部401−1、401−2を有し、タイミング調整部402が追加された点で異なることを除いて同様である。
【0063】
タイミング算出部401−1、401−2は、図5に示すタイミング算出部104の要部構成から、初期時間差保存部306および到達時間差算出部307を削除した構成を有し、それぞれのアンテナから送信された送信信号が端末200によって戻ってきた反射信号とから、それぞれのアンテナと端末200までの経路差に相当する時間差を算出し、算出した時間差をタイミング調整部402へ出力する。すなわち、タイミング算出部401−1は、アンテナ101と端末200との経路差に相当する時間差を算出し、タイミング401−2は、アンテナ102と端末200との経路差に相当する時間差を算出する。
【0064】
タイミング調整部402は、タイミング算出部401−1、401−2から出力されるそれぞれの経路に相当する時間差から、端末200にアンテナ101およびアンテナ102から送信される送信信号が規定のタイミングで到達するようアンテナ101から送信される送信信号の送信タイミングを調整するためのタイミング調整信号を生成する。タイミング調整部402は、生成したタイミング調整信号を可変遅延器105へ出力する。つまり、アンテナ101とアンテナ102から送信されて端末200によって反射された反射信号がそれぞれのアンテナに到達するまでの時間差から、アンテナ101から送信される送信データの送信タイミングが調整される。これにより、特定の領域に位置する端末200へ、アンテナ101およびアンテナ102から送信される送信信号が規定のタイミングで到達し、端末200のみが通信可能となる。
【0065】
以上のように、本実施の形態によれば、アンテナ101と端末200との経路と、アンテナ102と端末200の経路との経路差に相当する時間差とを求め、それぞれのアンテナから送信される送信信号の到達時間差を算出し、遅延量を決定するようにしたので、端末200がアンテナ101とアンテナ102の間に設置できないような状況においても、端末200に規定のタイミングで送信データが到達するようにして、情報データ列の復調が可能となり、実施の形態1に比してアンテナ101、102および端末200の設置の形態の制約を小さくすることができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態では、通信装置のアンテナを2つとした例を示したが、アンテナは2つに限らず、3つ以上のアンテナと変復調部およびタイミング算出部をアンテナ数に対応させて設けても良い。図13に3つのアンテナを有する通信装置の要部構成を示す。図13は、図12に対し、第3のアンテナ403、第3の変復調部404、第3のタイミング算出部401−3、および第2の可変遅延器405を追加した構成を採る。アンテナ数を3つに増やす場合には、3つのアンテナから送信される送信データを用いて時間差を算出するため、すべてのアンテナからの距離が特定の距離に位置する端末のみしか情報データ列を正しく復調することができなくなって、通信可能な特定領域をより限られた領域に絞り込むことが可能となる。
【0067】
(実施の形態3)
本発明の本実施の形態3は、実施の形態1および2の通信装置から送信される信号を受信する端末について説明する。
【0068】
一例として、実施の形態1および2の通信装置からパルス信号が送信され、このパルス信号を受信する端末200について説明する。図14(a)に、通信装置100から送信される第1の送信信号の送信タイミングを示し、図14(b)に、通信装置100から送信される第2の送信信号の送信タイミングを示す。通信装置100から送信される第1の送信信号(図14(a))と第2の送信信号(図14(b))は、図14に示すようなタイミングで端末200に到達する。本実施の形態では、第1の送信信号は変調されたパルス信号で、例えば、OOK(On Off Keying)変調方式の場合には、パルスがあれば“1”を、無ければ“0”を示す。一方、第2の送信信号はタイミング信号で、例えば、同期用のクロックを含む。つまり、情報データ列である第1の送信信号と、同期用クロックを含む第2の送信信号とを結合することで、正しくデータを復調することができる。
【0069】
図15に、図14に示すようなパルス信号を受信する端末200の要部構成を示す。同図に示す端末200は、アンテナ501、502、および512と、フィルタ503−1、503−2および511と、アンプ504−1、504−2および510と、検波器505−1、505−2と、クロックリカバリ506と、ADC(Analog to Digital Converter)507と、データ処理部508と、パルス変調部509とを備えている。
【0070】
アンテナ501、502は、通信装置100から送信される第1、第2の送信信号をそれぞれ受信する。フィルタ503−1、503−2および511は、受信信号または送信信号に対し帯域制限を施す。アンプ504−1、504−2および510は、受信信号または送信信号の振幅レベルを調整する。検波器505−1、505−2は、受信信号に対しエンベロープ検波を施し、検波器505−1は、エンベロープ検波結果をADC507へ出力し、検波器505−2は、エンベロープ検波結果をクロックリカバリ506へ出力する。
【0071】
クロックリカバリ506は、エンベロープ検波結果から受信信号のタイミング信号を生成し、ADC507へ出力する。ADC507は、タイミング信号を用いて受信信号をサンプリングする。データ処理部508は、サンプリングされた受信信号に対し、復調処理を施す。
【0072】
具体的には、受信信号には、通信装置100から第1の送信信号として送信されるパルス信号と第2の送信信号として送信されるタイミング信号が含まれているため、データ処理部508は、サンプリング後の受信信号からクロック信号を除去した除去後の受信信号に対し復調処理を施す。なお、通信装置100から送信される第1の送信信号と第2の送信信号とが異なるなる搬送波周波数で送信される場合には、フィルタ503−1,503−2によりそれぞれ帯域制限が施されるため、データ処理部508は、サンプリング後の受信信号に対し直接復調処理を施せばよい。
【0073】
なお、端末200に、通信装置100から送信される第1の送信信号及び第2の送信信号の直接波に加え反射波が混在して到達する場合が想定される。しかしながら、直接波と反射波が端末200に到着するタイミングが同時に到着することは希で、ミリ波では伝搬減衰が大きいため直接波と反射波との信号電力差が顕著なため、データ処理部508は、直接波と反射波を分離することが可能である。
【0074】
さらに、データ処理部508は、送信データをパルス変調部509へ出力し、ADC507から出力されるサンプリングデータに対しディジタル復調処理を施す。パルス変調部509は、送信データにパルス変調処理を施し、アンプ510へ出力する。アンテナ512は、パルス変調後アンプ510およびフィルタ511を通過した送信信号を通信装置100へ送信する。
【0075】
次いで、上記のように構成された端末200の受信動作について説明する。
【0076】
通信装置100のアンテナ101から送信される第1の送信信号は、アンテナ501を介して受信され(以下「第1の受信信号」という)、フィルタ503−1およびアンプ504−1を経由して検波器505−1によってエンベロープ検波され、検波結果はADC507へ出力される。
【0077】
一方、通信装置100のアンテナ102から送信される第2の送信信号は、アンテナ502を介して受信され(以下「第2の受信信号」という)、フィルタ503−2およびアンプ504−2を経由して検波器505−2によってエンベロープ検波され、検波結果がクロックリカバリ506へ出力される。
【0078】
そして、クロックリカバリ506では、エンベロープ検波後の第2の受信信号からタイミング信号が生成される。
【0079】
上述したように、本実施の形態ではアンテナ102から送信される第2の送信信号は、同期用のクロックを含むため、クロックリカバリ506によってタイミング信号の生成が可能となる。そして、タイミング信号が用いられてエンベロープ検波後の第1の受信信号がADC507によってサンプリングされ、データ処理部508によってサンプリング後の第1の受信信号に対しディジタル復調処理が施される。
【0080】
なお、図14では第2の送信信号が第1の送信信号が存在する可能性のあるすべてのタイミングで存在する場合を説明したが、クロックリカバリ506において、低周波数の信号を逓倍してタイミング信号を生成するようにしても良い。これにより、第2の送信信号としてパルス繰り返し周期が長い信号を用いることができる。
【0081】
また、図16に、図14に示すようなパルス信号を受信する端末200の他の構成例を示す。なお、図16は、図15に対して、検波器505−1に代えて相関器513を備え、相関器513はエンベロープ検波に代わり同期検波を行う。これにより、タイミング信号がより高い精度で生成することができ、復調性能を向上することが可能となる。
【0082】
図17に、実施の形態1および2の通信装置から送信されるパルス信号の他の一例を示す。第1の送信信号(図17(a))および第2の送信信号(図17(b))は、BPSK(Bi Phase Sift Keying)変調されたパルス信号で、それぞれのパルス信号は同一のタイミングで端末200に到達している。
【0083】
端末200が図16に示すような要部構成を備えている場合、相関器513の出力は、図17(c)に示すように第1の送信信号と第2の送信信号とが乗じることで結合した波形となり、データ処理部508によって、出力結果が正であれば“1”、負であれば“0”と判定される。
【0084】
なお、図18に示すようなタイミング関係で、実施の形態1および2の通信装置から送信される第1の送信信号(図18(a))と第2の送信信号(図18(b))とが送信された場合には、図19に示すような要部構成を備える端末200にて復調可能となる。図19は、図16に対し遅延器601を追加した構成を採る。すなわち、第1の送信信号と第2の送信信号の到達タイミングが同時でない場合には、遅延器601によって第1の送信信号を遅延させタイミングが調整され、相関器513によって遅延後の第1の送信信号と第2の送信信号とを相関演算が施される。
【0085】
なお、遅延器601では、遅延量が変更される度、到達タイミングを測定し、到達タイミングが一致するまで、遅延量のタイミング調整を行う。
【0086】
図20に、実施の形態1および2の通信装置から送信されるパルス信号のさらに他の一例を示す。図20は、3つのアンテナを備える通信装置100から送信された第1の送信信号(図20(a))、第2の送信信号(図20(b))、および第3の送信信号(図20(c))が端末200へ到達する様子を示している。同図に示すように、第1、第2、および第3の送信信号は、それぞれ同一タイミングに互いに重複して存在しないようにタイミング調整され端末200へ到達する。
【0087】
図21に、図20に示すようなパルス信号を受信する端末200の要部構成を示す。図21に示す端末200は、アンテナ701と、フィルタ702と、アンプ703と、検波器704と、クロックリカバリ705と、テンプレート信号生成部706と、相関器707と、ADC708と、データ処理部709を備えている。すなわち、図20に示すように第1、第2、および第3の送信信号が、同一タイミングに互いに重複して存在しないようにタイミング調整されている場合は、単一のアンテナ701を介して第1から第3の送信信号がすべてを受信し、テンプレート信号生成部706によって生成されるテンプレート信号(図20(d))と受信信号との相関を相関器707によって取ることで波形を結合し、相関結果の正負(図20(e))に応じて“1”“0”を判定することが可能となり、図13に示すような3つのアンテナを備える通信装置100から第1から第3の送信信号が送信された場合においても復調処理を行うことができる。
【0088】
なお、図21では、端末200が、テンプレート信号を用いて同期検波を行うこととしたが、テンプレート信号を用いず、遅延検波により復調処理を行うことも可能である。また、上述した例では、BPSK変調の場合について説明したが、これに限らず、OOK変調、PPM(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)変調など他の変調方式が用いられた場合においても同様に復調可能となる。
【0089】
また、第1または第2の送信信号としてフレームタイミングを示すフレーム同期情報などの同期情報を送るようにしても良い。図22に波形図の一例を示す。第1の送信信号はBPSK変調されたパルス信号(図22(a))で、第2の送信信号はBPSK変調されたフレーム同期情報を示す信号(図22(b))である。図22(c)は、図22(a)を復調した結果得られる第1の送信信号に割り当てられたデータで、図22(d)は、復調後の第2の送信データを示し、“1”“0”と並ぶタイミングがフレーム同期タイミングである。上述したように、通信装置100は、特定の位置関係にある端末200のみへ、情報データとフレーム同期情報のタイミングが連動して到達するよう送信タイミングを調整して送信する。したがって、通信品質に応じてフレーム長を変更した場合にも、端末200はフレーム同期を正しく取ることが可能となるが、特定の位置関係以外の端末では情報データとフレーム同期情報のタイミングが連動して到達しないため、フレーム同期を正しく取ることができない。
【0090】
なお、端末200は、第1の送信信号として送信されるBPSK変調されたパルス信号と、第2の送信信号として送信されるBPSK変調されたフレーム同期情報を示す信号の合成信号を受信するが、受信信号を所定のしきい値で振幅レベルに応じ、合成信号は図21(a)に示すパルス信号と図21(b)示すフレーム同期情報とに分離される。また、第1の送信信号と第2の送信信号とが異なるなる搬送波周波数で送信される場合には、異なるフィルタを用いて帯域制限を施すことにより、同様に合成信号は図21(a)に示すパルス信号と図21(b)示すフレーム同期情報とに分離される。
【0091】
また、第1または第2の送信信号として、セキュリティを強化するため認証用データを情報データと連動させて送るようにしても良い。これにより、通信装置100と特定の位置関係にある端末200のみが認証用データを情報データと連動して取得することが可能となり、以後特定の領域に位置する端末200のみが認証を行って、当該認証用データと同期して到達した情報データ列を復調することができる。
【0092】
以上のように、本実施の形態によれば、情報データと、フレームタイミングを示すフレーム同期情報などの同期情報を、通信装置100のアンテナ101または102から、それぞれ第1、第2の送信信号として、特定の位置関係にある端末200へ規定のタイミングで到達するよう送信タイミング調整をして送信するようにしたので、通信装置100と特定の位置関係にある端末200のみがフレーム同期を正しく取って、情報データ列を正しく復調することができる。つまり、情報データとフレーム同期情報とが結合することで、情報データ列を正しく復調することができる。なお、アンテナ数は3つに限らず2つでも、また、4つ以上の場合であっても同様に実施可能である。
【0093】
(実施の形態4)
本発明の本実施の形態4は、実施の形態1および2の通信装置100と実施の形態3の端末200から構成される無線システムについて説明する。図23に、本実施の形態4に係る無線システムの一例を示す。同図に示すように、本実施の形態4に係る無線システムでは、端末200を第1の位置から第2の位置へ意図的に移動させ、移動後の第2の位置にある端末へ送信する送信信号のタイミング調整を変更している点に特徴がある。同図において、無線部801は、実施の形態1および2のいずれかに示す無線部103の構成と共通するため、その説明を省略する。
【0094】
次いで、上記のように構成された無線システムの動作について図24の波形図を用いて説明する。図24は、第1および第2の位置における端末に到達する第1および第2の送信信号の到達タイミングを示している。なお、同図において、<1>および<2>は、それぞれ通信装置100のアンテナ101および102から送信される第1の送信信号および第2の送信信号を示す。
【0095】
まず、通信装置100は、上述した方法によりアンテナ101から送信される第1の送信信号のタイミングを調整し、第1の位置にある端末200へ第1の送信信号(図24(a))と第2の送信信号(図24(b))を送信する。端末200では、通信装置100から送信される第1の送信信号と第2の送信信号とが規定のタイミングで到達するため(図24(c))、これら送信信号を受信して結合することで、情報データ列が復調される。
【0096】
端末200では、情報データ列が復調され、所定の時間経過後、第1の位置から第2の位置へ移動する旨の指示が、通信装置100から端末200へ通知される。そして、位置を移動する旨の指示を受けた端末200を保持する利用者により、端末200の位置が第1の位置から第2の位置へ移動される。なお、利用者により端末200の位置を移動するに限らず、例えば、利用者が端末200を所定のトレー等に載せトレーが移動するようにしても良い。
【0097】
図24(d)は、端末200が第2の位置へ移動した直後に、通信装置100から送信される第1および第2の送信信号が端末200へ到達するタイミングの様子を示す。移動直後は、それぞれのアンテナからの到達時間が変わるため、端末200に第1および第2の送信信号が規定のタイミングで到達せず、端末200が復調する情報データ列には、誤りが増加する。
【0098】
そのため、本実施の形態における無線システムでは、第2の位置へ移動した端末200に対し、再度、上述した初期設定時および通信開始時の手順により、アンテナ101から移動後の端末200へ送信される第1の送信信号と、アンテナ102から移動後の端末200へ送信される第2の送信信号との経路の違いに起因する到達時間差が算出される。そして、実施の形態1および2と同様に、第1の送信信号の送信タイミングが調整される。このようにして、移動後の第2の位置にある端末200へ規定のタイミングで第1および第2の送信信号が到達するようになり、端末200によって第1および第2の送信信号が受信されて、情報データ列が復調される。
【0099】
以上のように、本実施の形態によれば、第1の位置にある端末に対し通信装置100から送信される第1および第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう送信タイミング調整を行った後、通信装置100から通知される指示を受けて、端末200を第2の位置へ移動させ、移動後の第2の位置にある端末200に対し通信装置100から送信される第1および第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう送信タイミング調整を行うようにした。
【0100】
このため、移動前は、通信装置100と端末200の第1の位置との距離と同じ距離関係にある他の位置においても復調が可能であったが、移動後は、さらに、通信装置100と移動後の端末200の第2の位置との距離と同じ距離関係にある位置においてのみ復調が可能となるため、通信装置100と通信を行うことができる端末200の位置関係をさらにより限られた領域に限定することができる。
【0101】
なお、本実施の形態では、RFID(Radio Frequency Identification)のようなカード端末を想定した例を説明したが、本発明を車載用の端末に適用することも可能である。図25に、車載用の端末に本発明を適用した通信システムの配置図の一例を示す。同図は、駐車スペースを利用した通信システムの一例で、駐車スペースは、停車位置を限定する車両止め902と、第1のアンテナ101と、第2のアンテナ102と、無線部103と、屋根903と備え、無線部103は屋根903に設置されている。
【0102】
なお、第1の位置は、通信エリア内であればどこでもよく、通信エリア内では特に限定されず、車載用端末200は、2箇所以上の位置で通信することで、通信装置100から送信される情報データ列を正しく復調することができる。
【0103】
つまり、車両901が、駐車スペースの停車する際、第1の位置から第2の位置へ移動する前後で、通信装置100が送信タイミング調整を行うことにより、車載用端末200以外の端末は、通信装置100から送信される情報データ列を正しく復調することができず受信が困難となる。
【0104】
以上により、車載用端末200を搭載した車が、買い物のために、駐車場に駐車した後に、店舗の案内、地域の情報などを得ることができる。
【0105】
(実施の形態5)
本発明の本実施の形態5は、実施の形態1および実施の形態2の通信装置100と実施の形態3の端末200から構成される無線システムについて説明する。図26に、本実施の形態5に係る無線システムの一例を示す。同図に示すように、本実施の形態5に係る無線システムでは、反射板1001を備え、アンテナ101は当該反射板1001へ第1の送信信号を送信する点で上述した実施の形態と異なり、通信装置100および端末200の要部構成は上述した実施の形態と同様である。
【0106】
つまり、本実施の形態では、アンテナ101から送信された第1の送信信号の直接波に代わり、アンテナ101から送信された第1の送信信号が反射板1001によって反射され端末200に到達する反射波を用いて、アンテナ101およびアンテナ102と端末200間の到達時間差を算出し、送信タイミングの調整を行う。
【0107】
通常、1nsの時間差を与えるには約30cmの経路差が必要となるが、以上のように、本実施の形態によれば、反射板1001を設け、経路差を擬似的に長くして到達時間差を長くすることができるため、アンテナ101とアンテナ102が近接して配置する状況においても、特定の位置関係にある端末のみが通信装置と通信できるようになる無線システムを構築することができる。また、アンテナ101とアンテナ102を近接して配置することが可能となるので、通信装置100を小型化することができる。なお、第2のアンテナ102から送信される第2の送信信号についても、直接波でなく反射波を用いて送信タイミングの調整を行っても良い。
【0108】
また、上述した実施の形態3から5においては、変調方式としてOOK変調方式およびBPSK変調方式を用いた場合についてのみ記載したが、これらに限らず、PPM変調方式、ASK(Amplitude Shift Keying)変調方式、多値ASK変調方式、PSK(Phase Shift Keying)変調方式、または多値PSK変調方式や、これらを組み合わせた他の変調方式を用いた場合にも同様の効果が得られる。
【0109】
なお、上述した実施の形態では通信装置100のみが送信タイミングの調整を行う場合について説明したが、端末200が、通信装置100と同様にタイミングを調整する機能を備え、複数のアンテナから送信される送信信号のタイミングを微調整することで微小なずれを補正して、受信感度を高めるように構成しても良い。
【0110】
また、通信装置100と端末200が協調し、一定時間経過後に複数のアンテナから送信された送信信号のタイミングを変化させても良い。例えば、最初は、第1の送信信号を遅延時間0、第2の送信信号を遅延時間τとして合成する取り決めとし、一定時間Tが経過したのち、通信装置100が第2の送信信号のみをτ×2だけ遅らせて送信し、端末200では第2の送信信号を遅延時間0として合成することで、最初の状態と同様に復調を続けることができる。なお、τ、Tは任意の時間とする。
【0111】
なお、上述した実施の形態では、アンテナから送信される送信信号と反射信号との時間差を使ってタイミング調整をすることのみ述べたが、送信信号に応じて端末200が適当な時間経過後に応答信号を返すことで、この時間差を用いて調整するタイミングを算出する方法を用いても実施可能である。または、反射信号による調整と時間経過後に応答信号を返す調整とを併用しても同様に実施可能である。応答信号の信号レベルは大きく見逃す割合が減るため、応答信号を用いることで、送信側のタイミング調整を簡単化することが可能となる。また、応答信号を用いる場合には応答する機器側の内部遅延を正確に見積もれず誤差が出るが、反射信号を用いる場合には遅延が無いため、これらを併用することでタイミング算出精度を高めることが可能となる。
【0112】
なお、反射板1001以外の物体によって反射された反射波が端末200に到達する可能性があるが、このマルチパスの影響によって端末200に到達する反射波が受信時に適当なタイミングで合成されない限り、受信復調時にA/Dコンバータ等でサンプルされることがないため、復調される情報データ列に影響を与える可能性は小さい。
【0113】
また、アンテナ101から送信された第1の送信信号が反射板1001によって反射され端末200に到達する反射波と、他方のアンテナ102から送信された第2の送信信号の直接波との受信タイミングが偶然に一致し、復調される情報データ列が影響を受ける場合には、アンテナ102から第2の送信信号を送信するタイミングを更に変更し、例えば誤り訂正によるマルチパス影響除去効果が高いタイミングで第2の送信信号を送信するようにすることで、反射板1001以外の物体によって反射された反射波が情報データ列へ及ぼす影響を低減するように構成しても良い。
【0114】
本発明の通信装置の一つの態様は、情報データ列に基づいて第1の送信信号を生成する第1の生成手段と、前記第1の送信信号と規定のタイミングで結合することで前記情報データ列が復調可能となる第2の送信信号を生成する第2の生成手段と、前記第1の送信信号を送信する第1のアンテナと、前記第2の送信信号を送信する第2のアンテナと、特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する調整手段と、を具備する構成を採る。
【0115】
この構成によれば、2つのアンテナから送信される第1の送信信号および第2の送信信号が、所定の領域に規定のタイミングで到達するようにしたので、情報データ列に基づいて生成された第1の送信信号と、第2の送信信号とを用いて、特定の領域に位置する通信相手のみが情報データ列を復調することができ、比較的簡易な構成で、通信可能な領域を極めて限られた領域に限定することができる。
【0116】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1の送信信号が前記特定の領域へ到達する時間と、前記第2の送信信号が前記特定の領域へ到達する時間との時間差を算出する時間差算出手段、をさらに有し、前記調整手段は、前記時間差に基づいて、前記特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを前記調整手段が調整する構成を採る。
【0117】
この構成によれば、第1のアンテナから送信される第1の送信信号が特定の領域に到達する時間と、第2のアンテナから送信される第2の送信信号が特定の領域に到達する時間との到達時間差を算出することができるため、通信相手の位置が変更された場合においても、変更後の通信相手のみが情報データ列を復調することができるような第1の送信信号および第2の送信信号を送信することができる。
【0118】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記時間差算出手段は、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間の伝搬路上における信号の往復時間T1と、前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナの一方のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T2とから、前記時間差を算出する構成を採る。
【0119】
この構成によれば、通信相手が第1のアンテナと第2のアンテナとの間に位置する場合、第1のアンテナと第2のアンテナから送信される送信信号が通信相手に到達する時間差を求めることができ、得られた時間差を用いて第1の送信信号および第2の送信信号が通信相手へ規定の順序で到達するよう送信タイミングを調整することができ、第1のアンテナと第2のアンテナとの間に位置する通信装置のみが情報データ列を復号することができる。
【0120】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記時間差算出手段は、前記往復時間T1を、前記第2のアンテナが受信する前記第1のアンテナによって反射された前記第2の送信信号、又は、前記第1のアンテナが受信する前記第2のアンテナによって反射された前記第1の送信信号を用いて算出し、前記往復時間T2を、前記第1のアンテナが受信する前記特定の領域において反射された前記第1の送信信号、または、前記第2のアンテナが受信する前記特定の領域において反射された前記第2の送信信号の少なくとも一方を用いて算出する構成を採る。
【0121】
この構成によれば、第1のアンテナと第2のアンテナとの伝搬路上における信号の往復時間T1を、第1の送信信号が第2のアンテナに反射されて第1のアンテナに戻ってくるまでの時間、又は、第2の送信信号が第1のアンテナに反射された第2のアンテナに戻ってくる時間から算出することができる。また、往復時間T2を、第1の送信信号または第2の送信信号が通信相手に反射されてそれぞれのアンテナに戻ってくるまでの時間から算出することができ、得られた往復時間から通信相手のみへ第1の送信信号および第2の送信信号が規定の順序で到達する送信タイミング調整が行える。
【0122】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T3と、前記第2のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T4とから、前記時間差を算出する構成を採る。
【0123】
この構成によれば、通信相手が第1のアンテナと第2のアンテナとの間に位置しない場合であっても、第1のアンテナと第2のアンテナから送信される送信信号が通信相手に到達する時間差を求めることができて、第1の送信信号および第2の送信信号が通信相手へ規定の順序で到達するよう送信タイミングを調整することができ、情報データ列を復号することができる通信相手とアンテナ間との位置関係の制約を小さくすることができる。
【0124】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記時間差算出手段は、前記往復時間T3を、前記第1のアンテナが受信する前記特定領域において反射された前記第1の送信信号を用いて算出し、前記往復時間T4を、前記第2のアンテナが受信する前記特定領域において反射された前記第2の送信信号を用いて算出する構成を採る。
【0125】
この構成によれば、第1のアンテナと通信相手との伝搬路上における信号の往復時間T3を、第1の送信信号が通信相手に反射されて第1のアンテナに戻ってくるまでの時間から算出でき、又、第2のアンテナと通信相手との伝搬路上における信号の往復時間T4を、第2の送信信号が通信相手に反射されて第2のアンテナに戻ってくるまでの時間から算出することができ、得られた往復時間から通信相手のみへ第1の送信信号および第2の送信信号が規定の順序で到達する送信タイミング調整が行える。
【0126】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第2の生成手段は、前記第2の送信信号として、前記第1の送信信号のリファレンス信号を生成し、前記調整手段は、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号の一部が同一時刻に前記特定の領域へ到達するよう送信タイミングを調整する構成を採る。
【0127】
この構成によれば、第1の送信信号と第1の送信信号のリファレンス信号である第2の送信信号の一部が特定の領域に位置する通信相手へのみ同一時刻に到達するようにできるため、第2の送信信号が通信相手に到達した受信タイミングを参照して情報データ列を同期復調することが可能となる。
【0128】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記リファレンス信号は、前記第1の送信信号の位相タイミングを示すシンボル同期情報、通信フレームのフレームタイミングを示すフレーム同期情報又は認証用情報の一部である構成を採る。
【0129】
この構成によれば、位相タイミングを示すシンボル同期情報やフレーム同期情報が第2の送信信号として、特定の領域に位置する通信相手へのみ第1の送信信号と同期して到達するので、所定の領域に位置する通信相手のみがシンボル同期やフレーム同期を正しく取って情報データ列を正しく復調することができる。また、認証用情報が第2の送信信号として、特定の領域に位置する通信相手へのみ第1の送信信号と同期して到達するので、所定の領域に位置する通信相手のみが認証を行って、当該認証用データと同期して到達した情報データ列を正しく復調することができる。
【0130】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1および前記第2の生成手段は、前記第1および前記第2の送信信号としてパルス信号を生成し、前記調整手段は、前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とが、交互に前記通信相手へ到達するよう送信タイミングを調整する構成を採る。
【0131】
この構成によれば、第1の送信信号および第2の送信信号が特定の領域に位置する通信相手へのみ交互に到達するため、例えば、第2の送信信号が第1の送信信号のリファレンス信号とした場合に、所定の領域に位置する通信相手のみが、第1の送信信号および第2の送信信号を用いて情報データ列を同期復調することが可能となる。
【0132】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第2の生成手段は、前記第2の送信信号として、前記第1の送信信号のタイミング信号を生成し、前記調整手段は、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号の一部が同一時刻に前記特定の領域へ到達するよう送信タイミングを調整する構成を採る。
【0133】
この構成によれば、第1の送信信号と第1の送信信号のタイミング信号である第2の送信信号の一部が特定の領域に位置する通信相手へのみ同一時刻に到達するようにできるため、第2の送信信号が通信相手に到達した受信タイミングを参照して情報データ列を同期復調することが可能となる。
【0134】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記タイミング信号は、同期用のクロック信号である構成を採る。
【0135】
この構成によれば、第1の送信信号の同期用のクロック信号が第2の送信信号として、特定の領域に位置する通信相手へのみ第1の送信信号と同期して到達するので、所定の領域に位置する通信相手は、第2の送信信号を同期用のクロック信号に用いて、情報データ列を確実に同期復調することが可能となる。
【0136】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記時間差算出手段は、所定の時間間隔で前記時間差を測定する構成を採る。
【0137】
この構成によれば、時間差が所定の時間間隔で測定されるので、送信タイミングが所定時間ごとに調整されるようになり、通信エリア内で通信相手の位置が移動した場合においても、第1の送信信号および第2の送信信号が移動後の通信相手へ規定の順序で到達するよう送信タイミングを調整することができ、通信装置は情報データ列を復号することができる。
【0138】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記特定の領域に位置する通信相手に対し、位置を移動させる旨の指示を通知する通知手段、をさらに具備し、前記時間差算出手段は、前記第1の送信信号が移動後の前記通信相手の位置する領域へ到達する時間と、前記第2の送信信号が移動後の前記通信相手の位置する領域へ到達する時間とから、前記時間差を再度算出し、前記調整手段は、再度算出された前記時間差に基づいて送信タイミングを調整する構成を採る。
【0139】
この構成によれば、通信相手の位置を移動させ、第1のアンテナおよび第2のアンテナから送信される第1および第2の送信信号が移動後の通信相手へ到達するまでに要する時間差を再度求め、得られた時間差が用いられて調整手段によって送信タイミングの調整が行われるため、移動後の領域に位置する通信相手へ第1の送信信号および第2の送信信号が規定のタイミングで到達するようになり、通信可能な領域をより限られた範囲に限定することができる。
【0140】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの少なくとも一方は、前記特定の領域とは異なる方向に固定された特定の固定物へ送信する構成を採る。
【0141】
この構成によれば、第1および第2のアンテナと特定の領域に位置する通信相手との経路差に相当する時間差を算出する際に、第1および第2のアンテナから送信された送信信号が通信相手へダイレクトに到達する時間から算出するのでなく、少なくともどちらか一方については、特定の領域に位置する通信相手の位置とは異なる方向に固定された特定の固定物を経由して通信相手へ到達するまでの時間から算出するようにしたため、第1および第2のアンテナ同士が近接する場合においても、擬似的に経路差を長くすることができ、また、第1および第2のアンテナを近接させて通信装置を小型化することが可能となる。
【0142】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1の送信信号または前記、第2の送信信号の少なくとも一方を、異なる搬送波周波数帯の信号に周波数変換する周波数変換手段、をさらに有する構成を採る。
【0143】
この構成によれば、認証用データ等、データ量が比較的少ない情報データ列をマイクロ波帯により低誤りで確実に送信し、一旦認証等が確立された後は、大容量の情報データ列をミリ波帯で高速に送信することができる。
【0144】
本発明の通信装置の一つの態様は、マルチパスの影響によって生じる前記第1の送信信号および前記第2の送信信号に対する第1の遅延信号および第2の遅延信号が、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号に遅れて前記特定の領域に到達するまでの第1の遅延信号および第2の遅延時間時のマルチパスを測定するマルチパス測定手段、部をさらに有し、前記第1および前記第2の生成手段は、前記第1および前記第2の遅延時間前記マルチパス測定部が出力するマルチパス状況信号に基づいて、第1の生成手段前記第1および前記第2の送信信号を生成する構成を採る。及び第2の生成手段が生成する信号を設定する。
【0145】
この構成によれば、情報データ列に含まれる“1”をオン信号で送信するOOK変調方式の場合に、第1のアンテナから送信される第1の送信信号の直接波と遅延波とが異なる位相で通信相手に到達する場合に、情報データ列に含まれる“1”を第1のアンテナから送信される第1の送信信号または第2のアンテナから送信される第2の送信信号に振り分けて送信することができるため、直接波と遅延波とが異なる位相で通信相手に到達して相殺し合うように合成される割合が減り、符号間干渉による復調誤りを低減することができるようになる。
【0146】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記特定の領域は、予め決められた明示された前記通信装置の所定の場所とする構成を採る。
【0147】
この構成によれば、第1のアンテナから送信される第1の送信信号が特定の領域に到達する時間と、第2のアンテナから送信される第2の送信信号が特定の領域に到達する時間との到達時間差が既知であるため、到達時間差を算出する演算量を省いて、送信タイミングを調整することができる。
【0148】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1の送信信号と前記第2の送信信号が、差動符号化された信号である構成を採る。
【0149】
この構成によれば、第1の送信信号および第2の送信信号が規定の順序で到達する特定の領域に位置する通信装置のみが差動復号を行って情報データ列を復号することができる。
【0150】
本発明の通信方法の一つの態様は、情報データ列に基づいて第1の送信信号を生成する工程と、前記第1の送信信号と規定のタイミングで結合することで前記情報データ列が復調可能となる第2の送信信号を生成する工程と、前記第1の送信信号を送信する工程と、前記第2の送信信号を送信する工程と、特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する工程と、を有している。
【0151】
この方法によれば、2つのアンテナから送信される第1の送信信号および第2の送信信号が、所定の領域に規定のタイミングで到達するようにしたので、情報データ列に基づいて生成された第1の送信信号と、第2の送信信号とを用いて、特定の領域に位置する通信相手のみが情報データ列を復調することができ、比較的簡易な構成で、通信可能な領域を極めて限られた領域に限定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の通信装置および通信方法は、比較的簡易な構成で、特定の位置関係にある端末装置のみが通信可能となる通信装置および通信方法を提供することができ、例えば、限られた場所のみを通信エリアとする通信システムに適用される通信装置および通信方法などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の実施の形態1に係る通信装置の要部構成を示すブロック図
【図2】初期設定時の実施の形態の1に係る通信装置と通信相手である端末との位置関係を示す図
【図3】通信開始時の実施の形態の1に係る通信装置と通信相手である端末との位置関係を示す図
【図4】通信後の実施の形態の1に係る通信装置と通信相手である端末との位置関係を示す図
【図5】実施の形態1に係るタイミング算出部のブロック図
【図6】(a)第1の送信信号が送信されるタイミングを示す図(b)第1の送信信号が第2のアンテナによって反射され第1のアンテナに戻ってくるタイミングを示す図(c)第1の送信信号が端末によって反射されて第1のアンテナに戻ってくるタイミングを示す図
【図7】実施の形態1に係るタイミング調整信号の生成方法を説明するためのフロー図
【図8】実施の形態1に係る通信装置の要部構成を示すブロック図
【図9】直接波および遅延波の到達タイミングを示す図
【図10】遅延波による符号間干渉を説明するための図
【図11】遅延波による符号間干渉を回避するタイミング調整方法を説明するための図
【図12】本発明の実施の形態2に係る通信装置の要部構成を示すブロック図
【図13】実施の形態2に係る通信装置の要部構成を示すブロック図
【図14】(a)本発明の実施の形態3に係る第1の送信信号のタイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図
【図15】実施の形態3に係る端末の要部構成を示すブロック図
【図16】実施の形態3に係る端末の要部構成を示すブロック図
【図17】(a)実施の形態3に係る第1の送信信号のタイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図(c)第1および第2の送信信号の相関結果を示す図
【図18】(a)実施の形態3に係る第1の送信信号のタイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図(c)第1および第2の送信信号の相関結果を示す図
【図19】実施の形態3に係る端末の要部構成を示すブロック図
【図20】(a)実施の形態3に係る第1の送信信号のタイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図(c)第3の送信信号のタイミングを示す図(d)テンプレート信号を示す図(e)第1、第2、および第3の送信信号とテンプレート信号との相関結果を示す図
【図21】実施の形態3に係る端末の要部構成を示すブロック図
【図22】(a)実施の形態3に係る第1の送信信号のタイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図(c)第1の送信信号の復調データを示す図(d)第2の送信信号の復調データを示す図
【図23】本発明の実施の形態4に係る無線システムの一例を示す図
【図24】(a)実施の形態4に係る第1の送信信号の送信タイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図(c)第1の位置における第1および第2の送信信号の到達タイミングを示す図(d)第2の位置における第1および第2の送信信号の到達タイミングを示す図(e)タイミング調整後の第2の位置における第2の送信信号の到達タイミングを示す図
【図25】実施の形態4に係る無線システムの一例を示す図
【図26】本発明の実施の形態5に係る無線システムの一例を示す図
【図27】無指向性アンテナを用いた場合のETCの通信エリアを説明するための図
【図28】指向性アンテナを用いた場合のETCの通信エリアを説明するための図
【図29】ビームアンテナを用いた場合のETCの通信エリアを説明するための図
【符号の説明】
【0154】
101、102、403、501、502、512、701 アンテナ
103、801 無線部
104、401−1、401−2、401−3 タイミング算出部
105、301、302、405 可変遅延器
106、107、404 変復調部
108 マルチパス測定部
303、513、707 相関器
304 相関判定部
305 時間差算出部
306 初期時間差保存部
307 到達時間差算出部
402 タイミング調整部
503−1、503−2、511、702 フィルタ
504−1、504−2、510、703 アンプ
505−1、505−2、704 検波器
506、705 クロックリカバリ
507、708 ADC
508、709 データ処理部
509 パルス変調
601 遅延器
706 テンプレート信号生成部
901 車両
902 車両止め
903 屋根
1001 反射板
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置および通信方法に関し、特に、特定の領域のみを通信可能エリアとして設定できる通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線技術の発展に伴い、携帯電話に代表される広い通信エリアにおいて音声やメールといった容量が少ないコンテンツの伝送だけでなく、無線LAN(Local Area Network)のように比較的狭い通信エリア内で高速の通信を行なう利用形態が普及してきている。
【0003】
さらには、伝送レートを高めるだけでなく、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭帯域通信)のような極めて限られた場所(すなわち特定の場所)のみを通信エリアとし、特定の場所に位置するユーザのみを通信可能とする利用形態が普及してきている。
【0004】
今後は、利用者が持ち歩く、又は車載している端末に、容量が大きいコンテンツを短時間でダウンロードする利用形態が広まることが予想されるが、このような大容量コンテンツは大量の個人情報が含まれていることや、映画等の映像コンテンツであれば有料のコンテンツであることが想定される。
【0005】
このような今後の状況を考えてみると、積極的に特定の場所に位置する相手のみと高速大容量の通信を可能とする通信システムの確立が一段と切望されると考えられる。
【0006】
図27〜図29に、特定の場所に位置する相手のみと通信可能な通信システムの従来例として、ETC(Electronic Toll Correction System)における通信エリアの実現方法を説明するための概念図を示す。図27〜図29では、第1の端末11−1を搭載した車両12−1と第2の端末11−2を搭載した車両12−2が通信相手の無線部13に接続されるアンテナ14の近傍に到達する場合を考える。
【0007】
図27に示すように、指向性が弱いアンテナ14を用いて、無線部13の通信可能エリアAR1を比較的広くした場合には、第1の端末11−1と第2の端末11−2が共に無線部13と通信を開始してしまうため、混信する場合や、共に通信できない場合や、異なる端末が情報データを受信してしまう場合が発生する。
【0008】
一方、図28に示すように、指向性が強いアンテナ14を用いて、無線部13の通信可能エリアAR2を比較的狭くした場合には、車両の移動速度が速い場合に十分な通信時間を確保することができず、車両を減速または停止させて通信時間を確保する必要がある。
【0009】
これらの問題を解決するために、特許文献1には、図29に示すように、アンテナ14としてビーム切替アンテナを用いることで、第1の指向性による通信可能エリアAR3と第2の指向性による通信可能エリアAR4を形成する技術が開示されている。このようにすれば、車両の移動速度が速い場合でも、端末11−1、11−2は、通信可能エリアAR3、AR4の両方で互いに混信なく通信できるようになると考えられる。
【特許文献1】特開平11−185083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の従来構成においては、狭い通信可能エリアを実現するために高指向性のアンテナが必要となるためアンテナが大型化するという課題がある。また、指向性を切り替えて通信可能エリアを広げることも行なわれるが、機械的な方向切替又は搬送波周波数帯での位相制御による位相合成が必要となり、機器の可動を実現するための機器が大型化し、コストも上がる。更に、高精度な位相制御を実現するために制御部が高コスト化するといった課題も有している。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、比較的簡易な構成で、通信装置と特定の位置関係にある端末装置のみが通信可能となる通信装置および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため、本発明に係る通信装置は、情報データ列に基づいて第1の送信信号を生成する第1の生成手段と、前記第1の送信信号と規定のタイミングで結合することで前記情報データ列が復調可能となる第2の送信信号を生成する第2の生成手段と、前記第1の送信信号を送信する第1のアンテナと、前記第2の送信信号を送信する第2のアンテナと、前記第1の送信信号が特定の領域へ到達する時間と、前記第2の送信信号が前記特定の領域へ到達する時間との時間差を算出する時間差算出手段と、前記時間差に基づいて、前記特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する調整手段と、を具備する構成を採る。
【0013】
この構成によれば、第1のアンテナから送信される第1の送信信号が特定の領域に到達する時間と、第2のアンテナから送信される第2の送信信号が特定の領域に到達する時間との到達時間差に基づいて、2つのアンテナから送信される第1の送信信号および第2の送信信号とが、所定の領域に規定のタイミングで到達するようにしたので、情報データ列に基づいて生成された第1の送信信号と、第2の送信信号とを用いて、特定の領域に位置する通信相手のみが情報データ列を復調することができ、比較的簡易な構成で、通信可能な領域を極めて限られた領域に限定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的簡易な構成で、通信装置と特定の位置関係にある端末装置のみが通信可能となる通信装置および通信方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の発明者らは、複数のアンテナを備える通信装置のそれぞれのアンテナからの距離が、特定の距離関係にある領域は、極めて限られた領域(以下「特定の領域」という)に限定される点に着目し、規定のタイミングで結合することで情報データ列が復調可能となるような複数の送信信号、例えば、情報データと、情報データのフレームタイミングを示すフレーム同期信号とを、異なるアンテナから特定の領域へ、規定のタイミングで到達するように送信すれば、指向性が強いアンテナを用いなくても、比較的簡易な構成で、特定の領域に位置する端末装置のみが通信可能となると考え、本発明に至った。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1に係る通信装置の要部構成を示す。同図に示す通信装置100は、第1のアンテナ101と、第2のアンテナ102と、無線部103とを備え、さらに、無線部103は、タイミング算出部104と、可変遅延器105と、第1の変復調部106と、第2の変復調部107とを備えている。
【0018】
なお、図2、図3、図4は、それぞれのアンテナから送信された信号の経路の様子を通信状況ごとに示したものである。図2は初期設定時に、アンテナ101から送信された信号が、アンテナ102によって反射されてアンテナ101で受信される様子を示す。図3は、通信開始時に、通信装置100の通信相手である端末200がアンテナ101とアンテナ102の間に挿入され、アンテナ101から送信された送信信号が、端末200で反射されてアンテナ101で受信される様子を示す。図4は、通信開始後に、アンテナ101およびアンテナ102から送信された信号が、それぞれ端末200において受信され、また、端末200から送信される送信信号が、アンテナ101で受信される様子を示す。
【0019】
アンテナ101、102は、変復調部106、107から出力される送信信号を他方のアンテナ又は通信相手である端末200へ送信し、また、アンテナ101、102に到達する受信信号をそれぞれ変復調部106、107へ出力する。
【0020】
タイミング算出部104は、初期設定時または通信開始時に、アンテナ101から送信される送信信号と、当該送信信号がアンテナ102または通信相手である端末200によって反射されてアンテナ101に戻ってきた反射信号とから、アンテナ101と端末200までの経路と、アンテナ102と端末200までの経路との差に相当する時間差を算出する。時間差の算出方法については、後に詳述する。さらに、タイミング算出部104は、算出した時間差からタイミング調整信号を生成し、タイミング調整信号を可変遅延器105へ出力する。
【0021】
可変遅延器105は、タイミング調整信号に応じて送信データの送信タイミングを遅延させて、遅延後の送信データを変復調部106へ出力する。
【0022】
変復調部106、107は、タイミング調整後の送信データに対し変調処理を施し、アンテナ101、102へ出力する。また、変復調部106、107は、受信信号に対し復調処理を施し、復調後の受信データをタイミング算出部104へ出力する。なお、図4では、端末200から送信される送信信号をアンテナ101が受信し、変復調部106が復調処理を行うとこととしているが、アンテナ102が受信し、変復調部107が復調処理を施しても良く、また、アンテナ101およびアンテナ102の双方で受信し、変復調部106および変復調部107の双方で復調処理を施すようにしても良い。
【0023】
次いで、図5を用いてタイミング算出部104についてさらに説明する。図5は、タイミング算出部104の要部構成を示すブロック図である。同図に示すようにタイミング算出部104は、第1の可変遅延器301と、第2の可変遅延器302と、相関器303と、相関判定部304と、時間差算出部305と、初期時間差保存部306と、到達時間差算出部307とを備えている。
【0024】
可変遅延器301は、機器固有の遅延時間だけ送信データを遅延する。機器固有の遅延時間とは、具体的には、アンテナ101が接続された系と、アンテナ102が接続された系との経路差に相当する時間である。
【0025】
可変遅延器302は、相関判定部304から出力される制御信号の値に応じて、可変遅延器301から出力される送信データを遅延し、遅延後の送信データを相関器303へ出力する。
【0026】
相関器303は、可変遅延器302から出力される送信データと、送信データがアンテナ102または端末200によって反射されてアンテナ101に戻ってきた反射データとの相関演算を行い、演算結果を相関判定部304へ出力する。
【0027】
相関判定部304は、相関演算結果を用いて送信データと反射データとの遅延量を算出する。具体的には、相関演算結果が所定の閾値以上か否かを判定し、相関演算結果が所定の閾値以上となるまで、制御信号を可変遅延器302へ出力する。なお、相関判定部304は、演算結果に応じて可変遅延器302における遅延量を決定し、決定した遅延量だけ可変遅延器302において送信データが遅延するような制御信号を時間差算出部305へ出力する。
【0028】
時間差算出部305は、相関判定部304から出力される制御信号から、可変遅延器302において送信データが遅延された時間、すなわち、送信データと反射データとの時間差を算出する。例えば、相関判定部304から、遅延量に相当する振幅レベルを持つ制御信号が出力される場合には、時間差算出部305は、制御信号の振幅レベルを積算して、可変遅延器302における遅延時間を算出する。
【0029】
なお、時間差算出部305は、初期設定時には算出した時間差を初期時間差保存部306へ出力し、通信開始時には算出した時間差を到達時間差算出部307へ出力する。なお、初期設定時に算出された時間差は、アンテナ101から送信された送信データがアンテナ102において反射されてアンテナ101に戻ってくるまでの時間(以下「初期時間差」という)となる。また、通信開始時に算出された時間差は、アンテナ101から送信された送信データが端末200において反射されてアンテナ101に戻ってくるまでの時間となる。
【0030】
初期時間差保存部306は、初期設定時に時間差算出部305から出力される初期時間差を保存し、通信開始時に初期時間差を到達時間差算出部307へ出力する。
【0031】
到達時間差算出部307は、通信開始時に時間差算出部305から出力される時間差、つまり、アンテナ101から送信された送信データが端末200において反射されてアンテナ101に戻ってくるまでの時間と上述した初期時間差とを用いて、可変遅延器105においてアンテナ101から送信される送信データの送信タイミングを調整するためのタイミング調整信号を出力する。
【0032】
具体的には、到達時間差算出部307は、アンテナ101から送信される送信データを遅延させて、アンテナ101から送信される送信データとアンテナ102から送信される送信データとが規定のタイミングで端末200に到達するような遅延量に相当するタイミング調整信号を出力する。遅延量は、例えば、次式(1)を用いて算出することができる。式(1)において、T1は初期時間差で、T2は、端末200がある場合にアンテナ101から送信される送信信号が端末200において反射されてアンテナ101へ戻ってくるまでに要する時間である。
遅延量=T1/2−T2 …(1)
【0033】
次いで、上記のように構成された通信装置100による初期設定時から通信開始時までの動作について、図6の波形図および図7のフロー図を参照しながら説明する。
【0034】
まず、初期設定時には、初期時間差を測定するための時間差測定用データが、可変遅延器105、変復調部106、およびアンテナ101を経由して、アンテナ102へ送信される(ST101)。初期時間差とは、上述したように、アンテナ101とアンテナ102との間の距離に相当する。なお、初期設定時には、可変遅延器105において時間差測定用データは遅延されず、変復調部106へ出力される。
【0035】
そして、アンテナ102によって反射された時間差測定用データは、アンテナ101を経由して変復調部106によって復調処理が施され(ST102)、復調後の反射データが、タイミング算出部104へ出力される。
【0036】
そして、タイミング算出部104によって、時間差測定用データとアンテナ102によって反射された反射データとの相関演算結果より初期時間差(T1)が算出される。具体的には、タイミング算出部104内の相関器303における時間差測定用データと反射データとの相関演算結果が所定の閾値以上となるまで、可変遅延器302によって時間差測定用データが遅延され、可変遅延器302における遅延量に基づいて時間差算出部305によって初期時間差が算出されて、算出された初期時間差は、初期時間差保存部306において保存される(ST103)。図6(a)に、時間差測定用データの送信タイミングを示し、図6(b)にアンテナ102によって反射された反射データの受信タイミングを示す。
【0037】
通信開始時には、アンテナ101とアンテナ102との間に端末200が挿入され(ST104)、再度時間差測定用データが、可変遅延器105、変復調部106、およびアンテナ101を経由して、端末200へ送信される(ST105)。初期設定時の場合と同様に、可変遅延器105において時間差測定用データは遅延されず、変復調部106へ出力される。
【0038】
そして、端末200によって反射された時間差測定用データは、アンテナ101によって受信され変復調部106によって復調処理が施され(ST106)、復調後の反射データは、タイミング算出部104へ出力される。
【0039】
そして、初期設定時と同様にタイミング算出部104によって、時間差測定用データと端末200からの反射データの相関演算結果より時間差(T2)が算出されて、算出された時間差(T2)は、到達時間差算出部307において保存される(ST107)。つまり、相関が取れたときの遅延器302の遅延量が、電波がアンテナ101から送信されて、端末200において反射され再度アンテナ101において受信されるまでの伝搬時間となる。図6(c)に、端末200によって反射された反射データの受信タイミングを示す。なお、図6(c)は、図4の状態での測定となる。
【0040】
そして、到達時間差算出部307によって、例えば、初期時間差(T1)と時間差(T2)とが上式(1)に用いられて、到達時間差が算出される。すなわち、アンテナ101から端末200へ送信される第1の送信信号と、アンテナ102から端末200へ送信される第2の送信信号との経路の違いに起因する到達時間差が算出される。そして、到達時間差を考慮して、到達時間差算出部307によって、さらに、第1の送信信号と第2の送信信号が規定のタイミングで端末200に到達するように可変遅延器105における遅延量が決定され、遅延量に相当するタイミング調整信号が算出される。そして、タイミング調整信号が到達時間差算出部307から可変遅延器105へ出力される(ST108)。
【0041】
このようにして、アンテナ101から送信される送信データ1と、アンテナ102から送信される送信データ2との遅延量とが決定され、通信後は、可変遅延器105によって、タイミング調整信号に応じて送信データ1の送信タイミングが調整される。そして、タイミング調整された送信データ1と送信データ2は、変復調部106、107によって変調処理が施されて、アンテナ101、102を経由して端末200へ送信される。
【0042】
これにより、端末200にのみに送信データ1および送信データ2が規定のタイミングで到達する。一方、特定の位置関係にない端末へは送信データ1および送信データ2が規定のタイミングで到達しない。したがって、例えば、情報データ列を1ビットずつ交互に送信データ1と送信データ2に割り当て送信した場合には、特定の位置関係にない端末へは規定のタイミングでこれら送信データが到達しないため情報データ列を正しく復調することができないが、端末200へは規定のタイミングでこれら送信データが到達するため、端末200は情報データ列を正しく復調することができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、一方のアンテナから送信される送信信号が他方のアンテナおよび端末200によって反射されて戻ってくるまでの時間から、複数のアンテナと端末との経路差を算出し、端末200へ規定のタイミングで送信信号が到達するようそれぞれのアンテナから送信する送信データのタイミングを調整するようにしたため、それぞれのアンテナと特定の位置関係にある端末のみが情報データ列を正しく復調することができる。
【0044】
また、タイミング調整は通信装置100において行われるため、端末におけるタイミング調整が不要で、端末の処理負荷を増加させることなく、通信装置100と特定の位置関係にある端末のみが情報データ列を正しく復調することができる。
【0045】
つまり、通信装置100と特定の位置関係にある正規の受信者の端末200に対しては、端末200が意識せずとも受信信号を単純に合成すれば信号を復調することができる。これに対し、非正規受信者の端末が不正に情報を取得するような場面では、非正規受信者の端末は、上述した特定の位置関係にないため、アンテナ101とアンテナ102から別個に送信される異なる信号の合成タイミングを調整する必要が生じ、簡単に情報データ列を復調することが難しく、また、通信装置100が、適当な周期でアンテナ101とアンテナ102から送信する信号のタイミングや組合せを変えることにより、非正規受信者が所有する端末は、アンテナ101とアンテナ102から送信される信号のタイミングや組合せが変わる度ごとに合成タイミングを調整する必要が生じるため、簡単に不正取得できないようなセキュリティ効果を持ち合わせている。
【0046】
このように、アンテナ101とアンテナ102から送信される送信データ1及び送信データ2は、互いに補完し合うことにより情報データ列が復調されるような異なるデータにすることで、通信装置100と特定の位置関係にある端末のみが情報データ列を正しく復調することができる。
【0047】
なお、時間差(T2)の測定は、予め定めた時間間隔毎に行うことで、通信相手の位置が変動する場合に、時間差の修正を行うことができる。
【0048】
なお、以上の説明ではそれぞれのアンテナと端末200との経路差に相当する時間差を算出し、経路差に相当する時間差に基づいてタイミング調整を行う場合について述べたが、端末200を置く位置を予め決めておき、位置を限定することで経路差に相当する時間差の算出を行なわずに端末200の位置を確定できるように構成し、当該位置に対応してタイミング調整を行なうようにしても同様に実施可能である。また、端末200を置く位置の候補を複数設け利用者毎にその位置を変えるようにしたり、1利用者であっても位置を変更する旨の指示等により利用者に位置変更を促してその位置を変えるようにしたり、又は例えば端末保持台が自ら位置を変更する機能を備えることで位置変更を行なうようにしたりすることで、それぞれのアンテナと端末200との特定位置関係を時間的に変更して、通信可能な位置関係をより限定するようにしてもよい。
【0049】
なお、アンテナ101、102から送信される信号の周波数帯域は特に同一周波数帯である必要はなく、異なる周波数帯域としてもよい。つまり、例えば、アンテナ101から送信する信号を60GHz帯、アンテナ102から送信する信号を3〜5GHz帯の信号とし、その周波数帯域の違いによる伝搬減衰差を利用して、ミリ波帯による広帯域通信と、マイクロ波帯による低誤り通信とを組み合わせて用いるようにしてもよい。これにより、通信に先立ち端末200との間でやり取りが必要となる認証用データ等、データ量が比較的少なく確実に送りたい情報をマイクロ波帯により低誤りで送信し、一旦認証等が確立された後は、情報データを大容量伝送に適したミリ波帯で高速に送信するようにすることができる。
【0050】
また、初期設定時および通信開始時において上述した時間差測定用データを3〜5GHz帯のマイクロ波帯のみを用いて他方のアンテナに送信するようにして到達時間差を算出するようにすれば、ミリ波帯を用いて到達時間差を算出するのに比べ到達時間が長くなるため、より通信装置100に近い端末との間の到達時間差を算出することができるようになり、近距離に位置する端末との通信タイミングを調整することも可能となる。周波数変換は、例えば、局部信号源とミキサから成る周波数変換部により行うようにすればよい。
【0051】
なお、上述したように本実施の形態では、アンテナ101、102から送信される送信データ1と送信データ2の直接波が規定のタイミングで端末200へ到達する場合について説明したが、通信装置100がマルチパスの影響によって生じる遅延波の伝搬遅延時間を測定するマルチパス測定部108をさらに備え、遅延波による符号間干渉を回避するように送信データを送信するアンテナを選択するようにしてもよい。
【0052】
図8に、マルチパス測定部108を備える通信装置100の要部構成を示す。マルチパス測定部108は、例えば、既知信号と変復調部106又は変復調部107から出力される実際の受信信号との差分を取り、マルチパスの影響によって生じる遅延波の伝搬遅延時間を測定する。マルチパス測定部108は、伝搬遅延時間を変復調部106及び107に出力する。
【0053】
以下、上記のように構成された通信装置100の動作について図9〜図11を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、送信データが“1”のときに送信波を送信し、送信データが“0”のときには送信波を送信しないOOK(On Off Keying)変調方式の場合について説明する。
【0054】
図9(b)は、アンテナ101から図9(a)に示すような送信波が端末200へ送信された場合に、送信波の直接波が端末200に到達するタイミングと、アンテナ101と端末200との間のマルチパスの影響によって生じる送信波の遅延波が端末200に到達するタイミングとの関係を示している。図9(b)に示す例では、遅延波は、直接波に対し遅延時間TA後に端末200に到達している。
【0055】
同様に、図9(c)は、アンテナ102から図9(a)に示すような送信波が端末200へ送信された場合に、送信波の直接波が端末200に到達するタイミングと、アンテナ102と端末200との間のマルチパスの影響によって生じる送信波の遅延波が端末200に到達するタイミングとの関係を示している。図9(c)に示す例では、遅延波は、直接波に対し遅延時間TB後に端末200に到達している。
【0056】
マルチパス測定部108は、これら遅延時間TA,TBを測定する。さらに、マルチパス測定部108は遅延時間TAおよびTBを考慮しながら、送信データに含まれる“1”をアンテナ101から送信する送信データ1またはアンテナ102から送信する送信データ2のいずれかに振り分ける。以下では、送信データが“1”,“0”,“1”,“1”,“0”の場合を例に送信データの振り分け方法について説明する。
【0057】
まず始めに図10(a)に示すように、上記送信データに対応した送信信号列をアンテナ101のみから送信した場合を考える。端末200へは図10(b)に示すように、直接波の他、アンテナ101と端末200との間のマルチパスの影響を受けた遅延波(符号間干渉1〜3)が到達する。
【0058】
図10(b)において符号間干渉2は直接波と遅延波とが合成された結果、位相が相殺されて振幅が小さくなっている。したがって、振幅が所定の閾値以上のとき受信データが“1”と判定されるOOK変調方式の場合、符号間干渉2は振幅が所定の閾値未満であるため誤って“0”と判定される確率が高くなり、通信誤りの原因となる。
【0059】
これに対し、図11は、マルチパス測定部108が送信データに含まれる“1”の一部を他方のアンテナ102から送信するようにした場合に、それぞれのアンテナ101,102から送信される送信波と、端末200に到達する直接波と遅延波の様子を示している。具体的には、図11(a)はアンテナ101から送信される送信波を、図11(b)はアンテナ102から送信される送信波を示している。また、図11(c)は端末200に到達する直接波および遅延波の様子を示している。図11(a),(b)に示すように送信データに“1”が含まれる場合にその一部をアンテナ102から送信するようにしたので、端末200に到達する符号間干渉4,6は、図10(b)に示される符号間干渉1,3と同じである一方、符号間干渉5の振幅は減衰せず所定の閾値以上となって“1”と正しく判定されるため、図10(b)に示される符号間干渉2に比し判定誤りの確率を低く抑えることができる。
【0060】
このようにマルチパスの影響によって生じる遅延波の遅延時間を考慮し、送信データに含まれる“1”をアンテナ101から送信される送信データ1またはアンテナ102から送信される送信データ2に振り分けるようにしたので、送信波が送信されるアンテナが切り替えられるようになり、この結果、直接波と遅延波とが異なる位相で端末200に到達する割合が減り、符号間干渉による復調誤りを低減することができるようになる。
【0061】
なお、以上の説明では、アンテナ101から送信される送信波に対する直接波と遅延波とが互いに相殺し合うタイミングで端末200に到達するため、送信データに“1”が含まれる場合にその一部をアンテナ102から送信し直接波と遅延波とが端末200に重ならないようなタイミングで到達する場合について説明したが、アンテナ101から送信される送信波に対する直接波と遅延波とが端末200に同位相で到達するような場合には、送信データ“1”を送信するアンテナとしてアンテナ101を積極的に用いるようにしてもよい。これにより、端末200に直接波と遅延波とが同位相で到達し、同位相で合成される結果、振幅が増加するようになってRake合成と同様の効果が得られ、SNR(Single to Noise Ratio)を改善し復調性能を高めることができる。
【0062】
(実施の形態2)
図12に、本発明の実施の形態に係る通信装置100の要部構成を示す。通信装置100の要部構成は、上記実施の形態1で示した図1の通信装置に比して、アンテナ101およびアンテナ102を横に並べ、端末200をその上にかざす配置としている点、および、タイミング算出部104に代えタイミング算出部401−1、401−2を有し、タイミング調整部402が追加された点で異なることを除いて同様である。
【0063】
タイミング算出部401−1、401−2は、図5に示すタイミング算出部104の要部構成から、初期時間差保存部306および到達時間差算出部307を削除した構成を有し、それぞれのアンテナから送信された送信信号が端末200によって戻ってきた反射信号とから、それぞれのアンテナと端末200までの経路差に相当する時間差を算出し、算出した時間差をタイミング調整部402へ出力する。すなわち、タイミング算出部401−1は、アンテナ101と端末200との経路差に相当する時間差を算出し、タイミング401−2は、アンテナ102と端末200との経路差に相当する時間差を算出する。
【0064】
タイミング調整部402は、タイミング算出部401−1、401−2から出力されるそれぞれの経路に相当する時間差から、端末200にアンテナ101およびアンテナ102から送信される送信信号が規定のタイミングで到達するようアンテナ101から送信される送信信号の送信タイミングを調整するためのタイミング調整信号を生成する。タイミング調整部402は、生成したタイミング調整信号を可変遅延器105へ出力する。つまり、アンテナ101とアンテナ102から送信されて端末200によって反射された反射信号がそれぞれのアンテナに到達するまでの時間差から、アンテナ101から送信される送信データの送信タイミングが調整される。これにより、特定の領域に位置する端末200へ、アンテナ101およびアンテナ102から送信される送信信号が規定のタイミングで到達し、端末200のみが通信可能となる。
【0065】
以上のように、本実施の形態によれば、アンテナ101と端末200との経路と、アンテナ102と端末200の経路との経路差に相当する時間差とを求め、それぞれのアンテナから送信される送信信号の到達時間差を算出し、遅延量を決定するようにしたので、端末200がアンテナ101とアンテナ102の間に設置できないような状況においても、端末200に規定のタイミングで送信データが到達するようにして、情報データ列の復調が可能となり、実施の形態1に比してアンテナ101、102および端末200の設置の形態の制約を小さくすることができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態では、通信装置のアンテナを2つとした例を示したが、アンテナは2つに限らず、3つ以上のアンテナと変復調部およびタイミング算出部をアンテナ数に対応させて設けても良い。図13に3つのアンテナを有する通信装置の要部構成を示す。図13は、図12に対し、第3のアンテナ403、第3の変復調部404、第3のタイミング算出部401−3、および第2の可変遅延器405を追加した構成を採る。アンテナ数を3つに増やす場合には、3つのアンテナから送信される送信データを用いて時間差を算出するため、すべてのアンテナからの距離が特定の距離に位置する端末のみしか情報データ列を正しく復調することができなくなって、通信可能な特定領域をより限られた領域に絞り込むことが可能となる。
【0067】
(実施の形態3)
本発明の本実施の形態3は、実施の形態1および2の通信装置から送信される信号を受信する端末について説明する。
【0068】
一例として、実施の形態1および2の通信装置からパルス信号が送信され、このパルス信号を受信する端末200について説明する。図14(a)に、通信装置100から送信される第1の送信信号の送信タイミングを示し、図14(b)に、通信装置100から送信される第2の送信信号の送信タイミングを示す。通信装置100から送信される第1の送信信号(図14(a))と第2の送信信号(図14(b))は、図14に示すようなタイミングで端末200に到達する。本実施の形態では、第1の送信信号は変調されたパルス信号で、例えば、OOK(On Off Keying)変調方式の場合には、パルスがあれば“1”を、無ければ“0”を示す。一方、第2の送信信号はタイミング信号で、例えば、同期用のクロックを含む。つまり、情報データ列である第1の送信信号と、同期用クロックを含む第2の送信信号とを結合することで、正しくデータを復調することができる。
【0069】
図15に、図14に示すようなパルス信号を受信する端末200の要部構成を示す。同図に示す端末200は、アンテナ501、502、および512と、フィルタ503−1、503−2および511と、アンプ504−1、504−2および510と、検波器505−1、505−2と、クロックリカバリ506と、ADC(Analog to Digital Converter)507と、データ処理部508と、パルス変調部509とを備えている。
【0070】
アンテナ501、502は、通信装置100から送信される第1、第2の送信信号をそれぞれ受信する。フィルタ503−1、503−2および511は、受信信号または送信信号に対し帯域制限を施す。アンプ504−1、504−2および510は、受信信号または送信信号の振幅レベルを調整する。検波器505−1、505−2は、受信信号に対しエンベロープ検波を施し、検波器505−1は、エンベロープ検波結果をADC507へ出力し、検波器505−2は、エンベロープ検波結果をクロックリカバリ506へ出力する。
【0071】
クロックリカバリ506は、エンベロープ検波結果から受信信号のタイミング信号を生成し、ADC507へ出力する。ADC507は、タイミング信号を用いて受信信号をサンプリングする。データ処理部508は、サンプリングされた受信信号に対し、復調処理を施す。
【0072】
具体的には、受信信号には、通信装置100から第1の送信信号として送信されるパルス信号と第2の送信信号として送信されるタイミング信号が含まれているため、データ処理部508は、サンプリング後の受信信号からクロック信号を除去した除去後の受信信号に対し復調処理を施す。なお、通信装置100から送信される第1の送信信号と第2の送信信号とが異なるなる搬送波周波数で送信される場合には、フィルタ503−1,503−2によりそれぞれ帯域制限が施されるため、データ処理部508は、サンプリング後の受信信号に対し直接復調処理を施せばよい。
【0073】
なお、端末200に、通信装置100から送信される第1の送信信号及び第2の送信信号の直接波に加え反射波が混在して到達する場合が想定される。しかしながら、直接波と反射波が端末200に到着するタイミングが同時に到着することは希で、ミリ波では伝搬減衰が大きいため直接波と反射波との信号電力差が顕著なため、データ処理部508は、直接波と反射波を分離することが可能である。
【0074】
さらに、データ処理部508は、送信データをパルス変調部509へ出力し、ADC507から出力されるサンプリングデータに対しディジタル復調処理を施す。パルス変調部509は、送信データにパルス変調処理を施し、アンプ510へ出力する。アンテナ512は、パルス変調後アンプ510およびフィルタ511を通過した送信信号を通信装置100へ送信する。
【0075】
次いで、上記のように構成された端末200の受信動作について説明する。
【0076】
通信装置100のアンテナ101から送信される第1の送信信号は、アンテナ501を介して受信され(以下「第1の受信信号」という)、フィルタ503−1およびアンプ504−1を経由して検波器505−1によってエンベロープ検波され、検波結果はADC507へ出力される。
【0077】
一方、通信装置100のアンテナ102から送信される第2の送信信号は、アンテナ502を介して受信され(以下「第2の受信信号」という)、フィルタ503−2およびアンプ504−2を経由して検波器505−2によってエンベロープ検波され、検波結果がクロックリカバリ506へ出力される。
【0078】
そして、クロックリカバリ506では、エンベロープ検波後の第2の受信信号からタイミング信号が生成される。
【0079】
上述したように、本実施の形態ではアンテナ102から送信される第2の送信信号は、同期用のクロックを含むため、クロックリカバリ506によってタイミング信号の生成が可能となる。そして、タイミング信号が用いられてエンベロープ検波後の第1の受信信号がADC507によってサンプリングされ、データ処理部508によってサンプリング後の第1の受信信号に対しディジタル復調処理が施される。
【0080】
なお、図14では第2の送信信号が第1の送信信号が存在する可能性のあるすべてのタイミングで存在する場合を説明したが、クロックリカバリ506において、低周波数の信号を逓倍してタイミング信号を生成するようにしても良い。これにより、第2の送信信号としてパルス繰り返し周期が長い信号を用いることができる。
【0081】
また、図16に、図14に示すようなパルス信号を受信する端末200の他の構成例を示す。なお、図16は、図15に対して、検波器505−1に代えて相関器513を備え、相関器513はエンベロープ検波に代わり同期検波を行う。これにより、タイミング信号がより高い精度で生成することができ、復調性能を向上することが可能となる。
【0082】
図17に、実施の形態1および2の通信装置から送信されるパルス信号の他の一例を示す。第1の送信信号(図17(a))および第2の送信信号(図17(b))は、BPSK(Bi Phase Sift Keying)変調されたパルス信号で、それぞれのパルス信号は同一のタイミングで端末200に到達している。
【0083】
端末200が図16に示すような要部構成を備えている場合、相関器513の出力は、図17(c)に示すように第1の送信信号と第2の送信信号とが乗じることで結合した波形となり、データ処理部508によって、出力結果が正であれば“1”、負であれば“0”と判定される。
【0084】
なお、図18に示すようなタイミング関係で、実施の形態1および2の通信装置から送信される第1の送信信号(図18(a))と第2の送信信号(図18(b))とが送信された場合には、図19に示すような要部構成を備える端末200にて復調可能となる。図19は、図16に対し遅延器601を追加した構成を採る。すなわち、第1の送信信号と第2の送信信号の到達タイミングが同時でない場合には、遅延器601によって第1の送信信号を遅延させタイミングが調整され、相関器513によって遅延後の第1の送信信号と第2の送信信号とを相関演算が施される。
【0085】
なお、遅延器601では、遅延量が変更される度、到達タイミングを測定し、到達タイミングが一致するまで、遅延量のタイミング調整を行う。
【0086】
図20に、実施の形態1および2の通信装置から送信されるパルス信号のさらに他の一例を示す。図20は、3つのアンテナを備える通信装置100から送信された第1の送信信号(図20(a))、第2の送信信号(図20(b))、および第3の送信信号(図20(c))が端末200へ到達する様子を示している。同図に示すように、第1、第2、および第3の送信信号は、それぞれ同一タイミングに互いに重複して存在しないようにタイミング調整され端末200へ到達する。
【0087】
図21に、図20に示すようなパルス信号を受信する端末200の要部構成を示す。図21に示す端末200は、アンテナ701と、フィルタ702と、アンプ703と、検波器704と、クロックリカバリ705と、テンプレート信号生成部706と、相関器707と、ADC708と、データ処理部709を備えている。すなわち、図20に示すように第1、第2、および第3の送信信号が、同一タイミングに互いに重複して存在しないようにタイミング調整されている場合は、単一のアンテナ701を介して第1から第3の送信信号がすべてを受信し、テンプレート信号生成部706によって生成されるテンプレート信号(図20(d))と受信信号との相関を相関器707によって取ることで波形を結合し、相関結果の正負(図20(e))に応じて“1”“0”を判定することが可能となり、図13に示すような3つのアンテナを備える通信装置100から第1から第3の送信信号が送信された場合においても復調処理を行うことができる。
【0088】
なお、図21では、端末200が、テンプレート信号を用いて同期検波を行うこととしたが、テンプレート信号を用いず、遅延検波により復調処理を行うことも可能である。また、上述した例では、BPSK変調の場合について説明したが、これに限らず、OOK変調、PPM(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)変調など他の変調方式が用いられた場合においても同様に復調可能となる。
【0089】
また、第1または第2の送信信号としてフレームタイミングを示すフレーム同期情報などの同期情報を送るようにしても良い。図22に波形図の一例を示す。第1の送信信号はBPSK変調されたパルス信号(図22(a))で、第2の送信信号はBPSK変調されたフレーム同期情報を示す信号(図22(b))である。図22(c)は、図22(a)を復調した結果得られる第1の送信信号に割り当てられたデータで、図22(d)は、復調後の第2の送信データを示し、“1”“0”と並ぶタイミングがフレーム同期タイミングである。上述したように、通信装置100は、特定の位置関係にある端末200のみへ、情報データとフレーム同期情報のタイミングが連動して到達するよう送信タイミングを調整して送信する。したがって、通信品質に応じてフレーム長を変更した場合にも、端末200はフレーム同期を正しく取ることが可能となるが、特定の位置関係以外の端末では情報データとフレーム同期情報のタイミングが連動して到達しないため、フレーム同期を正しく取ることができない。
【0090】
なお、端末200は、第1の送信信号として送信されるBPSK変調されたパルス信号と、第2の送信信号として送信されるBPSK変調されたフレーム同期情報を示す信号の合成信号を受信するが、受信信号を所定のしきい値で振幅レベルに応じ、合成信号は図21(a)に示すパルス信号と図21(b)示すフレーム同期情報とに分離される。また、第1の送信信号と第2の送信信号とが異なるなる搬送波周波数で送信される場合には、異なるフィルタを用いて帯域制限を施すことにより、同様に合成信号は図21(a)に示すパルス信号と図21(b)示すフレーム同期情報とに分離される。
【0091】
また、第1または第2の送信信号として、セキュリティを強化するため認証用データを情報データと連動させて送るようにしても良い。これにより、通信装置100と特定の位置関係にある端末200のみが認証用データを情報データと連動して取得することが可能となり、以後特定の領域に位置する端末200のみが認証を行って、当該認証用データと同期して到達した情報データ列を復調することができる。
【0092】
以上のように、本実施の形態によれば、情報データと、フレームタイミングを示すフレーム同期情報などの同期情報を、通信装置100のアンテナ101または102から、それぞれ第1、第2の送信信号として、特定の位置関係にある端末200へ規定のタイミングで到達するよう送信タイミング調整をして送信するようにしたので、通信装置100と特定の位置関係にある端末200のみがフレーム同期を正しく取って、情報データ列を正しく復調することができる。つまり、情報データとフレーム同期情報とが結合することで、情報データ列を正しく復調することができる。なお、アンテナ数は3つに限らず2つでも、また、4つ以上の場合であっても同様に実施可能である。
【0093】
(実施の形態4)
本発明の本実施の形態4は、実施の形態1および2の通信装置100と実施の形態3の端末200から構成される無線システムについて説明する。図23に、本実施の形態4に係る無線システムの一例を示す。同図に示すように、本実施の形態4に係る無線システムでは、端末200を第1の位置から第2の位置へ意図的に移動させ、移動後の第2の位置にある端末へ送信する送信信号のタイミング調整を変更している点に特徴がある。同図において、無線部801は、実施の形態1および2のいずれかに示す無線部103の構成と共通するため、その説明を省略する。
【0094】
次いで、上記のように構成された無線システムの動作について図24の波形図を用いて説明する。図24は、第1および第2の位置における端末に到達する第1および第2の送信信号の到達タイミングを示している。なお、同図において、<1>および<2>は、それぞれ通信装置100のアンテナ101および102から送信される第1の送信信号および第2の送信信号を示す。
【0095】
まず、通信装置100は、上述した方法によりアンテナ101から送信される第1の送信信号のタイミングを調整し、第1の位置にある端末200へ第1の送信信号(図24(a))と第2の送信信号(図24(b))を送信する。端末200では、通信装置100から送信される第1の送信信号と第2の送信信号とが規定のタイミングで到達するため(図24(c))、これら送信信号を受信して結合することで、情報データ列が復調される。
【0096】
端末200では、情報データ列が復調され、所定の時間経過後、第1の位置から第2の位置へ移動する旨の指示が、通信装置100から端末200へ通知される。そして、位置を移動する旨の指示を受けた端末200を保持する利用者により、端末200の位置が第1の位置から第2の位置へ移動される。なお、利用者により端末200の位置を移動するに限らず、例えば、利用者が端末200を所定のトレー等に載せトレーが移動するようにしても良い。
【0097】
図24(d)は、端末200が第2の位置へ移動した直後に、通信装置100から送信される第1および第2の送信信号が端末200へ到達するタイミングの様子を示す。移動直後は、それぞれのアンテナからの到達時間が変わるため、端末200に第1および第2の送信信号が規定のタイミングで到達せず、端末200が復調する情報データ列には、誤りが増加する。
【0098】
そのため、本実施の形態における無線システムでは、第2の位置へ移動した端末200に対し、再度、上述した初期設定時および通信開始時の手順により、アンテナ101から移動後の端末200へ送信される第1の送信信号と、アンテナ102から移動後の端末200へ送信される第2の送信信号との経路の違いに起因する到達時間差が算出される。そして、実施の形態1および2と同様に、第1の送信信号の送信タイミングが調整される。このようにして、移動後の第2の位置にある端末200へ規定のタイミングで第1および第2の送信信号が到達するようになり、端末200によって第1および第2の送信信号が受信されて、情報データ列が復調される。
【0099】
以上のように、本実施の形態によれば、第1の位置にある端末に対し通信装置100から送信される第1および第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう送信タイミング調整を行った後、通信装置100から通知される指示を受けて、端末200を第2の位置へ移動させ、移動後の第2の位置にある端末200に対し通信装置100から送信される第1および第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう送信タイミング調整を行うようにした。
【0100】
このため、移動前は、通信装置100と端末200の第1の位置との距離と同じ距離関係にある他の位置においても復調が可能であったが、移動後は、さらに、通信装置100と移動後の端末200の第2の位置との距離と同じ距離関係にある位置においてのみ復調が可能となるため、通信装置100と通信を行うことができる端末200の位置関係をさらにより限られた領域に限定することができる。
【0101】
なお、本実施の形態では、RFID(Radio Frequency Identification)のようなカード端末を想定した例を説明したが、本発明を車載用の端末に適用することも可能である。図25に、車載用の端末に本発明を適用した通信システムの配置図の一例を示す。同図は、駐車スペースを利用した通信システムの一例で、駐車スペースは、停車位置を限定する車両止め902と、第1のアンテナ101と、第2のアンテナ102と、無線部103と、屋根903と備え、無線部103は屋根903に設置されている。
【0102】
なお、第1の位置は、通信エリア内であればどこでもよく、通信エリア内では特に限定されず、車載用端末200は、2箇所以上の位置で通信することで、通信装置100から送信される情報データ列を正しく復調することができる。
【0103】
つまり、車両901が、駐車スペースの停車する際、第1の位置から第2の位置へ移動する前後で、通信装置100が送信タイミング調整を行うことにより、車載用端末200以外の端末は、通信装置100から送信される情報データ列を正しく復調することができず受信が困難となる。
【0104】
以上により、車載用端末200を搭載した車が、買い物のために、駐車場に駐車した後に、店舗の案内、地域の情報などを得ることができる。
【0105】
(実施の形態5)
本発明の本実施の形態5は、実施の形態1および実施の形態2の通信装置100と実施の形態3の端末200から構成される無線システムについて説明する。図26に、本実施の形態5に係る無線システムの一例を示す。同図に示すように、本実施の形態5に係る無線システムでは、反射板1001を備え、アンテナ101は当該反射板1001へ第1の送信信号を送信する点で上述した実施の形態と異なり、通信装置100および端末200の要部構成は上述した実施の形態と同様である。
【0106】
つまり、本実施の形態では、アンテナ101から送信された第1の送信信号の直接波に代わり、アンテナ101から送信された第1の送信信号が反射板1001によって反射され端末200に到達する反射波を用いて、アンテナ101およびアンテナ102と端末200間の到達時間差を算出し、送信タイミングの調整を行う。
【0107】
通常、1nsの時間差を与えるには約30cmの経路差が必要となるが、以上のように、本実施の形態によれば、反射板1001を設け、経路差を擬似的に長くして到達時間差を長くすることができるため、アンテナ101とアンテナ102が近接して配置する状況においても、特定の位置関係にある端末のみが通信装置と通信できるようになる無線システムを構築することができる。また、アンテナ101とアンテナ102を近接して配置することが可能となるので、通信装置100を小型化することができる。なお、第2のアンテナ102から送信される第2の送信信号についても、直接波でなく反射波を用いて送信タイミングの調整を行っても良い。
【0108】
また、上述した実施の形態3から5においては、変調方式としてOOK変調方式およびBPSK変調方式を用いた場合についてのみ記載したが、これらに限らず、PPM変調方式、ASK(Amplitude Shift Keying)変調方式、多値ASK変調方式、PSK(Phase Shift Keying)変調方式、または多値PSK変調方式や、これらを組み合わせた他の変調方式を用いた場合にも同様の効果が得られる。
【0109】
なお、上述した実施の形態では通信装置100のみが送信タイミングの調整を行う場合について説明したが、端末200が、通信装置100と同様にタイミングを調整する機能を備え、複数のアンテナから送信される送信信号のタイミングを微調整することで微小なずれを補正して、受信感度を高めるように構成しても良い。
【0110】
また、通信装置100と端末200が協調し、一定時間経過後に複数のアンテナから送信された送信信号のタイミングを変化させても良い。例えば、最初は、第1の送信信号を遅延時間0、第2の送信信号を遅延時間τとして合成する取り決めとし、一定時間Tが経過したのち、通信装置100が第2の送信信号のみをτ×2だけ遅らせて送信し、端末200では第2の送信信号を遅延時間0として合成することで、最初の状態と同様に復調を続けることができる。なお、τ、Tは任意の時間とする。
【0111】
なお、上述した実施の形態では、アンテナから送信される送信信号と反射信号との時間差を使ってタイミング調整をすることのみ述べたが、送信信号に応じて端末200が適当な時間経過後に応答信号を返すことで、この時間差を用いて調整するタイミングを算出する方法を用いても実施可能である。または、反射信号による調整と時間経過後に応答信号を返す調整とを併用しても同様に実施可能である。応答信号の信号レベルは大きく見逃す割合が減るため、応答信号を用いることで、送信側のタイミング調整を簡単化することが可能となる。また、応答信号を用いる場合には応答する機器側の内部遅延を正確に見積もれず誤差が出るが、反射信号を用いる場合には遅延が無いため、これらを併用することでタイミング算出精度を高めることが可能となる。
【0112】
なお、反射板1001以外の物体によって反射された反射波が端末200に到達する可能性があるが、このマルチパスの影響によって端末200に到達する反射波が受信時に適当なタイミングで合成されない限り、受信復調時にA/Dコンバータ等でサンプルされることがないため、復調される情報データ列に影響を与える可能性は小さい。
【0113】
また、アンテナ101から送信された第1の送信信号が反射板1001によって反射され端末200に到達する反射波と、他方のアンテナ102から送信された第2の送信信号の直接波との受信タイミングが偶然に一致し、復調される情報データ列が影響を受ける場合には、アンテナ102から第2の送信信号を送信するタイミングを更に変更し、例えば誤り訂正によるマルチパス影響除去効果が高いタイミングで第2の送信信号を送信するようにすることで、反射板1001以外の物体によって反射された反射波が情報データ列へ及ぼす影響を低減するように構成しても良い。
【0114】
本発明の通信装置の一つの態様は、情報データ列に基づいて第1の送信信号を生成する第1の生成手段と、前記第1の送信信号と規定のタイミングで結合することで前記情報データ列が復調可能となる第2の送信信号を生成する第2の生成手段と、前記第1の送信信号を送信する第1のアンテナと、前記第2の送信信号を送信する第2のアンテナと、特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する調整手段と、を具備する構成を採る。
【0115】
この構成によれば、2つのアンテナから送信される第1の送信信号および第2の送信信号が、所定の領域に規定のタイミングで到達するようにしたので、情報データ列に基づいて生成された第1の送信信号と、第2の送信信号とを用いて、特定の領域に位置する通信相手のみが情報データ列を復調することができ、比較的簡易な構成で、通信可能な領域を極めて限られた領域に限定することができる。
【0116】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1の送信信号が前記特定の領域へ到達する時間と、前記第2の送信信号が前記特定の領域へ到達する時間との時間差を算出する時間差算出手段、をさらに有し、前記調整手段は、前記時間差に基づいて、前記特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを前記調整手段が調整する構成を採る。
【0117】
この構成によれば、第1のアンテナから送信される第1の送信信号が特定の領域に到達する時間と、第2のアンテナから送信される第2の送信信号が特定の領域に到達する時間との到達時間差を算出することができるため、通信相手の位置が変更された場合においても、変更後の通信相手のみが情報データ列を復調することができるような第1の送信信号および第2の送信信号を送信することができる。
【0118】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記時間差算出手段は、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間の伝搬路上における信号の往復時間T1と、前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナの一方のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T2とから、前記時間差を算出する構成を採る。
【0119】
この構成によれば、通信相手が第1のアンテナと第2のアンテナとの間に位置する場合、第1のアンテナと第2のアンテナから送信される送信信号が通信相手に到達する時間差を求めることができ、得られた時間差を用いて第1の送信信号および第2の送信信号が通信相手へ規定の順序で到達するよう送信タイミングを調整することができ、第1のアンテナと第2のアンテナとの間に位置する通信装置のみが情報データ列を復号することができる。
【0120】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記時間差算出手段は、前記往復時間T1を、前記第2のアンテナが受信する前記第1のアンテナによって反射された前記第2の送信信号、又は、前記第1のアンテナが受信する前記第2のアンテナによって反射された前記第1の送信信号を用いて算出し、前記往復時間T2を、前記第1のアンテナが受信する前記特定の領域において反射された前記第1の送信信号、または、前記第2のアンテナが受信する前記特定の領域において反射された前記第2の送信信号の少なくとも一方を用いて算出する構成を採る。
【0121】
この構成によれば、第1のアンテナと第2のアンテナとの伝搬路上における信号の往復時間T1を、第1の送信信号が第2のアンテナに反射されて第1のアンテナに戻ってくるまでの時間、又は、第2の送信信号が第1のアンテナに反射された第2のアンテナに戻ってくる時間から算出することができる。また、往復時間T2を、第1の送信信号または第2の送信信号が通信相手に反射されてそれぞれのアンテナに戻ってくるまでの時間から算出することができ、得られた往復時間から通信相手のみへ第1の送信信号および第2の送信信号が規定の順序で到達する送信タイミング調整が行える。
【0122】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T3と、前記第2のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T4とから、前記時間差を算出する構成を採る。
【0123】
この構成によれば、通信相手が第1のアンテナと第2のアンテナとの間に位置しない場合であっても、第1のアンテナと第2のアンテナから送信される送信信号が通信相手に到達する時間差を求めることができて、第1の送信信号および第2の送信信号が通信相手へ規定の順序で到達するよう送信タイミングを調整することができ、情報データ列を復号することができる通信相手とアンテナ間との位置関係の制約を小さくすることができる。
【0124】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記時間差算出手段は、前記往復時間T3を、前記第1のアンテナが受信する前記特定領域において反射された前記第1の送信信号を用いて算出し、前記往復時間T4を、前記第2のアンテナが受信する前記特定領域において反射された前記第2の送信信号を用いて算出する構成を採る。
【0125】
この構成によれば、第1のアンテナと通信相手との伝搬路上における信号の往復時間T3を、第1の送信信号が通信相手に反射されて第1のアンテナに戻ってくるまでの時間から算出でき、又、第2のアンテナと通信相手との伝搬路上における信号の往復時間T4を、第2の送信信号が通信相手に反射されて第2のアンテナに戻ってくるまでの時間から算出することができ、得られた往復時間から通信相手のみへ第1の送信信号および第2の送信信号が規定の順序で到達する送信タイミング調整が行える。
【0126】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第2の生成手段は、前記第2の送信信号として、前記第1の送信信号のリファレンス信号を生成し、前記調整手段は、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号の一部が同一時刻に前記特定の領域へ到達するよう送信タイミングを調整する構成を採る。
【0127】
この構成によれば、第1の送信信号と第1の送信信号のリファレンス信号である第2の送信信号の一部が特定の領域に位置する通信相手へのみ同一時刻に到達するようにできるため、第2の送信信号が通信相手に到達した受信タイミングを参照して情報データ列を同期復調することが可能となる。
【0128】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記リファレンス信号は、前記第1の送信信号の位相タイミングを示すシンボル同期情報、通信フレームのフレームタイミングを示すフレーム同期情報又は認証用情報の一部である構成を採る。
【0129】
この構成によれば、位相タイミングを示すシンボル同期情報やフレーム同期情報が第2の送信信号として、特定の領域に位置する通信相手へのみ第1の送信信号と同期して到達するので、所定の領域に位置する通信相手のみがシンボル同期やフレーム同期を正しく取って情報データ列を正しく復調することができる。また、認証用情報が第2の送信信号として、特定の領域に位置する通信相手へのみ第1の送信信号と同期して到達するので、所定の領域に位置する通信相手のみが認証を行って、当該認証用データと同期して到達した情報データ列を正しく復調することができる。
【0130】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1および前記第2の生成手段は、前記第1および前記第2の送信信号としてパルス信号を生成し、前記調整手段は、前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とが、交互に前記通信相手へ到達するよう送信タイミングを調整する構成を採る。
【0131】
この構成によれば、第1の送信信号および第2の送信信号が特定の領域に位置する通信相手へのみ交互に到達するため、例えば、第2の送信信号が第1の送信信号のリファレンス信号とした場合に、所定の領域に位置する通信相手のみが、第1の送信信号および第2の送信信号を用いて情報データ列を同期復調することが可能となる。
【0132】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第2の生成手段は、前記第2の送信信号として、前記第1の送信信号のタイミング信号を生成し、前記調整手段は、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号の一部が同一時刻に前記特定の領域へ到達するよう送信タイミングを調整する構成を採る。
【0133】
この構成によれば、第1の送信信号と第1の送信信号のタイミング信号である第2の送信信号の一部が特定の領域に位置する通信相手へのみ同一時刻に到達するようにできるため、第2の送信信号が通信相手に到達した受信タイミングを参照して情報データ列を同期復調することが可能となる。
【0134】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記タイミング信号は、同期用のクロック信号である構成を採る。
【0135】
この構成によれば、第1の送信信号の同期用のクロック信号が第2の送信信号として、特定の領域に位置する通信相手へのみ第1の送信信号と同期して到達するので、所定の領域に位置する通信相手は、第2の送信信号を同期用のクロック信号に用いて、情報データ列を確実に同期復調することが可能となる。
【0136】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記時間差算出手段は、所定の時間間隔で前記時間差を測定する構成を採る。
【0137】
この構成によれば、時間差が所定の時間間隔で測定されるので、送信タイミングが所定時間ごとに調整されるようになり、通信エリア内で通信相手の位置が移動した場合においても、第1の送信信号および第2の送信信号が移動後の通信相手へ規定の順序で到達するよう送信タイミングを調整することができ、通信装置は情報データ列を復号することができる。
【0138】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記特定の領域に位置する通信相手に対し、位置を移動させる旨の指示を通知する通知手段、をさらに具備し、前記時間差算出手段は、前記第1の送信信号が移動後の前記通信相手の位置する領域へ到達する時間と、前記第2の送信信号が移動後の前記通信相手の位置する領域へ到達する時間とから、前記時間差を再度算出し、前記調整手段は、再度算出された前記時間差に基づいて送信タイミングを調整する構成を採る。
【0139】
この構成によれば、通信相手の位置を移動させ、第1のアンテナおよび第2のアンテナから送信される第1および第2の送信信号が移動後の通信相手へ到達するまでに要する時間差を再度求め、得られた時間差が用いられて調整手段によって送信タイミングの調整が行われるため、移動後の領域に位置する通信相手へ第1の送信信号および第2の送信信号が規定のタイミングで到達するようになり、通信可能な領域をより限られた範囲に限定することができる。
【0140】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの少なくとも一方は、前記特定の領域とは異なる方向に固定された特定の固定物へ送信する構成を採る。
【0141】
この構成によれば、第1および第2のアンテナと特定の領域に位置する通信相手との経路差に相当する時間差を算出する際に、第1および第2のアンテナから送信された送信信号が通信相手へダイレクトに到達する時間から算出するのでなく、少なくともどちらか一方については、特定の領域に位置する通信相手の位置とは異なる方向に固定された特定の固定物を経由して通信相手へ到達するまでの時間から算出するようにしたため、第1および第2のアンテナ同士が近接する場合においても、擬似的に経路差を長くすることができ、また、第1および第2のアンテナを近接させて通信装置を小型化することが可能となる。
【0142】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1の送信信号または前記、第2の送信信号の少なくとも一方を、異なる搬送波周波数帯の信号に周波数変換する周波数変換手段、をさらに有する構成を採る。
【0143】
この構成によれば、認証用データ等、データ量が比較的少ない情報データ列をマイクロ波帯により低誤りで確実に送信し、一旦認証等が確立された後は、大容量の情報データ列をミリ波帯で高速に送信することができる。
【0144】
本発明の通信装置の一つの態様は、マルチパスの影響によって生じる前記第1の送信信号および前記第2の送信信号に対する第1の遅延信号および第2の遅延信号が、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号に遅れて前記特定の領域に到達するまでの第1の遅延信号および第2の遅延時間時のマルチパスを測定するマルチパス測定手段、部をさらに有し、前記第1および前記第2の生成手段は、前記第1および前記第2の遅延時間前記マルチパス測定部が出力するマルチパス状況信号に基づいて、第1の生成手段前記第1および前記第2の送信信号を生成する構成を採る。及び第2の生成手段が生成する信号を設定する。
【0145】
この構成によれば、情報データ列に含まれる“1”をオン信号で送信するOOK変調方式の場合に、第1のアンテナから送信される第1の送信信号の直接波と遅延波とが異なる位相で通信相手に到達する場合に、情報データ列に含まれる“1”を第1のアンテナから送信される第1の送信信号または第2のアンテナから送信される第2の送信信号に振り分けて送信することができるため、直接波と遅延波とが異なる位相で通信相手に到達して相殺し合うように合成される割合が減り、符号間干渉による復調誤りを低減することができるようになる。
【0146】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記特定の領域は、予め決められた明示された前記通信装置の所定の場所とする構成を採る。
【0147】
この構成によれば、第1のアンテナから送信される第1の送信信号が特定の領域に到達する時間と、第2のアンテナから送信される第2の送信信号が特定の領域に到達する時間との到達時間差が既知であるため、到達時間差を算出する演算量を省いて、送信タイミングを調整することができる。
【0148】
本発明の通信装置の一つの態様は、前記第1の送信信号と前記第2の送信信号が、差動符号化された信号である構成を採る。
【0149】
この構成によれば、第1の送信信号および第2の送信信号が規定の順序で到達する特定の領域に位置する通信装置のみが差動復号を行って情報データ列を復号することができる。
【0150】
本発明の通信方法の一つの態様は、情報データ列に基づいて第1の送信信号を生成する工程と、前記第1の送信信号と規定のタイミングで結合することで前記情報データ列が復調可能となる第2の送信信号を生成する工程と、前記第1の送信信号を送信する工程と、前記第2の送信信号を送信する工程と、特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する工程と、を有している。
【0151】
この方法によれば、2つのアンテナから送信される第1の送信信号および第2の送信信号が、所定の領域に規定のタイミングで到達するようにしたので、情報データ列に基づいて生成された第1の送信信号と、第2の送信信号とを用いて、特定の領域に位置する通信相手のみが情報データ列を復調することができ、比較的簡易な構成で、通信可能な領域を極めて限られた領域に限定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の通信装置および通信方法は、比較的簡易な構成で、特定の位置関係にある端末装置のみが通信可能となる通信装置および通信方法を提供することができ、例えば、限られた場所のみを通信エリアとする通信システムに適用される通信装置および通信方法などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の実施の形態1に係る通信装置の要部構成を示すブロック図
【図2】初期設定時の実施の形態の1に係る通信装置と通信相手である端末との位置関係を示す図
【図3】通信開始時の実施の形態の1に係る通信装置と通信相手である端末との位置関係を示す図
【図4】通信後の実施の形態の1に係る通信装置と通信相手である端末との位置関係を示す図
【図5】実施の形態1に係るタイミング算出部のブロック図
【図6】(a)第1の送信信号が送信されるタイミングを示す図(b)第1の送信信号が第2のアンテナによって反射され第1のアンテナに戻ってくるタイミングを示す図(c)第1の送信信号が端末によって反射されて第1のアンテナに戻ってくるタイミングを示す図
【図7】実施の形態1に係るタイミング調整信号の生成方法を説明するためのフロー図
【図8】実施の形態1に係る通信装置の要部構成を示すブロック図
【図9】直接波および遅延波の到達タイミングを示す図
【図10】遅延波による符号間干渉を説明するための図
【図11】遅延波による符号間干渉を回避するタイミング調整方法を説明するための図
【図12】本発明の実施の形態2に係る通信装置の要部構成を示すブロック図
【図13】実施の形態2に係る通信装置の要部構成を示すブロック図
【図14】(a)本発明の実施の形態3に係る第1の送信信号のタイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図
【図15】実施の形態3に係る端末の要部構成を示すブロック図
【図16】実施の形態3に係る端末の要部構成を示すブロック図
【図17】(a)実施の形態3に係る第1の送信信号のタイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図(c)第1および第2の送信信号の相関結果を示す図
【図18】(a)実施の形態3に係る第1の送信信号のタイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図(c)第1および第2の送信信号の相関結果を示す図
【図19】実施の形態3に係る端末の要部構成を示すブロック図
【図20】(a)実施の形態3に係る第1の送信信号のタイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図(c)第3の送信信号のタイミングを示す図(d)テンプレート信号を示す図(e)第1、第2、および第3の送信信号とテンプレート信号との相関結果を示す図
【図21】実施の形態3に係る端末の要部構成を示すブロック図
【図22】(a)実施の形態3に係る第1の送信信号のタイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図(c)第1の送信信号の復調データを示す図(d)第2の送信信号の復調データを示す図
【図23】本発明の実施の形態4に係る無線システムの一例を示す図
【図24】(a)実施の形態4に係る第1の送信信号の送信タイミングを示す図(b)第2の送信信号のタイミングを示す図(c)第1の位置における第1および第2の送信信号の到達タイミングを示す図(d)第2の位置における第1および第2の送信信号の到達タイミングを示す図(e)タイミング調整後の第2の位置における第2の送信信号の到達タイミングを示す図
【図25】実施の形態4に係る無線システムの一例を示す図
【図26】本発明の実施の形態5に係る無線システムの一例を示す図
【図27】無指向性アンテナを用いた場合のETCの通信エリアを説明するための図
【図28】指向性アンテナを用いた場合のETCの通信エリアを説明するための図
【図29】ビームアンテナを用いた場合のETCの通信エリアを説明するための図
【符号の説明】
【0154】
101、102、403、501、502、512、701 アンテナ
103、801 無線部
104、401−1、401−2、401−3 タイミング算出部
105、301、302、405 可変遅延器
106、107、404 変復調部
108 マルチパス測定部
303、513、707 相関器
304 相関判定部
305 時間差算出部
306 初期時間差保存部
307 到達時間差算出部
402 タイミング調整部
503−1、503−2、511、702 フィルタ
504−1、504−2、510、703 アンプ
505−1、505−2、704 検波器
506、705 クロックリカバリ
507、708 ADC
508、709 データ処理部
509 パルス変調
601 遅延器
706 テンプレート信号生成部
901 車両
902 車両止め
903 屋根
1001 反射板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報データ列に基づいて第1の送信信号を生成する第1の生成手段と、
前記第1の送信信号と規定のタイミングで結合することで前記情報データ列が復調可能となる第2の送信信号を生成する第2の生成手段と、
前記第1の送信信号を送信する第1のアンテナと、
前記第2の送信信号を送信する第2のアンテナと、
特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する調整手段と、
を具備する通信装置。
【請求項2】
前記第1の送信信号が前記特定の領域へ到達する時間と、前記第2の送信信号が前記特定の領域へ到達する時間との時間差を算出する時間差算出手段、をさらに有し、
前記調整手段は、前記時間差に基づいて、前記特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する
請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記時間差算出手段は、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間の伝搬路上における信号の往復時間T1と、前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナの一方のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T2とから、前記時間差を算出する
請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記時間差算出手段は、前記往復時間T1を、前記第2のアンテナが受信する前記第1のアンテナによって反射された前記第2の送信信号、又は、前記第1のアンテナが受信する前記第2のアンテナによって反射された前記第1の送信信号を用いて算出し、
前記往復時間T2を、前記第1のアンテナが受信する前記特定の領域において反射された前記第1の送信信号、または、前記第2のアンテナが受信する前記特定の領域において反射された前記第2の送信信号の少なくとも一方を用いて算出する
請求項3記載の通信装置。
【請求項5】
前記時間差算出手段は、前記第1のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T3と、前記第2のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T4とから、前記時間差を算出する
請求項2記載の通信装置。
【請求項6】
前記時間差算出手段は、前記往復時間T3を、前記第1のアンテナが受信する前記特定領域において反射された前記第1の送信信号を用いて算出し、
前記往復時間T4を、前記第2のアンテナが受信する前記特定領域において反射された前記第2の送信信号を用いて算出する
請求項5記載の通信装置。
【請求項7】
前記第2の生成手段は、前記第2の送信信号として、前記第1の送信信号のリファレンス信号を生成し、
前記調整手段は、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号の一部が同一時刻に前記特定の領域へ到達するよう送信タイミングを調整する請求項1記載の通信装置。
【請求項8】
前記リファレンス信号は、前記第1の送信信号の位相タイミングを示すシンボル同期情報、通信フレームのフレームタイミングを示すフレーム同期情報又は認証用情報である
請求項7記載の通信装置。
【請求項9】
前記第1および前記第2の生成手段は、前記第1および前記第2の送信信号としてパルス信号を生成し、
前記調整手段は、前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とが、交互に前記通信相手へ到達するよう送信タイミングを調整する
請求項1記載の通信装置。
【請求項10】
前記第2の生成手段は、前記第2の送信信号として、前記第1の送信信号のタイミング信号を生成し、
前記調整手段は、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号の一部が同一時刻に前記特定の領域へ到達するよう送信タイミングを調整する
請求項1記載の通信装置。
【請求項11】
前記タイミング信号は、同期用のクロック信号である
請求項10記載の通信装置。
【請求項12】
前記時間差算出手段は、所定の時間間隔で前記時間差を測定する
請求項1記載の通信装置。
【請求項13】
前記特定の領域に位置する通信相手に対し、位置を移動させる旨の指示を通知する通知手段、をさらに具備し、
前記時間差算出手段は、前記第1の送信信号が移動後の前記通信相手の位置する領域へ到達する時間と、前記第2の送信信号が移動後の前記通信相手の位置する領域へ到達する時間とから、前記時間差を再度算出し、
前記調整手段は、再度算出された前記時間差に基づいて送信タイミングを調整する
請求項1記載の通信装置。
【請求項14】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの少なくとも一方は、前記特定の領域とは異なる方向に固定された特定の固定物へ送信する
請求項1記載の通信装置。
【請求項15】
前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくとも一方を、異なる搬送波周波数帯の信号に周波数変換する周波数変換手段、をさらに有する
請求項1記載の通信装置。
【請求項16】
マルチパスの影響によって生じる前記第1の送信信号および前記第2の送信信号に対する第1の遅延信号および第2の遅延信号が、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号に遅れて前記特定の領域に到達するまでの第1の遅延信号および第2の遅延時間を測定する測定手段、をさらに有し、
前記第1および前記第2の生成手段は、前記第1および前記第2の遅延時間に基づいて前記第1および前記第2の送信信号を生成する
請求項1記載の通信装置。
【請求項17】
前記特定の領域は、予め決められた所定の場所とする
請求項1記載の通信装置。
【請求項18】
前記第1の送信信号と前記第2の送信信号が、差動符号化された信号である
請求項1記載の通信装置。
【請求項19】
情報データ列に基づいて第1の送信信号を生成する工程と、
前記第1の送信信号と規定のタイミングで結合することで前記情報データ列が復調可能となる第2の送信信号を生成する工程と、
前記第1の送信信号を送信する工程と、
前記第2の送信信号を送信する工程と、
特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する工程と、
を有する通信方法。
【請求項1】
情報データ列に基づいて第1の送信信号を生成する第1の生成手段と、
前記第1の送信信号と規定のタイミングで結合することで前記情報データ列が復調可能となる第2の送信信号を生成する第2の生成手段と、
前記第1の送信信号を送信する第1のアンテナと、
前記第2の送信信号を送信する第2のアンテナと、
特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する調整手段と、
を具備する通信装置。
【請求項2】
前記第1の送信信号が前記特定の領域へ到達する時間と、前記第2の送信信号が前記特定の領域へ到達する時間との時間差を算出する時間差算出手段、をさらに有し、
前記調整手段は、前記時間差に基づいて、前記特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する
請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記時間差算出手段は、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間の伝搬路上における信号の往復時間T1と、前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナの一方のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T2とから、前記時間差を算出する
請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記時間差算出手段は、前記往復時間T1を、前記第2のアンテナが受信する前記第1のアンテナによって反射された前記第2の送信信号、又は、前記第1のアンテナが受信する前記第2のアンテナによって反射された前記第1の送信信号を用いて算出し、
前記往復時間T2を、前記第1のアンテナが受信する前記特定の領域において反射された前記第1の送信信号、または、前記第2のアンテナが受信する前記特定の領域において反射された前記第2の送信信号の少なくとも一方を用いて算出する
請求項3記載の通信装置。
【請求項5】
前記時間差算出手段は、前記第1のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T3と、前記第2のアンテナと前記特定の領域との間の伝搬路上における信号の往復時間T4とから、前記時間差を算出する
請求項2記載の通信装置。
【請求項6】
前記時間差算出手段は、前記往復時間T3を、前記第1のアンテナが受信する前記特定領域において反射された前記第1の送信信号を用いて算出し、
前記往復時間T4を、前記第2のアンテナが受信する前記特定領域において反射された前記第2の送信信号を用いて算出する
請求項5記載の通信装置。
【請求項7】
前記第2の生成手段は、前記第2の送信信号として、前記第1の送信信号のリファレンス信号を生成し、
前記調整手段は、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号の一部が同一時刻に前記特定の領域へ到達するよう送信タイミングを調整する請求項1記載の通信装置。
【請求項8】
前記リファレンス信号は、前記第1の送信信号の位相タイミングを示すシンボル同期情報、通信フレームのフレームタイミングを示すフレーム同期情報又は認証用情報である
請求項7記載の通信装置。
【請求項9】
前記第1および前記第2の生成手段は、前記第1および前記第2の送信信号としてパルス信号を生成し、
前記調整手段は、前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とが、交互に前記通信相手へ到達するよう送信タイミングを調整する
請求項1記載の通信装置。
【請求項10】
前記第2の生成手段は、前記第2の送信信号として、前記第1の送信信号のタイミング信号を生成し、
前記調整手段は、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号の一部が同一時刻に前記特定の領域へ到達するよう送信タイミングを調整する
請求項1記載の通信装置。
【請求項11】
前記タイミング信号は、同期用のクロック信号である
請求項10記載の通信装置。
【請求項12】
前記時間差算出手段は、所定の時間間隔で前記時間差を測定する
請求項1記載の通信装置。
【請求項13】
前記特定の領域に位置する通信相手に対し、位置を移動させる旨の指示を通知する通知手段、をさらに具備し、
前記時間差算出手段は、前記第1の送信信号が移動後の前記通信相手の位置する領域へ到達する時間と、前記第2の送信信号が移動後の前記通信相手の位置する領域へ到達する時間とから、前記時間差を再度算出し、
前記調整手段は、再度算出された前記時間差に基づいて送信タイミングを調整する
請求項1記載の通信装置。
【請求項14】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの少なくとも一方は、前記特定の領域とは異なる方向に固定された特定の固定物へ送信する
請求項1記載の通信装置。
【請求項15】
前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくとも一方を、異なる搬送波周波数帯の信号に周波数変換する周波数変換手段、をさらに有する
請求項1記載の通信装置。
【請求項16】
マルチパスの影響によって生じる前記第1の送信信号および前記第2の送信信号に対する第1の遅延信号および第2の遅延信号が、前記第1の送信信号および前記第2の送信信号に遅れて前記特定の領域に到達するまでの第1の遅延信号および第2の遅延時間を測定する測定手段、をさらに有し、
前記第1および前記第2の生成手段は、前記第1および前記第2の遅延時間に基づいて前記第1および前記第2の送信信号を生成する
請求項1記載の通信装置。
【請求項17】
前記特定の領域は、予め決められた所定の場所とする
請求項1記載の通信装置。
【請求項18】
前記第1の送信信号と前記第2の送信信号が、差動符号化された信号である
請求項1記載の通信装置。
【請求項19】
情報データ列に基づいて第1の送信信号を生成する工程と、
前記第1の送信信号と規定のタイミングで結合することで前記情報データ列が復調可能となる第2の送信信号を生成する工程と、
前記第1の送信信号を送信する工程と、
前記第2の送信信号を送信する工程と、
特定の領域へ前記第1の送信信号および前記第2の送信信号が規定のタイミングで到達するよう前記第1の送信信号または前記第2の送信信号の少なくともいずれか一方の送信タイミングを調整する工程と、
を有する通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2007−181182(P2007−181182A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300576(P2006−300576)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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