説明

通信装置

【課題】飛翔体に搭載され衛星と通信を行う通信装置において、飛翔体からの送信信号の周波数がドップラー効果により大きく変動した場合であっても、送信信号を所定の規定周波数で衛星が受信できるようにする。
【解決手段】飛翔体に搭載され衛星20と通信を行う通信装置10であって、衛星20に対し送信信号を送信する送信部5と、衛星20に対する飛翔体の相対位置、姿勢、速度に基づいて、ドップラー効果による送信信号の周波数変動量を求める周波数変動量取得部14と、衛星20から見た送信信号の周波数が規定周波数となるように、周波数変動量に基づいて、送信信号の周波数を調整する送信信号調整部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体に搭載され衛星と通信を行う通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロケットなどの飛翔体を飛行機から空中発射させる場合に、飛翔体の追跡、制御を行うために衛星を利用できる。即ち、飛翔体と衛星との通信を利用することで、地上にある管制局は、上述の衛星を介して飛翔体と通信を行える。これにより、幅広い通信エリアを確保できる。
【0003】
上述の衛星として、例えば、インマルサット通信衛星を用いることが想定される。インマルサット通信衛星は、1980年代から運用されており、上述の衛星としてのインマルサット衛星は、最新の第4世代衛星である。第3世代までのインテルサット衛星は、送信出力、受信感度共に、第4世代衛星に比べて小さく、ロケット搭載受信端末は、実現できなかった。第4世代衛星が運用されるようになり、初めて、ロケット搭載通信端末で通信が可能になった。この衛星は、3機体制で全地球をカバーする方式であり、2008年8月に3号機が打上げられ、2009年2月に各衛星の最終配置が完了したばかりである。
【0004】
本願の先行技術文献として次の特許文献1〜3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−13949号公報
【特許文献2】特開2000−59281号公報
【特許文献3】特開2005−72884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ロケットなどの飛翔体は、高速で移動するため、飛翔体と衛星との間には、ドップラー効果による通信周波数変動が生じる。この周波数変動は、ある例では、最大で20kHzにもなることが予測される。
【0007】
このように周波数変動が大きくなると、飛翔体からの送信信号は、衛星から見た場合(観測した場合)、規定周波数からずれてしまう。即ち、飛翔体は、前記規定周波数で送信信号を送信しても、ドップラー効果により、この送信信号の周波数は、衛星から見た場合、前記規定周波数からずれてしまう。なお、規定周波数は、前記衛星が信号を受信するのに好ましい周波数であり、前記衛星について定められている(以下、同様)。
【0008】
また、上述のように周波数変動が大きくなると、飛翔体の通信装置は、受信信号を復調できなくなってしまう可能性がある。具体的には、次の通りである。飛翔体の通信装置は、受信信号と位相と周波数が同期した信号をPLLにより取得する。この同期信号により、衛星からの信号を復調する。しかし、受信信号の周波数がドップラー効果により、PLLの引き込み範囲外となってしまう。この場合、信号を復調できない可能性がある。なお、引き込み範囲とは、前記受信信号の周波数と同じ周波数の信号をPLLのVCO(電圧制御発振回路)が出力できる前記受信信号の周波数の範囲である(以下、同様)。
【0009】
そこで、本発明の目的は、飛翔体に搭載され衛星と通信を行う通信装置において、飛翔体からの送信信号の周波数がドップラー効果により大きく変動した場合であっても、送信信号を所定の規定周波数で衛星が受信できるようにすることにある。
また、本発明の別の目的は、飛翔体に搭載され衛星と通信を行う通信装置において、受信信号の周波数がドップラー効果により大きく変動した場合であっても、衛星からの受信信号を復調できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明によると、飛翔体に搭載され衛星と通信を行う通信装置であって、
前記衛星に対し送信信号を送信する送信部と、
ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量を求める周波数変動量取得部と、
前記衛星から見た前記送信信号の周波数が規定周波数となるように、前記周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整する送信信号調整部と、
前記衛星からの変調信号を受信信号として受信する受信部と、
前記受信信号に基づいて、該受信信号を復調するための復調信号を出力するPLLと、を有し、
前記PLLは、
前記受信信号と比較対象信号との位相差を示す制御電圧を出力する位相比較部と、
前記制御電圧の大きさに応じた周波数の信号を前記比較対象信号として出力するVCOと、を有し、
前記周波数変動量取得部は、
前記受信信号の周波数と前記規定周波数との周波数差に応じた調整電圧を出力する周波数弁別器と、
前記制御電圧を前記調整電圧だけ変化させ、これにより、前記PLLの引き込み範囲が前記受信信号の周波数を含むように、該引き込み範囲をシフトさせる電圧調整部と、
前記受信信号の周波数にロックされた前記比較対象信号の周波数と前記規定周波数との周波数差を算出し、該周波数差を前記周波数変動量として前記送信信号調整部に出力する周波数差算出部と、を有することを特徴とする通信装置が提供される。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明によると、飛翔体に搭載され衛星と通信を行う通信装置であって、
前記衛星に対し送信信号を送信する送信部と、
前記衛星に対する前記飛翔体の相対位置、前記飛翔体の姿勢、前記飛翔体の速度に基づいて、ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量を求める周波数変動量取得部と、
前記衛星から見た前記送信信号の周波数が規定周波数となるように、前記周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整する送信信号調整部と、を備え、
前記衛星からの変調信号を受信信号として受信する受信部と、
前記受信信号に基づいて、該受信信号を復調するための復調信号を出力するPLLと、を有し、
前記PLLは、
前記受信信号と比較対象信号との位相差を示す制御電圧を出力する位相比較部と、
前記制御電圧の大きさに応じた周波数の信号を前記比較対象信号として出力するVCOと、を有し、
前記周波数変動量取得部は、
前記衛星に対する前記飛翔体の相対位置、前記飛翔体の姿勢、前記飛翔体の速度に基づいて、ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量推定値を算出する推定部と、
前記周波数変動量推定値に基づいて、前記制御電圧を調整し、これにより、前記PLLの引き込み範囲が前記受信信号の周波数を含むように、該引き込み範囲をシフトさせる電圧調整部と、
前記受信信号の周波数にロックされた前記比較対象信号の周波数と前記規定周波数との周波数差を算出し、該周波数差を前記周波数変動量として前記送信信号調整部に出力する周波数差算出部と、を有することを特徴とする通信装置が提供される。
【0012】
さらに、上記目的を達成するため、本発明によると、飛翔体に搭載され衛星と通信を行う通信装置であって、
前記衛星に対し送信信号を送信する送信部と、
ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量を求める周波数変動量取得部と、
前記衛星から見た前記送信信号の周波数が規定周波数となるように、前記周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整する送信信号調整部と、を備えることを特徴とする通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によると、飛翔体側の周波数制御により、飛翔体からの送信信号を所定の規定周波数で衛星が受信できる。即ち、ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量を求め、前記衛星から見た前記送信信号の周波数が規定周波数となるように、前記周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整するので、飛翔体からの送信信号を所定の規定周波数で衛星が受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態による通信装置の構成部図である。
【図2】本発明の第2実施形態による通信装置の構成部図である。
【図3】本発明の第3実施形態による通信装置の構成部図である。
【図4】周波数弁別器の特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による通信装置10の概略構成を示す。通信装置10は、飛翔体に搭載され衛星20(例えば、インマルサット通信衛星)と通信を行うために、衛星20からの変調信号を受信信号として受信する受信部3と、前記受信信号に基づいて、該受信信号を復調するための復調信号を出力するPLL(位相同期回路)4と、衛星20に対し送信信号を送信する送信部5とを有する。PLL4は、位相比較部7、VCO9から構成される。また、通信装置10は、さらに、周波数変動量取得部11と、受信周波数補正部12と、送信信号調整部13を備える。
【0017】
位相比較部7は、前記受信信号と後述の比較対象信号との位相差を示す差信号(即ち、制御電圧)を出力する。位相比較部7は、位相比較器7aとループフィルタ7bからなる。位相比較器7aは、前記受信信号と比較対象信号との位相差を、パルス状信号として出力する。ループフィルタ7bは、位相比較器7aからの前記パルス状信号から交流成分を取り除くことで、前記パルス状信号から制御電圧を生成して出力する。具体的には、ループフィルタ7bは、直前に出力した制御電圧から、現時点で入力された前記パルス状信号が示す前記位相差に応じた量だけ、増加または減少させた電圧を、現時点の制御電圧として出力する。
【0018】
VCO9は、前記位相比較部7からの前記制御電圧の大きさに応じた周波数の信号を前記比較対象信号として出力する電圧制御発振回路である。
【0019】
周波数変動量取得部11は、前記衛星20に対する前記飛翔体の相対位置、前記飛翔体の姿勢、前記飛翔体の衛星20に対する相対速度に基づいて、ドップラー効果による前記受信信号の周波数変動量推定値を算出する。
前記周波数変動量取得部11は、前記衛星20に対する前記飛翔体の相対位置を検知する位置検知部11aと、前記飛翔体の姿勢を検知する姿勢検知部11bと、前記飛翔体の速度(即ち、前記飛翔体の衛星20に対する相対速度)を検知する速度検知装置11cと、前記相対位置、前記姿勢および前記相対速度に基づいて、前記周波数変動量を算出する変動量算出部11dと、を備える。
なお、前記相対位置および前記速度は、3次元基準座標を用いて表現されてよい。速度検知部11cは、飛翔体に搭載された加速度センサによる加速度検出値、および、前記検知した姿勢から飛翔体の速度を算出してよい。位置検知部11aは、前記3次元基準座標における飛翔体の位置を、当該速度に基づいて算出してよい。また、速度検知部11cは、衛星20の既知の運動と前記加速度検出値と基づいて、前記飛翔体の衛星20に対する相対速度を算出する。
位置検知部11aおよび速度検知部11cは、任意のGPS衛星から受信したGPS信号を用いずに、飛翔体の相対位置および速度を検知する第1検知手段として構成してもよいし、第1検知手段を用いずに前記GPS信号に基づいて飛翔体の相対位置および速度を検知する第2検知手段として構成してもよいし、検知精度を高めるために、前記第1検知手段と第2検知手段を組み合わせて構成してもよい。前記姿勢検知部11bは、ジャイロセンサを利用して前記姿勢を検知してよい。
【0020】
受信周波数補正部12は、前記受信信号の周波数を前記周波数変動量だけ増加または減少させることで、前記受信信号の周波数がドップラー効果が無かった場合の周波数に近づくように、前記受信信号を補正する。受信周波数補正部12により補正された前記受信信号は、位相比較器7aに入力される。これにより、該補正された受信信号と前記比較対象信号との位相差を示す前記制御電圧が、位相比較部7からVCO9に入力される。PLL4の引き込み範囲は、その中央に、衛星20が送受信する信号の規定周波数(予め定められている)を含む。従って、補正された前記受信信号の周波数は、前記規定周波数に近い周波数になっており、前記引き込み範囲内となる。その結果、VCO9からの前記比較対象信号の周波数は、補正された前記受信信号の周波数と位相にロック(同期)される。
受信周波数補正部12は、例えば、ミキサーを用いて構成してよく、前記周波数変動量に応じて受信信号の周波数を補正できる。
【0021】
送信信号調整部13は、衛星20から見た前記送信信号の周波数が規定周波数となるように、変動量算出部11dが算出した前記周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整する。即ち、送信信号調整部13は、前記衛星20が前記規定周波数で前記送信信号を受信できるように、前記送信信号の周波数を調整する。具体的には、次の通りである。衛星20が受信する信号の周波数は規定周波数に予め定められている。仮に、送信部5が、前記規定周波数で送信信号を送信すると、衛星20は、前記規定周波数から前記周波数変動だけ変位した周波数で前記送信信号を受信する。そこで、送信部5は、前記規定周波数から前記周波数変動だけ逆に変位させた周波数で送信信号を送信することで、前記衛星20は、該送信信号を前記規定周波数で受信できる。
送信信号調整部13は、例えば、PLL周波数シンセサイザを用いて構成してよい。この場合、周波数シンセサイザの分周器をプログラマブルデバイダにすることにより、所望の精度(分解能)で、送信信号調整部13は、前記周波数変動量に応じて送信信号の周波数を調整できる。
【0022】
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態による通信装置10の概略構成を示す。通信装置10は、飛翔体に搭載され衛星20(例えば、インマルサット通信衛星)と通信を行うために、衛星20からの変調信号を受信信号として受信する受信部3と、前記受信信号に基づいて、該受信信号を復調するための復調信号を出力するPLL(位相同期回路)4と、衛星20に対し送信信号を送信する送信部5とを有する。PLL4は、位相比較部7、VCO9から構成される。また、通信装置10は、さらに、周波数変動量取得部14と送信信号調整部13を備える。
【0023】
位相比較部7は、第1実施形態の位相比較部7と同じ構成を有し、前記受信信号と後述の比較対象信号との位相差を示す差信号(即ち、制御電圧)を出力する。位相比較部7は、位相比較器7aとループフィルタ7bからなる。位相比較器7aは、前記受信信号と比較対象信号との位相差を、パルス状信号として出力する。ループフィルタ7bは、位相比較器7aからの前記パルス状信号から交流成分を取り除くことで、前記パルス状信号から制御電圧を生成して出力する。具体的には、ループフィルタ7bは、直前に出力した制御電圧から、現時点で入力された前記パルス状信号が示す前記位相差に応じた量だけ、増加または減少させた電圧を、現時点の制御電圧として出力する。
【0024】
VCO9は、前記位相比較部7から出力され後述の電圧調整部15により調整された制御電圧の大きさに応じた周波数の信号を前記比較対象信号として出力する電圧制御発振回路である。
【0025】
周波数変動量取得部14は、推定部11、電圧調整部15、および周波数差算出部17を有する。
推定部11の構成は、第1実施形態の周波数変動量取得部11と同じ構成である。即ち、推定部11は、前記衛星に対する前記飛翔体の相対位置、前記飛翔体の姿勢、前記飛翔体の速度に基づいて、ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量推定値(即ち、周波数変動量の推定値)を算出する。具体的には、推定部11は、前記衛星20に対する前記飛翔体の相対位置を検知する位置検知部11aと、前記飛翔体の姿勢を検知する姿勢検知部11bと、前記飛翔体の速度を検知する速度検知装置11cと、前記相対位置、前記姿勢および前記速度に基づいて、前記周波数変動量推定値を算出する変動量算出部11dと、を備える。
電圧調整部15は、前記推定部11が算出した前記周波数変動量推定値に基づいて、前記制御電圧を調整し、これにより、前記PLLの引き込み範囲が前記受信信号の周波数(該周波数はドップラー効果の影響を受けている)を含むように、該引き込み範囲をシフトさせる。電圧調整部15は、例えば、演算増幅器15aと、オフセット調整部15bとを有する。演算増幅器15aのプラス端子には、ループフィルタ7bからの制御電圧が入力され、演算増幅器15aのマイナス端子には、オフセット調整部15bからの調整電圧が入力され、これにより、調整された制御電圧が演算増幅器15aからVCO9へ出力される。なお、演算増幅器15aのマイナス端子に、ループフィルタ7bからの制御電圧が入力され、演算増幅器15aのプラス端子に、オフセット調整部15bからの調整電圧が入力されるようにしてもよい。
オフセット調整部15bは、変動量算出部11dが算出した前記周波数変動量推定値に基づいて、前記引き込み範囲が該周波数変動量推定値だけシフトするための前記調整電圧を前記マイナス端子に出力する。例えば、前記マイナス端子への入力電圧がゼロの時に、前記引き込み範囲は、その中央に前記規定周波数を含む。この場合、ドップラー効果により、前記受信信号の周波数が、前記引き込み範囲外となってしまう場合、前記受信信号の該周波数が前記引き込み範囲内となる方向に、正または負の前記調整電圧により、前記引き込み範囲が前記周波数変動量推定値だけシフトする。これにより、前記受信信号の前記周波数が、シフトされた前記引き込み範囲内となる。その結果、VCO9からの前記比較対象信号の周波数は、前記受信信号の前記周波数と位相にロックされる。
周波数差算出部17は、前記受信信号の周波数と位相にロックされた前記比較対象信号の周波数と前記規定周波数との周波数差を周波数変動量として算出する。
【0026】
送信信号調整部13は、衛星20から見た前記送信信号の周波数が規定周波数となるように、周波数差算出部17が算出した前記周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整する。即ち、送信信号調整部13は、前記衛星20が前記規定周波数で前記送信信号を受信できるように、前記送信信号の周波数を調整する。具体的には、次の通りである。衛星20が受信する信号の周波数は規定周波数に予め定められている。仮に、送信部5が、前記規定周波数で送信信号を送信すると、衛星20は、前記規定周波数から前記周波数変動だけ変位した周波数で前記送信信号を受信する。そこで、送信部5は、前記規定周波数から前記周波数変動だけ逆に変位させた周波数で送信信号を送信することで、前記衛星20は、該送信信号を前記規定周波数で受信できる。
送信信号調整部13は、例えば、PLL周波数シンセサイザを用いて構成してよい。この場合、周波数シンセサイザの分周器をプログラマブルデバイダにすることにより、所望の精度(分解能)で、送信信号調整部13は、周波数差算出部17が算出した前記周波数変動量に応じて送信信号の周波数を調整できる。
【0027】
[第3実施形態]
図3は、本発明の第3実施形態による通信装置10の概略構成を示す。第3実施形態では、周波数変動量取得部14の構成が、第2実施形態と異なり、他の構成は、第2実施形態と同様である。
【0028】
第3実施形態では、周波数変動量取得部14は、電圧調整部15と周波数差算出部17を有する。電圧調整部15は、演算増幅器15aと周波数弁別器15cとからなる。第3実施形態の演算増幅器15aは、第2実施形態の演算増幅器15aと同様の構成を有する。即ち、第3実施形態において、演算増幅器15aのプラス端子には、ループフィルタ7bからの制御電圧が入力され、演算増幅器15aのマイナス端子には、周波数弁別器15cからの調整電圧が入力され、これにより、前記調整電圧だけ調整された前記制御電圧が演算増幅器15aからVCO9へ出力される。なお、演算増幅器15aのマイナス端子に、ループフィルタ7bからの制御電圧が入力され、演算増幅器15aのプラス端子に、周波数弁別器15cからの調整電圧が入力されるようにしてもよい。
周波数弁別器15cは、受信部3が受信した前記受信信号の周波数と前記規定周波数との周波数差に応じた調整電圧を出力する。即ち、周波数弁別器15cは、図4のように、前記受信信号の周波数と前記規定周波数との周波数差に比例する調整電圧を出力する。周波数弁別器15cには、前記受信信号が入力される。図4において、横軸は、前記受信信号の周波数と前記規定周波数との周波数差を示し、原点が、前記受信信号の周波数が規定周波数f0である場合に相当する。図4において、縦軸は、前記調整電圧を示す。図4において、範囲Aで、周波数弁別器15cは、前記受信信号の周波数と前記規定周波数との周波数差に比例する前記調整電圧を出力する。
この構成で、第3実施形態の電圧調整部15aは、ループフィルタ7bからの前記制御電圧を前記調整電圧だけ変化させ、これにより、前記PLL4の引き込み範囲が前記受信信号の周波数を含むように、該引き込み範囲をシフトさせる。その結果、前記比較対象信号の周波数と位相が前記受信信号の周波数と位相にロックされる。
【0029】
第3実施形態の周波数差算出部17は、第2実施形態の周波数差算出部17と同様に、前記受信信号の周波数と位相にロックされた前記比較対象信号の周波数と前記規定周波数との周波数差を算出し、該周波数差を前記周波数変動量として前記送信信号調整部13に出力する。
【0030】
第3実施形態の他の構成は、第2実施形態と同じである。
【0031】
[第1、第2、第3実施形態による効果]
上述した第1〜第3実施形態による通信装置10では、前記衛星に対する前記飛翔体の相対位置、前記飛翔体の姿勢、前記飛翔体の速度に基づいて、ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量を算出し、前記衛星から見た前記送信信号の周波数が規定周波数となるように、前記周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整するので、飛翔体からの送信信号を所定の規定周波数で衛星が受信できる。
【0032】
また、第1〜第3実施形態において、VOC9からの出力信号、または、VCO9へ入力される前記制御電圧は復調信号となり、該復調信号に基づいて、衛星20からの変調信号を復調(例えば、FM復調)できる。
【0033】
また、第2実施形態では、まず、前記衛星20に対する前記飛翔体の相対位置、前記飛翔体の姿勢、前記飛翔体の速度に基づいて、ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量推定値を算出し、次いで、この周波数変動量推定値に基づいて、前記制御電圧を調整し、これにより、前記PLLの引き込み範囲が前記受信信号の周波数を含むように、該引き込み範囲をシフトさせる。その結果、前記受信信号の周波数にロックされた前記比較対象信号の周波数と前記規定周波数との周波数差を算出するので、前記衛星20が前記規定周波数で前記変調信号を送信している場合に、該周波数差は、ドップラー効果による高精度な周波数変動量となる。高精度な周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整するので、衛星20は、高精度で、前記規定周波数の前記送信信号を受信できる。よって、前記衛星において、ドップラー効果による周波数変動を補償する必要がなくなる。
【0034】
また、第3実施形態では、まず、周波数弁別器15cが、前記受信信号の周波数と前記規定周波数との周波数差に応じた調整電圧を出力し、次いで、この調整電圧だけ、前記制御電圧を調整し、これにより、前記PLLの引き込み範囲が前記受信信号の周波数を含むように、該引き込み範囲をシフトさせる。その結果、前記受信信号の周波数にロックされた前記比較対象信号の周波数と前記規定周波数との周波数差を算出するので、前記衛星20が前記規定周波数で前記変調信号を送信している場合に、該周波数差は、ドップラー効果による高精度な周波数変動量となる。高精度な周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整するので、衛星20は、高精度で、前記規定周波数の前記送信信号を受信できる。よって、前記衛星において、ドップラー効果による周波数変動を補償する必要がなくなる。
【0035】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
3 受信部、4 PLL、5 送信部、
7 位相比較部、7a 位相比較器、7b ループフィルタ、
9 VCO、10 通信装置、
11 周波数変動量取得部、又は推定部、
12 受信周波数補正部、
11a 位置検知部、11b 姿勢検知部、11c 速度検知部、
13 送信信号調整部、14 周波数変動量取得部、15 電圧調整部、
17 周波数差算出部、20 衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体に搭載され衛星と通信を行う通信装置であって、
前記衛星に対し送信信号を送信する送信部と、
ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量を求める周波数変動量取得部と、
前記衛星から見た前記送信信号の周波数が規定周波数となるように、前記周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整する送信信号調整部と、
前記衛星からの変調信号を受信信号として受信する受信部と、
前記受信信号に基づいて、該受信信号を復調するための復調信号を出力するPLLと、を有し、
前記PLLは、
前記受信信号と比較対象信号との位相差を示す制御電圧を出力する位相比較部と、
前記制御電圧の大きさに応じた周波数の信号を前記比較対象信号として出力するVCOと、を有し、
前記周波数変動量取得部は、
前記受信信号の周波数と前記規定周波数との周波数差に応じた調整電圧を出力する周波数弁別器と、
前記制御電圧を前記調整電圧だけ変化させ、これにより、前記PLLの引き込み範囲が前記受信信号の周波数を含むように、該引き込み範囲をシフトさせる電圧調整部と、
前記受信信号の周波数にロックされた前記比較対象信号の周波数と前記規定周波数との周波数差を算出し、該周波数差を前記周波数変動量として前記送信信号調整部に出力する周波数差算出部と、を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
飛翔体に搭載され衛星と通信を行う通信装置であって、
前記衛星に対し送信信号を送信する送信部と、
前記衛星に対する前記飛翔体の相対位置、前記飛翔体の姿勢、前記飛翔体の速度に基づいて、ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量を求める周波数変動量取得部と、
前記衛星から見た前記送信信号の周波数が規定周波数となるように、前記周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整する送信信号調整部と、を備え、
前記衛星からの変調信号を受信信号として受信する受信部と、
前記受信信号に基づいて、該受信信号を復調するための復調信号を出力するPLLと、を有し、
前記PLLは、
前記受信信号と比較対象信号との位相差を示す制御電圧を出力する位相比較部と、
前記制御電圧の大きさに応じた周波数の信号を前記比較対象信号として出力するVCOと、を有し、
前記周波数変動量取得部は、
前記衛星に対する前記飛翔体の相対位置、前記飛翔体の姿勢、前記飛翔体の速度に基づいて、ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量推定値を算出する推定部と、
前記周波数変動量推定値に基づいて、前記制御電圧を調整し、これにより、前記PLLの引き込み範囲が前記受信信号の周波数を含むように、該引き込み範囲をシフトさせる電圧調整部と、
前記受信信号の周波数にロックされた前記比較対象信号の周波数と前記規定周波数との周波数差を算出し、該周波数差を前記周波数変動量として前記送信信号調整部に出力する周波数差算出部と、を有することを特徴とする通信装置。
【請求項3】
飛翔体に搭載され衛星と通信を行う通信装置であって、
前記衛星に対し送信信号を送信する送信部と、
前記衛星に対する前記飛翔体の相対位置、前記飛翔体の姿勢、前記飛翔体の速度に基づいて、ドップラー効果による前記送信信号の周波数変動量を求める周波数変動量取得部と、
前記衛星から見た前記送信信号の周波数が規定周波数となるように、前記周波数変動量に基づいて、前記送信信号の周波数を調整する送信信号調整部と、を備えることを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−24158(P2011−24158A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169747(P2009−169747)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【Fターム(参考)】