説明

通気管の製造方法

【課題】
解決しようとする課題は、自動車のエンジン吸気音を熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される自動車用吸気管に付属するレゾネータの共鳴箱内で共鳴させることによって音響エネルギーを減衰させるためには、該自動車用吸気管に付属する該レゾネータを欠かすことができないという点である。
【解決手段】
分割金型内に該分割金型とは独立して作動するようにセットされたスライドコアにあらかじめ嵌合、係止され、与圧によって形状を保持されている袋状ゴム体に吸音材を被せ、次いで該吸音材付き袋状ゴム体、及び該スライドコアを内包するようにパリソンを垂下させて該分割金型を型締めし、次いで該パリソン内及び該袋状ゴム体内に同時に圧縮空気を吹き込んで賦形したのち、該パリソン内及び該袋状ゴム体内の内圧を解放し、該パリソン及び該吸音材から該袋状ゴム体と該スライドコアを抜去して該分割金型を開き、該パリソンを離型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音機能を有する通気管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸音機能を有する通気管に関する従来技術としては特許文献1に開示されているようなものがある。
【0003】
しかし特許文献1に開示されているような方法では、ダクト(ここでは吸気管を意味する)とレゾネータの結合作業を不要にできるものの、レゾネータそのものを省略できないという欠点があった。
【0004】
また、特許文献2には弾性突起シートと不織布の貼着物を吸気管に内設して吸音を図るという技術が開示されているが、弾性突起シートと不織布の貼着物を後付けするという工程を要するため高価になるという欠点があった。
【0005】
以下、図によって説明する。図1は熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される従来のレゾネータ付き自動車用吸気管1の斜視図である。2はレゾネータ、11,12は開口部である。
【0006】
即ち、自動車のエンジン吸気音を該レゾネータ2の共鳴箱内で共鳴させることによって音響エネルギーを減衰させるためには該吸気管1に付属する該レゾネータ2を欠かすことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−217511号公報
【特許文献2】特開2009−47140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、自動車のエンジン吸気音を熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される自動車用吸気管に付属するレゾネータの共鳴箱内で共鳴させることによって音響エネルギーを減衰させるためには、該自動車用吸気管に付属する該レゾネータを欠かすことができないという点である。
【0009】
また、弾性突起シートと不織布の貼着物を吸気管に内設して吸音を図るという技術の課題は弾性突起シートと不織布の貼着物を後付けするという工程を要するため高価になるという点である。
本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される通気管の製造方法であって、分割金型内に該分割金型とは独立して作動するようにセットされたスライドコアにあらかじめ嵌合、係止され、与圧によって形状を保持されている袋状ゴム体に吸音材を被せ、次いで該吸音材付き袋状ゴム体、及び該スライドコアを内包するようにパリソンを垂下させて該分割金型を型締めし、次いで該パリソン内及び該袋状ゴム体内に同時に圧縮空気を吹き込んで賦形したのち、該パリソン内及び該袋状ゴム体内の内圧を解放し、該パリソン及び該吸音材から該袋状ゴム体と該スライドコアを抜去して該分割金型を開き、該パリソンを離型することを最も主要な特徴とする。
【0011】
また、上記通気管が吸気管であることを第2の主要な特徴とする。
【0012】
また、上記通気管が空調用ダクトであることを第3の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明を自動車用吸気管に適用すればレゾネータや、弾性突起シートと不織布の貼着物を吸気管に設定せずに吸音効果をもたせることができるという効果がある。
【0014】
また、本発明を自動車用空調ダクトに適用すれば、エンジンルームの振動音が該ダクトの外壁を透過し、該ダクトを通じて透過音が車室に伝わることや、空調ユニットの運転音が該ダクトを伝わって車室に響くことを防ぐことができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のレゾネータ付き自動車用吸気管の斜視図
【図2】本発明に係る自動車用吸気管の斜視図
【図3】図2のA−A断面を表す部分縦断面図
【図4】図2のA−A断面を表す部分縦断面図
【図5】図2のA−A断面を表す部分縦断面図
【図6】図2のA−A断面を表す部分縦断面図
【図7】図2のA−A断面を表す部分縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される通気管に吸音効果をもたせるという目的を、分割金型内に該分割金型とは独立して作動するようにセットされたスライドコアにあらかじめ嵌合、係止され、与圧によって形状を保持されている袋状ゴム体に吸音材を被せ、次いで該吸音材付き袋状ゴム体、及び該スライドコアを内包するようにパリソンを垂下させて該分割金型を型締めし、次いで該パリソン内及び該袋状ゴム体内に同時に圧縮空気を吹き込んで賦形したのち、該パリソン内及び該袋状ゴム体内の内圧を解放し、該パリソン及び該吸音材から該袋状ゴム体と該スライドコアを抜去して該分割金型を開き、該パリソンを離型することによって、レゾネータや、弾性突起シートと不織布の貼着物を設定することなく実現した。
【実施例1】
【0017】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施例を示す熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される自動車用吸気管1の斜視図である。11,12は開口部であり、該吸気管1には従来例のようなレゾネータは付属しない。
【0019】
尚、該自動車用吸気管1に適用される該熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。
【0020】
図3は図2のA−A断面を表す、分割金型(図示せず)内に該分割金型とは独立して作動するようにセットされたスライドコア21の部分縦断面図である。31は該スライドコア21に係止部32によって嵌合、係止された袋状ゴム体である。該袋状ゴム体31は成形用中子として所定の形状を保持できるよう通気孔22を通じて与圧されている。以下、図4ないし図7も図3と同じく図2のA−A断面を表す部分縦断面図である。
【0021】
なお、該袋状ゴム体31の材質としてはフッ素ゴムやシリコンゴムのように耐熱性があって尚且つ柔軟性のあるものが望ましい。
【0022】
次に本発明の作用、工程を説明する。先ず、予め所定の形状に形成された吸音材23をあたかも人間の膝にスポーツ用サポーターを装着するように該袋状ゴム体31に被せる。この作業は手作業でも自動機によってもどちらでもよい。
【0023】
該吸音材23の材料としては織布、不織布、織物やペットフェルト等、吸音機能を有するものであれば何でもよい。
【0024】
また、該吸音材23に適用される原料繊維としてはポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリアミド、レーヨン、アセテート、綿、麻、絹、羊毛等の化学繊維や天然繊維等、繊維であれば何でも良い。
【0025】
次いで該吸音材23付き該袋状ゴム体31と該スライドコア21を内包するようにパリソン30を垂下させるが、この状態を図4に示す。
【0026】
次いで該分割金型を型締めし、該パリソン30内に圧縮空気を吹き込んで賦形した状態を図5に示す。同時に、同圧力またはそれ以上の圧縮空気を該通気孔22を通じて該袋状ゴム体31内にも吹き込む。この工程により、該パリソン30の内壁に該吸音材23がしっかりと付着する。尚、図5では分かりやすくするために捨袋や成形バリを省略して表示している。
【0027】
該パリソン30が充分に冷却固化したのち、該パリソン30の内圧を解放すると同時に該袋状ゴム体31の内圧を該通気孔22を通じて解放すると、該袋状ゴム体31は図6に示すように該吸音材23から剥離してしぼむ。
【0028】
そののち該分割金型から該スライドコア21を抜去するが、同時に該袋状ゴム体31も抜去、脱型され、該吸音材23は該パリソン30の内壁にしっかりと付着したまま、該パリソン30内に残留する。この状態を図7に示す。
【0029】
その後該分割金型を開き、該パリソン30を離型する。
【0030】
以上の工程によって製造された該吸気管1は内壁に該吸音材23が貼付されているため、該吸気管1を自動車に取り付け、エンジンを始動させるとエンジン吸気音が該吸気管1を伝わって来るが、該吸音材23が上記吸気音を吸収するので該吸気管1の外部に漏れる音は非常に小さくなる。
【0031】
以上実施例1に述べたように本発明を自動車用吸気管に適用すればレゾネータや、弾性突起シートと不織布の貼着物を吸気管に設定せずに吸音効果をもたせることができるという効果がある。
【実施例2】
【0032】
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される自動車用空調ダクトの場合はエンジンルームの振動音が該ダクトの外壁を透過し該ダクトを通じて透過音が車室に伝わることや、空調ユニットの運転音が該ダクトを伝わって車室に響くことが問題になっているが、該ダクトの内壁に吸音材を貼付すれば上記透過音を吸収することができる。
【0033】
以上実施例2に述べたように本発明を自動車用空調ダクトに適用すれば、エンジンルームの振動音が該ダクトの外壁を透過し、該ダクトを通じて透過音が車室に伝わることや、空調ユニットの運転音が該ダクトを伝わって車室に響くことを防ぐことができるという効果もある。
【0034】
また、通常の成形用中子はアンダーカットがあるとそのままの構造では抜けないが、本発明によれば柔軟な袋状ゴム体の内圧を解放、しぼませることによりアンダーカットの有無に関わらず容易に成形用中子を脱型することができるという効果もある。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上記各実施例では熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される自動車用吸気管や、自動車用空調ダクトを例にあげて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、音源に通じる、または音源近傍を通る自動車用またはそれ以外の一般の通気管に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 吸気管
2 レゾネータ
11,12 開口部
21 スライドコア
22 通気孔
23 吸音材
30 パリソン
31 袋状ゴム体
32 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される通気管の製造方法であって、分割金型内に該分割金型とは独立して作動するようにセットされたスライドコアにあらかじめ嵌合、係止され、与圧によって形状を保持されている袋状ゴム体に吸音材を被せ、次いで該吸音材付き袋状ゴム体、及び該スライドコアを内包するようにパリソンを垂下させて該分割金型を型締めし、次いで該パリソン内及び該袋状ゴム体内に同時に圧縮空気を吹き込んで賦形したのち、該パリソン内及び該袋状ゴム体内の内圧を解放し、該パリソン及び該吸音材から該袋状ゴム体と該スライドコアを抜去して該分割金型を開き、該パリソンを離型することを特徴とする通気管の製造方法
【請求項2】
請求項1における通気管が吸気管であることを特徴とする請求項1記載の通気管の製造方法
【請求項3】
請求項1における通気管が空調用ダクトであることを特徴とする請求項1記載の通気管の製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−11515(P2011−11515A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159667(P2009−159667)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】