説明

通話システム、車載装置、及び交換機

【課題】車両を運転中のドライバが互いに通話を行う場合において、双方のドライバが余裕を持って通話を行うことができる通話システムを提供する。
【解決手段】ハンズフリー装置は、自車両(着信側車両)における現在から未来にかけてのワークロードの変化を示すワークロード情報を生成する(S405)。そして、ハンズフリー装置に接続された携帯電話に、他の車両(発信側車両)におけるワークロード情報の受信を伴う着呼があると、着信側車両と発信側車両との双方でワークロードが同時に低下する同時低下時期を検知し(S415)、同時低下時期の到来後に、上記着呼のあったことを報知する(S425)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信回線を利用した通話を行うための通話システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
カーオーディオ用のスピーカや車内に取り付けられたマイク等を利用した車載用のハンズフリー装置が知られている。このハンズフリー装置を用いることで、ドライバは携帯電話を手に持つことなく通話を行うことができ、運転中であってもより安全に携帯電話による通話を行うことができる。
【0003】
しかしながら、交差点の右左折や車線変更等といった注意力を要する運転操作が行われる場合には、ドライバは運転に集中する必要があり、ハンズフリー装置を用いたとしても余裕を持って携帯電話による通話を行うことができない。
【0004】
ここで、特許文献1には、車両の走行予定経路に基づき運転中のドライバのワークロード(認知負荷)を予測し、ワークロードが低下する時期にドライバに対し各種情報を提供することが記載されている。この発明を車載用のハンズフリー装置に適用し、注意力を要する運転操作によりドライバのワークロードが上昇している時に携帯電話への着信があった場合には、ワークロードが低下する時期が到来するまで着信音の鳴動を遅延させることが考えられる。こうすることにより、ドライバに対し、ワークロードが低い時期にハンズフリー装置を用いての携帯電話での通話を行わせることができるため、ドライバに余裕を持った通話を行わせることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−82940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明を車載用ハンズフリー装置に適用したとしても、発信元が他の車両を運転するドライバの携帯電話である場合には、発信元のドライバのワークロードを考慮することなく着信音の鳴動開始時期が決定される。このため、発信元のドライバは、余裕を持った通話をできるとは限らない。
【0007】
本願発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、車両を運転中のドライバが互いに通話を行う場合において、双方のドライバが余裕を持って通話を行うことができる通話システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑みてなされた請求項1に記載の通話システムは、無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための通信端末に接続される車載装置を複数有し、通話の開始を要求する通話要求を発信する通信端末を発信側端末、該発信側端末に接続される車載装置を発信側装置とすると共に、発信側端末からの通話要求が着信する通信端末を着信側端末、該着信側端末に接続される車載装置を着信側装置とし、さらに、発信側装置が搭載された車両を発信側車両、着信側装置が搭載された車両を着信側車両とする。
【0009】
そして、発信側装置は、予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる認知負荷であるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、発信側車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間である発信側走行期間における発信側車両の運転者のワークロードの変動を示す発信側ワークロード情報を生成する。また、発信側端末から着信側端末に対し通話要求が発信される際に、発信後の発信側走行期間における発信側ワークロード情報を、発信側端末を介して着信側端末に送信する。
【0010】
一方、着信側装置は、相関データ、及び、着信側車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間である着信側走行期間における着信側車両の運転者のワークロードの変動を示す着信側ワークロード情報を生成し、着信側端末に発信側ワークロード情報の受信を伴う通話要求の着信があると、該着信側端末から該発信側ワークロード情報を取得し、取得した発信側ワークロード情報と、着信の後の着信側走行期間における着信側ワークロード情報とに基づき、発信側車両及び着信側車両の双方の運転者のワークロードが同時に低下する同時低下時期を検知し、検知した同時低下時期が到来した後に、着信があったことを報知する。
【0011】
こうすることにより、発信側車両と着信側車両の双方において運転者のワークロードが低下する期間に、発信側端末と着信側端末とによる通話を行わせることができる。このため、発信側車両と着信側車両の双方の運転者に、余裕を持って通話を行わせることが可能となる。
【0012】
しかしながら、着信側車両のワークロードが低下するまでに時間を要する場合等には、発信側端末の利用者は、長時間にわたり通話の開始を待たされるおそれがある。
そこで、請求項2に記載の通話システムでは、着信側装置は、着信側端末に発信側ワークロード情報の受信を伴う着信があると、さらに、着信側端末を介して、該着信の後の着信側走行期間における着信側ワークロード情報を発信側端末に送信する。また、発信側装置は、発信側端末が着信側ワークロード情報を受信すると、発信側端末から着信側ワークロード情報を取得し、取得した着信側ワークロード情報と、通話要求の発信後の発信側走行期間における発信側ワークロード情報とに基づき同時低下時期を検知し、該同時低下時期の到来までに要する時間を報知する。
【0013】
こうすることにより、発信側端末を利用する運転者等は、発信側車両と着信側車両の双方のワークロードが低下する時期が到来するまでどの程度待つ必要があるかを把握することができる。このため、この待ち時間が余りに長い場合には通話を断念することを選択するということも可能となり、通話システムの利便性を向上させることができる。
【0014】
なお、請求項1に記載の通話システムを構成する車載装置である発信側装置や着信側装置を単体で市場に流通させても良い。
すなわち、請求項3に記載されているように、無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための通信端末に接続される、請求項1の発信側装置に相当する車載装置を、次のように構成しても良い。すなわち、該車載装置は、予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる認知負荷であるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、当該車載装置が搭載された発信側車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間における発信側車両の運転者のワークロードの変動を示す発信側ワークロード情報を生成する発信側生成手段と、当該車載装置に接続される通信端末である発信側端末から、他の通信端末である着信側端末に対し、通話の開始を要求する通話要求が発信される際に、発信後の走行期間における発信側ワークロード情報を、発信側端末を介して着信側端末に送信する発信側送信手段を備えていても良い。
【0015】
また、請求項4に記載されているように、無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための通信端末に接続される、請求項1に記載の着信側装置を、次のように構成しても良い。すなわち、車両が走行予定経路を走行する期間における、該車両の運転者の認知負荷であるワークロードの変動を示す情報を、ワークロード情報とすると共に、当該車載装置に接続された通信端末を着信側端末、該着信側端末に対し通話の開始を要求する通話要求を発信する通信端末を発信側端末とする。そして、該車載装置は、予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、当該車載装置が搭載された着信側車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間における着信側車両の運転者のワークロード情報である着信側ワークロード情報を生成する着信側生成手段と、着信側端末に、発信側端末から、着信側車両とは別の車両である発信側車両についてのワークロード情報である発信側ワークロード情報の受信を伴う通話要求の着信があると、着信側端末から発信側ワークロード情報を取得する取得手段と、を備えていても良い。また、取得した発信側ワークロード情報と、着信の後の走行期間における着信側ワークロード情報とに基づき、発信側車両及び着信側車両の双方の運転者のワークロードが同時に低下する同時低下時期を検知する着信側検知手段と、同時低下時期が到来した後に着信があったことを報知する着信側報知手段と、を備えていても良い。
【0016】
発信側装置や着信側装置を上述のようにして単体で構成して流通しても、上述の通信端末に接続すると共に、対応する着信側装置や発信側装置と組み合わせることで、同様の効果を得ることができる。
【0017】
また、通話システムは、次のように構成されていても良い。
すなわち、請求項5に記載されているように、無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための複数の通信端末と、二つの通信端末による通話を開始させる交換機とを有すると共に、それぞれの通信端末に接続される車載装置を有する通話システムであっても良い。
【0018】
そして、車載装置は、予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる認知負荷であるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、当該車載装置が搭載された車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間における車両の運転者のワークロードの変動を示すワークロード情報を生成すると共に、当該車載装置に接続される通信端末を介してワークロード情報を交換機に送信しても良い。
【0019】
また、交換機は、通信端末からワークロード情報を受信すると共に、通信端末である発信側端末から、該発信側端末とは別の通信端末である着信側端末との間の通話の開始を要求する通話要求を受信すると、発信側端末に接続される車載装置にて生成されたワークロード情報と、着信側端末に接続される車載装置にて生成されたワークロード情報とに基づき、これらの車載装置が搭載される2台の車両において、双方の運転者のワークロードが同時に低下する同時低下時期を検知し、同時低下時期が到来すると、通話要求を着信側端末に着信させても良い。
【0020】
このような構成を有する場合であっても、発信側車両と着信側車両の双方において運転者のワークロードが低下する期間に、発信側端末と着信側端末とによる通話を行わせることができる。このため、発信側車両と着信側車両の双方の運転者に、余裕を持って通話を行わせることが可能となる。
【0021】
なお、請求項6に記載されているように、交換機は、同時低下時期が到来しておらず、通話要求の着信側端末への着信を遅延させている場合に、発信側端末に対し、着信側端末への通話要求の着信を遅延していることを示す遅延情報を送信し、車載装置は、発信側端末を介して遅延情報を受信すると、着信側端末への通話要求の着信が遅延している旨を報知しても良い。
【0022】
こうすることにより、発信側端末を利用する運転者等に対し、着信側端末への通話要求の着信が遅延していることを知らせることができ、通話システムの利便性を向上させることができる。
【0023】
なお、請求項5に記載の通話システムを構成する車載装置や交換機を単体で市場に流通させても良い。
すなわち、請求項7に記載されているように、無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための通信端末に接続される車載装置であって、予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる認知負荷であるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、当該車載装置が搭載された車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間における車両の運転者のワークロードの変動を示すワークロード情報を生成する車載装置生成手段と、二つの通信端末による通話を開始させる交換機に対し、当該車載装置に接続される通信端末を介してワークロード情報を送信する車載装置送信手段と、を備えていても良い。
【0024】
また、請求項8に記載されているように、車両が走行予定経路を走行する期間における、該車両の運転者の認知負荷であるワークロードの変動を示す情報を、ワークロード情報とし、無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための複数の通信端末に関して、二つの通信端末による通話を開始させる交換機を次のように構成しても良い。
【0025】
すなわち、この交換機は、通信端末から、該通信端末に接続された車載装置にて生成されたワークロード情報を受信する交換機受信手段を備えていても良い。また、通信端末である発信側端末から、該発信側端末とは別の通信端末である着信側端末に対し通話の開始を要求する通話要求を受信すると、発信側端末に接続される車載装置にて生成されたワークロード情報と、着信側端末に接続される車載装置にて生成されたワークロード情報とに基づき、これらの車載装置が搭載される2台の車両において、運転者のワークロードが同時に低下する同時低下時期を検知する交換機検知手段と、同時低下時期が到来すると、通話要求を着信側端末に着信させる着信時期制御手段と、を備えていても良い。
【0026】
車載装置や交換機を単体で構成して流通しても、上述の通信端末に接続すると共に、対応する交換機や車載装置と組み合わせることで、同様の効果を得ることができる。
また、次のようにして、発信側車両のみのワークロードの変化に基づき、通話要求の発信時期を調整しても良い。
【0027】
すなわち、請求項9に記載されているように、無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための通信端末に接続される車載装置であって、予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる認知負荷であるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、当該車載装置が搭載される車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間における車両の運転者のワークロードの変動を示すワークロード情報を生成する生成手段を備えていても良い。さらに、該車載装置は、当該車載装置に接続される通信端末である発信側携帯端末と他の通信端末との間の通話の開始を要求する通話要求を、発信側携帯端末から発信する旨の指示がなされると、該通話要求の発信後の走行期間におけるワークロード情報に基づき、車両の運転者のワークロードが低下する低下時期を検知する検知手段と、低下時期が到来すると、発信側携帯端末に対し通話要求を発信させる発信手段と、を備えていても良い。
【0028】
こうすることにより、通信端末から通話要求を発信する運転者等に対し、該運転者のワークロードが低下する期間に通話を行わせることができ、該運転者に余裕を持って通話を行わせることが可能となる。
【0029】
なお、請求項10に記載されているように、車載装置は、低下時期が到来するまでに要する時間を報知する報知手段をさらに備えていても良い。
こうすることにより、通信端末から通話要求を発信する運転者等は、通話要求が発信されるまでにどの程度の時間を要するかを把握することができる。このため、この時間が余りに長い場合には通話を断念することを選択するということも可能となり、車載装置の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第一実施形態の通話システムと、該通話システムを構成するハンズフリー装置のブロック図である。
【図2】ワークロードの推定についての説明図である。
【図3】発信処理についてのフローチャートである。
【図4】着信処理についてのフローチャートである。
【図5】第二実施形態の通話システムと、該通話システムを構成する交換機のブロック図である。
【図6】通話開始処理についてのシーケンス図である。
【図7】発信開始処理についてのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0032】
[第一実施形態]
[構成の説明]
まず、第一実施形態の通話システムについて説明する。図1(a)は、第一実施形態の通話システム1の構成を示すブロック図である。この通話システム1は、携帯電話を手に持たない状態での該携帯電話による通話(ハンズフリー通話)を行うための複数の車載システム100から構成されている。
【0033】
車載システム100は、無線通信網200を利用した通話や各種情報の送受信が可能な携帯電話20と、携帯電話20と通信を行うと共に、図示しないスピーカやマイクを利用してハンズフリー通話を実現する車載用のハンズフリー装置10と、車内LAN40を介してハンズフリー装置10に接続されたナビゲーション装置30と、を有している。
【0034】
また、ハンズフリー装置10は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらを接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、ROMに記憶されたプログラムに従い当該ハンズフリー装置10を統括制御する制御部11と、例えば、Bluetooth(登録商標)等により携帯電話20との通信を行う通信部12と、車内LAN40を介してナビゲーション装置30等と通信を行う車内LAN通信部13と、HDDやフラッシュメモリ等の記憶保持動作が不要なデバイスから構成され、各種情報を記憶することができる記憶部14と、を有している。
【0035】
なお、詳細については後述するが、このハンズフリー装置10は、自車両の運転者と、通話相手となる他の車両の運転者の双方において、運転操作により運転者に生じる認知負荷であるワークロードが一定期間にわたり低下する同時低下時期にハンズフリー通話を開始するように構成されている。このため、制御部11のプログラムは、現在から未来にかけての自車両の運転者のワークロードの変動を推定するワークロード推定部11−2と、携帯電話20に着呼があった場合に、上述の同時低下時期にハンズフリー通話を開始させるため、着呼を報知する時期を調整する着信制御部11−1とを有している。
【0036】
また、ハンズフリー装置10は、車内LAN40を介して、車両に搭載された他の装置から、車両のブレーキ状態,ウインカー状態,舵角,車速,加速度等といった各種車両情報を取得する。そして、この車両情報に基づき、現在のワークロードを計測する。
【0037】
[動作の説明]
次に、第一実施形態の通話システム1の動作について説明する。既に述べたように、この通話システム1は、ある車載システム100から他の車載システム100への通話を行う際、車載システム100が搭載された双方の車両の運転者のワークロードが一定期間にわたり低下する同時低下時期に通話が開始されるよう構成されている。このため、各車載システム100では、ハンズフリー装置10により、現在から未来にかけての期間における自車両の運転者のワークロードの変動を推定する処理が行われる。また、一方の車載システム100の携帯電話20から他方の車載システム100の携帯電話20に電話がかけられた場合には、推定結果に基づき、双方の車載システム100が搭載された車両についての同時低下時期が検知される。そして、着呼のあった他方の車載システム100では、この同時低下時期に通話が開始されるよう、同時低下時期が到来した後に着呼が報知される。
(1)ワークロードの推定について
まず、ハンズフリー装置10のワークロード推定部11−2にて行われるワークロードの推定について説明する。
【0038】
ハンズフリー装置10の記憶部14には、予め定められた経路を自車両が走行する際の運転操作と、該運転操作により運転者に生じるワークロードとの相関関係を示す相関データが記憶されている。運転操作とは、具体的には、道路を直進する運転操作,所定半径のカーブを曲がる運転操作,交差点を右折する運転操作,交差点を左折する運転操作,本線に合流する運転操作等といったものであり、相関データには、各運転操作により運転者に生じるワークロードが設定されている。なお、該運転操作が行われる道路の種類(例えば、高速道路か一般道路か等といった道路の種別や、道路の車線の数や、道路の幅等)に応じてワークロードが個別に設定されていても良い。
【0039】
そして、ハンズフリー装置10の制御部11は、車内LAN40を介して、ナビゲーション装置30から、自車両の走行予定経路を示す走行予定経路データを取得する。この走行予定経路とは、例えば、通勤の際に走行する経路等といった、過去の走行履歴から推定された自車両が走行する可能性が高い経路であっても良い。また、ナビゲーション装置30により特定の目的地までの経路案内が行われている場合であれば、経路案内を行っている目的地までの経路であっても良い。また、この走行予定経路データは、走行予定経路のみならず、該走行予定経路を構成する道路の種類を示していても良い。
【0040】
走行予定経路データを受信した制御部11は、走行予定経路データと相関データとに基づき、自車両が走行予定経路を走行する走行期間におけるワークロードの変化を推定し、推定した結果を示すワークロード情報を生成する。
【0041】
具体的には、例えば、走行予定経路データが図2(a)に記載の走行予定経路を示す場合であれば、A〜F地点までの走行期間におけるワークロードの変化として、図2(b)のグラフが示す推定結果が得られる。図2(a)の走行予定経路は、A〜D地点を直進し、D地点で右折した後、再度D〜F地点を直進する経路となっている。A〜C地点は直進であるため、ワークロードは10〜20の低い値となり、D地点では右折によりワークロードの値が60まで上昇する。そして、E,F地点は再び直進となるので、ワークロードが10〜20の低い値となる。なお、B,C,E地点は、A,F地点よりも道幅が狭いため、同じ直進でもワークロードがやや高くなっている。
【0042】
また、例えば、走行予定経路データが図2(c)に記載の走行予定経路を示す場合であれば、A〜F地点までの走行期間におけるワークロードの変化として、図2(d)のグラフが示す推定結果が得られる。図2(c)の走行予定経路は、A〜B地点は自車両が直進し、B地点で右折した後、再度B〜E地点を直進し、そして、E地点で左折した後、再度E〜F地点を直進する。A地点は直線ではあるが一車線道路なのでワークロードは60という高い値となり、B地点での右折によりさらにワークロードが上昇して70となる。C,D地点は直進となるので、ワークロードが10〜20の低い値となり、E地点での左折により再度ワークロードの値が上昇して50となる。また、F地点は直進となるため、再度下降してワークロードの値が20となる。
【0043】
なお、仮に、通話を行う二つの車載システム100にて推定されたワークロードが、図2(b),(d)に対応するものであった場合には、C地点、或いはF地点を通過する時期が同時低下時期として検知される。
(2)通話開始時期の調整について
次に、ある車載システム100と他の車載システム100との間のハンズフリー通話の開始時期がどのように調整されるかについて説明する。ある車載システム100(発信側車載システムとも記載)における携帯電話20(発信側携帯電話とも記載)から、他の車載システム100(着信側車載システムとも記載)における携帯電話20(着信側携帯電話とも記載)に対し電話がかけられ、これらの車載システム100によるハンズフリー通話が開始される際には、以下の処理が行われる。
(2−1)発信処理について
まず、発信側車載システムにおいて、ハンズフリー通話の開始時期を調整するために行われる発信処理について、図3に記載のフローチャートを用いて説明する。なお、本処理は、発信側車載システムが搭載された車両(発信側車両とも記載)の運転開始時に開始される処理である。
【0044】
S305では、発信側車載システムのハンズフリー装置10(発信側ハンズフリー装置)の制御部11は、(1)で説明した態様で、ナビゲーション装置30から受信した走行予定経路データに基づき、発信側車両が、該走行予定経路データが示す走行予定経路を走行する発信側走行期間におけるワークロードの変動を推定する。そして、S310に処理を移行する。
【0045】
S310では、制御部11は、発信側ハンズフリー装置、或いは発信側携帯端末に対し、着信側携帯電話への発呼を要求する操作が行われたか否かを判定する。そして、肯定判定の場合には(S310:Yes)、S315に処理を移行し、否定判定の場合には(S310:No)、S305に処理を移行する。
【0046】
S315では、制御部11は、(1)で説明した態様で、ナビゲーション装置30から受信した走行予定経路データに基づき、発信側車両が、該走行予定経路データが示す走行予定経路を走行する発信側走行期間におけるワークロードの変動を推定し、ワークロード情報を生成する。そして、S320に処理を移行する。
【0047】
S320では、発信側携帯電話から着信側携帯電話に対し、通話を要求する発呼信号が発信される。また、これに伴い、発信側ハンズフリー装置の制御部11は、発信側携帯電話を介して、着信側車載システムのハンズフリー装置10(着信側ハンズフリー装置とも記載)に対し、生成したワークロード情報を送信する。そして、S325に処理を移行する。
【0048】
S325では、発信側携帯電話及び制御部11は、着信側車載システムにて電話に出ることを待つ(電話に出たことを示す応答信号の受信を待つ)発呼状態となり、続くS330では、制御部11は、応答信号の受信の有無をチェックする。そして、制御部11は、応答信号の受信があった場合には(S330:Yes)、S335に処理を移行し、応答信号の受信が無い場合には(S330:No)、S325に処理を移行する。
【0049】
S335では、制御部11は、着信側携帯電話からの応答信号と共に、発信側携帯電話が着信側車載システムにて生成されたワークロード情報を受信したか否かを判定し、肯定判定の場合には(S335:Yes)、S340に処理を移行する。一方、否定判定の場合には(S335:No)、S350に処理を移行する。
【0050】
S340では、制御部11は、自身が生成したワークロード情報と、着信側車載システムから受信したワークロード情報とに基づき、発信側車両と、着信側車載システムが搭載された着信側車両とについての同時低下時期を検知する。そして、S345に処理を移行する。
【0051】
S345では、制御部11は、図示しないスピーカ等を介して、検知した同時低下時期が到来するまでどの程度の時間を要するかのメッセージである通話開始待ちメッセージを報知する。そして、同時低下時期が到来すると、S350に処理を移行する。
【0052】
S350では、制御部11は、図示しないスピーカやマイクを用いて、着信側車載システムとの間のハンズフリー通話を開始し、本処理を終了する。
(2−2)着信処理について
次に、着信側車載システムにおいて、ハンズフリー通話の開始時期を調整するために行われる着信処理について、図4に記載のフローチャートを用いて説明する。なお、本処理は、着信側車両の運転開始時に開始される処理である。
【0053】
S405では、着信側ハンズフリー装置の制御部11は、(1)で説明した態様で、ナビゲーション装置30から受信した走行予定経路データに基づき、着信側車両が、該走行予定経路データが示す走行予定経路を走行する着信側走行期間におけるワークロードの変動を推定する。そして、S410に処理を移行する。
【0054】
S410では、制御部11は、着信側携帯電話における発信側携帯電話からの着呼の有無(着信側携帯電話における着呼信号の受信の有無)を判定する。そして、肯定判定の場合には(S410:Yes)、S415に処理を移行し、否定判定の場合には(S410:No)、S405に処理を移行する。なお、着呼の際には、着信側携帯電話は、発信側携帯電話から発信側車両におけるワークロード情報を受信する。
【0055】
S415では、制御部11は、着信側携帯電話から発信側車両におけるワークロード情報を取得し、取得したワークロード情報と、自身が生成したワークロード情報とに基づき、発信側車両と着信側車両とについての同時低下時期を検知する。そして、S420に処理を移行する。
【0056】
S420では、制御部11は、同時低下時期が到来しているか否かを判定し、肯定判定の場合には(S420:Yes)、S425に処理を移行し、否定判定の場合には(S420:No)、S440に処理を移行する。
【0057】
S425では、制御部11は、着信側携帯電話に着信音の鳴動を行わせる等して、発信側携帯電話からの着呼を運転者等に報知する。なお、着信側ハンズフリー装置に設けられたスピーカ等を介して着呼を報知しても良い。そして、制御部11は、S430に処理を移行する。
【0058】
S430では、制御部11は、着信側携帯電話、或いは着信側ハンズフリー装置に対し、発信側携帯電話とのハンズフリー通話を開始する旨の操作が行われたか否かを判定する。そして、肯定判定の場合には(S430:Yes)、S435に処理を移行し、否定判定の場合には(S430:No)、S425に処理を移行する。
【0059】
S435では、発信側携帯電話への応答信号が送信されていない場合(すなわち、着信側携帯電話に出ていない場合)には、発信側携帯電話への応答信号が送信される(すなわち、着信側携帯電話に出る)。また、制御部11は、図示しないスピーカやマイクにより、発信側車載システムとの間のハンズフリー通話を開始し、本処理を終了する。
【0060】
一方、S420にて同時低下時期が到来していないと判定された場合に移行するS440では、制御部11は、発信側携帯電話への応答信号を送信させる(すなわち、着信側携帯電話に出る)。そして、発信側ハンズフリー装置に着呼の報知時期が遅延している旨を知らせるための自動応答をさせるため、着信側携帯電話を介して、発信側ハンズフリー装置に対し、着信側車両のワークロード情報を送信する。その後、S445に処理を移行する。
【0061】
S445では、制御部11は、着信側携帯電話に対し保留音を出力させる(これにより、発信側携帯電話で保留音が出力される)。そして、ナビゲーション装置30から新たに走行予定経路データを受信すると、新たに、着信側車両が、該走行予定経路データが示す走行予定経路を走行する着信側走行期間におけるワークロード情報を生成する(S450)。その後、S455に処理を移行する。
【0062】
S455では、制御部11は、生成したワークロード情報と、発信側車両のワークロード情報とに基づき同時低下時期を検知し、検知した同時低下時期が到来したか否かを判定する。そして、肯定判定の場合には(S455:Yes)、S425に処理を移行し、否定判定の場合には(S455:No)、S445に処理を移行する。
【0063】
なお、着信処理におけるS415,S420,S425,S455等の処理は、着信制御部11−1により実現される。
[効果]
第一実施形態の通話システム1によれば、一定期間にわたり発信側車両と着信側車両の双方でワークロードが低下する同時低下時期に、発信側車載システムと着信側車載システムとによるハンズフリー通話が開始される。このため、発信側車両の運転者と着信側車両の運転者の双方に、余裕を持ってハンズフリー通話を行わせることが可能となる。
【0064】
[第二実施形態]
[構成の説明]
次に、第二実施形態の通話システム2について、図5(a)に記載のブロック図を用いて説明する。第二実施形態の通話システム2もまた、ハンズフリー通話を行うためのシステムであり、通話システム2は、ハンズフリー装置50、及び、第一実施形態と同様の携帯電話20,ナビゲーション装置30を有する車載システム110と、該携帯電話20による通話や各種情報の送受信に用いられる無線通信網の一部を構成し、二つの携帯電話20の間での通話や各種情報の送受信を行う際に、これらの携帯電話20同士の通信回線を接続する交換機250とを有する。
【0065】
なお、第二実施形態の通話システム2におけるハンズフリー装置50は、第一実施形態の通話システム1におけるハンズフリー装置10と同様の制御部,通信部,車内LAN通信部,記憶部を有すると共に、制御部のプログラムとして、ワークロード推定部を有している。しかしながら、制御部のプログラムとして、着信を報知する時期を調整する着信制御部が設けられていないという点で相違している。
【0066】
また、交換機250は、携帯電話20と無線通信を行う図示しない基地局と通信可能に構成されており、この基地局を介して、携帯電話20との間で通信を行う。この交換機250は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらを接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、当該交換機250を統括制御する制御部251と、基地局と通信を行う通信部252と、HDDやフラッシュメモリ等の記憶保持動作が不要なデバイスから構成され、各種情報を記憶することができる記憶部253と、を有している。
【0067】
[動作の説明]
(1)概略について
次に、第二実施形態の通話システム2の動作について説明する。この通話システム2においても、第一実施形態と同様に、ある車載システム110と他の車載システム110との間でハンズフリー通話を行う際、車載システム110が搭載された双方の車両の運転者のワークロードが低下する同時低下時期にハンズフリー通話が開始されるよう構成されている。
【0068】
すなわち、それぞれの車載システム110では、第一実施形態と同様にしてハンズフリー装置50にてワークロード情報を生成し、生成したワークロード情報を、携帯電話20を介して交換機250に送信するのである。そして、ある車載システム110から他の車載システム110に電話がかけられると、交換機250が、各車載システム110のハンズフリー装置50から受信したワークロード情報に基づき、これらの車載システム110が搭載された車両における同時低下時期を検知し、同時低下時期にハンズフリー通話が開始されるよう着呼の時期を調整するのである。
(2)通話開始処理について
次に、同時低下時期にハンズフリー通話が開始されるよう着呼の時期を調整する処理である通話開始処理について、図6に記載のシーケンス図を用いて説明する。なお、本処理は、通話システム2において定期的に行われる処理である。また、ハンズフリー通話に用いられる二つの車載システム110のうち、電話をかけた車載システム110を発信側車載システムとも記載し、発信側車載システムからの着呼がある車載システム110を着信側車載システムとも記載する。
【0069】
S505では、発信側車載システムのハンズフリー装置50(発信側ハンズフリー装置とも記載)の制御部は、第一実施形態と同様にして、ナビゲーション装置30から受信した走行予定経路データに基づき、自車両(発信側車両とも記載)が、該走行予定経路データが示す走行予定経路を走行する発信側走行期間におけるワークロードの変動を推定し、ワークロード情報を生成する。そして、発信側車載システムの携帯電話20(発信側携帯電話とも記載)を介して、交換機250に対し、生成したワークロード情報を送信する(S510)。なお、発信側ハンズフリー装置は、定期的なタイミングで同様にしてワークロード情報を生成し、交換機250に送信する。
【0070】
一方、着信側車載システムのハンズフリー装置50(着信側ハンズフリー装置とも記載)の制御部においても、同様にして、ナビゲーション装置30から受信した走行予定経路データに基づき、自車両(着信側車両とも記載)が、該走行予定経路データが示す走行予定経路を走行する着信側走行期間におけるワークロードの変動を推定し、ワークロード情報を生成する(S515)。そして、着信側車載システムの携帯電話20(着信側携帯電話とも記載)を介して、交換機250に対し、生成したワークロード情報を送信する(S520)。なお、着信側ハンズフリー装置もまた、定期的なタイミングで同様にしてワークロード情報を生成し、交換機250に送信する。
【0071】
ここで、発信側ハンズフリー装置(或いは、発信側携帯電話)に対し、発信側携帯電話から着信側携帯電話に電話をかける発呼処理を行う旨の指示がなされると(S525)、発信側携帯電話から交換機250に対し、着信側携帯電話への発呼を要求する発呼信号が発信される(S530)。
【0072】
発信側携帯電話から発呼信号を受信した交換機250の制御部251は、発信側ハンズフリー装置から受信したワークロード情報と、着信側ハンズフリー装置から受信したワークロード情報とに基づき、発信側車両と着信側車両の双方のワークロードが低下する同時低下時期を検知する(S535)。そして、同時低下時期の到来まで時間がある場合には、発信側携帯電話に対し、着信側携帯電話への着呼を遅延する旨を通知する(S540)。なお、交換機250の制御部251は、発信側携帯電話に対し、同時低下時期が到来するまでに要する時間を通知しても良い。
【0073】
発信側携帯電話にて着信側携帯電話への着呼を遅延する旨の通知を受け取ると、発信側ハンズフリー装置は、図示しないスピーカ等を介して、着信側携帯電話への着呼が遅延している旨を報知する(S545)。なお、発信側携帯電話が交換機250から同時低下時期が到来するまでに要する時間を受け取った場合には、発信側ハンズフリー装置は、該時間に基づき、着信側車両への着呼がなされるまでの待ち時間を報知しても良い。
【0074】
一方、交換機250の制御部251は、同時低下時期が到来したか否かを判定し(S550)、肯定判定が得られた場合には(S550:Yes)、着信側携帯電話に対し着呼信号を送信する(S555)。
【0075】
そして、着呼信号を受信した着信側携帯電話、或いは着信側ハンズフリー装置に対し所定の応答操作が行われ、着信側携帯電話にて電話にでると、発信側車載システムと着信側車載システムとの間でのハンズフリー通話が開始される(S560)。
【0076】
[効果]
第二実施形態の通話システム2によれば、一定期間にわたり発信側車両と着信側車両の双方でワークロードが低下する同時低下時期に、発信側車載システムと着信側車載システムとによるハンズフリー通話が開始される。このため、発信側車両の運転者と着信側車両の運転者の双方に、余裕を持ってハンズフリー通話を行わせることが可能となる。
【0077】
[第三実施形態]
[構成の説明]
次に、第三実施形態の車載システムについて説明する。第三実施形態の車載システムもまた、ハンズフリー通話を行うためのシステムであり、第二実施形態と同様のハンズフリー装置50,携帯電話20,ナビゲーション装置30を有する。
【0078】
[動作の説明]
次に、第三実施形態の車載システムの動作について説明する。この車載システムにおいては、当該車載システムを構成する携帯電話により電話をかける際に、自車両の運転者のワークロードが一定期間にわたり低下する低下時期にハンズフリー通話が開始されるよう構成されている。
【0079】
以下では、車載システムを構成する携帯電話により電話をかけた際に、上記低下時期にハンズフリー通話が開始されるように調整する発信開始処理について、図7に記載のフローチャートを用いて説明する。なお、本処理は、自車両の運転開始時に開始される処理である。
【0080】
S605では、車載システムのハンズフリー装置50の制御部は、第一実施形態と同様にして、ナビゲーション装置30から受信した走行予定経路データに基づき、自車両が、該走行予定経路データが示す走行予定経路を走行する走行期間におけるワークロードの変動を推定し、ワークロード情報を生成する。そして、S610に処理を移行する。
【0081】
S610では、制御部は、ハンズフリー装置(或いは、携帯電話)に対し、他の電話機への発呼を行う旨の指示がなされたか否かを判定する。そして、肯定判定の場合には(S610:Yes)、S615に処理を移行し、否定判定の場合には(S610:No)、S605に処理を移行する。
【0082】
S615では、制御部は、第一実施形態と同様にして、ナビゲーション装置30から受信した走行予定経路データに基づき、自車両が、該走行予定経路データが示す走行予定経路を走行する走行期間におけるワークロードの変動を推定し、ワークロード情報を生成する。そして、S620に処理を移行する。
【0083】
S620では、制御部は、S615で生成したワークロード情報に基づき、一定期間にわたり自車両のワークロードが低下する低下時期が到来したか否かを判定する。そして、肯定判定の場合には(S620:Yes)、S630に処理を移行し、否定判定の場合には(S620:No)、S625に処理を移行する。
【0084】
S625では、制御部は、スピーカ等を介して、他の電話との間の通話を要求する発呼信号の発信を遅延する旨を報知する。なお、このとき、発呼信号が発信されるまでに要する時間(低下時期が到来するまでに要する時間)を報知しても良い。そして、制御部は、S615に処理を移行する。
【0085】
一方、S630では、制御部は、携帯電話20に対し発呼信号を発信させ、S635に処理を移行する。
S635では、制御部及び携帯電話20は、他の電話機からの発呼信号に対する応答信号の受信を待つ(他の電話機が当該携帯電話20からの電話に出るのを待つ)発呼状態となり、S640に処理を移行する。
【0086】
S640では、制御部は、他の電話機からの携帯電話20への応答信号の受信の有無を判定する。そして、肯定判定の場合には(S640:Yes)、S645に処理を移行し、否定判定の場合には(S640:No)、S635に処理を移行する。
【0087】
S645では、制御部は、図示しないスピーカやマイクにより、他の電話機との間でのハンズフリー通話を開始する。そして、本処理を終了する。
[効果]
第三実施形態の車載システムによれば、自車両の運転者のワークロードが一定期間にわたり低下する低下時期が到来した後にハンズフリー通話が開始される。このため、該運転者に余裕を持ってハンズフリー通話を行わせることが可能となる。
【0088】
[他の実施形態]
(1)第一実施形態に記載の通話システム1では、ハンズフリー装置10がワークロード情報の生成,送信や、着呼を報知する時期の調整を行っているが、これに限定されることは無く、例えば、ナビゲーション装置30にて同様の処理を行っても良い。また、ハンズフリー装置10やナビゲーション装置30とは別の装置をさらに設け、該装置にて同様の処理を行っても良い。このような場合であっても、同様の効果を得ることができる。
(2)また、第二,第三実施形態に記載の車載システムにおいても、ハンズフリー装置10がワークロード情報の生成等を行っているが、ナビゲーション装置や、或いは、ハンズフリー装置やナビゲーション装置とは別の装置で同様の処理を行っても良い。このような場合であっても、同様の効果を得ることができる。
【0089】
[特許請求の範囲との対応]
上記実施形態の説明で用いた用語と、特許請求の範囲の記載に用いた用語との対応を示す。
【0090】
第一〜第三実施形態の携帯電話が通信端末に相当し、発呼信号或いは着呼信号が通話要求に相当する。また、第一実施形態のハンズフリー装置10が、請求項1〜4における車載装置に、第二実施形態のハンズフリー装置50が、請求項5〜8における車載装置に、第三実施形態のハンズフリー装置50が、請求項9、10における車載装置に相当する。
【0091】
また、第一実施形態のハンズフリー装置10の制御部11が、発信側生成手段,発信側送信手段,着信側生成手段,取得手段,着信側検知手段,着信側報知手段に相当する。さらに詳しく説明すると、制御部11を制御するプログラムであるのワークロード推定部11−2が、発信側生成手段,着信側生成手段に相当し、着信制御部11−1が、着信側検知手段,着信側報知手段に相当する。
【0092】
また、第二実施形態のハンズフリー装置50の制御部が、車載装置生成手段,車載装置送信手段に相当し、交換機250の制御部251が交換機検知手段,着信時期制御手段に相当し、通信部252が交換機受信手段に相当する。また、通信開始処理におけるS540にて送信される着呼を遅延する旨の通知が、遅延情報に相当する。
【0093】
また、第三実施形態のハンズフリー装置50の制御部が、生成手段,検知手段,発信手段,報知手段に相当する。
【符号の説明】
【0094】
1…通話システム、2…通話システム、10…ハンズフリー装置、11…制御部、11−1…着信制御部、11−2…ワークロード推定部、12…通信部、13…車内LAN通信部、14…記憶部、20…携帯電話、30…ナビゲーション装置、40…車内LAN、50…ハンズフリー装置、100…車載システム、110…車載システム、200…無線通信網、250…交換機、251…制御部、252…通信部、253…記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための通信端末に接続される車載装置を複数有する通話システムであって、
前記通話の開始を要求する通話要求を発信する前記通信端末を発信側端末、該発信側端末に接続される前記車載装置を発信側装置とすると共に、前記発信側端末からの前記通話要求が着信する前記通信端末を着信側端末、該着信側端末に接続される前記車載装置を着信側装置とし、さらに、前記発信側装置が搭載された車両を発信側車両、前記着信側装置が搭載された車両を着信側車両とし、
前記発信側装置は、
予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる認知負荷であるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、前記発信側車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間である発信側走行期間における前記発信側車両の運転者の前記ワークロードの変動を示す発信側ワークロード情報を生成すると共に、
前記発信側端末から前記着信側端末に対し前記通話要求が発信される際に、発信後の前記発信側走行期間における前記発信側ワークロード情報を、前記発信側端末を介して前記着信側端末に送信し、
前記着信側装置は、
前記相関データ、及び、前記着信側車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間である着信側走行期間における前記着信側車両の運転者の前記ワークロードの変動を示す着信側ワークロード情報を生成し、
前記着信側端末に前記発信側ワークロード情報の受信を伴う前記通話要求の着信があると、該着信側端末から該発信側ワークロード情報を取得し、
取得した前記発信側ワークロード情報と、前記着信の後の前記着信側走行期間における前記着信側ワークロード情報とに基づき、前記発信側車両及び前記着信側車両の双方の運転者の前記ワークロードが同時に低下する同時低下時期を検知し、検知した前記同時低下時期が到来した後に、前記着信があったことを報知すること、
を備えることを特徴とする通話システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通話システムにおいて、
前記着信側装置は、前記着信側端末に前記発信側ワークロード情報の受信を伴う前記着信があると、さらに、前記着信側端末を介して、該着信の後の前記着信側走行期間における前記着信側ワークロード情報を前記発信側端末に送信し、
前記発信側装置は、
前記発信側端末が前記着信側ワークロード情報を受信すると、前記発信側端末から前記着信側ワークロード情報を取得し、
取得した前記着信側ワークロード情報と、前記通話要求の発信後の前記発信側走行期間における前記発信側ワークロード情報とに基づき前記同時低下時期を検知し、該同時低下時期の到来までに要する時間を報知すること、
を特徴とする通話システム。
【請求項3】
無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための通信端末に接続される車載装置であって、
予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる認知負荷であるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、当該車載装置が搭載された発信側車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間における前記発信側車両の運転者の前記ワークロードの変動を示す発信側ワークロード情報を生成する発信側生成手段と、
当該車載装置に接続される前記通信端末である発信側端末から、他の前記通信端末である着信側端末に対し、前記通話の開始を要求する通話要求が発信される際に、発信後の前記走行期間における前記発信側ワークロード情報を、前記発信側端末を介して前記着信側端末に送信する発信側送信手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項4】
無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための通信端末に接続される車載装置であって、
車両が走行予定経路を走行する期間における、該車両の運転者の認知負荷であるワークロードの変動を示す情報を、ワークロード情報とすると共に、当該車載装置に接続された前記通信端末を着信側端末、該着信側端末に対し前記通話の開始を要求する通話要求を発信する前記通信端末を発信側端末とし、
予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる前記ワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、当該車載装置が搭載された着信側車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間における前記着信側車両の運転者の前記ワークロード情報である着信側ワークロード情報を生成する着信側生成手段と、
前記着信側端末に、前記発信側端末から、前記着信側車両とは別の車両である発信側車両についての前記ワークロード情報である発信側ワークロード情報の受信を伴う前記通話要求の着信があると、前記着信側端末から前記発信側ワークロード情報を取得する取得手段と、
取得した前記発信側ワークロード情報と、前記着信の後の前記走行期間における前記着信側ワークロード情報とに基づき、前記発信側車両及び前記着信側車両の双方の運転者の前記ワークロードが同時に低下する同時低下時期を検知する着信側検知手段と、
前記同時低下時期が到来した後に前記着信があったことを報知する着信側報知手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項5】
無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための複数の通信端末と、二つの前記通信端末による前記通話を開始させる交換機とを有すると共に、それぞれの前記通信端末に接続される車載装置を有する通話システムであって、
前記車載装置は、予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる認知負荷であるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、当該車載装置が搭載された車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間における前記車両の運転者の前記ワークロードの変動を示すワークロード情報を生成すると共に、当該車載装置に接続される前記通信端末を介して前記ワークロード情報を前記交換機に送信し、
前記交換機は、
前記通信端末から前記ワークロード情報を受信すると共に、
前記通信端末である発信側端末から、該発信側端末とは別の前記通信端末である着信側端末との間の前記通話の開始を要求する通話要求を受信すると、前記発信側端末に接続される前記車載装置にて生成された前記ワークロード情報と、前記着信側端末に接続される前記車載装置にて生成された前記ワークロード情報とに基づき、これらの車載装置が搭載される2台の車両において、双方の運転者の前記ワークロードが同時に低下する同時低下時期を検知し、
前記同時低下時期が到来すると、前記通話要求を前記着信側端末に着信させること、
を特徴とする通話システム。
【請求項6】
請求項5に記載の通話システムにおいて、
前記交換機は、前記同時低下時期が到来しておらず、前記通話要求の前記着信側端末への着信を遅延させている場合に、前記発信側端末に対し、前記着信側端末への前記通話要求の着信を遅延していることを示す遅延情報を送信し、
前記車載装置は、前記発信側端末を介して前記遅延情報を受信すると、前記着信側端末への前記通話要求の着信が遅延している旨を報知すること、
を特徴とする通話システム。
【請求項7】
無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための通信端末に接続される車載装置であって、
予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる認知負荷であるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、当該車載装置が搭載された車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間における前記車両の運転者の前記ワークロードの変動を示すワークロード情報を生成する車載装置生成手段と、
二つの前記通信端末による前記通話を開始させる交換機に対し、当該車載装置に接続される前記通信端末を介して前記ワークロード情報を送信する車載装置送信手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項8】
無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための複数の通信端末に関して、二つの前記通信端末による前記通話を開始させる交換機であって、
車両が走行予定経路を走行する期間における、該車両の運転者の認知負荷であるワークロードの変動を示す情報を、ワークロード情報とし、
前記通信端末から、該通信端末に接続された車載装置にて生成された前記ワークロード情報を受信する交換機受信手段と、
前記通信端末である発信側端末から、該発信側端末とは別の前記通信端末である着信側端末に対し前記通話の開始を要求する通話要求を受信すると、前記発信側端末に接続される前記車載装置にて生成された前記ワークロード情報と、前記着信側端末に接続される前記車載装置にて生成された前記ワークロード情報とに基づき、これらの車載装置が搭載される2台の車両において、運転者の前記ワークロードが同時に低下する同時低下時期を検知する交換機検知手段と、
前記同時低下時期が到来すると、前記通話要求を前記着信側端末に着信させる着信時期制御手段と、
を備えることを特徴とする交換機。
【請求項9】
無線通信回線を利用した通話と各種情報の送受信とを行うための通信端末に接続される車載装置であって、
予め定められた経路を走行する際の運転操作と、該運転操作の際に運転者に生じる認知負荷であるワークロードとの相関関係を示す相関データ、及び、当該車載装置が搭載される車両の走行予定経路に基づき、該走行予定経路の走行期間における前記車両の運転者の前記ワークロードの変動を示すワークロード情報を生成する生成手段と、
当該車載装置に接続される前記通信端末である発信側携帯端末と他の前記通信端末との間の前記通話の開始を要求する通話要求を、前記発信側携帯端末から発信する旨の指示がなされると、該通話要求の発信後の前記走行期間における前記ワークロード情報に基づき、前記車両の運転者の前記ワークロードが低下する低下時期を検知する検知手段と、
前記低下時期が到来すると、前記発信側携帯端末に対し前記通話要求を発信させる発信手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車載装置において、
前記低下時期が到来するまでに要する時間を報知する報知手段をさらに備えること、
を特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−70264(P2012−70264A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214160(P2010−214160)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】