説明

通話妨害装置およびマイクロ波検出装置

【課題】 車両への後付けが容易な携帯式電話の通話妨害装置を提供する。
【解決手段】 妨害電波発信機3、車両の移動検出部5、制御部7などを有して構成される。移動検出部5としては、GPS受信機、車両の移動の際に生じる振動を検知する振動センサー、車両に設けられたシガープラグを介してシガープラグ電圧を検知する検知器などが使用される。車両の移動を移動検出部5で検出した時には、妨害電波発信機3から妨害電波が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通話妨害装置とマイクロ波検出装置に関し、特に、車両に取り付けられて使用され、車両内における携帯式電話の使用を妨害する機能を有する通話妨害装置と、この機能を組み込んだマイクロ波検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車電話や携帯電話などの可搬式の電話(以下、「携帯式電話」と称する)は、広く使用されている。この種の電話は便利であるが、例えば運転中に使用した場合、運転者(携帯式電話の使用者)は、通話に注意力が向けられることから、不注意による交通事故の原因となることがある。実際に、運転しながらの通話中に注意力散漫による追突事故が多く発生している。これは、携帯式電話が通常は片手に持って使用することも要因となっており、このため、最近、運転中における携帯式電話を手で持って使用することは法令により禁止された。
【0003】
ところが、例えば運転中に携帯式電話に着信があった場合、緊急を要するケースもあることから、実際には多くの人は電話に出てしまう(約70%の人が運転中に着信した携帯式電話に出るという統計もある)。そこで、運転中は携帯式電話の電源を切る方法もあるが、上記のように緊急の着信の場合もあり、また最近では携帯式電話はメールの着信機能も備えていることから、この方法は一般的ではない。
【0004】
そこで、車両内部などの特定の領域内での携帯式電話の使用を規制する技術が種々提案されている。この種の技術としては、例えば、特開平11−186783号公報に開示されたものがある。この方法は、妨害波を発生して携帯式電話の交信を行えなくするような不感エリア生成装置を設けることにより、携帯式電話の通話を規制している。
【0005】
また、例えば国際公開番号WO01/008328号公報には、携帯電話機等の通信端末機の通信を妨げる妨害電波の信号を発生する妨害電波発生手段と、妨害電波発生手段が発生した信号を、妨害電波として通信端末機に対して局所的に発射する妨害電波発生手段とを備えた、通話防止装置が開示されている。また、この装置では、自動車等の移動体の走行/停止検知手段を備え、走行/停止検知手段が移動体の走行を検知した場合には、妨害波発生手段に妨害電波の信号を発生させると共に、走行/停止検知手段が移動体の停止を検知した場合に、妨害電波発生手段に妨害電波の信号の発生を停止させる構成としている。走行/停止検知手段としては、移動体の速度を検出する速度検出手段、あるいは移動体のサイドブレーキを用いた構成が採用されている。
【特許文献1】特開平11−186783号公報
【特許文献2】国際公開番号WO01/008328号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の技術は、運転中における携帯式電話の着信ができないようにする点において、非常に有効な手段である。特に、後者の技術は、移動体、即ち車両の停止中において自動的に妨害電波を発生しないようにすることが可能であり、より実用的なものといえる。しかしながら、この後者の技術では、車両の走行/停止検知手段として、移動体の速度検出手段やサイドブレーキを用いており、つまり移動体に付随した機器(速度計やサイドブレーキ)を利用している。そして、これらの機器を利用する場合には、速度計からの速度信号を取り出すための改良、あるいはサイドブレーキの移動に連動してサイドブレーキの作動/解除の信号を取り出すための改良が必要になり、車両自体に対する改良は不可避である。このため、上記した後者の手段は、車両製造時に設ける場合を除き、所謂後付け加工することが困難であり、また後付け加工した場合に、多額の改良費がかかるという問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の通話妨害装置は、車両に取り付けられて携帯式電話の通話を妨害する装置であって、動作時には所定の妨害用電波を発生する妨害電波発信機(3)と、前記車両の移動を検出する移動検出部(5)と、制御部(7)と、を有してなり、前記制御部(7)は、前記移動検出部(5)が前記車両の移動を検出した時には前記妨害電波発信機(3)を動作させる、ことを特徴とする。
【0008】
上記の妨害用電波は、具体的には、携帯式電話の使用周波数帯域の電波である。
【0009】
上記移動検出部(5)としては、GPS受信機や、車両の移動の際に生じる振動を検知する振動センサーや、車両に設けられたシガープラグを介してシガープラグ電圧を検知する検出器などが使用される。GPS受信機を用いた場合には、制御部(7)は、GPS受信機から受信したGPS信号に基づいて車両の移動を検知する。振動センサーを用いた場合には、制御部(7)は、車両の振動に基づいて車両の移動を検知する。さらに、シガープラグ電圧を検知する検出器を用いた場合には、制御部(7)は、シガープラグ電圧の変化から車両のエンジンの動作を検知し、これに基づいて車両の移動を検出する。
【0010】
また、上記課題を解決する本発明のマイクロ波検出装置は、車両に取り付けられて使用されるマイクロ波検出装置であって、動作時には所定の妨害用電波を発生する妨害電波発信機(3)と、前記車両の移動を検出する移動検出部(5)と、マイクロ波を受信するマイクロ波受信部(1)と、動作時には音声と光の少なくとも一方による警告を発生する警告発生部(4)と、制御部(7)と、を有してなり、制御部(7)は、移動検出部(5)が車両の移動を検出した時には妨害電波発信機(3)を動作させると共に、マイクロ波受信部(1)が所定の周波数のマイクロを検知したときには警告発生部(4)を動作させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の通話妨害装置またはマイクロ波検出装置では、移動検出部(5)によって車両の移動を検出し、これに基づいて妨害電波発信機(3)を制御し、つまり車両が移動状態である場合にのみ、妨害電波を発生する。そして、移動検出部(5)は移動センサ、シガープラグ電圧を検知する検出器、あるいはGPS受信機を用いて構成されるため、車両自体の改良を必要とすることがなく、後付けにより容易に車両に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態である、通話妨害機能を備えたマイクロ波検出装置について説明する。
図1にこのマイクロ波検出装置を示した。この装置は、自動車等の車両の、例えばダッシュボードあるいはその周辺に取り付けて使用されるもので、マイクロ波受信部1、GPS受信部2、妨害電波発信機3、警告発生部4、移動検出部5、手動切替部6、および制御部7などから構成されている。
【0013】
マイクロ波受信部1は、所定周波数のマイクロ波を受信した場合にはマイクロ波受信信号を制御部7に出力する。GPS受信部2は、GPS信号を受信し、この受信したGPS信号を制御部7に出力する。
【0014】
図2に、GPS受信部2の構成例を示した。このGPS受信部2は、GPS用アンテナ21、GPS受信機22、位置検出部23、時刻検出部24、速度検出部25などから構成される。GPS用アンテナ21は、GPS衛星からのGPS信号を受信する。GPS受信機22は、GPS用アンテナ21で受信したGPS信号を復調して位置データを出力する。位置検出部23は、位置データから車両の現在位置に関する位置情報(経度(例えば東経)および緯度(例えば北緯))を公知の方法で算出する。時刻検出部24は、現在時刻を検出して時刻情報として出力する公知の構成のものである。速度検出部25は、位置検出部23からの位置情報と、時刻検出部24からの当該位置情報が出力された際の時刻つまり測位時刻とに基づいて、公知の方法でマイクロ波検出装置ないしこれが取り付けられた車両の速度を算出する。
【0015】
妨害電波発信機3は、制御部7からの出力指令信号を受けて、所定周波数、具体的には携帯式電話の使用周波数帯の妨害信号、例えば800MHz帯や1.5GHz帯などの妨害信号を発生する。なお、妨害電波発信機3の出力する妨害電波の出力(電界強度)は、通常の状態において携帯式電話が周囲の基地局から受信する信号強度よりも大きいものとする。
【0016】
警告発生部4は、警報表示部41と警報出力部42から構成される。警報表示部41は、LCD(液晶表示器)やLED(発光ダイオード)などを用いて構成され、文字表示(LCD)や発光(LED)により所要の警報を文字や光によって表示するものである。警報出力部42は、ブザー音や音声によって警報を音出力する。
【0017】
移動検出部5は、車両が移動している状態であるか否かを検出するための機能を有する。具体的には、移動検出部5は、振動センサー、シガープラグ電圧を検知する検出器、例えばシガー電圧センサー、あるいはGPS受信機などから構成される。振動センサーで構成する場合、この振動センサーは車両が移動する際に発生する振動を検知し、この振動に基づいて車両が移動中であることを検出する。シガープラグ電圧を検出する、例えばシガー電圧センサーなどの検出器で構成する場合には、車両が移動する際のアクセル操作に伴うエンジンの回転数の変化によって生じる発電機からの充電電圧の変化を検出し、この種の変化がある場合には、車両が移動中である(アクセル操作が行われている)と判定するものである。
【0018】
また、移動検出部5をGPS受信機で構成する場合、GPS受信機からのGPS信号に基づいて通話妨害装置およびこれが取り付けられた車両の現在位置を検知すると共に時間経過に伴う現在位置の変化に基づいて車両(マイクロ波検出装置)が移動中であるかどうかを検出するものである。そして、上記のような移動検出部5からの出力に基づいて行われる車両の移動の検出(判定)は、この出力を制御部7に入力することで、該制御部7において検出(判定)処理が行われる。
【0019】
ここで、上記のGPS受信部2はGPS受信機22を有していることから、このGPS受信部2を車両(マイクロ波検出装置)の移動検出用として兼用しても良い。このようにGPS受信機22からのGPS信号を車両の移動検出用としても用いることで、移動検出部5自体を省略することができるので、部品点数を低減することができて好ましい。
【0020】
さらに、手動切替部6は、通話妨害機能をオン、オフに切替えるスイッチから構成される。スイッチとしてはスライド式スイッチ、メンブレンスイッチなどの適宜な形態のものが使用される。また、例えば赤外線式のリモコンスイッチでも良い。この手動切替部6は、例えば車両の運転者以外の搭乗者が携帯式電話を使用する場合においては、通話妨害機能をオフにする必要があるためである。
【0021】
制御部7は、例えば所要のコンピュータプログラムに基づいて動作するマイクロコンピュータから構成され、上記した各入力に基づいて所要の動作ないし制御を行う機能を有する。制御部7の機能は以下の通りである。
(1)マイクロ波受信部1からマイクロ波受信信号が入力された場合には、警告発生部4に警告出力を行い、警告表示部41に所定の警告表示を行い、および/または警報出力部42からブザー音ないし音声出力を行う。
(2)GPS受信部2におけるGPS受信データ(GPS信号)に基づいて車両(マイクロ波検出装置)の現在位置を検知すると共に、この現在位置と制御部7に予め記録された位置情報データ(マイクロ波発生装置が設置された場所に関する位置情報データ)と照合・判定する。そして、両者が合致した場合には、警報出力部42からブザー音ないし音声出力を行う。
(3)移動検出部5からの入力に基づいて車両が移動しているか否かを検知し、移動を検知した場合には、妨害電波発信機3から妨害電波を発生するものである。
【0022】
以上の構成である実施形態の装置の動作は、次の通りである。まず、この装置は、例えば車両のダッシュボード上に取り付けられる。この装置の電源としては、例えば、この装置の上面に設けた太陽電池およびこの太陽電池により充電される充電池からなるものでも良い。あるいは、シガープラグから電源を供給する構成でも良い(シガープラグ電圧を移動検出部5として使用する場合には、この形態が特に好適である)。そして、通話妨害機能を使用する場合には、手動切替部6を操作することにより通話妨害機能をオンにする。
【0023】
そして、車両が停止状態にある場合には、妨害電波発信機3からは妨害電波は出力されない。一方、車両が移動状態である場合には、妨害電波発信機3から車内に妨害電波が出力される。また、通話妨害機能を使用しない場合には、手動切替部6を操作して当該機能をオフにすれば良い。
【0024】
また、例えば車両走行中にマイクロ波受信部1が所定周波数のマイクロ波を受信した場合には、警告発生部4を構成する警告表示部41に所定の警告表示がなされ、また警報出力部42からブザー音ないし音声出力を行われる。
【0025】
なお、以上の説明では本発明をマイクロ波検出装置に実施した場合の例を説明したが、例えばこのマイクロ波検出装置からマイクロ波受信部1と警告発生部4を取り除くことで、電話妨害装置を構成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態を示した通話妨害装置のブロック図である。
【図2】図1のGPS受信部の構成例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
1 マイクロ波受信部
2 GPS受信部
3 妨害電波発信機
4 警告発生部
5 移動検出部
6 手動切替部
7 制御部
21 GPS受信機
41 警報表示部
42 警報出力部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられて携帯式電話の通話を妨害する装置であって、
動作時には所定の妨害用電波を発生する妨害電波発信機(3)と、
前記車両の移動を検出する移動検出部(5)と、
制御部(7)と、を有してなり、
前記制御部(7)は、前記移動検出部(5)が前記車両の移動を検出した時には前記妨害電波発信機(3)を動作させる、ことを特徴とする通話妨害装置。
【請求項2】
前記妨害用電波が、携帯式電話の使用周波数帯域の電波である、ことを特徴とする請求項1記載の通話妨害装置。
【請求項3】
前記移動検出部(5)がGPS受信機であり、
前記制御部(7)は、前記GPS受信機から受信したGPS信号に基づいて車両の移動を検知する、ことを特徴とする請求項1または2記載の通話妨害装置。
【請求項4】
前記移動検出部(5)が、前記車両の移動の際に生じる振動を検知する振動センサーであり、
前記制御部(7)は、前記振動に基づいて前記車両の移動を検知する、ことを特徴とする請求項1または2記載の通話妨害装置。
【請求項5】
前記移動検出部(5)が、前記車両に設けられたシガープラグを介してシガープラグ電圧を検知する検知器であり、
前記制御部(7)は、前記シガープラグ電圧の変化から前記車両のエンジンの動作を検知し、これに基づいて車両の移動を検知する、ことを特徴とする請求項1または2記載の通話妨害装置。
【請求項6】
車両に取り付けられて使用されるマイクロ波検出装置であって、
動作時には所定の妨害用電波を発生する妨害電波発信機(3)と、
前記車両の移動を検出する移動検出部(5)と、
マイクロ波を受信するマイクロ波受信部(1)と、
動作時には音声と光の少なくとも一方による警告を発生する警告発生部(4)と、
制御部(7)と、を有してなり、
前記制御部(7)は、前記移動検出部(5)が前記車両の移動を検出した時には前記妨害電波発信機(3)を動作させると共に、前記マイクロ波受信部(1)が所定の周波数のマイクロを受信したときには前記警告発生部(4)を動作させる、ことを特徴とするマイクロ波検出装置。
【請求項7】
前記妨害用電波が、携帯式電話の使用周波数帯域の電波である、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ波検出装置。
【請求項8】
前記移動検出部(5)がGPS受信機であり、
前記制御部(7)は、前記GPS受信機から受信したGPS信号に基づいて車両の移動を検知する、ことを特徴とする請求項6または7記載のマイクロ波検出装置。
【請求項9】
前記移動検出部(5)が、前記車両の移動の際に生じる振動を検知する振動センサーを有してなり、
前記制御部(7)は、前記振動に基づいて前記車両の移動を検知する、ことを特徴とする請求項6または7記載のマイクロ波検出装置。
【請求項10】
前記移動検出部(5)が、前記車両に設けられたシガープラグを介してシガープラグ電圧を検知する検知器を有してなり、
前記制御部(7)は、前記シガープラグ電圧の変化から前記車両のエンジンの動作を検知し、これに基づいて車両の移動を検知する、ことを特徴とする請求項6また7記載のマイクロ波検出装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−140976(P2006−140976A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331227(P2004−331227)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(596126270)株式会社マルハマ (16)
【Fターム(参考)】