説明

通話機器の押しボタン装置

【課題】 軸受けを回動軸に左右端部に対して設けずに見やすい位置に設け、而もガタツキの発生し難い通話機器の押しボタン装置を提供する。
【解決手段】 ボタン部材11は、中央に押しボタン11aを備え、上部に回動軸16を備えると共に、押下操作に対して弾性復帰するための弾性片18を下部に備え、ケース上1の背面に回動軸16を挟持して軸支する一対の挟持片22a,22bから成る挟持部22を2組設けると共に、弾性片18に係合してボタン部材11の回動軸方向のガタツキを防止する固定リブ24を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホンや電話機等に使用される押しボタン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インターホンや電話機には押下操作して内部スイッチをオン/オフ動作させる比較的操作面積の大きな押しボタンが使用されている。このような押しボタンを備えた従来の押しボタン装置は、押しボタンの上部に左右方向の回動軸を設けたボタン部材を使用し、このボタン部材の回動軸を機器ケースに設けた軸受けに軸支し、押下操作によりこの回動軸を中心にボタン部材を回動させて押しボタン背部に組み付けられたスイッチをオン/オフ動作させるよう構成されていた。
ボタン部材の取り付けは、具体的に回転軸の左右端部に当接する壁をケースの左右に設け、この壁に回動軸を軸支する孔を形成して軸受けとし、回動軸の左右何れか一端をケースの一方の軸受けに挿入又は係合させ、他方の軸受けを撓ませたり回動軸自身を撓ませて他端を軸受けに挿入又は係合させて軸支させることでボタン部材を組み付けた(例えば、特許文献1参照)。
そして、このような構造により、軸受けを形成した壁面が押しボタンの軸方向である左右方向のガタツキを防止し、良好に押下操作できる押しボタン装置としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−228590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の押しボタン装置は、回動軸をケースに軸支する際、他方の軸受けを撓ませたり軸自身を撓ませて固定するため、撓ませるために力を加えなければならなかった。また、横方向を向いて対向するよう配置されている軸受けは作業者には確認し難く、取り付け作業が面倒であり繊細さが要求される工程となっていた。更に、取り付ける際に回動軸を撓ませたりすることで、回動軸が破損してしまう虞もあった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、軸受けを回動軸の左右端部に対して設けずに見やすい位置に設け、しかもガタツキの発生し難い通話機器の押しボタン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、通話機器ケースの前面を構成するケース上の背面に軸受けを設け、押しボタンが形成されたボタン部材の一端に軸受けに軸支する回動軸を押しボタンに平行に形成し、軸受けにボタン部材を軸支した状態で押しボタンをケース上に露出させ、押しボタンが押下操作されたら、ボタン部材が回動してケースの内部に配置されたスイッチがオン/オフ動作する通話機器の押しボタン装置であって、軸受けは、回動軸を挟持する一対の挟持片を少なくとも2組備えて構成される一方、ボタン部材は、回動に対して弾性復帰するための弾性片を備え、更にケース上背面には、弾性片に係合してボタン部材の回動軸方向のガタツキを防止する固定リブが設けられて成ることを特徴とする。
この構成によれば、軸受けはケース上の背面に形成されるので見やすいし、回動軸を挟持する一対の挟持片を少なくとも2組備えて構成されるので、ボタン部材の取り付け操作は、挟持片間に挿入する1方向へ挿入操作する単純な操作で良く、簡易な操作で取り付けることが可能となる。また、固定リブにより回動軸の軸方向のガタツキを防止でき、組み付けた押しボタンを良好な操作感覚で押下操作することが可能となる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、弾性片は、押しボタンの操作面に略平行で且つ回動軸に対して直交する方向に延設されたバネ部を有し、固定リブは、バネ部に係合して回動軸方向のガタツキを防止することを特徴とする。
この構成によれば、固定リブは、回動軸に直交する方向に伸びたバネ部に係合するため、押しボタンの押下操作によりボタン部材が回動しても、安定した係合を維持できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の構成において、一対の挟持片は、回動軸の異なる円周上に当接して挟持動作するよう互い違いに配置されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、一対の挟持片は回動軸を挟持するが同一円周上に当接しない。この結果、回動軸の見た目の挿入空間を広くでき、挿入操作がし易い。また、挟持片を互い違いに配置して互いを離すことで、挿入後は軸支作用のストレスを挟持部と回動軸とに拡散でき、安定した挟持状態を維持できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軸受けはケース上の背面に形成されるので見易いし、回動軸を挟持する一対の挟持片を少なくとも2組備えて構成されるので、ボタン部材の取り付け操作は、挟持片間に挿入する1方向へ挿入操作する単純な操作で良く、簡易な操作で取り付けることが可能となる。また、固定リブにより回動軸の軸方向のガタツキを防止でき、組み付けたボタン部材を良好な操作感覚で押下操作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る通話機器の押しボタン装置の一例を示し、インターホンの玄関子機のケース上背面視斜視図である。
【図2】図1の玄関子機の斜視図である。
【図3】図1のA部拡大図である。
【図4】ボタン部材を示し、(a)は表側斜視図、(b)は裏側斜視図である。
【図5】ボタン部材を外したケース上の背面視斜視図である。
【図6】図5のB部拡大図である。
【図7】ケース下の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る通話機器の押しボタン装置の一例を示し、インターホンの玄関子機ケースの一部であるケース上の背面側から見た斜視図を示している。また、図2はこのケース上を備えた玄関子機の斜視図を示している。
玄関子機ケースは、前面側に配置されるケース上1と背面側に配置されるケース下2とで構成され、このケース内に居住者と通話するためのマイク及びスピーカ、来訪者が居住者を呼び出すための呼出ボタン、来訪者を撮像するためのカメラ等を組み付けて玄関子機は構成される。図1,2において、11は呼出ボタンとして使用する押しボタン11aを備えたボタン部材、12はマイク装着部、13はスピーカ装着部、14はカメラ装着部である。以下、ケース上1の前面方向を前方とし、押しボタン11a装着部をケース下部、カメラ装着部14をケース上部として説明する。
【0012】
図3は図1のA部拡大図を示し、図4はボタン部材11の斜視図を示している。ボタン部材11は、押下操作される押しボタン11aが中央に円形に形成され、その上部にはケース上1に軸支するための横方向に延びた回動軸16が形成されている。尚、ここでは回動軸16は、中央で分断されて左右に分割形成されているが、一体に形成しても良い。
【0013】
そして、押しボタン11aの背面中央には、押下操作によりケース内の図示しない基板に搭載されたスイッチ素子に係合してオン/オフ操作する操作リブ17が突設されている。また、押しボタン11aの下部には、押下された押しボタン11aに反発力を与えて復帰させるための弾性片18が形成されている。この弾性片18は、押しボタン11aの背部の左右端部から一定の幅で下方に帯状に伸ばして弾性を付与したバネ部18aと、バネ部18aの先端をL状に折り曲げて対向するように形成した支持爪18bとで構成され、押しボタン11aの左右に夫々対称に形成されている。
支持爪18bは、ケース下2に設けられた後述するバネ受けリブ25に係止して弾性力を発生する。
【0014】
図5は、ボタン部材11を取り外したケース上1の背面側から見た斜視図を示し、図6はB部の拡大図を示している。この図5、図6に示すように、押しボタン11aを露出させる開口部20の左右上部のケース上1の裏面に、ボタン部材11の回動軸16を軸支する軸受け21が設けられている。軸受け21は、左右方向に配置される回動軸16を上下方向から挟持して軸支する挟持部22を左右2個設けて形成されている。
【0015】
挟持部22は、ケース上1の背面に起立するよう形成した一対の挟持片22a,22bで構成され、一方の挟持片22aは上方から回動軸16に係合し、他方の挟持片22bは下方から回動軸16に係合するよう配置されている。対を成す挟持片22a,22bの向かい合う部位には、夫々回動軸16の曲率に合わせた凹部が形成されている。
そして、対を成す挟持片22a,22bは、回動軸16の異なる周囲に当接するよう互い違いに配置されて挟持部22を構成し、この挟持部22は左右に一対設けられている。また、対を成す挟持片22a,22bの先端同士の間には回動軸の径より僅かに狭い隙間Tが設けられ、ケース上1の後方から回動軸16を前方に押し込んで挿入可能としている。
【0016】
一方、開口部20の下部には、ボタン部材11の下方に形成された弾性片18の左右のバネ部18a,18aに側方から当接する固定リブ24が一対突設されている。固定リブ24は、バネ部18aの対向する内側部に当接するよう配置されている。
【0017】
図7はケース下2の斜視図を示している。説明のためボタン部材11を浮かせた状態で示している。ケース上1に取り付けられたボタン部材11は、ケース上1とケース下2とを嵌合することで、この図7に示すようにケース下2と係合する。詳しくは、ケース下2には、内底部の所定部位から、先端に弾性片18を保持する保持部25aを備えたバネ受けリブ25が一対突設されている。このバネ受けリブ25に、ボタン部材11に形成された弾性片18の先端の支持爪18bが、把持されるように保持される。
【0018】
このように構成されたボタン装置の、組み立て及び作用は以下のようである。ボタン部材11を、まずケース上1の背面側から押しボタン11aを開口部20に嵌合するように押し当てて露出させる。次に、軸受け21に回動軸16を軸支させる。このとき、左右の挟持部22に対して、対を成す挟持片22a,22bの間の隙間Tに、後方から前方へ押しつける1方向の押し込み操作で回動軸16を挿入操作する。
【0019】
この組み付け操作により、ケース上1の2つの固定リブ24がそれぞれ弾性片18の内側と接し、弾性片18の左右方向の移動が規制される。即ち、ボタン部材11の左右方向のガタツキが防止される。
また、ケース上1とケース下2を嵌合して玄関子機ケースを完成することで、弾性片18の先端支持爪18bがケース下2のバネ受けリブ25に保持され、押しボタン11aに対して常時前方への復帰力が働く。同時に、操作リブ17が、ケース内に組み付けられた図示しないスイッチ素子に係合する。
【0020】
そして、押しボタン11aが押下操作されて押し込まれたら、ボタン部材11が回動してスイッチ素子がオン或いはオフ動作する。同時に、弾性片18の変形が発生、或いは変形が大きくなり、大きな復元力(弾性力)がボタン部材に発生する。この復元力により、押下操作後、押しボタン11aは元の位置に復帰する。
【0021】
このように、軸受け21はケース上1の背面に形成されるので見やすいし、回動軸16を挟持する一対の挟持片22a,22bを2組備えて構成されるので、ボタン部材11の取り付け操作は、挟持片22a,22b間に挿入する1方向へ挿入操作する単純な操作で良く、簡易な操作で取り付けることが可能となる。また、固定リブ24により回動軸16の軸方向のガタツキを防止でき、組み付けた押しボタン11aを良好な操作感覚で押下操作することが可能となる。
また、固定リブ24は、回動軸16に直交する方向に伸びたバネ部18aに係合するため、押しボタン11aの押下操作によりボタン部材11が回動しても、安定した係合を維持できる。
更に、一対の挟持片22a,22bは回動軸16を挟持するが、同一円周上に当接しないので、回動軸16の見た目の挿入空間を広くでき、挿入操作がし易いし、挟持片22a,22bを互い違いに配置して互いを離すことで、挿入後は軸支作用のストレスを挟持部22と回動軸16とに拡散でき、安定した挟持状態を維持できる。
【0022】
尚、上記ボタン部材11は、上方に回動軸16を設け、下方に弾性片18を設けているが、逆であっても良いし、左右方向に配置して良く、通話機器のデザインに応じ配置すれば良い。また、バネ部18aを単純に上下方向に伸ばして直線状に形成しているが、U字状に横方向に膨らませたり、回動軸16と同様に横方向に伸ばすこともできる。こうしてバネ部18aを長くすれば、押下操作を受けたバネ部18aの変形によるストレスを軽減できる。
また、ボタン部材11の回動軸16を支持する軸受け21を左右2個の挟持部22で構成しているが、押しボタン21が大きく回動軸16が長い場合は、左右夫々2箇所ずつ合計4個の挟持部22を配置しても良い。
更に、玄関子機の呼出ボタンに適用した場合を説明したが、本発明の通話機器の押しボタン装置は、住戸内に設置するインターホン機器の居室親機や電話機器の操作ボタンに対しても良好に適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1・・ケース上、2・・ケース下、11・・ボタン部材、11a・・押しボタン、16・・回動軸、17・・操作リブ、18・・弾性片、18a・・バネ部、18b・・支持爪、21・・軸受け、22・・挟持部、22a,22b・・挟持片、24・・固定リブ、25・・バネ受けリブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通話機器ケースの前面を構成するケース上の背面に軸受けを設け、押しボタンが形成されたボタン部材の一端に前記軸受けに軸支する回動軸を前記押しボタンに平行に形成し、前記軸受けに前記ボタン部材を軸支した状態で前記押しボタンを前記ケース上に露出させ、前記押しボタンが押下操作されたら、前記ボタン部材が回動して前記ケースの内部に配置されたスイッチがオン/オフ動作する通話機器の押しボタン装置であって、
前記軸受けは、前記回動軸を挟持する一対の挟持片を少なくとも2組備えて構成される一方、前記ボタン部材は、前記回動に対して弾性復帰するための弾性片を備え、
更に前記ケース上背面には、前記弾性片に係合して前記ボタン部材の回動軸方向のガタツキを防止する固定リブが設けられて成ることを特徴とする通話機器の押しボタン装置。
【請求項2】
前記弾性片は、前記押しボタンの操作面に略平行で且つ前記回動軸に対して直交する方向に延設されたバネ部を有し、
前記固定リブは、前記バネ部に係合して前記回動軸方向のガタツキを防止することを特徴とする請求項1記載の通話機器の押しボタン装置。
【請求項3】
前記一対の挟持片は、前記回動軸の異なる円周上に当接して挟持動作するよう互い違いに配置されて成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の通話機器の押しボタン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249121(P2011−249121A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120799(P2010−120799)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】