説明

連続気泡発泡シート及び連続気泡発泡シート製造方法

【課題】本発明は、良好なる通気性を有しつつ粉体粒子の通過が抑制されたシートの提供を課題としている。
【解決手段】連続気泡発泡ポリマーシートに係る本発明は、ポリマー組成物によって形成された内部に連続気泡を有する連続気泡発泡体に、該連続気泡発泡体を切断または切削する二次加工が実施されることにより表裏両面において前記連続気泡が開口されたシート状に形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続気泡発泡シート及び連続気泡発泡シート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体を収容するための袋や箱などの容器に通気性が求められる場合には、多孔質な部材でその容器の全部又は一部を構成することが行われている。
例えば、粉体を収容する容器が袋である場合には、この袋全体を不織布によって構成し、袋内外の通気性を確保することが行われており(下記特許文献1参照)、粉体を収容する容器が箱など場合には、粉体の収容及び取り出しを行うための開口を覆う蓋部を不織布などの多孔質な部材で形成して容器内外の通気性を確保することが行われている。
【0003】
また、このような用途においては、樹脂やゴムなどが用いられて形成されたポリマーシートに通気性を付与すべくニードルパンチが施されて貫通孔が形成された多孔質シートが不織布に代えて用いられたりしている。
しかし、上記のような貫通孔を有するポリマーシートは、通常、貫通孔が表裏を直線的に貫通するように形成されていることから該貫通孔よりも細かな粒子を容易に通過させることとなる。
また、前記不織布も繊維間の間隙が厚み方向に直線的に形成されていることから、この間隙よりも細かな粒子が、上記多孔質シートと同様に容易に通過してしまうこととなる。
すなわち、従来、このような用途に適したシートが提供されておらず、良好なる通気性を有しつつ粉体粒子の通過が抑制されたシートを得ることが困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−128123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、良好なる通気性を有しつつ粉体粒子の通過が抑制されたシートの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく連続気泡を有する発泡体に着目して鋭意検討を行った結果、連続気泡発泡体においては、隣接する気泡を連通させる連通孔が不規則に形成されることから、例えば、特開2005−82756号公報において示されているような微細な連続気泡を有する連続気泡発泡体を利用することで優れた通気性と粉体中の微細粒子の通過防止とを両立させ得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、連続気泡発泡ポリマーシートに係る本発明は、ポリマー組成物によって形成された内部に連続気泡を有する連続気泡発泡体に、該連続気泡発泡体を切断または切削する二次加工が実施されることにより表裏両面において前記連続気泡が開口されたシート状に形成されていることを特徴としている。
【0008】
また、連続気泡発泡シート製造方法に係る本発明は、ポリマー組成物によって内部に連続気泡を有する連続気泡発泡体を作製し、該連続気泡発泡体を切断又は切削する二次加工を実施して、表裏両面において前記連続気泡が開口された連続気泡発泡シートを作製することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の連続気泡発泡シート及び本発明の連続気泡発泡シート製造方法によって形成される連続気泡発泡シートは、内部に連続気泡が形成された連続気泡発泡体がシート状に二次加工されたものであり、連続気泡が表裏両面において開口されているものである。したがって、一面側に開口する気泡から空気を流入させた後に該空気を前記気泡と連通状態にある複数の気泡を経由して他面側の開口から流出させることができ優れた通気性が発揮されうる。
しかも、連続気泡発泡体においては、通常、隣接する気泡を連通状態とさせる連通孔が不規則に形成されていることから、例えば、一面側に開口する気泡に流入された空気は、シート厚み方向に向けて直線的に通過するのではなく、側方に移動したり、場合によっては一面側に逆戻りする方向に移動したりして曲折した流通状態を形成して他面側に通過する。
そのため、連続気泡内に粉体粒子が入り込んだとしても、途中の気泡で該粉体粒子が捕捉され易くシートを通じての粒子の漏洩が防止されることとなる。
すなわち、本発明によれば良好なる通気性を有しつつ粉体粒子の通過が抑制された連続気泡発泡シートを提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態の連続気泡発泡シートを示す断面図。
【図2】実施例1の連続気泡発泡シートが用いられた粉体収容物を机上に落下させた直後の様子を示す図(写真)。
【図3】図2の後、粉体収容物を除去した後の机上の様子を示す図(写真)。
【図4】実施例3の連続気泡発泡シートが用いられた粉体収容物を机上に落下させた直後の様子を示す図(写真)。
【図5】図4の後、粉体収容物を除去した後の机上の様子を示す図(写真)。
【図6】実施例4の連続気泡発泡シートが用いられた粉体収容物を机上に落下させた直後の様子を示す図(写真)。
【図7】図6の後、粉体収容物を除去した後の机上の様子を示す図(写真)。
【図8】不織布1が用いられた粉体収容物を机上に落下させた直後の様子を示す図(写真)。
【図9】図8の後、粉体収容物を除去した後の机上の様子を示す図(写真)。
【図10】不織布2が用いられた粉体収容物を机上に落下させた直後の様子を示す図(写真)。
【図11】図10の後、粉体収容物を除去した後の机上の様子を示す図(写真)。
【図12】実施例1の連続気泡発泡シートが用いられた粉体収容物を透明な袋に収容させた様子を示す図(写真)。
【図13】実施例3の連続気泡発泡シートが用いられた粉体収容物を透明な袋に収容させた様子を示す図(写真)。
【図14】実施例4の連続気泡発泡シートが用いられた粉体収容物を透明な袋に収容させた様子を示す図(写真)。
【図15】不織布1が用いられた粉体収容物を透明な袋に収容させた様子を示す図(写真)。
【図16】不織布2が用いられた粉体収容物を透明な袋に収容させた様子を示す図(写真)。
【図17】実施例1の連続気泡発泡シートの表面状態を示す図(SEM写真)。
【図18】実施例3の連続気泡発泡シートの表面状態を示す図(SEM写真)。
【図19】不織布1の表面状態を示す図(SEM写真)。
【図20】不織布2の表面状態を示す図(SEM写真)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について、粒子径20μm以下程度の微細な粒子径の粒子を含有する粉体を収容させるための袋などの容器の形成に好適な連続気泡発泡シートを例に、図1を参照しつつ説明する。
なお、図1は、本実施形態にかかる連続気泡発泡シートの厚み方向断面を模擬した断面図である。(以下、特段の記載がない限りにおいては、“断面”との用語は、この“厚み方向の断面”を意図している。)
この図1にも示されているように、本実施形態の連続気泡発泡シート1は、内部に複数の気泡Bを有しており、該気泡Bの内の一部は、独立気泡となって連続気泡発泡シート1の中に存在しているが、多くは隣接する気泡との間の気泡膜Wに互いを連通させる連通孔Hを形成させた連続気泡として連続気泡発泡シート1の中に存在している。
【0012】
したがって、連続気泡発泡シート1の表面1aから裏面1bへと通過する空気は、連続気泡発泡シート1の内部を複雑に曲折した状態で通過することとなる。
例えば、図中破線矢印Aを参照して説明すると、表面1aにおいて開口している気泡B1から、連通孔Hを通じて、第二の気泡B2に流入した空気は、その後、第三の気泡B3、第四の気泡B4、第五の気泡B5、第六の気泡B6を経由して、連続気泡発泡シート1の裏面1bにおいて開口している第七の気泡B7に到達し、この第七の気泡B7の開口から裏面側に抜けることとなる。
なお、この図1では、断面を分かり易く模擬しているため、奥行き方向の構造を省略する記載としているが、実際は、図1のように同一平面上に連通孔Hが存在することは殆ど無く、図1の奥側や手前側にも曲折した気体流路が形成されている。
そのため、仮に、この気流中に微細な粒子が同伴されて表面側から連続気泡発泡シート1の内部に前記粒子が導入されたとしても、この内部の気泡Bのいずれかにおいて捕捉され裏面側に漏洩されることが抑制されうる。
また、気泡Bの内部に粒子が捕捉されると、次にこの気泡Bを通過する粒子は、先に捕捉されている粒子と該気泡Bの内面との隙間を通過しなければならなくなることから、この点においても粉体粒子の漏洩が防止されることとなる。
【0013】
本実施形態の連続気泡発泡シート1は、ポリマー組成物がシート状に発泡押出しされて形成されたシート状の連続気泡発泡体(以下「原料シート」ともいう)が厚み方向にスライス加工されて形成されたものであり表裏両面に前記連続気泡を開口させた状態に形成されている。
【0014】
この連続気泡発泡シート1の厚みや内部の気泡の状態は、収容する粉体の粒度などによって適宜選択することができ、後述する発泡押出しの条件等を調整して適宜調整されうるものではあるが、上記のように粒子径20μm以下の微細な粒子径の粒子を含有する粉体を収容させる容器の一部又は全部を構成すべく用いられるような場合においては、シート内部の単位体積あたりの気泡Bの形成数(以下「気泡密度」ともいう)が、少なくとも1×106個/cm3以上であることが好ましい。
【0015】
なお、この気泡密度(X:個/cm3)は、ASTM D2842−69の試験方法に基づき測定される平均気泡径(C:mm)と、JIS K7112−1999に基づき樹脂組成物を非発泡な状態で測定したときの密度(ρ:kg/m3)と、JIS K7222−1999に基づき測定される連続気泡発泡シート1の見かけ密度(D:kg/m3)から下記式(1)を計算することによって求めることができる。
【0016】
【数1】

【0017】
なお、連続気泡発泡シート1の気泡密度を高い状態にすることでより微細な粒子の通過も抑制することができて好適ではあるものの、その場合には原料シートを気泡密度の高い状態で作製しなければならず、一般的な製造方法での製造が困難となる。
したがって、製造が容易でありながらも粒子の漏洩を抑制する効果に優れている点において、連続気泡発泡シート1の気泡密度は、1×106個/cm3以上、1×1011個/cm3未満であることが好ましく、1×107個/cm3以上、5×1010個/cm3未満であることがより好ましく、5×107個/cm3以上5×109個/cm3未満であることがさらに好ましい。
【0018】
この連続気泡発泡シート1は、オレフィン系樹脂をベースポリマーとした密度が1000kg/程度の樹脂組成物によって形成される場合には、見かけ密度が20〜100kg/m3のいずれかとされることで通気性と粒子の漏洩抑制とに優れたものとされうる。
また、袋などの容器として用いるための加工性の点などにおいても、20kg/m3よりも小さい見かけ密度とされると強度が弱くなりすぎて袋の破損を発生させるおそれを有する。
これらの点において見かけ密度は、30〜90kg/m3であることが好ましく、40〜60kg/m3であることが特に好ましい。
【0019】
また、連続気泡発泡シート1における平均気泡径は、通常、0.02〜0.2mmのいずれかとされ得る。
この平均気泡径は、0.05〜0.18mmのいずれかであることが好ましく、0.07〜0.15mmであることがさらに好ましい。
平均気泡径をこのような範囲とすることで、通気性と粒子の通過抑制に優れた効果が発揮されうる。
なお、連続気泡発泡シート1の気泡密度、見かけ密度、及び平均気泡径は、通常、原料シートと略同一となることから、原料シートの製造時における条件を調整することで、連続気泡発泡シート1の気泡密度、見かけ密度、及び平均気泡径が上記範囲内に調整され得る。
【0020】
また、連続気泡発泡シート1の厚みについては、薄くするほど通気性が良好になる一方で粒子の通過を抑制することが困難となり、厚くするほど粒子の通過抑制効果を向上させうる一方で通気性を低下させるおそれを有する。
このような点において、連続気泡発泡シート1の厚みは、シート断面の厚み方向の平均気泡膜数が3以上、50未満となる厚みとされることが好ましく、5以上30未満となる厚みが選択されることがさらに好ましい。
この平均気泡膜数は、例えば、連続気泡発泡シート1の断面を顕微鏡などで観察し、無作為に選んだ数箇所において気泡膜数を計測してその算術平均を計算して求めることができる。
また、この気泡膜数は、連続気泡発泡シート1の表面1aから裏面1bに向けて連続気泡発泡シート1の平面方向と直交する仮想線と気泡膜Wとの交点を測定して得られる値を意図しており、例えば、図1における仮想線Z−Zは3つの気泡膜Wを横断することから、この箇所における気泡膜数は“3”とされる。
【0021】
上記のような気泡密度や平均気泡径を有する連続気泡発泡シート1においては、通常、その厚みが0.2〜5mmとすることで気泡膜数を上記のような範囲とし得る。
なお、厚みが薄くなると連続気泡発泡シート1の強度が低下し、厚くなると通気性の低下のみならず袋などへの加工性に問題が生じるおそれを有する。
このような点においては、連続気泡発泡シート1のより好ましい厚みは0.3〜3mmであって、さらに好ましくは0.4〜1mmである。
【0022】
この連続気泡発泡シート1は、該連続気泡発泡シート1の吸水率が500質量%以上となるように形成されていることが好ましい。
この吸水率は、気泡どうしの連通状態を表す指標であり、例えば、同じような見かけ密度の値を示すものでは、吸水率が高いものほど気泡どうしの連通状態が良好であり、独立気泡の存在が僅かであることを表している。
言い換えれば、吸水率の高いものほど、通気性に優れているといえる。
ただし、吸水率の高い発泡体は、一般に製造が困難であることから本実施形態に係る連続気泡発泡シート1の吸水率としては、500質量%以上、5000質量%以下であることが好ましく、700質量%以上、4500質量%以下であることがさらに好ましく、900質量%以上、3000質量%以下であることが最も好ましい。
【0023】
このような発泡状態を有する連続気泡発泡シート1の形成に用いられる材料としては、種々のゴムや種々の樹脂をベースポリマーとするポリマー組成物を利用することができるが、発泡押出し法などによって容易に製造可能となる点において、適度な溶融粘度を有するポリマー組成物を用いることが好適である。
すなわち、後述するように、ポリマー組成物をシート状に発泡押出しして、一旦原料シートを作製した後に、この原料シートを厚み方向にスライスして連続気泡発泡シートを作製するという簡便な製造方法で連続気泡発泡シートが製造されうる点において、ポリマー組成物としては、連続気泡発泡シートの形成材料として広く用いられているオレフィン系樹脂組成物が好適である。
なお、オレフィン系樹脂組成物は、一般に柔軟でありながらも優れた強度を有しており、熱融着なども容易である点において袋などへの加工性についても好適なものであるといえる。
【0024】
前記オレフィン系樹脂組成物には、ベースとなるオレフィン系樹脂に加えて他の樹脂やゴムをポリマー成分として含有させることができ、通常、気泡核剤などの気泡形成のための成分がさらに含有されている。
【0025】
前記オレフィン系樹脂としては例えば、ポリエチエレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂など公知のオレフィン系樹脂が挙げられる。
本実施形態における連続気泡発泡シート1においては、この連続気泡発泡シート1によって一部又は全部が形成される容器に優れた耐熱性と機械的強度とを付与し得る点において、ポリプロピレン系樹脂が好適である。
また、エチレン−プロピレン共重合体やエチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのオレフィン系エラストマー、スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを他のポリマー成分として上記ポリプロピレン系樹脂に加えて用いることによりオレフィン系樹脂組成物に適度な溶融粘度を付与することができるとともに得られる連続気泡発泡シート1に優れた耐寒性や耐衝撃性などを付与することができる。
【0026】
より具体的には、ポリプロピレン系樹脂としては、メルトフローレイト(MFR)が0.2〜5g/10分のものが好適である。
特に、押出し時における良好なる発泡状態を形成させやすいことからプロピレンと他のオレフィンとの共重合体が好ましく、このプロピレンと他のオレフィンとの共重合体としては、ランダム共重合体又はブロック共重合体の何れであってもよいが、耐熱性に優れていることから、ブロック共重合体が好ましい。
なお、プロピレンと共重合する他のオレフィンとしては、例えば、エチレンの他に、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1
−ノネン、1−デセンなどの炭素数が4〜10であるα−オレフィンが挙げられる。
【0027】
また、発泡性に優れることから高溶融張力ポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。
高溶融張力ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、電子線架橋などにより分子構造中に自由末端長鎖分岐が形成された高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)等が挙げられる。
この高溶融張力ポリプロピレンの具体例としては、サンアロマー社から商品名「Pro−faxPF814」として市販のものなどが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、その値が低いと、押出機の負荷が大きくなって生産性が低下し、或いは、押出機の吐出部に設けられるサーキュラーダイやフラットダイ(T−ダイ)の内部で円滑に流れることができなくなって、得られるポリプロピレン系樹脂発泡体の表面にムラが発生して表面性や外観が低下するおそれを有する。
一方、MFRの値が高過ぎると、押出し機からダイへの吐出や、ダイからの吐出における発泡が急激に生じる結果、破泡が生じて発泡性が低下し、得られる発泡体(原料シート)の表面性や外観が低下するおそれを有する。
このような点においては、ポリプロピレン系樹脂のMFRは、0.25〜4g/10分が好ましく、0.35〜3.5g/10分がより好ましい。ここで、ポリプロピレン系樹脂は単独で用いてもあるいは二種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
なお、ポリプロピレン系樹脂のMFRは、ポリプロピレン系樹脂を単独で用いた場合には、JIS K7210−1999のB法に準拠して、試験温度230℃、試験荷重21.18Nにて測定した値を意図している。
二種以上のポリプロピレン系樹脂を混合して用いた場合には、全体を含有量の割合(重量分率)によって算出した値をMFRとすることができる。
例えば、ポリプロピレン系樹脂がn種類のポリプロピレン系樹脂の混合物であるとした場合、それぞれポリプロピレン系樹脂のMFRを上記測定方法で測定し、得られたそれぞれのMFRの値を、第一のポリプロピレン系樹脂のMFRを“MFR1”、第二のポリプロピレン系樹脂のMFRを“MFR2”、・・・第nのポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトを“MFRn”とすると、全体を1としたときの第一のポリプロピレン系樹脂の重量分率を“C1”、第二のポリプロピレン系樹脂の重量分率を“C2”・・・第nのポリプロピレン系樹脂の重量分率を“Cn”から求めるポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトは、次式のように相乗平均することにより算出される。
【0029】
【数2】

【0030】
上記のようなポリプロピレン系樹脂とともに使用される熱可塑性エラストマーは、基本的にはハードセグメントとソフトセグメントを組み合わせた構造を有するもので、常温でゴム弾性を示し、高温では熱可塑性樹脂と同様に可塑化され成形可能となるものである。
本実施形態における熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントがポリプロピレンまたはポリエチレン、ソフトセグメントがエチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのエラストマーが好適である。
【0031】
この熱可塑性エラストマーにはハードセグメントとなるモノマーとソフトセグメントとなるモノマーの重合を多段階で行い、重合反応容器内において直接製造される重合タイプのもの、バンバリーミキサーや二軸押出し機などの混練機を用いてハードセグメントとなるポリオレフィン系樹脂と、ソフトセグメントとなるゴム成分とを物理的に分散させて製造されたブレンドタイプのもの、バンバリーミキサーや二軸押出し機などの混練機を用いてハードセグメントとなるポリオレフィン系樹脂と、ソフトセグメントとなるゴム成分とを物理的に分散させると同時に、ゴム成分を部分架橋または動的架橋されたものが挙げられるが、本実施形態においては動的架橋された熱可塑性エラストマーを連続気泡発泡シートの形成に用いることが好ましい。
特に、ポリプロピレン系樹脂との相溶性に優れることや、得られるポリプロピレン系樹脂発泡体の耐永久歪み性や耐熱性を高める観点から、動的架橋されたエチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーが好ましい。
【0032】
なお、動的架橋されたエチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーを構成するジエン成分としては、例えば、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
ここで、動的架橋されたエチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーは一種或いは二種以上を混合して用いられてもよく、このような動的架橋されたエチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーを使用することにより、通常のポリプロピレン系樹脂を発泡押出しする場合と同様の押出し機での製造が容易となる。
動的架橋されたエチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーの硬度は、デュロA硬度で90以下であることが好ましく、さらに好ましくは80以下であり、この場合、優れた柔軟性を有する連続気泡発泡体(原料シート)が得られる。
【0033】
動的架橋されたエチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーの含有量は、少ないと、得られる原料シートの柔軟性が乏しくなる一方、多いと、熱可塑性樹脂組成物のゴム弾性が強くなりすぎて発泡性が低下したり、得られる原料シートの収縮が大きくなったりするおそれがあるために、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して10〜100質量部とされることが好ましく、20〜90質量部がより好ましく、30〜80質量部がさらに好ましい。
特には、ポリマー組成物における、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対する、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーの含有量は、30〜70質量部とされることが最も好ましい。
【0034】
気泡を形成させるための気泡核剤としては、一般に気泡核剤として用いられているものであれば、特に限定されるものではなく例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物などが挙げられ、その中でも特にタルクが好ましい。なお、気泡核剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
また、熱分解してガスを発生させる化合物粒子を上記気泡核剤に代えて、あるいは上記気泡核剤とともに併用することができ、例えば、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などを用いることができる。
【0035】
上記気泡核剤の平均粒子径は、小さすぎると気泡径を微細化する効果が乏しくなる。
さらに、気泡核剤の平均粒子径は、小さすぎると凝集を起こしやすく、直接押出し機内に供給して押出機内で溶融樹脂と混錬した場合に分散が不十分になるおそれを有することから二軸押出し機などであらかじめ予備混錬しておく必要が生じ、製造方法に制約が生じるとともに場合によっては生産性を低下させるおそれを有する。
一方、大きすぎると押出機のスクリーンやダイでの目詰まりを引き起こす原因となることに加え、連続気泡発泡体の表面平滑性の低下や気泡膜の破れによる発泡性の低下に繋がるおそれがある。
少量の添加量で、気泡を形成する際の核となって気泡の生成を促すものであり、気泡の微細化と均一性に有効に作用するという気泡核剤に求められる効果をより確実に発現させるためには、気泡核剤は、平均粒子径が3〜15μmであることが好ましく、5〜12μmであることがより好ましい。
【0036】
そして、気泡核剤の量は、少ないと、得られる連続気泡発泡体の気泡数(気泡密度)を増大させることが困難となり、得られる連続気泡樹脂発泡体の表面平滑性が低下することがある。一方、多いと発泡押出しにおける気泡の成長時の気泡膜強度が低下する結果、過度な連続気泡化が生じて発泡倍率を低下させたり、場合によってはシート化自体が困難になったりすることがあるので、ポリマー組成物100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0037】
また、本実施形態においては、発泡押出しにおいて上記ポリマー組成物中に発泡剤が混合され得る。
この発泡剤としては従来から発泡押出しに用いられているものであれば特に限定されず、例えば、水、炭化水素、各種フロン、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、窒素、二酸化炭素、アルゴン等を使用することができる。
なかでも、気泡微細化の効果を考慮すると窒素、二酸化炭素、アルゴンが好ましく、発泡性に優れていることから二酸化炭素がより好ましい。
【0038】
上記発泡剤は、通常、押出し機内に圧入されて用いられるものであり、この圧入時における発泡剤の量は、連続気泡発泡体の発泡倍率に応じて適宜、調整されればよいが、少ないと、連続気泡樹脂発泡体の発泡倍率が低くなることがある。
一方、多いと、ダイにおいて急激な発泡を生じる結果、破泡が生じてしまったり、あるいは、連続気泡発泡体中に粗大な気泡を生じさせてしまったりするおそれが有る。
この粗大気泡が生じると、この連続気泡発泡体(原料シート)をスライス加工して連続気泡発泡シートを作製した際に、この粗大気泡による貫通孔か連続気泡発泡シートに形成されて粉末粒子の漏洩を招くおそれを有する。
このようなことから、例えば、ポリプロピレン系樹脂をベースとしたポリマー組成物における二酸化炭素の圧入量を例にすると、前記ポリマー組成物100質量部に対する二酸化炭素圧入量は、1〜15質量部が好ましく、2〜12質量部がより好ましく、3〜10質量部が特に好ましい。
【0039】
さらに、上記ポリマー組成物には、特に制限はされないが、その物性を損なわない範囲内において各種添加剤を添加してもよい。
例えば、耐候性安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、顔料、染料、滑剤、すべり性付与及びアンチブロッキング性の付与を目的とした界面活性剤、無機充填材の分散性の向上を目的とした高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル又は高級脂肪酸アミドなどの添加剤を添加してもよい。
【0040】
次いで、このようなポリマー組成物をシート状に発泡押出しする一次加工を実施して、内部に連続気泡が形成されたシート状の連続気泡発泡体(原料シート)を一旦作製し、該原料シートが3枚以上の枚数に分割された状態となるように厚み方向に切断するスライス加工を二次加工として実施して前記連続気泡が表裏両面において開口されている連続気泡発泡シートを作製する連続気泡発泡シート製造方法について説明する。
【0041】
前記原料シートは、押出し機を用いた発泡押出しによって作製され得る。
用いる押出し機としては、単軸押出し機、二軸押出し機、あるいは、複数台の押出し機を縦列させたタンデム型押出し機など、一般的なポリマー組成物の押出しに用いられている押出し機を用いることができる。
本実施形態の連続気泡発泡シート製造方法においては、押出し条件を調整しやすいことから、タンデム型押出し機を用いることが好ましい。
タンデム型押出し機を用いることで、例えば、第一段目の押出し機にニーディングゾーンを設け樹脂圧をやや低圧に設定して二酸化炭素等の発泡剤を前記ニーディングゾーンに圧入しやすい状態としたり、温度を高温に設定して発泡剤の溶解性を高めたりしてポリマー組成物に十分に発泡剤を分散させることができ、二段目の押出し機の温度設定を一段目に比べて低温として、ポリマー組成物の溶融粘度を発泡に適した粘度に調整することができる。
【0042】
上記押出し機には、通常、ポリマー組成物をシート状に発泡押出しすべく、その吐出部にダイが設けられる。
このダイとしては、一般にシート状の押出しに用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、フラットダイ(T−ダイ)、サーキュラーダイ等を使用することができる。中でもサーキュラーダイは、得られるシートの幅が冷却用のマンドレルの直径で決まるため、フラットダイのように製品幅と同じかそれ以上の幅をもつ金型を必要とせず、フラットダイと比べて所望幅の原料シートを容易に製造できる点で優れている。
【0043】
前記原料シートの製造(発泡押出し)においては、ダイの出口でのポリマー組成物の吐出速度V(V=押出質量/金型樹脂出口部断面積/時間)が、通常、50〜200kg/(cm2・h)となる押出し条件を採用することができる。
好ましくは、70〜180kg/(cm2・h)、さらに好ましくは90〜160kg/(cm2・h)である。
これにより、発泡性を向上させることができることに加え、さらに気泡を微細化することができるとともに気泡膜の強度を向上させうる。
これにより、例えば、表面に気泡断面を露出させるためのスライス加工性が向上し、スライス加工して得られる通気性シートの強度が高くなる。
吐出量Vが50kg/(cm2・h)より小さい場合、気泡の微細化や高発泡倍率の連続気泡発泡体を得ることが困難となる。
一方で200kg/(cm2・h)より大きい場合、ダイスリットにおける発熱が生じて気泡破れをきたし、発泡倍率が低下しやすくなることに加え、皺状のコルゲートが発生しやすくなり気泡径が不均一となって原料シートの表面平滑性が低下するため好ましくない。
【0044】
上記のような吐出速度を得るための方法としては、ダイの吐出部の断面積を調整する方法が挙げられ、フラットダイにおいては、ダイスリットの間隔や長さを調整する方法を採用することができ、サーキュラーダイの調整方法としては、その口径を変更する方法と、ダイスリットの間隔を変える2通りの方法が挙げられる。
サーキュラーダイでは、口径とダイスリットの間隔の比率(口径(mm)/ダイスリットの間隔(mm))が、50〜500であることが好ましく、より好ましくは80〜400であり、さらに好ましくは100〜300の範囲である。
口径とダイスリットの間隔の比率が50より小さいか、もしくは、300より大きい場合には、原料シートに大量の破泡が生じるおそれがあることに加え、気泡を微細化することが困難となったり、発泡体のシート外観が損なわれたりするおそれがあって好ましくない。
【0045】
このようにして形成した原料シートに二次加工としてスライス加工を実施して連続気泡発泡シートを作製する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、バンドナイフを用いる方法などを挙げることができる。
このスライス加工においては、表裏両面がスライスされた面となるシートを少なくとも1枚以上作製することが重要である。
例えば、原料シートが厚み方向に3枚に分割されるように切断するスライス加工を実施することで、中間のシートには、スライスによって気泡が切断されて開口された面が表裏両面に形成される。
したがって、この中間シートを本実施形態の連続気泡発泡シートとすることができる。
なお、原料シートを4枚以上にスライスする場合には、一枚の原料シートから2枚以上の連続気泡発泡シートを作製することができる。
【0046】
なお、本明細書においては、シート状の連続気泡発泡体をスライス加工する場合を例示しているが、例えば、数cm以上の厚みのある板状の連続気泡発泡体を形成し、この板状の連続気泡発泡体から数mm程度の厚みを有する連続気泡発泡シートを切り出すような方法を上記例示の方法に代えて採用することも可能である。
また、例えば、円柱状の連続気泡発泡体を作製して、この連続気泡発泡体を外側からかつら剥き状態でスライスするいわゆるスカイビングと呼ばれる方法によって連続気泡発泡シートを作製することもできる。
なお、この場合、円柱状の連続気泡発泡体を一周するまでに得られるシートには、切断面が片面にしか形成されていないことから、この部分は取り除いて、残りの表裏両面に切断面の形成されている部分を連続気泡発泡シートとすることができる。
【0047】
また、上記においては製造が容易で厚み等の制御が容易である点においてスライス加工を連続気泡発泡シート製造方法における二次加工として例示しているが、例えば、原料シートの表裏両面をグラインダーなどで切削して連続気泡を開口させる場合も本発明の意図する範囲である。
すなわち、原料シートなどの連続気泡発泡体は、通常、その表面の殆どに気泡膜が形成されているため優れた通気性を発揮させるべく表面の気泡膜を除去する必要があるもので、上記例示のようにスライス加工による気泡膜の切断除去に代えて表裏両面を切削加工して気泡膜を除去する方法も本発明において採用が可能である。
なお、通常、表裏両面において、その表面積に占める気泡の開口面積を50%以上、好ましくは80%以上とすることで良好なる通気性が確保され得る。
【0048】
この連続気泡発泡シートは、微細な粒子を含む粉体を収容するための容器に特に有用なものである。
例えば、粉体を収容する袋や、内部に粉体を収容するスペースが形成された樹脂製あるいは金属製の容器本体に前記粉体の出し入れのために形成された開口を封止する封止シートなど、容器の全部又は一部をこの連続気泡発泡シートで構成することにより、容器内部と外気との間に通気性を確保しつつ容器外への粉体の漏洩を防止することができる。
【0049】
本実施形態の連続気泡発泡シートを用いた容器に収容される粉体としては、無機粒子や有機微粒子などがあり、それぞれ香りを発するものや逆に臭い吸着などの機能を持たせた粒子を収容させることにより、芳香剤や消臭剤として使用できる。
また、粉体を収容した状態で周囲を減圧下とすることで、内部を脱気することができる。
例えば、本実施形態の連続気泡発泡シートを用いた袋に微細な粒子を含む粉体を収容させたものを真空ポンプに連結されたチャンバー内に収容して、該チャンバー内を真空ポンプで減圧させた場合には、前記粉体の飛散を抑制させた状態で真空引きを行うことができる。
特に、体積平均粒子径が1〜20μmとなるような粉体においては、粒子が非常に細かく軽量であることから一旦浮遊すると捕捉することが容易ではい。
そのため、不織布で作製された従来の袋のようなものにこのような粉体を収容させて真空引きを行った場合には真空ポンプやその他の設備に支障をきたすおそれがあるが、本実施形態における連続気泡発泡シートを用いた袋では、このような問題の回避を図ることができる。
【0050】
なお、本実施形態の連続気泡発泡シートを用いた袋に体積平均粒子径が1〜10μmのガラス繊維などを収容させたものをさらに非通気性のフィルムで形成された袋に収容して、該袋内を真空引きして封止することにより真空断熱材の骨材として使用できる。
この場合、本実施形態の連続気泡発泡シートを用いた袋に収容させるガラス繊維としては、断熱性と真空引きにおける飛散防止との観点から、体積平均粒子径が、1〜10μmであることが好ましく、5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0051】
さらに本実施形態の連続気泡発泡シートで袋を作製し、該袋内部に吸油剤を充填すれば油回収材としても使用でき、シートに界面活性剤などで親水性を付与し内部に吸水剤を充填すれば、吸水材料としても利用できる。
【0052】
なお、ここでは詳述しないが、本実施形態の連続気泡発泡シートは、容器に限定されず種々の用途に利用できる。
例えば、粉体搬送ラインの管体の一部を形成させるなど粉体の漏洩を防止しつつ通気性の確保が求められるような用途に広く用いられ得る。
また、ここでは詳述しないが、連続気泡発泡シートにおいて従来公知の技術事項を本発明の効果を著しく損ねない範囲において本発明においても採用することができる。
【実施例】
【0053】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
(原料シート1の作製)
口径が50mmの第一押出し機の先端に口径が50mmの第二押出し機を接続してなるタンデム型押出し機を用いて発泡押出しを実施し原料シートを作製した。
原料シートの作製には、ポリプロピレン系樹脂(サンアロマー社製 ブロックポリプロピレン 商品名「PB170A」、MFR:0.35g/10分)100質量部、動的架橋されたエチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマー(エーイーエスジャパン社製 商品名「サントプレーン8201−60」)67質量部と、着色剤としてカーボンブラックマスターバッチ(大日精化社製 PE−M AZ 90086(KE)40)10質量部、そして気泡核剤として平均粒子径12μmのタルク5.8質量部となる配合割合にて作製されたポリマー組成物を用いた。
該ポリマー組成物を、第一押出し機に供給して溶融混錬し、第一押出し機の途中から発泡剤として二酸化炭素を前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して7.9質量部圧入して、溶融状態のポリマー組成物と二酸化炭素を均一に混合、混練した上で、熱可塑性樹脂組成物を第二押出し機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した後、第二押出し機の先端に取り付けたサーキュラーダイ(口径φ35mm、ダイスリット間隔0.3mm(樹脂出口部の断面積:0.330cm2)から吐出量30kg/h(吐出速度:V=91kg/(cm2・h))で発泡押出しし、得られた円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからのエアーの吹き付けによって冷却し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、シート状の連続気泡発泡体を作製し原料シート1とした。
得られた原料シート1の物性値は表1に示す通りである。
【0055】
(原料シート2の作製)
動的架橋されたエチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーをエーイーエスジャパン社製のものに代えてJSR社製(商品名「エクセリンク2700B」)としたこと、着色剤(カーボンブラックマスターバッチ)を用いなかったこと、ならびに、ダイスリット間隔を0.25mm(樹脂出口部の断面積:0.275cm2、吐出速度V=109kg/(cm2・h))としたこと以外は原料シート1と同様にして連続気泡発泡シートを作製し原料シート2とした。
得られた原料シート2の物性値は表1に示す通りである。
【0056】
(原料シート3の作製)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ニューストレインSH9000」、MFR=0.3g/10分)100質量部、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(非架橋、三菱化学社製、商品名「サーモランZ101N」、MFR=14g/10分)67質量部、及び、ポリテトラフロロエチレン系気泡核剤(三菱レーヨン社製、アクリル変性ポリテトラフロロエチレン樹脂、商品名「メタブレンA−3000」)0.33質量部となる配合割合にて作製されたポリマー組成物を用いた。
該ポリマー組成物を、第一押出し機に供給して溶融混錬し、第一押出し機の途中から発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素を前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して4.2質量部圧入して、溶融状態のポリマー組成物と二酸化炭素を均一に混合、混練した上で、熱可塑性樹脂組成物を第二押出し機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した後、第二押出し機の先端に取り付けたサーキュラーダイ(口径φ35mm、ダイスリット間隔0.25mm(樹脂出口部の断面積:0.275cm2)から吐出量30kg/h(吐出速度:V=109kg/(cm2・h))で発泡押出しし、得られた円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからのエアーの吹き付けによって冷却し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、シート状の連続気泡発泡体を作製し原料シート3とした。
得られた原料シート3の物性値は表1に示す通りである。
【0057】
【表1】

【0058】
(実施例1)
スライサー(フォーチュナ社製バンドナイフ分割機 モデルSPA750)を用いて、原料シート1の表面側をスライス加工して気泡膜を切断除去し、気泡の断面を露出させた。
その後、裏面側も同様にスライス加工して原料シート1を3枚に分割し、中心部の両面に切断面が形成されたシートを実施例1の連続気泡発泡シートとした。
得られた連続気泡発泡シートの物性値は、表2に示す通りである。
【0059】
(実施例2)
スライサー(フォーチュナ社製バンドナイフ分割機 モデルSPA750)を用いて、原料シート2の表面側をスライス加工して気泡膜を切断除去し、気泡の断面を露出させた。
その後、裏面側も同様にスライス加工して原料シート1を3枚に分割し、中心部の両面に切断面が形成されたシートを実施例2の連続気泡発泡シートとした。
得られた連続気泡発泡シートの物性値は、表2に示す通りである。
【0060】
(実施例3)
市販されているポリエチレン製の連続気泡発泡体(三和化工社製 オプセル LC−300#2D)を、スライサー(フォーチュナ社製バンドナイフ分割機 モデルSPA750)を用いて、実施例1、3と同様にスライス加工を実施して実施例3の連続気泡発泡シートとした。
得られた連続気泡発泡シートの物性値は、表2に示す通りである。
【0061】
(実施例4)
スライサー(フォーチュナ社製バンドナイフ分割機 モデルSPA750)を用いて、原料シート3の表面側をスライス加工して気泡膜を切断除去し、気泡の断面を露出させた。
その後、裏面側も同様にスライス加工して原料シート3を3枚に分割し、中心部の両面に切断面が形成されたシートを実施例4の連続気泡発泡シートとした。
得られた連続気泡発泡シートの物性値は、表2に示す通りである。
【0062】
【表2】

【0063】
(評価方法)
なお、表1、表2における各評価結果は、以下の測定を行って計測されたものである。
【0064】
(シート厚み)
連続気泡発泡シートの厚みは、ミツトヨ製デジタルシックネスゲージを用いて測定した。
【0065】
(見かけ密度)
連続気泡発泡シートの見かけ密度は、JIS K 7222−1999記載の方法に準拠した方法により測定した。
【0066】
(平均気泡径)
連続気泡発泡シートに形成されている気泡は、ASTM D2842−69の試験方法に準じて測定した。
より具体的には、発泡シートをMD方向(押出し方向)及びTD方向(押出し方向に直交する方向)に沿って切断し、それぞれの切断面の中央部を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、型名「S−3000N」)で拡大して撮影した。
次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、MD方向に沿って切断した切断面の画像においては、押出方向に平行な長さ60mmの直線を一本、描き、この直線上に存在する気泡数を数え、下記式(3)に基づいて押出方向の平均弦長(t)を算出した。
同様に、TD方向に沿って切断した切断面の画像においては、押出方向に直交する方向に平行な長さ60mmの直線を一本、描き、この直線上に存在する気泡数を数え、下記式(3)に基づいて押出方向に直交する方向の平均弦長(t)を算出した。
なお、MD方向、TD方向それぞれにおいて、この60mmの直線上に気泡数が10〜20個程度並ぶように上記電子顕微鏡での撮影における拡大倍率を調整した
【0067】
【数3】

【0068】
また、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにした。
さらに、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、さらに、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含めた。
【0069】
そして、算出された各方向における平均弦長(t)をそれぞれMD方向の気泡径(DMD)とTD方向の気泡径(DTD)とし、下記式(4)に示す相加平均によって平均気泡径を算出した。
【0070】
【数4】

【0071】
(吸水率)
まず、連続気泡発泡シートを10cm×10cmにカットし、その重量(Wd)を測定する。次に水を入れた容器にシートを完全に沈むように水没させ、容器ごと市販の減圧装置内に入れて−0.05MPaまで減圧させ、減圧操作を停止し3分間待った後に常圧に戻してシートを水中より取り出し、表面の付着水をふき取った後重量(Ww)を測定し、次式により吸水率を算出した。
吸水率(質量%)=(Ww−Wd)/Wd×100
なお、吸水率は上記測定をn=3で行い、その平均値をもって連続気泡発泡シートの吸水率とした。
【0072】
(漏洩する粉体の個数)
まず、15cm×15cmにカットした2枚の連続気泡発泡シートを重ね合わせ3方を熱シール機により融着させ袋状とした。その中へ体積平均粒子径が3.8μmの微粉タルク(日本タルク社製 MICRO ACE P―3)を16g投入して、開口部を熱シール機にて融着して、収容部スペース(内寸)が10cm×10cmの粉体収容物を作製した。
次に60cm×46cmのポリエチレン製袋内を窒素で充満させた後に口を塞ぎ、PARTICLE MEASURING SYSTEMS社製パーティクルカウンター「Handilaz mini」を用いて、袋内を0.3μmレンジ(0.3μm以上0.5μm未満)で測定し、測定値をブランク測定値として記録した。
次に作製した粉体収容物を同じポリエチレン袋に入れ窒素で充満させた後口を塞ぎ、袋全体を両手で肘が90度曲がる程度に1秒間に約2往復のスピードで25往復させた後、ブランクと同様にパーティクルカウンターにて測定した。
粉体収容物を入れて測定した値からブランクの値を引いた値を漏洩する0.3μm以上0.5μm未満の大きさの粉体の個数とした。
【0073】
(体積平均粒子径)
なお、粉体の体積平均粒子径は、まず粉体0.3g程度を少量の界面活性剤を添加した水溶液30mlに均一に分散させた後、ベックマン・コールター社製「Multisizer3」を用いて20μmのアパチャーを使用して測定した。
【0074】
(気泡密度)
気泡密度は、先に述べたように、ASTM D2842−69の試験方法に基づき測定される平均気泡径(C:mm)と、JIS K7112−1999に基づき樹脂組成物を非発泡な状態で測定したときの密度(ρ:kg/m3)と、JIS K7222−1999に基づき測定される連続気泡発泡シートの見かけ密度(D:kg/m3)から前記式(1)の計算を実施して求めた。
【0075】
(シート断面の厚み方向の気泡膜数)
連続気泡発泡シートの厚み方向の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をシートの縦横2断面分撮影し、それぞれの撮影画像上にシート断面垂直方向にランダムに3本の直線を引き、その直線と交差する気泡膜数を目視で数え、すべての平均値の小数点以下をくり上げて整数とし、その値をシート断面の厚み方向の気泡膜数とした。
【0076】
(比較実験)
下記に示す市販の不織布を用いて、“漏洩する粉体の個数”の評価に用いた粉体収容物と同じ試料(微粉タルク16g収容した粉体収容物)を作製した。
不織布1:シンワ株式会社製、品番:7840A、目付け40g/m2
不織布2:シンワ株式会社製、品番:9825−8−F、目付け25g/m2
【0077】
図2〜11に、実施例1、3、4の連続気泡発泡シートを用いた粉体収容物と、不織布1、2を用いて作製した粉体収容物とを黒色の天板を有する机上に約30cm高さから自然落下させた際の直後の様子、及び、粉体収容物を取り除いた後に机上に漏洩した粉体の様子を示す。
なお、天板上に見られる白点が漏洩した粉体である。
さらに、この粉体収容物を透明なポリ袋に収容させた際の様子を図12〜16に示す。
なお、図2、3、12は、実施例1の連続気泡発泡シートを用いた粉体収容物の結果であり、図4、5、13は、実施例3の連続気泡発泡シートを用いた粉体収容物の結果である。
そして、図6、7、14は、実施例4の連続気泡発泡シートを用いた粉体収容物の結果である。
また、図8、9、15は、不織布1を用いた粉体収容物の結果であり、図10、11、16は、不織布2を用いた粉体収容物の結果である。
【0078】
さらに、実施例1、3の連続気泡発泡シートと、不織布1、2の表面をSEM観察した写真を図17〜20に示す。
【0079】
図2〜16からもわかるように、実施例1、3、4の連続気泡発泡シートを用いたものは、殆ど粉体の漏洩が見られないのに対し、不織布を用いたものでは多量の粉体が漏洩していることが観察された。
なかでも実施例1、4(図3、図7の写真)では、机上に粉体の存在が全く確認されず、黒色の天板がそのままの状態で観察されている。
このように実施例1では、特に優れた結果が観察され、容器に、1×106個/cm3以上の気泡密度の連続気泡発泡シートを用いることにより、粉体の漏洩防止に特に有効となることが確認できた。
この実施例1の連続気泡発泡シートは、単位面積あたりの質量が、32g/m2であり、不織布1、2の中間程度となっている。
また、図17、19、20に示す結果からも、気泡の開口面積は、不織布の繊維間の間隙よりも大きなものであることが判るが、上記のように、不織布に比べて粉体の漏洩防止効果に優れたものである。
また、実施例3の連続気泡発泡シートは、単位面積あたりの質量が、130g/m2であり、不織布1、2よりも大きな値となっているものの、図18に見られるように、不織布の繊維間の間隙よりも遥かに大きな気泡の開口が表面に形成されている。
このように開口自体が不織布よりも大面積でありながら粉体の漏洩防止効果に優れているのは、シート厚み方向に直線的に通過する貫通孔が形成されておらず、複雑に曲折してシートを通過する連続気泡が形成されていることに起因することが、上記のことからも理解できる。
【符号の説明】
【0080】
1:連続気泡発泡シート、1a:表面、1b:裏面、B:気泡、H:連通孔、W:気泡膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物によって形成された内部に連続気泡を有する連続気泡発泡体に、該連続気泡発泡体を切断または切削する二次加工が実施されることにより表裏両面において前記連続気泡が開口されたシート状に形成されていることを特徴とする連続気泡発泡シート。
【請求項2】
前記連続気泡発泡体は、前記ポリマー組成物が押出し発泡されてなるシートであり、該シートを厚み方向に3枚以上の枚数となるように切断するスライス加工が前記二次加工として実施されており、前記切断によって連続気泡が開口された面を表裏両面に備えている請求項1記載の連続気泡発泡シート。
【請求項3】
厚み方向に3以上の気泡膜数を有するように形成されている請求項1又は2記載の連続気泡発泡シート。
【請求項4】
ポリプロピレン系樹脂と熱可塑性エラストマーとが含有されているポリマー組成物が用いられて形成されている請求項1乃至3記載のいずれか1項に記載の連続気泡発泡シート。
【請求項5】
900〜3000質量%のいずれかの吸水率を有している請求項1乃至4記載のいずれか1項に記載の連続気泡発泡シート。
【請求項6】
粒子径20μm以下の粒子を含む粉体が収容される容器を構成すべく用いられ、一面が前記粉体に接触され、且つ他面が外気側に露出される状態で用いられる請求項1乃至5記載のいずれか1項に記載の連続気泡発泡シート。
【請求項7】
ポリマー組成物によって内部に連続気泡を有する連続気泡発泡体を作製し、該連続気泡発泡体を切断又は切削する二次加工を実施して、表裏両面において前記連続気泡が開口された連続気泡発泡シートを作製することを特徴とする連続気泡発泡シート製造方法。
【請求項8】
前記ポリマー組成物をシート状に発泡押出しして、一旦シート状の連続気泡発泡体を作製し、前記二次加工として、前記シート状の連続気泡発泡体を厚み方向に3枚以上の枚数となるように切断するスライス加工を実施して、連続気泡が開口された面を表裏両面に備えている連続気泡発泡シートを作製する請求項7記載の連続気泡発泡シート製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−100826(P2010−100826A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200024(P2009−200024)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】