説明

運転支援装置、運転制御装置、及びプログラム

【課題】運転者の加速操作の特性を考慮して、適切な運転支援を行なうことができるようにする。
【解決手段】特徴量算出部22によって、車両走行時の車速の時系列データに基づいて、車両の運転者が加速操作を行なったときの加速終了地点で目標車速が得られるように一定加速度で走行したときの加速開始からの所要時間と、加速操作を行なったときの車速の時定数とに基づいて定まる、運転者の加速特性を表わす特徴量を算出する。そして、算出手段によって算出された特徴量に基づいて、運転支援を行う。加速特性を表わす特徴量を算出して、運転支援を行なうことにより、運転者の加速操作の特性を考慮した適切な運転支援を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転支援装置、運転制御装置、及びプログラムに係り、特に、運転者の加速操作の特性に基づいて、運転支援を行なう運転支援装置、運転制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバの走行を学習し、目標加減速度を算出する装置が知られている。例えば、ドライバの運転特性から走行モードを学習して自動的に加減速度モードを選択する車両の自動速度制御装置が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−211996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の運転支援装置や運転制御装置では、加速操作の特性の評価指標として、一定加速度や、最大加速度、最大ジャークを採用しており、加速の開始から終了までの加速度やジャークの時系列変化を考慮していないため、加速開始から終了まで加速度を最適に変化させるように運転支援を行うことができない、という問題がある。
【0004】
また、加速度やジャークは、一般に変動が大きく、最大加速度などのある一時刻の値を評価指標として用いると、ノイズに対して脆弱になってしまう、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、運転者の加速操作の特性を考慮して、適切な運転支援を行なうことができる運転支援装置、運転制御装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る運転支援装置は、車両走行時の車速の時系列データを記憶した記憶手段と、前記時系列データに基づいて、車両の運転者が加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された前記特徴量に基づいて、運転支援を行う運転支援手段とを含んで構成されている。
【0007】
第2の発明に係るプログラムは、コンピュータを、車両走行時の車速の時系列データを記憶した記憶手段からの前記時系列データに基づいて、車両の運転者が加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量を算出する算出手段、及び前記算出手段によって算出された前記特徴量に基づいて、運転支援を行う運転支援手段として機能させるためのプログラムである。
【0008】
第1の発明及び第2の発明によれば、算出手段によって、車両走行時の車速の時系列データに基づいて、車両の運転者が加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量を算出し、運転支援手段によって、算出手段によって算出された特徴量に基づいて、運転支援を行う。
【0009】
このように、加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量を算出して、運転支援を行なうことにより、運転者の加速操作の特性を考慮した適切な運転支援を行なうことができる。
【0010】
第1の発明に係る特徴量を、車両の運転者が加速操作を行なったときの加速開始地点及び加速終了地点の各々での車速と、加速開始地点及び加速終了地点の各々の位置と、加速操作を行なったときの車速の時定数とに基づいて定まる特徴量とすることができる。これによって、加速操作を行なったときの車速の時定数を用いて、運転者の加速操作の特性を考慮した特徴量を算出することができる。
【0011】
また、第1の発明に係る特徴量を、車両の運転者が加速操作を行なったときの加速終了地点で目標車速が得られるように一定加速度で走行したときの加速開始からの所要時間と、加速操作を行なったときの車速の時定数とに基づいて定まる特徴量とすることができる。これによって、一定加速度で走行したときの加速の所要時間と加速操作を行なったときの車速の時定数とを用いて、運転者の加速操作の特性を考慮した特徴量を算出することができる。
【0012】
第1の発明に係る運転支援手段は、特徴量を運転者に提示して運転支援を行なうことができる。これによって、運転者は提示された特徴量を加速操作に役立たせることができる。
【0013】
第1の発明に係る運転支援装置は、車速を時系列に連続して検出する検出手段と、運転者による加速操作の目標車速を予測する車速予測手段とを更に含み、運転支援手段は、運転者が加速操作を行なうときに、算出手段によって算出された特徴量、検出手段によって検出された車速、及び予測手段によって予測された目標車速に基づいて、車速の時系列変化を予測し、予測した車速の時系列変化と、検出手段によって検出された車速の時系列変化とに基づいて、運転支援として、警告情報の提示又は車速制御を行うことができる。これによって、特徴量、車速、及び目標車速に基づいて予測された車速の時系列変化を用いて、警告情報の提示又は車速制御を行うため、運転者の加速操作の特性を考慮した適切な運転支援を行なうことができる。
【0014】
第1の発明に係る運転支援装置は、車速を検出する検出手段と、運転者による加速操作の目標車速を予測する車速予測手段とを更に含み、運転支援手段は、運転者が加速操作を行なうときに、算出手段によって算出された特徴量、検出手段によって検出された車速、及び予測手段によって予測された目標車速に基づいて、運転者が加速操作を行なうときの車速の時系列変化を算出し、算出した車速の時系列変化に基づいて、車速を制御することができる。これによって、特徴量、車速、及び目標車速に基づいて算出された車速の時系列変化を用いて、車速を制御するため、運転者の加速操作の特性を考慮した運転制御を行なうことができる。
【0015】
上記の車速予測手段は、車両が走行している走行路の制限速度又は平均車速を取得して、取得した制限速度又は平均車速を目標車速として予測することができる。
【0016】
上記の運転支援装置は、車両が走行している走行路の直進、右折、及び左折の何れであるかを示す情報を取得する取得手段を更に含み、算出手段は、直進、右折、及び左折の各々における加速操作について、特徴量を算出し、運転支援手段は、取得手段によって取得された車両が走行している走行路が直進、右折、及び左折の何れであるかを示す情報に応じた特徴量を用いて、運転支援を行うことができる。これによって、直進、右折、及び左折に応じた運転者の加速操作の特性を考慮した適切な運転支援を行なうことができる。
【0017】
第3の発明に係る運転支援装置は、飽和交通流率と車両の運転者が加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量との予め定められた関係に基づいて、所望の飽和交通流率に対応する前記特徴量を決定する決定手段と、運転者の車両の速度を時系列に連続して検出する検出手段と、前記運転者による加速操作の目標車速を予測する車速予測手段と、前記運転者が加速操作を行なうときに、前記決定手段によって算出された前記特徴量、前記検出手段によって検出された車速、及び前記車速予測手段によって予測された前記目標車速に基づいて、前記運転者が前記加速操作を行なうときの前記車速の時系列変化を算出し、算出した前記時系列変化に基づいて、前記車速を制御する運転制御手段とを含んで構成されている。
【0018】
第4の発明に係るプログラムは、コンピュータを、飽和交通流率と車両の運転者が加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量との予め定められた関係に基づいて、所望の飽和交通流率に対応する前記特徴量を決定する決定手段、運転者の車両の速度を時系列に連続して検出する検出手段、前記運転者による加速操作の目標車速を予測する車速予測手段、及び前記運転者が加速操作を行なうときに、前記決定手段によって算出された前記特徴量、前記検出手段によって検出された車速、及び前記車速予測手段によって予測された前記目標車速に基づいて、前記運転者が前記加速操作を行なうときの前記車速の時系列変化を算出し、算出した前記時系列変化に基づいて、前記車速を制御する運転制御手段として機能させるためのプログラムである。
【0019】
第3の発明及び第4の発明によれば、決定手段によって、飽和交通流率と車両の運転者が加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量との予め定められた関係に基づいて、所望の飽和交通流率に対応する特徴量を決定する。また、検出手段によって、運転者の車両の速度を時系列に連続して検出し、車速予測手段によって、運転者による加速操作の目標車速を予測する。
【0020】
そして、運転制御手段によって、運転者が加速操作を行なうときに、決定手段によって算出された特徴量、検出手段によって検出された車速、及び車速予測手段によって予測された目標車速に基づいて、運転者が加速操作を行なうときの車速の時系列変化を算出し、算出した時系列変化に基づいて、車速を制御する。
【0021】
このように、所望の飽和交通流率に対応する車速の時系列変化の特徴量、車速、及び目標車速に基づいて算出された車速の時系列変化を用いて、車速を制御するため、所望の飽和交通流率を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の運転支援装置及びプログラムによれば、加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量を算出して、運転支援を行なうことにより、運転者の加速操作の特性を考慮した適切な運転支援を行なうことができる、という効果が得られる。
【0023】
本発明の運転制御装置及びプログラムによれば、所望の飽和交通流率に対応する車速の時系列変化の特徴量、車速、及び目標車速に基づいて算出された車速の時系列変化を用いて、車速を制御するため、所望の飽和交通流率を実現することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、本実施の形態では、車両に搭載された運転支援装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0025】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る運転支援装置10は、車速を検出する速度センサ12と、車両の加速度を検出する加速度センサ13と、GPSなどによって構成され、車両の走行位置を計測する走行位置計測装置14と、速度センサ12からの車速と加速度センサ13からの加速度と走行位置計測装置14からの走行位置とに基づいて、加速特性を学習する加速特性学習処理ルーチンを実現するためのプログラムを格納したコンピュータ16と、コンピュータ16での学習結果を表示するための表示装置18とを備えている。
【0026】
コンピュータ16は、CPU、後述する加速特性学習処理ルーチンのプログラムを記憶したROM、データ等を記憶するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。このコンピュータ16をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図1に示すように、速度センサ12から出力される車速、加速度センサ13から出力される加速度、及び走行位置計測装置14から出力される走行位置を時系列に連続して記録する走行データ記録部20と、走行データ記録部20に記録された走行データに基づいて、運転者による加速操作時の車速の時系列変化の特性である加速特性を表わす特徴量を算出する特徴量算出部22と、特徴量算出部22によって算出された特徴量を表示装置18に表示させる表示制御部24と、算出された特徴量を記憶する特徴量記憶部26とを備えている。
【0027】
走行データ記録部20によって時系列に連続して記録された車速は、加速操作期間に、例えば図2に示すように変化している。図2には、複数回の加速操作の各々について検出された、車両が停止している状態から加速を開始して加速が終了するまでの車速の時系列変化を重ね合わせて表示しており、縦軸、横軸ともに正規化してある。上記図2に示すように、加速の仕方に違いがあり、加速の開始時に強く加速し、その後緩やかに目標車速に収束するように加速する場合と、終始ほぼ一定の調子で加速する場合とがあることが分かる。
【0028】
従来の運転支援システムでは、主に一定加速度を指標として、異常行動を検出したり、車両制御を行ったものが多い。しかし、上記図2に示すように、車両の加速度は一定ではなく、加速開始から加速終了まで変化している。さらに加速度の変化の仕方は一律ではなく、さまざまなパターンがある。そこで、本発明では、その加速開始から終了までの車速変化の特性を数値的指標で表し、車速変化の特性を表わす数値的指標に基づいて各運転者に合わせた最適な運転支援を行っている。
【0029】
次に、特徴量算出部22において、運転者の加速特性を表わす特徴量を算出する方法について説明する。まず、図3に示すような運転者の加速操作による車両の加速行動をモデル化した加速行動モデルに基づいて、加速操作期間における車速の時定数Tを算出する。上記図3の加速行動モデルでは、加速の目標車速vopt及び車速vの差に、時定数Tの逆数を乗算することによって、車両の加速度aが得られ、加速度aを積分することにより、加速された車速vが得られることを示している。そして、再び、加速の目標車速vopt及び得られた車速vの差に、時定数Tの逆数を乗算することによって、車両の加速度aが得られる。
【0030】
ここで、Tは、この加速行動モデルから計算される車速v、加速度aが、速度センサ12によって得られる実際の車速と加速度センサ13によって得られる実際の加速度とにもっとも精度良く合うように決められるパラメータである。
【0031】
なお、時定数Tは、以下のように決定される。まず、加速開始時刻をt、加速終了時刻をt、時刻tにおける実際の車両位置をd(t)、加速行動モデルから計算される車両の予測位置をdsim(t、T)としたとき、加速期間全体における加速走行モデルと実際の車両位置とのズレの大きさJを、Tの関数として以下の(1)式で算出する。
【0032】
【数1】

【0033】
そして、上記(1)式のJ(T)を最小にするTの値を検索して、最適な時定数Tを決定する。
【0034】
また、一定の加速度で加速したときに、加速開始から加速終了までの所要時間をtcstとし、一定加速時間tcstを、以下の(2)式によって算出する。
【0035】
【数2】

【0036】
ただし、voptは加速の目標車速、doptは目標位置、vは加速開始地点の車速、dは加速開始地点の位置を表わす。
【0037】
そして、加速行動モデルに基づいて算出された時定数Tと、上記(2)式によって算出された一定加速時間tcstとに基づいて、加速特性を表わす特徴量Kを以下の(3)式によって算出する。
【0038】
【数3】

【0039】
ただし、α、βは定数である。
【0040】
上述したように、上記(2)式、(3)式によって、運転者の加速特性を表わす特徴量Kを定義し、実際の走行データからKの値を計算すると、上記図2に示すように、特徴量Kは、加速開始から終了までの車速の時系列変化の特性、つまり一定の加速度で加速するのか、時間と共に加速度を変化させながら加速するのか、といった収束傾向を表す指標となる。すなわち、特徴量Kの値が大きい場合には、最初に強く加速し、それ以降は徐々に加速を弱め、所望の車速に収束させるメリハリのある加速特性を表わし、特徴量Kの値が小さい場合には、そのようなメリハリの無い加速特性を表わす。また、図4に示すように、加速特性を表わす特徴量Kは、運転者によって異なり、また、同一の運転者に対する特徴量Kは、ある程度の範囲でバラつきを持つ。
【0041】
特徴量算出部22は、走行データ記録部20に記録された走行データから、加速操作が行なわれている期間の走行データを抽出し、抽出された加速操作期間の走行データの車速及び加速度の時系列データから、上述した加速行動モデルを用いて、時定数Tを算出する。そして、加速操作期間の走行データから、加速開始地点の車速v、加速開始地点の位置d、加速終了地点の目標車速vopt、及び加速終了地点の目標位置doptを取得し、取得された各値と算出された時定数Tとに基づいて、上記(2)式、(3)式により、加速特性を表わす特徴量Kを算出する。
【0042】
なお、加速操作が行なわれている期間とは、例えば、運転者が足をブレーキペダルから放して車両に加速度が発生してから、アクセルペダルを踏むことにより加速された車速が収束するまでの期間をいう。
【0043】
表示制御部24は、特徴量算出部22によって算出された特徴量Kを、例えば「あなたの加速の切れは3.4です。」のように表示装置18によって表示させて、特徴量Kを運転者の運転診断や教育に利用させる。
【0044】
次に、第1の実施の形態に係る運転支援装置10の作用について説明する。運転者が車両を運転中に、又は運転開始前に、加速特性の診断処理の開始がオペレータによって指示されると、コンピュータ16において、図5に示す加速特性学習処理ルーチンが実行される。
【0045】
まず、ステップ100において、速度センサ12から出力された車速、加速度センサ13から出力された加速度、及び走行位置計測装置14から出力された走行位置を走行データとして時系列で連続して記録し、走行データの所定期間の時系列データを記録する。
【0046】
そして、ステップ101において、上記ステップ100で記録された走行データから、加速操作期間の車速及び加速度の時系列データを取得して、加速行動モデルに基づいて、時定数Tを算出する。なお、上記ステップ101で、走行データから、複数の加速操作期間の走行データが抽出される場合には、各加速操作期間について、時定数Tを算出する。
【0047】
次のステップ102では、上記ステップ100で記録された走行データから、各加速操作期間について、加速開始地点の車速、加速開始地点の位置、加速終了地点の目標車速、及び加速終了地点の目標位置の各値を取得する。
【0048】
次のステップ104では、上記ステップ102で取得された各加速操作期間の各値に基づいて、加速特性を表わす特徴量を各々算出し、ステップ106において、上記ステップ104で算出された各特徴量を特徴量記憶部26に記憶する。
【0049】
そして、次のステップ108で、算出された特徴量を表示装置18に表示させて、加速特性学習処理ルーチンを終了する。なお、表示する特徴量は、算出された複数の特徴量の平均値を表示してもよいし、算出された特徴量の範囲を表示するようにしてもよい。
【0050】
そして、診断対象者の運転者は、表示装置18に表示された特徴量から、加速操作の癖を知ることができ、加速特性を表わす特徴量を運転操作に役立たせることができる。
【0051】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る運転支援装置によれば、加速操作を行うときの車速の時系列変化の特性を表わす特徴量を算出し、算出した特徴量を運転者に提示して加速操作に役立たせるように運転支援を行なうことにより、運転者の加速操作の特性を考慮して、個人に合わせた適切な運転支援を行なうことができる。
【0052】
また、運転者の加速特性を数値化し、運転者に提示することにより、運転改善教育に役立てることができる。
【0053】
次に、第2の実施の形態に係る運転支援装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0054】
第2の実施の形態では、加速度を時系列に連続して計測し、計測された加速度を用いて、加速特性を表わす特徴量を算出している点が第1の実施の形態と異なっている。
【0055】
走行データとして、加速度センサ13によって検出された加速度の時系列データは、例えば、図6に示すように、加速操作時に変化している。
【0056】
第2の実施の形態に係る運転支援装置の特徴量算出部は、走行データ記録部に記録された走行データから、加速操作が行なわれている期間の加速度の時系列変化を取得し、加速度の時系列変化を積分することにより、上記図2に示したような車速の時系列変化に変換する。これより、第1の実施の形態と同様に、加速開始地点の車速、加速開始地点の位置、加速終了地点の目標車速、加速終了地点の目標位置の各値を取得して、上記の(2)式、(3)式を用いて、加速特性を表わす特徴量Kを算出する。
【0057】
上記のように算出された特徴量Kの値が大きい場合にはメリハリのある加速特性を表わし、特徴量Kの値が小さい場合には、メリハリの無い加速特性を表わす。従って、診断対象の運転者は、表示された特徴量に基づいて、加速操作のくせを知ることができる。
【0058】
なお、他の構成や作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
次に、第3の実施の形態に係る運転支援装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0060】
第3の実施の形態では、折方向毎に加速特性を表わす特徴量を算出している点と、加速操作の異常検出を行なっている点とが主に第1の実施の形態と異なっている。
【0061】
図7に示すように、第3の実施の形態に係る運転支援装置310は、速度センサ12と、加速度センサ13と、走行位置計測装置14と、車両の折方向及び走行路の制限速度を含む交通状況を取得するための交通状況取得部312と、加速特性学習処理ルーチンを実現するためのプログラムと、速度センサ12からの車速、走行位置計測装置14からの走行位置、及び交通状況取得部312からの交通状況に基づいて、加速操作の異常を検出する異常検出処理ルーチンを実現するためのプログラムとを格納したコンピュータ316と、加速操作の異常検出に関する警報を運転者に提示するための警報装置318とを備えている。
【0062】
交通状況取得部312は、メモリ(図示省略)に記憶された道路地図データと走行位置計測装置14で計測される現在の走行位置とに基づいて、走行している走行路の制限速度や走行路の折方向(直進、右折、左折)を取得する。なお、交通状況取得部312は、路側に設定された通信装置から、走行している走行路の制限速度や走行路の折方向(直進、右折、左折)を取得するようにしてもよい。
【0063】
コンピュータ316は、速度センサ12から出力される車速と、加速度センサ13から出力される加速度と、走行位置計測装置14から出力される走行位置と、交通状況取得部312から出力される走行路の折方向とを時系列に連続して記録する走行データ記録部320と、走行データ記録部20に記録された走行データに基づいて、各折方向に対する加速操作時の車速の時系列変化の特性である加速特性を表わす特徴量を算出する特徴量算出部322と、算出された特徴量を折方向毎に記憶する特徴量記憶部326とを備えている。
【0064】
また、コンピュータ316は、加速度センサ13から出力される加速度に基づいて、加速度が発生したことを検出する加速検出部328と、加速検出部328によって加速度発生が検出されたときに、速度センサ12から出力された車速、走行位置計測装置14から出力される走行位置、交通状況取得部312から取得される制限速度や折方向、及び特徴量記憶部326に記憶された特徴量に基づいて、車速の正常な時系列変化の範囲を予測する範囲予測部330と、範囲予測部330で予測された車速の時系列変化の範囲及び速度センサ12から出力された車速の時系列変化に基づいて、加速操作の異常状態を検出し、警報装置318によって警告情報を提示させる異常検出部332とを備えている。
【0065】
特徴量算出部322は、走行データ記録部320に記録された走行データから、加速操作が行なわれている期間の走行データを複数抽出し、抽出された各加速操作期間の走行データの車速及び加速度の時系列データから、上述した加速行動モデルを用いて、時定数Tを各々算出する。そして、各加速操作期間の走行データから、加速開始地点の車速、加速開始地点の位置、加速終了地点の目標車速、及び加速終了地点の目標位置を取得し、各加速操作期間について、取得された各値と算出された時定数Tとに基づいて、走行路の折方向毎に、加速特性を表わす特徴量Kを算出する。
【0066】
図8に示すように、折方向による加速特性の違いから、特徴量Kが折方向によって変化するため、折方向別に、複数の特徴量Kを特徴量記憶部326に記憶しておく。
【0067】
範囲予測部330は、加速検出部328によって加速度発生が検出され、加速操作が開始されたと判断されると、以下に説明するように、車速の正常な時系列変化の範囲を予測する。まず、交通状況取得部312から出力された折方向に対応する特徴量を特徴量記憶部326から複数取得し、また、速度センサ12から出力された車速を、加速開始地点の車速とし、走行位置計測装置14から出力された走行位置を、加速開始地点の走行位置とする。
【0068】
また、交通状況取得部312から出力された走行路の制限速度を、予測される加速終了地点の目標車速とし、また、図9に示すような、加速終了地点の目標位置と目標車速との予め定められた関係に基づいて、予測された目標車速voptとメモリ(図示省略)に予め記録された加速度aとに対する加速終了地点の目標位置doptを、以下の(4)式によって算出する。
【0069】
【数4】

【0070】
なお、メモリに予め記録された加速度aの値は、加速または減速走行時に加速度センサ13から出力された加速度の平均加速度の絶対値であり、この加速度を前もって計測して、メモリに記録しておく。
【0071】
そして、上記のように取得された折方向に対する複数の特徴量の各々について、加速開始地点の車速、加速開始地点の走行位置、加速終了地点の目標車速、及び加速終了地点の位置に基づいて、加速行動モデルを用いて、予想される車速の正常な時系列変化を算出し、算出された複数の車速の時系列変化に基づいて、図10に示すような車速の正常な時系列変化の範囲を予測する。
【0072】
異常検出部332は、速度センサ12から出力された車速の時系列変化と、範囲予測部330によって予測された車速の時系列変化の範囲とを比較して、上記図10に示すように、検出された車速の時系列変化が予測された車速の時系列変化の範囲から外れた場合を、加速操作の異常状態として検出する。
【0073】
警報装置318は、異常検出部332によって、加速操作の異常状態が検出された場合に、警告情報を運転者に提示して、運転者に注意を促す。
【0074】
次に、第3の実施の形態に係る運転支援装置310の作用について説明する。
【0075】
運転者が車両の運転を開始すると、第1の実施の形態と同様に、加速特性学習処理ルーチンがコンピュータ316によって実行される。これによって、各折方向について、加速特性を表わす特徴量が算出され、折方向毎に複数の特徴量が特徴量記憶部326に記憶される。
【0076】
また、運転者が車両を運転しているときに、コンピュータ316によって、図11に示す運転支援処理ルーチンが実行される。まず、ステップ350において、加速度の発生が検出されたか否かを判定し、加速度センサ13から出力された加速度に基づいて、加速度が発生していないと判定された場合には、加速操作が開始されていないと判断し、上記ステップ350を繰り返すが、加速度センサ13から出力された加速度に基づいて、加速度が発生したと判定された場合には、加速操作が開始されたと判断し、ステップ352へ進む。
【0077】
ステップ352では、速度センサ12で検出された車速を加速開始地点の車速として取得すると共に、走行位置計測装置14で計測された走行位置を加速開始地点の位置として取得し、そして、ステップ354で、交通状況取得部312から走行路の折方向を取得すると共に、制限速度を、予測される加速終了地点の目標車速として取得する。
【0078】
次のステップ356では、上記ステップ354で取得された折方向に対する複数の特徴量を、特徴量記憶部326から取得し、ステップ358において、上記ステップ356で取得された複数の特徴量、上記ステップ352で取得された加速開始地点の車速、位置、及び上記ステップ354で取得された加速終了地点の目標車速に基づいて、車速の正常な時系列変化の範囲を予測する。
【0079】
そして、ステップ360において、速度センサ12で検出された車速を加速操作中の車速として取得し、ステップ362において、上記ステップ358で予測された車速の時系列変化の範囲と上記ステップ360で検出された車速の時系列変化とを比較して、加速操作が異常状態でないか否かを判定する。上記ステップ360で取得された車速の時系列変化が、予測された範囲から外れた場合には、加速操作が異常状態であると判断し、ステップ364において、警報装置318によって、警告情報を運転者に提示させて、ステップ350へ戻る。一方、上記ステップ360で取得された車速の時系列変化が、予測された範囲内である場合には、加速操作が正常状態であると判断し、ステップ366において、加速度センサ13から出力される加速度に基づいて、加速操作が終了したか否かを判定し、加速度が0より大きい場合には、加速操作が終了していないと判断し、ステップ360へ戻るが、一方、加速度がほぼ0になった場合には、加速操作が終了したと判断し、ステップ350へ戻る。
【0080】
上記のように運転支援処理ルーチンを実行すると、加速操作が異常状態になったときに、警告情報が提示されて、運転者が安全な加速操作を行なうように促されるため、安全運転が行なわれるように運転支援される。
【0081】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る運転支援装置は、加速操作を行うときの車速の時系列変化の特性を表わす特徴量を算出し、算出した特徴量、検出された車速、及び予測された目標車速に基づいて車速の正常な時系列変化の範囲を予測して、検出された車速の時系列変化と車速の正常な時系列変化の範囲とを比較して、警告情報の提示を行うため、運転者の加速特性を考慮して、個人に合わせた適切な警報提示を行なうことができる。
【0082】
また、折方向別に算出された特徴量を用いて、運転支援を行なうため、直進、右折、及び左折に応じた運転者の加速特性を考慮して、適切な運転支援を行なうことができる。
【0083】
また、運転者の異常加速行動を検出して、警告情報の提示を行なうことにより、事故を減らすことができる。
【0084】
また、加速操作期間における車速の時系列変化を数値化した特徴量に基づいて、運転支援を行うため、状況や個人に合わせた柔軟で最適な運転支援が可能になる。
【0085】
なお、上記の実施の形態では、走行路の制限速度を取得して、加速終了地点の目標車速を予測する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、時間帯別平均車速やプローブカーなどから得られる現在の平均車速を取得して、加速終了地点の目標車速を予測するようにしてもよい。
【0086】
また、検出された車速の時系列変化と予測される車速の正常な時系列変化の範囲とを比較して、警告情報の提示を行う場合を例に説明したが、検出された車速の時系列変化と予測される車速の正常な時系列変化の範囲とを比較して、強制的に加速度を制限するなどの運転制御を行うようにしてもよい。この場合には、検出された車速の時系列変化が、予測される車速の正常な時系列変化の範囲を外れたときに、強制的に加速度を制限して、車速の時系列変化が、車速の正常な時系列変化の範囲内に収まるようにすればよい。
【0087】
次に、第4の実施の形態に係る運転支援装置について説明する。なお、第1の実施の形態及び第3の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0088】
第4の実施の形態では、加速特性を表わす特徴量を用いて、自動速度制御を行っている点が主に第3の実施の形態と異なっている。
【0089】
図12に示すように、第4の実施の形態に係る運転支援装置410は、速度センサ12と、加速度センサ13と、走行位置計測装置14と、交通状況取得部312と、加速特性学習処理ルーチンを実現するためのプログラムと、速度センサ12からの車速、走行位置計測装置14からの走行位置、及び交通状況取得部312からの交通状況に基づいて、自動速度制御を行う自動速度制御処理ルーチンを実現するためのプログラムとを格納したコンピュータ416と、アクセルペダルに設置され、かつ、アクセルペダルの踏み込み量を制御するためのアクチュエータ418とを備えている。
【0090】
コンピュータ416は、走行データ記録部320と、特徴量算出部322と、特徴量記憶部326とを備えている。
【0091】
また、コンピュータ416は、加速検出部328と、加速検出部328によって加速度発生が検出されたときに、速度センサ12から出力された車速、走行位置計測装置14から出力される走行位置、交通状況取得部312から取得される制限速度や折方向、及び特徴量記憶部326に記憶された特徴量に基づいて、加速操作が行なわれるときの車速の最適な時系列変化を算出する最適加速算出部430と、最適加速算出部430で算出された車速の時系列変化に基づいて、アクチュエータ418の作動を制御して、加速走行時の車速制御を行う運転制御部432とを備えている。
【0092】
最適加速算出部430は、加速検出部328によって加速度発生が検出され、加速操作が開始されたと判断されると、交通状況取得部312から出力された折方向に対応する特徴量を特徴量記憶部326から複数取得し、取得された複数の特徴量の平均値、加速開始地点の車速、加速開始地点の走行位置、加速終了地点の目標車速、及び加速終了地点の走行位置に基づいて、上述した加速行動モデルを用いて、車速の最適な時系列変化を算出する。
【0093】
運転制御部432は、最適加速算出部430によって算出された車速の時系列変化に基づいて、アクチュエータ418の作動を制御して、アクセルペダルの踏み込み量を制御することにより、算出された車速の時系列変化が得られるように、加速走行時の車速を制御する。
【0094】
次に、第4の実施の形態に係る運転支援装置410の作用について説明する。なお、第3の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0095】
車両が走行中であって、手動加速モードが選択されているときには、運転者が加速操作を行ない、このときに、第3の実施の形態と同様に、加速特性学習処理ルーチンがコンピュータ416によって実行される。これによって、各折方向について、運転者の加速特性を表わす特徴量が算出され、折方向毎に複数の特徴量が特徴量記憶部326に記憶される。
【0096】
そして、自動加速モードが選択されると、コンピュータ416によって、図13に示す自動速度制御処理ルーチンが実行される。
【0097】
まず、ステップ350において、加速度の発生が検出されたか否かを判定し、加速度が発生したと判定された場合には、加速操作が開始されたと判断し、ステップ352へ進み、速度センサ12で検出された車速を加速開始地点の車速として取得すると共に、走行位置計測装置14で計測された走行位置を加速開始地点の位置として取得し、そして、ステップ354で、交通状況取得部312から走行路の折方向を取得すると共に、制限速度を、予測される加速終了地点の目標車速として取得する。
【0098】
次のステップ356では、上記ステップ354で取得された折方向に対する複数の特徴量を、特徴量記憶部326から取得し、ステップ450において、上記ステップ356で取得された複数の特徴量、上記ステップ352で取得された加速開始地点の車速、位置、及び上記ステップ354で取得された加速終了地点の目標車速に基づいて、車速の最適な時系列変化を算出する。
【0099】
そして、ステップ452において、上記ステップ450で算出された車速の時系列変化に基づいて、アクチュエータ418の作動を制御して、アクセルペダルの踏み込み量を制御することにより、算出された車速の時系列変化が得られるように、加速走行時の車速を制御し、算出された車速の時系列変化で、目標車速が得られると、ステップ350へ戻る。
【0100】
以上説明したように、第4の実施の形態に係る運転支援装置によれば、加速操作を行うときの車速の時系列変化の特性を表わす特徴量を算出し、算出した特徴量、検出された車速、及び予測された目標車速に基づいて車速の最適な時系列変化を算出して、算出された車速の最適な時系列変化に基づいて、自動車速制御を行うため、運転者の加速特性を考慮して、個人に合わせた適切な自動車速制御を行なうことができる。また、運転者の体感に適した車速制御を行うことができるため、自動車速制御の不快感を軽減することができる。
【0101】
次に、第5の実施の形態に係る運転制御装置について説明する。なお、第1の実施の形態、第3の実施の形態、及び第4の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0102】
第5の実施の形態では、所望の飽和交通流率が実現されるように運転制御を行っている点が主に第3の実施の形態及び第4の実施の形態と異なっている。
【0103】
加速特性を表わす特徴量Kを変化させると、車速の時系列変化の特性が変わり、その結果、加速開始から終了までにかかる時間が変化する。このことを利用すると、特徴量Kを使って加速にかかる時間を制御することにより、図14に示すように、飽和交通流率を制御することができ、交差点における青信号期間でさばける通過車両台数を制御することができる。
【0104】
図15に示すように、第5の実施の形態に係る運転制御装置510は、速度センサ12と、加速度センサ13と、走行位置計測装置14と、交通状況取得部312と、所望の飽和交通流率を入力設定するための入力装置512と、加速特性学習処理ルーチンを実現するためのプログラムと、速度センサ12からの車速、走行位置計測装置14からの走行位置、交通状況取得部312からの交通状況、及び入力装置512から入力された飽和交通流率に基づいて自動速度制御を行う自動速度制御処理ルーチンを実現するためのプログラムとを格納したコンピュータ516と、アクチュエータ418とを備えている。
【0105】
コンピュータ516は、走行データ記録部320と、特徴量算出部322と、特徴量記憶部326とを備えている。
【0106】
また、コンピュータ516は、加速検出部328と、飽和交通流率と特徴量との対応関係を記憶した対応関係記憶部528と、加速検出部328によって加速度発生が検出されたときに、交通状況取得部312から取得される折方向、特徴量記憶部326に記憶された特徴量、及び入力装置512から入力設定された飽和交通流率に基づいて、最適な加速特性を表わす特徴量を決定する特徴量決定部529と、速度センサ12から出力された車速、走行位置計測装置14から出力される走行位置、交通状況取得部312から取得される制限速度、及び特徴量決定部529で決定された特徴量に基づいて、加速操作が行なわれるときの車速の最適な時系列変化を算出する最適加速算出部530と、運転制御部432とを備えている。
【0107】
対応関係記憶部528には、上記図14に示すような飽和交通流率と特徴量との対応関係を示すデータが折方向毎に記憶されている。
【0108】
特徴量決定部529では、以下に説明する方法により、最適な特徴量を決定する。まず、加速検出部328によって加速度発生が検出され、加速操作が開始されたと判断されると、交通状況取得部312から出力された折方向に対応し、かつ、入力設定された飽和交通流率に対応する特徴量を、対応関係記憶部528から取得する。そして、交通状況取得部312から出力された折方向に対応する特徴量を特徴量記憶部326から複数取得し、取得された複数の特徴量と、対応関係記憶部528から取得された特徴量とに基づいて、入力設定された飽和交通流率を実現し、かつ、運転者の加速特性に合った最適な加速特性を表わす特徴量を決定する。
【0109】
最適加速算出部530は、特徴量決定部529によって決定された特徴量、加速開始地点の車速、加速開始地点の走行位置、加速終了地点の目標車速、及び加速終了地点の位置に基づいて、加速行動モデルを用いて、車速の最適な時系列変化を算出する。
【0110】
次に、第5の実施の形態に係る運転制御装置510の作用について説明する。なお、第3の実施の形態及び第4の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0111】
まず、入力装置512によって、所望の飽和交通流率が予め入力設定される。そして、車両が走行中であって、手動加速モードが選択されているときには、運転者が加速操作を行ない、このときに、第3の実施の形態と同様に、加速特性学習処理ルーチンがコンピュータ416によって実行される。これによって、各折方向について、加速特性を表わす特徴量が算出され、折方向毎に複数の特徴量が特徴量記憶部326に記憶される。
【0112】
そして、自動加速モードが選択されると、コンピュータ516によって、図16に示す自動速度制御処理ルーチンが実行される。
【0113】
まず、ステップ350において、加速度の発生が検出されたか否かを判定し、加速度が発生したと判定された場合には、加速操作が開始されたと判断してステップ352へ進み、速度センサ12で検出された車速を加速開始地点の車速として取得すると共に、走行位置計測装置14で計測された走行位置を加速開始地点の位置として取得し、そして、ステップ354で、交通状況取得部312から走行路の折方向を取得すると共に、制限速度を、予測される加速終了地点の目標車速として取得する。
【0114】
次のステップ550では、対応関係記憶部528から、入力設定された飽和交通流率に対応する特徴量を取得し、ステップ356において、上記ステップ354で取得された折方向に対する複数の特徴量を、特徴量記憶部326から取得し、そして、ステップ552では、上記ステップ550で取得された特徴量及び上記ステップ356で取得された複数の特徴量に基づいて、最適な特徴量を決定する。
【0115】
次のステップ450では、上記ステップ552で決定された特徴量、上記ステップ352で取得された加速開始地点の車速、位置、及び上記ステップ354で取得された加速終了地点の目標車速に基づいて、車速の最適な時系列変化を算出する。
【0116】
そして、ステップ452において、上記ステップ450で算出された車速の時系列変化に基づいて、アクチュエータ418の作動を制御して、アクセルペダルの踏み込み量を制御することにより、算出された車速の時系列変化が得られるように、加速走行時の車速を制御し、算出された車速の時系列変化で、目標車速が得られると、ステップ350へ戻る。
【0117】
上記の自動速度制御処理ルーチンを実行することにより、所望の飽和交通流率に対応する特徴量に応じて、加速走行時の車速の時系列変化が制御されるため、所望の飽和交通流率が実現される。
【0118】
以上説明したように、第5の実施の形態に係る運転制御装置によれば、所望の飽和交通流率に対応する車速の時系列変化の特性を表わす特徴量、検出された車速、及び予測された目標車速に基づいて、所望の飽和交通流率を実現するための車速の時系列変化を算出し、算出された車速の最適な時系列変化を用いて、車速を制御するため、所望の飽和交通流率を実現することができる。また、車速を制御して、所望の飽和交通流率を実現することにより、渋滞緩和の効果を得ることができる。
【0119】
なお、上記の実施の形態では、飽和交通流率に対応し、かつ、学習によって記憶された運転者の加速特性を表わす特徴量を、最適な特徴量として決定する場合を例に説明したが、飽和交通流率に対応する特徴量と、学習により記憶された特徴量とが大きく異なる場合には、学習により記憶された特徴量の運転者に不快感を与えない許容範囲内であって、かつ、飽和交通流率に対応する特徴量の値を、最適な特徴量として決定すればよい。
【0120】
次に、第6の実施の形態に係る運転制御装置について説明する。なお、なお、第4の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0121】
第6の実施の形態に係る運転制御装置では、燃費が最大となるような加速特性を表わす特徴量を算出し、算出された特徴量を用いて、加速走行時の車速の時系列変化を算出する。そして、算出された車速の時系列変化に基づいて、アクチュエータ418の作動を制御して、アクセルペダルの踏み込み量を制御することにより、算出された車速の時系列変化となるように、加速走行時の車速を制御し、算出された車速の時系列変化で、目標車速を得る。
【0122】
このように、加速特性を表わす特徴量を用いて、車両の燃費を制御することができるため、省エネルギー自動速度制御を行って、燃費改善の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る運転支援装置の構成を示す概略図である。
【図2】加速操作期間における車速の時系列変化を示したグラフである。
【図3】加速行動モデルを示すイメージ図である。
【図4】各運転者の加速特性を表わす特徴量を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る運転支援装置における加速特性学習処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】加速操作期間における加速度の時系列変化を示したグラフである。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る運転支援装置の構成を示す概略図である。
【図8】各折方向に対する加速特性を表わす特徴量を示すグラフである。
【図9】目標車速と目標位置との関係を示すグラフである。
【図10】予測された車速の正常な時系列変化の範囲と正常な範囲な範囲から外れた車速の時系列変化とを示すグラフである。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る運転支援装置における運転支援処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る運転支援装置の構成を示す概略図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る運転支援装置における自動速度制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図14】特徴量と飽和交通流率との関係を示すグラフである。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係る運転支援装置の構成を示す概略図である。
【図16】本発明の第5の実施の形態に係る運転支援装置における自動速度制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0124】
10、310、410 運転支援装置
12 速度センサ
13 加速度センサ
14 走行位置計測装置
16、316、416、516コンピュータ
18 表示装置
20、320 走行データ記録部
22、322 特徴量算出部
26、326 特徴量記憶部
312 交通状況取得部
318 警報装置
330 範囲予測部
332 異常検出部
418 アクチュエータ
430、530 最適加速算出部
432 運転制御部
510 運転制御装置
512 入力装置
528 対応関係記憶部
529 特徴量決定部
530 最適加速算出部
K 特徴量
T 時定数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行時の車速の時系列データを記憶した記憶手段と、
前記時系列データに基づいて、車両の運転者が加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記特徴量に基づいて、運転支援を行う運転支援手段と、
を含む運転支援装置。
【請求項2】
前記特徴量を、前記車両の運転者が加速操作を行なったときの加速開始地点及び加速終了地点の各々での車速と、前記加速開始地点及び前記加速終了地点の各々の位置と、前記加速操作を行なったときの車速の時定数とに基づいて定まる特徴量とした請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記特徴量を、前記車両の運転者が加速操作を行なったときの加速終了地点で目標車速が得られるように一定加速度で走行したときの加速開始からの所要時間と、前記加速操作を行なったときの車速の時定数とに基づいて定まる特徴量とした請求項1記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記運転支援手段は、前記特徴量を前記運転者に提示して運転支援を行なう請求項1〜3の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記車速を時系列に連続して検出する検出手段と、
前記運転者による加速操作の目標車速を予測する車速予測手段とを更に含み、
前記運転支援手段は、前記運転者が加速操作を行なうときに、前記算出手段によって算出された前記特徴量、前記検出手段によって検出された車速、及び前記予測手段によって予測された前記目標車速に基づいて、車速の時系列変化を予測し、前記予測した前記車速の時系列変化と、前記検出手段によって検出された前記車速の時系列変化とに基づいて、前記運転支援として、警告情報の提示又は車速制御を行う請求項1〜3の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記車速を検出する検出手段と、
前記運転者による加速操作の目標車速を予測する車速予測手段とを更に含み、
前記運転支援手段は、前記運転者が加速操作を行なうときに、前記算出手段によって算出された前記特徴量、前記検出手段によって検出された車速、及び前記予測手段によって予測された前記目標車速に基づいて、前記運転者が前記加速操作を行なうときの前記車速の時系列変化を算出し、前記算出した前記車速の時系列変化に基づいて、前記車速を制御する請求項1〜3の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記車速予測手段は、車両が走行している走行路の制限速度又は平均車速を取得して、前記取得した制限速度又は平均車速を前記目標車速として予測する請求項5又は6記載の運転支援装置。
【請求項8】
車両が走行している走行路の直進、右折、及び左折の何れであるかを示す情報を取得する取得手段を更に含み、
前記算出手段は、直進、右折、及び左折の各々における前記加速操作について、前記特徴量を算出し、
前記運転支援手段は、前記取得手段によって取得された車両が走行している走行路が直進、右折、及び左折の何れであるかを示す情報に応じた前記特徴量を用いて、前記運転支援を行う請求項5〜7の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項9】
飽和交通流率と車両の運転者が加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量との予め定められた関係に基づいて、所望の飽和交通流率に対応する前記特徴量を決定する決定手段と、
運転者の車両の速度を時系列に連続して検出する検出手段と、
前記運転者による加速操作の目標車速を予測する車速予測手段と、
前記運転者が加速操作を行なうときに、前記決定手段によって算出された前記特徴量、前記検出手段によって検出された車速、及び前記車速予測手段によって予測された前記目標車速に基づいて、前記運転者が前記加速操作を行なうときの前記車速の時系列変化を算出し、算出した前記時系列変化に基づいて、前記車速を制御する運転制御手段と、
を含む運転制御装置。
【請求項10】
コンピュータを、
車両走行時の車速の時系列データを記憶した記憶手段からの前記時系列データに基づいて、車両の運転者が加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量を算出する算出手段、及び
前記算出手段によって算出された前記特徴量に基づいて、運転支援を行う運転支援手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
コンピュータを、
飽和交通流率と車両の運転者が加速操作を行うときの車速の時系列変化の特徴量との予め定められた関係に基づいて、所望の飽和交通流率に対応する前記特徴量を決定する決定手段、
運転者の車両の速度を時系列に連続して検出する検出手段、
前記運転者による加速操作の目標車速を予測する車速予測手段、及び
前記運転者が加速操作を行なうときに、前記決定手段によって算出された前記特徴量、前記検出手段によって検出された車速、及び前記車速予測手段によって予測された前記目標車速に基づいて、前記運転者が前記加速操作を行なうときの前記車速の時系列変化を算出し、算出した前記時系列変化に基づいて、前記車速を制御する運転制御手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−1096(P2009−1096A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162412(P2007−162412)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】