説明

運転支援装置

【課題】運転者に混乱を与えることを防止できる運転支援装置を提供すること。
【解決手段】本発明による運転支援装置1は、路側の信号機から路側機4を介して、路側の信号機の信号の切換タイミングTcrを検出する信号検出手段3cと、路側の信号機の信号の切換タイミングTcrに基づき車両内において信号を表示する信号表示手段3eと、路側の信号機の信号の切換タイミングTcrに対する、信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcの最大遅延時間Tmaxを記憶する記憶手段3dとを備え、信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcより最大遅延時間Tmaxだけ前の切換準備タイミングTcpから信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcまでの間においては、信号表示手段3eが、切換準備タイミングTcpの前において表示する信号と、信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcの後において表示する信号の双方を表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用して好適な運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、交差点内において異なる道路から進入する車両の流れを整理して事故を防止するための手段として、所定の周期及び切換タイミングで青信号、黄信号、赤信号その他進行可能方向を示す矢印信号を含む信号を切り換える信号機が利用されており、運転者は信号機の信号に従って運行を行っている。この信号機の信号を認知するにあたっては、運転者の視覚に依拠しており、この視覚を補助し支援するため、カーナビゲーション装置等の車載機器において、信号を表示することが提案されている。
【0003】
この場合において、信号機から路側機を介して車両に対して、信号の切換状態を路車間通信又はネットワーク通信により通信する必要が生じるため、信号機や路側機及び車載機器の処理遅延時間に起因して、車内において表示される信号の切換タイミングが、路側の信号機の信号の切換タイミングに対して遅延してしまうことを防止する技術として、例えば特許文献1に記載されているように、路側の信号機における信号の切換パターンと、信号機と同期した時刻を取得して、信号機の信号の切換パターンに基づいて、車載機器において路側の信号機の信号切換のタイミングを予測した上で、信号を表示することが提案されている。
【特許文献1】特開2005−147884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような特許文献1に記載の従来技術においては、信号機と同期した時刻と、信号機の信号の切換パターンに基づいて、路側の信号機の信号の切換タイミングを予測して、車内の信号の切換タイミングを路側の信号機の信号の切換タイミングに合わせているので、依然として、予測の演算処理に要する遅延時間に起因して、路側の信号機の信号の切換タイミングと、車内の信号の切換タイミングとがずれて、路側の信号機の表示する信号の切換タイミングに対して、車内の信号の切換タイミングが遅延する状態が生じてしまい、運転者に混乱を与えるという問題が依然として生じる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、運転者に混乱を与えることを防止できる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明に係る運転支援装置は、
路側の信号機から路側機を介して、前記路側の信号機の信号の切換タイミングを検出する信号検出手段と、前記路側の信号機の信号の切換タイミングに基づき車両内において信号を表示する信号表示手段と、前記路側の信号機の信号の切換タイミングに対する、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの最大遅延時間を記憶する記憶手段とを備え、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングより前記最大遅延時間だけ前の切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングの前において表示する信号と、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の双方を表示することを特徴とする。
【0007】
これによれば、前記路側の信号機の信号と、前記信号表示手段の表示する信号が相違する可能性がある、前記切換準備タイミングと前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間において、前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングの前において表示する信号と、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の双方を表示してあえて曖昧な表示とすることにより、これらの双方が表示すなわち点灯されている可能性があるように運転者に認知させ、前記相違により運転者が混乱することを防止することができる。
【0008】
ここで、前記運転支援装置において、
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記切換準備タイミングの前において表示する信号の濃淡を徐々に淡くすることが好ましい。
【0009】
これによれば、前記信号表示手段が前記切換準備タイミングの前において表示する信号が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間の遷移期間において、徐々に表示されなくなることを運転者に認知させることができる。
【0010】
加えて、前記運転支援装置において、
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の濃淡を徐々に濃くすることが好ましい。
【0011】
これによれば、前記信号表示手段が前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間の遷移期間において、徐々に表示されることを運転者に認知させることができる。
【0012】
あるいは、前記運転支援装置において、
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記切換準備タイミングの前において表示する信号の輝度を徐々に低くすることとしてもよい。
【0013】
これによっても、前記信号表示手段が前記切換準備タイミングの前において表示する信号が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間の遷移期間において、徐々に表示されなくなることを運転者に認知させることができる。
【0014】
加えて、前記運転支援装置において、
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の輝度を徐々に高くすることが好ましい。
【0015】
これによれば、前記信号表示手段が前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間の遷移期間において、徐々に表示されることを運転者に認知させることができる。
【0016】
あるいは、前記運転支援装置において、
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記切換準備タイミングの前において表示する信号の表示面積を徐々に小さくこととしてもよい。
【0017】
この表示面積を徐々に小さくする具体的手段としては、
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングの前において表示する信号の表示面積を同心円状に徐々に小さくしてもよいし、
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングの前において表示する信号の表示面積を、表示部分と非表示部分の境界を左右方向に移動させることで徐々に小さくしてもよい。
【0018】
これによっても、前記信号表示手段が前記切換準備タイミングの前において表示する信号が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間の遷移期間において、徐々に表示されなくなることを運転者に認知させることができる。
【0019】
加えて、前記運転支援装置において、
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の表示面積を徐々に大きくしてもよい。
【0020】
この表示面積を徐々に大きくする具体的手段としては、
前記信号表示手段が、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の表示面積を同心円状に徐々に大きくしてもよいし、
前記信号表示手段が、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の表示面積を、表示部分と非表示部分の境界を左右方向に移動させることで徐々に大きくしてもよい。
【0021】
これによれば、前記信号表示手段が前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間の遷移期間において、徐々に表示されることを運転者に認知させることができる。
【0022】
なお、前記運転支援装置において、
前記最大遅延時間は、前記信号機の有する処理遅延時間と、前記路側機の有する処理遅延時間と、前記信号検出手段の有する処理遅延時間及び前記信号表示手段の有する処理遅延時間に基づいて、予め算出されることとする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、運転者に混乱を与えることを防止できる運転支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明に係わる運転支援装置の一実施形態を示す模式図である。運転支援装置1は、路側の信号機に備えられた路側信号検出装置2と、車両に備えられたカーナビゲーションECU(Electronic Control Unit)3と、路側に備えられた路側機4とを備えて構成される。路側信号検出装置2と、路側機4とは、光ビーコン又は例えばDSRC(Dedicated Short Range Communication)向けに規格化された通信プロトコルを利用した路路間通信により接続され、路側機4と、カーナビゲーションECU3は同様に光ビーコン又は前述した通信プロトコルを利用した車車間通信により接続されている。
【0026】
ここで、路側信号検出装置2は路側の信号機に配置されるものであり、信号機に接続されて、信号機の青信号、黄信号、赤信号及び進行可能方向を示す矢印信号の現在の表示状態を含む切換のタイミングに関する情報を取得する。以下に、路側信号検出装置2について詳細に説明する。
【0027】
図2は、本発明に係わる運転支援装置1の一部をなす路側信号検出装置2の構成を示す模式図である。路側信号検出装置2は、情報収集装置60、信号検出部61とから構成される。
【0028】
信号検出部61は、通信機能を備える路側の信号機にLAN(Local Area Network)等の通信規格により接続されており、路側の信号機から、信号機の信号の切換タイミングに関する情報を検出する。
【0029】
情報収集装置60は、CPU605、入出力インターフェース601、メモリ602、RAM603、ROM604、通信装置606を備えて構成される。CPU605は、ROM604内に格納されたプログラムを実行し、メモリ602は、信号検出部61の取得した信号機の信号の切換タイミングに関する情報やプログラムを記憶する。
【0030】
ROM604はOSやデバイスプログラムを記憶している。RAM603は、プログラムを一時的に記憶する作業領域として機能する。CPU605はプログラムを実行することで信号検出部61から信号の切換タイミングに関する情報を取得し、メモリ602に記憶して、この信号機の信号の切換タイミングに関する情報を、通信装置606を介して路側機4に送信する。
【0031】
次に路側機4について図を用いて詳細に説明する。図3は、本発明に係わる運転支援装置1の一部をなす路側機4を示す模式図である。
【0032】
図3に示すように、路側機4はそれぞれバスで相互に接続されているCPU71、主記憶装置72、HDDなどの記憶装置73、通信装置74を備えて構成され、自車両の進行方向において、信号機の例えば数100m手前に設置される。
【0033】
CPU71は、OSやアプリケーションなどのプログラムを記憶装置73から読み込んでして実行することで種々の機能を提供すると共に、路側機4が行う処理を統括的に制御する。主記憶装置72はRAMにより構成され、OSやプログラム、データを一時保管する作業領域となる。記憶装置73は、HDDやフラッシュメモリなど不揮発性メモリであり、OS、プログラム、ドライバ等のファイル及び路側信号検出装置2から取得した信号機の信号の切換タイミングに関する情報が記憶されている。通信装置74は、通信装置606から送信された信号機の信号の切換タイミングに関する情報を受信するとともに、カーナビゲーションECU3に送信するものである。
【0034】
CPU71がプログラムを実行することで、情報収集装置60から通信装置606を介して送信された信号機の信号の切換タイミングに関する情報は、一旦記憶装置73に記憶され、記憶された信号機の信号の切換タイミングに関する情報は、カーナビゲーションECU3の信号検出手段3cの要求に基づいて通信装置12を介してカーナビゲーションECU3に転送される。
【0035】
次にカーナビゲーションECU3について図を用いて詳細に説明する。図4は、本発明に係わる運転支援装置1の一部をなすカーナビゲーションECU3の一実施態様を示す模式図である。
【0036】
カーナビゲーションECU3には、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)アンテナ5と、IMU(イナーシャメジャメントユニット)6と、ステアリングセンサ7と、受信機8と、データベース9と、ディスプレイ10が接続される。
【0037】
さらに、カーナビゲーションECU3には、ABS(Anti Lock Brake System)11と、通信装置12がCAN(Controller Area Network)等の通信規格により接続される。
【0038】
カーナビゲーションECU3は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う探索手段3a、表示手段3b、信号検出手段3c、記憶手段3d、信号表示手段3eとして機能するものである。
【0039】
GPSアンテナ5は、地球上空に打ち上げられた複数の衛星の内三個の衛星からの電波を受信し、これらの電波をもとに、カーナビゲーションECU3の探索手段3aは、例えば三角測量の原理で自車の位置する現在地つまりは経度と緯度を測定する。なお、経度と緯度に加え高度も測定する場合には四個の衛星を用いる。
【0040】
ここで、IMU6は車両のヨーレートを検出するものであり、ステアリングセンサ7は車両の操舵装置に設けられて操舵角を検出するものである。データベース9はCD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体により構成され、表示用の地図情報と、探索用の地図情報を格納し記憶している。ディスプレイ10は入力された目的地をもとにカーナビゲーションECU3の探索手段3aが探索したルート情報をカーナビゲーションECU3の表示手段3bの指令に基づき表示用の地図情報とともに表示するものであるとともに、タッチパネルすなわち運転者が目的地等の探索条件を入力する入力装置としても機能する。
【0041】
また、ABS11は制動時の車輪のロックを防止する装置であり、その制御に用いるための車速を図示しない車輪速センサから取得しており、カーナビゲーションECU3はその車速をABS11からCAN等の通信規格による伝送により取得している。
【0042】
さらに、受信機8は光あるいは電波ビーコンに準拠したものであり、VICS(Vehicle Information & Communication System:道路交通情報システム)からの渋滞情報を含む道路情報を受信する。
【0043】
上述したGPSアンテナ5を用いたカーナビゲーションECU3の探索手段3aによる自車の位置する現在地の測定は、衛星からの電波を利用する特性上、高層ビルの谷間に自車が位置する場合やトンネル内を自車が走行している場合、あるいは、高架橋の下を自車が走行している場合などでは衛星からの電波をGPSアンテナ5が受信できないため、自車の現在地が測定できないという問題が生じる。
【0044】
このため、GPSアンテナ5が衛星から電波を受信できない場合には、カーナビゲーションECU3の探索手段3aは、ABS11から取得した車速とIMU6が検出したヨーレート、ステアリングセンサ7が検出した操舵角をもとにして、自車の移動距離と方向を計算して自車の現在地を自律航法により測定する。これにより、GPSアンテナ5を用いた自車の現在地の測定と併せて、トータルの自車の位置する現在地の測定の精度を高めている。
【0045】
そして、カーナビゲーションECU3の表示手段3bは、データベース9内の表示用の地図情報と、上述した方法により測定した自車の位置する現在地と、タッチパネルすなわちディスプレイ10により入力された目的地と、探索手段3aにより探索されたルート情報とを併せてディスプレイ10に表示する。
【0046】
加えて、カーナビゲーションECU3の信号検出手段3cは、路側機4に対して所定距離以内に接近した場合において、路側機4から、路側の信号機の信号の切換タイミングに関する情報を取得して、路側の信号機の信号の現在の状態と切換タイミングを検出する。カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eは、この切換タイミングに基づき、ディスプレイ10を用いて車両内において信号を表示する。
【0047】
さらに、記憶手段3dは、路側の信号機の信号の切換タイミングTcrに対する、信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcの最大遅延時間Tmaxを記憶する。これに加えて、信号表示手段3eは、信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcより最大遅延時間Tmaxだけ前の切換準備タイミングTcpから信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcまでの間においては、切換準備タイミングTcpの前において表示する信号と、信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcの後において表示する信号の双方を表示する。
【0048】
ここで、最大遅延時間Tmaxは、路側の信号機が路側機に信号の切換タイミングTcrに関する情報を伝送するにあたって想定される最大の処理遅延時間と、路側機4が信号の切換タイミングTcrに関する情報を信号機から受信してカーナビゲーションECU3に送信するにあたって想定される最大の処理遅延時間と、カーナビゲーションECU3の信号検出手段3cが切換タイミングTcrに関する情報を路側機4から受信して切換タイミングTcrを検出するにあたって想定される最大の処理遅延時間と、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eが切換タイミングTcrに基づいてディスプレイ10を用いて信号を切り換えるにあたって想定される最大の処理遅延時間及び余裕時間に基づいて、予め算出される定数である。
【0049】
以下に、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eによる、ディスプレイ10を用いた表示内容を、図を用いて説明する。図5は、本発明に係わる運転支援装置1によるディスプレイ10を用いた車両内における信号の一表示態様を示す模式図である。
【0050】
図5中右側に示すように、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eは、ディスプレイ10を用いて、切換準備タイミングTcpから信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcまでの間においては、切換準備タイミングTcpの前において表示する信号、ここでは左側の青信号の濃淡を徐々に淡くするとともに輝度を徐々に低くする。
【0051】
加えて、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eは、切換準備タイミングTcpから信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcまでの間においては、信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcの後において表示する信号、ここでは中央の黄信号の濃淡を徐々に濃くするとともに、輝度を徐々に高くする。
【0052】
以下に以上述べた運転支援装置1のカーナビゲーションECU3の制御内容を、フローチャートとタイムチャートを用いて説明する。図6は、本発明に係わる運転支援装置1の制御内容を示すフローチャートである。図7は、本発明に係わる運転支援装置1の制御内容を示すタイムチャートである。
【0053】
S1において、カーナビゲーションECU3の信号検出手段3cは、路側の信号機から、路側機4及び通信装置12を介して、路側の信号機の切換タイミングTcrに関する情報を取得し、S2において、信号検出手段3cは、記憶手段3dから運転支援装置1の処理に関する予め算出された最大遅延時間Tmaxを読み出し、S3において、信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcと最大遅延時間Tmaxに基づき、切換準備タイミングTcpを切換タイミングTcから最大遅延時間Tmaxを減ずることにより算出する。
【0054】
つづいて、S4において、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eは、ディスプレイ10を用いて、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間においては、切換準備タイミングTcpの前において表示する信号、ここでは左側の青信号の濃淡を徐々に淡くするとともに輝度を徐々に低くする。
【0055】
さらに、S5において、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eは、ディスプレイ10を用いて、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間においては、切換準備タイミングTcpの前において表示する信号と、切換タイミングTcの後において表示する信号の双方を表示する。
【0056】
S4及びS5にステップを実行することにより、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eは、ディスプレイ10を用いて、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間においては、切換準備タイミングTcpの前において表示する信号と、切換タイミングTcの後において表示する信号の双方を表示する。
【0057】
このような制御において、例えば、最大遅延時間Tmaxが2秒で、実際の運転支援装置1の遅延時間が0.5秒であり、自車両が路側機4の近傍を通過して、路側の信号機の信号の切換タイミングTcrが10秒後であり、現在の信号が青信号であることを含む信号の切換タイミングTcrを含む情報を、カーナビゲーションECU3の信号検出手段3cが検出した場合において、路側の信号と車内のディスプレイ10に表示される信号の遷移期間は、図7に示すようになる。
【0058】
すなわち、路側の信号機が信号の切換タイミングTcrを含む情報を発信した時刻Taから、カーナビゲーションECU3の信号検出手段3cが信号の切換タイミングTcrを含む情報を受信する時刻は0.5秒遅延し、その時点から10秒後である信号表示手段3eの表示する信号の切換タイミングTcをカウントするため、切換タイミングTcは路側の信号機の信号の切換タイミングTcrに対して0.5秒遅延することになる。
【0059】
そこで、予め運転支援装置1全体としての最大遅延時間Tmaxを2秒と見積もって、切換タイミングTcよりもTmax=2秒前に、切換準備タイミングTcpを設定して、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcにおいては、青信号と黄信号の双方が表示され、青信号の濃淡は徐々に淡くかつ輝度を徐々に低くし、黄信号の濃淡は徐々に濃くかつ輝度を徐々に高くする。
【0060】
以上述べた、本実施例に係わる運転支援装置1によれば以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、本実施例のような制御を行わない従来技術においては、図8に示すように、路側の信号機の信号と、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eがディスプレイ10により表示する信号が、例えば青信号から黄信号に切り替わるタイミングが、運転支援装置1の有する実際の遅延時間0.5秒に起因して、相違して、路側の信号との点灯すなわち表示状態と車内のディスプレイ10の表示する信号の表示状態が相違する可能性がある。
【0061】
ところが、本実施例のような制御を行うことにより、切換準備タイミングTcpと切換タイミングTcまでの間において、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eが、切換準備タイミングTcpの前において表示する信号ここでは青信号と、切換タイミングTcの後において表示する信号ここでは黄信号の双方を表示してあえて曖昧な表示とすることにより、これらの双方が表示すなわち点灯されている可能性があるように運転者に認知させ、路側の信号機の信号の切換タイミングと車内のディスプレイ10に表示された信号の切換タイミングの相違により運転者が混乱することを防止することができる。加えて、車内にディスプレイ10により表示される信号と、路側の信号機の信号が相違することに起因して、運転者の運転支援装置1に対する信頼性を損なうことを回避することもできる。
【0062】
加えて、信号表示手段3eが、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間においては、切換準備タイミングTcpの前において表示する信号の濃淡を徐々に淡くし、輝度を徐々に低くすることにより、信号表示手段3eが切換準備タイミングTcpの前において表示する信号が、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間の遷移期間において、徐々に表示されなくなることを運転者に認知させることができる。
【0063】
さらに、信号表示手段3eが、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間においては、切換タイミングTcの後において表示する信号の濃淡を徐々に濃くし、輝度を徐々に高くすることにより、信号表示手段3eが切換タイミングTcの後において表示する信号が、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間の遷移期間において、徐々に表示されることを運転者に認知させることができる。
【0064】
なお、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間の遷移期間において、上述したように濃淡と輝度を徐々に変化させることに換えて、以下のような表示形態を採用することもできる。以下それについて述べる。図9及び図10は、本発明に係わる運転支援装置1によるディスプレイ10を用いた車両内における信号の他の表示態様を示す模式図である。
【0065】
図9に示すように、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eは、ディスプレイ10により、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間においては、切換準備タイミングTcpの前において表示する信号の表示面積を同心円状に徐々に小さくし、切換タイミングTcの後において表示する信号の表示面積を同心円状に徐々に大きくする。
【0066】
これによっても、信号表示手段3eが切換準備タイミングTcpの前において表示する信号が、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間の遷移期間において、徐々に表示されなくなることを運転者に認知させることができる。これとともに、信号表示手段3eが切換タイミングTcの後において表示する信号が、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間の遷移期間において、徐々に表示されることを運転者に認知させることができる。
【0067】
あるいは、図10に示すように、カーナビゲーションECU3の信号表示手段3eは、ディスプレイ10により、切換準備タイミングTcpの前において表示する信号の表示面積を、表示部分と非表示部分の境界を左右方向に移動させることで徐々に小さくし、切換タイミングTcの後において表示する信号の表示面積を、表示部分と非表示部分の境界を左右方向に移動させることで徐々に大きくしてもよい。
【0068】
この図10に示す表示形態においても、図9に示したものと同様に、信号表示手段3eが切換準備タイミングTcpの前において表示する信号が、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間の遷移期間において、徐々に表示されなくなることを運転者に認知させることができる。同様に、信号表示手段3eが切換タイミングTcの後において表示する信号が、切換準備タイミングTcpから切換タイミングTcまでの間の遷移期間において、徐々に表示されることを運転者に認知させることができる。
【0069】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0070】
例えば、上述した実施例においては、信号機の信号の切換タイミングに関する情報を信号機の路側信号検出装置2により検出して、路側機4を介して、これらの情報を、カーナビゲーションECU3が取得したが、カーナビゲーションECU3が通信機能を備える信号機から直接取得する構成とすることもできる。
【0071】
あるいは、運転支援装置1を、路側の信号機に備えられた路側信号検出装置2と、車両に備えられたカーナビゲーションECU3と、情報センタに備えられたサーバ4と、基地局5とを備えて構成することもできる。この場合においては、路側信号検出装置2と、カーナビゲーションECU3と、サーバ4とは、ネットワークを介して接続されると共に、カーナビゲーションECU3はネットワークに接続された基地局5と無線又は有線で通信可能に構成される。
【0072】
なお、このネットワークは、例えば、公衆電話交換網(PSTN)やデジタル通信ネットワーク(ISDN)、光ファイバ等の有線、又は、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN網、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)網、衛星電話、ビーコン等の無線にて構成されるものである。
【0073】
さらに、上述した実施例においては、信号機の備える信号が青信号、黄信号、赤信号である場合を示したが、車両の進行可能方向を示す矢印信号である場合でも同様に、路側の信号機から受信した信号の切換タイミングから最大遅延時間を差し引いた切換準備タイミングから、車内の信号の切換タイミングまでの間の遷移期間において、濃淡や輝度又は表示面積を徐々に変化させて、切換前後の信号の双方を表示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、運転者に混乱を与えることを防止できる運転支援装置を提供することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る運転支援装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る運転支援装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る運転支援装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る運転支援装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図5】本発明に係わる運転支援装置による車両内における信号の表示態様を示す模式図である。
【図6】本発明に係る運転支援装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係わる運転支援装置の一実施形態の制御内容を示すタイムチャートである。
【図8】従来技術の運転支援装置による車両内における信号の表示態様を示す模式図である。
【図9】本発明に係わる運転支援装置による車両内における信号の表示態様を示す模式図である。
【図10】本発明に係わる運転支援装置による車両内における信号の表示態様を示す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1 運転支援装置
2 路側信号検出装置
3 カーナビゲーションECU
3a 探索手段
3b 表示手段
3c 信号検出手段
3d 記憶手段
3e 信号表示手段
4 路側機
5 GPSアンテナ
6 IMU
7 ステアリングセンサ
8 受信機
9 データベース
10 ディスプレイ
11 ABS
12 通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側の信号機から路側機を介して、前記路側の信号機の信号の切換タイミングを検出する信号検出手段と、前記路側の信号機の信号の切換タイミングに基づき車両内において信号を表示する信号表示手段と、前記路側の信号機の信号の切換タイミングに対する、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの最大遅延時間を記憶する記憶手段とを備え、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングより前記最大遅延時間だけ前の切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングの前において表示する信号と、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の双方を表示することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記切換準備タイミングの前において表示する信号の濃淡を徐々に淡くすることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の濃淡を徐々に濃くすることを特徴とする請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記切換準備タイミングの前において表示する信号の輝度を徐々に低くすることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の輝度を徐々に高くすることを特徴とする請求項1又は4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記切換準備タイミングの前において表示する信号の表示面積を徐々に小さくことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングの前において表示する信号の表示面積を同心円状に徐々に小さくことを特徴とする請求項6に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングの前において表示する信号の表示面積を、表示部分と非表示部分の境界を左右方向に移動させることで徐々に小さくことを特徴とする請求項6に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記信号表示手段が、前記切換準備タイミングから前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングまでの間においては、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の表示面積を徐々に大きくすることを特徴とする請求項1又は6〜8に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記信号表示手段が、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の表示面積を同心円状に徐々に大きくことを特徴とする請求項9に記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記信号表示手段が、前記信号表示手段の表示する信号の切換タイミングの後において表示する信号の表示面積を、表示部分と非表示部分の境界を左右方向に移動させることで徐々に大きくことを特徴とする請求項9に記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記最大遅延時間が、前記信号機の有する処理遅延時間と、前記路側機の有する処理遅延時間と、前記信号検出手段の有する処理遅延時間及び前記信号表示手段の有する処理遅延時間に基づいて、予め算出されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−157465(P2009−157465A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332271(P2007−332271)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】