説明

運転者状態推定装置

【課題】 車両の安全性を向上させること。
【解決手段】 運転者状態推定装置1は視対象までの奥行きを検出する視対象奥行検出手段3aと、視対象奥行検出手段3aにより検出された奥行きと所定距離との大小関係に基づいて、運転者の視覚機能状態を推定する視覚機能推定手段3bと、を備えている。また、視覚機能推定手段3bは、視対象奥行検出手段3aにより検出された奥行きが所定距離より小さいときの単位時間当たりの頻度に基づいて、運転者の視覚機能状態を推定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の眼精疲労度を推定する運転者状態推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者がどの程度の注意力をどこに集中させているかを検出し、最適な注意配分を運転者に促すことが可能な注意配分制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−178367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の注意配分制御装置においては、運転者がどこに注意力を集中しているかを検出するだけで、運転者の眼精疲労状態を検出するものではない。したがって、運転者の眼精疲労状態に最適な車両制御が行われているとは言い難い。一方で、運転者の眼精疲労度が車両の安全性に与える影響は大きい。
【0004】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、車両の安全性を向上させることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、視対象までの奥行きを検出する視対象奥行検出手段と、上記視対象奥行検出手段により検出された上記奥行きと所定距離との大小関係に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定する視覚機能推定手段と、を備えることを特徴とする運転者状態推定装置である。
【0006】
この一態様によれば、上記視覚機能推定手段は、上記視対象奥行検出手段により検出された上記奥行きと所定距離との大小関係に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定する。これにより、上記運転者の視覚機能状態を推定することができ、更に、推定された上記視覚機能状態に応じて、運転者への警告、運転者の運転支援等を行うことが可能となり、車両の安全性を向上させることができる。
【0007】
また、この一態様において、上記視覚機能推定手段は、上記視対象奥行検出手段により検出された上記奥行きが上記所定距離より小さいときの単位時間当たりの頻度に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定することができる。上記奥行きが上記所定距離より小さいとき、運転者の上記視対象は近い位置にあるといえる。また、眼精疲労等の上記視覚機能状態によって、運転者が近くの上記視対象を注視するという生理現象が生じる。したがって、上記奥行きが上記所定距離より小さい状態である、運転者が近くの視対象を注視するときの上記単位時間当たりの頻度に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定することができる。
【0008】
さらに、この一態様において、上記視覚機能推定手段は、上記視対象奥行検出手段により検出された上記奥行きが上記所定距離より小さいときの時間割合に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定することができる。
【0009】
この一態様において、上記運転者が所定領域を注視する上記時間割合を検出する所定領域検出手段を更に備え、上記視覚機能推定手段は、上記所定領域検出手段から検出された上記時間割合と、上記視対象奥行検出手段により検出された上記奥行きが上記所定距離より小さいときの上記時間割合と、に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定するのが好ましい。例えば、運転者が意図的に注視するインパネ等の所定領域は、視覚機能状態と無関係な上記時間割合である。したがって、この無関係の上記時間割合を、例えば排除することにより、上記運転者の視覚機能状態を精度良く推定することができる。
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、運転者の視差角度を検出する視差角度検出手段と、上記視差角度検出手段により検出された上記視差角度と所定角度との大小関係に基づいて、上記運転者の視覚機能を推定する視覚機能推定手段と、を備えることを特徴とする運転者状態推定装置である。
【0011】
この一態様によれば、上記視覚機能推定手段は、上記視差角度検出手段により検出された上記視差角度と所定角度との大小関係に基づいて、上記運転者の視覚機能を推定する。これにより、上記運転者の視覚機能状態を推定することができ、更に推定された上記視覚機能状態に応じて、運転者への警告、運転者の運転支援等を行うことが可能となり、車両の安全性を向上させることができる。
【0012】
また、この一態様において、上記視覚機能推定手段は、上記視差角度検出手段により検出された上記視差角度が上記所定角度より大きいときの単位時間当たりの頻度に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定することができる。上記視差角度が上記所定角度より大きいとき、運転者の視対象は近い位置にあるといえる。また、眼精疲労等の視覚機能状態によって、運転者が近くの視対象を注視するという生理現象が生じる。したがって、上記視差角度が上記所定角度より大きい状態である、運転者が近くの視対象を注視するときの上記単位時間当たりの頻度に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定することができる。
【0013】
さらに、この一態様において、上記視覚機能推定手段は、上記視差角度検出手段により検出された上記視差角度が上記所定角度より大きいときの時間割合に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定することができる。
【0014】
この一態様において、上記運転者が所定領域を注視する上記時間割合を検出する所定領域検出手段を更に備え、上記視覚機能推定手段は、上記所定領域検出手段から検出された上記時間割合と、上記視差角度検出手段により検出された上記視差角度が上記所定角度より大きいときの上記時間割合と、に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定するのが好ましい。
【0015】
これら態様において、上記視覚機能推定手段は、上記大小関係を評価する為の複数の上記マップを有し、ウインドシールド上に物体が付着する頻度に応じて、上記マップを切り替えるのが好ましい。例えば、ウインドシールド上に物体が付着する頻度が増加すると、運転者は上記物体を視対象とする傾向が強くなる。したがって、当該傾向対応した最適なマップを選択することにより、上記評価を精度良く行うことができ、上記運転者の視覚機能状態を精度良く推定することができる。
【0016】
これら態様において、上記視覚機能推定手段は晴天用と雨天用との上記マップを切り替えるのが好ましい。晴天時と雨天時とでは、ウインドシールド上に物体が付着する頻度が大きく異なる。したがって、晴天用のマップと雨天用のマップとを切り替えることにより、晴天時および雨天時において、上記運転者の視覚機能状態を精度良く推定することができる。
【0017】
これら態様において、上記視覚機能推定手段により推定された上記運転者の視覚機能状態に基づいて、上記運転者に警告を行う警告手段を更に備えるのが好ましい。上記警告手段は、上記運転者の視覚機能状態に応じて警告を行うことから、運転者は上記視覚機能状態を認識することが可能となる。したがって、運転者の安全意識の向上に繋がる。
【0018】
これら態様において、上記視覚機能推定手段により推定された上記運転者の視覚機能状態に基づいて、上記運転者の運転支援を行う運転支援手段を更に備えるのが好ましい。上記運転支援手段は、上記運転者の視覚機能状態に応じて、上記運転者の運転支援を行うことから、運転者の視覚機能低下等が補助され、車両の安全性が向上する。
【0019】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、視対象までの奥行きを検出する視対象奥行検出ステップと、上記視対象奥行検出ステップにより検出された上記奥行きと所定距離との大小関係に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定する視覚機能推定ステップと、を備えることを特徴とする運転者状態推定方法であってもよい。
【0020】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、運転者の視差角度を検出する視差角度検出ステップと、上記視差角度検出ステップにより検出された上記視差角度と所定角度との大小関係に基づいて、上記運転者の視覚機能状態を推定する視覚機能推定ステップと、を備えることを特徴とする運転者状態推定方法であってもよい。
【0021】
なお、これら態様において、上記視覚機能状態とは、例えば眼精疲労度である。また、上記視対象までの奥行きとは、例えば上記運転者が注視する上記視対象と上記運転者の眼球までの距離を指す。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両の安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、運転支援システムの基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【0024】
図1は、本発明の一実施例に係る運転者状態推定装置のシステム構成を示す概略図である。本実施例に係る運転者状態推定装置1は、ECU(Electronic Control Unit、電子制御ユニット)3等の制御手段を中心に構成されている。
【0025】
ECU3は、マイクロコンピュータから構成されており、制御、演算プログラムに従って各種処理を実行するとともに、装置の各部を制御するCPU(Central Processing Unit)、CPUの実行プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、演算結果等を格納する読書き可能なRAM(Random Access Memory)、タイマ、カウンター、入力インターフェイス、及び出力インターフェイスを有している。
【0026】
ECU3には、運転者の左目の視線および右目の視線を検出するアイマークレコーダ等の視線検出部5が接続されている。アイマークレコーダ5は赤外線カメラにより検出された運転者の角膜部分における反射強度に基づいて、左右の視線を検出する。
【0027】
ECU3は視線検出部5により検出された左右の視線に基づいて、運転者が注視する視対象までの奥行きDを検出する視対象奥行検出手段3aを有している(図2)。視対象奥行検出手段3aは視線検出部5により検出された左右の視線に基づいて、左右の視線間の視差角度θを算出し、算出された左右の視差角度θと、予め設定された左右の眼球中心間距離(例えば、一般成人の平均値である約65mm)とに基づいて、視対象までの奥行きDを算出する。例えば、眼球中心間距離を65mmとすれば、奥行きDを以下の(1)式により算出される。
【0028】
奥行きD=180×0.065/θπ≒11.7/θπ(m) (1)
また、ECU3は視対象奥行検出手段3aにより検出された奥行きDと所定距離Da(例えば、運転者の頭部から車両前端に配設されたバンパまでの距離である2m、又は運転者の頭部からウインドシールドとバンパとの間の位置までの距離である1〜2m)との大小関係に基づいて、運転者の視覚機能状態を推定する視覚機能推定手段3bを有している。
【0029】
視覚機能推定手段3bは、奥行きDが所定距離Da以上となる状態(例えば、図2の視線が実線の状態)の頻度Hfと、所定距離Daよりも小さくなる状態(例えば、図2の視線が点線の状態)の頻度Hcとを算出し、頻度Hcの時間割合hを、以下の式(2)により算出する。
【0030】
h=Hc/(Hf+Hc) (2)
ところで、一般に運転者の眼精疲労度が高くなると、運転操作とは関係ない、ウインドシールド上にある汚れ等の、近くの視対象に運転者の注意が向き、運転者の注視点が近くなる生理現象が生じる(例えば、図2の視線が実線の状態)。この生理現象は、眼精疲労により眼球の水晶体の厚さを調節する筋肉が凝り水晶体が厚くなることから、近距離に焦点が合い易くなる為に生じる。
【0031】
上述した生理現象に基づいて、運転者の眼精疲労度が大きくなると、運転者の注視点が近くなる傾向が強くなることから、奥行きDが所定距離Daよりも小さくなる頻度Hcが増加し、奥行きDが所定距離Da以上となる頻度Hfが減少する。
【0032】
すなわち、運転者の眼精疲労度が大きくなると、上記(2)式より時間割合hの値が増加する。一方、運転者の眼精疲労度が小さくなると、運転者の注視点が遠方の適正位置となる傾向が強くなることから、奥行きDが所定距離Daよりも小さくなる頻度Hcが減少し、奥行きDが所定距離Da以上となる頻度Hfが増加する。すなわち、運転者の眼精疲労度が小さくなると、上記(2)式により時間割合hの値が減少する。
【0033】
なお、ECU3には車速を検出する車速センサ7が接続され、視覚機能推定手段3bは車速センサ7により検出された車速に基づいて、所定距離Daを設定してもよい。例えば、車速が増加すると、運転に必要な数秒先の(或いはより遠くの)道路情報、環境情報を視認する必要が出てくるため、所定距離Daの値を増加されてもよく、車速が減少すると車両近くの道路情報を視認する場合が多くなるため、所定距離Daの値を減少させてもよい。
【0034】
また、ECU3には操舵角を検出する舵角センサ9が接続され、視覚機能推定手段3bは舵角センサ9により検出された操舵角に基づいて、所定距離Daを設定してもよい。これにより、操舵角に応じた最適な所定距離Daが設定される。
【0035】
さらに、ECU3には運転者を認証する認証センサ11が接続されている。認証センサ11による運転者の認証として、例えばカメラ17により撮影された画像に基づいて、運転者が認証されてもよく、またスマートキーにより運転者が認証されてもよい。ここで、スマートキーとは、キー自身とECU3とが、自動的にIDコードの照合を行うキーである。
【0036】
認証センサ11により認証される運転者の個別情報(例えば、視力等の身体情報)が予め登録され、登録された運転者の個別情報に基づいて、所定距離Daが設定されてもよい。この場合、ECU3により個人認証が行われると、予め登録された運転者の個別情報が自動的に読み込まれ、視覚機能推定手段3bはこの個別情報に基づいて、所定距離Daを設定してもよい。
【0037】
これら車速センサ7、運転者の個別情報、舵角センサ9等からの情報に応じて、所定距離Daが最適な値に設定されることから、上述した時間割合hの誤差が低減され、後述する眼精疲労度レベルの評価の精度が向上する。
【0038】
また、運転者がインパネ上のスイッチ操作等を行う為に意図的に注視点を近くなり、奥行きDが所定距離Daよりも小さくなる場合がある。この場合、視覚機能推定手段3bは視線検出部5により検出された運転者の視線に基づいて、運転者の注視点がインパネ、ディスプレイ、ミラー等の所定領域内あるか否かを判断し、この所定領域内にあるときの頻度Hcdを算出してもよい。この場合、視覚機能推定手段3bは時間割合hを以下の式(3)により算出する。これにより、時間割合hの誤差が低減され、後述する眼精疲労度レベルの評価の精度が向上する。
【0039】
h=(Hc−Hcd)/(Hf+Hc−Hcd) (3)
上述のように算出された時間割合hの傾向について、運転者毎、天候状態毎等に統計処理が施され、統計結果のマップ(図3)がデータベース3cに予め記憶される。視覚機能推定手段3bは、このデータベース3cに記憶されたマップに基づいて、運転者の眼精疲労度のレベルを評価する。
【0040】
眼精疲労度のレベルは、例えば教示レベル、注意レベル、警告レベル等に区別され、この順で眼精疲労度のレベルが高くなるように設定されている。
【0041】
また、視覚機能推定手段3bは、時間割合hの正規分布、時間割合hの平均値hav、時間割合hの標準偏差σ等を算出して、統計処理を行う(図3)。
【0042】
さらに、視覚機能推定手段3bは、例えば時間割合hの正規分布において、時間割合hが平均値havに対して+1σ(標準偏差)から+2σの間(全体の約15%)となる場合を教示レベルとし、平均値havに対して+2σから+3σの間(全体の約1.5%)となる場合を注意レベルとし、平均値havに対して+3σ以上(全体の約0.15%)となる場合を警告レベルとしてもよい。
【0043】
なお、視力等の身体的状態等の違いに起因して、運転者毎に時間割合hの正規分布が異なる。したがって、上述した時間割合hの統計処理は運転者毎に行われ、運転者毎のマップが生成され、データベース3cに記憶される。
【0044】
同様に、時間割合hの統計処理は晴天時、雨天時等の天候状態毎に行われ、天候状態毎のマップが生成され、データベース3cに記憶されてもよい。この場合、晴天時よりも雨天時の方がウインドシールド上の付着物の量が増加傾向にあることから、晴天時よりも雨天時の方が運転者はウインドシール上を頻繁に注視する傾向にある。したがって、晴天時よりも雨天時の方が頻度Hcの値が増加し、時間割合hは増加傾向となる。
【0045】
このように、データベース3cに記憶された運転者毎、天候状態毎の最適なマップを用いて、上述した眼精疲労度のレベルが評価される為、当該評価の精度が向上する。
【0046】
なお、上述した天候状態は、ECU3に接続された雨滴センサ19、温度センサ21、カメラ17等からの情報に基づいて、判断される。
【0047】
また、上述した視対象奥行検出手段3a、および視覚機能推定手段3bはROMに格納されたプログラムにより実現されている。
【0048】
次に、本実施例に係る運転者状態推定装置1による眼精疲労度の推定方法のフローについて、説明する。
【0049】
図4は運転者状態推定装置1による眼精疲労度の推定方法のフローを示すフローチャートである。
【0050】
図4に示す如く、視線検出部5により左右の視線が検出される(S100)。
【0051】
次に、視対象奥行検出手段3aは視線検出部5により検出された左右の視線に基づいて、左右の視線間の視差角度θを算出する(S110)。
【0052】
その後、視対象奥行検出手段3aは予め設定された左右の眼球間距離と、算出された視差角度θと、に基づいて、注視点までの奥行きDを算出する(S120)。
【0053】
視覚機能推定手段3bは、算出された奥行きDが所定距離Da以上となる頻度Hfと、所定距離Daよりも小さくなる頻度Hcとに基づいて、時間割合hを上記式(2)により算出する(S130)。
【0054】
次に、視覚機能推定手段3bは個人認証センサ11からの認証と、雨滴センサ19からの情報に基づいて、運転者、および天候状態に対応するマップをデータベース3cから読み出し、このマップと、上記算出された時間割合hとに基づいて、運転者の眼精疲労度のレベルを算出する(S140)。
【0055】
以上、視対象奥行検出手段3aは運転者の奥行きDを算出し、視覚機能推定手段3bは算出された奥行きDに基づいて、運転者の眼精疲労度のレベルの評価を行う。これにより、生理現象に基づいて、運転者の眼精疲労度の評価が可能となる。また、この眼精疲労度に応じて、運転者への警告、車両制御等を行えば、車両の安全性が向上する。
【0056】
ECU3には、ECU3の視覚機能推定手段3bにより推定された運転者の眼精疲労度のレベルに基づいて、運転者に対し警告を行うスピーカ、表示器、ライト、バイブレータ等の警告手段13が接続されている。
【0057】
例えば、視覚機能推定手段3bにより推定された眼精疲労度のレベルに応じて、スピーカ13は警告音を発生し、表示器13は警告表示を行い、ライト13は点滅し、バイブレータ13は振動して、運転者に対し警告を与えてもよい。これにより、運転者は眼精疲労度のレベルを認識でき、安全性が向上する。
【0058】
また、視覚機能推定手段3bにより推定された眼精疲労度のレベルに応じて、運転者に対して酸素、匂いを供給することにより、運転者を活性化するようにしてもよい。これにより、運転者の眼精疲労度が軽減され得る。
【0059】
さらに、ECU3には、車間調整システム、車速制御システム(クルーズコントロール等)、レーンキープアシストシステム等の運転支援システム15が接続されていてもよい。運転支援システム15は、視覚機能推定手段3bにより推定された運転者の眼精疲労度のレベルに応じて、運転者の運転支援を行う。これにより、運転者の負荷が軽減され、安全性が向上する。
【0060】
例えば、車間調整システム15は、前方を走行する車両との距離を検出する超音波センサ等の車間距離センサ23を含み、視覚機能推定手段3bにより運転者の眼精疲労度のレベルと、車速センサ7からの車速と、車間距離センサ23からの距離とに基づいて、前方を走行する車両との間隔を安全な距離に自動調整する。より具体的には、車間調整システム15は、視覚機能推定手段3bによる運転者の眼精疲労度のレベルが教示レベルから警告レベルへと高くなり、時間割合hが所定値以上になると、前方を走行する車両との間隔を増加させるように制御してもよい。
【0061】
また、車速制御システム15は、視覚機能推定手段3bによる運転者の眼精疲労度のレベルが高くなり、時間割合hが所定値以上になると、ブレーキ又はアクセルを調整して車両が減速するような制御を行ってもよい。
【0062】
さらに、レーンキープアシストシステム15は、視覚機能推定手段3bによる運転者の眼精疲労度のレベルが高くなり、時間割合hが所定値以上になると、カメラ17からの画像情報、舵角センサ9からの操舵角、ヨーレートセンサからの車両のヨーレイト等に基づいて、車両が車線内を走行するように車両の操舵を自動制御してもよい。さらに、車両が車線から逸脱したときは、運転者に対して上述した警告手段13による警告を行うようにしてもよい。
【0063】
以上、視覚機能推定手段3bにより推定された運転者の眼精疲労度に応じて、警告手段13は運転者に対し警告を行う。これにより、運転者は眼精疲労度を認識でき、例えば休息等の必要性が認識できることから安全意識の向上に繋がる。
【0064】
また、視覚機能推定手段3bにより推定された運転者の眼精疲労度に応じて、運転支援システム15は運転者に対し運転支援を行う。この運転補助によって、運転者の負荷を軽減しつつ安全性の向上に繋がる。
【0065】
以上、本発明を実施するための最良の形態について一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0066】
例えば、上記一実施例において、視覚機能推定手段3bは、奥行きDが所定距離Da以上となる頻度Hfとし、所定距離Daよりも小さくなる頻度Hcとして、奥行きDが所定距離Daよりも小さくなる頻度Hcの時間割合hを算出しているが、視覚機能推定手段3bは視差角度θが所定角度θa以下となる頻度をHfと、所定角度θaよりも大きくなる頻度をHcとに基づいて、頻度Hcの時間割合hを算出してもよい。この場合、所定角度θaは、奥行きがDaとなるときの視差角度と一致する。
【0067】
また、上記一実施例において、運転者毎、天候状態毎に、教示レベル、注意レベル、警告レベル等の眼精疲労度のレベルの閾値を設定してもよい。これにより、眼精疲労度レベルの評価の精度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、運転支援等を行う車両制御システムに利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施例に係る運転者状態推定装置のシステム構成を示す概略図である。
【図2】視差角度、奥行き、および所定距離を示す図である。
【図3】時間割合の正規分布、時間割合の平均値、および眼精疲労度のレベルを示す図である。
【図4】運転者状態推定装置による眼精疲労度の推定方法のフローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 運転者状態推定装置
3 ECU
3a 視対象奥行検出手段
3b 視覚機能推定手段
3c データベース
5 視線検出部(アイマークレコーダ)
7 車速センサ
9 舵角センサ
11 認証センサ
13 警告手段(スピーカ、表示器、ライト、バイブレータ)
15 運転支援システム(車間調整システム、車速制御システム、レーンキープアシストシステム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視対象までの奥行きを検出する視対象奥行検出手段と、
前記視対象奥行検出手段により検出された前記奥行きと所定距離との大小関係に基づいて、前記運転者の視覚機能状態を推定する視覚機能推定手段と、を備えることを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項2】
請求項1記載の運転者状態推定装置であって、
前記視覚機能推定手段は、前記視対象奥行検出手段により検出された前記奥行きが前記所定距離より小さいときの単位時間当たりの頻度に基づいて、前記運転者の視覚機能状態を推定することを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項3】
請求項1記載の運転者状態推定装置であって、
前記視覚機能推定手段は、前記視対象奥行検出手段により検出された前記奥行きが前記所定距離より小さいときの時間割合に基づいて、前記運転者の視覚機能状態を推定することを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項4】
請求項3記載の運転者状態推定装置であって、
前記運転者が所定領域を注視する前記時間割合を検出する所定領域検出手段を更に備え、
前記視覚機能推定手段は、前記所定領域検出手段から検出された前記時間割合と、前記視対象奥行検出手段により検出された前記奥行きが前記所定距離より小さいときの前記時間割合と、に基づいて、前記運転者の視覚機能状態を推定することを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項5】
運転者の視差角度を検出する視差角度検出手段と、
前記視差角度検出手段により検出された前記視差角度と所定角度との大小関係に基づいて、前記運転者の視覚機能状態を推定する視覚機能推定手段と、を備えることを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項6】
請求項5記載の運転者状態推定装置であって、
前記視覚機能推定手段は、前記視差角度検出手段により検出された前記視差角度が前記所定角度より大きいときの単位時間当たりの頻度に基づいて、前記運転者の視覚機能状態を推定することを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項7】
請求項5記載の運転者状態推定装置であって、
前記視覚機能推定手段は、前記視差角度検出手段により検出された前記視差角度が前記所定角度より大きいときの時間割合に基づいて、前記運転者の視覚機能状態を推定することを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項8】
請求項7記載の運転者状態推定装置であって、
前記運転者が所定領域を注視する前記時間割合を検出する所定領域検出手段を更に備え、
前記視覚機能推定手段は、前記所定領域検出手段から検出された前記時間割合と、前記視差角度検出手段により検出された前記視差角度が前記所定角度より大きいときの前記時間割合と、に基づいて、前記運転者の視覚機能状態を推定することを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずれか1項記載の運転者状態推定装置であって、
前記視覚機能状態は眼精疲労度であることを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちいずれか1項記載の運転者状態推定装置であって、
前記視覚機能推定手段は、前記大小関係を評価する為のマップを有し、ウインドシールド上に物体が付着する頻度に応じて、前記マップを切り替えることを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項11】
請求項10記載の運転者状態推定装置であって、
前記視覚機能推定手段は、晴天用と雨天用との前記マップを切り替えることを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちいずれか1項記載の運転者状態推定装置であって、
前記視覚機能推定手段により推定された前記運転者の視覚機能状態に基づいて、前記運転者に警告を行う警告手段を更に備えることを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちいずれか1項記載の運転者状態推定装置であって、
前記視覚機能推定手段により推定された前記運転者の視覚機能状態に基づいて、前記運転者の運転支援を行う運転支援手段を更に備えることを特徴とする運転者状態推定装置。
【請求項14】
視対象までの奥行きを検出する視対象奥行検出ステップと、
前記視対象奥行検出ステップにより検出された前記奥行きと所定距離との大小関係に基づいて、前記運転者の視覚機能状態を推定する視覚機能推定ステップと、を備えることを特徴とする運転者状態推定方法。
【請求項15】
運転者の視差角度を検出する視差角度検出ステップと、
前記視差角度検出ステップにより検出された前記視差角度と所定角度との大小関係に基づいて、前記運転者の視覚機能状態を推定する視覚機能推定ステップと、を備えることを特徴とする運転者状態推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−309432(P2006−309432A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129980(P2005−129980)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】