説明

運転解析システムおよび運転記録装置

【課題】運転者に対する安全運転教育のための運転記録を提供する運転記録装置および当該運転記録に基づいて運転状態の解析を行う運転解析システムを提供する。
【解決手段】ステレオカメラ1で撮影された画像データを記録する画像記録部2と、画像データから3次元画像情報を算出する3次元画像情報算出部3と、3次元画像情報に基づいて、画像中の動体対応画像部分を特定する動体特定部4と、3次元画像情報に基づいて自車両の速度を検出する速度算出部5と、動体との車間距離を検出する車間距離検出部6と、車間距離および速度算出部5で検出された自車両の速度等の運転情報を記録する記録部7を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオカメラを用いて得られた3次元情報に基づいて算出された速度情報、車間距離情報を蓄積する運転記録装置、および運転記録装置に蓄積された運転情報等に基づいて、運転状態の解析を行う運転解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故の削減は陸運業界において重要な課題である。運転者には安全運転が要求されるが、経営者や運行管理者には、安全運転のための運転者の教育や管理が要求される。
【0003】
前者の要求には、警告装置や自動危険回避装置の開発で対処することが考えられており、例えば 特許文献1では、運転者の制動操作を解析して、運転者の制動傾向を推定し、運転者に追突防止のための警告を発したり、適切なブレーキアシストを行うために使用することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2においては、車載カメラで撮影された動画像を管理センターに送り、管理センターにおいて先行車との車間距離等の運転に関する傾向を解析し、解析に基づいて自車と先行車との関係を2次元的に表したシミュレーション画像を車載のナビゲーションシステムに送信し、車載の表示装置で表示することで運転者に現状を知らせるシステムが開示されている。
【0005】
一方、後者の要求においては、教育や管理には人手に頼るところが多く、コストの増大につながっている。このため、人手に頼る部分をできるだけ省いて省力化することが経営者層から求められている。
【0006】
例えば、特許文献3には、車載カメラの画像情報を解析して車両と車線との位置関係を検知し、車両が車線を逸脱した際にはドライバーに警告を与えるとともに、車両管理者にも情報を与え、車両管理者がドライバーに休憩や運行計画の変更を指示できるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−8327号公報
【特許文献2】特開2004−302902号公報
【特許文献3】特開2009−99062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、運転者に対する安全運転のアシストのためのシステムだけでなく、経営者や運行管理者による安全運転のための運転者の教育や管理を行うシステムが要求されているが、管理はともかく、教育を目的としたシステムについては、有効な提案がなされていないのが現状である。
【0009】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、運転者に対する安全運転教育のための運転記録を提供する運転記録装置および当該運転記録に基づいて運転状態の解析を行う運転解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る運転解析システムの第1の態様は、車両に搭載されたステレオカメラと、前記ステレオカメラで撮影された画像データを記録する画像記録部と、前記画像記録部で記録された画像データから3次元画像情報を算出する3次元画像情報算出部と、前記3次元画像情報算出部で算出された3次元画像情報に基づいて、画像中の動体対応画像部分を特定する動体特定部と、前記3次元画像情報算出部で算出された3次元画像情報に基づいて自車両速度を検出する速度算出部と、前記動体特定部で特定された先行車との車間距離を検出する車間距離検出部と、自車両の運転に影響を及ぼす環境情報の1つとして前記車間距離検出部で検出された車間距離および前記速度算出部で算出された自車両速度を運転情報として記録する記録部と、を備えた運転記録装置で取得される前記運転情報を取り込み、前記環境情報に基づいた運転者の運転パターンを算出して、運転傾向を解析する。
【0011】
本発明に係る運転解析システムの第2の態様は、前記運転記録装置においては、自車両が加速して定常走行状態に至るまでの加速期間、または自車両が減速して定常走行状態に至るまでの減速期間についてのみ前記運転情報を前記記録部に記録する。
【0012】
本発明に係る運転解析システムの第3の態様は、前記運転傾向の解析においては、自車両が加速して定常走行状態に至った後の到達定常速度ごとに車間距離を分類し、到達定常速度に対する車間距離との関係より運転傾向を解析する。
【0013】
本発明に係る運転解析システムの第4の態様は、前記運転傾向の解析においては、前記定常速度に対する車間距離との関係を用いた前記運転傾向の解析において、他者の運転時のデータによる前記定常速度に対する車間距離との関係あるいは複数の運転者による運転時のデータの平均値との比較により前記運転傾向を解析する。
【0014】
本発明に係る運転解析システムの第5の態様は、前記運転傾向の解析においては、定常速度での運転下において、先行車との車間距離が近づき始めてから減速を開始するまでの時間を定常速度ごとに分類し、定常速度に対する減速開始に要する時間との関係より運転傾向を解析する。
【0015】
本発明に係る運転解析システムの第6の態様は、前記運転傾向の解析においては、車間距離が予め定めた所定値よりも大きい場合あるいは加速開始時に車間距離が記録されていない場合の加速開始から加速終了までの時間単位の平均速度を、自車両が加速して定常走行状態に至った後の到達定常速度ごとに分類し、到達定常速度に対する車間距離との関係より運転傾向を解析する。
【0016】
本発明に係る運転解析システムの第7の態様は、前記運転傾向の解析においては、車間距離が予め定めた所定値よりも大きい場合あるいは減速開始時に車間距離が記録されていない場合の減速開始から減速終了までの時間単位の平均速度を、自車両の減速開始前の定常走行状態での定常速度ごとに分類し、定常速度に対する車間距離との関係より運転傾向を解析する。
【0017】
本発明に係る運転記録装置の態様は、車両に搭載されたステレオカメラと、前記ステレオカメラで撮影された画像データを記録する画像記録部と、前記画像記録部で記録された画像データから3次元画像情報を算出する3次元画像情報算出部と、前記3次元画像情報算出部で算出された3次元画像情報に基づいて、画像中の動体対応画像部分を特定する動体特定部と、前記3次元画像情報算出部で算出された3次元画像情報に基づいて自車両速度を検出する速度算出部と、前記動体特定部で特定された先行車との車間距離を検出する車間距離検出部と、自車両の運転に影響を及ぼす環境情報の1つとして前記車間距離検出部で検出された車間距離および前記速度算出部で算出された自車両速度を運転情報として記録するとともに、前記3次元画像情報の記録も可能な記録部と、を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る運転解析システムの第1の態様によれば、運転記録装置で取得される運転情報を取り込み、環境情報に基づいた運転者の運転パターンを算出して、運転傾向を解析することで、運転者の運転傾向および改善ポイントが明確となり、運転者に対する安全運転教育を行うことができる。
【0019】
本発明に係る運転解析システムの第2の態様によれば、加速期間または減速期間についてのみ運転情報を記録部に記録するので、記録データの削減を図ることができる。
【0020】
本発明に係る運転解析システムの第3の態様によれば、到達定常速度ごとに車間距離を分類し、到達定常速度に対する車間距離との関係より運転傾向を解析するので、運転傾向がより顕著に判明する。
【0021】
本発明に係る運転解析システムの第4の態様によれば、他者の運転時のデータによる定常速度に対する車間距離との関係あるいは複数の運転者による運転時のデータの平均値との比較により運転傾向を解析するので、運転傾向や改善ポイントがより判りやすくなる。
【0022】
本発明に係る運転解析システムの第5の態様によれば、定常速度に対する減速開始に要する時間との関係より運転傾向を解析するので、ドライバーの注意力、判断力などの解析が可能となる。
【0023】
本発明に係る運転解析システムの第6および第7の態様によれば、先行車がいない場合の運転傾向の解析が可能となる。
【0024】
本発明に係る運転記録装置の態様によれば、ステレオカメラにより得られた画像データに基づいて、車間距離および自車両速度を取得し、運転情報として記録するとともに、3次元画像情報の記録も可能なので、3次元情報の記録が可能なドライブレコーダを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る運転記録装置の構成を示すブロック図である。
【図2】時系列ステレオ画像における対応点探索について説明するための図である。
【図3】視差の2乗とオプティカルフローの垂直成分との関係を示す図である。
【図4】視差の2乗とオプティカルフローの垂直成分との関係から得られる直線を示す図である。
【図5】通常走行時の速度変化および車間距離の変化を示す図である。
【図6】本発明に係る運転解析システムの構成を示すブロック図である。
【図7】車間距離のサンプリングの過程を説明する図である。
【図8】定常速度と車間距離との関係を示す図である。
【図9】減速開始に要する時間のサンプリングの過程を説明する図である。
【図10】加速開始から定常速度に達するまでの加速状態下でのサンプリングの過程を説明する図である。
【図11】加速時の速度と車間距離との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施の形態>
<運転記録装置の構成>
図1は、本発明に係る運転記録装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、運転記録装置100は、車両に搭載されたステレオカメラ1で撮影された画像データを記録する画像記録部2と、画像記録部2に記録された画像データから3次元画像情報を算出する3次元画像情報算出部3と、3次元画像情報算出部3で算出された3次元画像情報に基づいて、画像中の動体対応画像部分を特定する動体特定部4と、3次元画像情報算出部で算出された3次元画像情報に基づいて自車両の速度を検出する速度算出部5と、動体特定部4で特定された動体(ここでは先行車)との車間距離を検出する車間距離検出部6と、車間距離検出部6で検出された車間距離および速度算出部5で検出された自車両の速度等の運転情報を記録する記録部7を備えている。次に、各構成について説明する。
【0027】
ステレオカメラ1は車両等の移動体に搭載され、ステレオ時系列画像を取得するものである。ステレオカメラ1は、例えばCCD(Charge-Coupled Devices)等の撮像素子を有するカメラであり、適当な距離だけ離間させて左右に設置された2つのカメラを備えて構成される。ステレオカメラ1における左右それぞれのカメラは、被写体を同じタイミングで撮像し、左右一対の画像を得る。なお、左右のカメラの収差は良好に補正されており、かつ、これらは相互に平行に設置されていることが好ましい。このように、ステレオカメラにおいて、各カメラが平行に設置されることで、平行化された画像が得られ、これら画像から容易に3次元画像情報を得ることができる。なお、3次元画像情報とは、ステレオ時系列画像から得ることができる、カメラの位置を基準とした3次元座標、2次元および3次元動きベクトル等をいう。このステレオカメラ1は、一定周期で随時撮像を繰り返している。また、ステレオカメラ1が被写体を撮像し、生成するステレオ画像は、立体情報を含んでいる。
【0028】
なお、例えば、ステレオカメラの代わりに単眼カメラを用いる場合は、3次元情報の取のために、3次元計測ができる機器、例えば、レーザやミリ波による計測器を備える構成とし、この計測器により、立体情報を取得すれば良い。
【0029】
画像記録部2は、ステレオカメラ1により一定周期ごとに撮像され、信号として運転記録装置100に送信されてくる画像を記憶する。なお、画像記録部2は、所定量以上の画像を記憶しないものとし、新しく撮像により生成された画像を記憶しながら、記録している画像を古い画像から随時消去している。
【0030】
3次元画像情報算出部3は、画像記録部2に記憶されている画像の3次元画像情報を算出する。具体的には、3次元画像情報算出部3は、画像上における点の撮像位置を基準とする3次元座標および動きベクトル等を求める。時系列ステレオ画像をもとに、3次元画像情報(前記3次元座標および動きベクトル等)を得る方法は公知の方法を用いればよい。
【0031】
具体的には、ステレオ画像における3次元画像情報は、ある画像上の点に対応する点を、その画像に対応する画像上から探索する(対応点探索)ことで得られる。例えば、一対のステレオ画像同士において、対応点探索を行うことで、その時刻における3次元座標が得られる。
【0032】
また、例えば、同一のカメラで撮像した、撮像時間の異なる被写体の画像同士において、対応点探索を行うことで、その点の動きベクトルが求められる。なお、ステレオカメラ1がステレオカメラでなく、単眼カメラである場合には、レーザやミリ波による3次元計測器等を備える。そして、3次元画像情報算出部3は、これらの測定器による計測値および、単眼カメラにより被写体が撮像されて生成された時系列画像を関連づけて、3次元画像情報を得る。例えば、この単眼カメラの光軸と同一方向に出射された、レーザまたはミリ波による3次元計測により求められた立体情報を、単眼カメラにより撮像された被写体の画像と関連づければよい。
【0033】
対応点探索法として、基準画像上の任意の注目点に対応する参照画像上の点(対応点)を探索して求める、相関法がある。なお、参照画像は、基準画像に対応する画像である。
【0034】
具体的には、ステレオ画像においては、同時刻に撮像した一対の画像のうち一方が基準画像であり、他方は参照画像である。また、時系列画像においては、同一のカメラで撮影された画像のうち、時間的に前の画像が基準画像であり、時間的に後の画像が参照画像である。この基準画像上の注目点に対してテンプレートが設定され、このテンプレートと対応する参照画像上のウィンドウが探索され、この探索されたウィンドウから対応点が求められる。
【0035】
以下に、3次元画像情報算出部3により行われる、具体的な対応点探索について説明する。ステレオカメラ1により生成されたステレオ画像の一方は基準画像とされ、その基準画像に注目点が設定され、基準画像上に注目点を含むテンプレートが設定される。ここで、テンプレートとは基準画像において一定の領域で区切られた範囲であって、その範囲内における各画素の輝度値等の情報(画像パターン)を有している。そして、このテンプレートと、当該基準画像と対応する参照画像(前記ステレオ画像における他方の画像)において複数設定されたウィンドウとの相関値(類似度)が算出され、相関値に基づいて、これらテンプレートとウィンドウとが対応しているか否かが判断される。
【0036】
なお、ウィンドウとは参照画像において複数生成された、テンプレートと同一の大きさの範囲の領域であって、その範囲内における各画素の輝度値等の情報(画像パターン)を有している。上述のように、テンプレートとウィンドウとの画像パターンから相関値が求められる。例えば、テンプレートといずれかのウィンドウとの相関値が求められ、仮に、これらの相関値が低いことから、これらが対応しないと判断されれば、例えば1画素いずれかの方向にずれた位置に生成されたウィンドウとテンプレートとの相関値が求められる。このようにして、順次ウィンドウが変更されながら相関値が求められ、相関値がピークの値をとるウィンドウが探索される。そして、テンプレートの画像パターンと相関値がピークである画像パターンを有するウィンドウが、テンプレートに対応するウィンドウであると求められる。
【0037】
次に、相関値の具体的な算出方法について説明する。具体的には、関数を用いて相関値を求める。その方法としては、例えば、SAD(Sum of Absolute Difference)法、SSD(Sum of Squared Difference)法(2乗残差法)、NCC(Normalize cross Correlation)法(正規化相互相関法)等が知られている。
【0038】
SAD法は、テンプレートおよびウィンドウの輝度値の絶対値による総和を求める関数を用いる方法であって、この関数を用いてテンプレートおよびウィンドウごとの相関値が求められる。また、上記SAD法等に比べてロバスト性を有する相関値演算の方法もある。具体的には、この方法は、画像パターンの周波数分解信号から、振幅成分を抑制した位相成分のみの信号を用いて類似度演算を行う方法である。そして、この方法を用いることで、ステレオ画像における左右カメラの撮影条件の差や、ノイズなどの影響を受けにくく、ロバスト性を有する相関値演算が実現可能である。
【0039】
なお、画像パターンの周波数分解信号を計算する手法は、例えば高速フーリエ変換(FFT)、離散フーリエ変換(DFT)、離散コサイン変換(DCT)、離散サイン変換(DST)、ウエーブレット変換、アダマール変換などが知られている。ここでは、このようなロバスト性を有する相関値演算のうち位相限定相関法(以下、POC法という)について簡単に説明する。
【0040】
POC法においても、基準画像上にテンプレートが設定され、参照画像上に同じ大きさを持つウィンドウが設定される。そして、テンプレートと各ウィンドウとの相関値(POC値)が計算され、その相関値からテンプレートに対応するウィンドウが求められる。まず、基準画像のテンプレートおよび参照画像のウィンドウは、それぞれ2次元離散フーリエ変換され、規格化された後、合成され、2次元逆離散フーリエ変換される。このようにして、相関値であるPOC値が求められる。また、POC値はウィンドウ内における画素ごとに離散的に求まるため、画素ごとの相関値を求めることができる。この点が、ウィンドウごとの相関値を求める、上述のSAD法等とは異なる。このように、POC法においては、ウィンドウ内における画素ごとに相関値を求めることができるので、ウィンドウの設定範囲を絞り込むことが容易であり、対応点を求める処理が高速でできるという効果を奏する。また、上記POC法等のロバスト性を有する相関値演算方法においては、ウィンドウ内における画素ごとに相関値を求めることができるため、SAD法等のようにウィンドウを1画素ずつずらして相関値を求めなくても、対応するウィンドウを探索することができる。
【0041】
POC法においては、テンプレートとの相関値を求める際に、ウィンドウを複数画素分ずらしながら、相関値の算出を行ってもよい。具体的に、どれだけずらすことができるかは、対応点の探索可能範囲に依存するが、一般的には、ウィンドウサイズの半分くらいであるといわれている。つまり、例えば、ずらされたウィンドウと、ずらされる前のウィンドウとが、ウィンドウサイズの半分程度において重なるように設定されればよい。例えば、基準画像と参照画像との視差の最大を128画素とし、ウィンドウサイズを31×31とし、POC法により探索できる範囲をウィンドウの重心位置に対して±8画素と仮定すると、この視差を探索するためには、ウィンドウは16画素ずつずらされればよいので、8個のウィンドウが設定されればよい。なお、POC法においても、多重解像度戦略による探索方法を用いることができる。多重解像度戦略とは、一旦、基準画像および参照画像を低解像度化することで、画素数を減少させた状態で相関値演算を行い、注目点に対して相関値がピークになる座標を求める。その後、解像度を元に戻し、前記低解像度で求まった座標周辺にウィンドウの設定範囲を絞り込んで対応点探索を行うというものである。基準画像および参照画像の解像度が低い状態では、画像パターンの情報が減少しているので、相関値は短時間で求められ得る。また、そうして求められた低解像度における相関値がピークである座標付近に、本来の解像度における相関値がピークとなる座標が存在するはずである。したがって、この方法を用いることで、テンプレートに対応するウィンドウが存在する範囲を短時間で確定されるため、対応するウィンドウも短時間で探索され得る。なお、この方法においては、何段階かに分けた複数の低解像度画像を作成することとし、徐々に探索範囲を絞り込むこととしてもよい。上述の例では、8個のウィンドウが設定されればよかったが、さらに多重解像度戦略による探索方法を用いることで、例えば解像度を1/16に縮小すれば、設定されるウィンドウは1個でよくなる。これにより、さらに容易に対応点の探索ができる。
【0042】
ここで、時系列ステレオ画像における対応点探索について、図を用いて簡単に説明する。図2は時系列ステレオ画像における対応点探索について説明するための図である。図2において、時刻T1に撮影されたステレオ画像である画像L1と画像R1とが示されている。なお、説明を簡略化するために、これらの画像を生成した一対の左右に配置されたカメラを有するステレオカメラにおいて、各カメラは平行配置されているとする。また、時刻T1よりも後の時刻である時刻T2に撮影された画像L2と画像R2とが示されている。なお、画像L1、R1、L2、R2において、各マス目が1画素を示している。
【0043】
まず、時刻T1における画像L1における点15aが注目点(始点)として入力されているとする。この点15aに対応する点である、画像R1上の点15bが対応点探索により求められる。また、点15aを注目点とした場合に、時刻T2での画像L2上において点15aに対応する点16aが対応点探索により求められている。そして、この点16aを注目点として、時刻T2における画像R2においてこれに対応する点16bが対応点探索により求められている。なお、点16aの位置は画素の重心からずれている。このような場合は、画素を構成単位とするウィンドウを設定できないので、点16aを重心位置とし、画素を構成単位とせず、例えば3画素×3画素の大きさである探索用テンプレートを生成し、画像R2上でのウィンドウ(3画素×3画素)との類似度に基づいて対応点16bを求めるという方法を採る。なお、この方法については、本願出願人による特許出願2008−023323に開示されている。
【0044】
なお、各点15a、15b、16a、16bは実際には点であるが、見易さを考慮して、図2においては画素と同じ大きさで図示している。なお、例えばT1とT2との間の時刻のように、時系列画像が存在しない時刻における対応点は、時系列画像が存在する、その前後の時間であるT1とT2における対応点を用いて補間等により求めればよい。また、対応点探索は、後の時刻に撮像された被写体の画像に対して行うことに限定されるわけでなく、前の時刻に撮像された被写体の画像に対しても行うことができる。
【0045】
次に、上記対応点探索により求めた対応点を用いて、3次元画像情報を算出する方法について説明する。点15aの座標を(p1x,p1y)とし、点15bの座標を(q1x,q1y)とし、点16aの座標を(p2x,p2y)とし、点16bの座標を(q2x,q2y)とする。なお、図面の上下方向が各画像のY方向であり、左右方向が各画像のX方向である。なお、上述したように、各カメラは平行配置されているので、点15aおよび点15bのY座標は同じであり、点16aおよび点16bのY座標も同じである。
【0046】
まず、点15aおよび点15aにより求めた点15bの座標より、画像L1およびR1における視差を示すベクトルであるΔd1が求められる。具体的には、Δd1は(q1x−p1x,0)である。また、点15aおよび点15aにより求めた点16aの座標より、画像L1およびL2における動きを示すベクトルであるΔf1が求められる。具体的には、Δf1は(p2x−p1x,p2y−p1y)である。また、点16aおよび点16aにより求めた点16bの座標より、時刻T2の画像における視差を示すベクトルであるΔd2が求められる。具体的には、Δd2は(q2x−p2x,0)である。
【0047】
なお、Δd1をもとに、時刻T1における画像より得た画像の奥行きの距離D1が求まる。ここで、距離D1は、図2における紙面垂直方向の座標であり、この座標をZ座標とする。また、画像L1、R1、L2、R2を生成したステレオカメラにおける、各カメラの焦点距離をfとし、各カメラ同士の基線長をBとすると、D1は下記の数式(1)で表される。なお、数式(1)において、Δd1はベクトルの大きさである。
【0048】
D1=fB/Δd1・・・(1)
また、同様に、時刻T2における画像より得た画像の奥行き(Z座標方向)の距離D2は、Δd2を用いて、数式(2)で表される。なお、下記の数式(2)において、Δd2はベクトルの大きさである。
【0049】
D2=fB/Δd2・・・(2)
これらより、時刻T1における点15aおよび15bにおける3次元座標(X1,Y1,Z1)は、(p1x・D1/f,p1y・D1/f,D1)と表すことができ、時刻T2における点16aおよび16bにおける3次元座標(X2,Y2,Z2)は、(p2x・D2/f,p2y・D2/f,D2)と表すことができる。
【0050】
これら3次元座標(X1,Y1,Z1)および(X2,Y2,Z2)から3次元動きベクトルが求められる。具体的には、3次元動きベクトルは、(X2−X1,Y2−Y1,Z2−Z1)で表されるベクトルである。
【0051】
動体特定部4は、画像中における動体対応画像部分を特定する。ここで、動体とは、自動車やバイク等の車両、自転車、歩行者等である実際に地面に対して移動している物体をいう。また、動体対応画像部分とは、画像中に表示された動体に対応する箇所をいう。なお、本発明の一実施形態において、ステレオカメラ1は車両等の移動体に搭載されて撮像を行うため、この移動体に対して相対的に移動していても、動体であるとは限らない。そこで、以下に、ステレオカメラ1により生成された時系列画像における動体対応画像部分の特定方法について説明する。なお、動体対応画像部分の特定においては、動体特定部4は、3次元画像情報算出部3により求められた3次元座標、2次元動きベクトルおよび3次元動きベクトル等の3次元画像情報を用いる。なお、画像上の動体対応画像部分を特定するとは、具体的には、画像として表されている物体のうち動体が表示されている箇所を特定し、その3次元画像情報を取得することをいう。
【0052】
まず、動きの消失点を用いて動体対応画像部分を特定する方法がある。ここで、動きの消失点とは、画像上の各点における動きベクトルをその方向に沿って延長した直線が交わる点である。この消失点は、画像上の物体の移動方向に応じて定まる。すなわち、カメラが同一方向に移動している場合において、同一物体であれば同一方向に移動していることから、その物体に対しての消失点が存在する。また、画像上の物体が静止体である場合に、静止体である物体すべてに対して同一の消失点が存在することが報告されている(「主成分分析を用いた移動物体認識法の検討」,情報処理学会 研究報告 − コンピュータビジョンとイメージメディアVol.1996,No.31,1995−CVIM−099,文献番号:IPSJ−CVIM95099008参照)。
【0053】
なお、ステレオカメラ1により撮像される被写体の画像のほとんどは、信号機や、路面、横断歩道、壁等の静止体に対応する静止体対応画像部分で占められていると考えられる。ここで、静止体対応画像部分とは、画像中に表示された、静止体に対応する箇所をいう。そして、そのように仮定すると、最も多くの動きベクトルに対する消失点が静止体対応画像部分に対応する静止体の消失点であると推測される。したがって、画像において存在する消失点の内、最も多くの動きベクトルに対する消失点を除いた後に存在する各消失点が動体対応画像部分に対応する動体の消失点であると推定できる。
【0054】
そこで、動体特定部4は、3次元画像情報算出部3により算出した、時系列画像において求められる動きベクトルをその方向に沿って延長して、それらが交わる点である消失点を画像上において求める。そして、それら消失点の内、最も多くの動きベクトルに対する消失点以外の各消失点を動体対応画像部分に対応する消失点であると推定する。
【0055】
このようにして、推定された動体対応画像部分の消失点をもとに、画像上の動体対応画像部分を特定し、その3次元画像情報を取得する。このようにして、各時系列画像における動体対応画像部分を特定することができる。なお、動きベクトルは、3次元画像情報算出部3により算出されているので、消失点を求めるために新たに動きベクトルを算出する必要はなく、消失点を容易に算出することができる。
【0056】
また、ステレオ時系列画像から求めた3次元動きベクトルに対して、このステレオ時系列画像を生成したステレオカメラ1の移動速度によりこれらを補正することで画像上の静止体対応画像部分と動体対応画像部分とを判別する方法もある(例えば、特開2006−134035号参照)。この方法を用いる場合は、動体特定部4はステレオカメラ1が搭載された移動体の速度情報を受け、3次元画像情報算出部3により算出された3次元動きベクトルを用いて、画像上の動体対応画像部分を特定し、その3次元画像情報を取得することができる。
【0057】
速度算出部5では、以下の工程(a-1)〜(a-5)が順次に実行されることで、自車両の走行速度を算出することができる。
【0058】
(a-1)時刻t0と時刻t1とにおいて撮影されるステレオ画像から各注目点に係る視差dの2乗とオプティカルフローの垂直成分Δyとが求められる。
【0059】
(a-2)視差dの2乗とオプティカルフローの垂直成分Δyとを座標軸とする2次元座標空間に各注目点に係る数値がプロットされる。図3は、各注目点に係る視差dの2乗とオプティカルフローの垂直成分Δyとの関係を示す図である。図3では、横軸が視差dの2乗を示し、且つ縦軸がオプティカルフローの垂直成分Δyを示す2次元座標空間に各注目点に係る数値がプロットされた状態が示されている。
【0060】
(a-3)最小二乗法、ハフ変換等の直線算出手法が用いられて、図3で示されるようにプロットされた各点によって描かれる直線L1が検出される。
【0061】
(a-4)直線L1の傾きおよび切片が検出される。
【0062】
(a-5)上記工程(a-4)において検出された直線L1の傾きから車両100の走行速度(前進速度)vが算出されるとともに、上記工程(a-4)において検出された直線L1の切片から車両100のピッチ方向における角速度ωが算出される。ここで、直線L1は、図4で示されるように、Δyおよびd2を変数とし、(1/α)・(v・Δt/1)・(h/B2)を傾きとし、−α・ω・Δtを切片とする直線である。なお、カメラパラメータα、基線長B、およびフレーム周期Δtは、ステレオカメラ1の設計によって決まる定数である。従って、直線L1の傾きと切片とが検出されれば、定数α,B,Δtが用いられて、h・vの値と角速度ωの値とが算出される。そして、道路面を基準としたステレオカメラ1の高さhとして、予め設定された初期値が採用されれば、自車両の走行速度vが求められる。
【0063】
また、上記のようにステレオ画像から速度を検出する方法以外に、車載の速度計からの情報を用いても良い。
【0064】
車間距離検出部6においては、3次元画像情報算出部3において動きベクトルを算出する際に距離D1(あるいはD2)が算出されているので、3次元画像情報算出部3から当該距離情報を受け、また、動体特定部4で特定した動体の情報を受けることで、動体との距離を算出する。
【0065】
また、車間距離を求める方法として、特許第3522317号に開示される方法を使用することもできる。また、この他にも、ミリ波レーダやレーザレーダを用いて距離測定を行う測定器を車間距離検出部6として備える構成であっても良い。
【0066】
記録部7は、例えばメモリカードのような着脱自在の記録媒体を使用することで、データの蓄積が終わった後は、記録済みのメモリカードを取り外し、新たなメモリカードを装着することで、簡単にデータの受け渡しができる。なお、記録部7を基板固定型のメモリチップやハードディスクで構成し、データだけを入出力インタフェースを介して読み出す構成としても良い。
【0067】
<記録動作>
次に、運転記録装置100における記録動作について説明する。
【0068】
記録部7には、車間距離検出部6および速度算出部5でそれぞれ検出された車間距離および速度のデータを記録するが、自車両の運転中の全てのデータを記録する必要はない。
【0069】
図5には通常走行時の速度変化および車間距離の変化のグラフを示す。図5において、横軸に時間を、縦軸に速度(km/h)および車間距離(m)を示し、速度変化を細線で、車間距離の変化を太線で示す。
【0070】
信号待ちで停止していた車を例に採ると、先行車が走行を開始すると、後続車は車間距離を少しずつ広げながら加速を行う。この後、先行車が制限速度などの関係で定常速度に到達すると、その速度域での車間距離を保ったまま定常走行状態となる。この状態の車間距離は制動距離などとも関係するが、概ねドライバーの持つ運転特性を表している。すなわち、車間距離は少なくとも停止距離と同等の距離を保つことが望ましく、停止距離は以下のように表される。
【0071】
停止距離=空走距離の2乗÷制動距離
ここで、空走距離は反応時間(秒)×車速(秒速)で表され、制動距離は時速(km/時)の2乗÷(254×摩擦係数)で表される。
【0072】
このため、車間距離を保つ必要があること、すなわち先行車が存在することで、ドライバーは、自身の走行パターンとは異なった走行パターンでの運転を余儀なくされるので、そこにドライバーの持つ運転特性が現れる。なお、先行車の存在は、運転パターンに変化をもたらす外的要因でもあるので、車間距離の情報は環境情報に含むこともできる。
【0073】
また、先行車が信号などで減速を開始すると、後続車は先行車との車間距離を徐々に狭めながら減速を行い、先行車との車間距離をある程度に保った状態で停車することになる。
【0074】
このような走行状態を想定した場合、定常走行状態にある車両の速度や車間距離のデータは、ドライバーの持つ運転特性をあまり反映しておらず、運転特性の解析には活用性が低いと言える。そこで、このような定常走行状態での速度および車間距離のデータは記録せず、加速、減速時のデータのみを記録することで記録データの削減を図ることができる。
【0075】
より具体的には、加速時、減速時の領域と、その前後の定常走行状態にある所定時間Δt分のデータを記録する。図5においては、加速時の時間t1の区間および減速時の時間t2の区間のデータが記録すべきデータとなる。なお、図5では、停止していた状態からの加速なので、所定時間Δtについては記載していない。
【0076】
なお、記録部7に記録するデータは、単位時間間隔で記録するが、ステレオ画像に基づいて得られるデータであるなら、通常30フレーム/秒の周期でのデータ取得が可能であるので、これをそのまま記録しても良いし、このデータから平均化処理、あるいは間引き処理を施して、1秒ごとのデータとして記録しても良い。
【0077】
また、上記の説明においては、ステレオ画像に基づいて先行車を特定し、車間距離検出部6および速度算出部5で、それぞれ車間距離および速度を検出し、それを記録部7に記録するものとして説明したが、先行車を特定するのではなく、自車両の周囲の静止体との距離情報を記録することとし、当該距離情報を用いて後の処理で速度を算出する構成としても良い。
【0078】
また、ステレオ画像に基づいて車間距離および速度を検出する場合には、記録部7には視差情報や2枚対の画像情報を記録することとし、当該情報から3次元画像情報を取得し、それを用いて後の処理で速度や車間距離を算出する構成としても良い。
【0079】
また、記録部7には車間距離以外の運転時の環境情報を記録するようにしても良い。すなわち、自車両の進路の直線性や、路面状況などの道路に起因する情報、信号機との位置関係、標識などの交通ルールに基づく情報、昼間、夜間、雨天などの天候による視認性情報などの環境情報も運転パターンに寄与するものと考えられ、これらを記録部7に記録し、一日の運転が終了した時点で、これらのデータを読み出して解析を行う。この解析については、後に説明する。
【0080】
ここで、自車両の進路の直線性の情報は、ステレオ画像から得られた3次元情報に基づいて取得することが可能であり、また、GPS(Global Positioning System)情報から道路の持つ直線性を記録することも可能である。
【0081】
また、路面状況は、3次元画像情報算出部3で算出された3次元画像情報に基づいて、路面の凹凸などの走行の障害となる障害物の位置や高さ、深さ、形状の計測や、路面の傾斜を計測することで、路面形状のデータとして取得することができる。
【0082】
また、信号機や標識などとの位置関係については、画像認識により信号機や標識を判別する技術が開示されており、信号機や標識に対して自車両がどこに位置するかの情報を取得することが可能である。また、GPS情報からも信号機や標識などとの位置関係の検出、記録は可能である。
【0083】
また、昼間、夜間の情報については、時間を記録しておくことで情報となり、雨天などの天候による視認性については、画像を記録しておき、中央線などに使用される白線と路面とのコントラストから視認性の検出、記録を行うことができる。
【0084】
<運転解析システムの構成>
次に、運転記録装置100の記録部7に記録された運転情報等を用いて、運転状態の解析を行う運転解析システム200の構成について説明する。
【0085】
図6は、本発明に係る運転解析システム200の構成を示すブロック図である。図6に示すように、運転解析システム200は、データ読み取り部21、データベースシステム22および解析部23を備えている。
【0086】
運転解析システム200は、タクシーやトラックの営業所等に配置された運行管理を行うコンピュータシステム内に構築される。また、各社の運行管理を行うコンピュータシステムや車載の運転記録装置100から無線通信によりデータを受け取り、各社のデータを一括処理する解析センターのような施設がある場合には、そこのサーバーコンピュータ内に構築しても良い。
【0087】
データ読み取り部21は、運転記録装置100の記録部7が着脱自在のメモリーカードなどの記録メディアである場合は、当該記録メディアを差し込むスロットを有し、当該記録メディアからのデータを読み出してデータベースシステム22に与える。この場合、予め読み出すデータを決めておけば、そのドライバーの、その日一日の全ての走行パターンについての情報、例えば、加速、減速時の速度情報、車間距離情報を整理しながらデータベースシステム22に与えることができる。
【0088】
データベースシステム22は、ドライバーごとに日々の運転情報等を記録し、管理するシステムであり、コンピュータ内の記憶装置が利用される。また、解析部23からの要求に応じて、記録された各走行パターンのデータ(時々刻々の車速、車間距離のデータ等)を解析部23に送るとともに、解析部23での解析結果の記録も行う。
【0089】
解析部23は、データベースシステム22から取得したドライバー単位の走行パターンのデータ(時々刻々の車速、車間距離のデータ等)について、統計的な処理を行うことで各ドライバーの運転傾向の解析を行う。
【0090】
<解析動作>
以下、解析部23での運転傾向の解析動作について、第1〜第6の解析動作を例に採って説明する。
【0091】
<第1の解析動作:定常速度下での車間距離>
定常速度での運転下における車間距離を、時速10km/h間隔での速度別にサンプリングし、それらの平均値およびバラツキを算出して運転傾向の解析に使用する。
【0092】
図7は車間距離のサンプリングの過程を説明する図であり、図5と同様に通常走行時の速度変化および車間距離の変化のグラフを示しており、横軸に時間を、縦軸に速度(km/h)および車間距離(m)を示し、速度変化を細線で、車間距離の変化を太線で示している。
【0093】
図7に示すグラフの加速、減速のパターンから、定常運転状態の領域を判断し、定常運転状態の領域での速度を定常速度Sとし、また定常運転状態での車間距離をΔdとする。
【0094】
このようなグラフを、複数の加速、減速のパターンについて作成し、それぞれのパターンでの定常速度と、そのときの車間距離を取得し、得られた複数の定常速度のデータから、時速10km/h間隔で速度別にサンプリングして、サンプルデータについて標準偏差、最大値、最小値等を求めてグラフを作成する。
【0095】
図8は、定常速度と車間距離との関係を示すグラフであり、縦軸に定常速度S(km/h)を示し、横軸には、車間距離Δd(m)を示している。
【0096】
図8において、白抜きの丸印でプロットされて示されるデータが、あるドライバーの各定常速度での車間距離の平均値であり、また、平均値を起点として左右に伸びる矢印が、各定常速度での車間距離の最大値と最小値を示している。
【0097】
図8より、定常速度が大きくなるにつれて車間距離も広く取っていること、および定常速度が大きくなると、車間距離の最大値と最小値の幅が広くなっていることが判る。このドライバーの特性に対して、優良ドライバーの特性を×印で図8上にプロットして示している。
【0098】
このように、他者との比較を行うことで、解析対象となっているドライバーの運転傾向や改善ポイントがより判りやすくなる。
【0099】
また、比較対象を優良ドライバーの特性に限定せず、会社ごとの全ドライバーの平均的な特性あるいは、解析センターを利用する全ての会社の全ドライバーの平均的な特性と比較することで、より、客観的な解析が可能となる。
【0100】
また、車間距離ではなく、各定常速度での制動距離の変化を示すグラフによっても同様の解析を行うことができる。
【0101】
なお、上述した解析は、前方に先行車がいない場合、すなわち加速開始時に車間距離が記録されていない場合、あるいは、車間距離が予め定めた所定値(例えば到達定常速度での制動距離)以上よりも大きい場合は、処理対象から除外した方が望ましく、以下に説明する第2〜第4の解析動作についても同様である。
【0102】
ここで、処理対象からの除外方法であるが、データに対する重みを設定することでも実現することができる。例えば、車間距離が極めて広い場合や記録されていないデータには、第1〜第4の解析動作を行う場合には重み0を付与して処理し、第5、第6の解析動作を行う場合には重み1を付与して処理する。これにより、重み0を付与されたデータについては、解析に寄与しないデータとして一括して扱うことができる。
【0103】
また、加速、減速のデータにおいて、加速開始時の当初の車間距離に応じて重みを変更して付与することで、グループ化と同様の処理が可能となる。
【0104】
<第2の解析動作:速度別の減速タイミング>
定常速度での運転下において、先行車との車間距離が近づき始めてから減速を開始するまでの時間を、時速10km/h間隔での速度別にサンプリングし、それらの平均値およびバラツキを算出して運転傾向の解析に使用する。
【0105】
図9は減速開始に要する時間のサンプリングの過程を説明する図であり、図5と同様に通常走行時の速度変化および車間距離の変化のグラフを示しており、横軸に時間を、縦軸に速度(km/h)および車間距離(m)を示し、速度変化を細線で、車間距離の変化を太線で示している。
【0106】
図9に示すグラフの加速、減速のパターンから、定常運転状態の領域を判断し、定常運転状態の領域での速度を定常速度Sとし、また、加速時、減速時の領域の前後の定常走行状態にある所定時間Δtにおいて、車間距離の近づき始めを起点として減速を開始するまでの時間を減速開始までの時間ΔTとする。
【0107】
このようなグラフを、複数の加速、減速のパターンについて作成し、それぞれのパターンでの定常速度と、そのときの減速開始に要する時間を取得し、得られた複数の定常速度のデータから、時速10km/h間隔で速度別にサンプリングして、定常速度と減速開始に要する時間との関係について標準偏差、最大値、最小値等を求めてグラフを作成する。
【0108】
この定常速度と減速開始までの時間との関係を示すグラフは、ドライバーの注意力、判断力などの解析の指標となり、ドライバーの運転特性を表すこととなる。
【0109】
<第3の解析動作:加速状態での車間距離>
加速状態での運転下において、例えば、時速10kmに達した時点での車間距離、時速20kmに達した時点での車間距離、時速30kmに達した時点での車間距離、時速40kmに達した時点での車間距離をサンプリングし、それらの平均値およびバラツキを算出して運転傾向の解析に使用する。
【0110】
図10は加速開始から定常速度に達するまでの加速状態下でのサンプリングの過程を説明する図であり、横軸に時間を、縦軸に速度(km/h)および車間距離(m)を示し、速度変化を細線で、車間距離の変化を太線で示す。
【0111】
図10から、時速10kmでの車間距離Δd10、時速20kmでの車間距離Δd20、時速30kmでの車間距離Δd30および時速40kmでの車間距離Δd40を得ることができる。
【0112】
この加速時の各速度での車間距離について、記録された加速パターンから全てを抽出して統計処理し、平均、標準偏差、最大値、最小値等を求めてグラフを作成する。
【0113】
図11は、加速時の速度と車間距離との関係を示すグラフであり、縦軸に加速時の速度S(km/h)を示し、横軸には、車間距離Δd(m)を示している。
【0114】
図11において、白抜きの丸印でプロットされて示されるデータが、あるドライバーの加速時の各速度での車間距離の平均値であり、また、平均値を起点として左右に伸びる矢印が、各定常速度での車間距離の最大値と最小値を示している。
【0115】
図11より、速度が大きくなるにつれて車間距離も広く取っているが、併記する優良ドライバーの特性(×印プロット)に比べると、車間距離の平均は狭いことが判る。
【0116】
このように、他者との比較を行うことで、解析対象となっているドライバーの運転傾向や改善ポイントがより判りやすくなる。
【0117】
なお、比較対象を優良ドライバーの特性に限定せず、会社ごとの全ドライバーの平均的な特性あるいは、解析センターを利用する全ての会社の全ドライバーの平均的な特性と比較することで、より、客観的な解析が可能となる。
【0118】
また、車間距離ではなく、各速度での制動距離の変化を示すグラフによっても同様の解析を行うことができる。
【0119】
<第4の解析動作:減速状態での車間距離>
図10および図11を用いて説明した、加速状態での運転下における車間距離のデータと同様に、減速状態での運転下における車間距離のデータを取得することでもドライバーの運転傾向を解析することができる。なお、データのサンプリングおよび解析の手法は、加速状態の場合と同じであるので、図示および説明は省略する。
【0120】
<第5の解析動作:加速パターン>
車間距離が予め定めた所定値よりも大きい場合あるいは加速開始時に車間距離が記録されていない場合(前方に先行車がいない場合)の加速開始から加速終了までの時間単位の平均速度およびバラツキから加速パターンを算出し、運転傾向の解析に使用する。
【0121】
まず、車間距離が記録されていない、あるいは加速開始以前から到達定常速度での制動距離以上の車間距離が記録されている場合の加速時のデータを取り出す。
【0122】
これらの加速時のデータに対して、例えば、到達定常速度で10km/h間隔で速度別に分類(10km/h、20km/h、30km/h、40km/h)を行う。
【0123】
そして、分類されたデータに対して、加速開始から加速終了までの時間単位の平均速度を求め、そのドライバー個人の標準加速パターンを求める。
【0124】
この、ドライバー個人が持つ加速パターンと、例えば優良ドライバーの加速パターンとを同じグラフ上に示すことで、解析対象のドライバーの運転傾向および改善ポイントがより判りやすくなる。
【0125】
<第6の解析動作:減速パターン>
車間距離が予め定めた所定値よりも大きい場合あるいは減速開始時に車間距離が記録されていない場合(前方に先行車がいない場合)の減速開始から減速終了までの時間単位の平均速度およびバラツキから減速パターンを算出し、運転傾向の解析に使用する。
【0126】
まず、車間距離が記録されていない、あるいは減速開始以前から到達定常速度での制動距離以上の車間距離が記録されている場合の減速時のデータを取り出す。
【0127】
これらの減速時のデータに対して、例えば、減速前の定常速度で10km/h間隔で速度別に分類(10km/h、20km/h、30km/h、40km/h)を行う。
【0128】
そして、分類されたデータに対して、減速開始から減速終了までの時間単位の平均速度を求め、そのドライバー個人の標準加速パターンを求める。
【0129】
この、ドライバー個人が持つ減速パターンと、例えば優良ドライバーの減速パターンとを同じグラフ上に示すことで、解析対象のドライバーの運転傾向および改善ポイントがより判りやすくなる。
【0130】
以上説明した解析を行うことで、ドライバーの運転傾向および改善ポイントが明確となり、運転者に対する安全運転教育を行うことができる。
【0131】
<変形例>
以上説明した実施の形態においては、運転時の環境情報として先行車の情報、すなわち車間距離を用いてドライバーの運転傾向を解析する例を説明したが、運転記録装置100の記録部7にステレオ画像を記録する構成とし、当該ステレオ画像から中央線などに使用される白線を検知することでカーブの状況を検知し、直線区間とカーブ区間とで分類を行い、運転傾向を解析することも可能である。
【0132】
また、同様にステレオ画像から信号機を検知し、信号機までの距離を車間距離と同様に扱うことで、信号機までの距離を環境情報として使用することが可能である。
【0133】
これらの環境情報を用いた解析により、ドライバー個人の運転傾向解析結果と、優良ドライバーの運転傾向との差を検出し、危険な方向および安全な方向それぞれでの総和を求めることで、総合的な運転傾向を算出することも可能である。
【0134】
この総合的な運転傾向は、ドライバーの人事的評価システムへの出力、リンクを行うことで、客観的な指標での給与、表彰などの処遇などへの反映が可能となる。
【符号の説明】
【0135】
1 ステレオカメラ
2 画像記録部
3 3次元画像情報算出部
4 動体特定部
5 速度算出部
6 車間距離検出部
7 記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたステレオカメラと、
前記ステレオカメラで撮影された画像データを記録する画像記録部と、
前記画像記録部で記録された画像データから3次元画像情報を算出する3次元画像情報算出部と、
前記3次元画像情報算出部で算出された3次元画像情報に基づいて、画像中の動体対応画像部分を特定する動体特定部と、
前記3次元画像情報算出部で算出された3次元画像情報に基づいて自車両速度を検出する速度算出部と、
前記動体特定部で特定された先行車との車間距離を検出する車間距離検出部と、
自車両の運転に影響を及ぼす環境情報の1つとして前記車間距離検出部で検出された車間距離および前記速度算出部で算出された自車両速度を運転情報として記録する記録部と、を備えた運転記録装置で取得される前記運転情報を取り込み、前記環境情報に基づいた運転者の運転パターンを算出して、運転傾向を解析する、運転解析システム。
【請求項2】
前記運転記録装置においては、
自車両が加速して定常走行状態に至るまでの加速期間、
または自車両が減速して定常走行状態に至るまでの減速期間についてのみ前記運転情報を前記記録部に記録する、請求項1記載の運転解析システム。
【請求項3】
前記運転傾向の解析においては、
自車両が加速して定常走行状態に至った後の到達定常速度ごとに車間距離を分類し、到達定常速度に対する車間距離との関係より運転傾向を解析する、請求項1記載の運転解析システム。
【請求項4】
前記運転傾向の解析においては、
前記定常速度に対する車間距離との関係を用いた前記運転傾向の解析において、
他者の運転時のデータによる前記定常速度に対する車間距離との関係あるいは複数の運転者による運転時のデータの平均値との比較により前記運転傾向を解析する、請求項3記載の運転解析システム。
【請求項5】
前記運転傾向の解析においては、
定常速度での運転下において、先行車との車間距離が近づき始めてから減速を開始するまでの時間を定常速度ごとに分類し、定常速度に対する減速開始に要する時間との関係より運転傾向を解析する、請求項1記載の運転解析システム。
【請求項6】
前記運転傾向の解析においては、
車間距離が予め定めた所定値よりも大きい場合あるいは加速開始時に車間距離が記録されていない場合の加速開始から加速終了までの時間単位の平均速度を、自車両が加速して定常走行状態に至った後の到達定常速度ごとに分類し、到達定常速度に対する車間距離との関係より運転傾向を解析する、請求項1記載の運転解析システム。
【請求項7】
前記運転傾向の解析においては、
車間距離が予め定めた所定値よりも大きい場合あるいは減速開始時に車間距離が記録されていない場合の減速開始から減速終了までの時間単位の平均速度を、自車両の減速開始前の定常走行状態での定常速度ごとに分類し、定常速度に対する車間距離との関係より運転傾向を解析する、請求項1記載の運転解析システム。
【請求項8】
車両に搭載されたステレオカメラと、
前記ステレオカメラで撮影された画像データを記録する画像記録部と、
前記画像記録部で記録された画像データから3次元画像情報を算出する3次元画像情報算出部と、
前記3次元画像情報算出部で算出された3次元画像情報に基づいて、画像中の動体対応画像部分を特定する動体特定部と、
前記3次元画像情報算出部で算出された3次元画像情報に基づいて自車両速度を検出する速度算出部と、
前記動体特定部で特定された先行車との車間距離を検出する車間距離検出部と、
自車両の運転に影響を及ぼす環境情報の1つとして前記車間距離検出部で検出された車間距離および前記速度算出部で算出された自車両速度を運転情報として記録するとともに、前記3次元画像情報の記録も可能な記録部と、を備えた運転記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−96048(P2011−96048A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250171(P2009−250171)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】