説明

過給機のシール空気導入手段、これを備えた過給機、これを備えた過給機システム、これを備えたディーゼル機関およびこれを備えた船舶

【課題】過給機カット運転の準備が容易、かつ、停止中の過給機から潤滑油の漏洩を防止することが可能なシール空気導入手段を提供することを目的とする。
【解決手段】排ガスにより回転駆動されるタービンと、タービンに接続される回転軸と、同軸の反対端に設けられる圧縮機と、回転軸を回転自在に支持する軸受と、軸受と圧縮機との間に設けられ軸受に供給される潤滑油の漏洩を封止する圧縮機側封止部と、圧縮機によって圧縮された空気を圧縮機側封止部へ導く圧縮空気供給路20を有する軸受台4と、を備える過給機のシール空気導入手段30であって、軸受台4には、空気が導かれる空気路31とその内部を摺動する内筒37とを有し、過給機カットの際に、外部から圧縮空気が空気路31に導かれ圧縮空気供給路20と大気路31との圧力差により内筒37が摺動して圧縮機と圧縮空気供給路20との間を遮断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機のシール空気導入手段、これを備えた過給機、これを備えた過給機システム、これを備えたディーゼル機関およびこれを備えた船舶に関し、特に、過給機カット運転時における過給機の軸受用潤滑油の漏洩防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、大型の舶用ディーゼル機関は、起動時や極低負荷運転時には、ディーゼル機関から排出される排ガスのエネルギーが小さい。そのため、過給機を運転することができず、補助ブロアを運転して空気をディーゼル機関へと供給している。
【0003】
特許文献1には、補助ブロアの空気吸引作用によって、過給機の圧縮機ケーシング内が負圧になり、さらに圧縮機ケーシングから軸受台内に設けられているシール空気路に連通している空気室が負圧になった場合に、潤滑油が軸受台から外部へ漏洩することを防止する逆止弁が開示されている。
【0004】
また、特許文献2から特許文献4には、ディーゼル機関の部分負荷運転時における、回転軸方向に作用するスラスト荷重の調整と、軸受台からの潤滑油の漏洩防止とを目的として、圧縮機により圧縮された圧力の高い空気をタービン側のシール装置に供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2552282号公報
【特許文献2】特開2003−293783号公報
【特許文献3】特許第3534566号公報
【特許文献4】特許第3219599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数台の過給機を搭載しているディーゼル機関において、機関の低負荷運転時の性能を改善するために、1台の過給機の運転を停止し残りの過給機を運転する過給機カット運転が行われる場合がある。過給機カット運転により、過給機1台あたりに供給される排ガス量が増加し過給機の回転数が上昇する。そのため、過給機からディーゼル機関に供給される給気量が増加し、ディーゼル機関の掃気圧が上昇する。その結果、ディーゼル機関の低負荷運転時の熱効率が上昇し燃料消費率が良くなる。
【0007】
過給機カット運転の準備には、停止中の過給機の排ガス入口に蓋をして排ガスの流入を防ぐとともに、ディーゼル機関の振動によって軸受が損傷することを防止するために回転軸を抜き出す作業が必要となるため、準備作業時間に多大な時間を必要とする問題があった。
【0008】
また、回転軸を抜き出すことなく過給機カット運転を行う場合には、ディーゼル機関の振動によって軸受が損傷することを防止するために停止中の過給機の軸受台には、運転中の過給機の軸受台と同様に潤滑油が供給される必要がある。しかし、潤滑油の軸受台からの漏洩を防止するために、タービン側シール装置に対して過給機の圧縮機から圧縮空気をシール空気として導く必要がある。しかし、過給機カット運転中における停止中の過給機は、自身の圧縮機が駆動されていないためシール空気がタービン側シール装置に供給されない。そのため、外部からシール空気の供給が必要であるという問題があった。
【0009】
特許文献1の発明は、ディーゼル機関の起動時や極低負荷運転時における過給機からの潤滑油の漏洩防止について開示されているが、停止中の過給機からの潤滑油の漏洩防止については開示されていない。
特許文献2から特許文献4の発明は、過給機の運転中に圧縮機が圧縮した空気を用いて潤滑油の漏洩を防止することについて開示されているが、停止中の過給機からの潤滑油の漏洩防止については開示されていない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、過給機カット運転の準備が容易とされ、過給機カット運転中に停止中の過給機から潤滑油の漏洩を防止することが可能な過給機のシール空気導入手段、これを備えた過給機、これを備えた過給機システム、これを備えたディーゼル機関およびこれを備えた船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の過給機のシール空気導入手段、これを備えた過給機、これを備えた過給機システム、これを備えたディーゼル機関およびこれを備えた船舶は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るシール空気導入手段によれば、排ガスにより回転駆動されるタービンと、一端に前記タービンを設ける回転軸と、該回転軸の他端に設けられて前記タービンが回転駆動することにより回転駆動して空気を圧縮する圧縮機と、前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、該軸受と前記圧縮機との間に設けられ、前記軸受に供給される潤滑油の前記圧縮機側への漏洩を封止する圧縮機側封止部と、前記圧縮機により圧縮された空気の一部を前記圧縮機側封止部へと導く圧縮空気供給路を有する軸受台と、を備える過給機に設けられる過給機のシール空気導入手段であって、前記軸受台に前記圧縮空気供給路と連通して設けられ、空気が導かれる空気路と、該空気路の内部を摺動する内筒と、を備え、過給機カットの際には、外部から圧縮空気が前記空気路に導かれ、前記圧縮空気供給路と前記空気路との圧力差により前記内筒が摺動して前記圧縮機と前記圧縮空気供給路との間を遮断することを特徴とする。
【0012】
過給機カットの場合には、シール空気導入手段の空気路に外部から圧縮空気が導かれ、圧縮空気供給路と空気路との圧力差によって内筒が摺動して圧縮機と圧縮空気供給路との間を遮断することとした。そのため、シール空気導入手段の外部から導入された圧縮空気を過給機の圧縮機側封止部へと導くことができる。したがって、過給機の軸受から潤滑油が漏洩することを防止することができる。
【0013】
本発明に係るシール空気導入手段によれば、前記空気路の途中に合流する大気路と、該大気路の端部に設けられ、該大気路内の圧力が負圧になった場合に開となり、外部からの空気を空気路へ導く開閉弁と、を備えることを特徴とする。
【0014】
シール空気導入手段の空気路から分岐する大気路の端部には、大気路内の圧力に応じて開閉する開閉弁を設けることとした。そのため、大気路に連通する空気路内が負圧の場合には、開閉弁を開にさせてシール空気導入手段から過給機の圧縮空気供給路へと空気を導くことができる。したがって、シール空気導入手段から導かれた空気によって過給機の軸受から潤滑油が漏洩することを防止することができる。
【0015】
本発明に係る過給機によれば、上記のいずれかに記載のシール空気導入手段を備えることを特徴とする。
【0016】
過給機の運転を停止中には、圧縮機が空気を圧縮しない。そのため、圧縮機側封止部へと空気が供給されず軸受に供給された潤滑油が軸受台から漏洩する。
また、圧縮機が負圧になった場合には、圧縮空気供給路内も負圧になって過給機の軸受から潤滑油が圧縮機側へと漏洩する恐れがある。
【0017】
そこで、過給機運転を停止中や圧縮機が負圧になった場合であっても、常時空気を導くことが可能なシール空気導入手段を備えることとした。そのため、シール空気導入手段から圧縮空気供給路内へと空気を導くことができる。したがって、過給機の軸受から潤滑油の漏洩を防止することができる。
【0018】
本発明に係る過給機システムによれば、複数の過給機を備え、これら過給機のうちの少なくとも1つが上記に記載の過給機とされることを特徴とする。
【0019】
複数の過給機を備える過給機システムのうち少なくとも1つの過給機の運転を中止する過給機カット運転を行う場合には、運転を中止する過給機の圧縮機が空気を圧縮しない。そのため、運転を中止する過給機の軸受の焼き付きを防止するために供給されている潤滑油が軸受台から漏洩する。これを防ぐために、過給機カット運転の際には、運転を中止する過給機の回転軸を抜き出している。
【0020】
そこで、過給機システムには、運転を中止する過給機の軸受から潤滑油が漏洩することを防止することが可能な過給機を用いることとした。そのため、運転を中止する過給機の回転軸を抜き出す必要がなくなる。したがって、過給機システムの過給機カット運転の準備時間を短縮することができる。
【0021】
本発明に係る過給機システムによれば、前記圧縮空気は、他の前記過給機によって圧縮された空気とされることを特徴とする。
【0022】
過給機システムの過給機カット運転中に、運転を中止する過給機の圧縮空気供給路には、他の過給機によって圧縮された空気がシール空気導入手段を介して導かれることとした。そのため、過給機の圧縮機側封止部に導く空気を供給する機器を別途設ける必要がない。したがって、機器設置コストを抑制することができる。
【0023】
本発明に係るディーゼル機関によれば、上記のいずれかに記載の過給機システムを備えることを特徴とする。
【0024】
ディーゼル機関には、回転軸を抜き出すことなく過給機カット運転を行うことができる過給機システムを備えることとした。そのため、過給機カット運転の準備時間を短縮することができる。
【0025】
また、ディーゼル機関の低負荷運転の際には、補助ブロアによって圧縮空気がディーゼル機関に供給されるが過給機の圧縮機は十分には運転しない。そのため、過給機の圧縮機は、補助ブロアの運転によって空気が吸引されて負圧になる。
【0026】
そこで、ディーゼル機関の低負荷運転時に過給機の圧縮機が負圧になった場合には、シール空気導入手段から圧縮空気供給路へと空気を供給することができる過給機を用いることとした。そのため、ディーゼル機関の低負荷運転時における性能を容易に改善して燃料消費率を改善することができる。
【0027】
本発明に係る船舶は、上記に記載のディーゼル機関を備えることを特徴とする。
【0028】
過給機カット運転の準備時間を短縮することが可能な、かつ、ディーゼル機関の低負荷運転時における性能を容易に改善可能なディーゼル機関を用いることとした。そのため、乗組員の船内作業を低減しつつ、船舶の航行コストを改善することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
過給機カットの場合には、シール空気導入手段の空気路に外部から圧縮空気が導かれ、圧縮空気供給路と空気路との圧力差によって内筒が摺動して圧縮機と圧縮空気供給路との間を遮断することとした。そのため、シール空気導入手段の外部から導入された圧縮空気を過給機の圧縮機側封止部へと導くことができる。したがって、過給機の軸受から潤滑油が漏洩することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るバキュームブレーカーを備えた過給機の部分拡大構成図である。
【図2】過給機カット運転を行った場合における図1に示したバキュームブレーカーの概略構成図を示し、(A)は、縦断面概略構成図を示し、(B)は、横断面概略構成図を示している。
【図3】通常運転の場合における図1に示したバキュームブレーカーの概略構成図を示し、(A)は、縦断面概略構成図を示し、(B)は、横断面概略構成図を示している。
【図4】低負荷運転の場合における図1に示したバキュームブレーカーの概略構成図を示し、(A)は、縦断面概略構成図を示し、(B)は、横断面概略構成図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の一実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
図1には、本実施形態に係る船舶が備えているディーゼル機関に搭載されている過給機システムを構成している過給機1の部分拡大構成図が示されている。
ディーゼル機関(図示せず)は、機関室(図示せず)内に備えられている。ディーゼル機関には、複数台の過給機(例えば、3台)1を備えている過給機システムと、複数台(例えば、3台)の空気冷却器(図示せず)とが搭載されている。
【0032】
過給機システムを構成している各過給機1は、ディーゼル機関が排出する排ガスによって駆動されるタービン(図示せず)と、タービンによって回転駆動される回転軸6と、回転軸6が回転駆動されることによって空気を圧縮する圧縮機3と、タービンと圧縮機3との間に設けられ回転軸6を回転自在に支持している軸受台4とを有している。
【0033】
タービンは、回転軸6の周方向に向かって複数のタービン翼(図示せず)を有している。タービン翼には、排ガスが導かれる。タービン翼に導かれた排ガスによって、回転軸6が回転駆動される。
【0034】
圧縮機3は、圧縮機ケーシング11と、回転軸6が回転駆動されることによって空気を圧縮するインペラ12とを有している。
圧縮機ケーシング11は、インペラ12を覆うように設けられている。また、圧縮機ケーシング11には、インペラ12によって圧縮された空気が導かれる渦巻き室11bが設けられている。インペラ12は、サイレンサ(図示せず)を介して圧縮機ケーシング11へと導かれた空気を圧縮する。圧縮機ケーシング11には、渦巻き室11b内の圧縮した空気の一部を後述する軸受台4内に導く入口部11aが開口している。
【0035】
インペラ12は、略円盤形状をなしており、その一面には中心から径方向外側に向けて延びる翼(図示せず)が複数設けられている。インペラ12は、渦巻き室11bによって径方向外側を囲むよう覆われている。インペラ12には、圧縮機ケーシング11の入口から吸入された空気が導かれる。インペラ12は、回転軸6上に設けられているタービンが回転駆動することによって回転駆動される。回転駆動されたインペラ12によって、圧縮機ケーシング11の入口から吸入された空気が圧縮され、圧縮された空気は、インペラ12の径方向の外側へと送出される。インペラ12によって圧縮された空気は、渦巻き室11bを通過して圧縮機ケーシング11の出口から導出される。
【0036】
インペラ12は、軸受台4に近接させた状態で設けられている。軸受台4には、一端をタービン側に突出させ、他端を圧縮機3側に突出させた回転軸6が貫通されている。また、軸受台4には、タービンの外周を覆っているタービンケーシング(図示せず)と、圧縮機ケーシング11とが接続されている。これらタービンケーシングと、軸受台4と、圧縮機ケーシング11とは、ボルト(図示せず)によって一体に締結されている。
【0037】
軸受台4には、2つのジャーナル軸受(図1には、1つのジャーナル軸受15のみを示す)と、スラスト軸受(軸受)17とが設けられている。ジャーナル軸受(軸受)15によって、回転軸6は、軸6回りの回転が可能とされ、かつ、軸受台4によって支持されている。
【0038】
スラスト軸受17は、回転軸6の半径方向外周に向かって突出するスラストカラー18の両側に設けられている。スラストカラー18とスラスト軸受17とは、圧縮機3側に設けられているジャーナル軸受15とインペラ12との間に設けられている。回転軸6は、スラスト軸受17とスラストカラー18によって、排ガスがタービン翼に作用して回転軸6が軸方向へ移動することを規制するとともに、回転軸6回りの回転が可能とされている。
【0039】
また、軸受台4の内部には、軸受台4内の空気抜きである空気抜き路(図示せず)と、軸受台4内の潤滑油を排出する油ドレン路(図示せず)と、潤滑油が導かれる潤滑油供給路(図示せず)と、シール空気(空気)が導かれるシール空気通路(圧縮空気供給路)20とが穿孔されている。
【0040】
軸受台4内の空気は、軸受台4内の空気抜き路から軸受台4に接続されている空気抜き管(図示せず)へと排出される。これによって、軸受台4内の空気抜きが行われる。
各軸受15、17に供給される潤滑油のうち、余剰の潤滑油は、軸受台4の内部に穿孔されている油ドレン路から軸受台4の下方に接続されている油ドレン管(図示せず)へと排出される。
【0041】
潤滑油は、軸受台4の上方に接続されている潤滑油供給管(図示せず)から軸受台4へと供給される。軸受台4に供給された潤滑油は、軸受台4内に穿孔されている潤滑油供給路を通って各軸受15、17へと供給される。これら軸受15、17は、潤滑油が供給されることによって焼付きが防止される。
【0042】
シール空気は、圧縮機3の渦巻き室11bに開口している開口部11aから軸受台4に穿孔しているシール空気路入口(圧縮空気供給路)21を通って、軸受台4に穿孔しているシール空気通路20に合流する。シール空気通路20は、軸受台4に穿孔されておりその一端が軸受台4の側壁に開口している。
【0043】
シール空気路入口21とシール空気通路20との間には、バキュームブレーカー(シール空気導入手段)30の内筒(図示せず)が接続されるようになっている。シール空気通路20は、途中で圧縮機側油ラビリンスパッキン(圧縮機側封止部)24へとシール空気の一部を供給する分岐シール空気路25に分岐されている。
【0044】
バキュームブレーカー30は、その一端がシール空気通路20に連通するように軸受台4の側壁の外部に設けられている。バキュームブレーカー30の他端には、後述する外部空気供給配管36(図2参照)が接続されている。
【0045】
軸受台4に設けられているジャーナル軸受15と図示しないタービン側に設けられているジャーナル軸受との間は、空間部Sとなっている。また、圧縮機3側のジャーナル軸受15とスラスト軸受17との間には密閉部を有しないため、回転軸6を伝って各軸受15、17に供給された潤滑油が軸受台4から外部へと漏洩する恐れがある。そのため、タービン側油ラビリンスパッキン(図示せず)と、圧縮機側油ラビリンスパッキン24とによって、各軸受15、17に供給された潤滑油が軸受台4から外部へと漏洩することを防止している。
【0046】
圧縮機側油ラビリンスパッキン24は、圧縮機3側のスラスト軸受17とインペラ12との間で、かつ、回転軸6に摺接するように設けられている。この圧縮機側油ラビリンスパッキン24に対向する回転軸6には、圧縮機側油ラビリンスパッキン24のラビリンスフィン(図示せず)と同心上のラビリンスフィン(図示せず)が設けられている。圧縮機側油ラビリンスパッキン24は、軸受台4から圧縮機3側へと潤滑油が漏洩することを防止している。
【0047】
タービン側油ラビリンスパッキン(図示せず)は、タービン側のジャーナル軸受とタービンディスクとの間で、かつ、回転軸6に摺接するように設けられている。このタービン側油ラビリンスパッキンに対向する回転軸6には、タービン側油ラビリンスパッキンのラビリンスフィン(図示せず)と同心上のラビリンスフィン(図示せず)が設けられている。タービン側油ラビリンスパッキンは、軸受台4からタービン側へと潤滑油が漏洩することを防止している。
【0048】
次に、本実施形態の過給機システムについて説明する。
過給機システムは、複数台(例えば3台)の過給機1を備えている。各過給機1には、上述したバキュームブレーカー30が設けられている。
各過給機1の軸受台4に接続されている潤滑油供給管は、1本の過給機潤滑油供給管(図示せず)に合流している。過給機潤滑油供給管は、図示しない潤滑油ドレンタンクからディーゼル機関に接続されている主機潤滑油供給管(図示せず)より分岐されている。
【0049】
過給機1の軸受台4に接続されている空気抜き管は、1本の空気抜き集合管(図示せず)に合流している。
各過給機1の軸受台4に接続されている油ドレン管は、1本の油ドレン集合管(図示せず)に合流している。油ドレン集合管は、機関室内に設けられている潤滑油ドレンタンク(図示せず)へと導かれている。
【0050】
3台の過給機1には、ディーゼル機関に備えられている排ガス集合管(図示せず)から各過給機1のタービンケーシング入口へと排ガスが導かれるように排ガス管(図示せず)が設けられている。各過給機1の圧縮機ケーシング11の出口は、各空気冷却器に接続されており、各過給機1によって圧縮された空気が導かれる。各空気冷却器では、導かれた圧縮空気が清水または海水と熱交換することによって温度が下げられる。
【0051】
過給機1に設けられているバキュームブレーカー30に接続されている外部空気供給配管36(図2参照)は、逆止弁35(図2参照)が設けられており、その反対端は、他の過給機1の空気冷却器に接続されている。
【0052】
次に、本実施形態のバキュームブレーカーについて図2から図4を用いて説明する。
図2には、過給機システムの過給機カット運転を行った場合における運転を中止している過給機に設けられているバキュームブレーカーの概略構成図を示し、(A)は、断面概略構成図を示し、(B)は、横断面概略構成図を示している。
図3には、通常運転の場合におけるバキュームブレーカーの概略構成図を示し、(A)は、断面概略構成図を示し、(B)は、横断面概略構成図を示している。
ている。
図4には、低負荷運転の場合におけるバキュームブレーカーの概略構成図を示し、(A)は、断面概略構成図を示し、(B)は、横断面概略構成図を示している。
【0053】
バキュームブレーカー30は、軸受台4に接続されている。バキュームブレーカー30は、空気が流動する空気路31と、空気路31の端部に設けられている逆止弁35と、空気路31の反対端の内部を摺動する内筒37とを有している。
【0054】
空気路31は、その途中に合流して連通している大気路33を有している。空気路31は、3方向に開口している筒状の空気路本体34と、逆止弁35と、逆止弁35が設けられている外部空気供給配管36と、内筒37が内部を摺動する二重管構造部38と、空気路本体34と二重管構造部38との間を接続している空気路用接続管40とを備えている。
【0055】
空気路本体34の1つの開口部には、空気路用接続部39を介して外部空気供給配管36が接続されている。空気路本体34のもう1つの開口部には、空気路用接続管40が接続されている。空気路本体34の残りの1つの開口部には、前述した大気路33が接続されている。
【0056】
空気路用接続管40の他端部は、空気路用接続管フランジ部40aとなっている。空気路用接続管40は、後述する二重管構造部フランジ部38b側へと突出するように空気路用接続管フランジ部40aに接続されている。空気路用接続管40の空気路用接続管フランジ部40aには、二重管構造部38の外筒38aの一端に設けられている二重管構造部フランジ部38bがボルト38cによって接続されている。二重管構造部フランジ部38bの反対端の二重管構造部38の外筒38aは、先細りとなっている。先細りの外筒38aの外周には、タップが設けられ、二重管構造部38を軸受台4の側壁に接続することができるようになっている。
【0057】
二重管構造部38は、外筒38aの内部を内筒37が摺動可能とされている。内筒37は、外筒38aよりもその全長が長いものとされている。内筒37の一端は、外筒38aの内部を摺動し、他端は、図2(A)に示すように、軸受台4に設けられているシール空気通路20内を摺動している。
【0058】
外筒38aの内部を摺動する内筒37の外周には、外筒38aの内径と同じ径を有する摺動部38dが設けられている。前述したように空気路用接続管フランジ部40aから空気路用接続管40の先端が二重管構造部38へと突出しているため、摺動部38dが二重管構造部フランジ部38bに達した場合には、内筒37の空気路用接続管40方向への移動が規制されることとなる。また、摺動部38dが二重管構造部38の外筒38aの先細り端側に移動した場合には、二重管構造部38の外筒38aのタップが設けられている端が細くなっているため内筒37のシール空気通路20方向への移動が規制されることとなる。
【0059】
外筒38a内の内筒37の端部の内径の中心には、小径の孔38eが設けられている。孔38eが内筒37の端部に設けられることによって、二重管構造部38内に導かれた空気を内筒37内へと導くことや、内筒37内へと導かれた空気を内筒37から二重管構造部38内へと導くことができる。一方、シール空気通路20内に設けられている内筒37の他端部は、開放端となっている。
【0060】
内筒37の内径の中心に設けられている孔38eによって、二重管構造部38から内筒37内へとシール空気が導かれた場合には、図2(A)に示すように、シール空気路20とバキュームブレーカー30内との圧力差によって内筒37がシール空気通路20の延在する方向(フランジ部38bと反対の方向)へ摺動する。このようにして、内筒37は、シール空気通路20とシール空気路入口21との間を遮断することとなる。
【0061】
一方、内筒37からバキュームブレーカー30の二重管構造部38へとシール空気が導かれた場合には、シール空気路内20とバキュームブレーカー30内との圧力差によってシール空気通路20とシール空気路入口21との間を遮断していた内筒37が二重管構造部フランジ部38bに向かってシール空気通路20内を摺動することとなる(図3(A)参照)。これにより、内筒37によって遮断されていたシール空気通路20とシール空気路入口21との間が連通することとなる。
【0062】
空気路用接続部39には、前述した空気冷却器に接続されている外部空気供給配管36が接続されている。外部空気供給配管36には、空気冷却器と空気路用接続部39との中途位置に逆止弁35が設けられている。逆止弁35は、過給機システムの運転状況に応じて操作される。すなわち、図2に示すように過給機システムの過給機カット運転が行われる場合に、運転を停止する過給機1の逆止弁35が開状態とされる。これにより、シール空気が外部空気供給配管36からバキュームブレーカー30の空気路31へと導かれる。また、ディーゼル機関が通常運転や低負荷運転される場合には、図3や図4に示すように、逆止弁35は、閉状態とされる。
【0063】
空気路本体34に接続されている大気路33は、その反対端が閉止されている(以下、「閉止端」という)。閉止端の外周には、複数の貫通孔33aが設けられている。閉止端の外周に設けられている貫通孔33a側の大気路33の内側には、弁座(図示せず)が設けられている。大気路33の内部には、弁座に押しつけられたり、弁座から離反したりする開閉弁41が設けられている。
【0064】
開閉弁41は、弁体41aと、弁体41aに接続されている弁棒41bとを有している。弁棒41bは、閉止端の中央部を貫通している。閉止端を貫通している弁棒41bは、閉止端を摺動できるものとされている。弁体41aは、大気路33内に貫通している弁棒41bに接続されている。閉止端を弁棒41bが摺動することによって、弁体41aが大気路33の内部に設けられている弁座に押しつけられたり、離反したりすることとなる。
【0065】
次に、過給機システムを構成している複数の過給機、例えば、3台の過給機を備えているディーゼル機関において、1台の過給機の運転を強制的に中止して、残りの2台の過給機によって運転する過給機カット運転の場合について図1および図2を用いて説明する。
過給機システムは、過給機カット運転を行うことにより1台の過給機1(図1参照)あたりに導かれる排ガス量が増加する。供給される排ガス量が増加するので、運転中の2台の過給機(図示せず)の回転数が増加する。回転数が増加するので運転中の過給機は、多くの空気を圧縮することができる。そのため、運転中の2台の過給機からディーゼル機関へ供給される空気量が増加し、ディーゼル機関の掃気圧が上昇する。ディーゼル機関の掃気圧が上昇するので、ディーゼル機関の熱効率が向上し燃料消費率が低下する。そのため、過給機カット運転をした場合、ディーゼル機関の燃料消費率が3台すべての過給機1を運転した過給機システムに比べて小さくなる。
【0066】
過給機カット運転を行うための準備として、まず、過給機システム中における強制的に運転を停止させる過給機(以下、「運転停止中の過給機」という。)1の圧縮機ケーシング11への空気の逆流と排ガスの流入とを遮断するために、タービンケーシングの入口および圧縮機ケーシング11の出口に蓋をする。
【0067】
運転停止中の過給機1への排ガスの流入と空気の流入とを遮断しても、各過給機1に設けられている空気抜き管が空気抜き集合管に接続されているため、運転中の2台の過給機(図示せず)の軸受台内部の空気が、空気抜き集合管を介して運転停止中の過給機1の軸受台4内部へと逆流する。また、各過給機1に設けられている油ドレン管が油ドレン集合管に接続されているため、運転中の2台の過給機の油ドレン管から潤滑油とともに空気が排出され、油ドレン集合管を介して運転停止中の過給機1の軸受台4内部へと空気が逆流する。そのため、運転停止中の過給機1の軸受台4の内部は、運転中の2台の過給機の軸受台の内部と圧力が同等となる。
【0068】
さらに、運転停止中の過給機1の軸受台4には、ディーゼル機関の運転を起因とした振動によってジャーナル軸受15がチャタリングを生じ損傷することを防止するために、潤滑油供給管から潤滑油が供給されている。しかし、運転停止中の過給機1には、排ガスが供給されないためタービン翼が回転駆動されない。タービン翼が回転駆動されないため、同軸6上に設けられているインペラ12も回転駆動されない。インペラ12が回転駆動されないため空気が圧縮されず、シール空気がシール空気通路20から分岐シール空気路25を経て圧縮機側油ラビリンスパッキン24へと導かれない。
【0069】
運転中の2台の過給機からの逆流した空気の影響によって、運転停止中の過給機1の軸受台4内の圧力が上昇し、ジャーナル軸受15には潤滑油が供給され、かつ、軸受台4にはシール空気が供給されないままでは、運転停止中の過給機1の軸受台4内の潤滑油が過給機1の外部へと漏洩する。
【0070】
そこで、運転停止中の過給機1に設けられているバキュームブレーカー30の逆止弁35を開状態にする。また、運転中の2台の過給機のどちらかの一方の過給機が接続されている空気冷却器から外部空気供給配管36を経て運転停止中の過給機1へとシール空気である圧縮空気を導く。外部空気供給配管36から運転停止中の過給機1へと導かれたシール空気は、バキュームブレーカー30に導入される。導入されたシール空気は、図2に示すようにバキュームブレーカー30の空気路31へと導かれる。空気路31に導かれたシール空気は、二重管構造部38から内筒37に流動する。二重管構造部38内と内筒37内との圧力差によって内筒37がシール空気通路20内を分岐シール空気路25(図1参照)へと向かって摺動する。
【0071】
シール空気通路20内を摺動している内筒37は、シール空気通路20の延在している方向に摺動してシール空気路入口21とシール空気通路20との間を遮断する。内筒37によってシール空気路入口21とシール空気通路20との間が遮断されるので、外部空気供給配管36からバキュームブレーカー30を経てシール空気通路20へと導かれたシール空気は、シール空気通路20から分岐シール空気路25(図1参照)へと導かれるが圧縮機3の渦巻き室11bへと漏洩することが防止される。
【0072】
このように、シール空気通路20に導かれたシール空気は、分岐シール空気路25(図1参照)から圧縮機側油ラビリンスパッキン24の中央部へと供給される。圧縮機側油ラビリンスパッキン24に供給されたシール空気は、圧縮機3側からタービン側へとラビリンスフィンを通過して、潤滑油が軸受台4から圧縮機3側へと漏洩することを封止する。
【0073】
また、バキュームブレーカー30に供給されたシール空気である圧縮空気の一部は、空気路31を構成している空気路本体34の1つの開口部から大気路33へと導かれる。大気路33へと導かれた圧縮空気は、開閉弁41の弁体41aを大気路33の内部に設けられている弁座に押しつけるように作用する(図2(B)において左方向)。そのため、大気路33の閉止端に設けられている複数の貫通孔33aから大気路33内の圧縮空気が大気路33の外へと漏洩しない。
【0074】
次に、ディーゼル機関に設けられている過給機システムを通常通り運転する通常運転時の場合について図1および図3を用いて説明する。なお、図1および図3では、過給機システムを構成している1台の過給機1についてのみ示す。
図3に示すように、外部空気供給配管36に設けられている逆止弁35は、閉状態とされている。
過給機1(図1参照)には、ディーゼル機関に接続されている排ガス集合管から排ガスが導かれる。過給機1に導入された排ガスは、タービン翼へと供給される。タービン翼に供給された排ガスによって回転軸6が回転駆動される。回転軸6を回転駆動した排ガスは、タービンケーシングの出口から排出される。
【0075】
回転軸6が回転駆動することによって、同軸6上に設けられているインペラ12が回転駆動される。インペラ12が回転駆動されることによって、圧縮機ケーシング11の入口から吸入された空気が圧縮される。圧縮された空気は、インペラ12の径方向外側に送出され、渦巻き室11bを経て圧縮機ケーシング11の出口から導出される。
【0076】
インペラ12を通過して圧縮された空気の一部は、インペラ12の先端部より軸受台4に設けられているシール空気路入口21を経てシール空気通路20へと導入される。シール空気通路20に導かれた圧縮空気は、シール空気として圧縮機3側からタービン側へと圧縮機側油ラビリンスパッキン24を通過して潤滑油が軸受台4から圧縮機3側へと漏洩することを封止する。
【0077】
シール空気路入口21に導かれた圧縮空気の一部は、バキュームブレーカー30の二重管構造部38(図3参照)の内筒37内へと導かれる。内筒37内に圧縮空気が導かれることにより内筒37内と二重管構造部38内との圧力差によって、内筒37が二重管構造部38内を二重管構造部フランジ部38b側に向かって(図3(A)において左方向)摺動する。二重管構造部38内を摺動して二重管構造部フランジ部38bに達した内筒37は、内筒37に設けられている摺動部38dによって二重管構造部フランジ部38b方向の移動が規制されて止まる。
【0078】
内筒37内の圧縮空気は、二重管構造部38から空気路用接続管40を経て空気路本体34へと導かれる。空気路本体34に導かれた圧縮空気は、空気路用接続部39を介して外部空気供給配管36へと流動する。外部空気供給配管36上に設けられている逆止弁35が閉状態のため外部空気供給配管36へと導かれた圧縮空気は、バキュームブレーカー30の外へと漏洩しない。
【0079】
また、空気路本体34に供給された圧縮空気の一部は、空気路本体34の1つの開口部から大気路33へと導かれる。大気路33へと導かれた圧縮空気は、開閉弁41の弁体41aを大気路33の内部に設けられている弁座に押しつけるように作用する。そのため、大気路33の閉止端に設けられている複数の貫通孔33aから大気路33内の圧縮空気が大気路33の外へと漏洩しない。
【0080】
次に、ディーゼル機関の低負荷運転の場合における過給機システムについて図1および図4を用いて説明する。なお、図1および図4では、過給機システムを構成している1台の過給機1についてのみ示す。
ディーゼル機関の低負荷運転時には、過給機1を駆動するために十分な排ガスを過給機1に供給することができないため、過給機1がほとんど駆動しない。そのため、図示しない補助ブロアを運転させて、圧縮空気をディーゼル機関へと供給している。補助ブロアを運転させて圧縮空気をディーゼル機関へと供給する際には、補助ブロアが空気を吸引することによって過給機1の渦巻き室11b内が負圧になる。
なお、外部空気供給配管36(図4参照)に設けられている逆止弁35は、閉状態とされている。
【0081】
過給機1の渦巻き室11b内が負圧になるため、渦巻き室11bからシール空気路入口21を経てシール空気路20内およびバキュームブレーカー30の内部が負圧になる。バキュームブレーカー30の内部が負圧になるため、空気路31と連通している大気路33内も負圧になる。大気路33内が負圧になるため、大気路33の閉止端に設けられている複数の貫通孔33aから流入した空気が弁体41aを大気路33に設けられている弁座から離反するように作用することとなる。
【0082】
空気が弁体41aを弁座から離反するように作用することによって、大気路33に設けられている貫通孔33aから大気路33内へと空気が流入する。大気路33内に流入した空気は、逆止弁35が閉状態のため、空気路本体34を経てシール空気通路20へと導かれる。シール空気通路20に導かれた空気は、シール空気路入口21から過給機1の渦巻き室11bへと供給される。これによって、軸受台4から潤滑油が吸引されて過給機1へと漏洩することを防止することができる。
【0083】
以上の通り、本実施形態に係る過給機のシール空気導入手段、これを備えた過給機、これを備えた過給機システム、これを備えたディーゼル機関およびこれを備えた船舶によれば、以下の作用効果を奏する。
過給機カットの場合には、運転停止中の過給機1のバキュームブレーカー(シール空気導入手段)30の空気路31に外部空気供給配管(外部)36からシール空気(圧縮空気)が導かれ、過給機1に設けられているシール空気通路(圧縮空気供給路)20と空気路31との圧力差によってバキュームブレーカー30に設けられている内筒37が摺動して圧縮機3の渦巻き室11bに一端が開口しているシール空気路入口21と、シール空気通路20との間を遮断することとした。そのため、バキュームブレーカー30に接続されている外部空気供給配管36から導入されたシール空気を過給機1の圧縮機側油ラビリンスパッキン(圧縮機側封止部)24へと導くことができる。したがって、過給機1のジャーナル軸受(軸受)15およびスラスト軸受(軸受)17から潤滑油が漏洩することを防止することができる。
【0084】
バキュームブレーカー30の空気路31から分岐している大気路33の閉止端(端部)側の内部には、大気路33内の圧力に応じて開閉する開閉弁41を設けることとした。そのため、空気路31内に連通している大気路33内の圧力に応じて、開閉弁41を開にさせてバキュームブレーカー30から過給機1のシール空気通路20へと空気を導くことができる。したがって、バキュームブレーカー30から導かれた空気によって過給機1のジャーナル軸受15およびスラスト軸受17から潤滑油が漏洩することを防止することができる。
【0085】
過給機1の運転停止中や圧縮機3の渦巻き室11bが負圧になった場合であっても、過給機1には、常時空気を導くことが可能なバキュームブレーカー30を備えることとした。そのため、バキュームブレーカー30からシール空気通路20へと空気を導くことができる。したがって、過給機1のジャーナル軸受15およびスラスト軸受17から潤滑油の漏洩を防止することができる。
【0086】
過給機システムには、運転停止中の過給機1のジャーナル軸受15およびスラスト軸受17から潤滑油が漏洩することを防止することが可能な過給機1を用いることとした。そのため、運転停止中の過給機1の回転軸6を抜き出す必要がなくなる。したがって、過給機システムの過給機カット運転の準備時間を短縮することができる。
【0087】
過給機システムの過給機カット運転中に運転停止中の過給機1のシール空気通路20には、運転中の過給機(他の過給機)によって圧縮された空気がバキュームブレーカー30を介して導くこととした。そのため、運転停止中の過給機1の圧縮機側油ラビリンスパッキン24に導く空気を供給する機器を別途設ける必要がない。したがって、機器設置コストを抑制することができる。
【0088】
運転停止中の過給機1の回転軸6を抜き出すことなく過給機カット運転を行うことができる過給機システムを備えることとした。そのため、過給機カット運転の準備時間を短縮することができる。
【0089】
ディーゼル機関の低負荷運転時に過給機1の圧縮機3の渦巻き室11bが負圧になった場合には、バキュームブレーカー30からシール空気通路20へと空気を供給することができる過給機1を備えている過給機システムを用いることとした。そのため、ディーゼル機関の低負荷運転時における性能を容易に改善して燃料消費率を改善することができる。
【0090】
過給機カット運転の準備時間を短縮することが可能な、かつ、ディーゼル機関の低負荷運転時における性能を容易に改善可能なディーゼル機関を用いることとした。そのため、乗組員の船内作業を低減しつつ、船舶の航行コストを改善することが可能となる。
【0091】
なお、本実施形態ではディーゼル機関に搭載されている過給機システムを構成している過給機1の全てにバキュームブレーカー30を設けるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、過給機システムを構成している過給機1のうち少なくとも1台にバキュームブレーカー30が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0092】
4 軸受台
20 シール空気通路(圧縮空気供給路)
30 バキュームブレーカー(シール空気導入手段)
31 空気路
37 内筒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスにより回転駆動されるタービンと、一端に前記タービンを設ける回転軸と、該回転軸の他端に設けられて前記タービンが回転駆動することにより回転駆動して空気を圧縮する圧縮機と、前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、該軸受と前記圧縮機との間に設けられ、前記軸受に供給される潤滑油の前記圧縮機側への漏洩を封止する圧縮機側封止部と、前記圧縮機により圧縮された空気の一部を前記圧縮機側封止部へと導く圧縮空気供給路を有する軸受台と、を備える過給機に設けられる過給機のシール空気導入手段であって、
前記軸受台に前記圧縮空気供給路と連通して設けられ、空気が導かれる空気路と、
該空気路の内部を摺動する内筒と、を備え、
過給機カットの際には、外部から圧縮空気が前記空気路に導かれ、前記圧縮空気供給路と前記空気路との圧力差により前記内筒が摺動して前記圧縮機と前記圧縮空気供給路との間を遮断する過給機のシール空気導入手段。
【請求項2】
前記空気路の途中に合流する大気路と、
該大気路の端部に設けられ、該大気路内の圧力が負圧になった場合に開となり、外部からの空気を空気路へ導く開閉弁と、を備える請求項1に記載の過給機のシール空気導入手段。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシール空気導入手段を備える過給機。
【請求項4】
複数の過給機を備え、これら過給機のうちの少なくとも1つが請求項3に記載の過給機とされる過給機システム。
【請求項5】
前記圧縮空気は、他の前記過給機によって圧縮された空気とされる請求項4に記載の過給機システム。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の過給機システムを備えるディーゼル機関。
【請求項7】
請求項6に記載のディーゼル機関を備える船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−236795(P2011−236795A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108313(P2010−108313)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】