説明

過電圧保護回路

【課題】部品点数を増やさず、増幅器のゲインを下げることなく異常時制御の精度を高めた過電圧保護回路を提供すること。
【解決手段】誤差増幅器11の出力端子には抵抗およびキャパシタンスを含む位相補償回路15が接続され、誤差増幅器11の出力端子と位相補償回路15との間に抵抗Roとスイッチ17を備える。OVPコンパレータ12を備え、信号OVPBを出力する。OVPコンパレータ12は、コンパレータとして動作すればよいため、電流出力能力の小さい回路で十分である。また、抵抗の両端子の電圧を入力し比較する電圧差比較器13を備え、論理回路を介してスイッチをオンオフする制御信号を生成する。すなわち、電圧差比較器13は、抵抗間の出電圧により2つの信号EAOBとCOMBを出力し、上記信号OVPBとでスイッチのオンオフを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過電圧保護回路に関し、より詳細には、出力電圧が一定となるようにフィードバック制御を行う過電圧保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に、従来の過電圧保護回路の構成を示す。外部電源VINからインダクタンスとダイオードを介して電圧保持用のキャパシタに電荷が供給され、定電圧Voutが負荷Loadに接続されている。負荷Loadは、例えばLEDであり、グランドとの間に抵抗が直列に接続される。図3では1つの負荷Loadが接続されているが、並列または直接あるいはそれらの組み合わせで複数のLEDが接続されることがある。
【0003】
負荷Loadと抵抗との間の電位が誤差増幅器21の反転入力端子に入力されている。非反転入力端子には、基準電圧Vrefが入力され、差電圧を増幅した誤差信号COMPが出力される。誤差信号COMPはPWMコンパレータ24に入力され、のこぎり波と比較され、のこぎり波の電圧より高い場合に、PWMコンパレータ24から「Hi」が出力される。のこぎり波は一定の周波数であるため、PWMコンパレータ24からは誤差信号に応じたPWM信号が生成される。PWM信号が、インダクタンスに接続されたMOSトランジスタからなるスイッチを制御することにより、出力電圧Voutは一定となるようにフィードバック制御される。
【0004】
フィードバック制御であるので位相補償を行う必要があることから、誤差増幅器21の出力端子には抵抗およびキャパシタンスを含む位相補償回路23が接続されている。
【0005】
負荷Load等に異常が発生し、例えば負荷Loadが切断されたような場合、誤差増幅器21の反転入力端子はグランドレベルとなり、出力電圧Voutが上昇し続ける。過上昇した場合に安定制御するために、出力電圧Voutを抵抗分割した電圧と、所定の基準電圧Vrefとの差信号をOVP増幅器22により増幅し、PWMコンパレータ24に制御信号と入力することで、出力電圧Voutが過電圧になった場合に、MOSスイッチをオフにして、過電圧を防止していた。
【0006】
また、従来の他の過電圧保護回路として、過電圧を検出すると、誤差増幅器21の動作を停止し、しばらく停止したのちに、復帰させるという回路構成が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平03−040719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
過電圧制御のためのフィードバックを安定させるためにも位相補償を十分に設ける必要があり、従来、チップサイズの増大や外付け部品を少なくするために、位相補償用の受動素子を設けずに、増幅器のゲインを下げて発振を防止していた。
【0009】
しかしながら、増幅器のゲインを下げると過電圧時の電圧精度が低くなってしまうという課題があった。
【0010】
また、上述の特許文献1では、休止と過電圧検出を繰り返すため、出力電圧Voutがのこぎり波状に変化し、一定の電圧での安定した制御が困難であるという課題があった。
【0011】
特に、複数チャンネルのLEDを駆動する場合には、いずれかのチャンネルが断線してしまっても、残ったチャンネルを正常に精度よく点灯させる必要があり、過電圧時にも精度よく出力電圧Voutを発生させる点にも課題があった。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、部品点数を増やさず、増幅器のゲインを下げることなく異常時制御の精度を高めた過電圧保護回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、PWM制御により出力電圧を制御する過電圧保護回路において、出力電圧が接続される負荷を流れる電流に基づいた電圧と所定の第1の基準電圧との差を増幅する誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力信号と基準となるのこぎり波とを比較し、PWM制御信号を生成するPWMコンパレータと、前記PWMコンパレータの前記誤差信号が入力される端子に接続され、誤差信号の位相補償を行うキャパシタンスを含む位相補償部と、前記PWMコンパレータの前記誤差信号が入力される端子と前記誤差増幅器の出力端子に直列に接続される抵抗およびスイッチと、を備え、前記抵抗の端子間に所定の電圧差が発生したときに、前記スイッチをオフして、前記キャパシタに誤差信号を保持することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の過電圧保護回路において、前記出力電圧を抵抗分割した信号と所定の第2の基準電圧とを比較し、OVP制御信号を出力するOVPコンパレータをさらに備え、前記OVPコンパレータは前記出力電圧が前記第2の基準電圧を超えたときに前記スイッチをオフすることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の過電圧保護回路において、前記第2の基準電圧は、前記負荷が断線した場合に前記抵抗分割した信号が達する電圧レベルであることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の過電圧保護回路において、前記負荷は、並列に接続された複数のLEDと、前記LEDの少なくとも1つに所定の時間過電圧状態が続いた場合、前記過電圧状態のLEDを除去するタイマー回路とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、部品点数を増やさず、増幅器のゲインを下げることなく異常時制御の精度を高める効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る過電圧保護回路の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る過電圧保護回路の動作を示す図である。
【図3】従来の過電圧保護回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0020】
図1に、本発明の一実施形態に係る過電圧保護回路の構成を示す。外部電源VINからインダクタンスとダイオードを介して電圧保持用のキャパシタに電荷が供給され、定電圧Voutが負荷Loadに接続されている。負荷Loadは、例えばLEDであり、グランドとの間に抵抗が直列に接続される。図1では1つの負荷Loadが接続されているが、並列または直接あるいはそれらの組み合わせで複数のLEDが接続され、チャネルフィードバック制御が行えるようにしてもよい。
【0021】
負荷Loadと抵抗との間の電位が誤差増幅器11の反転入力端子に入力されている。非反転入力端子には、基準電圧Vrefが入力され、差電圧を増幅した誤差信号COMPが出力される。誤差信号COMPはPWMコンパレータ16に入力され、のこぎり波と比較され、のこぎり波の電圧より高い場合に、PWMコンパレータ16から「Hi」が出力される。のこぎり波は一定の周波数であるため、PWMコンパレータ16からは誤差信号に応じたPWM信号が生成される。PWM信号が、インダクタンスに接続されたMOSトランジスタからなるスイッチを制御することにより、出力電圧Voutは一定となるようにフィードバック制御される。
【0022】
誤差増幅器11の出力端子には抵抗およびキャパシタンスを含む位相補償回路15が接続され、誤差増幅器11の出力端子と位相補償回路15との間に抵抗Roとスイッチ17を備える。
【0023】
本発明では、従来技術において異常時電圧を検出したOVP増幅器22の代わりに、OVPコンパレータ12を備え、信号OVPBを出力する。OVPコンパレータ12は、コンパレータとして動作すればよいため、電流出力能力の小さい回路で十分である。
【0024】
また、抵抗の両端子の電圧を入力し比較する電圧差比較器13を備え、論理回路を介してスイッチをオンオフする制御信号を生成する。すなわち、電圧差比較器13は、抵抗間の出電圧により2つの信号EAOBとCOMBを出力し、上記信号OVPBとでスイッチのオンオフを制御する。
【0025】
図2に、本発明の一実施形態に係る過電圧保護回路の動作を示す。
【0026】
(正常時の動作)
負荷Loadに異常がなく、正常に動作しているときは、負荷Loadと抵抗に電流が流れるため、抵抗に電圧FBが発生している。この電圧FBは、誤差増幅器11において基準電圧VREFと比較され、誤差信号EAOが所定の電圧に制御されている。動作が安定しているため、誤差増幅器11の出力EAOはほぼ一定になっており、抵抗Roに電流も流れないため、電圧COMもほぼ同電位である。
【0027】
信号EAOおよび信号COMは電位差比較器13に入力され、電位差比較器13は、
EAO−COMP≧0.2VのときEAOB=Lo
COMP−EAO≧0.2VのときCOMPB=Lo
を出力し、その他の場合はHiを出力する。但し、ここで電位差の基準を0.2Vとしたのは一例であり、0.2Vに限らず正数であればよい。すなわち、EAOがCOMPより一定以上高い電圧である場合はEAOBがLoを出力し、COMPがEAOより一定以上高い場合はCOMPBがLowo出力する。
【0028】
上述したように、正常動作中は、COMPとEAOはほぼ同電位であるため、EAOBおよびCOMPBはHiであり、フリップフロップ14の出力EAHLDBはHiとなっており、スイッチ17はオンしている。したがって、フィードバック制御され、出力電圧Voutは所定の電圧(例えば33V)に制御されている。
【0029】
(異常時の動作)
ここで、負荷Loadに異常が発生し、断線したような場合を想定する。このとき負荷Loadに接続される抵抗には電流が流れなくなるため、電圧降下がゼロになり、誤差増幅器11に入力される信号FBはゼロ電位となる。すると、誤差増幅器11の出力EAOおよび信号COMPも上昇しようとするが、抵抗Roに電流が流れるため、EAOとCOMPとの間で電位差を生じ、抵抗Roの分EAOが高い電圧をとなりながらVoutは上昇していく。尚、信号EAOBはHiからLoに変化するが、ここでは動作に影響しない。
【0030】
信号COMPが上昇するため、出力電圧Voutも上昇し、例えばVoutが40Vを超えると、OVPコンパレータ12に入力されるVoutの抵抗分割された信号も基準信号Vrefを超える。このとき、OVPコンパレータ12の出力信号OVPBがLoに変化し、NOR回路の出力がLoからHiに変化する。そして、その立ち上がりでフリップフロップ14が動作し、信号EAHLDBがHiからLoに変化してスイッチ17をオフにする。
【0031】
スイッチ17がオフすると、位相補償回路15のキャパシタに信号COMPの電圧が保持され、出力電圧Voutはそのときの電圧に保持される。
【0032】
また、上述したような負荷Loadとして複数のLEDが接続されている場合(不図示)は、故障したLEDのフィードバックを除外し、残りのLEDに関してチャンネルフィードバック制御を行うことがある。このような場合には負荷Loadが再接続されるため、電圧FBがゼロ電位にならず、出力電圧Voutに応じた高い電圧を生じることになる。
【0033】
このとき、EAOは信号FBがゼロ電位のときよりも小さくなるが、EAOはCOMPに比べ、再接続された負荷Loadによる電圧降下分小さくなる。その結果、EAOBおよびOVPBがHiに変化し、COMPBはLoからHiに変化するため、フリップフロップ14がリセットされ、EAHLDBがHiに変化し、スイッチ17がオンする。
【0034】
そこで、誤差増幅器11によるフィードバック制御が再開され、出力Voutは小さくなり、定電圧に近づき、FBも所定電圧に近づき、抵抗Roに電流が流れなくなるため、EAOとCOMPが同電位となり、COMPB信号がHiに戻って、正常動作に遷移することになる。
【0035】
再接続には例えば、タイマー回路を用いて、所定の時間過電圧状態が続いたら、問題のチャンネルを除去して、残りのチャンネルでフィードバック制御するようにすればよい。
【0036】
以上のように、本発明では、異常電圧をコンパレータで検出し、誤差増幅器によるフィードバックを停止させるため、異常検出用のフィードバックの位相補償を行う必要がなく、高精度で安定な過電圧保護回路を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
11、21 誤差増幅器
12 OVPコンパレータ
13 電圧差比較器
14 フリップフロップ
15 位相補償回路
16、23 PWMコンパレータ
17 スイッチ
22 OVP増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM制御により出力電圧を制御する過電圧保護回路において、
出力電圧が接続される負荷を流れる電流に基づいた電圧と所定の第1の基準電圧との差を増幅する誤差増幅器と、
前記誤差増幅器の出力信号と基準となるのこぎり波とを比較し、PWM制御信号を生成するPWMコンパレータと、
前記PWMコンパレータの前記誤差信号が入力される端子に接続され、誤差信号の位相補償を行うキャパシタンスを含む位相補償部と、
前記PWMコンパレータの前記誤差信号が入力される端子と前記誤差増幅器の出力端子に直列に接続される抵抗およびスイッチと、を備え、
前記抵抗の端子間に所定の電圧差が発生したときに、前記スイッチをオフして、前記キャパシタに誤差信号を保持することを特徴とする過電圧保護回路。
【請求項2】
前記出力電圧を抵抗分割した信号と所定の第2の基準電圧とを比較し、OVP制御信号を出力するOVPコンパレータをさらに備え、
前記OVPコンパレータは前記出力電圧が前記第2の基準電圧を超えたときに前記スイッチをオフすることを特徴とする請求項1に記載の過電圧保護回路。
【請求項3】
前記第2の基準電圧は、前記負荷が断線した場合に前記抵抗分割した信号が達する電圧レベルであることを特徴とする請求項2に記載の過電圧保護回路。
【請求項4】
前記負荷は、
並列に接続された複数のLEDと、
前記LEDの少なくとも1つに所定の時間過電圧状態が続いた場合、前記過電圧状態のLEDを除去するタイマー回路と
を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の過電圧保護回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−62002(P2011−62002A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210194(P2009−210194)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(509120894)旭化成東光パワーデバイス株式会社 (20)
【Fターム(参考)】