説明

道路鋲

【課題】 簡易な構成で実現することが可能な道路鋲を提供する。
【解決手段】 本発明は、道路に設置されるための道路鋲である。道路鋲は、検知部と、判定部と、警告出力部とを備えている。検知部は、車両に搭載される車載レーダから出射されたレーダビームを検知する。判定部は、検知部による検知結果に基づいて、自機に近づく車両が存在するか否かを判定する。警告出力部は、判定部によって自機に近づく車両が存在すると判定された場合、音または光で警告を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の交差点への接近をドライバー等に知らせるために道路の交差点に設置される道路鋲に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多くの道路鋲に関する技術が考えられている。例えば、発行道路鋲装置が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。この発光道路鋲装置は、光センサまたは距離センサを用いて移動体(車両等)を検知し、移動体が交差点から一定距離以内に侵入したか否かを判定し、一定距離以内に移動体が侵入した場合に発光体の点滅間隔を変更する。これによって、移動体が交差点に接近していることを車両の運転者や通行者に知らせることができる。
【特許文献1】特開平7−109713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の構成では、道路鋲が設置される交差点に交わる道路の数に応じて光センサまたは距離センサの数を増やさなければならない。従って、多くの道路が交わる交差点に設置する場合、道路鋲の構成が複雑になってしまう。
【0004】
それ故、本発明は、簡易な構成で実現することが可能な道路鋲を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、道路に設置されるための道路鋲である。道路鋲は、検知部と、判定部と、警告出力部とを備えている。検知部は、車両に搭載される車載レーダから出射されたレーダビームを検知する。判定部は、検知部による検知結果に基づいて、自機に近づく車両が存在するか否かを判定する。警告出力部は、判定部によって自機に近づく車両が存在すると判定された場合、音または光で警告を発する。
【0006】
また、第2の発明においては、検知部は、レーダビームを受信するアンテナと、アンテナを所定の軸周りに360°回転させる回転機構とを含んでいてもよい。また、判定部は、入力部と、エリア処理部とを含んでいてもよい。入力部は、アンテナが複数の所定方向を向く度に検知部による検知結果を入力する(後述する実施形態との対応を示せば、図7に示すステップS2)。エリア処理部は、所定の軸周りに設定される複数のエリアについて、あるエリアに含まれる所定方向をアンテナが向いている間に入力される検知結果に基づいて、当該エリアにおいて自機に近づく車両が存在するか否かを判定する処理をエリア毎に行う(後述する実施形態との対応を示せば、図7に示すステップS3,S5,S7,S9)。このとき、警告出力部は、複数のエリアのうちの異なる2つ以上のエリアについて自機に近づく車両が存在するとエリア処理部が判定した場合にのみ警告を発する。
【0007】
また、第3の発明においては、複数の所定方向の数は、複数のエリアの数よりも多くてもよい。このとき、エリア処理部は、あるエリアに含まれる所定方向をアンテナが向いている間に入力される複数の検知結果に基づいて、当該エリアにおいて自機に近づく車両が存在するか否かを判定する。
【0008】
また、第4の発明においては、判定部は、検知部によって検知されたレーダビームの強度が増加する方向に変化している場合、自機に近づく車両が存在すると判定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、車載レーダのレーダビームを受信することによって、車両を検出するための送信機が不要となる。従って、従来のように送信機を必要とする構成に比べて簡易な構成で道路鋲を実現することができる。
【0010】
また、第2の発明によれば、1つのアンテナで複数の方向からのレーダビームを検知することができるので、道路鋲を設置する交差点に接続される道路の数が多い場合でも、道路鋲の構成を簡易にすることができる。従来においては、道路鋲が設置される交差点に接続される道路の数に対応する送信機および受信機を設けなければならないため、道路の数が多い交差点に設置する道路鋲については特に構成が複雑になってしまっていた。これに対して、第2の発明によれば、送信機が不要となることに加えて、受信機を1つにすることができるので、道路鋲の構成をさらに簡易にすることができる。また、道路鋲を低コストで製造することができる。また、第2の発明によれば、真に必要な場合にのみドライバーに警告を発することができるので、ドライバーは、危険でない場面において不要な注意を払う必要がなくなる。また、警告出力部から不要な警告を発することがないので、省電力にも貢献できる。
【0011】
また、第3の発明によれば、1つのエリアに対して複数の所定方向について得られた検知結果が用いられるので、アンテナを回転させる場合であっても正確に車両の有無を判断することができる。
【0012】
また、第4の発明によれば、車両が道路鋲に接近しているのか遠ざかっているのかを容易に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本実施形態に係る道路鋲およびそれが設置された道路周辺の外観を示す図である。道路鋲1は、例えば図1に示すような交差点や、見通しの悪い曲がり角等に設置される。道路鋲1は、好ましくは、車両の通行の障害とならないよう、道路の地面付近に設置される。また、図1においては、道路鋲1は、交差点の中央付近に設置されている。ここで、道路鋲1は、車両に搭載される車載レーダのレーダビームを検知することによって、自機に近づく車両(接近車両)の有無を判断する。道路鋲1は、接近車両が存在する場合には、必要に応じて運転者に対して警告を発する。以下、道路鋲1の詳細を説明する。なお、本実施形態においては、2本の道路が直角に交差する十字路の交差点に設置されるための道路鋲1を例として説明する。
【0014】
図2は、道路鋲1の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図2において、道路鋲1は、検知部101、A/D変換部102、判定部103、および警告出力部104を備えている。以下、図2に示す各部について説明する。
【0015】
検知部101は、車両に搭載される車載レーダから出射されたレーダビームを検知する。近年、前方の車両や障害物を検知するための車載レーダが普及しつつあり、ミリ波レーダのビームを出射する車載レーダが搭載された車両も少なくない。さらに言えば、車載レーダを車両に搭載することが法律によって義務づけられれば、車載レーダが全ての車両に搭載される日も遠くはない。本実施形態における検知部101は、このような車載レーダから出射されるレーダビームを検知するものである。検知部101は、アンテナによって受信された当該レーダビームの強度に応じた大きさの電圧振幅を有する信号を出力する。
【0016】
図3は、図2に示す検知部101の詳細な構成の例を示す図である。図3に示すように、検知部101は、アンテナ201、ローノイズアンプ202、バンドパスフィルタ203、オシレータ204、ミキサ205、およびローパスフィルタ206を含む。なお、本実施形態では、自車両の前方の車両あるいは障害物を検知する目的で用いられる、77GHz帯のミリ波レーダを搭載した車両からのレーダビームを検知する場合を例として説明する。
【0017】
図3において、車両から放射されたレーダビームは、アンテナ201によって受信される。図4は、道路鋲1とそれに近づく車両を示す図である。図4に示す車両5は、上記のような車載レーダを搭載しており、自車の前方にレーダビームを出射している。一方、道路鋲1の検知部101は、当該レーダビームを受信するためのアンテナ201を備えている。このアンテナ201の指向性は、地面に略水平な方向から所定角度(鋭角)だけ上方の方向までの範囲に設定される。図4に示す点線は、アンテナ201の指向性を示している。なお、前方の車両との車間を測定する目的で車載レーダが車両に搭載される場合、車載レーダからのレーダビームの指向性は、地面に水平な方向を中心とした狭い範囲に設定される。その結果、車載レーダから道路鋲1のアンテナへの方向には弱いレーダビームしか出射されなくなる。しかし、このような場合であっても、アンテナの指向性を図4に示すように設定することによって、車載レーダからのレーダビームをアンテナで受信することができる。
【0018】
図3の説明に戻り、アンテナ201で受信されたレーダビームの信号は、ローノイズアンプ202によって雑音を抑えつつ電力増幅される。ローノイズアンプ202によって増幅された信号は、バンドパスフィルタ203によって所望の周波数帯域のみが抽出される。バンドパスフィルタ203から出力される信号は、オシレータ204から出力される77GHzの連続波とともにミキサ205へ入力される。これによって、バンドパスフィルタ203から出力される信号は、ミキサ205においてベースバンド信号にダウンコンバートされる。ミキサ205から出力される信号は、ローパスフィルタ206によって所望の周波数成分のみを有するベースバンド信号となる。本実施形態においては、当該ベースバンド信号が検知部101から出力される。なお、77GHzのレーダビームの信号を受信する場合、仮にその信号が何らかのパターンで変調されていたとしても、その信号をダウンコンバートすることによって得られるベースバンド信号は、いくらかの電圧振幅を有する。従って、ベースバンド信号の電圧振幅によって、レーダビームを検知しているか否かを判断することができる。
【0019】
以上の図3に示したように、本実施形態においては、レーダビームの信号をベースバンド信号に周波数変換するダウンコンバーターとして検知部101を構成したが、検知部101の構成はこれに限るものではなく、例えばパワーメーターを用いてレーダ信号を受信してもよい。
【0020】
図2の説明に戻り、A/D変換部102は、検知部101から出力される信号(上記ベースバンド信号)に対してA/D変換を行う。具体的には、A/D変換部102は、検知部101から出力されるベースバンド信号の電圧値をデジタル値に変換するようにA/D変換を行う。
【0021】
判定部103は、検知部101による検知結果に基づいて、自機に近づく車両(接近車両)が存在するか否かを判定する。すなわち、本実施形態における判定部103は、A/D変換部102から出力されるデジタル信号によって示される値に基づいて、接近車両の有無を判定する。具体的には、判定部103は、A/D変換部102から出力されるデジタル信号によって示される値の時間変化を調べる。時間変化が増加する方向への変化である場合、接近車両が存在すると判定し、時間変化が減少する方向への変化である場合、接近車両が存在しないと判定する。また、デジタル信号の値が所定の閾値以下である場合には、時間変化の増減とは無関係に接近車両が存在しないと判定する。さらに、判定部103は、判定結果に基づいて、ドライバーへの警告の必要性を判断し、必要であれば、警告出力部104に警告を行わせるための制御情報を出力する。判定部103としては例えばDSPが用いられ、A/D変換部102から出力されるデジタル信号に対してソフトウェア的に信号処理を行う。
【0022】
警告出力部104は、判定部103からの制御情報に従って、光による警告を発する。警告出力部104としては例えばLEDが用いられ、判定部103が出力する制御情報に従ってLEDが点灯することによってドライバーに対して危険を警告することができる。
【0023】
ここで、道路鋲1は、複数の方向からのレーダビームを受信することによって、複数の方向に存在する接近車両の有無を判定することができる。さらに、その判定結果に従って、複数の方向に対して警告を発することができる。以下、詳細を説明する。
【0024】
図5は、道路鋲1の外観を示す図である。本実施形態では、道路鋲1は、略円柱形の外観を有しており、図5に示す中心軸Xが地面に対して略垂直になるように地面に設置される。図5において、道路鋲1は、回転部105と固定部106とから構成される。回転部105は、中心軸Xを中心に360°回転可能な回転機構である。上記検知部101は、回転部105の内部に設けられる。一方、固定部106は、中心軸Xの軸周りに関して固定されている。回転部105には、上記警告出力部104の一例であるLED107が設けられる。なお、図2に示すA/D変換部102および判定部103は、回転部105および固定部106のいずれに設けられてもよい。また、検知部101の各構成(図3参照)のうちアンテナ201が少なくとも回転部105に設けられればよく、アンテナ以外の各構成は固定部106に設けられてもよい。
【0025】
アンテナ201は、図5に示すように、回転部105の側面にホーンアンテナとして形成される。また、アンテナ201は回転部105に対して固定的に設けられる。従って、回転部105が中心軸X周りに回転することによってアンテナ201が回転するので、アンテナ201は、中心軸X周りの全ての方向からレーダビームを受信することが可能である。すなわち、検知部101は、中心軸Xに垂直な平面上における全ての方向からのレーダビームを検知することが可能である。
【0026】
図6は、道路鋲1の上面図である。なお、以下では、説明の便宜上、道路鋲1の中心軸(上記中心軸X)を中心として放射状に広がるエリアを図6に示すような4つのエリアに分割し、分割した各エリアをそれぞれ、第1エリア、第2エリア、第3エリア、第4エリアと呼ぶことにする。4つの各エリアは、交差点から延びる4本の道路にそれぞれ対応している。つまり、エリアの中心方向は、道路の方向と一致している。換言すれば、道路鋲1は、各エリアの中心方向が道路の方向とほぼ一致するように交差点に設置される。また、以下では、アンテナの角度(アンテナの方向)を、第1エリアの中心方向(図3に示す1点鎖線)を0°とし、道路鋲1を上から見て時計周りにd°(d=0、1、2、・・・、359)として定義する。
【0027】
また、本実施形態においては、図6に示すように、道路鋲1には合計12個のLEDが取り付けられる。具体的には、道路鋲1には1つのエリアについて3つのLEDが取り付けられる。つまり、LEDは、交差点から延びる道路の1本に対して所定個数(ここでは、3個)割り当てられる。
【0028】
また、以下では、道路鋲1に取り付けられる12個のLEDについて、図6に示すように番号を付す。すなわち、第1エリアに取り付けられるLEDのうちの中央に取り付けられるLEDの番号を“1C”とし、当該LEDをLED1Cと表す。また、道路鋲の外側から中心に向かってLED1Cの右側に取り付けられるLEDの番号を“1R”とし、当該LEDをLED1Rと表し、道路鋲の外側から中心に向かってLED1Cの左側に取り付けられるLEDの番号を“1L”とし、当該LEDをLED1Lと表す。第2〜第4エリアに取り付けられるLEDについても、第1エリアと同様に番号を付す。
【0029】
次に、以上のように構成された道路鋲1について図7〜図9を用いて動作を説明する。道路鋲1の電源がオンになると、検知部101は、アンテナ201の回転を開始する。本実施形態では、アンテナ201の回転速度は10回転/秒とする。また、アンテナ201は電源オフ時には0°の位置で停止するものとし、電源オン時には0°の位置から回転を開始するものとする。また、道路鋲1の電源がオンになると、検知部101は、図2に示した各構成を動作状態にする。これによって、道路鋲1の電源がオンになった後以降は、アンテナ201が受信したレーダビームの強度に応じた大きさの電圧振幅を有するベースバンド信号が検知部101から出力される。
【0030】
また、道路鋲1の電源がオンになると、A/D変換部102は動作状態となり、検知部101から出力される上記ベースバンド信号に対してA/D変換を開始する。具体的には、A/D変換部102は、アンテナ201が1°回転する毎にベースバンド信号に対してA/D変換を行う。つまり、A/D変換部102は、アンテナ201が1°回転する時間間隔でベースバンド信号に対してサンプリングを行う。従って、A/D変換部102は、1°毎に設定される所定方向をアンテナ201が向く度に検知部101によって検知される検知結果を示すデジタル信号を判定部103へ出力することとなる。以上のように、道路鋲1の電源がオンになった後以降は、上記ベースバンド信号をA/D変換したデジタル信号がA/D変換部102から出力される。
【0031】
道路鋲1の電源がオンになると、判定部103は、図7に示す処理を開始する。図7は、判定部103の動作の流れを示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、A/D変換部102から得られたデジタル信号に基づいて接近車両の有無を検出し、検出結果に基づいてどのLEDを点灯させるかの判断を行い、判断結果に従って警告出力部104を制御する処理を示している。
【0032】
ここで、判定部103においては、配列E1が用いられる。配列E1は、検知部101のアンテナ201の方向dと、その方向dにおけるレーダビームを受信した受信状況を示すデジタル信号(A/D変換部102から出力されるデジタル信号)の値との関係を示すデータである。具体的には、配列E1は、360°の各方向に対応する360個の値を格納する。また、配列E1のi番目(iは1から360までの任意の整数)には、方向d=i−1に対応するデジタル信号の値が格納される。例えば、アンテナの方向d=0についてデジタル信号の値がaであれば、E1[1]=aである。なお、実際の処理においては、配列E1として、更新前の配列E1’と更新後の配列E1”という2つの配列を用意する。
【0033】
まずステップS1において、判定部103は、以降の処理において用いる変数を初期化する。ここでは、上記配列E1に加えて、配列E1の時間変化を示す配列E2、配列E2の累積値を示す配列E3、第1エリアフラグF1、第2エリアフラグF2、第3エリアフラグF3、および第4エリアフラグF4という変数が用いられる。配列E2は、配列E1の値の時間変化を示す値を格納する配列である。また、配列E3は、配列E2の各値の累積値を格納する配列である。配列E2およびE3は、配列E1と同様、360°の各方向に対応する360個の値を格納する。また、第1エリアフラグF1は、第1エリアに対応する道路上に車両が存在するか否かを示すフラグである。すなわち、第1エリアに対応する道路上に車両が存在する場合、F1=1に設定され、第1エリアに対応する道路上に車両が存在しない場合、F1=0に設定される。第2〜第4エリアフラグについても第1エリアフラグと同様に定義される。ステップS1における初期化処理では、配列E1(更新前の配列E1’および更新後の配列E2”)、E2、およびE3の各値が全て0に設定される。また、第1〜第4エリアフラグの値はそれぞれ“0”に設定される。以上のステップS1の次にステップS2の処理が行われる。
【0034】
ステップS2においては、判定部103は、各方向について接近車両の有無を示す情報を算出する。ステップS2の処理は、上記配列E1、E2、およびE3を用いて行われる。以下、ステップS2の詳細を説明する。
【0035】
図8は、図7に示すステップS2の処理の詳細を示すフローチャートである。図8に示すステップS20において、まず、判定部103は、更新前の配列E1’を初期化する。すなわち、更新前の配列E1’の全ての要素を0に設定する。次のステップS21において、判定部103は、更新後の配列E1”の各値を格納する。具体的には、判定部103は、A/D変換部102からのデジタル信号を入力する。アンテナ201が1周する分のデジタル信号が入力されると、判定部103は、デジタル信号が示す値を更新後の配列E1”に更新して格納していく。
【0036】
次に、ステップS22において、後述するステップS23〜S26の処理で用いられる変数jの値を“1”に設定する。続くステップS23において、判定部103は、配列E1のj番目の値について、更新前の値(配列E1’)と更新後の値(配列E1”)とを比較する。そして、比較の結果に応じて、配列E2の各値を“0”または“1”のいずれにするかについて判定を行う。具体的には、更新前の配列E1’のj番目の値をE1’[j]と表し、更新後の配列E1”のj番目の値をE1”[j]と表したとすると、E1”[j]が予め定められた所定値Th1よりも大きい場合であって、かつ、E1”[j]がE1’[j]よりも大きい場合(時間変化が増加の変化である場合)であるか否かを判定する。
【0037】
ステップS23の判定結果が肯定(YES)である場合、ステップS24の処理が行われる。すなわち、ステップS24において、判定部103は、配列E2のj番目に“1”を更新して格納する。一方、ステップS23の判定結果が否定(NO)である場合、ステップS25の処理が行われる。ステップS23の判定結果が否定(NO)である場合とは、上記更新後のE1”[j]が所定値Th1以下であるか、または、更新後のE1”[j]が更新前のE1’[j]以下である(時間変化が減少の変化である)場合である。ステップS25においては、判定部103は、配列E2のj番目に“0”を更新して格納する。
【0038】
ステップS24またはS25の後、ステップS26の処理が行われる。すなわち、ステップS26において、判定部103は、ステップS24またはS25における更新後の値(E2[j])を配列E3のj番目(E3[j])に累積加算する。具体的には、配列E2のj番目に“1”が新たに格納された場合(ステップS24の場合)、配列E3のj番目の値を1加算する。一方、配列E2のj番目に“0”が新たに格納された場合(ステップS25の場合)、判定部103は、配列E3のj番目の値を0加算する、すなわち、配列E3のj番目の値を更新しない。
【0039】
ステップS26の次のステップS27において、判定部103は、変数jの値を1増加(インクリメント)する。続くステップS28において、判定部103は、変数jの値が360よりも大きいか否かを判定する。ステップS28の判定において、変数jの値が360よりも大きい場合、ステップS29の処理が行われる。一方、ステップS28の判定において、変数jの値が360よりも大きくない場合(すなわち、変数jの値が360以下である場合)、判定部103は、ステップS23〜S27の処理を再度行う。そして、変数jの値が360よりも大きくなるまで、ステップS23〜S27の処理を繰り返す。
これによって、配列E3の1番目から360番目までの各値が算出される。
【0040】
ステップS29においては、判定部103は、更新後の配列E1”を更新前の配列E1’にコピーする。すなわち、更新後の配列E1”の全ての要素を更新前の配列E1’にコピーする。続くステップS30において、判定部103は、アンテナ201が10周する分のデジタル信号を入力したか否かを判定する。具体的には、1回のステップS2の処理においてステップS21の処理をすでに10回行っているか否かが判定される。ステップS30の判定において、アンテナ201が10周する分のデジタル信号を入力していない場合、判定部103は、ステップS21〜S28の処理を再度行う。そして、アンテナ201が10周する分のデジタル信号を入力するまで、ステップS21〜S28の処理を繰り返す。一方、アンテナ201が10周する分のデジタル信号をすでに入力した場合、判定部103は、ステップS2の処理を終了する。
【0041】
以上のように、1回のステップS2において、判定部103は、アンテナ201が10周する分のデジタル信号を入力し、配列E1、E2およびE3の各値を更新していく。この結果、ステップS2の終了時までに、配列E1、E2、およびE3の各値は10回更新されることとなる。ここで、配列E2の各値は“0”または“1”であり、配列E3の1番目から360番目までの各値の初期値は“0”であるので、ステップS2の終了時には、配列E3の各値は、最小で“0”、最大で“9”の値をとり得る。この配列E3の各値は、アンテナ201で受信されたレーダビームの強度の時間変化を示している。すなわち、配列E3の値が大きいほど、レーダビームの強度が大きくなっている度合が大きいことを示し、配列E3の値が小さいほど、レーダビームの強度が大きくなっている度合が小さいことを示す。以上で、ステップS2の処理が終了する。
【0042】
以上のように、ステップS2では、アンテナ10回転分の値を累積して加算した結果が得られる。この結果は、以降のステップS3〜S11における判定処理において用いられる。ここで、アンテナ10回転分の値を累積して加算した結果を1回の判定に用いるのは、レーダビームを検知する正確さを向上する目的である。
【0043】
ステップS2の次に、ステップS3〜S11の処理が行われる。ステップS3〜S11においては、判定部103は、ステップS2において算出した配列E3に基づいて、どのLEDを点灯させるかが判定する。具体的には、ステップS3〜S11においては、そのエリアにおいて自機に近づく車両が存在するか否かを判定する処理が、第1〜第4のエリア毎に行われる。なお、当該処理は、アンテナ201が向いている方向がそのエリアに含まれている間に検知部101によって検知された検知結果に基づいて行われる。
【0044】
ステップS3においては、判定部103は、第1エリアに接近車両が存在するか否かを判定する。ステップS3の判定は、累積の配列E3のうち、E3[n1](n1<44または315≦n1)の値を用いて行われる。具体的には、判定部103は、予め設定されている閾値Th2よりも値が大きくなるE3[n1]の個数を調べる。そして、当該E3[n1]の個数が、予め設定されている閾値Th3よりも多ければ、第1エリアに接近車両が存在すると判定する。一方、当該E3[n1]の個数が閾値Th3以下であれば、第1エリアに接近車両が存在しないと判定する。ステップS3の判定は、第1エリアの方向について、レーダビームの受信強度が増加する度合が大きいか否かを判定することによって、第1エリアに接近車両が存在するか否かを判定する処理である。
【0045】
ステップS3の判定において、第1エリアに接近車両が存在すると判定された場合、ステップS4の処理が行われる。すなわち、ステップS4において、判定部103は、第1エリアフラグF1の値をF1=1に設定する。ステップS4の次にステップS5の処理が行われる。一方、ステップS3の判定において、第1エリアに接近車両が存在しないと判定された場合、ステップS4の処理がスキップされてステップS5の処理が行われる。
【0046】
ステップS5においては、判定部103は、第2エリアに接近車両が存在するか否かを判定する。ステップS5の判定は、累積の配列E3のうち、E3[n2](44≦n2<135)の値を用いて行われる。具体的には、判定部103は上記閾値Th2よりも値が大きくなるE3[n2]の個数を調べる。そして、当該E3[n2]の個数が上記閾値Th3よりも多ければ、第2エリアに接近車両が存在すると判定する。一方、当該E3[n2]の個数が閾値Th3以下であれば、第2エリアに接近車両が存在しないと判定する。
【0047】
ステップS5の判定において、第2エリアに接近車両が存在すると判定された場合、ステップS6の処理が行われる。すなわち、ステップS6において、判定部103は、第2エリアフラグF2の値をF2=1に設定する。ステップS6の次にステップS7の処理が行われる。一方、ステップS5の判定において、第2エリアに接近車両が存在しないと判定された場合、ステップS6の処理がスキップされてステップS7の処理が行われる。
【0048】
ステップS7においては、判定部103は、第3エリアに接近車両が存在するか否かを判定する。ステップS7の判定は、累積の配列E3のうち、E3[n3](135≦n3<225)の値を用いて行われる。具体的には、判定部103は上記閾値Th2よりも値が大きくなるE3[n3]の個数を調べる。そして、当該E3[n3]の個数が上記閾値Th3よりも多ければ、第3エリアに接近車両が存在すると判定する。一方、当該E3[n3]の個数が閾値Th3以下であれば、第3エリアに接近車両が存在しないと判定する。
【0049】
ステップS7の判定において、第3エリアに接近車両が存在すると判定された場合、ステップS8の処理が行われる。すなわち、ステップS8において、判定部103は、第3エリアフラグF3の値をF3=1に設定する。ステップS8の次にステップS9の処理が行われる。一方、ステップS7の判定において、第3エリアに接近車両が存在しないと判定された場合、ステップS8の処理がスキップされてステップS9の処理が行われる。
【0050】
ステップS9においては、判定部103は、第4エリアに接近車両が存在するか否かを判定する。ステップS9の判定は、累積の配列E3のうち、E3[n4](225≦n4<315)の値を用いて行われる。具体的には、判定部103は上記閾値Th2よりも値が大きくなるE3[n4]の個数を調べる。そして、当該E3[n4]の個数が上記閾値Th3よりも多ければ、第4エリアに接近車両が存在すると判定する。一方、当該E3[n4]の個数が閾値Th3以下であれば、第4エリアに接近車両が存在しないと判定する。
【0051】
ステップS9の判定において、第4エリアに接近車両が存在すると判定された場合、ステップS10の処理が行われる。すなわち、ステップS10において、判定部103は、第4エリアフラグF4の値をF4=1に設定する。ステップS10の次にステップS11の処理が行われる。一方、ステップS9の判定において、第4エリアに接近車両が存在しないと判定された場合、ステップS10の処理がスキップされてステップS11の処理が行われる。
【0052】
ステップS11においては、判定部103は、各エリアフラグの値に基づいて警告出力部104であるLEDに対する制御を行う。ステップS11においては、判定部103は、図9に示すテーブルを参照してどのLEDを点灯させるかを決定する。
【0053】
図9は、LEDの点灯のために用いられるテーブルの一例を示す図である。図9に示すテーブルは、道路鋲1が有する任意の記憶装置に予め格納されている。このテーブルには、車両が存在するエリアと、そのエリアに車両が存在するときに点灯すべきLEDとが対応付けられている。例えば、テーブルの2行目は、第1エリアおよび第2エリアに車両が存在する場合、1Lおよび2RのLEDを点灯させることを示している。また、テーブルの2行目は、第1エリアおよび第3エリアに車両が存在する場合、1Cおよび3CのLEDを点灯させることを示している。
【0054】
判定部103は、図9に示すテーブルを参照し、かつ、ステップS3〜S11で設定された各エリアフラグの値に従って、点灯すべきLEDを決定する。判定部103は、テーブルの左側の列に記載された条件が満たされるか否かを判断し、条件が満たされる行について、対応するLEDの番号を参照する。そして、参照した番号のLEDを点灯させるように制御する。例えば、値が“1”であるエリアフラグが0個または1個である場合、点灯すべきLEDは「なし」と判断される。この場合、交差点に進入してくる車両は0台または1台だけであるので、衝突等の危険はなく、ドライバーに対して特に警告を発する必要はないからである。この場合、判定部103はLEDを点灯させる旨の制御情報を出力しない。また、値が“1”であるエリアフラグが2個以上である場合、判定部103は、いずれかのLEDを点灯させる旨の制御情報を出力する。この場合、交差点に進入してくる車両が2台以上存在し、衝突等の危険があるため、ドライバーに対して警告を促す必要があるからである。
【0055】
図10は、交差点に車両が接近しているときに道路鋲1のLEDが点灯する様子を示す図である。図10(a)は、道路鋲1が設置された交差点に車両が接近している様子を示す図である。図10(a)においては、第1エリア、第2エリアおよび第3エリアにおいて車両が存在している。また、図10(b)は、図10(a)に示す状況において点灯するLEDを示す図である。図10(a)においては、第1エリア、第2エリアおよび第3エリアにおいて車両が存在しているので、図9に示すテーブルの第2行目(「第1および第2エリア」と記載された行)、第3行目(「第1および第3エリア」と記載された行)、および第5行目(「第2および第3エリア」と記載された行)に示す条件が満たされている。従って、図10(b)に示されるように、各行に対応付けられているLED、すなわち、1L、2R、1C、3C、2L、および3RのLEDが点灯される。
【0056】
以上のように、ステップS11では、テーブルを参照して点灯すべきLEDが決定され、決定されたLEDを点灯させる旨の制御情報が判定部103から警告出力部(LED)104に出力される。警告出力部104は、判定部103から出力された制御情報に従って警告を発する。ステップS11の次に、ステップS12の処理が行われる。
【0057】
図7の説明に戻り、ステップS12において、判定部103は、道路鋲1の電源がオンであるか否かを判定する。オンである場合、ステップS1の処理に戻り、ステップS1〜S12の処理が繰り返される。一方、オフである場合、判定部103は、図7に示す処理を終了する。
【0058】
なお、ステップS1〜S12のループ処理は、アンテナ201が10回転する間に1回の処理が行われる。上述したようにアンテナ201は10回転/秒の速度で回転するので、このループ処理の1ループ当たりの実効時間は1秒である。すなわち、LEDの点灯状況は1秒毎に更新される。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る道路鋲によれば、車両から出射されるレーダビームを検知することによって、車両の接近を検出することができる。従って、この道路鋲を交差点に設置することによって、交差点に進入する各車両に対して、衝突の危険がある注意すべき方向を検知してドライバーに警告することが可能であり、交通事故の削減に貢献することができる。ここで、本実施形態では、車両を検知するために道路鋲自身からレーダビームを放射する必要がない。つまり、レーダビームを出力する構成が不要である分、従来よりも簡易な構成で道路鋲を実現することができる。さらに、本実施形態では、アンテナ201を回転させることによって、1つのアンテナで複数の方向に存在する車両を検知することが可能である。これによって、道路鋲をさらに簡易な構成とすることができる。
【0060】
なお、本実施形態においては、アンテナ201を360°回転させ、1°毎に受信したレーダビームを検知するようにしたが、道路に対応する方向に少なくともアンテナ201を向けてレーダビームを検知すればよい。例えば上記実施形態においては、4本の道路に対応する4方向のみにおいてレーダビームを検知するようにしてもよい。より具体的には、d=0°,90°,180°,270°の場合にのみレーダビームを検知するようにしてもよい。
【0061】
なお、本実施形態においては、道路鋲が四叉路の交差点に設置される場合について説明したが、道路鋲が設置される交差点を形成する道路の本数は限定されるものではない。例えば三叉路の交差点に道路鋲を設置する場合には、道路の方向に応じた3つのエリアを道路鋲に設定すればよい。
【0062】
また、本実施形態においては、道路鋲が検知対象とするレーダ信号を77GHzレーダとして説明したが、レーダ信号の種類はこれに限るものではない。道路鋲は、例えば近距離検知用の24GHzレーダをも検知対象としてもよい。この場合、77GHz用および24GHz用という2つの受信機を用意する必要がある。
【0063】
また、本実施形態においては、警告出力部104としてLEDを用い、光によって警告を発することとしたが、音によって警告を発するようにしてもよいし、音および光の両方によって警告を発するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の道路鋲は、道路の交差点等に設置され、他の道路から接近してくる車両の有無をドライバーに通知すること等を目的として利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態に係る道路鋲およびそれが設置された道路周辺の外観を示す図
【図2】道路鋲1の機能的な構成を示す機能ブロック図
【図3】図2に示す検知部101の詳細な構成の例を示す図
【図4】道路鋲1とそれに近づく車両を示す図
【図5】道路鋲1の外観を示す図
【図6】道路鋲1の上面図
【図7】判定部103の動作の流れを示すフローチャート
【図8】図7に示すステップS2の処理の詳細を示すフローチャート
【図9】LEDの点灯のために用いられるテーブルの一例を示す図
【図10】交差点に車両が接近しているときに道路鋲1のLEDが点灯する様子を示す図
【符号の説明】
【0066】
101 検知部
102 A/D変換部
103 判定部
104 警告出力部
105 回転部
106 固定部
107 LED
201 アンテナ
202 ローノイズアンプ
203 バンドパスフィルタ
204 オシレータ
205 ミキサ
206 ローパスフィルタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設置されるための道路鋲であって、
車両に搭載される車載レーダから出射されたレーダビームを検知する検知部と、
前記検知部による検知結果に基づいて、自機に近づく車両が存在するか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって自機に近づく車両が存在すると判定された場合、音または光で警告を発する警告出力部とを備える、道路鋲。
【請求項2】
前記検知部は、
前記レーダビームを受信するアンテナと、
前記アンテナを所定の軸周りに360°回転させる回転機構とを含み、
前記判定部は、
前記アンテナが複数の所定方向を向く度に検知される前記検知部による検知結果を入力する入力部と、
前記所定の軸周りに設定される複数のエリアについて、あるエリアに含まれる所定方向を前記アンテナが向いている間に入力される検知結果に基づいて、当該エリアにおいて自機に近づく車両が存在するか否かを判定する処理をエリア毎に行うエリア処理部とを含み、
前記警告出力部は、前記複数のエリアのうちの異なる2つ以上のエリアについて自機に近づく車両が存在すると前記エリア処理部が判定した場合にのみ警告を発する、請求項1に記載の道路鋲。
【請求項3】
前記複数の所定方向の数は、前記複数のエリアの数よりも多く、
前記エリア処理部は、あるエリアに含まれる所定方向を前記アンテナが向いている間に入力される複数の検知結果に基づいて、当該エリアにおいて自機に近づく車両が存在するか否かを判定する、請求項2に記載の道路鋲。
【請求項4】
前記判定部は、前記検知部によって検知されたレーダビームの強度が増加する方向に変化している場合、自機に近づく車両が存在すると判定する、請求項1に記載の道路鋲。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−144250(P2006−144250A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331898(P2004−331898)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】