説明

遠心分離による樹脂脱気法及びシステム

【課題】混入気泡を含む樹脂の脱気方法及びシステムを提供。
【解決手段】回転可能な遠心分離チャンバ200に、樹脂を入れ、遠心分離チャンバの回転により樹脂中の混入気泡の量を低減するシステムで、遠心分離チャンバに接続した真空源を備え、真空源が遠心チャンバを真空にして混入気泡の低減を促進する装置、遠心分離チャンバと熱的に連通し、樹脂を加熱したり、冷却したりできる熱処理装置、脱気操作の進行を追跡するモニタリング装置を備えたシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の脱気、特に遠心エネルギーを用いて樹脂を脱気する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の混合プロセスで、気体や空気の泡が多成分樹脂系に取り込まれることがある。気泡は、樹脂系の多成分を均一に分散させるために必要とされる混合又は「折り込み」作業によって生じる。気泡が取り込まれた樹脂を複合積層品に使用すると欠陥の原因となり、これらの欠陥がつながったり、成長して局部的な剥離、最終的には全体の解体又は剥離を起こすおそれがある。
【0003】
風力タービンブレードその他の大型複合構造物などの大型の連続繊維強化複合材料部品は通常、ハンドレイアップ法により製造される。ハンドレイアップ法では通常、型枠内に連続の繊維テープ又は繊維布を置き、この繊維テープ又は繊維布上に液状樹脂を流し込む。ブレンドをロール加工して気泡を追い出し、樹脂を完全に分布させた後、通常室温で硬化する。気泡の除去及び樹脂の分布のために樹脂に加える操作が、複合材料を構成する繊維にダメージを与え、結果として部品の強度及び剛性を低下することがある。ハンドレイアップ法は、処理に大きな労力を要するという欠点があり、また高コストであったり、長期耐久性につながる最適な処理条件ではないという問題をかかえている。別の方法、例えばRFI(resin film infusion)法は、その実施に関する労働コストが少なく、再現性のある部品が実現できるので望ましい。硬化は通常、高温のオートクレーブ中で行われ、樹脂を流動させかつ混入空気及び凝縮性気体を除去するために、高圧(通常、100〜200psi)下真空バッグ中で硬化を行う。しかし、風力タービンブレードなどの大型部品は、大型のオートクレーブが必要になるためオートクレーブ硬化に法外な費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3621892号明細書
【特許文献2】米国特許第4049244号明細書
【特許文献3】米国特許第4391529号明細書
【特許文献4】米国特許第5409523号明細書
【特許文献5】米国特許第5591252号明細書
【特許文献6】米国特許第6028166号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0787064号明細書
【特許文献8】国際公開第9612596号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある態様では、本発明は混入気泡を含む樹脂を脱気するシステムを提供する。回転可能な遠心分離チャンバに樹脂を入れ、遠心分離チャンバの回転により樹脂中の混入気泡の量を低減する。
【0006】
別の態様では、本発明は、樹脂を脱気する方法を提供する。第1工程で、樹脂を混合する混合チャンバを用意する。第2工程で、樹脂に遠心力を加える遠心分離チャンバを用意する。第3工程で、樹脂に遠心力を加える。樹脂に遠心力を加えることにより樹脂中の混入気泡の量を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態の脱気システムの斜視図である。
【図2】本発明の別の実施形態の脱気システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、公知の混合法で多成分樹脂系に取り込まれた気泡を遠心力を利用して低減又は解消する方法及びシステムを提供する。用語「樹脂」は、樹脂の他に粉末、複合粉末及び混合粉末を含む。複合積層品に気泡が混入した樹脂を使用すると、欠陥の原因となり、これらの欠陥がつながったり、成長して局部的な剥離を、そして最終的には全体の解体を起こすおそれがある。本発明の態様では、遠心力を用いて、分布している気泡を合体させ、大きな気泡にして排出しやすくする。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、公知の混合法で多成分樹脂系に取り込まれた気泡を低減又は解消することである。脱気は、混合後又は混合中の適当な段階毎に樹脂に遠心力を加えて小さな気泡を移動させ、互いに接触させ合体させて大きな気泡にし、大きくなった気泡を回転しているチャンバの中心に簡単に移動させることにより実現できる。脱気の進行は気泡がほとんど又は全く混入していない理論流体密度で較正された超音波機器で追跡(モニタ)できる。十分に気泡が排出されたら脱気操作を終了することができる。回転チャンバの中心を真空に引くことにより、樹脂中の気泡の動きを加速し脱気工程を促進する。
【0010】
得られた樹脂を配送管に送り出し、従来の方法、例えばRTM(resin transfer molding)法、真空RTM法、湿式FW(filament winding)法、トウ・ワインディング法などのいずれかによる複合積層品の形成に使用することができる。
【0011】
本発明の方法及びシステムは、バッチ又は連続法いずれでも用いることができる。すべての場合において、割り当てられた処理時間内での気泡の形成及び回転中心への移動を実現するように、以下の因子、即ち遠心力レベル、液粘度(温度及び液特性により調節)、遠心分離チャンバ中の樹脂の滞留時間、気泡が回転中心へ到達して破裂するのに必要な移動距離、樹脂表面上の圧力、及び各段階でのエネルギーのレベルと頻度を最適化する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態の斜視図である。混合チャンバ100は樹脂系の成分(通常2つ以上)を混合するインラインミキサを有することができる。ミキサ110は、1枚又は2枚羽根パドル又はスクリュー/オーガーその他適当な混合装置とすることができる。送込管120から混合チャンバ100内に樹脂成分を導入することができる。所望時間の混合後、混合成分を混合チャンバ100から排出管130を通して取り出し、遠心分離チャンバ(図2)へ送ることができる。
【0013】
図2は、本発明のシステム及び方法の一実施形態で使用することができる遠心分離チャンバの斜視図である。遠心分離チャンバ200は遠心力を加えることができる環(トロイダル)形状、ふた付き、トラフその他の適当な容器とすることができる。接続した配送管(例えば、管130)、手動運搬その他の適当な搬送手段により混合後の樹脂を遠心分離チャンバ200に送ることができる。
【0014】
遠心分離チャンバ200には、中心部に樹脂から移動した気泡を吸い込む真空ポンプ210を組み込むことができる。遠心分離チャンバ200は、高密度の樹脂を半径方向の外側位置に押しやるのに十分な回転速度で樹脂を回転でき、この間に混入気泡(低密度である)は半径方向の内側位置に向かって移動する。換言すれば、軽い気泡が、高密度の樹脂に押しのけられ、半径方向内側へ移動する。遠心分離チャンバ200中心部付近に置かれた真空ポンプ210で真空に引くことにより気泡移動を増進することができる。真空は、気泡の内側への移動を促進するだけでなく、気泡を破壊しやすくする。気泡を十分に除去できたら、遠心分離チャンバ200を停止し、樹脂を排出管220を通して取り出し、送り出すことで直ちに使用可能である。
【0015】
目標の気泡状態での流体密度と比べることにより残留気泡のレベルを測定できる超音波その他のアコースティック・エミッションモニタリング装置(図示せず)を使用し、十分な超音波エネルギーが加えられた時点を決定する。
【0016】
本発明の1観点によるバッチプロセスの方法は上記工程を含むことができる。所望の樹脂成分を混合チャンバ100中で予混合することができる。混合後の樹脂成分は管130を通して遠心分離チャンバ200に圧送することができる。
【0017】
遠心分離チャンバ200によって遠心力を樹脂に、所望の量の気泡が抜けるのに十分な時間加える。遠心力を加えるのと同時に、真空装置210によりチャンバ上部から真空を引いて、樹脂の回転中心への気泡の移動を促進することもできる。モニタリング装置(図示せず)が十分な脱気が完了したことを示したら、脱気プロセスを停止し、樹脂をチャンバ200から使用個所へ排出管220を通して取り出すことができる。
【0018】
本発明の別の実施形態では、混合チャンバ100と遠心分離チャンバ200を組合せることができる。本実施形態では、同一のチャンバ内で樹脂混合と遠心力作用の両方を行う。
【0019】
以上、本発明を現時点で最も実用的で好ましいと考えられる実施形態について説明したが、本発明は開示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内での種々の変更や均等物の組合せを包含する。
【符号の説明】
【0020】
100 混合チャンバ
110 ミキサ
120 送込管
130 排出管
200 遠心分離チャンバ
210 真空装置
220 排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を保持する回転可能な遠心分離チャンバ(200)を備え、遠心分離チャンバの回転により樹脂中の混入気泡の量を低減する、混入気泡を含む樹脂の脱気システム。
【請求項2】
さらに、遠心分離チャンバ(200)に接続した真空源(210)を備え、真空源が遠心分離チャンバを真空にして混入気泡の低減を促進する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
さらに、樹脂混合用の混合チャンバ(100)を備える、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
混合チャンバがオーガーミキサ(110)を有する、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
混合チャンバがパドルミキサを有する、請求項3記載のシステム。
【請求項6】
さらに、遠心分離チャンバと熱的に連通している熱処理装置を備え、熱処理装置は樹脂を加熱したり冷却したりできる、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
さらに、脱気操作の進行を追跡するモニタリング装置を少なくとも1つ備える、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
モニタリング装置が温度、圧力、樹脂密度及び樹脂粘度のうち少なくとも1つのパラメータを追跡する、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
樹脂を混合する混合チャンバ(100)を用意し、
樹脂に遠心力を加える遠心分離チャンバ(200)を用意し、
樹脂に遠心力を加える工程を含み、樹脂に加えた遠心力により樹脂中の混入気泡の量を低減する、樹脂の脱気方法。
【請求項10】
さらに、遠心分離チャンバを真空にする工程を含み、真空により樹脂中の混入気泡の低減を促進する、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−132905(P2010−132905A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275996(P2009−275996)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】