説明

遠心分離機

【課題】遠心分離機を構成するモータの異常状態または異常状態に近づいていることを検出できるモータ異常検出手段を備えた遠心分離機を提供することにある。
【解決手段】ロータ2が自然減速の所定の回転数から停止するまでの正常時の最低減速時間(下限基準時間)Tminおよび最大減速時間(上限基準時間)Tmaxを予め記憶手段9に記憶させておき、ロータ2が自然減速の所定の回転数から停止するまでの実際の減速時間Tを計時手段10によって実測し、比較手段11aによって、この実測減速時間Tを、予め記憶させておいた最低減速時間Tminおよび最大減速時間Tmaxと比較し、判定手段11bによって実測減速時間Tが最低減速時間Tminから最大減速時間Tmaxまでの範囲内にあるか否かを判断し、異常に近づいているかを表示手段7に表示するモータ異常検出手段11を遠心分離機1に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを回転駆動するモータの異常検出手段を備えた遠心分離機に関し、特に、モータの回転軸における軸受等の機械的な経時変化に伴って発生するロータの回転異常を検出する異常検出手段を備えた遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の遠心分離機における駆動モータの異常検出手段は、回転軸が何等かの原因でロック状態もしくは異常回転状態になり、モータに流れる電流が過大となって、所謂、ロック電流を検出しモータが異常であると判定する手法がある。またモータに設けられた回転検出器、例えばエンコーダから出力されるパルス列を回転数として演算する機能を持たせ、モータを運転させるための通電を行った後に、所定の時間が経過してもそのエンコーダから所望の回転数が検出できない場合、駆動モータは回転不良という異常判定を行う手法もある。
【0003】
さらに、周知の直流モータ異常判定法として、下記特許文献1に開示されているような自動販売機におけるDCファンモータの寿命判定装置によれば、パルス・ワイド・モジュレーション(PWM)と称するPWM制御により駆動されるDCファンモータにおいて、予め設定された基準PWM値とこの基準PWM値に対応する基準回転数とを記憶し、この基準PWM値で駆動した時の実際の回転数と基準回転数との関係から、その回転差が予め記憶してある回転差設定値より大きい場合に、DCファンモータの寿命が間近であると判定する手法もある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−298989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した周知の遠心用駆動モータの異常検出手段は、どちらかと言えば、瞬時的なモータの正常または異常を判定する手法であり、モータが機械要素の劣化により序々に異常に近づいている経過状態を見出す判定方式としては不適切な判定方式である。
【0006】
さらに、上記特許文献1に開示された技術は、DCアァンモータに限られた判定方式に向けられたもので、PWM値で駆動した時のDCファンモータの実回転数と基準回転数との関係から、DCファンモータが寿命に近づいたことを判定する手法であるので、モータ駆動源として使用されるDC電源電圧が変化すると、基準PWM値(基準パルス幅値)で駆動した際の実効電圧が変わるため、DCファンモータの回転数が変化するという問題が生ずる。すなわち、DCファンモータの回転数は、基準PWM値で駆動してもDC電源電圧変化の影響を受けて回転差が生じ、異常検出が誤判定となる場合がある。
【0007】
一方、モータが異常状態となる原因には、モータ巻線の短絡や断線などの電気回路における不良の発生に加え、ボールベアリングなどの軸受部等の機械要素における不良の発生も考えられる。例えば、軸受部に水、ゴミ、粉塵などが入り込んだ場合や、過負荷で使用した場合など、軸受部が損傷して円滑に回転しなくなるため回転負荷が大きくなり、フレッチングまたはクリープなどの軸受部の損傷現象を経て、結果的に回転軸がロックされるという異常が発生することもある。また、遠心分離機のように、特に高速で回転する軸受部は、回転負荷により摩擦熱を発してグリース(潤滑剤)が蒸発することがある。そのまま長時間使用すると、軸受部のグリースが切れて潤滑不足となり、ボールベアリング内のボールが焼付くなどの軸受部の損傷を生じることもある。
【0008】
従って、本発明の目的は、電源変動等の電気回路における特性変化の影響を受けることなしに、特にモータ軸受部が異常状態に近づいていることを事前に検出できるモータ異常検出手段を備えた遠心分離機を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、モータ軸受部が異常状態に近づいていることを事前に検出することによって、遠心分離機の異常(故障)を未然に対策できるようにし、遠心分離機の使用不可能となるダウンタイムを短くさせたモータ異常検出手段を備えた、信頼性の高い遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次のとおりである。
【0011】
本発明の一つの特徴によれば、試料が入った容器を収容するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、該モータの回転を検出する回転検出器と、該回転検出器から出力される信号により前記モータの回転数を測定する回転数測定手段と、前記ロータの加速および減速条件を含む運転条件を設定できる入力手段と、運転情報を表示する表示手段と、前記入力手段および前記表示手段を制御し、かつ前記回転数測定手段の情報に基づいて前記モータを制御する制御手段とを備えた遠心分離機において、前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが所定回転数から停止するまでの正常時の減速時間の下限基準時間(最低減速時間)(Tmin)および上限基準時間(最大減速時間)(Tmax)を予め記憶する記憶手段と、前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが前記所定回転数から停止するまでの実際の減速時間(実測減速時間)(T)を測定する計時手段と、前記記憶手段に記憶された下限基準時間(Tmin)および上限基準時間(Tmax)と前記計時手段によって測定された実測減速時間(T)とを比較し、異常か否かを判定する異常検出手段とを前記制御手段に設け、前記異常検出手段は、前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)と、前記実測減速時間(T)との比較結果に従って前記モータの異常の有無を表示する。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、前記異常検出手段は、前記実測減速時間(T)が前記下限基準時間(Tmin)より小さい時間または前記上限基準時間(Tmax)より大きい時間を示したとき、前記モータが異常に達したことを表示する。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記異常検出手段は、前記実測減速時間(T)が前記下限基準時間(Tmin)より大きい場合で、かつその時間差(T−Tmin)が所定時間差より小さいと判定したとき、または前記実測減速時間(T)が前記上限基準時間(Tmax)より小さい場合で、かつその時間差(Tmax−T)が所定時間差より小さいと判定したとき、前記モータが異常に近づいている警告を表示する。
【0014】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記記憶手段は遠心分離機に適用可能な複数のロータについて前記下限基準時間(Tmin)および上限基準時間(Tmax)を記憶し、前記異常検出手段は、前記複数のロータの内の前記遠心分離機に装着されたロータの前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)と前記実測減速時間(T)とを比較する。
【0015】
本発明のさらに他の特徴によれば、試料が入った容器を収容するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、該モータを制御するためのマイクロコンピュータと、前記ロータの回転速度、運転時間、温度等の運転情報を前記マイクロコンピュータに入力するための入力部と、前記入力部による入力情報および前記マイクロコンピュータの運転情報を表示するために前記マイクロコンピュータに接続された表示部とを備えた遠心分離機において、前記マイクロコンピュータは、前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが所定回転数から停止するまでの正常時の減速時間の下限基準時間(Tmin)および上限基準時間(Tmax)を予め記憶する記憶部を有し、前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが前記所定回転数から停止するまでの実測減速時間(T)を測定する測定ステップと、前記実測減速時間(T)と前記記憶部に記憶された前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)とを比較する比較ステップと、前記モータが異常か否かを表示する表示ステップとを実行し、前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)と、前記実測減速時間(T)との比較結果に従って前記モータの異常の有無を表示する。
【0016】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記マイクロコンピュータは、前記比較ステップにおいて前記実測減速時間(T)が前記下限基準時間(Tmin)より小さい時間または前記上限基準時間(Tmax)より大きい時間を示したとき、前記表示ステップにおいて前記モータが異常に達したことを表示する。
【0017】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記マイクロコンピュータは、前記比較ステップにおいて、前記実測減速時間(T)が前記下限基準時間(Tmin)より大きい場合で、かつその時間差(T−Tmin)が所定時間差より小さいと判定したとき、または前記実測減速時間(T)が前記上限基準時間(Tmax)より小さい場合で、かつその時間差(Tmax−T)が所定時間差より小さいと判定したとき、前記表示ステップにおいて前記モータが異常に近づいている警告を表示する。
【0018】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記記憶部は遠心分離機に適用可能な複数のロータについて前記下限基準時間(Tmin)および上限基準時間(Tmax)を記憶し、前記マイクロコンピュータは、前記比較ステップにおいて、前記複数のロータの内の前記遠心分離機に装着されたロータの前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)と前記実測減速時間(T)とを比較する。
【0019】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記実測減速時間(T)は、前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)の両者のうち何れか一方と比較し、前記モータの異常の有無を表示しても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ロータ(モータ)が所定の回転数から自然減速する際に、予め記憶した正常時の下限基準時間Tminおよび上限基準時間Tmaxと、実測した減速時間Tとの関係からモータが異常に近づいているかを検出するモータ異常検出手段を備えた遠心分離機を提供できる。
【0021】
本発明によれば、モータ軸受部が異常状態に近づいていることを事前に検出することによって、遠心分離機の異常(故障)を未然に対策できるようにし、遠心分離機のメンテナンスにより長期間の使用が可能となる。
【0022】
さらに、本発明によれば、遠心分離機の部品交換を事前に手配できるので、使用不可能となるダウンタイムを短くさせた遠心分離機を提供できる。
【0023】
また、本発明によれば、イナーシャ(慣性)が異なる複数のロータを使用する場合でも、個々に正常時の下限基準時間Tminおよび上限基準時間Tmaxを記憶させることにより、モータ異常検出機会の頻度および検出範囲を向上させることができるので、信頼性の高い遠心分離機を提供できる。
【0024】
本発明の上記および他の目的、ならびに上記および他の特徴および利点は、以下の本明細書の記述および添付図面からさらに明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0026】
図1は本発明の一実施形態に係る遠心分離機の全体の構造を示す構成図(正面図)、図2は図1に示した遠心分離機のハードウェアのブロック図、図3は図1に示した遠心分離機に適用されているモータ異常検出手段の機能ブロック図、図4は図1に示した遠心分離機のモータの自然減速カーブを示す特性図、図5は図3で示した機能ブロックを図2に示したハードウェアで実行するための制御手順を示すフローチャートである。
【0027】
本発明に係る遠心分離機の全体構成について、図1を参照して説明する。遠心分離機1は、上面から見た断面形状が略四角形を有する筐体(フレーム)35を備え、筐体35の内部には、チューブ等の試料容器20(分離すべき試料も含む)を保持するためのアルミニウム合金またはチタン合金等から成るロータ2と、ロータ2に回転駆動力を与えるためのモータ3と、ロータ2を収納するロータ室(回転室)38とを具備し、また、筐体35内に形成されたロータ室38の上部開口部(開閉部)には、ドア37が筐体35に回動自在に取付けられている。ロータ2の回転中には後述する制御手段8によって、ドア37はロータ室38を開放しないように制御される。
【0028】
ロータ室38は、例えば、ステンレス鋼材料から成るボウル(仕切り部材)38aによって区画され、ボウル38aの外周には、冷凍機31より配管によって接続された螺旋状の冷却配管(エバポレータ)32が配置され、さらに、その外周部には断熱部材(発泡材)を充填した円筒状のケーシング33が設置されて、これらの仕切り部材38a、エバポレータ32、およびケーシング33は一体に装着されている。これによって、ロータ室38は、仕切り部材38aおよびドア37によって、外気から密閉されるように構成され、ロータ室38内に設置されるロータ2の回転時の風損による温度上昇が冷却され、遠心分離時の高速回転に伴う試料容器20の温度上昇を一定温度以下に冷却する。
【0029】
モータ3は、例えば誘導モータから構成される。このモータ3の駆動電源は、商用交流電源(例えば、100Vまたは200V、50/60Hz)を、インバータを介して変換した3相交流電源(例えば、300V、5Hz〜2.6kHz)によって駆動され、上記ロータ2に高速回転を与えることができる。このモータ3はダンパ(防振ゴム)34を介して筐体35に固定されている。
【0030】
制御手段8は、モータ3の駆動回路(図示なし)のオン・オフ制御および回転速度制御、冷凍機31のオン・オフ制御および温度制御、モータ3の発熱を強制空冷するためのファンモータ30のオン・オフ制御、ドア37のドアロック機構(図示なし)のロータ回転中におけるロック制御等を行い、さらに、後述するように、本発明に従って、モータ3の回転機構の異常検出を行う。
【0031】
モータ3の回転数(回転速度)を制御するために、モータ3の底部には回転検出器4を設け、回転検出器4からの検出信号をエンコーダケーブル28によって制御手段8にフィードバックしてモータ3の駆動回路を制御する。モータ3と制御手段8はモータケーブル26により電気的に接続されている。ロータ室38の温度を制御するために、ロータ室38の底部に温度センサ36が取付けられて、ロータケーブル25を介して温度検出器(温度センサ)36の検出信号を制御手段8に入力し、冷凍機ケーブル27を介して制御手段8からの制御信号を冷凍機31にフィードバックして冷凍機31を制御する。ロータ2の種類に従ってロータの回転数(モータの回転数)等の運転情報を決定するために、ロータ2の種類を判別するロータ識別子22を有するロータアダプタ21がロータ2の底部に取付けられている。この識別子22は、ロータアダプタ21の底部に回転中心の円周上に沿って設けられた複数の穴を形成する間隔、すなわち1回転中の穴の有無を信号として取り出すことが可能な構造となっている。その識別子22の穴の有無による信号を、識別子検出器23によって、例えば15bitの0信号または1信号として抽出して、ロータケーブル25を介して制御手段8に入力する。モータ3の運転に伴う発熱を強制空冷するために、モータ3の運転と同時にファンモータ30を起動させるように、制御手段8より制御信号がファンケーブル26aを介してファンモータ30に印加される。運転開始時に上記した識別信号でロータ識別を制御手段8が実行する。
【0032】
一般に、オペレータは試料の入った試料容器20を確実に遠心分離させるために、特にモータ3の減速カーブの設定には注意を払っている。この理由は、試料容器20内の試料によっては、モータ3の回転速度の減速が急であると、試料容器20の中で対流し分離した試料がその容器20内で再び混ざり合うという問題が懸念されるためである。そのような問題を避けるため、オペレータはモータ3の自然減速を設定することも少なくない。
【0033】
筐体35の上面部には、ロータ2の回転速度や遠心分離を行う時間等の運転条件を示す情報(データ)を制御手段8に入力するための操作パネル(以下、「入力部」または「入力手段」と称する場合がある)6、および入力された情報の表示や運転中の情報をモニタするための表示パネル(以下、「表示部」または「表示手段」と称する場合がある)7が具備される。操作パネル6は、パネルケーブル24を介して制御手段8に電気的接続され、制御手段8へデータの入力を行い、また表示パネル7は、制御手段8からのデータを表示する。
【0034】
図2に示すように、制御手段8は、マイクロコンピュータ(以下、単に「マイコン」と称する)8からなり、上記のとおり、モータ3、ファンモータ30、冷凍機31、および表示部(上記表示パネル)7等を制御する。マイコン8は、モータ3の制御プログラム、表示部7の制御プログラム、メンテナンス情報等を格納するROM(リード・オンリ・メモリ)84と、ROM84に格納された制御プログラム等を実行する演算部82および制御部83から成るCPU(中央処理装置)81と、CPU81の作業領域の記憶や、入力部(上記操作パネル)6から入力された遠心分離機の運転条件に関するデータ(回転数、運転時間、温度、加速勾配、減速勾配、ロータ形式、使用者等のデータ)の一時記憶を行うためにのRAM(ランダム・アクセス・メモリ)86と、基準クロック信号発生器(図示なし)を含むタイマ87と、オペレータ(ユーザ)の識別コード、メンテナンス担当者の認証コード、モータの使用時間および使用回転数の実績等を記憶するための消去および書換え可能なEEPROM等から構成されたPROM(プログラマブル・リード・オンリ・メモリ)85と、回転検出器4、ロータ識別子検出器23、温度検出器36等の検出信号や、入力部6の入力データをマイコン8へ入力し、またマイコン8の制御信号等を出力するためのI/Oポート(入出力ポート)88aおよび88bとを備え、これらのサブブロック81〜88は、バス(BUS)89によって相互に接続されている。
【0035】
以上の遠心分離機1を運転する場合、オペレータは、試料容器20を所定のロータ2にセットし、ドア37を閉じ、入力部6からマイコン(制御手段)8へ運転条件を入力する。運転条件は、主に、遠心回転数、遠心時間、温度、加速条件、減速条件等である。また、ロータ識別子が読取れないロータ2の場合、すなわちロータアダプタ21が無いようなロータ2の場合は、ロータ識別コードを入力部6から手入力によって設定することもできる。マイコン8は、入力部6から入力された所定の運転条件に従って、モータ3の遠心回転数、遠心時間、加速時間および減速時間等を制御し、試料容器20の遠心分離を実行することができる。
【0036】
かかる遠心分離機1の運転を繰返すことにより、モータ3の回転機構の軸や軸受等の機械要素が時間経過に伴って劣化し、ついにはモータ3が異常状態(寿命)を生じる。例えば軸受部に水、ゴミ、粉塵などが入り込んだ場合や、過負荷で使用した場合など、軸受部が損傷して円滑に回転しなくなるため回転負荷が大きくなり、フレッチングまたはクリープなどの軸受部の損傷現象を経て、結果的に回転軸がロックされるという異常が発生することがある。また、遠心分離機1のように、特に高速で回転する軸受部は、回転負荷により摩擦熱を発してグリース(潤滑剤)が蒸発することがある。そのまま長時間使用すると、軸受部のグリースが切れて潤滑不足となり、ボールベアリング内のボールが焼付くなどの軸受部の損傷を生じることもある。従って、モータ3の機械要素が最終的な異常状態または寿命に至る前に、機械要素の異常状態を検出する必要がある。
【0037】
本発明に従うモータ異常検出方式は、図4に示したようなモータ3の自然減速カーブに従って得られる減速時間Tが、モータ3の回転軸等の機械要素における経時劣化と相関関係にあることに着目し、構成したものである。まず、図4の曲線aおよびbに示すように、モータ3を減速制御して所定回転数Nsとした状態で、そのモータ3の制御を停止させ、制御停止から自然減速によって停止するまでの正常時の減速時間の下限基準時間(最低減速時間)Tmin(曲線a参照)および正常時の上限基準時間(最大減速時間)Tmax(曲線b参照)を予め記憶手段9に設定しておく。下限基準時間(最低減速時間)Tminおよび上限基準時間(最大減速時間)Tmaxは、予め行う寿命試験や寿命診断のデータ等に基づいて求めておく。次に、図4の曲線cに示すように、モータ3について自然減速カーブに従う減速時間Tを実測する。実測した減速時間Tが、下限基準時間Tmin以上で、かつ上限基準時間Tmax以下の範囲内にあれば、正常状態でモータ3が回転し、その範囲外であれば、異常状態(寿命)の回転であると判定できる。この理由は、実測減速時間Tが下限基準時間Tmin以下の場合、または実測減速時間Tが上限基準時間Tmax以上の場合、モータを構成する機械要素が経時劣化によって寿命に達したものと判断できるためである。さらに、実測した減速時間Tが上限基準時間Tmaxを超える値でないがその上限基準時間Tmaxに近い値である場合、または下限基準時間Tminより小さい値でないがその下限基準時間Tminに近い場合、これらは寿命(異常状態)に近い劣化が進んでいると判断できるためである。この下限基準時間Tminおよび上限基準時間Tmaxは、遠心分離に使用されるロータ2のイナーシャによって異なるので、モータ3に取付けられるロータ2の種類毎に設定される。これらのデータは、記憶手段として機能するマイコン8のEEPROM等のPROM85(図2参照)に記憶される。なお、図4に示した特性図において、モータ3の減速制御運転を停止するときの所定の回転数Nsは、オペレータが設定できる最低回転数でも良く、または低速域のある所定の回転数でも良い。さらに、実測減速時間T、下限基準時間Tminおよび上限基準時間Tmaxは、必ずしもモータが停止するまでの時間である必要はなく、モータが自然減速となってから所定の低速回転数に減速されるまでの時間で設定しても良い。
【0038】
本発明のモータ異常検出方式の機能ブロック図を図3に示す。図3を参照してモータ異常検出方式を説明する。特定されたロータ2を駆動するモータ3の回転数は、例えばエンコーダからなる回転検出器4からパルス列信号として出力され、回転数測定手段5で演算する。制御手段8によってモータ3が減速制御され、所定の回転数に減速されると、図4に示したように、モータの運転が停止され自然減速状態でモータ3が減速する。計時手段10によって、モータ3の運転が停止されてから、自然減速によってモータ3が停止するまでの減速時間Tを計測し、計時手段10に記憶する。このようにして、記憶手段9には所定のロータ2が取付けられたモータ3の正常時の下限基準時間(最低減速時間)Tminが予め記憶され、計時手段10には実測減速時間Tが記憶される。
【0039】
次に、比較手段11aにより下限基準時間Tminと実測減速時間Tの大小関係が比較され、その結果を判定手段11bによって表示手段7に表示する。例えば、T≧Tminであるが、その差が小さいときは表示手段7にワーニング(警告)を表示し、オペレータおよびサービスマンへモータ3が異常に近づいているという注意を促す。また、この時、モータ3が異常状態または寿命に達したときに行うべき処理を表示しても良い。判定手段11bによってT<Tminと判定した場合、表示手段7にアラーム(異常)を表示し、モータ3の異常をオペレータおよびサービスマンに知らせる。実際の減速時間Tが正常時の下限基準時間Tminに近い場合、どちらかと言えば、モータ3の軸受部の負荷が重い場合であり、異物が入っている可能性がある。このまま使用すると軸受が損傷する危険性がある。上記した手法により、故障に至る前にオペレータおよびサービスマンへモータ3の異常を事前に知らせることができる。
【0040】
一方、実測減速時間Tは、記憶手段9の別領域に記憶されている上限基準時間(最大減速時間)Tmaxとも比較される。この比較は、上記下限基準時間Tminの比較と同様に、比較手段11aおよび判定手段11bによって実行される。例えば、T≦Tmaxであるが、その差が小さいときは表示部7にワーニングを表示してオペレータおよびサービスマンへ異常に近づいているという注意を促し、T>Tmaxの場合、表示部7にアラームを表示し、モータ異常をオペレータおよびサービスマンに知らせる。この場合、軸受部の抵抗が少なく良好な状態と思えるが、グリースの量が少なくなり、粘性負荷が減少し、減速時間が延びているためである。このまま使用すると、軸受部のグリースがやがて切れて潤滑不足になる危険性が高い。このアラーム表示によりサービスマンが軸受部へグリースを注油することにより、遠心分離機1は再び長期間の使用が可能となる。
【0041】
ロータ2には様々な種類があり、その温度制御パラメータ、イナーシャなども個々に異なる。ロータ2は上記した手法で、ロータ2の識別ができるようになっている。また、ロータアダプタ21がないロータ2の場合、オペレータがロータ識別コードを入力手段6によって入力できるようになっている。ロータ識別コード毎に、温度制御パラメータ、イナーシャなどの情報と共に、正常時の下限基準時間(最低減速時間)Tminおよび正常時の上限基準時間(最大減速時間)Tmaxを記憶手段9(図2に示したマイコン8のPROM85)に記憶させることにより、使用するロータ2に限定されることなく、上記した手法でモータ3の異常検出が可能となる。
【0042】
上記本発明によれば、ロータ2が所定の回転数から自然減速する実際の減速時間Tと、予め記憶させた正常時の下限基準時間Tminまたは正常時の上限基準時間Tmaxと比較判断するモータ異常検出手段11を設け、表示手段7からモータ3の異常状態を表示させるようにしたので、モータ3の異常事態を事前に確認でき、故障を未然に防止することができる。また、部品交換の際は事前に部品手配できるので、使用不可能となるダウンタイムを短くさせることができ、さらにサービスマンのメンテナンスにより長期間使用を可能とした遠心分離機1を提供できる。また、イナーシャが異なる複数のロータ2をモータ3で駆動する場合でも、個々に正常時の下限基準時間Tminおよび正常時の上限基準時間Tmaxを記憶させるようにしたので、モータ3の異常検出の検出頻度および検出範囲を向上させ、信頼性の高い遠心分離機1を提供できる。
【0043】
図3に示したモータ異常検出方式の記憶手段9、回転数測定手段5、計時手段10、および異常検出手段11(比較手段11aおよび判定手段11bを含む)は、本発明の実施形態に従えば、図2に示した遠心分離機1の制御手段であるマイコン8によって実行するソフトウェアによる機能である。すなわち、上記記憶手段9はマイコン8のPROM85によって構成され、回転数測定手段5、計時手段10、比較手段11a、および判定手段11bは、CPU81、ROM85、RAM86、およびタイマ87によって実行される。
図5は、図2に示したマイコン8を制御手段として使用するモータ異常検出方式を実行するフローチャートを示す。以下、図5を参照してモータの異常検出手順について説明する。
【0044】
記憶手段9として使用されたPROM85に遠心分離機1の製品出荷時に予め記憶された正常時の下限基準時間Tminおよび上限基準時間TmaxをRAM86に読み出し(ステップ101)、回転検出器4の検出信号に基づいて、実際の減速時間TをCPU81およびタイマ87等によって測定し、RAM86に一時記憶する(ステップ102)。
【0045】
次に、CPU81によって、実測減速時間Tと下限基準時間Tminとの時間差T−Tminを算出し、かつその時間差が特定の範囲内(所定時間差内)にあるか否か、すなわち「小」か否かを判定する(ステップ103)。ステップ103において、時間差(T−Tmin)の判定結果が「正」で、かつ所定時間差内の「小」の範囲であれば(YESの場合)、表示部7にワーニング(警告)を表示する(ステップ104)。時間差(T−Tmin)の所定時間差の範囲は、例えば下限基準時間Tminが300秒、上限基準時間Tmaxが600秒である場合、Tmax−Tmin=300秒となるので、Tminに近い所定時間差の範囲をTmax−Tmin=300秒の10%とすると、300×0.1=30秒となる。すなわち、一例として、実測減速時間Tが下限基準時間Tminより大きい値を示すが、所定時間差30秒内にあるとき、「小」と判断し、ワーニング(警告)を表示部7に表示する。このワーニング状態となる原因としては、モータ3の軸受部に、異物が侵入したり、錆(フレッチング)が発生している可能性がある。
【0046】
ステップ103で、時間差(T−Tmin)が所定時間差より大きい場合(NOの場合)、T≧Tminか否か判断され、否と判断され、モータ3が異常状態または寿命であると判断されると、表示部6にアラーム(異常)が表示される(ステップ106)。
【0047】
ステップ105でT≧Tminと判断されると、CPU81によって、上限基準時間Tmaxと実測減速時間Tとの時間差(Tmax−T)を算出し、かつその時間差が特定の範囲内(所定時間差内)である「小」の範囲であるか否かを判定する(ステップ107)。ステップ103と同様な実行により、時間差(Tmax−T)が所定時間差の範囲内の「小」である場合(YESの場合)、ワーニングを表示する。このワーニングが発生する一原因としては、軸受部のグリースの量が少なくなっている可能性がある。時間差(Tmax−T)における所定時間差の規定例は、上記ステップ103における時間差(T−Tmin)の所定時間差と同様に、Tmax−Tmin=300秒の10%とすると、所定時間差は300×0.1=30秒となる。すなわち、一例として、実測減速時間Tが上限基準時間Tmaxより小さい値を示すが、所定時間差30秒内にあるとき、「小」と判断し、ワーニング(警告)を表示部7に表示する。
【0048】
ステップ107で、時間差(Tmax−T)が所定の値より大きい場合(NOの場合)、T≦Tmaxか否かが判断され(ステップ108)、その関係がNOと判断されれば、ステップ106によってアラーム表示される。またYESと判断されれば、モータ3には異常がなく正常であることを表示部7で表示する(ステップ109)。
【0049】
以上のモータ異常検出手順により、実測減速時間Tを、下限基準時間Tminおよび上限基準時間Tmaxと比較することにより、正常状態にあるか、またはワーニング状態もしくはアラーム状態にあるかを検出することができる。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠心分離機の全体の構成図(正面図)。
【図2】図1に示した遠心分離機のハードウェアのブロック図。
【図3】図1に示した遠心分離機のモータ異常検出方式の機能ブロック図。
【図4】図1に示した遠心分離機のモータの自然減速カーブを示す特性図。
【図5】図1に示した遠心分離機のモータ異常検出方式における制御手順のフローチャート。
【符号の説明】
【0052】
1:遠心分離機 2:ロータ 3:モータ 4:回転検出器
5:回転数測定手段 6:操作パネル(入力部または入力手段)
7:表示パネル(表示部または表示手段) 8:制御手段(マイコン)
81:CPU 82:CPU演算部 83:CPU制御部
84:ROM 85:PROM 86:RAM 87:タイマ
88a、88b:I/Oポート 89:バス 9:記憶手段
10:計時手段 11:モータ異常検出手段 11a:比較手段
11b:判定手段 20:試料容器(試料を含む) 21:ロータアダプタ
22:識別子 23:識別子検出器 24:パネルケーブル
25:ロータケーブル 26:モータケーブル 26a:ファンケーブル
27:冷凍機ケーブル 28:エンコーダケーブル 30:ファンモータ
31:冷凍機 32:冷却配管(エバポレータ) 33:断熱部材のケーシング
34:ダンパ(防振ゴム) 35:筐体(フレーム) 36:温度検出器
37:ドア 38:ロータ室 38a:ボウル
Tmin:正常時の最低減速時間(下限基準時間)
Tmax:正常時の最大減速時間(上限基準時間) T:実測減速時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が入った容器を収容するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、該モータの回転を検出する回転検出器と、該回転検出器から出力される信号により前記モータの回転数を測定する回転数測定手段と、前記ロータの加速および減速条件を含む運転条件を設定できる入力手段と、運転情報を表示する表示手段と、前記入力手段および前記表示手段を制御し、かつ前記回転数測定手段の情報に基づいて前記モータを制御する制御手段とを備えた遠心分離機において、
前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが所定回転数から停止するまでの正常時の減速時間の下限基準時間(Tmin)を予め記憶する記憶手段と、前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが前記所定回転数から停止するまでの実測減速時間(T)を測定する計時手段と、前記記憶手段に記憶された下限基準時間(Tmin)と前記計時手段によって測定された実測減速時間(T)とを比較し、異常か否かを判定する異常検出手段とを前記制御手段に設け、前記異常検出手段は、前記下限基準時間(Tmin)と前記実測減速時間(T)との比較結果に従って前記モータの異常の有無を表示することを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記異常検出手段は、前記実測減速時間(T)が前記下限基準時間(Tmin)より小さい時間を示したとき、前記モータが異常に達したことを表示することを特徴とする請求項1に記載された遠心分離機。
【請求項3】
前記異常検出手段は、前記実測減速時間(T)が前記下限基準時間(Tmin)より大きい場合で、かつその時間差(T−Tmin)が所定時間差より小さいと判定したとき、前記モータが異常に近づいている警告を表示することを特徴とする請求項1に記載された遠心分離機。
【請求項4】
前記記憶手段は遠心分離機に適用可能な複数のロータの前記下限基準時間(Tmin)を記憶し、前記異常検出手段は前記複数のロータの内の前記遠心分離機に装着されたロータの前記下限基準時間(Tmin)と前記実測減速時間(T)とを比較することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載された遠心分離機。
【請求項5】
試料が入った容器を収容するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、該モータの回転を検出する回転検出器と、該回転検出器から出力される信号により前記モータの回転数を測定する回転数測定手段と、前記ロータの加速および減速条件を含む運転条件を設定できる入力手段と、運転情報を表示する表示手段と、前記入力手段および前記表示手段を制御し、かつ前記回転数測定手段の情報に基づいて前記モータを制御する制御手段とを備えた遠心分離機において、
前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが所定回転数から停止するまでの正常時の減速時間の上限基準時間(Tmax)を予め記憶する記憶手段と、前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが前記所定回転数から停止するまでの実測減速時間(T)を測定する計時手段と、前記記憶手段に記憶された前記上限基準時間(Tmax)と前記計時手段によって測定された実測減速時間(T)とを比較し、異常か否かを判定する異常検出手段とを前記制御手段に設け、前記上限基準時間(Tmax)と前記実測減速時間(T)との比較結果に従って前記モータの異常の有無を表示することを特徴とする遠心分離機。
【請求項6】
前記異常検出手段は、前記実測減速時間(T)が前記上限基準時間(Tmax)より大きい時間を示したとき、前記モータが異常に達したことを表示することを特徴とする請求項5に記載された遠心分離機。
【請求項7】
前記異常検出手段は、前記実測減速時間(T)が前記上限基準時間(Tmax)より小さい場合で、かつその時間差(Tmax−T)が所定時間差より小さいと判定したとき、前記モータが異常に近づいている警告を表示することを特徴とする請求項5に記載された遠心分離機。
【請求項8】
前記記憶手段は遠心分離機に適用可能な複数のロータの前記上限基準時間(Tmax)を記憶し、前記異常検出手段は前記複数のロータの内の前記遠心分離機に装着されたロータの前記上限基準時間(Tmax)と前記実測減速時間(T)とを比較することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一つに記載された遠心分離機。
【請求項9】
試料が入った容器を収容するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、該モータの回転を検出する回転検出器と、該回転検出器から出力される信号により前記モータの回転数を測定する回転数測定手段と、前記ロータの加速および減速条件を含む運転条件を設定できる入力手段と、運転情報を表示する表示手段と、前記入力手段および前記表示手段を制御し、かつ前記回転数測定手段の情報に基づいて前記モータを制御する制御手段とを備えた遠心分離機において、
前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが所定回転数から停止するまでの正常時の減速時間の下限基準時間(Tmin)および上限基準時間(Tmax)を予め記憶する記憶手段と、前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが前記所定回転数から停止するまでの実測減速時間(T)を測定する計時手段と、前記記憶手段に記憶された下限基準時間(Tmin)および上限基準時間(Tmax)と前記計時手段によって測定された実測減速時間(T)とを比較し、異常か否かを判定する異常検出手段とを前記制御手段に設け、前記異常検出手段は、前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)と、前記実測減速時間(T)との比較結果に従って前記モータの異常の有無を表示することを特徴とする遠心分離機。
【請求項10】
前記異常検出手段は、前記実測減速時間(T)が前記下限基準時間(Tmin)より小さい時間または前記上限基準時間(Tmax)より大きい時間を示したとき、前記モータが異常に達したことを表示することを特徴とする請求項9に記載された遠心分離機。
【請求項11】
前記異常検出手段は、前記実測減速時間(T)が前記下限基準時間(Tmin)より大きい場合で、かつその時間差(T−Tmin)が所定時間差より小さいと判定したとき、または前記実測減速時間(T)が前記上限基準時間(Tmax)より小さい場合で、かつその時間差(Tmax−T)が所定時間差より小さいと判定したとき、前記モータが異常に近づいている警告を表示することを特徴とする請求項9に記載された遠心分離機。
【請求項12】
前記記憶手段は遠心分離機に適用可能な複数のロータについて前記下限基準時間(Tmin)および上限基準時間(Tmax)を記憶し、前記異常検出手段は、前記複数のロータの内の前記遠心分離機に装着されたロータの前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)と前記実測減速時間(T)とを比較することを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか一つに記載された遠心分離機。
【請求項13】
試料が入った容器を収容するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、該モータを制御するためのマイクロコンピュータと、前記ロータの回転速度、運転時間、温度等の運転情報を前記マイクロコンピュータに入力するための入力部と、前記入力部による入力情報および前記マイクロコンピュータの運転情報を表示するために前記マイクロコンピュータに接続された表示部とを備えた遠心分離機において、
前記マイクロコンピュータは、前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが所定回転数から停止するまでの正常時の減速時間の下限基準時間(Tmin)および上限基準時間(Tmax)を予め記憶する記憶部を有し、前記モータの運転を停止してから自然減速によって前記ロータが前記所定回転数から停止するまでの実測減速時間(T)を測定する測定ステップと、前記実測減速時間(T)と前記記憶部に記憶された前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)とを比較する比較ステップと、前記モータが異常か否かを表示する表示ステップとを実行し、前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)と、前記実測減速時間(T)との比較結果に従って前記モータの異常の有無を表示することを特徴とする遠心分離機。
【請求項14】
前記マイクロコンピュータは、前記比較ステップにおいて前記実測減速時間(T)が前記下限基準時間(Tmin)より小さい時間または前記上限基準時間(Tmax)より大きい時間を示したとき、前記表示ステップにおいて前記モータが異常に達したことを表示することを特徴とする請求項13に記載された遠心分離機。
【請求項15】
前記マイクロコンピュータは、前記比較ステップにおいて、前記実測減速時間(T)が前記下限基準時間(Tmin)より大きい場合で、かつその時間差(T−Tmin)が所定時間差より小さいと判定したとき、または前記実測減速時間(T)が前記上限基準時間(Tmax)より小さい場合で、かつその時間差(Tmax−T)が所定時間差より小さいと判定したとき、前記表示ステップにおいて前記モータが異常に近づいている警告を表示することを特徴とする請求項13に記載された遠心分離機。
【請求項16】
前記記憶部は遠心分離機に適用可能な複数のロータについて前記下限基準時間(Tmin)および上限基準時間(Tmax)を記憶し、前記マイクロコンピュータは、前記比較ステップにおいて、前記複数のロータの内の前記遠心分離機に装着されたロータの前記下限基準時間(Tmin)および前記上限基準時間(Tmax)と前記実測減速時間(T)とを比較することを特徴とする請求項13または請求項15のいずれか一つに記載された遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−44586(P2007−44586A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229405(P2005−229405)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】