説明

遠隔制御システム

【課題】受信基地局の地図表示画面上に飛行軌跡と受信状態を表示することで、電波伝送経路上の障害物などを考慮した、事前飛行経路計画が立てられるようにする。
【解決手段】受信装置側の回転パラボラアンテナを移動する送信装置の方向へ遠隔制御装置側から方向調整する遠隔制御システムにおいて、移動する送信装置の夫々の位置情報及び該夫々の位置情報に対応する受信状態を遠隔制御装置で取得しデータ化して記憶媒体に保存し、該保存したデータを基に、遠隔制御装置の表示部の表示画面上に移動する送信装置軌跡と対応する受信状態を表示する遠隔制御システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山頂等に設置されたFPU等の受信基地局(受信装置)の回転パラボラアンテナをヘリコプタ等の移動する送信装置の方向へ遠隔制御で方向調整する装置であり、特にヘリコプタの飛行経路計画の支援に関する情報を取得及び表示させる機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のFPU等の受信基地局の回転パラボラアンテナのGPS追尾は、1秒間隔で送られてくるヘリコプタのGPS位置情報(緯度、経度、高度)と受信基地局位置情報により、回転パラボラアンテナの向く方向をパソコンにより計算し、自動的に方向調整、制御する方式をとっていた。
しかし、この方法によると、運行時のヘリコプタ方向への制御はできたが、過去の飛行実績による運行注意経路(ヘリコプタと基地局をむすぶ電波伝送経路に障害物があり伝送できないポイント等)の判断ができなかった。また、運行経路の確認ができなかった。
【特許文献1】特開2003−78467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の方式ではヘリコプタのGPS位置情報を基に自動的に受信基地局の回転パラボラアンテナを回転させることはできるものの、電波伝送経路障害物などを考慮した、事前飛行経路計画ができないため、電波伝送経路上の障害物などにより、放送中、または収録中に映像がとぎれる可能性があった。この問題を回避するために事前の飛行試験を実施する場合もあるが、ほとんどの場合は飛行しながら受信状況を確認しなければならないものであった。
本発明はこれらの欠点を除去し、受信基地局の地図表示画面上に飛行軌跡と受信状態を表示することで、電波伝送経路上の障害物などを考慮した、事前飛行経路計画が立てられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記目的を達成するため、受信装置側の回転パラボラアンテナを移動する送信装置の方向へ遠隔制御装置側から方向調整する遠隔制御システムにおいて、上記移動する送信装置の夫々の位置情報及び該夫々の位置情報に対応する受信状態を上記遠隔制御装置で取得しデータ化して記憶媒体に保存し、該保存したデータを基に、上記遠隔制御装置の表示部の表示画面上に上記移動する送信装置軌跡と対応する受信状態を表示する遠隔制御システムである。
また、移動する送信装置はFPU送信部、GPS受信機を有するヘリコプタであり、受信装置はヘリコプタからの送信信号、GPS位置情報を受信し、ヘリコプタの夫々の位置情報及び該夫々の位置情報に対応する受信状態を抽出し、遠隔制御装置に伝送するものであり、遠隔制御装置は伝送されたヘリコプタの位置情報に基づき受信装置側の回転パラボラアンテナを遠隔制御する手段と、記憶媒体に保存されたヘリコプタの夫々の位置情報及び該夫々の位置情報に対応する受信状態データに基づき表示部の地図表示画面上にヘリコプタの飛行軌跡と対応する受信状態を表示するものである。
このように、パラボラアンテナをヘリコプタの方向に向くようGPS追尾制御する場合、ヘリコプタの位置情報(緯度、経度、高度)及び受信状態(例えば、受信電界値、ビットエラー率、マージン)をデータ化してハードディスクなどの記憶媒体に保存し、保存したデータを基に、表示部の表示画面上に飛行軌跡と受信状態を表示することにより、例えば、特定の基地局に関する最適な飛行経路の事前計画を立てるに際し、表示画面の平面地図上で、最適な飛行経路が目視確認できる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、FPU等の受信基地局の回転パラボラアンテナをヘリコプタ等の送信側の方向へ遠隔制御で方向調整する場合、地図表示画面上でヘリコプタの飛行軌跡と受信状態が目視確認できるため、電波伝送経路上の障害物などにより、放送中、または収録中に映像が途切れるかもしれないといった操作者の不安を極力低減できる。また、映像品質を保ちながら方向調整できるよう事前に最適な飛行経路計画を立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について、図1のヘリコプタからのGPS信号により受信基地局の回転パラボラアンテナの方向制御をする信号伝送システムの全体構成を示すブロック図と、図2のヘリコプタの飛行軌跡と受信状況の画面表示の関係を説明する模式図を用いて、詳細に説明する。
図1において、1は送信装置で、例えばヘリコプタ11、撮影カメラ12、FPU等の送信部13、GPS受信機14、送信アンテナ15で構成されている。16は映像信号、音声信号の送信信号、17はGPSデータ信号である。2は受信基地局で、例えば、回転パラボラアンテナ21、FPU等の受信部22、パラボラアンテナ制御処理部23、データ通信処理部24で構成されている。3は受信基地局2を遠隔制御する遠隔制御装置で、例えば、データ通信処理部31、角度情報抽出部32、GPS情報抽出処理部33、受信電界値、ビットエラー率、マージン抽出処理部34、パラボラアンテナ角度計算処理部35、記録媒体(ハードディスク)36、表示部37で構成され、38はパラボラアンテナ制御信号である。
図2において、201は表示部37の表示画面、202は表示画面内に表示される平面地図、203はヘリコプタ飛行軌跡(受信電界強度を線の太さで表現)、204は受信状態表示(○印の色で受信状態を表現)、205は飛行高度である。
【0007】
次に、本発明による信号伝送システムの動作を説明する。テレビ放送局では、取材用の撮影カメラ12、撮影した映像等の送信信号16を伝送するためのFPU等の送信部13をヘリコプタ11に搭載している。また、このヘリコプタ11に搭載した送信部13から送信される送信信号16を受信するため、見通しの良い山頂あるいは高層ビル屋上などに設置された受信基地局2に、受信部22、上下左右方向に受信角度を制御することができる回転パラボラアンテナ21を備えており、この受信基地局2を中心とした周囲一円から送信信号を受信できるようにしている。
所要の位置に移動するヘリコプタ11に搭載した送信部13は、GPS受信機14で受信したGPS信号から算出したヘリコプタ11の現在位置を表す、緯度、経度、高度等の位置情報のGPSデータ信号17と、撮影カメラ12で撮影した映像等の送信信号16を、順次送信アンテナ15から受信基地局2の受信部22へ送信する。
受信基地局2では、順次、送信される送信信号を回転パラボラアンテナ21で受信し、受信信号を受信部22へ出力する。受信部22は、順次、入力される受信信号から、映像信号とGPS情報(ヘリコプタ11の位置情報)を復調する。また受信部22では、受信信号から受信基地局2における時々刻々の電波伝搬の受信状態を表す受信電界値、ビットエラー率、受信限界までのマージンを、順次算出する。
また、受信基地局2では、後述する遠隔制御装置3からのパラボラアンテナ制御信号38を、データ通信処理部34、24を介してパラボラアンテナ制御処理部23に供給し、パラボラアンテナ制御処理部23により、回転パラボラアンテナ21の位置及び角度を、送信装置1の方位に正確に合わせる制御を行う。
受信部22で復調された映像信号、GPS情報、および受信電界値、ビットエラー率、マージン情報は、受信基地局2と、例えば放送局のマスタ(主調整室)とを結ぶ専用の伝送回線(例えば同軸回線、光ファイバ回線)を使用し、マスタに設けた、例えば映像処理センタの遠隔制御装置3へ、順次、伝送される。
【0008】
遠隔制御装置3は、受信基地局2から順次伝送される映像信号、音声信号を、そのまま他の回路へ出力するとともに、GPS情報がGPS情報抽出処理部33に順次入力され、受信電界値、ビットエラー率、マージン情報が、受信電界値、ビットエラー率、マージン抽出処理部34に、順次、入力される。
GPS情報抽出処理部33は、受信基地局2より順次伝送されるGPS情報から、ヘリコプタ11の現在位置を表す、緯度、経度、高度データを抽出し、抽出した緯度、経度、高度データに基づき、ヘリコプタ11の現在位置の座標計算処理を行い、座標計算処理により算出したヘリコプタ11の現在位置のデータを順次、記録媒体36に蓄積するとともに、パラボラアンテナ角度計算処理部35、表示部37へ出力する。
受信電界値、ビットエラー率、マージン抽出処理部34は、受信基地局2から順次伝送されるヘリコプタ11の現在位置での受信電界値、ビットエラー率、マージン情報を抽出し、抽出したヘリコプタ11の現在位置における受信状態を表す、受信電界値、ビットエラー率、マージン情報を記録媒体36に順次蓄積するとともに、表示部37へ出力する。
角度情報抽出部32は、受信基地局2のパラボラアンテナ制御処理部23からデータ通信処理部24、34を介して伝送されるパラボラアンテナ21の現在の角度情報を抽出し、パラボラアンテナ角度計算処理部35へ出力する。
パラボラアンテナ角度計算処理部35では、GPS情報抽出処理部33から入力されるヘリコプタ11の現在位置のデータと角度情報抽出部32から入力されるパラボラアンテナ21の現在の角度情報に基づき、パラボラアンテナ21の方位と仰角あるいは俯角を制御するパラボラアンテナ制御信号38を生成し、データ通信処理部31、24を介してパラボラアンテナ制御処理部23へ伝送する。そして、パラボラアンテナ制御処理部23は、伝送されてきた制御信号に基づき、パラボラアンテナ21の方位と仰角あるいは俯角を制御する。
【0009】
表示部37は、図2に示すように、GPS情報抽出処理部33、記録媒体36から入力されるヘリコプタ11の現在、過去の位置データ(緯度、経度、高度)に基づき、表示部37の表示画面201の平面地図202上に、ヘリコプタ飛行軌跡203、飛行高度205を表示すると共に、受信電界値、ビットエラー率、マージン抽出処理部34、記録媒体36から入力されるヘリコプタ11の夫々の位置における受信電界値、ビットエラー率、マージン情報に基づき、夫々の位置における受信状態204を合わせて表示する。
即ち、図2に示すように、表示部37の表示画面201には、表示される平面地図202上に、例えば受信電界強度を線の太さで表現したヘリコプタ飛行軌跡203と、夫々の飛行軌跡203における個々の受信状態を○印の色で表現した受信状態204、及び飛行高度205が表示される。
このように、パラボラアンテナ21をヘリコプタ11の方向に向くようGPS追尾制御する場合、
(1)GPS追尾中に、例えば1秒間隔で取得したヘリコプタ11の位置データ(緯度、経度、高度)をハードディスクなどの記憶媒体36に保存する。
(2)(1)のデータに更に受信状態(受信電界値、ビットエラー率、マージン)をデータ化して記憶媒体36に保存する。
(3)(1)(2)で保存したデータを基に、表示部37の表示画面上に飛行軌跡と受信状態が目視確認できるように表示する。
ことにより、例えば、特定の基地局に関する最適な飛行経路の事前計画を立てるに際し、表示部37の表示画面201の平面地図202上で、最適な飛行経路が目視確認できる。
以上説明したように、本発明によれば、事前に受信状態が悪くなる飛行経路が予測でき、かつ飛行実績を重ねるほど予測精度を高めることができるため、生中継などのパラボラアンテナの方向調整に有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の回転パラボラアンテナの方向制御装置の構成の一実施例を示すブロック図
【図2】本発明のヘリコプタの飛行軌跡を受信状態とともに表示するイメージ図
【符号の説明】
【0011】
1:送信装置、11:ヘリコプタ、12:撮影カメラ、13:送信部、14:GPS受信機、15:送信アンテナ、16:映像信号、17:GPSデータ信号、2:受信基地局、21:回転パラボラアンテナ、22:受信部、23:パラボラアンテナ制御処理部、24:データ通信処理部、3:遠隔制御装置、31:データ通信処理部、32:角度情報抽出部、33:GPS情報抽出処理部、34:受信電界値、ビットエラー率、マージン抽出処理部、35:パラボラアンテナ角度計算処理部、36:記録媒体、37:表示部、201:表示画面、202:平面地図、203:ヘリコプタ飛行軌跡、204:受信状態表示、205:飛行高度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信装置側の回転パラボラアンテナを、移動する送信装置の方向へ遠隔制御装置側から方向調整する遠隔制御システムにおいて、上記移動する送信装置の夫々の位置情報及び該夫々の位置情報に対応する受信状態を上記遠隔制御装置で取得しデータ化して記憶媒体に保存し、該保存したデータを基に、上記遠隔制御装置の表示部の表示画面上に上記移動する送信装置軌跡と対応する受信状態を表示することを特徴とする遠隔制御システム。
【請求項2】
請求項1において、上記移動する送信装置はFPU送信部、GPS受信機を有するヘリコプタであり、上記受信装置は上記ヘリコプタからの送信信号、GPS位置情報を受信し、上記ヘリコプタの夫々の位置情報及び該夫々の位置情報に対応する受信状態を抽出し、上記遠隔制御装置に伝送するものであり、上記遠隔制御装置は伝送された上記ヘリコプタの位置情報に基づき上記受信装置側の回転パラボラアンテナを遠隔制御する手段と、上記記憶媒体に保存された上記ヘリコプタの夫々の位置情報及び該夫々の位置情報に対応する受信状態データに基づき上記表示部の地図表示画面上に上記ヘリコプタの飛行軌跡と対応する受信状態を表示することを特徴とする遠隔制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−134915(P2007−134915A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325504(P2005−325504)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】