説明

遠隔操作システム

【課題】移動体に搭載した立体カメラから得られる映像を、操作者が移動体から見た映像に模して、臨場感を与え遠隔操作性を向上させた遠隔操作システムを提供する。
【解決手段】移動体と、該移動体を遠隔操作するリモートコントローラ2と、前記移動体の運転室又は操縦室を模した背景画像を格納した記憶部38とを有する遠隔操作システムであって、前記移動体は、ステレオカメラ15と、該ステレオカメラの撮像方向を制御する駆動部17,18,19と、少なくとも前記ステレオカメラにより撮影された映像を含む情報を通信する第1通信部34とを有し、前記リモートコントローラは、前記第1通信部との間で通信を行う第2通信部37と、前記移動体を制御する制御部と、前記ステレオカメラで撮影された映像の少なくとも一部及び前記背景画像とを合成して立体視可能に表示する表示部41とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を手動により遠隔操作する場合の遠隔操作システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体を遠隔操作する場合、移動体が目視できない範囲で遠隔操作する場合、或は移動体が目視できる範囲でも、更に緻密な操作が要求される場合等では、移動体の状況、移動体の進行方向の情報が必要とされる。
【0003】
特許文献1には、移動体に立体カメラを搭載し、立体カメラで得られた映像を操作者側に送信し、操作者はヘッドマウントディスプレイを装着し、該ヘッドマウントディスプレイに送信された映像を見ながら移動体を遠隔操作することが示されている。
【0004】
特許文献1では、立体カメラは移動体に固定されており、視準方向は移動体の正面前方に固定されている。この為、操作者は前記立体カメラから送信される映像を受動的に観察するだけであり、視野も前記立体カメラの画角に限定されたものであった。この為、操作者の意志で、前方上下、或は前方左右、側方の映像を得ることはできず、狭小な場所、或は障害物の多い場所では操作に充分な情報は得られなかった。
【0005】
更に、移動体が小型ヘリコプタ等の飛行体であった場合、更に左右、上下と広範囲に進行方向の変更が可能であり、方向変換の自由度が大きい。この為、遠隔操作に必要な情報も立体カメラの画角に限定された映像ではなく、広範囲の映像が必要であり、又操作者が方向変換しようとする方向の映像が操作者の意志に追従して得られることが好ましい。
【0006】
又、特許文献2には操作者の頭部の動きを検知して、撮影方向を変更する遠隔操作システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−280003号公報
【特許文献2】特開平3−56923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は斯かる実情に鑑み、移動体に搭載した立体カメラから得られる映像を、操作者が移動体から見た映像に模して、臨場感を与え遠隔操作性を向上させた遠隔操作システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、移動体と、該移動体を遠隔操作するリモートコントローラと、前記移動体の運転室又は操縦室を模した背景画像を格納した記憶部とを有する遠隔操作システムであって、前記移動体は、ステレオカメラと、該ステレオカメラの撮像方向を制御する駆動部と、少なくとも前記ステレオカメラにより撮影された映像を含む情報を通信する第1通信部とを有し、前記リモートコントローラは、前記第1通信部との間で通信を行う第2通信部と、前記移動体を制御する制御部と、前記ステレオカメラで撮影された映像の少なくとも一部及び前記背景画像とを合成して立体視可能に表示する表示部とを有する遠隔操作システムに係るものである。
【0010】
又本発明は、操作者の視線方向を検出する姿勢検出部を有し、前記駆動部は前記姿勢検出部の検出結果に基づいて、前記ステレオカメラの撮像方向を変更する遠隔操作システムに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記移動体は、該移動体に対して前記ステレオカメラの撮像方向を変更するカメラ駆動部を有し、前記姿勢検出部の検出結果に基づいて前記カメラ駆動部を制御することにより撮像方向が変更される遠隔操作システムに係るものである。
【0012】
又本発明は、前記移動体が該移動体を移動させる為の移動手段を有し、該移動手段は前記姿勢検出部の検出結果に基づいて前記移動体の姿勢を制御することにより前記ステレオカメラの撮像方向が変更される遠隔操作システムに係るものである。
【0013】
又本発明は、前記表示部は、ヘッドマウントディスプレイであり、前記姿勢検出部はヘッドマウントディスプレイに設けられた遠隔操作システムに係るものである。
【0014】
又本発明は、前記記憶部に記憶された背景画像は、操作者による立体視の際に視覚的に視認される奥行きに関する位置情報を含み、前記表示部に背景画像が表示された場合に前記ステレオカメラで撮影された映像に対して相対的な奥行き関係を持って視認される遠隔操作システムに係るものである。
【0015】
又本発明は、前記移動体は、該移動体の位置情報を取得する移動体位置検出部を有し、前記記憶部には遠隔操作に関する情報が格納され、前記移動体位置検出部の出力に基づいて前記遠隔操作に関する情報が前記表示部に表示される遠隔操作システムに係るものである。
【0016】
又本発明は、前記ステレオカメラにより撮影された映像により被撮影物体の少なくとも一部に関してステレオ計測を行う演算部を有し、該演算部により計測された被測定物体と前記ステレオカメラ又は移動体との相対的な位置関係に対応した情報を前記表示部に立体視可能に表示する遠隔操作システムに係るものである。
【0017】
又本発明は、前記駆動部は、前記移動体が傾斜した場合に、前記ステレオカメラの撮像方向を機体の傾斜分補正する遠隔操作システムに係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、移動体と、該移動体を遠隔操作するリモートコントローラと、前記移動体の運転室又は操縦室を模した背景画像を格納した記憶部とを有する遠隔操作システムであって、前記移動体は、ステレオカメラと、該ステレオカメラの撮像方向を制御する駆動部と、少なくとも前記ステレオカメラにより撮影された映像を含む情報を通信する第1通信部とを有し、前記リモートコントローラは、前記第1通信部との間で通信を行う第2通信部と、前記移動体を制御する制御部と、前記ステレオカメラで撮影された映像の少なくとも一部及び前記背景画像とを合成して立体視可能に表示する表示部とを有するので、移動体に搭乗した様な臨場感を持って遠隔操作を行うことができる。
【0019】
又本発明によれば、操作者の視線方向を検出する姿勢検出部を有し、前記駆動部は前記姿勢検出部の検出結果に基づいて、前記ステレオカメラの撮像方向を変更するので、操作者は実際に移動体から目視し、移動体上で視線を変更する様な感覚で遠隔操作を行うことができる。
【0020】
又本発明によれば、前記移動体は、該移動体に対して前記ステレオカメラの撮像方向を変更するカメラ駆動部を有し、前記姿勢検出部の検出結果に基づいて前記カメラ駆動部を制御することにより撮像方向が変更されるので、操作者は実際に移動体から目視し、移動体上で視線を変更する様な感覚で遠隔操作を行うことができる。
【0021】
又本発明によれば、前記移動体が該移動体を移動させる為の移動手段を有し、該移動手段は前記姿勢検出部の検出結果に基づいて前記移動体の姿勢を制御することにより前記ステレオカメラの撮像方向が変更されるので、操作者は実際に移動体から目視し、移動体上で視線を変更する様な感覚で遠隔操作を行うことができる。
【0022】
又本発明によれば、前記表示部は、ヘッドマウントディスプレイであり、前記姿勢検出部はヘッドマウントディスプレイに設けられたので、一層臨場感が得られ、直感的な感覚で遠隔操作を行うことができる。
【0023】
又本発明によれば、前記記憶部に記憶された背景画像は、操作者による立体視の際に視覚的に視認される奥行きに関する位置情報を含み、前記表示部に背景画像が表示された場合に前記ステレオカメラで撮影された映像に対して相対的な奥行き関係を持って視認されるので、操作者は運転室又は操縦室で操作している様な臨場感が得られる。
【0024】
又本発明によれば、前記移動体は、該移動体の位置情報を取得する移動体位置検出部を有し、前記記憶部には遠隔操作に関する情報が格納され、前記移動体位置検出部の出力に基づいて前記遠隔操作に関する情報が前記表示部に表示されるので、移動体の遠隔操作の過程で前記遠隔操作に関する情報が得られ、操作を中断することなく、確実な遠隔操作を行うことができる。
【0025】
又本発明によれば、前記ステレオカメラにより撮影された映像により被撮影物体の少なくとも一部に関してステレオ計測を行う演算部を有し、該演算部により計測された被測定物体と前記ステレオカメラ又は移動体との相対的な位置関係に対応した情報を前記表示部に立体視可能に表示するので、操作者は実際に運転室、操縦室で運転、操縦している様な感覚が得られる。
【0026】
又本発明によれば、前記駆動部は、前記移動体が傾斜した場合に、前記ステレオカメラの撮像方向を機体の傾斜分補正するので、移動体の姿勢に拘らず、操作者の視線と齟齬のない画像が見られる等の優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施例に係る遠隔操作システムの基本的な構成を示す概念図である。
【図2】第1の実施例の概略構成図である。
【図3】ディスプレイに表示される画像の一例を示す説明図である。
【図4】ヘリコプタとリモートコントローラ間の画像データの流れを示す模式図である。
【図5】移動体がリモコンカーである場合のリモコンカーとリモートコントローラ間の画像データの流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0029】
先ず、本発明が小型飛行体の遠隔操作システムとして実施された第1の実施例を説明する。
【0030】
図1、図2は第1の実施例に係る遠隔操作システムの基本的な構成を示しており、該遠隔操作システムは、主に飛行体1と基地側に配置されたリモートコントローラ2、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)3、ジョイスティック等を備えた操作部4等から構成され、前記飛行体1は、例えば小型飛行体としてのヘリコプタであり、該ヘリコプタ1は前記リモートコントローラ2により遠隔操作可能となっている。
【0031】
前記ヘリコプタ1は、機体5、該機体5に設けられた所要数のプロペラ、例えば前後左右、計4組のプロペラ6,7,8,9を有し、該プロペラ6,7,8,9はそれぞれ個別に第1飛行モータ11、第2飛行モータ12、第3飛行モータ13、第4飛行モータ14に連結されている。又、後述する様に第1飛行モータ11、第2飛行モータ12、第3飛行モータ13、第4飛行モータ14は独立して駆動が制御される様になっている。尚、前記プロペラ6,7,8,9及び前記第1飛行モータ11、第2飛行モータ12、第3飛行モータ13、第4飛行モータ14等は飛行体の移動手段を構成する。
【0032】
前記機体5の上面には、ステレオカメラ15が設けられ、該ステレオカメラ15は左右2台のデジタルカメラ16a,16bから構成され、該デジタルカメラ16a,16bの光軸の間隔は所定の値、好ましくは人の目の間隔、即ち視差に相当する値に設定される。
【0033】
前記ステレオカメラ15はピッチ(PITCH)、ロール(ROLL)、ヨウ(YAW)の3軸に回転可能に支持され、各軸について前記ステレオカメラ15を回転させる為のピッチモータ17、ロールモータ18、ヨウモータ19が設けられている。前記ピッチモータ17、ロールモータ18、ヨウモータ19は、回転角が制御可能なモータ、例えばサーボモータ、ステッピングモータが用いられる。前記ピッチモータ17、ロールモータ18、ヨウモータ19は前記ステレオカメラ15の撮像方向(視野の方向)を変更するカメラ駆動部を構成する。
【0034】
又、前記機体5の上面には、該機体5の位置を測定する為の移動体位置検出部であるGPS装置21が設けられている。該GPS装置21は、地心座標系(絶対座標系)の座標(位置)を測定する。
【0035】
前記機体5の所要位置に、例えば機体5の内部に該機体5の姿勢を検出するジャイロユニット22、センサ類23(例えば方位センサ、高度センサ、速度センサ、電池残量センサ)が設けられている。
【0036】
前記機体5の内部には、制御装置25が設けられている。図2に示される様に、該制御装置25は主に第1演算制御部26、第1記憶部27、飛行制御部28、モータコントローラ29、カメラ制御部31、撮像コントローラ32、カメラ姿勢コントローラ33、第1通信部34、電源部(図示せず)から構成されている。前記飛行制御部28は前記モータコントローラ29を介して前記第1飛行モータ11、第2飛行モータ12、第3飛行モータ13、第4飛行モータ14の駆動を制御する。又、前記カメラ制御部31は前記撮像コントローラ32を介して前記ステレオカメラ15の撮像状態を制御し、又前記カメラ姿勢コントローラ33を介して前記ピッチモータ17、ロールモータ18、ヨウモータ19を駆動制御し、前記ステレオカメラ15の撮像方向を制御する。
【0037】
尚、前記第1飛行モータ11、第2飛行モータ12、第3飛行モータ13、第4飛行モータ14の駆動を制御することで、前記ヘリコプタ1の姿勢、向きを自在に制御できるので、前記カメラ駆動部を省略し、前記ステレオカメラ15を前記機体5に固定して設け、前記第1飛行モータ11、第2飛行モータ12、第3飛行モータ13、第4飛行モータ14の制御で、前記ステレオカメラ15の撮像方向を変更及び制御してもよい。この場合、航行手段が前記カメラ駆動部を兼用する。
【0038】
前記第1通信部34は、前記ステレオカメラ15で撮影した画像データを前記リモートコントローラ2に送信し、又該リモートコントローラ2から飛行方向、飛行高度、飛行速度等飛行に関する指令(コマンド)を受信し、又ステレオカメラ15の撮像方向等撮影に関する指令(コマンド)を受信する。
【0039】
前記第1記憶部27は、前記ステレオカメラ15が撮影した画像データの信号処理を実行する画像処理プログラム、前記第1飛行モータ11、第2飛行モータ12、第3飛行モータ13、第4飛行モータ14の駆動を制御する為の飛行制御プログラム、前記ステレオカメラ15の撮像状態を制御する撮像制御プログラム、前記ピッチモータ17、ロールモータ18、ヨウモータ19の駆動を制御して前記ステレオカメラ15の向きを制御するカメラ姿勢制御プログラム等のプログラムが格納されていると共に、前記ステレオカメラ15で撮影した画像データが格納される様になっている。又、前記第1記憶部27には遠隔操作に関する情報、例えば目的地への進行方向、誘導ルート等が格納される。尚、遠隔操作に関する情報は、前記リモートコントローラ2の第2記憶部38(後述)に格納されてもよい。
【0040】
前記ジャイロユニット22からの信号は前記飛行制御部28に入力され、該飛行制御部28は前記ジャイロユニット22からの信号に基づき前記モータコントローラ29を介して前記第1飛行モータ11、第2飛行モータ12、第3飛行モータ13、第4飛行モータ14を制御し、前記機体5の飛行姿勢が制御される。又、前記センサ類23からの信号は、前記第1演算制御部26及び前記飛行制御部28に入力され、該飛行制御部28により前記機体5の飛行方向、飛行高度、飛行速度等が制御される。
【0041】
又、前記カメラ制御部31には、前記ジャイロユニット22から前記機体5の姿勢を検出した機体姿勢信号が入力され、該機体姿勢信号を基に前記カメラ姿勢コントローラ33を介して前記ステレオカメラ15の姿勢を基準姿勢、例えば、前記ステレオカメラ15の光軸を水平に維持できる様になっている。更に、基準姿勢に対して、前記ステレオカメラ15の撮像方向を所定の向きに設定できる様になっている。即ち、前記カメラ制御部31は、前記機体5が傾いた場合に、前記ステレオカメラ15の撮像方向を前記機体5の傾き分だけ補正をする。
【0042】
前記リモートコントローラ2は、第2演算制御部36、第2通信部37、第2記憶部38、電源部(図示せず)等から構成されており、前記第2演算制御部36は更に、画像処理部39、コマンド作成部40を有している。又、前記リモートコントローラ2には前記ヘッドマウントディスプレイ3が有線、無線等任意な方法で電気的に接続され、更に操作部4が電気的に接続されている。
【0043】
前記第2記憶部38には、前記制御装置25から送信される画像データが格納されると共に前記ヘッドマウントディスプレイ3に背景画像を表示させる為の背景画像データが格納され、又、画像データを映像信号に信号処理する画像処理プログラム、コマンド作成プログラム等が格納されている。
【0044】
ここで、背景画像は図3に示される様に、運転室、操縦室を想定して作成されたCG(Computer Graphics)画像であり、背景画像には運転室の窓51及び該窓51の下方に計器類の表示がされる。又、背景画像は前記デジタルカメラ16a,16bに対応する左右2つの画像からなり、操作者による立体視の際に視覚的に視認される奥行きに関する位置情報を含み、3Dディスプレイ41に表示する際に立体視される様になっており、前記デジタルカメラ16a,16bで撮影された映像と合成され、表示された状態で、前記デジタルカメラ16a,16bで撮影された映像に対して相対的な奥行き関係を持って視認される様になっている。
【0045】
前記背景画像に含まれる計器類としては、例えば高度計52、速度計53、方位計54(飛行体1の向きを表示)、電池残量計55、位置(地上座標値)表示計56等である。又、前記窓51には、前記機体5の正面を表示する。例えば、前記窓51の中央に窓枠を示す、或は矢印等のマークを表示する等である。又、前記方位計54は、例えば、東西南北の表示と共に前記ヘリコプタ1の向きを表す指針を表示する。又、前記位置表示計56は、飛行する区域の地図を表示すると共にこの地図上に、前記GPS装置21で測定された前記ヘリコプタ1の位置を示すものであり、ヘリコプタ1は光点、○等の点で示され、或はヘリコプタ1を模した図形で表される。
【0046】
前記制御装置25は前記第1通信部34を介して画像データを送信し、前記リモートコントローラ2は前記第2通信部37を介して画像データを受信し、画像データは前記第2演算制御部36を介し、前記第2記憶部38に入力され、該第2記憶部38に一時的に格納される。格納された画像データは、前記画像処理部39で映像信号に信号処理され、前記ヘッドマウントディスプレイ3に送出される。又、前記画像処理部39は背景画像データを映像信号として前記ヘッドマウントディスプレイ3に送出し、前記画像データと前記背景データが合成され表示される様に映像信号を処理する。
【0047】
前記コマンド作成部40は、モーションセンサ42(後述)からの信号に基づき前記ステレオカメラ15のカメラ制御コマンドを作成し、又前記操作部4からの信号に基づき飛行制御コマンドを作成し、前記カメラ制御コマンド及び前記飛行制御コマンドは、前記第2通信部37により前記制御装置25に送信される。
【0048】
前記ヘッドマウントディスプレイ3は、立体画像を表示する表示部である前記3Dディスプレイ41と、前記ヘッドマウントディスプレイ3の動き、向きを検出する姿勢検出部であるモーションセンサ42とを具備し、操作者が眼鏡を装着する様に装着される。
【0049】
前記3Dディスプレイ41は、操作者の両眼に対応する左右の表示器で構成され、該表示器には前記デジタルカメラ16a,16bで撮影された視差を有する画像がそれぞれ表示され、操作者は左右の表示器に表示された映像を、左右の目で個別に見ることで立体画像として認識することができる。又、前記3Dディスプレイ41には背景画像に前記ステレオカメラ15で撮影された画像が合成されて表示され、該ステレオカメラ15で撮影された画像は、恰も前記窓51を通して撮影された様な表示となっている。
【0050】
前記モーションセンサ42は、前記ヘッドマウントディスプレイ3の動き、向き、即ち操作者の頭(又は顔)の動き、向きを検知して、モーション信号を出力し、該モーション信号は前記第2演算制御部36のコマンド作成部40に入力される。
【0051】
該コマンド作成部40は前記モーション信号に基づきカメラ制御コマンドを作成し、該カメラ制御コマンドは、操作者の顔の動き、向きに同期し、操作者の視線と前記ステレオカメラ15の光軸とが合致する様、前記ステレオカメラ15の姿勢を制御するコマンドとなっている。
【0052】
前記操作部4は、ジョイスティック等の操作部材を有し、該操作部材を操作することで、操作部材の動きに対応し、前記ヘリコプタ1の飛行方向、飛行速度、飛行高度等、飛行に関する信号を出力することができる様になっている。前記飛行に関する信号は、前記コマンド作成部40に入力され、該コマンド作成部40に於いて、前記飛行に関する信号に基づき、前記第1飛行モータ11、第2飛行モータ12、第3飛行モータ13、第4飛行モータ14を制御する飛行制御コマンドが作成され、該飛行制御コマンドは前記第2通信部37により前記制御装置25に送信される。
【0053】
図4を参照して、第1の実施例の作用について説明する。図4は、映像に関する信号の流れを示している。
【0054】
前記リモートコントローラ2の前記操作部4を操作し、前記ヘリコプタ1を飛行させる。
【0055】
前記操作部4からの信号に基づき、前記コマンド作成部40で飛行制御コマンドが作成され、前記第2通信部37、前記第1通信部34を介して前記制御装置25に受信され、前記第1演算制御部26は前記飛行制御コマンドに基づき前記飛行制御部28、前記モータコントローラ29を介し、前記ヘリコプタ1が飛行制御コマンドに対応する飛行方向、飛行速度、飛行高度等となる様に前記第1飛行モータ11、第2飛行モータ12、第3飛行モータ13、第4飛行モータ14を制御する。
【0056】
又、前記ヘリコプタ1の飛行状態は、前記センサ類23によって検出され、該センサ類23からの信号は、前記第1通信部34から送信され、前記第2通信部37を介してリモートコントローラ2に受信される。
【0057】
前記第2通信部37で受信され、前記センサ類23の検出結果は、前記第2記憶部38に記憶され、後述する様に、操作者の視線が背景画像の計器類に向いた状態で前記高度計52、前記速度計53、前記方位計54、前記電池残量計55、前記位置表示計56に表示される。
【0058】
飛行中、前記ステレオカメラ15で撮影された映像が、前記第1通信部34を介して前記リモートコントローラ2に送信され、該リモートコントローラ2の第2通信部37によって受信され、前記画像処理部39で前記表示視野57の画像として信号処理される。
【0059】
又、前記画像処理部39は前記背景画像と前記表示視野57の画像とを合成し、更に前記センサ類23の検出結果を画像に変換し、背景画像中の前記高度計52、前記速度計53、前記方位計54、前記電池残量計55、前記位置表示計56に合成して表示する。
【0060】
又、前記画像処理部39は、3Dディスプレイ41の左右の表示部に視差を有する様に表示させ、立体画像として認識できる様にする。
【0061】
操作者は、前記3Dディスプレイ41に表示された立体画像に基づき、前記ヘリコプタ1を操縦する。立体画像が表示される範囲は、前記ステレオカメラ15の視野(画角)と一致しており、図3中破線で示す矩形の部分(表示視野57)である。又、前記背景画像は、前記表示視野57より充分大きい画角を有する様に作成されており、例えば運転中、視線を動かし得る範囲であり、又前記窓51の大きさは、運転する場合に必要な前方の情報を得るに充分な視界(広さ)を有している。
【0062】
又、背景画像の中心(光軸)は、前記ヘリコプタ1の正面の方向と合致しており、前記表示視野57の中心(光軸)は、操作者の顔の正面の方向と一致している。従って、操作者が前記ヘリコプタ1の姿勢、向きを変更することなく、顔(頭)を動かすと、顔の動きはモーションセンサによって検出され、モーションセンサの信号は、前記コマンド作成部40によって前記ステレオカメラ15の姿勢制御のコマンドに変換され、前記制御装置25に送信される。前記第1通信部34を介して受信されたコマンドに基づき、前記カメラ制御部31が前記ステレオカメラ15の姿勢を制御する。従って、顔の動きに追従して前記表示視野57が前記背景画像の範囲内を移動する。尚、理解を容易にする為、図3では、背景画像全体を示しているが、前記3Dディスプレイ41に表示されるのは、前記表示視野57部分だけである。
【0063】
尚、前記機体5が傾いた場合、モーションセンサが発する操作者の視線と前記ステレオカメラ15の撮像方向との間でずれが生じる。上記した様に、前記カメラ制御部31は、前記ジャイロユニット22からの信号で前記ステレオカメラ15の基準位置からのずれを修正するので、前記モーションセンサ42からの信号に対して、前記機体5の傾き分を補正して、前記ステレオカメラ15の姿勢を制御する。
【0064】
又、顔(頭)を動かすことなく前記ヘリコプタ1の姿勢、向きを変更すると、前記表示視野57と背景画像との相対変位はなく、即ち、前記表示視野57の位置は、背景画像に対して固定しており、前記ステレオカメラ15で撮影した画像が背景画像に対して移動する。この場合も、前記カメラ制御部31は、前記機体5が傾いた場合、傾きを補正する様、前記ステレオカメラ15の姿勢を制御する。
【0065】
従って、頭を下に向ければ、前記表示視野57は背景画像に対して下方に移動し、前記表示視野57の中に前記高度計52、前記速度計53、前記方位計54、前記電池残量計55、前記位置表示計56が現れる。前記高度計52、前記速度計53、前記方位計54、前記電池残量計55、前記位置表示計56には、前記GPS装置21で測定された位置が表示され、前記センサ類23で検出した結果が表示され、前記ヘリコプタ1の飛行状態を操縦しつつ計器の内容で確認でき、直ちに操縦に反映させることができる。
【0066】
又、前記3Dディスプレイ41には、前記第1記憶部27に格納された遠隔操作に関する情報、即ち飛行すべき方向、飛行ルートが表示される。尚、遠隔操作に関する情報は、常時表示させてもよく、或は前記操作部4の操作で、操作者が適宜表示させてもよい。
【0067】
従って、前記ヘリコプタ1の操縦室で操縦する様な臨場感が得られ、更に前記ヘリコプタ1の飛行状態を把握でき、直感的な操作が行え、或は障害物への的確な対応が行える。
【0068】
次に、既知の関係にある前記デジタルカメラ16a,16bで同時に2つの画像が得られるので、得られた2つの画像から写真測量、即ち前方の距離測定を行うことができる。又、前記ヘリコプタ1から所定の距離離れた位置を画像上に設定することができる。
【0069】
障害物に対して安全に飛行できる安全飛行間隔を設定し、安全飛行間隔を仮想ライン、或は仮想壁を立体視できる様に前記3Dディスプレイ41に表示しておけば、操作者は障害物がある空間を飛行する際に、安全飛行間隔以上に障害物に接近しない様に飛行させることができる。又、前記第1演算制御部26又は前記第2演算制御部36に於いて、飛行方向に障害物が存在した場合に、障害物を被測定物として写真測定を行い、障害物と前記ヘリコプタ1との距離をリアルタイムで測定し、測定結果が前記安全飛行間隔より近くなったら、警告音を発する、或は表示を点滅させる等の警告をする様にしてもよい。
【0070】
次に、図5を参照して第2の実施例を説明する。図5中、図4中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0071】
第2の実施例は、遠隔操作の対象を小型走行体、例えばリモコンカー61としたものである。
【0072】
第2の実施例に於いても、前記リモコンカー61の所要位置、例えば天井に、ステレオカメラ15が設けられ、該ステレオカメラ15は2つのデジタルカメラ16a,16bを有し、前記ステレオカメラ15はピッチ(PITCH)、ロール(ROLL)、ヨウ(YAW)の3軸に回転可能に支持され、各軸について前記ステレオカメラ15の回転が制御可能となっている。
【0073】
リモコンカー61の場合、該リモコンカー61を走行させる為の移動手段は車輪及び車輪を回転させる為の走行モータであり、走行の制御は、車輪の回転速度(走行速度)の制御、及びハンドル操作(走行方向)となる。又、リモコンカー61の走行状態を検出するセンサとしては、速度センサ、電池の消耗状態を検知する電池残量センサが設けられる。
【0074】
遠隔操作者は、ヘッドマウントディスプレイ3を装着し、該ヘッドマウントディスプレイ3にはモーションセンサが設けられ、該モーションセンサの動き、即ち遠隔操作者の頭部の動きに追従して、前記ステレオカメラ15の方向が遠隔操作者の視線の方向と合致する様制御される。
【0075】
前記ヘッドマウントディスプレイ3には前記ステレオカメラ15が撮影した画像が表示されると共に運転室を模した背景画像が合成され表示される。背景画像には、運転室の風景に合わせて速度計が表示される。遠隔操作者は前記リモコンカー61の運転室からの目線で走行方向、或は走行方向の周囲の立体映像を視認しつつ遠隔操作が行え、更に運転室内の速度計を視認しつつ、速度調整を合わせて行うことができる。従って、前記リモコンカー61に乗車している様な臨場感が体験でき、更に直感的な判断で操作を行うことができる。
【0076】
尚、上記実施例では画像をヘッドマウントディスプレイ3に表示させたが、画像を3D表示可能な通常のディスプレイに表示し、操作者は3D眼鏡を掛けて、立体画像を視認する様にしてもよい。この場合、モーションセンサ42は単独で操作者の頭部に装着され、操作者の視線の方向を検知する。
【0077】
又、上記実施例では、移動体に1組のステレオカメラ15を設けたが、複数組のステレオカメラ15を設け、各ステレオカメラ15に対応した操作者がそれぞれヘッドマウントディスプレイ3を装着し、各自がステレオカメラ15で得られる立体画像に基づき、個別の作業を行ってもよい。例えば、一人は移動体の操縦に専念し、もう一人は現況の調査観察或は撮影作業、或は測量に専念する等である。
【符号の説明】
【0078】
1 ヘリコプタ
2 リモートコントローラ
3 ヘッドマウントディスプレイ
4 操作部
5 機体
15 ステレオカメラ
21 GPS装置
23 センサ類
25 制御装置
26 第1演算制御部
27 第1記憶部
28 飛行制御部
31 カメラ制御部
34 第1通信部
36 第2演算制御部
37 第2通信部
38 第2記憶部
39 画像処理部
40 コマンド作成部
41 3Dディスプレイ
42 モーションセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と、該移動体を遠隔操作するリモートコントローラと、前記移動体の運転室又は操縦室を模した背景画像を格納した記憶部とを有する遠隔操作システムであって、前記移動体は、ステレオカメラと、該ステレオカメラの撮像方向を制御する駆動部と、少なくとも前記ステレオカメラにより撮影された映像を含む情報を通信する第1通信部とを有し、前記リモートコントローラは、前記第1通信部との間で通信を行う第2通信部と、前記移動体を制御する制御部と、前記ステレオカメラで撮影された映像の少なくとも一部及び前記背景画像とを合成して立体視可能に表示する表示部とを有することを特徴とする遠隔操作システム。
【請求項2】
操作者の視線方向を検出する姿勢検出部を有し、前記駆動部は前記姿勢検出部の検出結果に基づいて、前記ステレオカメラの撮像方向を変更する請求項1の遠隔操作システム。
【請求項3】
前記移動体は、該移動体に対して前記ステレオカメラの撮像方向を変更するカメラ駆動部を有し、前記姿勢検出部の検出結果に基づいて前記カメラ駆動部を制御することにより撮像方向が変更される請求項1又は請求項2の遠隔操作システム。
【請求項4】
前記移動体が該移動体を移動させる為の移動手段を有し、該移動手段は前記姿勢検出部の検出結果に基づいて前記移動体の姿勢を制御することにより前記ステレオカメラの撮像方向が変更される請求項1又は請求項2の遠隔操作システム。
【請求項5】
前記表示部は、ヘッドマウントディスプレイであり、前記姿勢検出部はヘッドマウントディスプレイに設けられた請求項1〜請求項3のいずれかの遠隔操作システム。
【請求項6】
前記記憶部に記憶された背景画像は、操作者による立体視の際に視覚的に視認される奥行きに関する位置情報を含み、前記表示部に背景画像が表示された場合に前記ステレオカメラで撮影された映像に対して相対的な奥行き関係を持って視認される請求項1又は請求項5の遠隔操作システム。
【請求項7】
前記移動体は、該移動体の位置情報を取得する移動体位置検出部を有し、前記記憶部には遠隔操作に関する情報が格納され、前記移動体位置検出部の出力に基づいて前記遠隔操作に関する情報が前記表示部に表示される請求項1〜請求項6のいずれかの遠隔操作システム。
【請求項8】
前記ステレオカメラにより撮影された映像により被撮影物体の少なくとも一部に関してステレオ計測を行う演算部を有し、該演算部により計測された被測定物体と前記ステレオカメラ又は移動体との相対的な位置関係に対応した情報を前記表示部に立体視可能に表示する請求項1〜請求項7のいずれかの遠隔操作システム。
【請求項9】
前記駆動部は、前記移動体が傾斜した場合に、前記ステレオカメラの撮像方向を機体の傾斜分補正する請求項1〜請求項8のいずれかの遠隔操作システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−38622(P2013−38622A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173557(P2011−173557)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】