説明

適応三次元走査

本発明は適応三次元走査に関し、物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを生成する方法及びシステムを用いることにより、物理的なオブジェクトの完全な形状被覆率を得るための走査シーケンスが物理的なオブジェクトのために自動的に且つ具体的に生成される。その方法は、以下のステップを含む:走査システムを準備する。走査システムは、スキャナとスキャナに接続可能な及び/又はスキャナに組み込まれたコンピュータと、を有する。コンピュータはスキャナの仮想モデルを含む;物理的なオブジェクトの形状情報をコンピュータに入力し、コンピュータにより仮想モデルと形状情報に基づいて視感度関数を生成する。視感度関数は、少なくとも一つの所定の走査シーケンスにより、物理的なオブジェクトの関心のある領域の被覆率を評価することが可能である;視感度関数の評価に基づいて、少なくとも一つの走査シーケンスを確立し、少なくとも一つの走査シーケンスにより物理的なオブジェクトの走査を実行し、物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルの生成に関する。
【背景技術】
【0002】
基本的に同じように機能する構造光三次元走査システムが、従来技術に記述されている。それらは基本的に図1に示すように機能し、レーザ点、レーザ線、白又はカラーの細い線などの単色又は多くのスペクトル光パターン101が、光源102からオブジェクト103に投射される。投射された光は反射光104となり、1以上のカメラ105は投影画像を取得する。光パターンは画像内で検出され、三角測量又は立体写真などの十分に確立された投影形状は三次元座標を得るのに用いられる。例えば、レーザ光線は、線を形成するオブジェクトに投射され、三次元座標はその個々の線に基づいて再現される。スキャナは、1以上の光源/光パターンと1以上のカメラを含んでも良い。
【0003】
次のステップにおいて、互いに関連するオブジェクトとスキャナを、例えばオブジェクト103の回転移動106又は直線移動107により動かす。この方法で、スキャナはオブジェクトの新たな部分の面、例えば、線レーザの面上の新たな線を再現することができる。従来のスキャナは、所定の走査シーケンスで手動でプログラミングされた移動を行うか、又は単にオブジェクト/スキャナが手動で動かされる。
【0004】
構造光三次元走査に引き継がれた問題は、個々の点の三次元を再現できるようにするためには、カメラと光パターンの両方が同時に各面の点を「見る」必要があるということである。これは、最後の走査で、面の穴として現れる「隠れた(occluded)」又は覆われていない領域、すなわち、面の測定情報がない領域をもたらす。走査において、ほとんどの場合、穴は視覚と適用の両方の観点で望ましくない又は受け入れられない。
【0005】
図2に、その問題が図示されている。図2においては、おもちゃの熊の最初の走査の点の集合(a)が示されている。最初の走査は、所定の走査シーケンスによる二回の回転走査により、実行される。表面モデル(b)が作られるときに、覆われていない領域が例えば204の穴として現れる。それから、適応走査が、追加の走査でその穴を走査する走査シーケンスを作るのに用いられる。実際は、二つの穴205は、既に適応走査されて新しい点により覆われている。第1の適応走査の後の最初の走査と適応走査の併合結果の表面モデル(c)において、一つの穴206がまだ存在している。それから、第2の適応走査が実行され、完全被覆率(full coverage)(d)が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術において、隠れている問題を、複雑な走査シーケンスの手動の定義とオブジェクトのスキャナへの配置の仕方に対する制約とにより解決しようと、試みられている。しかしながら、単に単純な形状や適度な形状変化があるオブジェクトを覆うのにさえ、長い時間を要する走査シーケンスが必要である。種々の形状を持つオブジェクトの場合、この手段は完全被覆率を保証しない。別の問題は、走査シーケンスの生成が非常に扱いにくく、専門知識を必要とすることである。
【0007】
覆われていない領域についての問題を解決するために、いくつかの市販のスキャナが穴の周りの面情報を用いた走査において、穴を人為的に埋めている。穴を人為的に埋めることは、スプライン曲面や二次曲面などのパラメトリック曲面を適応させることにより、実行されるかもしれない。穴を人為的に埋めることは、視覚的に良い結果を与えるかもしれないが、精度が非常に低く、多くの応用には受け入れられない。
【0008】
本発明は、完全な形状被覆率を得るための走査シーケンスが物理的なオブジェクトのために自動的に且つ具体的に生成される、適応三次元走査に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを生成する方法及びシステムに関し、その方法は、下記のステップを有する:
a)走査システムを準備し、上記走査システムは、
i.スキャナと
ii.スキャナに接続可能な及び/又はスキャナに組み込まれたコンピュータと、
を有し、コンピュータはスキャナの仮想モデルを含み、
b)物理的なオブジェクトの形状情報をコンピュータに入力し、
c)コンピュータにより、仮想モデルと形状情報に基づいて視感度関数を生成し、視感度関数は、少なくとも一つの所定の走査シーケンスにより、物理的なオブジェクトの関心のある領域の被覆率を評価することが可能であり、
d)視感度関数の評価に基づいて、少なくとも一つの走査シーケンスを確立し、
e)少なくとも一つの走査シーケンスにより、物理的なオブジェクトの走査を実行し、
f)少なくとも1回、ステップd)及びe)を任意に繰り返し、
g)物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを得る。
【0010】
他の観点による本発明は、物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを生成するデータ処理システムに関する。データ処理システムは、入力装置、中央演算処理装置、記憶装置、及び表示装置を有し、上述した方法を実行させる命令シーケンスを示すデータを格納している。
【0011】
さらに他の観点による本発明は、上述した方法を実行させる命令シーケンスを含む、コンピュータソフトウェア製品に関する。
【0012】
四番目の観点による本発明は、上述した方法を実行させる命令シーケンスを含む、集積回路製品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、物理的なオブジェクトの三次元走査の分野、すなわち、物理的なオブジェクトの形状と任意のテクスチャ、面と材料の特性に詳細に似ている3次元コンピュータモデルの生成に関する。本発明として三次元光学式構造光スキャナが記述されるが、本発明は、シルエット、構造及び移動、シェーディングの形状、テクスチャの形状又はカラーキーイングに基づく、タッチプローブスキャナ、レーザレンジスキャナ、MR、MRI、CT、X線、ウルトラサウンド、レンジカメラ、飛行時間(time-of-flight)センサ又は光学スキャナなどの多くの他のタイプの三次元スキャナに適用できる。
【0014】
走査シーケンスは、移動、使用中のカメラ、使用中の光源、使用中の光パターン、及び他の関連する設定を含む実際の走査を定義する。走査シーケンスは、動きのない1回の走査から長く複雑な移動シーケンスを備えた走査まで、何でも良い。
【0015】
簡単にするため、オブジェクトの移動のみが下記の本文に記載される。しかしながら、システムの少なくとも一つの構成要素及び/又はオブジェクトが動かされる、例えばオブジェクト又はスキャナのいずれか一方が動かされるなど、相対移動として解釈されるべきである。これは、たとえスキャナが物理的に動かされていなくても、光パターンの移動と好ましくは反射鏡又はプリズムを用いたカメラ視野の移動とを含む。
【0016】
構造光三次元走査システムは、スキャナと、スキャナに接続可能な及び/又はスキャナに組み込まれたコンピュータとを含む。好ましくは、スキャナは、1以上の光源102、1以上のカメラ105、及びカメラと光源に関連してオブジェクトを動かすことが可能な移動システム106−107を含む。移動システムは、図1に示すように一つの回転移動106及び一つの直線移動107に必ずしも限定されず、好ましくは、CNC機械やロボットのように多くの自由度を備えた多軸システムであっても良いことは留意すべきである。カメラ、光源、移動システムは、各構成要素と通信し制御するコンピュータ109に全て接続される(108)。コンピュータは、スキャナと別の装置であっても良いし、スキャナに組み込まれていても良い。
【0017】
本発明は、完全な形状被覆率を得るための走査シーケンスが自動的に生成される、適応三次元走査である。本発明の他の実施形態において、シーケンスファイルは、テクスチャ、面材料パラメータ、光沢面、及び関連する他の特徴の最適な走査のために自動的に生成される。これらの特徴を走査することに関し、被覆率は広く解釈されるべきであることは留意すべきである。
【0018】
ステップb)の形状情報は、物理的なオブジェクトの形状のどんな情報であっても良い。例えば、1回以上の最初の走査から生成される形状情報などの直接的な形状情報であっても良い。
【0019】
これに代えて又はさらに、テンプレートの形状、箱と円柱又はそれらの組み合わせのように簡単化された又は近似化された形状、平均的な形状、CADモデル、又は1以上の二次元画像から得られる形式の情報などの間接的な形状情報であっても良い。形状情報は、三次元情報であることを必要とせず、一次元、二次元、四次元又は五次元であっても良いことは留意すべきである。形状情報は、構造光スキャナ以外の他のスキャナ、好ましくはタッチプローブスキャナ、MR、MRI、CT、X線又はウルトラサウンドなどから生成されても良い。例えば、最初の走査結果を他の形状情報、好ましくはCADモデル、テンプレートの形状又は平均的な形状に記録することにより、異なる形状情報が融合されても良い。一つの実施形態において、形状情報は、直接的な形状情報と間接的な形状情報の組み合わせである。
【0020】
一つの実施形態において、物理的なオブジェクトの形状情報は点の集合であり、例えば、物理的なオブジェクトの形状情報は面を点の集合に適合することにより得られる。この適合は、例えば三角測量として実行されるように、適した方法により行われる。
【0021】
形状情報は、好ましくは物理的なオブジェクトに位置合わせされる。例えば、形状情報とオブジェクトは、オブジェクトをスキャナに固定することにより、位置が合わされる。他の実施形態において、形状情報とオブジェクトは、形状情報に位置合わせされた最初の走査により、位置が合わされる。
【0022】
適応三次元走査は、任意のオブジェクトの走査を真に一つのボタンで実現する可能性を容易にする。すなわち、ユーザは、スキャナに任意のオブジェクトを挿入し、一つのボタンを押すだけである。それから、全体の走査が最適な方法で自動的に実行され、完全被覆率走査を出力する。複雑な走査シーケンスの生成、走査パラメータの切り替え、又は異なる走査の手動による縫い合わせ/併合のための専門知識を必要としない。この目標の達成に近いスキャナは従来にない。図3に、本発明の一つの実施形態を示す。図3において、好ましくは、直線走査、回転走査、又は多軸の同時移動の組み合わせを用いた最初の操作(300)により、形状の取得が実行される。直線走査は、オブジェクトの比較的直線の移動又はオブジェクトを覆う光パターンの線形掃引と考えられる。その結果として起こる走査は覆われていない領域のために分析されて、関心のあるこれらの領域は、移動、光パターン、光源及びカメラの最適な組み合わせを用いて自動的に再走査される。新しい適応走査は、最初の走査結果と併合され、完全被覆率走査を形成しても良い。
【0023】
「完全被覆率」という用語は、特定の三次元コンピュータモデルに関して定義された被覆の度合いを意味する。それ故、影響が小さいサイズ又は局地の穴であれば、全ての隠れた穴が覆われなくても良い。それは、走査時間が限定因子であるということを予め決定するのに関連していても良く、走査が所定時間の間走っているときに「完全被覆率」が得られる。よって、完全被覆率の停止基準は、全ての穴の絶対被覆率と異なっていても良い。停止基準は、一定の閾値のもとで穴が無視されるような基準であっても良い。一定数の繰り返しのみが許され、最大の走査時間又は一定の全体の被覆率が必要なだけである。
【0024】
適応走査の第1のステップは、最初の走査で適切に覆われていない領域がどの領域かを決定しても良い。好ましくは、これは、例えば、点集合の三角測量又はスプライン曲面などのパラメトリック曲面の適合により、面モデルを生成することにより(301)、実行されても良い。もし、面モデルが走査の後処理で生成されることになるなら、同じ面生成アルゴリズムを適用することが有利である。面モデルが存在するとき、覆われていない領域は面の穴に相当するので、完全被覆率が直接求められる(302)。覆われていない領域は、点集合、ボクセルデータ又は未加工データから直接決定され得る。適用に従って、オブジェクトの底などの穴は、無視されても良い。完全被覆率停止基準302を変更して、上述した他の重要なことを表示しても良い。
【0025】
関心のある各領域の最適な被覆率を確立する移動、光パターン、光源及びカメラの組み合わせを適応して決定することは、適応走査の重要なステップである。この実施形態において、関心のある領域は覆われていない領域に対応する。第1のステップは、視感度関数を、すなわち、与えられた形状情報とカメラ特有の構成、光源/光パターン、及びオブジェクトの移動、を構築することであり、覆われていない領域の現行の視感度を求めることができる。視感度を求めることができるようにするために、物理的なスキャナを模写する仮想スキャナモデルは、好ましくは、カメラモデルとパラメータ、光源/パターンモデル及びパラメータ、移動モデル及びパラメータ、移動値及び他の関連するパラメータを含むように、生成される。カメラモデルは、例えば、カメラの位置及び方向などのパラメータを備えた標準の投影モデルであっても良い。仮想スキャナの多くのパラメータはスキャナに特有であり、較正手順により得られる。好ましくは、これらのパラメータは、仮想スキャナモデルに含まれるべきである。
【0026】
スキャナの仮想モデル、すなわち、仮想スキャナモデルは、視感度関数を生成するための基準の一部を形成する。仮想スキャナ関数は、三次元コンピュータモデルの各生成に対応して生成されても良いし、又は走査システムのために変更されるなら、走査システムにおいて一度生成されて、作り直されるだけであっても良い。仮想スキャナモデルは物理的なオブジェクトの形状情報がコンピュータに入力される前、後、又は同時に生成されても良いが、仮想スキャナモデルは、形状情報の入力前に生成されるのが好ましい。
【0027】
それから、仮想スキャナモデルは、オブジェクトの位置と方向の情報、カメラ設定、光源/光パターンの設定及び他の関連する特徴が与えられた覆われていない領域の視感度を求めるのに用いられる。視感度を求めるとき、覆われていない領域を覆うようにサンプリングされた数多くのサンプル点/セル/斑点の視感度を求めることが有利であっても良い。形状情報が不足している場合、サンプリング点は、例えば、補間や表面当てはめにより、近似されても良い。各サンプルポイントの視感度は、光源/光パターン及びカメラの両方の視感度の点の度合いから計算されても良い。多くのスキャナの構造のために、覆われていない領域を走査している間、オブジェクトが動かされる必要がある。この移動は、視感度を求めている間、考慮される必要がある。
【0028】
覆われていない領域を走査するための移動、光パターン、光源及びカメラの最適なシーケンスは、視感度を最大化するシーケンスとして見つけ出される。一つの実施形態において、ステップd)の少なくとも一つの走査シーケンスは、少なくとも二つの走査シーケンスの物理的なオブジェクトの被覆率をシミュレートし、最適な被覆率を有する走査シーケンスを選択することにより、確立される。
【0029】
ステップd)において確立された走査シーケンスは、好ましくは、物理的なオブジェクトの形状情報の隠れた穴の被覆率を得るために確立される。
【0030】
好ましくは、最適なシーケンスは、最適化される1以上の走査シーケンスの生成により(303)、見つけられる。視感度関数304の最適化は、最適化を移動パラメータに限定して、仮想スキャナモデルの自由パラメータに関して実行されても良いし、カメラと光源の異なる組み合わせが有利であっても良い。実際の最適化は、最急降下、共役勾配、Levenberg-Marquardt、ニュートン又は準ニュートン法、BFGS、焼き鈍し法又は一般的アルゴリズムなどの標準の最適化アルゴリズムにより、実行されても良い。物理軸限定などのパラメータの制約は、ハードによる制約又はソフトによる制約として追加されても良い。
【0031】
関数値が視感度よりも他の優先事項を反映するように、追加の要因が視感度関数に組み込まれても良い。たとえ視感度関数が純視感度より多くの要因を含んでいても、その関数は視感度と銘々されるであろう。追加の要因が、走査時間、多くのカメラの視感度、反射抑制、カメラ/光源の角度に対する表面法線、又はテクスチャの視感度であっても良い。高曲率面の覆われていない領域を分離して、視感度又は組み合わされた隣接する領域の走査を改善して、少ない走査時間を達成することが有利であっても良い。
【0032】
このように、一実施形態において、走査シーケンスは、カメラに対する角度面及び又は/レーザ角度を最良にするため、スキャナを最適化することにより確立される。他の実施形態において、走査シーケンスは、走査シーケンスの速度を最適化することにより、確立される。第3の実施形態において、走査シーケンスは、物理的なオブジェクトからの最小の反射のために最適化される。第4の実施形態において、走査シーケンスは、1以上のカメラの視感度のために最適化することにより、確立される。第4の実施形態において、走査シーケンスは、上述した2以上の要因のために最適化される。これにより、走査シーケンスは、スキャナの構成要素を少なくとも一つを他の構成要素の少なくとも一つに対して動かすことにより、生成されても良い。
【0033】
最適な走査シーケンスは、最大視感度を持つものとして選択される。多くのシーケンスが完全な視感度を達成するなら、最適な構成を選択するのに追加の要因を用いることができる。走査は、最適な走査シーケンスを用いて実行され(305)、その結果は先に実行された操作に併合される(305)。面モデルは、併合された走査のために生成され(301)、その結果の走査は完全被覆率のために調べられても良い(302)。もし、完全被覆率が組み合わされた走査において得られるなら、第2の適応走査が実行されても良い。覆われていない領域が、覆われていない領域の他の部分を隠す形状を含むことがありうるので、複雑な形状のために、多くの適応走査シーケンスが要求されて完全被覆率を得ても良い。
【0034】
物理的なオブジェクトの領域の被覆率は、適切な方法により評価されても良い。一つの実施形態において、物理的なオブジェクトの領域の被覆率は、物理的なオブジェクトの評価される領域と比較して、穴の領域の割合を求めることにより、評価される。他の実施形態において、物理的なオブジェクトの領域の被覆率は、穴の大きさを求めることにより評価される。さらに他の実施形態において、ステップd)とe)は、物理的なオブジェクトの被覆率が所定値以上になるまで繰り返される。被覆率を決定する異なる方法の組み合わせは、本発明により、例えば、第1に穴の大きさを求めて、第2に穴の領域の割合を求めることにより、想定されても良い。
【0035】
本発明による走査システムは、下記に例を示す適切な走査システムであっても良い。原則として、本発明の走査システムは、次の構成要素:少なくとも一つの光源、少なくとも一つのカメラ、及び物理的なオブジェクトを支持する少なくとも一つの支持部材、を含む。
【0036】
次の構成要素:光源、カメラ、及び支持部材のうち、少なくとも一つの構成要素が、他の構成要素の一つに対して移動可能であることが好ましく、本発明は、2以上の構成要素が少なくとも一つの他の構成要素に対して移動可能であるシステムを含む。よって、本発明の例は、支持部材が光源に対して移動可能であっても良く、及び/又は支持部材がカメラに対して移動可能であっても良く、好ましくは、物理的なオブジェクトを支持する支持部材が次の移動:直線移動、回転移動、又はそれらの組み合わせのうち、少なくとも一つの移動を実行可能である、システムを含む。
【0037】
本発明による走査システムは、少なくとも二つの光源を含む走査システム、及び/又は少なくとも二つのカメラを含む走査システムのように多くの構成要素を含んでも良い。
【0038】
図1に示すスキャナのための最も簡単な仮想スキャナモデルは、カメラモデル、光モデル、及び回転移動と直線移動のためのモデルを含む。仮想スキャナモデルを完成させるために、特定のスキャナのためのカメラ位置などの全てのスキャナモデルのパラメータのための測定値が入力される。形状情報を与えられると、視感度関数を求めることができる。スキャナの自由パラメータのみが回転移動と直線移動である。回転移動と直線移動の組み合わせは、最初の走査で穴を走査するのに用いられることができる。しかしながら、最大視感度のために穴を回転させる回転移動と領域を実際に操作するための直線移動を用いることは簡単で且つ有力な構成である。実際は、直線移動は回転角度と穴の大きさから導き出すことができるので、自由パラメータは回転に限定される。回転角度の最初の推測を備えた走査シーケンスが与えられると(303)、最適な走査シーケンスは、回転角度θに関する視感度関数f(...)を最適化することにより(304)、見つけられることができる。
【0039】
Maxθf(θ|形状情報、仮想スキャナモデル)
【0040】
最適化、θmax、及び対応するシーケンスファイルの出力は、最大の視感度を確実にする。実際の最適化は上述した最適化アルゴリズムの一つ、例えば好ましくは1度での急勾配サイズΔθを持つ数値勾配評価を用いた最急降下を用いて実行されても良い。次のステップは最適なシーケンスファイル305を使用して走査することである。その結果に起こる走査は、先の走査と併合されて(306)、面が生成され(301)、完全被覆率のために調べられる(302)。もし、完全被覆率がまだ得られないなら、新たな繰り返しが実行される。ここのどこかで述べたように、「完全被覆率」という用語は、特定の三次元コンピュータモデルに関する完全被覆率を意味し、物理的なオブジェクトの全体が覆われているということを必ずしも意味しない。
【0041】
図4に本発明の他の実施形態を示す。図4において、仮想スキャナモデルと視感度関数は、オブジェクトから直接走査されない間接形状情報に基づいて、第1の最初の走査を生成するのに(300)、用いられる。好ましくは、間接形状情報は、CADモデル400、平均的な又はテンプレートのモデルから得られる。この場合、関心のある領域は、完全なモデルに一致する。
【0042】
前の実施形態のように同じ仮想スキャナ構成において、1以上の走査シーケンス401が生成されて、自由パラメータは視感度関数に関連して最適化される(402)。実際の適用に基づいて、追加の要因は、サブスキャンの数、相互のサブスキャンの視感度及びスキャン時間などの視感度関数に追加されても良い。最適な走査シーケンスは、オブジェクト403の最初の走査のために使用される。
【0043】
走査を成功させるのに、オブジェクトの絶対位置を知る必要がある。好ましくは、絶対位置は、オブジェクトをスキャナに固定することにより得られるか、又は高速の所定の走査を実行することにより、より柔軟になって、形状モデルに登録される/位置が合わされる。必要に応じて、この後に第2の走査301−305を続けて、できる限りの穴を埋めても良い。
【0044】
走査を速める簡単な方法は、ユーザにオブジェクトの描写に関心のある領域を選択させることである。走査する前から形状情報を知っているなら、描写は好ましくはCADモデル、テンプレートモデル又は平均的なモデルであり、さもなければ描写は最初の走査の結果又はカメラによりキャプチャされる、より急速な2次元画像であっても良い。スキャナにより直接生成された二次元画像の抽出は、仮想スキャナモデルの使用により三次元の抽出に変更できることに留意すべきである。ユーザにより選択された関心のあるこの領域は、最適な走査シーケンスを決定するために直接用いられる。
【0045】
本発明の他の実施形態はオブジェクトのテクスチャをキャプチャするスキャナに利用でき、視感度関数の変形によりオブジェクトの全体のテクスチャの完全被覆率を確立することができる。オブジェクトの形状は、スキャナから生成されるか又は間接的に得られるモデルかのいずれかであり得る。平面形状走査との主な違いは、テクスチャの視感度などのテクスチャの特徴とカメラの角度に対する表面法線を組み込む視感度関数の構築である。視感度関数は、走査計画に基づいて、形状とテクスチャのキャプチャを同時に又は別々に組み込むように構築され得る。
【0046】
同様に、本発明は、主にオブジェクトの実際の外観の画像をレンダリングするために用いられる、電光、シェーディング及び材料パラメータをキャプチャするために利用できる。これは、視感度関数の構築を拡げることにより実行され、照明と材料パラメータの評価要因を組み込む。多くの異なる照明と材料モデルは、フォン・シェーディング、グローシェーディング、又はBRDFモデルとして存在する。しかしながら、視感度関数は、一般的に全ての異なるモデルと評価アルゴリズムに適用されるべきである。
【0047】
物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルは、ステップe)の走査により得られる結果の一つに基づいても良いし、物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルは、物理的なオブジェクトの他の情報から得られる情報とステップe)で実行される操作の結果の少なくとも一つとを組み合わせることにより、例えば、形状情報と走査結果の組み合わせにより、得られても良い。
【0048】
物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルは、ステップe)で実行される少なくとも二つの走査シーケンスから得られる情報を組み合わせることにより、及び少なくとも2回の走査から得られる情報を形状情報などの他の情報と任意に組み合わせることにより、得られても良い。
【0049】
本発明は、構造光スキャナに関して説明したけれども、本発明が面スキャナなどの他のタイプのスキャナのために適応走査を実行するのに利用できることは、当業者であれば明らかである。それ故、本発明は、シルエット、構造及び移動、シェーディングによる形状、テクスチャによる形状又はカラーキーイングに基づく、タッチプローブスキャナ、レーザレンジスキャナ、MR、MRI、CT、X線、ウルトラサウンド、レンジカメラ、飛行時間センサ又は光学スキャナなどを用いて実行されても良い。主な違いは、仮想スキャナモデルと視感度関数の異なる構築である。
【0050】
本発明は、どんな物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルの生成のために用いられても良く、適応走査は多数の三次元走査適用に関連する。物理的なオブジェクトは、規則的な又は不規則な面を備えていても良く、本発明は特に不規則な面を持つ物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを生成することに関連する。適用の例は、歯科印象、歯科の模型及び金型、靴型、宝石類、芸術、文化的及び歴史的工芸品、品質分析のための製造部品及び成型、耳印象、計測学、リバース・エンジニアリング、及びホームページのための現実的な三次元モデルの簡単な創作、コンピュータゲームと動画のアニメ、漫画及びコマーシャルの走査である。
【0051】
任意の解剖印象又は歯科印象の光学走査は、適応走査なしに実行できない応用である。歯科印象は歯の悪い印象であり、通常ある種のシリコン材料により作られる。任意の歯の印象の走査は非常に正確な観察位置と移動を必要とするため、歯の形状と生物学的変化に起因して、完全被覆率の達成は非常に難しい。走査が歯の修復のために利用されるとき、人為的な穴埋めを除外する適切な適合を得るために、非常に高精度が必要とされる。それ故、本発明は、歯、義歯、又は一本以上の歯や義歯の印象を走査するような歯科分野の応用に特に適している。
【0052】
図5に、両側の歯科印象の上側400と下側401の適応走査を示す。図5は、悪い歯の印象と咬合の両方を同時にキャプチャしている。両側の印象の完全な走査402を形成するために、上側と下側の印象の走査は、好ましくは自動的に記録されても良いが、2回の走査で一つ以上の対応する点403をユーザがマーキングすることにより、任意に支援されても良い。
【0053】
他の観点において、本発明は上述した方法を実行することが可能な走査システムに関する。よって、本発明は、物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを生成する走査システムに関し、少なくとも一つの光源、少なくとも一つのカメラ、及び物理的なオブジェクトを支持する少なくとも一つの支持部材とデータ処理システムとを含む。データ処理システムは、入力装置、中央演算処理装置、記憶装置、及び表示装置を有し、上述した方法を実行させる命令シーケンスを示すデータを格納している。走査システムの構成要素は、上述したように方法に関連する。
【0054】
第3の観点において、本発明は、物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを生成する、上述したデータ処理システムに関し、データ処理システムは、入力装置、中央演算処理装置、記憶装置、及び表示装置を有し、本発明の方法を実行させる命令シーケンスを示すデータを格納している。
【0055】
第4の実施形態において、本発明は、本発明の方法を実行させる命令シーケンスを含むコンピュータソフトウェア製品に関する。
【0056】
第5の実施形態において、本発明は、本発明の方法を実行させる命令シーケンスを含む集積回路製品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】三次元走査システムの概略図
【図2】(a)〜(d)は走査される物理的なオブジェクトの例
【図3】覆われていない領域を走査するためのフローチャート
【図4】最初の走査の自動化生成のためのフローチャート
【図5】歯科印象の3次元コンピュータモデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを生成する方法であって、
前記方法は、
a)走査システムを準備し、前記走査システムは、
i.スキャナ、及び
ii.前記スキャナに接続可能な及び/又は前記スキャナに組み込まれたコンピュータ、を有し、前記コンピュータは前記スキャナの仮想モデルを含み、
b)物理的なオブジェクトの形状情報を前記コンピュータに入力し、
c)前記コンピュータにより、前記仮想モデルと前記形状情報に基づいて視感度関数を生成し、前記視感度関数は、少なくとも一つの所定の走査シーケンスにより、前記物理的なオブジェクトの関心のある領域の被覆率を評価することが可能であり、
d)前記視感度関数の評価に基づいて、少なくとも一つの走査シーケンスを確立し、
e)前記少なくとも一つの走査シーケンスにより、前記物理的なオブジェクトの走査を実行し、
f)少なくとも1回、ステップd)及びe)を任意に繰り返し、
g)前記物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを得る、
ステップを有する方法。
【請求項2】
前記形状情報は、物理的なオブジェクトの最初の走査により得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記形状情報は、直接的な形状情報である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記形状情報は、コンピュータ支援設計モデル(CADモデル)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記形状情報と前記オブジェクトは、前記オブジェクトを前記スキャナに固定することにより、位置が合わされる、請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記形状情報と前記オブジェクトは、前記形状情報に位置が合わされた最初の走査により、位置が合わされる、請求項1から請求項5のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記走査システムは、光学式構造光走査システムである、請求項1から請求項6のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記スキャナは、面スキャナである、請求項1から請求項7のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記走査システムは、少なくとも一つの光源、少なくとも一つのカメラ、及び物理的なオブジェクトを支持する少なくとも一つの支持部材を含む、請求項1から請求項8のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記光源、前記カメラ、及び前記支持部材のうち少なくとも一つの構成要素は、他の構成要素の一つに対して移動可能である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記支持部材は、前記光源に対して移動可能である、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記支持部材は、前記カメラに対して移動可能である、請求項6、請求項7、又は請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記走査システムは、少なくとも二つの光源を含む、請求項1から請求項12のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記走査システムは、少なくとも二つのカメラを含む、請求項1から請求項13のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項15】
ステップd)の前記少なくとも一つの走査シーケンスは、少なくとも二つの走査シーケンスによる物理的なオブジェクトの被覆率をシミュレートして最適な被覆率を含む走査シーケンスを選択することにより、確立される、請求項1から請求項14のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項16】
ステップd)において確立される前記走査シーケンスは、物理的なオブジェクトの形状情報の隠れた穴の被覆率を得るために確立される、請求項1から請求項15のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記走査シーケンスは、カメラ及び/又はレーザの角度に対する最もよい角度面のためにスキャナを最適化することにより確立される、請求項1から請求項16のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項18】
前記走査シーケンスは、走査シーケンスの速度のために最適化することにより確立される、請求項1から請求項17のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項19】
確立された前記走査シーケンスは、物理的なオブジェクトからの反射を最小限にするために最適化される、請求項1から請求項18のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項20】
確立された前記走査シーケンスは、1以上のカメラの視感度のために最適化される、請求項1から請求項19のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項21】
走査シーケンスは、スキャナの少なくとも一つの構成要素を少なくとも一つの他の構成要素に対して動かすことにより、生成される、請求項1から請求項20のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記物理的なオブジェクトの領域の被覆率は、推定された物理的なオブジェクトの領域と比較して穴の領域の割合を求めることにより、評価される、請求項1から請求項21のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項23】
前記物理的なオブジェクトの領域の被覆率は、穴の大きさを求めることにより、評価される、請求項1から請求項22のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項24】
ステップd)とe)は、物理的なオブジェクトの被覆率が所定値以上になるまで繰り返される、請求項1から請求項23のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項25】
前記物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルは、前記物理的なオブジェクトの形状情報と、前記ステップe)で実行される走査の少なくとも一つの結果とから情報を組み合わせることにより得られる、請求項1から請求項24のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項26】
前記物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルは、前記ステップe)で実行される少なくとも二つの走査シーケンスから情報を組み合わせることにより得られる、請求項1から請求項25のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項27】
前記物理的なオブジェクトの形状情報は、点の集合である、請求項1から請求項26のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項28】
前記物理的なオブジェクトの形状情報は、面を点の集合に適合させることにより得られる、請求項1から請求項23のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項29】
前記適合は、三角測量で行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
物理的なオブジェクトを支持する前記支持部材は、直線移動、回転移動、又はそれらの組み合わせのうち少なくとも一つの移動を実行可能である、請求項1から請求項29のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項31】
前記スキャナの仮想モデルは、形状情報を入力する前に生成される、請求項1から請求項30のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項32】
前記物理的なオブジェクトは、不規則な面を有する、請求項1から請求項31のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項33】
前記物理的なオブジェクトは、解剖の又は歯の物体の印象から選択される、請求項1から請求項32のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項34】
前記物理的なオブジェクトは、少なくとも一本の歯の印象である、請求項1から請求項33のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項35】
物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを生成するための走査システムであって、
少なくとも一つの光源、少なくとも一つのカメラ、及び物理的なオブジェクトを支持する少なくとも一つの支持部材と、データ処理システムと、を有し、
前記データ処理システムは、入力装置、中央演算処理装置、記憶装置、及び表示装置を有し、
前記データ処理システムは、請求項1から請求項34の方法を実行させる命令シーケンスを示すデータを格納している、走査システム。
【請求項36】
物理的なオブジェクトの三次元コンピュータモデルを生成するためのデータ処理システムであって、
入力装置、中央演算処理装置、記憶装置、及び表示装置を有し、
請求項1から請求項34の方法を実行させる命令シーケンスを示すデータを格納している、データ処理システム。
【請求項37】
請求項1から請求項34の方法を実行させる命令シーケンスを含む、コンピュータソフトウェア製品。
【請求項38】
請求項1から請求項34の方法を実行させる命令シーケンスを含む、集積回路製品。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−507682(P2008−507682A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521796(P2007−521796)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000507
【国際公開番号】WO2006/007855
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507023898)3シェイプ・アクティーゼルスカブ (1)
【氏名又は名称原語表記】3Shape A/S
【Fターム(参考)】