説明

遮断弁制御システム

【課題】設定時の作動テストにより、システムの構成部品等の故障を的確に診断、予知できる遮断弁制御システムを提供すること。
【解決手段】エアーシリンダー(3)のシリンダー(31)にエア供給源(11)からのエアーの供給を行った場合に圧力センサー(6)で実測したシリンダー内圧の圧力特性に基づいてシステムの正常/異常を判定する判定手段(7)と、システムの初期の正常作動時のシリンダー内圧の圧力特性と故障予知境界の圧力特性を予め記憶する記憶手段(7)とを備え、判定手段(7)は、実測の圧力特性が前記正常作動時の圧力特性と故障予知境界の圧力特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、正常作動時の圧力特性及び故障予知境界の圧力特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断弁制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラント設備における石油やガス等のパイプラインには、設備に異常が発生した場合にラインを緊急遮断するために、ボールバルブ等からなる遮断弁が設けられている。遮断弁は、プラント設備への設置後、1年に1回程度の頻度でシャットダウン(全開から全閉)のフルストローク作動テストを実施して故障の有無を確認していた。
【0003】
しかし、遮断弁を全閉することは、プラントを停止することになり通常運転に支障を来すことになるため、通常運転中には遮断弁の作動テストを実行することができなかった。そこで、出願人は、プラントを停止することなく通常運転中に遮断弁の作動テストを実行して故障の有無を診断、予知できる遮断弁制御システムを開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−092110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、設置後の遮断弁制御システムの故障診断を行う技術については、既に開発されているが、プラント設備のパイプライン等へ緊急遮断弁を設置する際にも故障診断を行う必要があることが考えられており、この場合の故障診断技術についても開発することが要求されている。
【0006】
すなわち、プラント設備のパイプライン等へ設置した際、遮断弁及び制御システムからなる遮断弁制御システムは種々の設定を行うが、この設定時に正常に作動するか否かを調べる作動テストを実施して、システムの各構成部品の故障の有無を診断する必要がある。
【0007】
本発明は、設定時の作動テストにより、システムの構成部品等の故障を的確に診断、予知できる遮断弁制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、遮断弁(1)と、該遮断弁(1)の弁軸(1b)を回転制御するエアーシリンダー(3)および該エアーシリンダー(3)のシリンダー(31)にエア供給源(11)からのエアーの供給および排気を行う電磁弁(5)を有し、前記遮断弁(1)の開度を制御する制御手段とを備えた遮断弁制御システムであって、前記シリンダー(31)の内圧を検出する圧力センサー(6)と、前記制御手段の制御により、前記エアーシリンダー(3)の前記シリンダー(31)に前記エア供給源(11)からのエアーの供給を行った場合に前記圧力センサー(6)で実測した前記シリンダー内圧の圧力特性に基づいてシステムの正常/異常を判定する判定手段(7)と、システムの初期の正常作動時の前記シリンダー内圧の圧力特性と故障予知境界の圧力特性を予め記憶する記憶手段(7)とを備え、前記判定手段(7)は、前記実測の圧力特性が前記正常作動時の圧力特性と前記故障予知境界の圧力特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、前記正常作動時の圧力特性及び前記故障予知境界の圧力特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の遮断弁制御システムにおいて、前記判定手段(7)は、前記電磁弁(5)への通電時点または停電時点から前記エアーシリンダー(3)の作動開始時点までの前記実測の圧力特性に基づいて前記電磁弁(5)の正常/異常を判定し、前記エアーシリンダー(3)の作動開始時点から前記遮断弁(1)の作動開始時点までの前記実測の圧力特性に基づいて前記エアーシリンダー(3)の正常/異常を判定し、前記遮断弁(1)の作動開始時点以降の前記実測の圧力特性に基づいて前記遮断弁(1)の正常/異常を判定することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の遮断弁制御システムにおいて、前記判定手段(7)は、前記遮断弁(1)の作動開始時点以降の前記実測の圧力特性が、前記正常作動時の圧力特性及び前記故障予知境界の圧力特性の間の範囲外にあって、その圧力特性の傾きが、前記遮断弁の作動開始時点以降の前記正常作動時の圧力特性の傾きと等しい場合は、前記遮断弁が正常かつ前記エアーシリンダーが異常と判定することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、遮断弁(1)と、該遮断弁(1)の弁軸(1b)を回転制御するエアーシリンダー(3)および該エアーシリンダー(3)のシリンダー(31)にエア供給源(11)からのエアーの供給および排気を行う電磁弁(5)を有し、前記遮断弁(1)の開度を制御する制御手段とを備えた遮断弁制御システムであって、前記シリンダー(31)の内圧を検出する圧力センサー(6)と、制御手段の制御により、前記エアーシリンダー(3)の前記シリンダー(31)に前記エア供給源(11)からのエアーの供給を行った場合に前記圧力センサー(6)で実測した前記シリンダー内圧の圧力特性に基づいてシステムの正常/異常を判定する判定手段(7)と、システムの初期の正常作動時の前記シリンダー内圧の圧力特性と故障予知境界の圧力特性を予め記憶する記憶手段(7)と、ディスプレイ(12)とを備え、前記判定手段(7)は、前記実測の圧力特性が前記正常作動時の圧力特性と前記故障予知境界の圧力特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、前記正常作動時の圧力特性及び前記故障予知境界の圧力特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定し、前記ディスプレイ(12)は、前記実測の圧力特性、前記記憶手段に記憶された前記システムの初期の正常作動時の圧力特性及び故障予知境界の圧力特性を表示することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、遮断弁(1)と、該遮断弁(1)の弁軸(1b)を回転制御するエアーシリンダー(3)および該エアーシリンダー(3)のシリンダー(31)にエア供給源(11)からのエアーの供給および排気を行う電磁弁(5)を有し、前記遮断弁(1)の開度を制御する制御手段とを備えた遮断弁制御システムにおいて、前記遮断弁(1)の弁軸の変位を検出する変位検出手段(8)と、前記制御手段の制御により、前記エアーシリンダー(3)の前記シリンダー(31)に前記エア供給源(11)からのエアーの供給を行った場合に前記変位検出手段(8)で検出した変位特性に基づいてシステムの正常/異常を判定する判定手段(7)と、システムの初期の正常作動時の変位特性および故障予知境界の変位特性を予め記憶する記憶手段(7)とを備え、前記判定手段(7)は、前記実測の変位特性が前記正常作動時の変位特性と前記故障予知境界の変位特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、前記正常作動時の変位特性と前記故障予知境界の変位特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、遮断弁(1)と、該遮断弁(1)の弁軸(1b)を回転制御するエアーシリンダー(3)および該エアーシリンダー(3)のシリンダー(31)にエア供給源(11)からのエアーの供給および排気を行う電磁弁(5)を有し、前記遮断弁(1)の開度を制御する制御手段とを備えた遮断弁制御システムにおいて、前記遮断弁(1)の弁軸の変位を検出する変位検出手段(8)と、前記制御手段の制御により、前記エアーシリンダー(3)の前記シリンダー(31)に前記エア供給源(11)からのエアーの供給を行った場合に前記変位検出手段(8)で検出した変位特性に基づいてシステムの正常/異常を判定する判定手段(7)と、システムの初期の正常作動時の変位特性および故障予知境界の変位特性を予め記憶する記憶手段(7)と、ディスプレイ(12)とを備え、前記判定手段(7)は、前記実測の変位特性が前記正常作動時の変位特性と前記故障予知境界の変位特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、前記故障予知境界の変位特性と前記故障時の変位特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定し、前記ディスプレイ(12)は、前記実測の変位特性、前記記憶手段に記憶された前記システムの初期の正常作動時の変位特性及び故障予知境界の変位特性を表示することを特徴とする。
【0014】
なお、上述の課題を解決するための手段の説明におけるかっこ書きの参照符号は、以下の発明を実施するため形態の説明における構成要素の参照符号に対応しているが、これらは、特許請求の範囲の解釈を限定するものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、エアーシリンダーのシリンダーにエア供給源からのエアーの供給を行った場合に圧力センサーで実測したシリンダー内圧の圧力特性が正常作動時の圧力特性と故障予知境界の圧力特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、正常作動時の圧力特性及び故障予知境界の圧力特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定するので、プラント設備のパイプライン等に設置する際に作動確認試験を行い、システムの故障/異常を判定することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、判定手段は、電磁弁への通電時点または停電時点からエアーシリンダーの作動開始時点までの実測の圧力特性に基づいて電磁弁の正常/異常を判定し、エアーシリンダーの作動開始時点から遮断弁の作動開始時点までの実測の圧力特性に基づいてエアーシリンダー(3)の正常/異常を判定し、遮断弁の作動開始時点以降の前記実測の圧力特性に基づいて遮断弁の正常/異常を判定するので、システムの構成要素(電磁弁、エアーシリンダー、遮断弁)別の正常/異常を判定することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、判定手段は、遮断弁の作動開始時点以降の実測の圧力特性が、正常作動時の圧力特性及び故障予知境界の圧力特性の間の範囲外にあって、その圧力特性の傾きが、遮断弁の作動開始時点以降の正常作動時の圧力特性の傾きと等しい場合は、遮断弁が正常かつエアーシリンダーが異常と判定するので、システムの構成要素の遮断弁の正常、エアーシリンダーの異常を判定することができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、ディスプレイは、実測の圧力特性、システムの初期の正常作動時の圧力特性及び故障予知境界の圧力特性を表示するので、圧力特性の実測値が正常作動時の圧力特性及び故障予知境界の圧力特性で表される正常作動領域および危険作動領域のどの辺に位置しているかを視認することができ、より詳細な故障の予知が可能となる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、エアーシリンダーのシリンダーにエア供給源からのエアーの供給を行った場合に変位検出手段で検出した実測の変位特性が正常作動時の変位特性と故障予知境界の変位特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、正常作動時の変位特性と故障予知境界の変位特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定するので、システムの故障/異常を判定することができる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、ディスプレイは、実測の変位特性、システムの初期の正常作動時の変位特性及び故障予知境界の変位特性を表示するので、変位特性の実測値が正常作動時の変位特性及び故障予知境界の変位特性で表される正常作動領域および危険作動領域のどの辺に位置しているかを視認することができ、より詳細な故障の予知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の遮断弁制御システムの一実施形態を示し、(A)は正面図、(B)は部分断面図である。
【図2】発明の遮断弁制御システムの一実施形態におけるエアーシリンダーと電磁弁の構成を示す構成図である。
【図3】発明の遮断弁制御システムの一実施形態における電気的構成を示すブロック図である。
【図4】発明の遮断弁制御システムの一実施形態におけるエアーシリンダーの内圧の圧力特性を示すグラフである。
【図5】図4のグラフの一部拡大図である。
【図6】発明の遮断弁制御システムの一実施形態における故障診断の手順を説明するフローチャートである。
【図7】発明の遮断弁制御システムの他の実施形態におけるエアーシリンダーと電磁弁の構成を示す構成図である。
【図8】発明の遮断弁制御システムの他の実施形態におけるポテンショメータの変位特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の遮断弁制御システムの構成を示し、(A)は正面図、(B)は部分断面図である。遮断弁制御システムは、遮断弁1と、遮断弁1の上部に固定ヨーク2を介して取り付けられ、遮断弁1の開度を制御するエアーシリンダー3と、エアーシリンダー3の上部に取り付けた屋外型または防爆型構造のポジションボックス4とを備えている。ポジションボックス4には、電磁弁5、圧力センサ−(電子式デジタル圧力計)6、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)7、ポテンショメータ8、電源10及びディスプレイ12等が収納されている。エアーシリンダー3と電磁弁5は、請求項における制御手段に相当し、マイコン7は、請求項における判定手段及び記憶手段に相当し、ポテンショメータ8は、請求項における変位検出手段に相当する。
【0024】
遮断弁1は、例えばボール状の弁体1aを有するボールバルブからなり、プラント設備のパイプライン等に接続される。弁体1aには、上方に延びる弁軸1bが連結されている。弁体1aは、弁軸1bが90度回転することによって全開状態(図1(B)参照)と全閉状態(図示しない)に切り換えられる。弁体1aの周りは、シートパッキン1cでシールされており、弁軸1bの周りは、グランドパッキン1dでシールされている。
【0025】
図2に示すように、エアーシリンダー3は、単作動空気式のシリンダー31内にピストンロッド32で連結した一対のピストン33および34を設けたものである。一方のピストン33は、シリンダー31の一端部内に配設したコイルバネ35の付勢力により、常に閉弁方向(図2における右方向)に向けて摺動するように付勢されている。他方のピストン34は、シリンダー31の他端部に設けたエアー送入口36に接続された電磁弁5の出口ポートOUTから供給されるエアーにより、コイルバネ35の付勢力に抗して開弁方向(図2における左方向)に向けて摺動するように付勢される。ピストンロッド32には、このピストンロッド32の往復運動を回転運動に変換して弁軸1bに伝達する伝達機構37が設けられている。伝達機構37は、ピストンロッド32に突設した係合ピン37aと、弁軸1bの上端部に取り付けられている二股係合片37bとを有し、係合ピン37aに二股係合片37bの先端を係合させ、係合ピン37aの左右移動により、二股係合片37bが回動し、それにより、弁軸1bが90度回転するようになっている。
【0026】
電磁弁5は、大流量3方電磁弁5Aと小流量3方電磁弁5Bの2つの3方電磁弁を1つのボデーに内蔵したものである。大流量3方電磁弁5Aは、弁切り換え用のソレノイドAおよびBを有し、弁の有効断面積が大きく、パイプラインで異常が発生した場合に、エアーシリンダー3を急速に閉弁方向に駆動して、遮断弁1を緊急遮断する緊急遮断用のものである。小流量3方電磁弁5Bは、弁切り換え用のソレノイドCおよびDを有し、弁の有効断面積が大流量3方電磁弁5Aより小さいものであり、システムの作動テストを行う際に使用される作動テスト用のものである。大流量3方電磁弁5Aおよび小流量3方電磁弁5Bのそれぞれの入口ポートIN、出口ポートOUTおよび排気ポートEXHは互いに接続され、ボデーにそれぞれ1つずつ設けられた共通の入口ポートIN、出口ポートOUTおよび排気ポートEXHとされている。電磁弁5は、ポジションボックス4の外部にあるエアー供給源11からのエアーを、共通の入口ポートINから大流量3方電磁弁5Aまたは小流量3方電磁弁5Bを介して共通の出口ポートOUTを経由してエアーシリンダー3のシリンダー31に供給すると共に、シリンダー21内のエアーを、共通の出口ポートOUTから大流量3方電磁弁5Aまたは小流量3方電磁弁5Bを介して共通の排気ポートEXHを経由して大気中に排気する。
【0027】
図3は、遮断弁制御システムの電気的構成を示すブロック図である。遮断弁制御システムは、電磁弁5、圧力センサー6、マイコン7、ポテンショメータ8及びディスプレイ12が電源10に接続されている。圧力センサー6は、エアーシリンダー3の送入口36側のシリンダー内圧を検出し、検出信号をマイコン7に供給する。ポテンショメータ8は、弁軸1bの回転位置を検出し、検出信号をマイコン7に供給する。マイコン7は、電磁弁5のソレノイドの通電制御を行うと共に、圧力センサー6およびポテンショメータ8の検出信号を演算処理してシステムの正常/故障を判定し、判定信号を外部出力部9より出力する。
【0028】
本発明は、上述の構成の遮断弁制御システムにおいて、設定時の作動テストにおいて、電磁弁5からエアーを供給し遮断弁1を弁閉から弁開方向へ作動させ、そのときのエアーシリンダー3のシリンダー内圧の時間的変化(以下、圧力特性という)を観測することによってシステムの各部(電磁弁5、エアーシリンダー3及び遮断弁1)の故障を予知するものである。
【0029】
以下、故障の予知方法について説明するが、その前に遮断弁制御システムの通常動作について説明する。
【0030】
まず、エアーシリンダー3の切り換え用電磁弁5は、1つのボデーに3方弁となる弁が2つ(大流量3方電磁弁5Aと小流量3方電磁弁5B)内蔵されている。そこで、通常は、大流量3方電磁弁5Aを使用する。この時、小流量3方電磁弁5Bは、停電状態になるように制御され、3つのポート全てが閉となるオールポートブロック状態になっている。大流量3方電磁弁5Aと小流量3方電磁弁5Bは、一方の電磁弁が通電している時は他方の電磁弁が停電状態になるようにマイコン7の制御により電気的にインターロックされているため、両方が同時に通電状態になることはない。
【0031】
大流量3方電磁弁5AのソレノイドAが停電状態で、ソレノイドBに通電すると、エアー供給源11からのエアーは、電磁弁5の共通の入口ポートINから大流量3方電磁弁5Aを介して共通の出口ポートOUTを経由して送入口36よりシリンダー31に供給されて、ピストン34が左方向に摺動し、遮断弁1は全開状態となる。それにより、ソレノイドBへの通電中、パイプラインの運転が可能となる。なお、大流量3方電磁弁5Aにおいて、1つのソレノイドに通電中は他のソレノイドに通電されないようにマイコン7の制御により電気的にインターロックされている。
【0032】
次に、プラント設備の異常検出信号または図示しない緊急遮断スイッチの操作信号に基づいてマイコン7がソレノイドAに通電すると、シリンダー31内のエアーは、電磁弁5の出口ポートOUTから大流量3方電磁弁5Aを経由して共通の排気ポートEXHから大気に排気され、バネ荷重によってピストン34が左から右方向に摺動し、弁軸1aが90度回転して、遮断弁1は全閉状態となる。それにより、ソレノイドAへの通電中、パイプラインは緊急遮断される。
【0033】
なお、上記の動作では、ソレノイドAまたはBのどちらかが常に通電されるように制御されているが、他の実施例として、ソレノイドAが停電状態のままで、ソレノイドBに通電して全開になった後にソレノイドBも停電すると、大流量3方電磁弁5Aはオールポートブロック状態になり、遮断弁1は全開状態を保持し、ソレノイドBが停電状態のまま、ソレノイドAに通電して全閉になった後にソレノイドAも停電すると、オールポートブロック状態になり、遮断弁1は全閉状態を保持するので、このように、全開状態時または全閉状態時になった時にソレノイドAおよびBの両方を停電状態に制御することにより、電力消費を軽減することもできる。
【0034】
次に、故障の予知を含む設定時の作動テスト時の動作について説明する。作動テスト時は、小流量3方電磁弁5Bを使用する。
【0035】
パイプラインへの設置の際の設定時、遮断弁1が全閉状態にある時、図示しない作動テストスイッチの操作信号に基づいて、マイコン7が小流量3方電磁弁5BのソレノイドCに通電すると、大流量3方電磁弁5Aは、停電状態になるように制御され、3つのポート全てが閉となるオールポートブロック状態になる。そして、エアー供給源11からのエアーは、電磁弁5の共通の入口ポートINから小流量3方電磁弁5Bを経由して、共通の出口ポートEXHから送入口36よりシリンダー31内に供給される。それにより、ピストン34は、バネ荷重に打ち勝って右から左方向に摺動し、遮断弁1は全閉状態から開方向へ移動する。
【0036】
このとき、ソレノイドCへの通電は、遮断弁1が全閉状態から全開状態まで作動した時に停止し、それと同時に、ソレノイドDに通電する。
【0037】
ソレノイドDに通電すると、シリンダー31内のエアーは、送入口36、電磁弁5の出口ポートOUT、小流量3方電磁弁5Bを経由して共通の排気ポートEXHから大気に排気される。それにより、ピストン34は、バネ荷重によって左から右方向に摺動し、弁軸1aが90度回転して、遮断弁1は全閉状態に戻る。なお、小流量3方電磁弁5Bにおいて、1つのソレノイドに通電中は他のソレノイドに通電されないようにマイコン7の制御により電気的にインターロックされている。
【0038】
このように、設定時の作動テストの際には、遮断弁1を全閉状態から全開状態まで作動させた時のエアーシリンダー3のシリンダー内圧の時間的変化(以下、圧力特性という)を圧力センサー6の検出信号に基づいて測定し、測定した圧力特性の推移に基づいて故障判定を行う。具体的には、作動テスト時に実測した圧力特性を、マイコン7のメモリに予め記憶してある初期の正常作動時の圧力特性(後述する図4における曲線A)および故障予知境界の圧力特性(後述する図4における故障予知境界線B1、B2、B3)と比較し、その比較結果により故障判定を行うものである。
【0039】
初期の正常作動時の圧力特性(図5における曲線A)および故障予知境界の圧力特性(図5における故障予知境界線B1、B2、B3)については、次のように求められる。
【0040】
シリンダー内圧の変化に伴うエアーシリンダー3の動作を説明すると、遮断弁1が全閉状態から全開状態に移行する際には、送入口36よりエアーが供給されることによる供給圧力によって、ピストン34の直径をDとすると、ピストン34の受圧面積AcはπD2/4となり、発生する力は、受圧面積Ac×シリンダー内圧Pとなる。一方、バネ定数kを持つコイルバネ35が変位xだけ移動してたわむと、バネ荷重はkxとなる。
【0041】
そこで、ピストンの質量、始動抵抗(摩擦抵抗)、変位、速度および加速度を、それぞれをm、C、x′、x′′とすれば、(mx′′+Cx′+kx)<(P×Ac)になった時に、ピストン34は右側から左側へ移動し、その時連結されている遮断弁1のボール状弁体1aが開方向に回転する。シリンダー31のピストン34の変位xが最大移動距離だけ左側へ移動すると、遮断弁1のボール状弁体1aは、開方向に90度回転して全開状態となる。
【0042】
次に、遮断弁1が全開状態から全閉状態に戻る際には、遮断弁1が全開の状態から、シリンダー31内のエアーは、小流量3方電磁弁5Bを経由して大気に放出される。kx>{(P×Ac)+mx′′+Cx′}になった時に、ピストン34は左側から右側へ移動し、その時連結されている遮断弁1のボール状弁体1aが閉方向に回転する。シリンダー31のピストン34の変位xが最大移動距離だけ右側へ移動すると、遮断弁1のボール状弁体1aは、閉方向に90度回転して全閉状態となる。
【0043】
このように、小流量3方電磁弁5Bを用いた際の遮断弁1の全閉状態から全開状態になるまでのフルストローク作動確認試験を、プラント設備のパイプラインに遮断弁制御システムを設置した試運転の際に実施して、その時のエアーシリンダー3のシリンダー内圧の時間的変化を実測することで、設定時の初期の正常作動時の圧力特性としてマイコン7のメモリ(記憶手段)に予め記憶する。
【0044】
マイコン7は、下記の3つの計算式、すなわち運動方程式、状態方程式および熱エネルギー方程式を用いて実測値に近似するように、計算式における各パラメータの数値を変化させて、何度も繰り返し計算させて一致させたパラメータをデータとして記憶させる機能を持つ。
【0045】
(運動方程式) mx′′+Cx′+P×Ac=kx・・・(1)
ただし、m:エアーシリンダー3のピストン質量、C:エアーシリンダー3の始動抵抗、x:エアーシリンダー3の変位、x′:エアーシリンダー3の速度、x′′:エアーシリンダー3の加速度、P:エアーシリンダー3のシリンダー内圧、Ac:エアーシリンダー3のシリンダー受圧面積である。
【0046】
(状態方程式) dP/dt=(Rθa/Vc)G−(P/Vc)(dV/dt)+(WR/Vc)(dθc/dt)・・・(2)
ただし、R:空気のガス定数、θa:エアーシリンダー3のシリンダー内壁温度(シリンダー外周の周囲温度と同一とする)、Vc:エアーシリンダー3のシリンダー体積、G:空気の質量流量、W:空気のガス質量、θc:エアーシリンダー3のシリンダー内空気温度である。なお、θaは、図示しない温度センサからの温度検出信号に基づいて、マイコン7で計測される。また、θcは、シリンダー体積およびシリンダー内圧とボイル−シャルルの法則から計算により求められる。
G=kg・Qn・・・(3)
ただし、kg:係数、Qn:空気の体積流量(標準状態)である。体積流量Qnは以下の放出流量の式で求められる。
(放出流量の式) (Pa/P)<0.528の時、Qn=11.1SePc√(θo/θc)・・・(4)
ただし、Pa:大気圧力、Se:小流量3方電磁弁5Bの有効断面積、θo:標準状態空気温度(273°K)である。
(Pa/P)≧0.528の時、Qn=22.2Se√Pa(P−Pa)√(θo/θc)・・・(5)
【0047】
(熱エネルギー方程式) dθc/dt=(Rθc/CvW)G+(hSh/CvW)(θa−θc)・・・(6)
ただし、Cv:空気の定積比熱、h:シリンダー内壁と空気との熱伝達率、Sh:シリンダー内壁表面積である。
【0048】
故障診断は、最終的にはシリンダー内圧変化(圧力特性)の実測値に合うように計算した各パラメータを当てはめた上記の状態方程式(2)によって求めた圧力(シリンダー内圧)−時間の特性で判定する。状態方程式(2)のみではシリンダー内圧変化による温度変化を考慮していないので、熱エネルギー方程式(6)を使用して温度補正する。作動テストスイッチの操作時点から遮断弁1が実際に作動を開始するところまでと、遮断弁1の全閉からシリンダー内圧0MPaに至るまでは、運動方程式の変位x=0のため、状態方程式(2)と熱エネルギー方程式(6)のみが適用される。
【0049】
計算した各パラメータを当てはめた上記状態方程式(2)をグラフに表すと、設定時の初期の正常作動時の圧力特性は、図4の曲線Aで示される。この曲線Aは、設定時の初期の正常作動時の圧力特性としてマイコン7のメモリに予め記憶される。
【0050】
曲線Aにおいて、時点t1は、作動テストスイッチがオンとされ小流量電磁弁5bに通電され、小流量電磁弁5Bが作動を開始した時点、時点t2は、エアーシリンダー3の作動開始時点、時点t3は、遮断弁1の作動開始時点、時点t4は、遮断弁1が全開状態になった時点を示す。
【0051】
時点t1では、小流量電磁弁5bの作動開始により、エアーが単位時間当たり一定量となるようにシリンダー31へ供給され始めるが、ピストン34は始動抵抗等の影響によりまだ移動を開始しないので、シリンダー内圧は、時点t1から時点t2までの期間T1においては、小流量3方電磁弁5Bからのエアーの一定供給のみに依存して圧力ゼロ(大気圧)から直線的に次第に増大する。
【0052】
時点t2では、ピストン34が作動を開始して右側から左方向への移動し、遮断弁1が開方向に作動する。ピストン34が動き始めると、エアーが供給されるシリンダー31の内部空間が広がるため、シリンダー内圧は、時点t2から時点t3までの期間T2においては、期間T1よりも圧力変化の傾斜が緩やかとなり直線的に次第に増大する。
【0053】
時点t3では、遮断弁1が作動を開始して全閉状態から開方向へ作動する。遮断弁1が動き始めると、その作動抵抗のため、シリンダー内圧は、時点t3から時点t4までの期間T3においては、期間T2よりも圧力変化の傾斜が急になるが期間T1よりも緩やかとなって直線的に次第に増大する。
【0054】
したがって、実線Aで示される正常作動時のシリンダー内圧の圧力特性は、時点t1から時点t4まで各時点で折れ曲がる折れ線グラフのような特性を呈する。また、圧力特性が折れ曲がる時点(時点t2,t3)は、その前後の期間における圧力特性の勾配の変化点として捕らえることができる。
【0055】
一方、小流量電磁弁5Bが故障している場合は、小流量電磁弁5Bの作動が遅くなったりしてエアー供給源1からのエアーの供給は正常作動時よりも少なくなるため、期間T1におけるシリンダー内圧は、一般的に正常作動時よりも低くなることが予想される。そこで、期間T1では、正常作動時の曲線Aに対して、曲線Aより圧力が低くなる一定の許容値を定め、点線で示される故障予知境界線B1として設定する。
【0056】
また、エアーシリンダー3が故障している場合は、エアーシリンダー3のピストン34、33のパッキンの経時的劣化による固着や摺動抵抗の増加等が予想されるため、期間T2におけるシリンダー内圧は、一般的に正常作動時よりも高くなることが予想される。そこで、期間T2では、正常作動時の曲線Aに対して、曲線Aより圧力が高くなる一定の許容値を定め、点線で示される故障予知境界線B2として設定する。
【0057】
また、遮断弁1が故障している場合は、シートパッキン1cやグランドパッキン1dのの経時的劣化による作動抵抗の増加等が予想されるため、期間T3におけるシリンダー内圧は、一般的に正常作動時よりも高くなることが予想される。そこで、期間T3では、正常作動時の曲線Aに対して、曲線Aより圧力が高くなる一定の許容値を定め、点線で示される故障予知境界線B3として設定する。
【0058】
そこで、期間T1〜T3において設定した故障予知境界線B1、B2、B3で示される圧力特性を同様にマイコン7のメモリに予め記憶する。そして、正常作動時の曲線Aで示される圧力特性と故障予知境界線B1、B2、B3で示される圧力特性の間の範囲を正常作動領域とし、正常作動時の圧力特性と故障予知境界線B1、B2、B3で示される圧力特性の間の範囲外にある場合は、危険作動領域とする。
【0059】
例えば、図4では、期間T1、T2及びT3においてそれぞれハッチングで示される領域DA1、DA2、DA3が危険作動領域とされる。シリンダー内圧の実測値が、期間T1において危険作動領域DA1にあれば、電磁弁の作動が遅くなり異常であることを表しており、期間T2において危険作動領域DA2にあれば、エアーシリンダー3の固着あるいは作動が遅くなっていることによる異常であることを表しており、期間T3において危険作動領域DA3にあれば、遮断弁1(主に、シートパッキン1cやグランドパッキン1d部分)の固着あるいは作動が作動が遅くなっていることによる異常であることを表している。
【0060】
以上のようにして、遮断弁制御システムの設定時に、正常作動時の曲線Aで示される圧力特性および故障予知境界線B1、B2、B3で示される圧力特性をマイコン7のメモリに予め記憶しておく。
【0061】
次に、遮断弁制御システムをプラント設備に設置した際、遮断弁制御システムの設定時の作動テストを実施し、遮断弁1を全閉状態から全開状態まで遷移させる作動確認試験を行い、その時のエアーシリンダー3のシリンダー内圧の圧力値を圧力センサー6の検出信号に基づいて実測し、測定した圧力特性をマイコン7のメモリに記憶する。
【0062】
次に、実測した圧力特性と、予めマイコン7のメモリに記憶されている初期の正常作動時の曲線A及び故障予知境界の曲線B1、B2、B3とをマイコン7で比較し、故障の有無の判定を行う。判定結果は、正常と異常の2段階に区分する。
【0063】
実測した圧力特性が、曲線Aと曲線B1、B2、B3の間の正常作動領域内にあれば、正常と判定する。正常と判定された場合は、遮断弁制御システムは、その時点より、例えば1年後まで使用可とする。
【0064】
一方、実測した圧力特性が、曲線Aと曲線B1、B2、B3の間の範囲外の危険作動領域にあれば、異常と判定する。異常と判定された場合は、電磁弁5、エアーシリンダー3や遮断弁1のメンテナンスまたは部品、新品交換要とする。
【0065】
なお、判定結果は、マイコン7から外部出力部9より、例えばDC4〜20mAの電気信号で外部出力できる。また、ディスプレイ12に正常作動時の曲線Aと、故障予知境界線B1、B2、B3と実測の圧力特性とを表示させて、正常/異常の判定結果と共に視認できるようにする。ディスプレイ12の表示より、圧力特性の実測値が曲線A、B1、B2、B3で表される正常作動領域および危険作動領域のどの辺に位置しているかを視認することにより、故障の予知が可能となる。
【0066】
次に、上述した故障診断の手順について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。まず、正常作動時のシリンダ内圧の圧力特性を測定するために、標準の遮断弁制御システムをプラント設備のパイプラインに設置する(ステップS1)。次に、プラント設備の試運転時に、小流量3方電磁弁5Bを用いた際の遮断弁1の全閉状態から全開状態になるまでのフルストローク作動確認試験を実施し、その時のエアーシリンダー3のシリンダー内圧の時間的変化を実測し、上記の各方程式に基づいて、初期の正常作動時の圧力特性(図4の曲線A)と、この圧力特性に許容値を加えて設定した故障予知境界線B1、B2、B3をマイコン7のメモリに記憶する(ステップS2)。
【0067】
次に、上記標準の遮断弁制御システムで測定した初期の正常作動時の圧力特性(図4の曲線A)と故障予知境界線B1、B2、B3をマイコン7のメモリに予め記憶させた、顧客に納品する遮断弁制御システムを、顧客のプラント設備のパイプラインに設置し、設定時の作動テストのための作動確認試験を実施し、エアーシリンダー3のシリンダー内圧の圧力特性を実測する(ステップS3)。次に、マイコン7のメモリに予め記憶されている圧力特性(図4の曲線Aおよび故障予知境界線B1、B2、B3と、実測した圧力特性を比較し、2段階(正常および異常)の判定をマイコン7により行う(ステップS4)。
【0068】
次に、ステップS4の判定の結果、実測した圧力特性が、曲線Aと曲線B1、B2、B3の間の正常作動領域にあれば、正常と判定する(ステップS5)。正常と判定された場合は、遮断弁制御システムは、正常作動製品なので、例えば1年後まで使用可とする。
【0069】
一方、ステップS4の判定の結果、実測した圧力特性が、曲線Aと曲線B1、B2、B3の間の範囲外の危険作動領域にあれば、異常と判定する。(ステップS6)。この時、
ディスプレイ12の表示より、圧力特性の実測値が危険作動領域にどのようにかつどの辺に位置しているかを視認することにより、故障の予知が可能となる。異常と判定された場合は、エアーシリンダー3、遮断弁1、小流量3方電磁弁5B等のメンテナンスまたは部品、新品交換要とする。
【0070】
例えば、図4において、期間T1における圧力特性の実測値が、危険作動領域DA1にあると判定された場合は、電磁弁5の故障と判定し、また、圧力特性の実測値が危険表示領域DA1のどの辺に表示されているかによって電磁弁5の異常程度を予知することができる。同様に、期間T2における圧力特性の実測値が、危険作動領域DA2にあると判定された場合は、エアーシリンダー3の故障と判定し、また、圧力特性の実測値が危険表示領域DA2のどの辺に表示されているかによってエアーシリンダー3の異常程度を予知することができ、期間T3における圧力特性の実測値が、危険作動領域DA3にあると判定された場合は、遮断弁1の故障と判定し、また、圧力特性の実測値が危険表示領域DA3のどの辺に表示されているかによって遮断弁1の異常程度を予知することができる。遮断弁1における異常(故障)は、主に、シートパッキン1cやグランドパッキン1d部分の劣化に依存することが多いので、これらの部品の交換を行う必要がある。
【0071】
また、例えば図5に示されるように、期間T3における圧力特性の実測値が、危険作動領域DA3に表示された場合でも、1点鎖線でしめされる曲線A′のように、危険作動領域DA3において曲線Aとほぼ平行になるように表示された場合は、遮断弁1は正常であり、エアーシリンダー3の故障と予知することができる。これは、期間T3における実測値の圧力変化が、正常作動時の圧力特性と同じ圧力変化であるならば、遮断弁1は正常に作動していると判断できるからである。このような予知は、期間T2でも同様に行うことができ、期間T2における圧力特性の実測値が、危険作動領域DA2に表示された場合でも、危険作動領域DA2において曲線Aとほぼ平行になるように表示された場合は、エアーシリンダー3が正常、小流量電磁弁5の異常と判定することができる。
【0072】
ステップS6で異常と判定された場合は、次に、メンテナンスまたは故障部品の交換等の処置を実施し(ステップS7)、次いで、メンテナンスまたは故障部品の交換等の実施後の遮断弁制御システムの試運転を実施する(ステップS8)。次に、ステップS3と同様の作業を実施し、それに基づき、初期の正常作動時の圧力特性(曲線A)を再記憶(ステップS3で記憶した曲線Aの更新)を行い(ステップS9)、次いでステップS4に戻る。
【0073】
以上の通り、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0074】
例えば、他の実施形態として、ディスプレイ12の表示において、期間T1、T2及びT3における表示が、それぞれ異なる色で表示されるように色分けし、視認し易くなるようにしても良い。
【0075】
また、上述の一実施形態では、電磁弁5は、大流量3方電磁弁5Aおよび小流量3方電磁弁5Bを内蔵しているが、これに代えて、他の実施形態として大流量4方電磁弁および小流量4方電磁弁を内蔵した構成としても良い。また、電磁弁5は、通電時点からエアー供給源11からのエアーをエアーシリンダー3に供給するタイプのものとして説明したが、これに代えて停電時点から供給するタイプとしても良い。
【0076】
図7は、電磁弁5が大流量4方電磁弁および小流量4方電磁弁を内蔵した構成を有する他の一実施形態を示す構成図である。図7において、エアーシリンダー3の切り換え用電磁弁5は、1つのボデー内に4方弁となる電磁弁が2つ内蔵されており、使い方によって出口ポートOUT1または出口ポートOUT2のどちらかをプラグして3方弁として使用することができる。大流量4方電磁弁5Cおよび小流量4方電磁弁5Dのそれぞれの入口ポートIN、出口ポートOUT1、出口ポートOUT2、排気ポートE1および排気ポートE2は互いに接続され、ボデーにそれぞれ1つずつ設けられた共通の入口ポートIN、出口ポートOUT1,OUT2および排気ポートE1,E2とされている。通常は大流量3方電磁弁5Cを使用する。この時、小流量4方電磁弁5Dは停電状態になるように制御され、5つのポート全てが閉となるオールポートブロック状態になっている。大流量4方電磁弁5Cと小流量4方電磁弁5Dは、一方の電磁弁が通電している時は他方の電磁弁が停電状態になるようにインターロックされているため、両方が同時に通電状態になることはない。
【0077】
出口ポートOUT1をプラグして使用する場合を例にすると、大流量4方電磁弁5CのソレノイドAが停電状態で、ソレノイドBに通電すると、エアーは、INポートから出口ポートOUT2を経由してエアーシリンダー3のシリンダー31に供給され、それにより、遮断弁1は全開状態となる。大流量4方電磁弁5Cにおいて、1つのソレノイドに通電中は他のソレノイドに通電されないようにインターロックされている。ソレノイドAが停電状態のままソレノイドBを停電すると、大流量4方電磁弁5Cはオールポートブロック状態になり、遮断弁は全開状態を保持する。
【0078】
次に、プラント設備の異常検出信号または図示しない緊急遮断スイッチの操作信号に基づいてマイコン7がソレノイドAに通電すると、エアーは、INポートから出口ポートOUT1に流れようとするが、プラグされているため止まる。一方、エアーシリンダー31内のエアーは、大流量4方電磁弁5Cの出口ポートOUT2を経由してE2ポートから大気に排気されて、遮断弁1はバネ荷重によって全閉状態となる。それにより、ソレノイドAへの通電中、パイプラインは緊急遮断される。なお、故障診断時に使用される小流量4方電磁弁5Dの作動も同様である。
【0079】
また、上述の一実施形態および他の実施形態では、遮断弁1の全開状態または全閉状態において、対応する大流量3方電磁弁5Aまたは大流量4方電磁弁5CのソレノイドA、Bのどちらかが通電されたままとなっているが、これに代えて遮断弁1が全開状態または全閉状態になった後、ソレノイドA,Bの両方を停電状態にするように制御しても良い。この場合、大流量3方電磁弁5Aまたは大流量4方電磁弁5Cはオールポートブロック状態となるため、電力消費を軽減して、遮断弁1の全開状態または全閉状態を保持することができる。また、オールポートブロック状態を利用すれば、遮断弁1は任意の弁開度で停止保持できる。この作動は、小流量3方電磁弁5Bまたは小流量4方電磁弁5Dでも同様であるので、作動確認試験による作動テスト時に故障して元の全開に戻したくても作動しない場合に、その位置で保持するのに役立つ。
【0080】
また、上述の一実施形態では、故障/異常の判定を実測の圧力特性と曲線A、B1、B2、B3の圧力特性とを比較して行っているが、これに代えて、作動後の任意の時点における実測の圧力値と、その時点における曲線Aの圧力値P1と、曲線B1またはB2またはB3の圧力値P2とを比較し、実測の圧力値がP1とP2の間の範囲内にあれば正常、P1とP2の間の範囲外にあれば異常と判定するようにしても良い。
【0081】
また、上述の一実施形態では、図4及び図5のハッチング部分を危険作動領域としているが、正常作動領域以外であってハッチングされていない領域も危険作動領域としても良い。
【0082】
また、プラント設備のパイプラインへの設置後に作動テストを行って遮断弁制御システムの故障診断を行っているが、設置前にシステムの故障診断を行っても良い。
【0083】
また、上述の一実施形態では、圧力特性における各部品の作動開始の時点は、期間T1、T2及びT3の区切りとなり、圧力特性が折れ曲がる時点(時点t2,t3)は、その前後の期間における圧力特性の勾配の変化点として検出できるが、他の実施形態として、圧力特性のみでは明確には捕らえづらい場合は、ポテンショメータ8の検出信号を併用して検出しても良い。
【0084】
また、上述の一実施形態では、エアシリンダー3のシリンダー内圧の圧力特性と故障予知境界の圧力特性とによって正常/異常の判定を行っているが、他の実施形態として、各期間の正常作動時の圧力特性の勾配と、対応する期間の実測の圧力特性の勾配とを比較し、実測の圧力特性の勾配が、正常作動時の圧力特性の勾配より予め定めた勾配しきい値を超えなければ正常、予め定めた勾配しきい値以上異なっている場合は、異常と判定しても良い。例えば、期間T3における実測の圧力特性の勾配が、正常作動時の圧力特性の勾配と等しければ正常と判定し、勾配しきい値以上に異なっていた場合は、遮断弁1の異常と判定することができる。
【0085】
また、上述の一実施形態では、エアシリンダー3のシリンダー内圧の圧力特性を監視することによって故障診断を行っているが、本発明の他の実施形態として、ポテンショメータ8の検出電圧信号の推移を表す変位特性のみを監視することによって故障診断を行うように構成することができる。ポテンショメータ8は、ポジショナーまたはロータリーエンコーダに代えても良い。
【0086】
この場合は、例えば図8に示すように、標準の遮断弁制御システムを設置したプラント設備の試運転時に作動確認試験を実施し、そのときのポテンショメータ8の検出電圧信号の時間的変化を実測することで、初期の正常作動時の変位特性Cとしてマイコン7のメモリに予め記憶する。変位特性Cは、小流量電磁弁5Bの作動開始時点t1からエアーシリンダー3の作動開始時点t2まで(期間T1′)は検出電圧がゼロ、時点t2から遮断弁1の全閉から開方向への作動開始時点t3まで(期間T2′)はある傾きで直線的に検出電圧が上昇し、時点t3から全開状態となる時点t4まで(期間T3′)は、期間T2′より緩やかな傾きで直線的に検出電圧が上昇して最大電圧(Vmax)になるように変化し、この検出電圧の変化が電磁弁の作動開始から遮断弁1が全開状態に達するまでの位置の変位(弁軸1bの回転位置の変位)を表している。期間t2′においてポテンショメータ8は弁軸1bの回転位置を検出した検出電圧信号を出力するが、この期間T2′は、弁軸1bは回転していても、機械的な遊びのために弁体1aにはまだ弁軸1bの回転が伝達されていない期間である。
【0087】
また、正常作動時の変位特性Cの電圧値から予め定めたしきい値だけ傾きが減少した、点線で示される故障予知境界の変位特性D1、D2を設定し、マイコン7のメモリに予め記憶する。
【0088】
作動テスト時には、実測したポテンショメータ8の変位特性が、曲線Cと曲線D1、D2の間の範囲内にある場合は正常と判定し、範囲外すなわち曲線D1、D2と電圧ゼロの間の範囲内にある場合は異常と判定することができる。そして、期間T2′において異常と判定された場合はエアーシリンダー3の異常、期間T3′において異常と判定された場合は遮断弁1の異常と判定することができる。また、ディスプレイ12に、ポテンショメータ8の検出電圧信号の実測値と、正常作動時の変位特性Cと、故障予知境界線D1、D2とを表示させて、正常/異常の判定結果と共に視認できるようにする。ディスプレイ12の表示より、圧力特性の実測値が曲線A、B1、B2、B3で表される正常作動領域および危険作動領域のどの辺に位置しているかを視認することにより、故障の予知が可能となる。
【0089】
また、上述の他の実施の形態では、故障/異常の判定を実測の変位特性と曲線C、D1、D2の変位特性とを比較して行っているが、これに代えて、期間T2′〜T3′における任意の時点における実測のポテンショメータ8の検出電圧と、その時点における曲線Cの電圧値V1と、曲線D1またはD2の電圧値V2とを比較し、実測の電圧値が、V1とV2の間の範囲内にあれば正常、V1またはV2以下であれば異常と判定するようにしても良い。
【0090】
なお、ポテンショメータ8による正常作動時の変位特性が直線にならない場合は、危険予知境界の変位特性D1、D2は、正常作動時の変位特性の電圧値から所定の許容値だけ低い電圧値で描かれる特性としても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 遮断弁
3 エアーシリンダー(制御手段の一部)
5 電磁弁(制御手段の一部)
5A 大流量3方電磁弁
5B 小流量3方電磁弁
6 圧力センサー
7 マイコン(判定手段、記憶手段)
8 ポテンショメータ(変位検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断弁と、該遮断弁の弁軸を回転制御するエアーシリンダーおよび該エアーシリンダーのシリンダーにエア供給源からのエアーの供給および排気を行う電磁弁を有し、前記遮断弁の開度を制御する制御手段とを備えた遮断弁制御システムであって、
前記シリンダーの内圧を検出する圧力センサーと、
前記制御手段の制御により、前記エアーシリンダーの前記シリンダーに前記エア供給源からのエアーの供給を行った場合に前記圧力センサーで実測した前記シリンダー内圧の圧力特性に基づいてシステムの正常/異常を判定する判定手段と、
システムの初期の正常作動時の前記シリンダー内圧の圧力特性と故障予知境界の圧力特性を予め記憶する記憶手段とを備え、
前記判定手段は、前記実測の圧力特性が前記正常作動時の圧力特性と前記故障予知境界の圧力特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、前記正常作動時の圧力特性及び前記故障予知境界の圧力特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定する
ことを特徴とする遮断弁制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の遮断弁制御システムにおいて、
前記判定手段は、前記電磁弁への通電時点または停電時点から前記エアーシリンダーの作動開始時点までの前記実測の圧力特性に基づいて前記電磁弁の正常/異常を判定し、前記エアーシリンダーの作動開始時点から前記遮断弁の作動開始時点までの前記実測の圧力特性に基づいて前記エアーシリンダーの正常/異常を判定し、前記遮断弁の作動開始時点以降の前記実測の圧力特性に基づいて前記遮断弁の正常/異常を判定する
ことを特徴とする遮断弁制御システム。
【請求項3】
請求項2記載の遮断弁制御システムにおいて、
前記判定手段は、前記遮断弁の作動開始時点以降の前記実測の圧力特性が前記正常作動時の圧力特性及び前記故障予知境界の圧力特性の間の範囲外にあって、その圧力特性の傾きが、前記遮断弁の作動開始時点以降の前記正常作動時の圧力特性の傾きと等しい場合は、前記遮断弁が正常かつ前記エアーシリンダーが異常と判定する
ことを特徴とする遮断弁制御システム。
【請求項4】
遮断弁と、該遮断弁の弁軸を回転制御するエアーシリンダーおよび該エアーシリンダーのシリンダーにエア供給源からのエアーの供給および排気を行う電磁弁を有し、前記遮断弁の開度を制御する制御手段とを備えた遮断弁制御システムであって、
前記シリンダーの内圧を検出する圧力センサーと、
制御手段の制御により、前記エアーシリンダーの前記シリンダーに前記エア供給源からのエアーの供給を行った場合に前記圧力センサーで実測した前記シリンダー内圧の圧力特性に基づいてシステムの正常/異常を判定する判定手段と、
システムの初期の正常作動時の前記シリンダー内圧の圧力特性と故障予知境界の圧力特性を予め記憶する記憶手段と、
ディスプレイとを備え、
前記判定手段は、前記実測の圧力特性が前記正常作動時の圧力特性と前記故障予知境界の圧力特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、前記正常作動時の圧力特性及び前記故障予知境界の圧力特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定し、
前記ディスプレイは、前記実測の圧力特性、前記記憶手段に記憶された前記システムの初期の正常作動時の圧力特性及び故障予知境界の圧力特性を表示する
ことを特徴とする遮断弁制御システム。
【請求項5】
遮断弁と、該遮断弁の弁軸を回転制御するエアーシリンダーおよび該エアーシリンダーのシリンダーにエア供給源からのエアーの供給および排気を行う電磁弁を有し、前記遮断弁の開度を制御する制御手段とを備えた遮断弁制御システムにおいて、
前記遮断弁の弁軸の変位を検出する変位検出手段と、
前記制御手段の制御により、前記エアーシリンダーの前記シリンダーに前記エア供給源からのエアーの供給を行った場合に前記変位検出手段で検出した変位特性に基づいてシステムの正常/異常を判定する判定手段と、
システムの初期の正常作動時の変位特性および故障予知境界の変位特性を予め記憶する記憶手段とを備え、
前記判定手段は、前記実測の変位特性が前記正常作動時の変位特性と前記故障予知境界の変位特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、前記正常作動時の変位特性と前記故障予知境界の変位特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定する
ことを特徴とする遮断弁制御システム。
【請求項6】
遮断弁と、該遮断弁の弁軸を回転制御するエアーシリンダーおよび該エアーシリンダーのシリンダーにエア供給源からのエアーの供給および排気を行う電磁弁を有し、前記遮断弁の開度を制御する制御手段とを備えた遮断弁制御システムであって、
前記遮断弁の弁軸の変位を検出する変位検出手段と、
前記制御手段の制御により、前記エアーシリンダーの前記シリンダーに前記エア供給源からのエアーの供給を行った場合に前記変位検出手段で検出した変位特性に基づいてシステムの正常/異常を判定する判定手段と、
システムの初期の正常作動時の変位特性および故障予知境界の変位特性を予め記憶する記憶手段と、
ディスプレイとを備え、
前記判定手段は、前記実測の変位特性が前記正常作動時の変位特性と前記故障予知境界の変位特性の間の範囲内にある場合は正常と判定し、前記故障予知境界の変位特性と前記故障時の変位特性の間の範囲外にある場合は、異常と判定し、
前記ディスプレイは、前記実測の変位特性、前記記憶手段に記憶された前記システムの初期の正常作動時の変位特性及び故障予知境界の変位特性を表示する
ことを特徴とする遮断弁制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−52652(P2012−52652A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243284(P2010−243284)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(592115504)金子産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】